説明

化粧品、特に毛髪のための複合栄養ベースの使用

本発明は、男性及び女性のための毛髪及び/または頭皮の非治療的処理に関し、少なくとも1画分のアミノ酸、1画分の水溶性ビタミン、微量元素と金属塩を含む1つの無機画分を含み、いずれかの細胞成長因子及び/または動物若しくは細胞由来のいずれかの追跡されない生物学的抽出物を排除する水性溶媒の複合栄養ベースを、頭皮の表面へ局所的に適用する工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、男性または女性における毛髪及び/または頭皮の処理に適した、エコ栄養ベースとも称される水性溶媒の複合栄養ベース(CNBと略す)、並びに毛髪化粧品の分野におけるその種々の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の文脈において、「複合栄養ベース」とは、水性溶媒中のいずれかの組成物または配合物を意味し、以下に記載されるように、いずれかの追跡されていない細胞成長因子、及び/または動物若しくは細胞由来のいずれかの抽出物を排除するという点において、並びに、細胞培養培地と比較すると、例えば少なくとも72時間の間、線維芽細胞等の生きた栄養基盤なしで、最初の継代の際に少なくとも1つのクローン増殖を有するヒト上皮ケラチン合成細胞のin vitro培養を、単独で生育可能にするという点において、細胞培養培地とは区別される。
【0003】
そのようなCNBは文献WO 96/21421に記載され、そこには、単独または他の成分と組み合わせた活性産物または賦形剤としてのそれらの使用が記載されている。
【0004】
本発明に従って考慮されるようなCNBは、その本来の組成物中にもその実施においても、細胞由来の成長因子、例えばEGF(上皮細胞成長因子)、及び/または動物若しくは細胞由来の生物学的抽出物を含まない。
【0005】
それらの性質によって、これらの抽出物は、時には十分に定義されていない生物学的由来の、ゆえに追跡できないまたは追跡されていない、変わりやすくまさに不確定の組成を有するだけでなく、いくつかの成分は、それらの正確な化学的さらには生化学的構造に関して不確定である。
【0006】
本発明に従って考慮されるようなCNBは、ウシ胎児血清(FCS)またはいずれかのウシ脳下垂体抽出物等の、追跡できないまたは追跡されていない生物学的抽出物を全く含まない。
【0007】
本発明の文脈において、「追跡」または「追跡可能」とは、それによって生物学的物質の供給源と処理法を確立でき、制御できる特徴を意味する。
【0008】
本発明に係るCNBは、例えば、追跡できるまたはできない、追跡されているまたはされていない、細胞の植物性または動物性の生物学的抽出物を全く含まない。
【0009】
本発明に係るCNBは、抗生物質等の医薬活性成分を全く含まない。
【0010】
そのようなCNBは、前記水性溶媒に加えて、それらのいくつかは必須であるアミノ酸画分を0.5 %未満、好ましくは0.35重量%未満、水溶性ビタミン画分を0.2 %未満、好ましくは0.015重量%未満、及び微量元素と金属塩を含む無機画分を5 %未満、好ましくは2重量%未満含み、当該組成物の残部は水が占める。
【0011】
好ましくは、本発明に係るCNBは、当該CNBの化学的組成が厳密に定義されるように、その構造が同定され、例えば命名または一覧にされるところの化学的、生化学的、及び生物学的構成要素を用いることによって、水性相で完全に配合される。
【0012】
本発明に係るCNBは、人間の操作によって生じ、従って、例えば生物学的、動物性または植物性物質の分画化によって得られるいずれかの天然及び/または生物学的抽出物としては処理できない。
【0013】
文献WO 96/21421によれば、そのような複合栄養ベースは、以下の表1に従って、例えば以下の組成を有する。
【表1】

【表2】

【0014】
砂糖生産業から出されているEP-A-0,383,467は、ふけを処理し、毛髪の減少を予防するための頭皮(または他の毛髪領域)への局所的適用によるモラセスのシロップの使用を記載している。
【0015】
モラセスシロップは、その正確な組成が不確定であるところの、またはその由来によって変化し得るところのサトウキビを用いた分画化または分離によって得られる天然の抽出物であり、当該シロップの全組成の少なくとも5%を示す高い容量の糖質、すなわちグルコース、スクロース、フルクトース、及びモノオリゴ糖を有する。
【0016】
FR-A-2,535,201は、特に毛嚢の栄養を助けることを目的とした化粧品組成物または製剤について記載している。この組成物の活性部分は本質的に、単離されたヒト上皮細胞のin vitro培養用のウシ胎児血清を補充した培地から構成される。
【0017】
前述のように、同様にウシ胎児血清を補充した細胞培養培地は本発明によって考慮されるようなCNBではない。
【0018】
FR-A-2,535,201によれば、当該皮膚を介した培養培地由来の栄養物質の移動を助けるために、当該化粧品組成物は、皮膚親和性媒体または支持体(例えばエチルアルコール、ポリアルコール、またはポリグリコールを含む)、乳化剤、及び局所的血管拡張剤の役割を果たす引赤薬剤を含む。
【0019】
そのような非「生態学的」媒体支持体は、本発明によって考慮されるようなCNBと矛盾するように思われ、それはヒトの身体の表面部の生物学的平衡を満たさないため本質的に水から構成される。
【0020】
US-C-5,597,575は、毛髪の再生を刺激するための局所的医薬組成物を記載し、それは、活性成分として、ビタミンD3(またはその活性代謝誘導体)等の1つ以上の脂溶性ビタミンを含み、好ましくは非荷電の無機微小粒子に固定されている。
【0021】
以下で試験される活性成分で、局所的血管拡張剤であるミノキシジルと同様に、この組成物の作用メカニズムは、頭皮へのビタミンD3により引き起こされる刺激の結果生じる。なぜなら、真皮乳頭の血管新生を増大させることは、毛嚢の間質の細胞へ栄養分を供給するのを助けるため、この刺激は表面の血管拡張を引き起こし、毛幹の成長を刺激する。
【0022】
しかしながら、当該活性成分の刺激作用によって産生されるそのような血管拡張作用は、美容処理において非許容である僅かな局所的炎症を常に伴う。
【特許文献1】WO 96/21421
【特許文献2】EP-A-0,383,467
【特許文献3】FR-A-2,535,201
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
以前に同定された先行技術の解決策の欠点を改善することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
概して、毛嚢または毛幹の間質(毛嚢の真皮乳頭の上に位置する毛幹の成長領域)のケラチン合成細胞の栄養需要に明確に反応するために、前に定義されたようなCNBを採用することが、本発明の目的である。
【0025】
とりわけ、それによって採用されたベースの局所的適用のため、本発明の目的は、真皮乳頭の血管新生を増大し、嚢間質の細胞への栄養分の供給を単独で助けるいずれかの血管拡張作用の排除のための、男性または女性における毛髪及び/または頭皮の美容処理であり、それは、当該CNBを頭皮または毛髪に接触させることのみによって作用し、また、頭皮のマッサージ等のいずれかの機械的作用に加えてまたは独立して生じ、毛根の血液洗浄または嚢の血管新生、及び従って毛幹の成長を助ける。
【0026】
本発明のさらなる目的は、いずれかの他の皮膚活動の排除のための、毛髪及び/または頭皮の非治療的処理であり、それは、毛髪の増加を助け、毛髪の減少を安定化する。
【0027】
第一に、本発明は、水性溶媒の複合栄養ベースに関し、それは、いずれかの追跡されていない細胞成長因子、及び/または動物若しくは細胞由来のいずれかの生物学的抽出物を排除するという点において、並びに、細胞培養培地と比較すると、生きた栄養基盤なしで、最初の継代の際にヒト上皮ケラチン合成細胞の少なくとも1つのクローン増殖を有する前記ケラチン合成細胞の種菌の成育可能なin vitro培養を、本質的に可能にするという点において、細胞培養培地とは区別され、前記ベースは、当該水性溶媒に加えて、アミノ酸画分を0.5 %未満、好ましくは0.35重量%未満、水溶性ビタミン画分を0.2 %未満、好ましくは0.015 %未満、及び微量元素と金属塩を含む無機画分を5重量%未満、好ましくは2重量%未満含む。本発明によれば、前記ベースは、十分な総重量濃度の含硫アミノ酸を含み、標準的なin vitro条件において、男性または女性における毛髪の毛幹のケラチンの合成の増大を可能にする。
【0028】
そのようなCNBは、さらに以下の性質:
−含硫アミノ酸の総重量濃度が104mg/L以下である;
−含硫アミノ酸を含むアミノ酸の総重量濃度が0.25と0.35%の間、例えば約0.326%に等しい;
−前記ビタミン画分の重量濃度が0.005と0.011%の間である;
−微量元素と金属塩を含む無機成分の重量濃度が1.25と1.35%の間、例えば1.347-1.348重量%に等しい;
−グルコース濃度が0.1%と0.6%の間、例えば0.45%と0.6%の間である;
−L-ヒドロキシプロリン濃度が0.003%と0.01%の間、例えば0.003%と0.01%の間である;
−アスコルビン酸組成が0.00001%と0.001%の間、例えば0.0001%と0.001%の間である;
−以下の化合物、すなわちアデノシン、グアニン、デオキシリボース、及びリボースの各濃度が0.000001%と0.0001%の間、例えば0.00001%と0.0001%の間である;
−美容的に活性のある量の少なくとも1つのタイプI 5α-リダクターゼ酵素インヒビターを含む;
−前記タイプI 5α-リダクターゼ酵素インヒビターが、亜鉛塩、例えば硫酸亜鉛、及び/またはビタミンB6を含む;
−前記複合栄養ベースは、総量が0と22.05mg/Lの間、好ましくは5と15mg/Lの間であるカルシウムを含む;
−前記複合栄養ベースは、0.01と1重量%の間の濃度で、例えばミルクから抽出されたペプチドを含む;
−当該水性相のpHが、7.4と7.5の間に調整されている;
−当該水性相の浸透圧が、高くても300と350μOsmの間に調整されている;
の少なくとも1つを含み、単独または組み合わせて考慮されて良い。
【0029】
従って、本発明の目的は、前に考慮されたように、男性または女性における毛髪及び/または頭皮の処理を含む種々の美容的適用のために、CNBを採用することである。
【0030】
第二に、本発明は、局所的使用のための、特に男性における毛髪及び/または頭皮の処理のための化粧品組成物に関し、前に定義したようなCNBを含む。
【0031】
第三に、本発明は、男性または女性における毛髪及び/または頭皮の非治療的処理に適した化粧品組成物を製造するまたは得るための、前に定義したようなCNBの使用に関しする。
【0032】
第四に、本発明は、男性または女性における毛髪及び/または頭皮の非治療的処理のための方法に関し、前に定義したようなCNBの頭皮表面への局所的適用を含むことを特徴とする。
【0033】
そのような方法は、成人、男性または女性における、雄性発生脱毛症を処理するのに役立つ。
【0034】
そのような方法は、毛幹の間質におけるケラチン合成細胞の増加を促進し、それによって毛髪の増加を助け、毛髪の減少を安定化するのに役立つ。従って、この方法は、穏やかな毛髪の減少の場合、特に雄性発生脱毛症の場合に推奨される。
【0035】
好ましくは、前記CNBは、処理された男性または女性の頭皮に毎日1回または2回適用される。
【0036】
いずれかの生成物、化合物、または物質の、あるいはそのいずれかの活性化粧品の量のタイプI 5α-リダクターゼ酵素阻害作用は、当該文献:
−D. Stamatiadis et al, “Inhibition of 5α-reductase activity, in human skin by zinc and azelaic acid”, British Journal of Dermatology(1988)119, 627-632(特にpp.628-629を参照)
を教えることによって特徴づけされ得、または特定され得る。
【0037】
この特徴づけの方法によれば、:
−用いられた物質は、1,2[3H]-テストステロン、[14C]-テストステロン、[14C]-ジヒドロテストステロン、[14C]-Δ4-アンドロステンジオン、[14C]-アンドロステンジオール、及びNADPH;
−当該5α-リダクターゼ酵素のin vitro供給源は、2から3ヶ月の年齢の子供の包皮を覆う皮膚のサンプルから構成される;
−この皮膚のホモジェネートを、次第に増加する濃度の[3H]-テストステロンとNADPH、及び阻害の候補生成物または物質の存在下でインキュベートし、 [14C]-ステロイドの添加後、代謝産物を分離し、テストステロンとΔ4-アンドロステンジオンの量を測定する。
【0038】
本発明に係り使用可能な天然ペプチド、または天然由来のペプチドに関して、動物由来のミルクから得られた画分または抽出物が用いられ、以下に「ミルクペプチド複合体」またはMPCとして言及され、例えば、西ドイツのCLR-Chemisches Laboratorium社により製造され販売されているWhey Protein extract(Lactis Proteinum)、番号:CAS 84082-51-9と番号:EINECS 281-998-7である。
【0039】
この抽出物は、例えば以下の分析データ:
pH 5.0-7.0
(水中に0.5%のMPC粉末)
乾燥度の減少(102℃で2時間) 2.0-6.0%
窒素(ケルダール) 1.4-1.9%
タンパク質(Sigma社製キットBCA-1) 11.0-16.0%
乳糖(Boehringer社製キット) 65.0-71.0%
乳酸(+)(Boehringer社製キット) 4.5-8.0%
灰(1000℃) 6.0-9.0%
残留脂肪 <0.5%
電気泳動(SDS-PAGE) 相当する
生物学的活性−50%有効濃度 50-500μg/mL
(移動テスト)
を有する。
【0040】
組成物(f)の性質に係り使用可能な当該含硫アミノ酸に関して、毛幹のケラチンの合成を増大させるためのそれらの重量濃度は、実施例3に従って記載される試験を実施することによって測定され得る。
【0041】
特に毛髪及び/または頭皮の処理に関して、本発明の方法は、以下の決定的な利点:
−特に成人における雄性発生脱毛症の場合において、毛幹の間質におけるケラチン合成細胞の成長を増大し、それによって、毛髪の増加または再生を助け、毛髪の減少を安定化する;
−後発性の多毛症等の副作用または非所望の効果が事実上存在しない;
を提供する。
【0042】
一般に、その美容的適用において、本発明に係るCNBは特に使いやすく、脂ぎってなくベタベタしていない。それは完全に局所的に許容され、局所的刺激、炎症またはかゆみ、接触湿疹、及びいくつかの場合における血圧と心拍の変化等の、副作用または非所望の効果がない。
【0043】
本発明に係るCNBは、それが例えば賦形剤とともに属する組成物におけるその濃度に関係なく、いかなる細胞毒性もないと考えられる。
【0044】
本発明は、表2に係る重量組成に関して、実施例としてここに記載される。
【0045】
特に以下の、毛髪への適用において、つまり毛髪及び/または頭皮の処理のために、本発明に係るCNBは、同様の効用を有するが医薬である有標商品、例えばミノキシジル(Common International Denomination:共通の国際的名称)と比較される。
【0046】
【表3】

A=アミノ酸 V=ビタミン CI=無機成分
=3258mg =109.5mg =13466-13488mg
=0.326重量% =0.011重量% =1.347-1.348重量%
*=含硫アミノ酸
【実施例】
【0047】
<実施例1>
このテストは基準化合物としてのミノキシジルに関し、その後、本発明のCNBの有効性を比較するために前記基準化合物と比較する。
【0048】
前記テストの目的は、正常なヒトケラチン合成細胞の細胞生存能力への、前記ミノキシジル(水溶性硫酸塩の形態の)の有効性を評価することである。
【0049】
当該ケラチン合成細胞の細胞生存能力は、生細胞のミトコンドリア・コハク酸塩−テトラゾリウムリダクターゼ(還元酵素)システムの活性を測定することを含むWST-1(*)変換技術によって測定される。
【0050】
前記WST-1(Boehringer/Roche社)は、ホルマザンの有色沈殿物へ還元される。当該細胞生存能力は、分光光度法で450nmで読み取ることにより測定される。吸光度の強さが生細胞の数に比例する。
【0051】
(*)WST-1テトラゾリウム塩:(4-(3-(4-ロドフェニル)-2-(4-ニトロフェニル)2H-5-テトラゾリオ)-1,3-ベンゼンジスルホネート)。
【0052】
以下の結果が得られた。
【0053】
接触の24-48時間後、0.01%の濃度まで、ミノキシジルの細胞毒性作用は観察されない。細胞増殖の刺激は、0.001%の濃度でさらに観察された。
【0054】
これを超えた、0.1%より上で、上位3つの高濃度に対して同程度の強度を有する突然の細胞毒性作用が観察された。
【0055】
以下の方法を用いた。
【0056】
[細胞をまく(シーディング)]
当該ケラチン合成細胞を、96ウェルマイクロプレートに、1ウェルにつき20,000細胞の割合で、200μLのKSFM標準培養培地(Invitrogen社)中にまいた。前記プレートを、6% CO2を含む湿気のある環境の中で37℃で24時間培養した。
【0057】
[試験された濃度範囲]
試験される種々の濃度を、PBS中に5%含むミノキシジル(水溶性硫酸塩)のストック溶液を用いて調製した。試験された濃度範囲は、0.0001%から2%に及んだ。
【0058】
[処理]
前記KSFM培地の除去後、ミノキシジルの種々の希釈液を当該細胞に接触させた。当該実験の間、当該培地を取り替えなかった。各項目について4つ1組で実施した。当該細胞毒性(WST-1を用いたテスト)を、接触の24時間と48時間後に測定した。
【0059】
[分析]
当該吸光度を、ELISAマイクロプレートリーダーを用いて450nmで読み取った。
【0060】
<実施例2>
このテストの目的は、その組成物が表2に記載されているところの当該CNBの中に、低濃度でまかれた正常なヒトケラチン合成細胞の増殖を測定することであった。
【0061】
当該調査は、前記ケラチン合成細胞の標準培養培地KSFMに対して、0.2mg/mLのMPC複合体を有する(及びMPC複合体なしの)このCNBについて実施された。
【0062】
以下の方法は、:
当該ケラチン合成細胞を96ウェルプレートに低濃度で標準KSFM培地中にまき、この培地中にまいた後24時間増殖させた。
【0063】
2日目に、前記細胞を検討された種々の培地:
−KSFM;
−MPC複合体なしの表2に係るCNB;
−MPCを0.2mg/mLで含む表2に係るCNB;
中に放置した。
【0064】
各条件について4つ1組で実施した。当該実験の間、前記培地を3日ごとに取り替えた。
【0065】
当該細胞密度を、細胞をまいた24時間後の種々の分析条件に接触させる前(=T0)に測定し、その後、当該ケラチン合成細胞の増殖を2日目、4日目、6日目、及び8日目に、前記WST-1変換方法により測定した(450nmで読み取る)。
【0066】
異なる実験時間に当該細胞生存能力を測定することによって、細胞増殖を客観的に測定した。:
・0.2mg/mLの濃度でMPC複合体の存在下で、表2に係るCNBに関して、当該ケラチン合成細胞の持続的細胞増殖が観察された;
・MPC複合体の添加なしで、表2に係るCNBに関して(低カルシウム条件において)、細胞の増殖は観察されなかった。
【0067】
最後に、上述のように定義された実験条件において、MPC複合体を0.2mg/mLの濃度で含むCNBに関して、正常なヒトケラチン合成細胞の規則的な細胞増殖が、前記複合体は含まないが同一のCNBに関して観察されたものよりも高濃度で、培養8日を超えて観察された。
【0068】
<実施例3>
当該目的は、生存中に維持された頭皮断片の増殖と分化への、表1に係るCNBの有効性を測定することであった。
【0069】
このテストの目的は、ヒト頭皮断片のex vivo生存への、表1に係る当該ベースの有効性を測定することであった。当該Ki67抗体を用いることによって、毛髪を取り囲む外側上皮被膜における当該増殖を測定した。全抗サイトケラチン抗体を用いることによって、毛幹における、特にその皮質部分におけるケラチン合成細胞の分化を測定した。
【0070】
以下の材料と方法を用いた。
【0071】
(1)表1に係るCNBの存在下での頭皮の生存維持
異なる5人のドナー(雄性発生脱毛症に罹患している患者、毛髪が保持されている領域と脱毛領域の間の接合部でサンプル採取した)からの頭皮断片を、培養ウェル上に位置するインサート中に堆積させた。
【0072】
当該CNBは保存剤を含んでいないので、抗生物質を添加した(ファンギゾン、ゲンタマイシン)。当該皮膚断片の生存と分化への当該CNBの有効性を、PBSタイプのリン酸バッファーの存在下で得られたものと比較した。PBSに対して表1に係るCNBを当該ウェルの底に毎日添加し、多孔質膜(12μm)を介した当該2つの区画間へのゆるやかな拡散により、流動が生じる。
【0073】
前記頭皮断片を、37℃の温室、及び空気/5% CO2環境で48時間生存維持させた。
【0074】
(2)分析
前記頭皮断片を、ブアン液で固定し、パラフィンで固定した。
【0075】
増殖の免疫組織化学測定を、毛髪を取り囲む外側上皮被膜において実施した。この外側上皮被膜は、組織学的に表面表皮の延長と見なされる。毛幹の皮質部分における分化を測定した。実際上、毛幹は、延髄の中心部(無核細胞から形成される中心柱)、メラニン色素を含む角化細胞から形成される皮質、及び角質から構成される。
【0076】
a)嚢の外側上皮被膜の有糸分裂活性の免疫組織化学的分析
上皮の増殖を、抗Ki67抗体(細胞サイクルのM、S、G1、及びG2期における細胞の標識をする)を用いた免疫組織化学によって分析した。免疫検出を、3層の間接的免疫ペルオキシダーゼ技術を用いて実施し、増幅させ(DAKOキット)、DABで発色させた。
【0077】
標識された細胞の数を、頭皮に存在する根元部分(1部分につき8から10)の外側上皮被膜において測定した。それによって、増殖を起こしている細胞の比率を算出した。
【0078】
b)毛幹の皮質についての免疫組織化学的分析、及び上皮性分化
上皮性分化を、全抗サイトケラチン抗体(Novocastra社)で特定した。
【0079】
免疫検出を、3層の間接的免疫ペルオキシダーゼ技術(ABCペルオキシダーゼキット、Vector Laboratoriesキット)を用いて実施し、DAB(ジアミノベンジジン)で発色させた。
【0080】
前記免疫組織化学的標識の強度を、分析された頭皮断片のすべての嚢における以下の半定量的スコアリング:
−マイナス :スコア0-
−僅か :スコア1
−中程度 :スコア2
−高い :スコア3
−非常に高い:スコア4
を用いて評価した。
【0081】
(3)統計
減らした偏差についてのスチューデント検定、または対のサンプル検定によって統計的解析を実施した。有意の閾値を5%に設定した。
【0082】
以下の結果を得た。
【0083】
a)嚢の外側上皮被膜における有糸分裂活性の免疫組織化学的分析
有糸分裂活性についての分析を、以下の表Iに示す。
【0084】
表1に係るCNBによる処理は、上皮細胞の再生を有意に増大させるのを促進する(p<0.05)。実際上、PBSで処理した頭皮に対する2.6%と比較して、処理後、当該外側上皮被膜の細胞の7.6%が当該抗Ki67抗体によって標識された。また、当該表面表皮における有糸分裂指標を分析した。1.1%に対して6.4%の増殖指標を有し、当該結果も表1に係るCNBを支持した。
【0085】
b)毛幹の皮質における免疫組織化学的分析、及び上皮性分化
上皮性分化についての分析を、以下の表IIに示す。
【0086】
上皮性分化は、PBSで処理したものと比較して、表1に係るCNBで処理した頭皮においてより良好である傾向を示し、2.4に対して3.3の全スコアを得た。有意差は得られなかったが、個別の実例分析により、表1に係るCNBで処理した3例において非常に良好な分化と1例について変化していない分化が観察された。
【0087】
[表I]
細胞増殖(前記抗Ki67抗体を用いた免疫組織化学):表面表皮と嚢の外側上皮被膜の標識された細胞のパーセンテージ
【表4】

*:表1に係るCNBとPBS対照の間の比較:統計的な有意差(片側対スチューデント検定、p<0.05)
【0088】
[表II]
毛幹の皮質の上皮性分化(全抗サイトケラチン抗体を用いた免疫組織化学)
【表5】

【0089】
要するに(結論として)、表1に係るCNBでの処理により、毛嚢の外側上皮被膜における有糸分裂指標の統計的に有意な増加を得られる。いずれかの重大な特徴なく、毛幹の上皮性分化が増進する。
【0090】
<実施例4>
このテストは、生存を維持された頭皮断片を用いた、毛根の刺激(細胞増殖)への、表2に係るCNBの有効性を試験することを意図した。
【0091】
実施例3によれば、表1に係るCNBの存在下で嚢の生存維持後、外側上皮皮膜において有糸分裂指標の統計的に有意な増加が特定された。
【0092】
本調査の目的は、毛根の刺激への、本発明に係る、及び表2に係るCNBの有効性を特定することである。当該抗Ki67抗体を用いて、毛根の間質領域(毛幹の成長領域)だけでなく、嚢の外側上皮皮膜における細胞増殖を測定した。
【0093】
以下の材料と方法を用いた。
【0094】
(1)表2に係るCNBの存在下での頭皮の生存維持
異なる6人のドナー(非脱毛症患者の頚顔面リフト)からの頭皮断片を、培養ウェル上に位置するインサート中に堆積させた。
【0095】
毛根の生存と刺激への、表2に係るCNBの有効性を、一方で、PBSタイプのリン酸バッファーの存在下で得られたものと、他方で、ミノキシジル含有0.01と2%(PBSバッファーで希釈)、ミノキシジル0.01%は単層培養の正常なヒトケラチン合成細胞に非細胞毒性の量であり、2%は男性におけるin vivoで脱毛症の治療のために市販されている大部分の有標商品に用いられる濃度である2つの濃度で試験された基準化合物の存在下で得られたものと比較した。保存剤を含まないので、これらすべての試験される培地に抗生物質(ファンギゾン、ゲンタマイシン)を添加した。それらを当該ウェルの底に毎日添加し、多孔質膜(12μm)を介した当該2つの区画間へのゆるやかな拡散により、流動が生じる。
【0096】
前記頭皮断片を、37℃の温室、及び空気/5% CO2環境で48時間生存維持させた。
【0097】
(2)毛根と嚢の外側上皮被膜における有糸分裂活性の免疫組織化学的分析
前記頭皮断片を、ブアン液で固定し、パラフィンで固定した。
【0098】
増殖の免疫組織化学測定を、毛根と毛髪を取り囲む外側上皮被膜において実施した。この外側被膜は、組織学的に表面表皮の延長と見なされる。
【0099】
上皮の増殖を、抗Ki67抗体(細胞サイクルのM、S、G1、及びG2期の細胞の標識をするため)を用いた免疫組織化学によって分析した。免疫検出を、3層の間接的免疫ペルオキシダーゼ技術を用いて実施し、増幅させ(DAKOキットによって)、AECで発色させた。
【0100】
外側上皮被膜の標識された細胞の数を、皮脂腺の起始部と毛根領域の起始部の間で数えた。さらに、毛根における標識された間質細胞も数えた。それによって、増殖を起こしている細胞の比率を算出し、標識されていない細胞と比較した。
【0101】
(3)統計
減らした偏差についてのスチューデント検定、または対のサンプル検定によって統計的解析を実施した。有意の閾値を5%に設定した。
【0102】
以下の結果を得た。
【0103】
a)毛根における有糸分裂活性の免疫組織化学的分析
有糸分裂活性についての分析を、以下の表Iに示す。
【0104】
表2に係るCNBの存在下での頭皮断片の培養は、毛根の間質細胞(標識された細胞の15.2%)において、PBSバッファー(陽性細胞の0.26%)またはミノキシジル0.01%(陽性細胞の4.2%)と比較して、有糸分裂指標の有意な増加をもたらす(p<0.05)。表2に係るCNBで得られた増殖率は、ミノキシジル含有2%で観察されたものに近い(陽性細胞の11.6%)。
【0105】
b)嚢の外側上皮被膜における有糸分裂活性の免疫組織化学的分析
有糸分裂活性についての分析を、以下の表IIに示す。
【0106】
表2に係るCNBの存在下での頭皮断片の培養は、嚢の外側上皮被膜のケラチン合成細胞(標識された細胞の22.3%)において、PBSバッファー(陽性細胞の2.6%)と比較して、有糸分裂指標の有意な増加をもたらす(p<0.05)。実施例3によれば、表1に係るCNBでの処理は、外側被膜における細胞の再生を有意に増加させることをすでに促進するが、表2に従って測定されたものよりも有効性が非常に低い(p<0.05)。実際上、PBSで処理した頭皮に対する2.6%に対して、処理後、当該外側被膜の細胞の7.6%のみが当該抗Ki67抗体によって標識された。
【0107】
[表I]
細胞増殖(前記抗Ki67抗体を用いた免疫組織化学):毛嚢の根元における標識された間質細胞のパーセンテージ
【表6】

*:表2に係るCNBとPBSの間の比較:統計的な有意差(片側対スチューデント検定、p<0.05)
#:表2に係るCNBとミノキシジル0.01%の間の比較:統計的な有意差(片側対スチューデント検定、p<0.05)
【0108】
[表II]
細胞増殖(前記抗Ki67抗体を用いた免疫組織化学):嚢の外側上皮被膜における標識された細胞のパーセンテージ
【表7】

*:表2に係るCNBとPBSの間の比較:統計的な有意差(片側対スチューデント検定、p<0.05)
#:表2に係るCNBとミノキシジル0.01%の間の比較:統計的な有意差(片側対スチューデント検定、p<0.05)
#:ミノキシジル0.01%とミノキシジル2%の間の比較:統計的な有意差(片側対スチューデント検定、p<0.05)
【表8】

【0109】
この調査において、ミノキシジル0.01%(陽性細胞の10.2%)と比較して、表2に係るCNBを用いた嚢の外側上皮被膜において、ケラチン合成細胞の有意な増加が確認された(p<0.05)。この細胞増殖率(22.3%)は、ミノキシジル2%で得られたものに近い(陽性細胞の17.6%)。
【0110】
要するに(結論として)、生存維持された頭皮断片モデルに関して、表2に係るCNBでの処理は、毛根の間質細胞と嚢の外側上皮被膜のケラチン合成細胞の有糸分裂指標の統計的に有意な増加を得るのを促進する。当該結果は、表1に係るCNBに関して得られたものよりもはるかに優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
男性または女性における毛髪及び/または頭皮の美容処理方法であって、頭皮表面へ局所的に適用する工程を含むことを特徴とし、美容的に許容し得る支持体、いずれかの追跡されない細胞成長因子、及び/または動物若しくは細胞由来のいずれかの生物学的抽出物を排除するという点において、並びに、細胞培養培地と比較すると、生きた栄養基盤なしで、最初の継代の際に少なくとも1つのクローン増殖を有するヒト上皮ケラチン合成細胞のin vitro培養を、単独で生育可能にするという点において、細胞培養培地とは区別される水性溶媒中の複合栄養ベースを有し、前記ベースが、前記培養培地に加え、アミノ酸画分を0.5 %未満、好ましくは0.35重量%未満、水溶性ビタミン画分を0.2 %未満、好ましくは0.015 %未満、及び微量元素と金属塩を含む無機画分を5重量%未満、好ましくは2重量%未満含む美容処理方法。
【請求項2】
前記ベースが十分な総重量濃度の含硫アミノ酸を含み、標準的なin vitro条件において、男性または女性における毛髪の毛幹のケラチンの合成の増大を可能にすることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
含硫アミノ酸中の前記ベースの総重量濃度が104mg/L以下であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
含硫アミノ酸を含むアミノ酸中の前記ベースの総重量濃度が0.25と0.35%の間、例えば約0.326%に等しいことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ベースのビタミン画分の重量濃度が0.005と0.015%の間、例えば約0.011%に等しいことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
微量元素と金属塩を含む無機成分中の前記ベースの重量濃度が1.25と1.35%の間、例えば1.347-1.348重量%に等しいことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記ベースのグルコース濃度が0.1%と0.6%の間、例えば0.45%と0.6%の間であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記ベースのL-ヒドロキシプロリン濃度が0.001%と0.01%の間、例えば0.003%と0.01%の間であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記ベースのアスコルビン酸濃度が0.00001%と0.001%の間、例えば0.0001%と0.001%の間であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
以下の化合物、すなわちアデノシン、グアニン、デオキシリボース、及びリボースのそれぞれの中の前記ベースの濃度が0.000001%と0.0001%の間、例えば0.00001%と0.0001%の間であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記ベースが美容的に活性のある量の少なくとも1つのタイプI 5α-リダクターゼ酵素インヒビターを含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記ベースの前記タイプI 5α-リダクターゼ酵素インヒビターが亜鉛塩、例えば硫酸亜鉛、及び/またはビタミンB6を含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ベースが0と22.05mg/Lの間、好ましくは5と15mg/Lの間のカルシウムの総量を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記ベースが0.01と1重量%の間の濃度で、例えばミルクから抽出されたペプチドを含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記ベースの水性相のpHが、7.4と7.5の間に調整されていることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記ベースの水性相の浸透圧が、300と350μOsmの間より高くならないように調整されていることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
男性または女性における毛髪及び/または頭皮の治療的処理、特に成人における雄性発生脱毛症の処理に適した医薬組成物を製造するまたは得るための複合栄養ベースの使用であって、前記複合栄養ベースは、いずれかの追跡されない細胞成長因子、及び/または動物若しくは細胞由来のいずれかの生物学的抽出物を排除するという点において、並びに、細胞培養培地と比較すると、生きた栄養基盤なしで、最初の継代の際に少なくとも1つのクローン増殖を有する前記ヒト上皮ケラチン合成細胞の種菌のin vitro培養を、単独で生育可能にするという点において、細胞培養培地とは区別され、前記ベースは、当該水性溶媒に加えて、アミノ酸画分を0.5 %未満、好ましくは0.35重量%未満、水溶性ビタミン画分を0.2 %未満、好ましくは0.015 %未満、及び微量元素と金属塩を含む無機画分を5重量%未満、好ましくは2重量%未満含む複合栄養ベースの使用。
【請求項18】
前記ベースが十分な総重量濃度の含硫アミノ酸を含み、標準的なin vitro条件において、男性または女性における毛髪の毛幹のケラチンの合成の増大を可能にすることを特徴とする、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
含硫アミノ酸中の前記ベースの総重量濃度が104mg/L以下であることを特徴とする、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記ベースが美容的に活性のある量の少なくとも1つのタイプI 5α-リダクターゼ酵素インヒビターを含むことを特徴とする、請求項17に記載の使用。

【公表番号】特表2008−524314(P2008−524314A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547572(P2007−547572)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【国際出願番号】PCT/FR2005/003228
【国際公開番号】WO2006/067335
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(501011174)
【Fターム(参考)】