説明

化粧シート

【課題】天然物に近い材質感(例えば、天然の木肌感、本杢感)、立体感、塗装感(塗料の厚塗り感)等を呈示する、改善された化粧シート及びそれを用いた化粧材を提供する。
【解決手段】基材シート上に、光輝性着色層、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性樹脂層及び透明性表面保護層を順に有し、少なくとも前記光輝性着色層はエンボス加工により賦型された凹凸模様を有する化粧シートであって、
前記エンボス加工は、凹凸模様が前記光輝性着色層にまで達するように、前記基材シートの裏面から施されている、
ことを特徴とする化粧シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
化粧シートは、例えば、木質基材に貼着して基材表面を装飾する用途に用いられる。
【0003】
化粧シートとして、例えば、基材シートに絵柄層、透明性樹脂層、透明性表面保護層を積層したものが知られている。また、基材シート裏面に合成樹脂製バッカー層を積層したものも知られている(特許文献1など)。ここで、バッカー層とは、木質基材などの表面凹凸の影響を緩和するとともに化粧シート(特に床材用化粧シート)にクッション性能を付与する、比較的厚みの大きな合成樹脂層である。
【0004】
上記化粧シートは、一般に絵柄層がフラットであるため、天然物に近い材質感(例えば、木肌感)、立体感等を呈示し難いという欠点がある。他方、木質基材に突き板を貼着し、突き板に塗装を施した化粧板は、特に塗装を厚くした場合に材質感、立体感、塗装感等が得られ易いが、上記化粧シートにおいては、塗装感も得られ難い。一方、絵柄層に凹凸を付与して材質感や立体感を付与する試みもあるが、絵柄層の上に透明性樹脂層を積層した段階で当該凹凸感の視認性が低下するため、やはり材質感や立体感は十分に得られない。
【0005】
近年の環境意識の高まりやコスト低減の要請に鑑みれば、突き板を用いるよりも化粧シートを用いることが好ましい。また、化粧シートを用いることは、均質な製品を大量生産することにも適している。
【0006】
従って、天然物に近い材質感、立体感、塗装感等を呈示する、改善された化粧シートの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−239517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、天然物に近い材質感、立体感、塗装感等を呈示する、改善された化粧シート及びそれを用いた化粧材を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、絵柄層とは別に、エンボス加工が施された光輝性着色層を設ける場合には上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の化粧シート及びそれを用いた化粧材に関する。
1. 基材シート上に、光輝性着色層、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性樹脂層及び透明性表面保護層を順に有し、少なくとも前記光輝性着色層はエンボス加工により賦型された凹凸模様を有する化粧シートであって、
前記エンボス加工は、凹凸模様が前記光輝性着色層にまで達するように、前記基材シートの裏面から施されている、
ことを特徴とする化粧シート。
2. 凹凸模様は、凹部と凸部の高さの差が5〜100μmの範囲である、上記項1に記載の化粧シート。
3. 絵柄模様層が描出する絵柄模様とエンボス加工により賦型された凹凸模様とが同調している、上記項1又は2に記載の化粧シート。
4. 基材シートの裏面に、厚さ100μm以上の合成樹脂層が更に積層されている、上記項1〜3のいずれかに記載の化粧シート。
5. 上記項1〜4のいずれかに記載の化粧シートと被着材を貼着してなる化粧材。
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
化粧シート
本発明の化粧シートは、基材シート上に、光輝性着色層、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性樹脂層及び透明性表面保護層を順に有し、少なくとも前記光輝性着色層はエンボス加工により賦型された凹凸模様を有することを特徴とする。
【0013】
上記特徴を有する化粧シートは、特に光輝性着色層を有し、且つ、その光輝性着色層がエンボス加工により賦型された凹凸模様を有することにより、その上に形成される絵柄模様に材質感や立体感が与えられる。絵柄模様層に透明性樹脂層を積層後も、光輝性着色層による光の乱反射によって当該凹凸の視認性は殆ど失われないため、絵柄模様の材質感や立体感は効果的に持続する。つまり、上記化粧シートは、天然物に近い材質感(例えば、天然の木肌感、本杢感)や立体感を有する。また、上記光輝性着色層、絵柄模様層及び透明性樹脂層の相乗効果によって塗装感(塗料の厚塗り感)も得られる。
【0014】
以下、各層について説明する。
【0015】
(基材シート)
基材シートとしては限定的ではないが、樹脂成分としてポリオレフィン系樹脂を含む基材シートが好ましい。実質的には、ポリオレフィン系樹脂からなるシートを用いる。
【0016】
ポリオレフィン系樹脂としては特に限定されず、化粧シートの分野で通常用いられているものが使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの中でも、特にポリプロピレン、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等が好ましい。
【0017】
ポリプロピレンを主成分とする単独重合体又は共重合体も好ましく、例えば、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、及び、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィンが挙げられる。その他、エチレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1又はオクテン−1のコモノマーを15モル%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体等も好ましい。
【0018】
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントにアイソタクチックポリプロピレン、ソフトセグメントにアタクチックポリプロピレンを重量比80:20で混合したものが好ましい。
【0019】
ポリオレフィン系樹脂は、例えば、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等によりフィルム状にすればよい。
【0020】
基材シートの厚みは特に限定されず、製品特性に応じて設定できるが、通常40〜150μm、好ましくは50〜100μm程度である。
【0021】
基材シートには、必要に応じて、添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、着色剤(下記参照)などが挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
【0022】
着色剤としては特に限定されず、顔料、染料等の公知の着色剤を使用できる。例えば、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料;イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラック等の有機顔料(染料も含む);アルミニウム、真鍮等の金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料などが挙げられる。
【0023】
基材シートの片面又は両面には、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理等の表面処理を施してもよい。例えば、コロナ放電処理を行う場合には、基材シート表面の表面張力が30dyne以上、好ましくは40dyne以上となるようにすればよい。表面処理は、各処理の常法に従って行えばよい。
【0024】
基材シートの片面又は両面には、必要に応じて、プライマー層(例えば、バッカー層の接着を容易とするための裏面プライマー層、光輝性着色層の形成を容易とするためのプライマー層)を設けてもよい。
【0025】
プライマー層は、公知のプライマー剤を基材シートの片面又は両面に塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、ウレタン−セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー剤等が挙げられる。
【0026】
プライマー剤の塗布量は特に限定されないが、通常0.1〜100g/m、好ましくは0.1〜50g/m程度である。
【0027】
プライマー層の厚みは特に限定されないが、通常0.01〜10μm、好ましくは0.1〜1μm程度である。
【0028】
(バッカー層)
基材シートの裏面には、バッカー層として厚さ100μm以上の厚手の合成樹脂層を積層してもよい。このようなバッカー層を積層することにより、化粧シートを被着材(特に木質合板)と貼着して化粧材とする場合に、被着材表面に不可避的に存在する凹凸の影響を緩和することができる。特に床用化粧シートとして用いる場合には、バッカー層は化粧シートにクッション性を付与する層にもなる。
【0029】
バッカー層を形成する合成樹脂としては限定的ではないが、熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリメチレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合体、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアミド、ABS等が挙げられる。
【0030】
バッカー層は、例えば、上記熱可塑性樹脂を、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等によって形成する。また既成のフィルムを用いてもよい。
【0031】
バッカー層を溶融樹脂の押出し成形によって形成する際は、例えば、Tダイを用いた押出し成形が好適に利用できる。また、合成樹脂製バッカー層が多層である場合には、例えば、マルチマニホールドタイプやフィードブロックタイプのTダイを用いることにより、多層同時押出しを行えばよい。バッカー層を多層とする場合は、例えば、基材シートの裏面と最も近い層を易接着樹脂層とすることが好ましい。この様な改良は、例えば、易接着樹脂層とする層に公知の熱可塑性エラストマーを配合することによって達成できる。熱可塑性エラストマーの種類は特に限定されず、バッカー層を構成する樹脂と相溶性が高く、基材シートとの密着性改善に寄与し得るものの中から広く選択できる。
【0032】
なお、押し出し成形によって形成したバッカー層が熱融着によるだけでは基材シート裏面と密着し難い場合には、必要に応じて、密着性を高めるために接着剤層を介してもよい。
【0033】
バッカー層の厚さは100μm以上であればよいが、150〜600μm程度が好ましく、250〜400μm程度がより好ましい。合成樹脂製バッカー層は、その引張り弾性率が1000MPa以上であれば好ましく、1500MPa以上であれば好ましい。引張り弾性率の上限は特に限定的ではないが、2500MPa程度とすればよい。
【0034】
(光輝性着色層)
基材シートの上(おもて面)には、光輝性着色層が形成されている。このような光輝性着色層は、例えば、公知の光輝性着色剤(光輝性顔料等)を結着材樹脂とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)させて得られる着色インキ、コーティング剤等を用いた印刷法などにより形成すればよい。
【0035】
光輝性着色剤としては、例えば、次のものが挙げられる。
(イ)パール顔料:具体的には、貝殻の内側の部分や真珠を粉砕したもの;マイカ;マイカの微粒子にTiOや酸化鉄を焼き付けたもの、
(ロ)金属粉:具体的には、銅、アルミニウム、真ちゅう、青銅、金、銀等の微粒子(好ましくは1〜120μの微粒子)、
(ハ)蒸着されたプラスチックフィルムの砕片:具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルムに上記金属(通常はアルミニウム)を蒸着、粉砕したもの(銀色粉);蒸着後に透明な黄色塗装を行って粉砕したもの(金色粉)。
【0036】
結着材樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0037】
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤等が挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0038】
光輝性着色層は、基材シート上に全面ベタ状に設ければよい。例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種コーティング法によって形成する。光輝性着色層の厚さは限定的ではないが、塗工時の層厚は1〜50μm程度、乾燥後の層厚は0.1〜20μm程度である。
【0039】
光輝性着色層は、エンボス加工により賦型された凹凸模様を有している。かかる凹凸模様を有することにより、後述する絵柄模様層が描出する絵柄模様が化粧シートに天然物に近い材質感、立体感、塗装感等を付与する。
【0040】
エンボス加工により賦型された凹凸模様は、凹部と凸部の高さの差(高低差)が5〜100μm程度であることが好ましく、20〜50μm程度がより好ましい。かかる高低差を有する凹凸模様を賦型する場合には、光輝性着色層は光の乱反射を生じさせ易い。また、凹凸模様は、絵柄模様層が呈する絵柄模様と同調するように設けられることが好ましい。
【0041】
エンボス加工は、化粧シートの中で少なくとも光輝性着色層に設けられていればよい。つまり、化粧シートの製造過程において、光輝性着色層に対してエンボス加工を施せばよいが、他の層を介してエンボス加工を施すことによって間接的に光輝性着色層にエンボス加工による凹凸模様を賦型してもよい。例えば、光輝性着色層の上に後述する絵柄模様層を設けた後、絵柄模様層のおもて面からエンボス加工が施されていてもよい。また、基材シートの裏面からエンボス加工が施されていてもよい。また、絵柄模様層の上に後述する透明性接着剤層を介して透明性樹脂層(特に下段透明性樹脂層)を形成後、当該樹脂層のおもて面からエンボス加工が施されていてもよい。
【0042】
エンボス加工方法は特に限定されず、例えば、絵柄模様層のおもて面を加熱軟化させてエンボス版により加圧・賦形後、冷却する方法が好ましい方法として挙げられる。エンボス加工には、公知の枚葉式又は輪転式のエンボス機が用いられる。凹凸形状としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
【0043】
(絵柄模様層)
光輝性着色層の上には、絵柄模様層が形成されている。
【0044】
絵柄模様層は、化粧シートに所望の絵柄による意匠性を付与するものであり、絵柄の種類等は特に限定的ではない。例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
【0045】
絵柄模様層の形成方法は特に限定されず、例えば、公知の着色剤(染料又は顔料)を結着材樹脂とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)させて得られる着色インキ、コーティング剤等を用いた印刷法などにより形成すればよい。
【0046】
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの着色剤には、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等がさらに配合してもよい。
【0047】
結着材樹脂や溶剤(又は分散媒)の説明については、前記と同じである。
【0048】
絵柄模様層の形成に用いる印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。その他、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法、エッチング法等を用いたり、他の形成方法と組み合わせて用いたりしてもよい。
【0049】
絵柄模様層の厚みは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、塗工時の層厚は1〜15μm程度、乾燥後の層厚は0.1〜10μm程度である。
【0050】
(透明性接着剤層)
絵柄模様層の上には、透明性接着剤層が形成されている。透明性接着剤層は、透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。透明性接着剤層は、絵柄模様層と透明性樹脂層とを接着するために形成されている。
【0051】
接着剤としては特に限定されず、化粧シートの分野で公知の接着剤が使用できる。
【0052】
化粧シートの分野で公知の接着剤としては、例えば、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂等の硬化性樹脂等が挙げられる。また、イソシアネートを硬化剤とする二液硬化型ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂も適用し得る。
【0053】
接着剤層は、例えば、接着剤を絵柄模様層の上に塗布し、透明性樹脂層を構成する塗工剤(接着剤)を塗工後、乾燥・硬化させることにより形成できる。乾燥温度・乾燥時間等の条件は特に限定されず、接着剤の種類に応じて適宜設定すればよい。接着剤の塗布方法は特に限定されず、例えば、ロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムースコート、コンマコート等の方法が採用できる。
【0054】
接着剤層の厚みは特に限定されないが、乾燥後の厚みが0.1〜30μm、好ましくは1〜20μm程度である。
【0055】
(透明性樹脂層)
透明性接着剤層の上には、厚さ80〜500μmの透明性樹脂層が形成されている。当該厚さ(好ましくは150〜400μm、より好ましくは200〜400μm)の範囲であれば、化粧シートは優れた耐傷性を確保し易い。透明性樹脂層は、透明性である限り、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。
【0056】
透明性樹脂層に含まれる樹脂成分は限定的ではないが、熱可塑性樹脂であれば好ましく、特にポリプロピレンが好ましい。
【0057】
透明性樹脂層は、その引張り弾性率が600MPa以上であれば好ましく、1000MPa以上であれば好ましい。引張り弾性率の上限は特に限定的ではないが、2000MPa程度とすればよい。
【0058】
透明性樹脂層は、例えば、ポリプロピレン系樹脂を、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等により形成する。また既成のフィルムを用いてもよい。
【0059】
透明性樹脂層は、1層でもよく、2層以上の積層体でもよい。例えば、2層から構成する場合には、上段透明性樹脂層と下段透明性樹脂層の積層体とする。このとき、上記エンボス加工は、前記の通り、下段透明性樹脂層を積層後(上段透明性樹脂層を積層前)に下段透明性樹脂層のおもて面から施してもよい。2層構成の場合には、下層の厚さは30〜100μm程度が好ましく、上段の厚さは30〜400μm程度が好ましい。
【0060】
透明性樹脂層の表面であって、後記する透明性表面保護層を形成する面には、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理等の表面処理を施してもよい。表面処理は、各処理の常法に従って行えばよい。
【0061】
また、必要に応じて、透明性樹脂層の表面にプライマー層(表面保護層の形成を容易とするためのプライマー層)を設けてもよい。プライマー層の材質や厚さは、基材シートに設けるプライマー層と同様である。
【0062】
(透明性表面保護層)
透明性樹脂層の上には、透明性表面保護層が形成されている。透明性表面保護層は限定的ではないが、樹脂成分として電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂を含有することが好ましい。実質的には、これらの樹脂から形成されているものが好ましい。電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂により透明性表面保護層を形成する場合には、化粧シートの耐摩性、耐衝撃性、耐汚染性、耐擦傷性、耐候性等を高め易い。
【0063】
電離放射線硬化型樹脂としては特に限定されず、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂が使用できる。これらのプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数を混合して使用できる。硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。
【0064】
具体的には、前記プレポリマー又はモノマーとしては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物が挙げられる。また、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましい。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。
【0065】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの分子量としては、通常250〜100000程度が好ましい。
【0066】
ラジカル重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、単官能モノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、多官能モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0067】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーが挙げられる。また、チオールとしては、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールが挙げられる。ポリエンとしては、例えば、ジオール及びジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したものが挙げられる。
【0068】
電離放射線硬化型樹脂を硬化させるために用いる電離放射線としては、電離放射線硬化型樹脂(組成物)中の分子を硬化反応させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子が用いられる。通常は紫外線又は電子線を用いればよいが、可視光線、X線、イオン線等を用いてもよい。
【0069】
紫外線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用できる。紫外線の波長としては、通常190〜380nmが好ましい。
【0070】
電子線源としては、例えば、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が使用できる。その中でも、特に100〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーをもつ電子を照射できるものが好ましい。
【0071】
2液硬化型ウレタン系樹脂としては特に限定されないが、中でも主剤としてOH基を有するポリオール成分(アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール等)と、硬化剤成分であるイソシアネート成分(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート等)とを含むものが使用できる。
【0072】
透明性表面保護層は、必要に応じて、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤等を含んでもよい。
【0073】
透明性表面保護層は、例えば、透明性ポリプロピレン系樹脂層の上に電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂をグラビアコート、ロールコート等の公知の塗工法により塗工後、樹脂を硬化させることにより形成できる。電離放射線硬化型樹脂の場合には、電子線照射により樹脂硬化する。
【0074】
透明性表面保護層の厚さは特に限定されず、最終製品の特性に応じて適宜設定できるが、通常0.1〜50μm、好ましくは1〜20μm程度である。
【0075】
透明性表面保護層のおもて面には、エンボス加工による凹凸模様が形成されてもよい。このエンボス加工は、上記光輝性着色層に達するエンボス加工とは異なる。つまり、化粧シートの表面に意匠として施される凹凸模様である。凹凸模様の種類は前記と同様であり、ここでも凹凸模様は絵柄模様と同調して形成されることが好ましい。
【0076】
化粧材
本発明の化粧シートは、各種被着材と接合することにより化粧材となる。被着材の材質は特に限定されず、例えば、無機非金属系、金属系、木質系、プラスチック系等の材質が挙げられる。
【0077】
具体的には、無機非金属系では、例えば、抄造セメント、押出しセメント、スラグセメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、GRC(ガラス繊維強化コンクリート)、パルプセメント、木片セメント、石綿セメント、硅酸カルシウム、石膏、石膏スラグ等の非陶磁器窯業系材料、土器、陶器、磁器、セッ器、硝子、琺瑯等のセラミックス材料などが挙げられる。
【0078】
金属系では、例えば、鉄、アルミニウム、銅等の金属材料(金属鋼板)が挙げられる。
【0079】
木質系では、例えば、杉、檜、樫、ラワン、チーク等からなる単板、合板、パーティクルボード、繊維板、集成材等が挙げられる。
【0080】
プラスチック系では、例えば、ポリプロピレン、ABS樹脂、フェノール樹脂等の樹脂材料が挙げられる。
【0081】
このような被着体の形状は特に限定されず、用途に応じて適宜設定できる。
【発明の効果】
【0082】
本発明の化粧シートは、特に光輝性着色層を有し、且つ、その光輝性着色層がエンボス加工により賦型された凹凸模様を有することにより、その上に形成される絵柄模様に材質感や立体感が与えられる。絵柄模様層に透明性樹脂層を積層後も、光輝性着色層による光の乱反射によって当該凹凸の視認性は殆ど失われないため、絵柄模様の材質感や立体感は効果的に持続する。つまり、上記化粧シートは、天然物に近い材質感(例えば、天然の木肌感、本杢感)や立体感を有する。また、上記光輝性着色層、絵柄模様層及び透明性樹脂層の相乗効果によって塗装感(塗料の厚塗り感)も得られる。
【発明を実施するための形態】
【0083】
以下に実験例を示し、本発明をより具体的に説明する。
【0084】
実施例1
(化粧シートの作製)
0.06mm厚の着色ポリプロピレン(基材シート)を用意した。
【0085】
基材シートのおもて面にパール顔料を含有するインキ((株)昭和インク工業所製)をベタ塗りすることにより2μmの光輝性着色層を形成した。なお、パール顔料の粒子径は10〜50μmの範囲内であり、インキ中のパール顔料の含有量は約15重量%であった。
【0086】
次いで、光輝性着色層上に木肌模様の絵柄模様層(2μm)を印刷により形成した。
【0087】
次いで、絵柄模様層の上に0.06mm厚の透明性ポリプロピレン系樹脂フィルム(下段透明性樹脂層)を、ウレタン系ドライラミネート用接着剤により接着した。なお、透明性接着剤層の厚さは3μmであった。
【0088】
次いで、下段透明性樹脂層の上から、光輝性着色層の凹凸高低差が40μmとなるように、エンボス加工により凹凸模様を付与した。
【0089】
次いで、0.25mm厚の透明性ポリプロピレン系樹脂層(上段透明性樹脂層)を押出し同時ラミネートした。
【0090】
次いで、その上に電子線硬化型透明性表面保護層(15μm)を形成した。
(化粧材の作製)
作製した化粧シートの裏面に12mmラワン合板を貼着して化粧材を作製した。当該貼着にはウレタン変性エチレン−酢酸ビニル系エマルジョン接着剤(9g/尺wet)を利用した。
【0091】
実施例2
エンボス加工を基材シートの裏面から行った(光輝性着色層の凹凸高低差は40μm)以外は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0092】
比較例1
光輝性着色層に凹凸を付与しない以外は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0093】
比較例2
光輝性着色層を形成しない以外は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0094】
試験例1
実施例及び比較例で作製した化粧材の木肌感と塗装感を肉眼観察により評価した。
【0095】
評価基準は、次の通りとした。結果を下記表1に示す。
<木肌感>
○:化粧板の角度を変えた場合に、本杢のような凹凸及び照りの移動が認められる
×:化粧板の角度を変えた場合に、本杢のような凹凸及び照りの移動が認められない
<塗装感>
○:塗装を厚く施した場合のような深み(厚み)が認められる
×:塗装を厚く施した場合のような深み(厚み)が認められる
【0096】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シート上に、光輝性着色層、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性樹脂層及び透明性表面保護層を順に有し、少なくとも前記光輝性着色層はエンボス加工により賦型された凹凸模様を有する化粧シートであって、
前記エンボス加工は、凹凸模様が前記光輝性着色層にまで達するように、前記基材シートの裏面から施されている、
ことを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
凹凸模様は、凹部と凸部の高さの差が5〜100μmの範囲である、請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
絵柄模様層が描出する絵柄模様とエンボス加工により賦型された凹凸模様とが同調している、請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項4】
基材シートの裏面に、厚さ100μm以上の合成樹脂層が更に積層されている、請求項1〜3のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の化粧シートと被着材を貼着してなる化粧材。

【公開番号】特開2012−192743(P2012−192743A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−124378(P2012−124378)
【出願日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【分割の表示】特願2006−263283(P2006−263283)の分割
【原出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】