説明

化粧シート

【課題】表面側に透明アクリル樹脂層を設けた化粧シートにおいて、表面からの有機溶剤に対して溶損して曇るなどの影響を防いだ化粧シートを提供する。
【解決手段】透明アクリル樹脂層4を表面側に有する化粧シートにおいて、前記透明アクリル樹脂層4の表面にアクリル−ポリオール系樹脂からなるトップコート層5を設けてなることを特徴とする。これにより化粧シート表面に有機溶剤が付着しても透明アクリル樹脂層4が受ける悪影響を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建築物の玄関ドアやテラス、カーポート等の外装に使用するための化粧シートに関し、特には透明アクリル樹脂層を表面側に有する化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
これらの用途の化粧シートとしては、透明性や耐候性といった意匠や性能を考慮し、化粧シートの表面側に透明アクリル樹脂層を設けたものが広く使用されてきた。
【0003】
しかし、最外層に透明アクリル樹脂層を有すると、その表面に有機溶剤がかかった場合には、直ぐ拭き取ったとしても表面に溶損が発生して白い曇りが残ってしまうという問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、すなわちその課題とするところは、表面側に透明アクリル樹脂層を設けた化粧シートにおいて、表面からの有機溶剤に対して溶損して曇るなどの影響を防いだ化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこの課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、透明アクリル樹脂層を表面側に有する化粧シートにおいて、前記透明アクリル樹脂層の表面にアクリル−ポリオール系樹脂からなるトップコート層を設けてなることを特徴とする化粧シートである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の請求項1記載の発明により、アクリル−ポリオール系樹脂からなるトップコート層を用いることで、化粧シート表面に有機溶剤が付着しても透明アクリル樹脂層が受ける悪影響を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。図1に本発明の化粧シートの一実施例の断面の構造を示す。原反層1の表面側に絵柄層2、接着層3、透明アクリル樹脂層4、トップコート層5が設けられてなり、原反層1の裏面側に裏面プライマー層6が適宜設けられてなる。
【0008】
原反層1としては、後述する絵柄層2を容易に設けるためにシート状態であることが好ましくいが、後述する透明アクリル樹脂層4と接着が可能ならば材料は問わない。各種物性、加工適性などからオレフィン系熱可塑性樹脂が好適であり、特にはポリプロピレンが好ましい。
【0009】
化粧シートには一般に、被貼着基材の表面の色彩や欠陥に対する隠蔽性が必要とされる場合が多い。そこで、目的の化粧シートに十分な隠蔽性を持たせる為に、原反層1に適宜顔料や染料などの着色剤を添加しても良い。逆に被貼着基材の表面の色彩を生かすのであれば無着色でも良い。また、その他各種物性を向上させるために、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤等の従来公知の各種の添加剤の1種以上が添加されていても良い。
【0010】
酸化防止剤としては例えばフェノール系、硫黄系、リン系等、紫外線吸収剤としては例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ホルムアミジン系、オキザニリド系等、光安定剤としては例えばヒンダードアミン系、ニッケル錯体系等、熱安定剤としては例えばヒンダードフェノール系、硫黄系、ヒドラジン系等、可塑剤としては樹脂の種類にもよるが例えばフタル酸エステル系、リン酸エステル系、脂肪酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系、オキシ安息香酸エステル系、エポキシ系、ポリエステル系等、滑剤としては例えば脂肪酸エステル系、脂肪酸系、金属石鹸系、脂肪酸アミド系、高級アルコール系、パラフィン系等、帯電防止剤としては例えばカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両イオン系等、難燃剤としては例えば臭素系、リン系、塩素系、窒素系、アルミニウム系、アンチモン系、マグネシウム系、硼素系、ジルコニウム系等、充填剤としては例えば炭酸カルシウム、硫酸バリウム、滑石、蝋石、カオリン等から選ばれる1種又は2種以上の混合系で使用される。
【0011】
絵柄層2の構成材料や形成方法は従来より知られる方法を適宜使用することができる。具体的には例えば、適当な結着剤樹脂と共に、適当な溶剤中に溶解又は分散してなる印刷インキ又はコーティング剤等をグラビア印刷法等により形成することができる。絵柄の種類にも特に制限はなく、例えば従来より係る化粧シートの分野において広く採用されている木目柄や、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様等、或いは単なる着色や色彩調整を目的とする場合には単色無地であっても良く、要するに、目的の化粧シートの用途に応じ任意の所望の絵柄を採用することができる。
【0012】
接着層3としては、前記原反層1と後述する透明アクリル樹脂層4を接着するのに適していれば材料は問わない。具体的にはアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂などが考えられるが、アクリル−ポリエステル−塩酢ビ系樹脂など、複数の樹脂を組み合わせても良い。特にアクリル−ポリエステル−塩酢ビ系樹脂は、加熱により容易に溶融し接着性を発現するアクリル系樹脂や塩酢ビ系樹脂の長所を活かしつつ、加熱下でも凝集力の低下の少ないポリエステル系樹脂の特性を加味したものであり、原反層1や透明アクリル樹脂層4に破断や伸び、変形、劣化等の悪影響を与えることのない比較的低温の条件でも十分に接着性を発現して熱ラミネート加工可能であると同時に、準外装用途等における高温の使用条件下でも接着強度を失わず、十分な耐剥離性を維持する特性を有するものとして有効である。
【0013】
本発明における透明アクリル樹脂層4としては、メチルメタアクリレート樹脂やポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂が使用可能である、その他、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル等のアクリル酸誘導体を主成分として単独又は共重合して得られる各種の熱可塑性樹脂を挙げることができる。中でも、メチルメタクリレート等のメタクリル酸エステルを主成分とする樹脂であって、例えばメタクリル酸ブチル等のメタクリル酸の長鎖アルキルエステルや、アクリル酸メチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸又はアクリル酸等から選ばれる単量体を共重合成分として添加したり、スチレン−ブタジエンゴム又はメタクリル酸メチル−ブタジエンゴム等のゴム成分をグラフト共重合、ブロック共重合若しくはブレンドして、柔軟性や熱成形性を改善してなる樹脂などを好適に使用することができる。
【0014】
原反層1と透明アクリル樹脂層4の接着方法については、熱ラミネート法、ドライラミネート法など公知の方法から適宜選択できる。また、透明アクリル樹脂層4には意匠感を演出するために適宜エンボス加工を施すことができる。
【0015】
本発明におけるトップコート層5に用いる構成材料としては、アクリル−ポリオール系樹脂からなるものが用いられる。コートの方法及び条件により溶損が抑えられれば有機溶剤系を用いても問題ない。コートの方法はグラビア印刷法など公知のものから選択可能であり、条件は適宜設定すれば良い。
【0016】
本発明の化粧シートは従来の化粧シートと同様、各種化粧材の基材の表面に貼着(ラミネート)して使用するものであり、一般的には該貼付の際には例えばウレタン系や酢酸ビニル系等の適宜の接着剤が使用されるが、係る接着剤の種類によっては原反層1を構成する樹脂との接着性が不十分である場合もある。係る場合に備えて、原反層1の裏面に、ラミネート用接着剤との接着性に優れた樹脂からなるプライマー層6を設けておくことが好ましい。
【0017】
プライマー層6としては例えばウレタン系、アクリル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系等の各種のプライマー剤が知られており、これらの中から原反層1を構成する樹脂に合わせたものを選んで使用する。なお、プライマー層6に例えばシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の粉末を添加しておくと、プライマー層6の表面が粗面化することによって化粧シートの巻取保存時のブロッキングが防止できると共に、投錨効果による前記ラミネート用接着剤との接着性の向上を図ることもできる。
【実施例1】
【0018】
プライマー層6としてポリエステル−ポリオール系樹脂、原反層1として厚み90μのポリプロピレンフィルム、絵柄層2としてポリエステル−ポリオール系インキ、接着層3としてアクリル/ポリエステル/塩酢ビ系ヒートシール剤、透明アクリル樹脂層4としてポリメチルメタクリレートシートを用いた最外層にアクリル樹脂フィルム層を積層してなる化粧シートに対し、トップコート層5としてアクリル−ポリオール系樹脂をグラビア印刷法により5g/mで塗工して化粧シートを得た。
<比較例1>
トップコート層5を塗工しない以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
<評価>
実施例1、比較例1の表面の光沢度を光沢度計で任意に5箇所測定後、エタノールを含侵させた布で表面を10往復ラビングし、表面の光沢度を光沢度計で任意に5箇所測定した。結果を表1に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
表1よりラビング前後の光沢度の差はトップコート層5有りの方が小さく、トップコート層5による透明アクリル樹脂層4の溶損抑制効果が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明に係る化粧シートは、住宅等の建築物の玄関ドアやテラス、カーポート等の外装、また、家具、什器、車両等の輸送機器の内装等の用途に特に好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の化粧シートの一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1…原反層
2…絵柄層
3…接着層
4…透明アクリル樹脂層
5…トップコート層
6…プライマー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明アクリル樹脂層を表面側に有する化粧シートにおいて、前記透明アクリル樹脂層の表面にアクリル−ポリオール系樹脂からなるトップコート層を設けてなることを特徴とする化粧シート。

【図1】
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【公開番号】特開2009−285959(P2009−285959A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140212(P2008−140212)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】