説明

化粧ボード及び化粧ボードの製造方法

【課題】 耐キャスター性、寸法安定性、耐クラック性、化粧シートの接着特性等の諸特性に優れた化粧ボード及びかかる化粧ボードの製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の化粧ボードは、ボード基材1の表面に熱硬化性樹脂層3を備え、最上層として化粧シート層4を有する化粧ボードA1であって、樹脂層3と化粧シート層4の間に多孔質シート層5を有し、樹脂層3の熱硬化性樹脂が多孔質シート層5に浸入すると共に、化粧シート層4を接着した接着剤6が多孔質シート層5に浸入して成るので、耐キャスター性(荷重耐性)、寸法安定性(耐水膨潤性)、耐クラック性(耐熱サイクル性)、化粧シートの接着特性等の諸特性に優れたものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧ボード及び化粧ボードの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ボード基材の表面に化粧シートを接着してなる化粧ボードとしては、ボード基材の表面に直接、突き板等の化粧シートを貼ったもの、または、ボード基材と化粧シートとの間にミディアムデンシティーファイバーボード(以下、MDFと表記する。)等のボード基材や化粧シートよりも硬い材料を介在せしめたもの等が一般によく知られている。
【0003】
上記ボード基材の表面に直接、突き板等の化粧シートを貼った化粧ボードでは、荷重に対する凹みが大きく、例えば、床材等の化粧ボードでは、その上にキャスター付きの椅子等、荷重が局部的にかかる場合、凹みが大きく、また、その荷重が長期間かかると化粧ボードの剥離等の破壊が起こる等の不具合があった。
【0004】
また、ボード基材と化粧シートとの間にMDFを介在せしめた化粧ボードでは、荷重に対する凹みは、上記したボード基材の表面に直接、突き板等の化粧シートを貼った化粧ボードよりも小さいが、乾燥・湿潤など含水率変化による寸法変化が大きく使用環境によっては化粧ボードが剥離する等の問題が生じる場合があった。
【0005】
化粧ボードの荷重耐性を向上させ、荷重に対する凹みを低減する方法としては上記したMDFを介在せしめる方法以外に、ボード基材と化粧シートとの間に例えば、紙にメラミン樹脂やジアリルフタレート樹脂を含浸した熱硬化性樹脂含浸シートや、ポリアルキレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等の熱可塑性樹脂層を介在せしめる方法(特許文献1、特許文献2、特許文献3等参照)が知られているが、突き板はエマルジョン系接着剤でしか接着できないため、熱硬化性樹脂含浸シートや熱可塑性樹脂層を介在せしめた場合には、突き板の接着ができない等の問題があった。
【特許文献1】特開平5−116106号公報
【特許文献2】特開平8−135140号公報
【特許文献3】特開2003−239517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記背景技術に鑑みて発明されたものであり、その課題は、耐キャスター性(荷重耐性)、寸法安定性(耐水膨潤性)、耐クラック性(耐熱サイクル性)、化粧シートの接着特性等の諸特性に優れた化粧ボード及びかかる化粧ボードの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明の化粧ボードにあっては、ボード基材の表面に熱硬化性樹脂層を備え、最上層として化粧シート層を接着して成る化粧ボードにおいて、前記樹脂層と前記化粧シート層の間に多孔質シート層を有し、樹脂層の熱硬化性樹脂が多孔質シート層に浸入すると共に、化粧シート層を接着した接着剤が多孔質シート層に浸入して成ることを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項2に係る発明の化粧ボードにあっては、ボード基材の表面に熱硬化性樹脂層を備え、最上層として化粧シート層を接着して成る化粧ボードにおいて、前記樹脂層と前記化粧シート層の間に多孔質シート層及び第二多孔質シート層を有し、樹脂層の熱硬化性樹脂が多孔質シート層に浸入すると共に、多孔質シート層と第二多孔質シート層を接着した接着剤が多孔質シート層に浸入して成ることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項4に係る発明の化粧ボードの製造方法にあっては、ボード基材の表面に、熱硬化性樹脂層、多孔質シー卜層を順次積層し、最上層として化粧シート層を積層して製造する化粧ボードの製造方法であって、下記の(A)、(B)の工程を備えることを特徴とする。(A)前記ボード基材の表面に前記熱硬化性樹脂層と前記多孔質シート層とを順次、積層し、加熱、加圧して積層体を得る工程。(B)積層体の表面に接着剤を塗工し、前記化粧シート層を接着する工程。
【0010】
また、請求項6に係る発明の化粧ボードの製造方法にあっては、ボード基材の表面に、熱硬化性樹脂層、多孔質シー卜層を順次積層し、最上層として化粧シート層を積層して製造する化粧ボードの製造方法であって、下記の(D)〜(F)の工程を備えることを特徴とする。(D)前記ボード基材の表面に前記熱硬化性樹脂層を積層し、加熱、加圧して積層体を得る工程。(E)積層体の表面に第一の接着剤を塗工し、前記多孔質シー卜層を接着する工程。(F)積層体の表面に第二の接着剤を塗工し、前記化粧シート層を接着する工程。
【発明の効果】
【0011】
本発明の化粧ボードは、樹脂層と化粧シート層の間に多孔質シート層を有し、樹脂層の熱硬化性樹脂が多孔質シート層に浸入すると共に、化粧シート層又は第二多孔質シート層を積層体に接着した接着剤が多孔質シート層に浸入して成るので、多孔質シート層と化粧シート層が強固に接着され、耐キャスター性(荷重耐性)、寸法安定性(耐水膨潤性)、耐クラック性(耐熱サイクル性)、化粧シートの接着特性等の諸特性に優れたものとなる。
【0012】
本発明の化粧ボードの製造方法は、ボード基材の表面に、熱硬化性樹脂層、多孔質シー卜層を順次積層し、最上層として化粧シート層を有する化粧ボードの製造方法であって、上記の(A)、(B)の工程を備えるもの、或いは、上記の(D)〜(F)の工程を備えるものであるので、耐キャスター性(荷重耐性)、寸法安定性(耐水膨潤性)、耐クラック性(耐熱サイクル性)、化粧シートの接着特性等の諸特性に優れた化粧ボードが得られることとなる。
【0013】
さらに、かかる製造方法によって得られた化粧シートは、耐キャスター性(荷重耐性)、寸法安定性(耐水膨潤性)、耐クラック性(耐熱サイクル性)、化粧シートの接着特性等の諸特性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を実施例を交えて説明する。なお、本発明の化粧ボード、本発明の化粧ボードの製造方法、及び、かかる製造方法で製造された化粧ボードは、下記の実施形態或いは実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0015】
すなわち、上記したように、化粧ボードの荷重耐性を向上させるための方策の一つとしてボード基材と化粧シートとの間に熱可塑性樹脂層を介在せしめる方法(特許文献3等参照)が知られているが、この場合、エマルジョン系接着剤でしか接着できない突き板の接着ができない等、化粧シートの接着に制約があった。一方、本願出願人は、ボード基材と化粧シートとの間に熱硬化性樹脂含浸シートを介在せしめた化粧ボードの開発、研究に従前より着手しており(特許文献1等参照)、熱硬化性樹脂含浸シートが介在することにより、耐キャスター性、耐衝撃性、耐水性等が向上し得ることを見出している。
【0016】
本願出願人は、かかる知見を基礎として、熱硬化性樹脂含浸シートが含有する熱硬化性樹脂と熱溶融時の親和性が高く、また、表層である化粧シート(突き板)の接着に使用可能な接着剤とも親和性が高い多孔質シート(特に、紙、不織布、単板、木質材料等のセルロース系のもの)を、化粧シートと熱硬化性樹脂含浸シートとの間にさらに介在させることにより、上記化粧シートの接着特性上の制約をも解決し、課題を解決したものである。
【0017】
すなわち、本発明の化粧ボードは、例えば、ボード基材の表面に、熱硬化性樹脂層である熱硬化性樹脂含浸シートと、多孔質シートとを順次、積層配置し、加熱、加圧することにより多孔質シートの層に浸入した熱硬化性樹脂によって、或いは、熱硬化性樹脂層の表面に別途、塗工した接着剤によって熱硬化性樹脂含浸シートと多孔質シートとを一体化した後、その表面に接着剤を塗工し、化粧シートを接着するというものである。
【実施例】
【0018】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。ここで、図1は、本発明の第1の実施例に係る化粧ボードの製造工程を示す概略断面図である。また、図2は、本発明の第2の実施例に係る化粧ボードの製造工程を示す概略断面図である。さらに、図3は、本発明の第3の実施例に係る化粧ボードの製造工程を示す概略断面図である。一方、図4、図5は、従来例に係る化粧ボードの構成を示す概略断面図である。
【0019】
(実施例1)
ボード基材1に合板(11.8mm厚さ×1840mm長さ×945mm幅)1aを使用し、その上に、熱硬化性樹脂であるジアリルフタレート(以下DAPと表記)樹脂150g/m2と面重量80g/m2の紙からなる熱硬化性樹脂含浸シート3aを積層配置し、更にその上に多孔質シート5として目付100g/m2の紙5aを積層配置し、190℃に設定したプレス機によリ10kgf/cm2で45秒間加圧し一体化した(図1(a)参照)。この一体化したボード基材1の表面(紙5aの表面)には、熱硬化性樹脂含浸シート3a中の熱硬化性樹脂は滲み出しておらず、紙5aの下面側にのみ熱硬化性樹脂が浸入していることが確認された。
【0020】
この一体化したボード基材1を幅313mmに切断後、接着剤6として、SBRエマルジョン及びメラミンエマルジョンの混合物である接着剤6aを紙5aの上面に80g/m2塗工し、化粧シート4として含水率50%程度の厚さ0.2mmの突き板4aを7kgf/cm2の圧力にて120℃、40秒圧締し、化粧ボードA1を得た(図1(b)参照)。
【0021】
なお、得られた化粧ボードA1は、ボード基材1の表面2に熱硬化性樹脂層3[熱硬化性樹脂含浸シート3a]を備え、最上層として化粧シート層4を接着してなる化粧ボードであって、樹脂層3(3a)と化粧シート層4の間に多孔質シート層5を有し、化粧シート層4がエマルジョン系接着剤で接着して成るものである。また、製造方法に着目すると、ボード基材1の表面2に、熱硬化性樹脂層3a、多孔質シー卜層5を順次積層し、最上層として化粧シート層4を積層して製造る化粧ボードの製造方法であって、下記の(A)、(B)の工程を備えることを特徴とするものである。
(A)ボード基材1の表面2に熱硬化性樹脂層[熱硬化性樹脂含浸シート3a]と多孔質シート層5とを順次、積層し、加熱、加圧して積層体を得る工程。
(B)積層体の表面に化粧シート層に対して接着性を有する接着剤6を塗工し、化粧シート層[化粧シート4]を接着する工程。
【0022】
(実施例2)
ボード基材1に合板(11.8mm厚さ×1840mm長さ×945mm幅)1aを使用し、その上に熱硬化性樹脂であるDAP樹脂150g/m2と面重量80g/m2の紙からなる熱硬化性樹脂含浸シート3aを積層配置し、更に、その上に多孔質シート5である面重量75g/m2の紙5aを積層配置し、190℃に設定したプレス機によリ10kgf/cm2で45秒間、加圧し、一体化した(図2(a)参照)。この一体化したボード基材1の表面(紙5aの表面)には、熱硬化性樹脂含浸シート3a中の熱硬化性樹脂は滲み出しておらず、紙5aの下面側にのみ熱硬化性樹脂が浸入していることが確認された。
【0023】
この一体化したボード基材1を幅313mmに切断後、SBRエマルジョン及びメラミンエマルジョンの混合物である接着剤6aを紙5aの上面に100g/m2塗エし、第二多孔質シート層5’である面重量30g/m2の紙5aを積層配置し、さらに、SBRエマルジョン及びメラミンエマルジョンの混合物である接着剤6aを80g/m2塗工し、化粧シート4として含水率50%程度の厚さ0.2mmの突き板4aを7kg/cm2の圧力にて120℃、40秒圧締し、化粧ボードA2を得た(図2(b)参照)。
【0024】
なお、得られた化粧ボードA2は、ボード基材1の表面2に熱硬化性樹脂層3[熱硬化性樹脂含浸シート3a]を備え、最上層として化粧シート層4を有する化粧ボードであって、樹脂層3(3a)と化粧シート層4の間に多孔質シート層5を有するものであり、且つ、前記多孔質シート層5と化粧シート層4との間に第二多孔質シート層5’を有するものであり、第二多孔質シート層5’と化粧シート層4がエマルジョン系接着剤で接着して成るものである。また、製造方法に着目すると、ボード基材1の表面2に、熱硬化性樹脂層3a、多孔質シー卜層5を順次積層し、最上層として化粧シート層4を積層して製造する化粧ボードの製造方法であって、下記の(A)、(B)の工程を備え、且つ、(A)の工程の後、(B)の工程の前に、下記の(C)の工程を備えることを特徴とするものである。
(A)ボード基材1の表面2に熱硬化性樹脂層[熱硬化性樹脂含浸シート3a]と多孔質シート層5とを順次、積層し、加熱、加圧して積層体を得る工程。
(C)積層体の表面に接着剤6を塗工し、第二多孔質シート層5’を接着する工程。
(B)積層体の表面に化粧シート層に対して接着性を有する接着剤6を塗工し、化粧シート層[化粧シート4]を接着する工程。
【0025】
(実施例3)
ボード基材1に合板(11.8mm厚さ×1840mm長さ×945mm幅)1aを使用し、その上に熱硬化性樹脂であるDAP樹脂150g/m2と面重量80g/m2の紙からなる熱硬化性樹脂含浸シート3aを積層配置し、190℃に設定したプレス機により10kgf/cm2で45秒間加圧し一体化した(図3(a)参照)。
【0026】
この一体化したボード基材1を幅313mmに切断後、DAP樹脂に対して接着性を有するポリウレタン(接着剤6b、第一の接着剤)を120℃で50g/m2塗工し、多孔質シート5である面重量30g/m2の紙5aを接着させ、さらに、SBRエマルジョン及びメラミンエマルジョンの混合物である接着剤6a(第二の接着剤)を80g/m2塗工し、化粧シート4として含水率50%程度の厚さ0.2mmの突き板4aを7kgf/cm2の圧力にて120℃、40秒圧締し、化粧ボードA3を得た(図3(b)参照)。
【0027】
なお、得られた化粧ボードA3は、ボード基材1の表面2に熱硬化性樹脂層3[熱硬化性樹脂含浸シート3a]を備え、最上層として化粧シート層4を有する化粧ボードであって、樹脂層3(3a)と化粧シート層4の間に多孔質シート層5を有するものである。製造方法に着目すると、ボード基材1の表面2に、熱硬化性樹脂層3a、多孔質シー卜層5を順次積層し、最上層として化粧シート層4を積層して製造する化粧ボードの製造方法であって、下記の(D)〜(F)の工程を備えることを特徴とするものである。
(D)ボード基材1の表面2に熱硬化性樹脂層[熱硬化性樹脂含浸シート(層)3a]を積層し、加熱、加圧して積層体を得る工程。
(E)積層体の表面に熱硬化性樹脂層に対して接着性を有する第一の接着剤6を塗工し、多孔質シー卜層[多孔質シー卜5]を接着する工程。
(F)積層体の表面に化粧シート層に対して接着性を有する第二の接着剤6を塗工し、化粧シート層[化粧シート4]を接着する工程。
【0028】
(性能評価)
以上のように作製した上記実施例1〜実施例3の試料(化粧ボードA1〜化粧ボードA3)について、ボード基材1である合板(11.8mm厚さ)1aと化粧シート4〔突き板(0.2mm厚さ)4a〕をSBRエマルジョン及びメラミンエマルジョンの混合物である接着剤6aにて接着してなる化粧ボードB[従来例1(図4参照)]及び、合板(9.1mm厚さ)1aとMDF(2.7mm厚さ)7を接着剤6cであるビニルウレタンにて貼りあわせ、MDF7と化粧シート4〔突き板(0.2mm厚さ)4a〕とをSBRエマルジョン及びメラミンエマルジョンの混合物である接着剤6aにてにて貼りあわせてなる化粧ボードC[従来例2(図5参照)]と比較することにより、耐キャスター性(荷重耐性)、寸法安定性(耐水膨潤性)、耐クラック性(耐熱サイクル性)の性能評価を以下のように実施した。
<耐キャスター性試験>
25kgの荷重を金属性キャスター(φ:50mm)に載荷し、2000回同一箇所を走行させ、その際の凹み量を計測した。
<寸法安定性試験>
室内温度40℃、湿度90%の環境下に置き、平衡状態になった際の寸法変化量を計測した。
<耐クラック性試験>
特殊合板に関する日本農林規格の寒熱繰り返しB試験を10回繰り返した後のクラック数を測定した。
【0029】
以上の各実施例、及び、各従来例の性能評価結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
表1に示すように、従来例の化粧ボードは、耐キャスター性能と寸法安定性能の一方が多少劣ると共に、耐クラック性能が大きく劣るのに対し、本発明の化粧ボード(実施例1〜実施例3)は、耐クラック性能、耐キャスター性能、寸法安定性能ともに優れており、その効果を確認することができた。
【0032】
すなわち、実施例1で得られた化粧ボードA1は、ボード基材1と化粧シート4との間に熱硬化性樹脂含浸シート3aを具備するので、耐キャスター性(荷重耐性)に優れることとなる。また、硬化後の熱硬化性樹脂含浸シート3aは水分に対する寸法安定性が良く、使用環境による化粧シート4の剥離、クラック等が発生し難いという特長を有する。
【0033】
さらに、化粧シート4と熱硬化性樹脂含浸シート3aとの間に多孔質シー卜層5である紙5aを具備し、熱硬化性樹脂含浸シート3aの熱硬化性樹脂が多孔質シート層5に浸入すると共に、化粧シート4を接着した接着剤が多孔質シート層5に浸入して成るので、熱硬化性樹脂含浸シート3aと多孔質シート層5の間、及び多孔質シート層5と化粧シート4の間が強固に接着され、化粧シート4がエマルジョン系接着剤でしか接着できない突き板4aであっても、これを接着することができる。この結果、化粧ボードA1は、耐キャスター性(荷重耐性)、寸法安定性(耐水膨潤性)、耐クラック性(耐熱サイクル性)、化粧シート4の接着特性等の諸特性に優れたものとなる。
【0034】
また、実施例2で得られた化粧ボードA2は、ボード基材1と化粧シート4との間に熱硬化性樹脂含浸シート3aを具備するので、耐キャスター性(荷重耐性)に優れることとなる。また、硬化後の熱硬化性樹脂含浸シート3aは水分に対する寸法安定性が良く、使用環境による化粧シート4の剥離、クラック等が発生し難いという特長を有する。
【0035】
さらに、化粧シート4と熱硬化性樹脂含浸シート3aとの間に多孔質シー卜層5である紙5と、第二多孔質シー卜層5’である紙5aを具備し、熱硬化性樹脂含浸シート3aの熱硬化性樹脂が多孔質シート層5に浸入すると共に、多孔質シート層5と第二多孔質シート層5’を接着した接着剤が多孔質シート層5に浸入し、更に、化粧シート4を接着した接着剤が第二多孔質シート層5’に浸入して成るするので、化粧シート4が突き板4aであっても、これを接着することができる。この結果、化粧ボードA2は、耐キャスター性(荷重耐性)、寸法安定性(耐水膨潤性)、耐クラック性(耐熱サイクル性)、化粧シート4の接着特性等の諸特性に優れたものとなる。
【0036】
また、実施例3で得られた化粧ボードA3は、ボード基材1と化粧シート4との間に熱硬化性樹脂含浸シート3aを具備するので、耐キャスター性(荷重耐性)に優れることとなる。また、硬化後の熱硬化性樹脂含浸シート3aは水分に対する寸法安定性が良く、使用環境による化粧シート4の剥離、クラック等が発生し難いという特長を有する。
【0037】
さらに、化粧シート4と熱硬化性樹脂含浸シート3aとの間に多孔質シー卜層5である紙5aを具備し、熱硬化性樹脂含浸シート3aに対して接着性を有する第一の接着剤で、熱硬化性樹脂含浸シート3aと多孔質シー卜層5とが接着され、化粧シート4に対して接着性を有する第二の接着剤で、多孔質シー卜層5と化粧シート層4とが接着されて成るので、化粧シート4が突き板4aであっても、これを接着することができる。この結果、化粧ボードA3は、耐キャスター性(荷重耐性)、寸法安定性(耐水膨潤性)、耐クラック性(耐熱サイクル性)、化粧シート4の接着特性等の諸特性に優れたものとなる。
【0038】
なお、本発明の化粧ボード及び化粧ボードの製造方法は、上記実施形態或いは実施例のみに限定されるものではなく、例えば、多孔質シート層5として、撥水処理されていない目付20〜200g/m2の紙や、目付10〜100g/m2の紙二枚を10〜100μmのポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、アクリルにより接着し1枚のシートとしたものや、目付20〜200g/m2の紙に10〜100μmのポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、アクリルをコーティングしたものや、目付20〜200g/m2のポリエチレンテレフタレート不織布等を用いても良く、これらのシートに、直径0.5〜2mmの貫通孔を5〜100mmピッチ間隔で均等に配したものを用いても良い。
【0039】
また、ボード基材1としては、製材、MDF、パーティクルボード等の木質ボード、セメント板、ケイカル板、石膏ボード等の無機ボード、ポリエステル、アクリル等のプラスティックボード等を用いることができる。また、熱硬化性樹脂含浸シート3aに使用する熱硬化性樹脂としては、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、DAP樹脂や、これらの混合樹脂等を用いることができる。また、化粧シート4としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂シート、ポリプロピレン樹脂シート、塩化ビニル樹脂シート、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂シート、紙シート等を用いることができる、接着剤6としては、エマルジョン系、ホットメルト系、溶剤系のいずれかまたはこれらの混合物等を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施例に係る化粧ボードの製造工程を示す概略断面図である。
【図2】本発明の第2の実施例に係る化粧ボードの製造工程を示す概略断面図である。
【図3】本発明の第3の実施例に係る化粧ボードの製造工程を示す概略断面図である。
【図4】従来例に係る化粧ボードの構成を示す概略断面図である。
【図5】従来例に係る化粧ボードの構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ボード基材
2 表面(ボード基材1)
3 樹脂層
3a 熱硬化性樹脂層[熱硬化性樹脂含浸シート(層)]
4 化粧シート層[化粧シート]
5 多孔質シート層[多孔質シート]
5’ 多孔質シート層[多孔質シート]
6 接着剤
A 化粧ボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボード基材の表面に熱硬化性樹脂層を備え、最上層として化粧シート層を接着して成る化粧ボードにおいて、前記樹脂層と前記化粧シート層の間に多孔質シート層を有し、樹脂層の熱硬化性樹脂が多孔質シート層に浸入すると共に、化粧シート層を接着した接着剤が多孔質シート層に浸入して成ることを特徴とする化粧ボード。
【請求項2】
ボード基材の表面に熱硬化性樹脂層を備え、最上層として化粧シート層を接着して成る化粧ボードにおいて、前記樹脂層と前記化粧シート層の間に多孔質シート層及び第二多孔質シート層を有し、樹脂層の熱硬化性樹脂が多孔質シート層に浸入すると共に、多孔質シート層と第二多孔質シート層を接着した接着剤が多孔質シート層に浸入して成ることを特徴とする化粧ボード。
【請求項3】
前記多孔質シート層が、目付20〜200g/m2の紙または不織布であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の化粧ボード。
【請求項4】
ボード基材の表面に、熱硬化性樹脂層、多孔質シー卜層を順次積層し、最上層として化粧シート層を積層して製造する化粧ボードの製造方法であって、下記の(A)、(B)の工程を備えることを特徴とする化粧ボードの製造方法。
(A)前記ボード基材の表面に前記熱硬化性樹脂層と前記多孔質シート層とを順次、積層し、加熱、加圧して積層体を得る工程。
(B)積層体の表面に接着剤を塗工し、前記化粧シート層を接着する工程。
【請求項5】
前記(A)の工程の後、前記(B)の工程の前に、下記の(C)の工程を備えることを特徴とする請求項4記載の化粧ボードの製造方法。
(C)積層体の表面に接着剤を塗工し、第二多孔質シート層を接着する工程。
【請求項6】
ボード基材の表面に、熱硬化性樹脂層、多孔質シー卜層を順次積層し、最上層として化粧シート層を積層して製造する化粧ボードの製造方法であって、下記の(D)〜(F)の工程を備えることを特徴とする化粧ボードの製造方法。
(D)前記ボード基材の表面に前記熱硬化性樹脂層を積層し、加熱、加圧して積層体を得る工程。
(E)積層体の表面に第一の接着剤を塗工し、前記多孔質シー卜層を接着する工程。
(F)積層体の表面に第二の接着剤を塗工し、前記化粧シート層を接着する工程。
【請求項7】
前記多孔質シート層が、目付20〜200g/m2の紙または不織布であることを特徴とする請求項4から請求項6のいづれかに記載の化粧ボードの製造方法。
【請求項8】
請求項4から請求項7のいづれかに記載の化粧ボードの製造方法により製造されたことを特徴とする化粧ボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−116884(P2006−116884A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309078(P2004−309078)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】