説明

化粧品用共重合体

【課題】化粧品製剤に配合が容易であり、かつ、耐水性、撥水撥油性、使用感、安全性に優れた皮膜を形成する化粧品用共重合体と、これを含有することを特徴とする化粧品を提供する。この化粧品用共重合体はフッ素化合物処理粉体の欠点を改善できる。
【解決手段】(A)フッ素系(メタ)アクリレート、および(B)重合性シランである少なくとも1種の含ケイ素重合性化合物を重合して得られた化粧品用共重合体。化粧品用共重合体は、繰り返し単位(A)および(B)に加えて、(C)ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレートマクロモノマーおよびアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択された少なくとも1種の非フッ素系モノマーから誘導された繰り返し単位1〜50重量部を有してなってよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品製剤に配合が容易であり、かつ、耐水性、撥水撥油性、使用感、安全性に優れた化粧品用共重合体と、これを含有することを特徴とする化粧品に関するものである。化粧品用共重合体は、化粧品用皮膜形成剤、フッ素原料と非フッ素原料の相溶化剤および乳化剤、フッ素化合物処理粉体およびシリコーン処理粉体の表面処理剤として機能する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧品用皮膜形成剤としては、炭化水素系のエマルション樹脂が汎用されていた。これらは塗布後に皮膜を形成し、製剤中の顔料や有効成分を長期間、肌の上に保持する目的で配合される。しかし、耐水性、撥水撥油性ともに不十分なために、水が接触したときや、皮膚から分泌される汗や皮脂により皮膜が破壊される欠点があった。また、最近、炭化水素系エマルション樹脂の耐水性と撥水性の欠点を改良したアクリル-シリコーン共重合体(特開平2-247110)が使用されている。これは炭化水素系アクリレートとシリコーンマクロモノマーの共重合体であり、その皮膜は優れた耐水性と撥水性を有する。
【特許文献1】特開平2-247110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、アクリル-シリコーン共重合体も撥油性がほとんどないために、皮脂による化粧崩れは防止することが出来ない。一方、撥油性を付与するために、炭素数8以上の長鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと炭素数4以上のポリフルオロアルキル基を有するポリフルオロアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体を皮膜形成成分として含有する技術が知られている(特公平3-46444)。しかし、この共重合体は軟化点が皮膚温よりも高いために、水に分散したエマルションの形態では皮膜を形成せず、皮膜を形成させるために溶液中に溶解する程度まで分子量を下げたものには撥油性がない。
【0004】
一方、最近、フッ素化合物処理粉体やパーフルオロポリエーテルなどのフッ素原料が化粧品製剤中に配合されるようになった。これらのフッ素原料は、これまで汎用されてきた炭化水素系、シリコーン系などの非フッ素原料と親和性が悪いために、製剤中に安定に配合することが非常に難しく、フッ素原料と非フッ素原料の親和性を向上させるための相溶化剤の開発が望まれてきた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、上記の問題を解決するために、鋭意研究した結果、特定の組成のフッ素系(メタ)アクリレート共重合体を水、あるいは、溶剤に溶解または分散させた場合に化粧品用共重合体として優れた特性を有することが明らかとなった。具体的には、本発明の化粧品用共重合体は、従来の化粧品製剤に配合が容易であり、これを配合した化粧品は、皮膚に塗布後、耐水性、撥水撥油性、使用感、安全性に優れた皮膜を形成する。
また、この化粧品用共重合体はフッ素原料と非フッ素原料の相溶化剤として作用し、化粧品製剤を安定化させる効果がある。
【0006】
本発明は、(A)フッ素系(メタ)アクリレートから誘導された繰り返し単位5〜99重量部および
(B)メルカプト変性シリコーン、アゾ基含有シリコーンおよび重合性シランからなる群から選択された少なくとも1種の含ケイ素重合性化合物から誘導された繰り返し単位95〜1重量部
を有してなる化粧品用共重合体に関する。
【0007】
本発明の要旨は、
(A)フッ素系(メタ)アクリレートから誘導された繰り返し単位5〜99重量部および
(B)メルカプト変性シリコーンおよびアゾ基含有シリコーンからなる群から選択された少なくとも1種の含ケイ素重合性化合物から誘導された繰り返し単位95〜1重量部
を有してなる化粧品用共重合体に存する。
本発明の共重合体は、繰り返し単位(A)および(B)に加えて、
(C)ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレートマクロモノマーおよびアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択された少なくとも1種の非フッ素系モノマーから誘導された繰り返し単位1〜50重量部を有してなってよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の化粧品用共重合体は、従来の化粧品製剤に配合が容易であり、これを配合した化粧品は、皮膚に塗布後、耐水性、撥水撥油性、使用感、安全性に優れた皮膜を形成する。
また、この化粧品用共重合体はフッ素原料と非フッ素原料の相溶化剤として作用し、化粧品製剤を安定化させる効果がある。さらにフッ素化合物処理粉体をこの化粧品用共重合体で表面処理すると、次に示すフッ素化合物処理粉体の欠点を改善できる。
【0009】
・非フッ素原料と親和性が悪い。
・のび、密着性などの使用感が悪い。
・化粧品製造時に粉塵として舞い上がる。
・非フッ素系溶剤に対する分散性が悪い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
共重合体は、
(i)フッ素系(メタ)アクリレートとメルカプト変性シリコーンからなる共重合体、
(ii)フッ素系(メタ)アクリレートとアゾ基含有シリコーンからなる共重合体、
(iii)フッ素系(メタ)アクリレートと重合性シランからなる共重合体、
(iv)フッ素系(メタ)アクリレートと、メルカプト変性シリコーン、アゾ基含有シリコーンおよび重合性シランからなる群から選択された少なくとも1種の含ケイ素重合性化合物と、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートからなる共重合体、
(v)フッ素系(メタ)アクリレートと、メルカプト変性シリコーン、アゾ基含有シリコーンおよび重合性シランからなる群から選択された少なくとも1種の含ケイ素重合性化合物と、アルキル(メタ)アクリレートマクロモノマーからなる共重合体、または
(vi)フッ素系(メタ)アクリレートと、メルカプト変性シリコーン、アゾ基含有シリコーンおよび重合性シランからなる群から選択された少なくとも1種の含ケイ素重合性化合物と、アルキル(メタ)アクリレートからなる共重合体
であってよい。
【0011】
化粧品用共重合体に使用するフッ素系(メタ)アクリレートは、例えば、以下の構造式を有する。
【化1】

[式中、Rfは炭素数6〜16のポリフルオロアルキル基またはパーフルオロポリエーテル基であり、Aは炭素数1〜4のアルキレン基、
【化2】


(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基、R2は炭素数1〜4のアルキレン基である)、または、
【化3】


であり、Xは、水素原子またはメチル基である。]
【0012】
また、フッ素系(メタ)アクリレートは、例えば、以下の構造式を有するフッ素系(メタ)アクリレートマクロモノマーであってよい。
【化4】


[式中、Rfは炭素数6〜16のポリフルオロアルキル基またはパーフルオロポリエーテル基であり、A1は炭素数1〜4のアルキレン基、
【化5】


(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基、R2は炭素数1〜4のアルキレン基である)、または、
【化6】


であり、X11は、水素原子またはメチル基であり、Y11は水素原子またはメチル基であり、mは5〜100である。]
【0013】
パーフルオロポリエーテル基は、具体的には、次のとおりである。
F(CF(CF3)CF2O)nCF2CF2−、
[式中、n=3〜30の整数である。]
CF3O(CF(CF3)CF2O)n(CF2O)mCF2−、
[式中、n=2〜30、m=3〜70の整数である。]
CF3O(CF2CF2O)n(CF2O)mCF2−、
[式中、n=2〜40、m=4〜70の整数である。]
F(CF2CF2CF2O)nCF2CF2
[式中、n=3〜30の整数である。]
パーフルオロポリエーテル基の数平均分子量(19F−NMRにより測定)は、500〜5,000の範囲であることが好ましい。
【0014】
フッ素系(メタ)アクリレートの例は、次のとおりである。
CF3 (CF2)7(CH2)OCOCH=CH2
CF3(CF2)6(CH2)OCOC(CH3)=CH2
(CF3)2CF(CF2)6(CH2)2OCOCH=CH2
CF3(CF2)7(CH2)2OCOC(CH3)=CH2
CF3(CF2)7(CH2)2OCOCH=CH2
HCF2(CF2)7(CH2)2OCOCH=CH2
CF3(CF2)5(CH2)2OCOCH=CH2
CF3(CF2)7SO2N(CH3)(CH2)2OCOCH=CH2
CF3(CF2)7SO2N(C25)(CH2)2OCOC(CH3)=CH2
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH(OCOCH3)CH2OCOC(CH3)=CH2
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2
【化24】


F(CF(CF3)CF2O)10CF2CF2−COOCH2CH2CH=CH2
【化25】





【0015】
これらのフッ素系(メタ)アクリレートは2種類以上のものを混合させて用いてもよい。
本発明においてフッ素系(メタ)アクリレートとラジカル重合する含ケイ素重合性化合物は、メルカプト変性シリコーン、アゾ基含有シリコーンまたは重合性シランである。
【0016】
メルカプト変性シリコーンは、すくなくとも1つのSH基を有するシリコーンである。メルカプト変性シリコーンは、例えば、以下の一般式(II−1−1)または(II−1−2)を有する。
一般式(II―1−1)および(II−1−2):
【化26】




[式中、R1は、場合によりエーテル結合1個または2個で遮断されている直鎖状または分岐鎖状の炭素鎖を有する2価の飽和炭化水素基であり、lは10〜20であり、mは10〜200であり、nは1〜10である。]
【0017】
メルカプト変性シリコーンの具体例は、つぎのとおりである。
【化7】

【0018】
アゾ基含有シリコーンは、アゾ基およびウレタン結合を有するシリコーンであってよい。アゾ基含有シリコーンは、例えば、以下の一般式(II−2)を有する。
一般式(II−2):
【化8】

[式中、xは10〜200であり、nは1〜20である。]
【0019】
アゾ基含有シリコーンの具体例は次のとおりである。
【化9】

【0020】
重合性シランは、エチレン性不飽和二重結合およびシロキサン結合を有する化合物である。重合性シランは、例えば、以下の一般式(II−3−1)または(II−3−2)を有する。
【化10】

または
CH2=CHSi(OR3)3 (II−3−2)
[式中、R1は、メチル基または水素原子であり、R2は、場合によりエーテル結合1個または2個で遮断されている直鎖状または分岐鎖状の炭素鎖を有する炭素原子1〜10個の2価の飽和炭化水素基であり、R3は炭素数1〜4のアルキル基である。]
【0021】
重合性シランの具体例は、次のとおりである。
【化11】

CH2=CHSi(OCH3)3
【0022】
これらの含ケイ素重合性化合物は2種類以上のものを混合させて用いてもよい。
本発明において、メルカプト変性シリコーン、または、アゾ基含有シリコーンを用いる場合は、シリコーン成分が、フッ素系(メタ)アクリレート共重合体の末端に結合して、ブロック共重合体が得られる。一般にブロック共重合体を合成するための手法として、(1)連鎖移動法、(2)ポリマー開始剤法、(3)機械的化学反応法、(4)結合(付加、縮合)反応法、(5)交換反応法、(6)リビングポリマー法、(7)グループ移動重合法、(8)ヨウ素移動重合法などが知られており、本発明のメルカプト変性シリコーンは(1)連鎖移動法によって、アゾ基含有シリコーンは(2)ポリマー開始剤法によってブロック共重合体を与える。
【0023】
(1)〜(8)のいずれの方法を用いてもブロック共重合体は得られるが、(1)、(2)以外の方法は、操作が煩雑か、あるいは、生成率が低いという問題点がある。本発明では、工業的に製造しやすく、生成率も高いという特徴があるという理由で、(1)連鎖移動法、(2)ポリマー開始剤法を用いることが好ましい。
【0024】
本発明の重合体は、(C)ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレートマクロモノマーおよびアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択された少なくとも1種の非フッ素系モノマーから誘導された繰り返し単位を有してよい。
【0025】
また、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートは以下の構造式(III−1)を有する。
CH2=CR11COO−(R12−O)n−R13 (III−1)
[式中、R11およびR13は水素またはメチル基、R12は炭素数2〜6のアルキレン基、nは1〜50の整数を表す。]
具体的には、
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、
CH2=C(CH3)COO(CH2CH2O)n
[式中、nは、2、5または8である。]
などが例示される。
アルキル(メタ)アクリレートマクロモノマーは、例えば、以下の構造式(III−2)を有する。
【化12】


[式中、X21およびY21のそれぞれは水素原子またはメチル基であり、nは1〜22であり、mは5〜100である。]
【0026】
具体的には、
【化33】












などが例示される。
【0027】
アルキル(メタ)アクリレートは、例えば、以下の構造式(III−3)を有する。
【化13】

[式中、Xは水素原子またはメチル基であり、nは1〜22(例えば、1〜10)である。]
【0028】
具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドラジル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
これらの非フッ素系モノマーは2種類以上のものを混合させて用いてもよい。
【0029】
フッ素系モノマー(即ち、フッ素系(メタ)アクリレート)と含ケイ素重合性化合物とからなる共重合体において、フッ素系モノマー含量は、5〜99重量%、より好ましくは10〜95重量%、特に好ましくは20〜80重量%である。共重合体において、含ケイ素重合性化合物の割合が多いほど、化粧品に配合したときの使用感、すなわち、「すべり感」、「さらさら感」などが良くなり、また、非フッ素系溶剤に対する溶解性が良くなる。含ケイ素重合性化合物の量は、共重合体の1〜95重量%、例えば、1〜80重量%、特に1〜50重量%である。非フッ素系モノマーの量は、共重合体の0〜50重量%、例えば1〜50重量%、特に2〜30重量%である。
【0030】
使用感を改質するためや、耐水性、撥水撥油性以外の機能を皮膜に付与するために、他のモノマーを併用しても良い。他のモノマーとしては、具体的にはグリシジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリル酸などが例示される。他のモノマーの量が、共重合体に対して20重量%以下、例えば、0.1〜10重量%であってよい。
【0031】
また、他のモノマーとして、親水基含有モノマーおよび/または含窒素モノマーの少なくともいずれか1つを併用すると、得られる共重合体は、頭髪に対する吸着性が良く、頭髪化粧品用共重合体として適している。
頭髪用化粧品においては、(a)フッ素系(メタ)アクリレート、(b)含ケイ素重合性化合物、ならびに(c)親水基含有モノマーおよび/または含窒素モノマーから誘導された繰り返し単位を有してなる共重合体が好ましい。共重合体中の(a):(b):(c)の重量比は、10〜90:10〜90:0.1〜20、好ましくは20〜80:20〜80:1〜10であってよい。
フッ素系(メタ)アクリレートのRf基は、特にパーフルオロポリエーテルが使用感的に好ましい。
親水基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、前記のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0032】
含窒素モノマーは、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ダイアセトンアクリルアミド、塩化トリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレート、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ウレタンまたはウレア結合を1つ以上有するモノマーなどが例示される。
特に、ダイアセトンアクリルアミド、ウレタンまたはウレア結合を一つ以上有するモノマーが好ましい。
【0033】
ウレタンまたはウレア結合を一つ以上有するモノマーの例としては、ビス(アクリロイロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリス(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、
【化14】

[式中、Rは、炭素数1〜22のアルキル基である。]
が挙げられる。
【0034】
本発明の含フッ素共重合体は、塊状重合、溶液重合、乳化重合で製造することが可能である。塊状重合では、フッ素系モノマーと含ケイ素重合性化合物の混合物を窒素置換後、重合開始剤を投入し、40〜80℃の範囲で数時間、撹拌して重合させる方法が採用される。また、溶液重合の場合、フッ素系モノマーと含ケイ素重合性化合物の混合物を、これらのモノマーが可溶である適当な有機溶剤に溶解して同様に重合する。有機溶剤は、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、シリコーン系溶剤、フッ素系溶剤などである。
【0035】
乳化重合の場合、これらのモノマーを適当な乳化剤を用いて水中に乳化した後、同様に重合する。ある種のフッ素系モノマーと含ケイ素重合性化合物の組み合わせにおいては、水中でフッ素系モノマーと含ケイ素重合性化合物の相溶性が悪いために共重合性が悪くなる。この場合は、グリコール類、アルコール類などの適当な補助溶剤を添加して、両モノマーの相溶性を向上させる方法が採用される。乳化重合で用いる乳化剤は疎水基が炭化水素系、シリコーン系、フッ素系のいずれのものでも良く、また、親水基のイオン性もノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性のものいずれのものでも良い。
【0036】
重合開始剤は各種アゾ系、過酸化物等が例示される。重合の際には、必要に応じて、連鎖移動剤やpH調整剤を加えてもよい。重合後に得られる含フッ素共重合体の重量平均分子量(GPCにより測定)は10,000〜1,000,000であり、好ましくは20,000〜300,000である。
【0037】
溶液重合、乳化重合で調製した含フッ素共重合体は、反応液をそのまま化粧品製剤中に配合しても良いし、ポリマーのみを分離した後、溶剤中(または水中)に、溶解(または分散)させても良い。
【0038】
含フッ素共重合体は、ポリマー単体でも良いが、水、または、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、シリコーン系溶剤、フッ素系溶剤の少なくとも1種類に溶解または分散させた形態で化粧品原料として供給される方が好ましい。このときの含フッ素共重合体は全体[含フッ素共重合体+(水または溶剤)]に対して、1〜60重量%、より好ましくは10〜40重量%で配合される。1重量%よりも少ないと、化粧品製剤中に配合したときの含フッ素共重合体が少なすぎて、十分な耐水性、撥水撥油性を付与することができず、60重量%よりも多いと原料としての安定性が低下する。
【0039】
また、頭髪用化粧品は、本発明の共重合体を1〜99重量%、好ましくは2〜50重量%の量で含んでよい。
炭化水素系溶剤としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、イソヘキサン、イソヘプタン、イソオクタン、イソノナン、イソデカン、イソウンデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、流動パラフィン、イソパラフィン、トルエン、ベンゼン、キシレンなどが例示される。
【0040】
エステル系溶剤としては、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸アシルなどが例示される。
ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトンなどが例示される。
アルコール系溶剤としては、エタノール、イソプロピルアルコールなどが例示される。
【0041】
シリコーン系溶剤としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(=環状シリコーン3量体)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(=環状シリコーン4量体)、デカメチルシクロペンタシロキサン(=環状シリコーン5量体)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(=環状シリコーン6量体)、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン/メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン/メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体などが例示される。
【0042】
フッ素系溶剤としては、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、フルオロエーテル、フルオロカーボン(FC)、含窒素フルオロカーボンなどが例示される。
【0043】
HFCとしては、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(HFC−4310)、ベンゾトリフロライド、m−キシレンヘキサフロライドなどが挙げられる。
HFEは、一般式:
nmlOCxyz
[式中、nは1〜12の数、mは0〜25の数、lは0〜11の数、m+l=2n+1であり、xは1〜12の数、yは0〜25の数、zは0〜11の数、y+z=2x+1である(ただし、mとyが同時にゼロであることはなく、lとzが同時にゼロであることもない)。]
で表される。
【0044】
HFEとしては、具体例には、C49OCH3、C49OC25などが挙げられる。
フルオロエーテルは、一般式:
(Cn2n+1)2
[式中、nは3〜5の数である。]
で表される。
フルオロエーテルとしては、具体的には、(C37)2O、(C49)2Oなどが挙げられる。
【0045】
FCとしては、パーフルオロヘキサン、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロベンゼン、パーフルオロトルエン、パーフルオロキシレン、パーフルオロデカリン、パーフルオロメチルデカリンが挙げられる。
含窒素フルオロカーボンとしては、一般式:
(Cn2n+1)3
[式中、nは1〜5の数である。]
で表される。
【0046】
含窒素フルオロカーボンとしては、具体的には、パーフルオロトリプロピルアミン、パーフルオロトリブチルアミンなどが挙げられる。
これらの溶剤は単独で用いても混合して用いても良い。溶剤は皮膚温(約30℃)で容易に揮発する物性を持つものが、揮発時に清涼感があり、肌上で皮膜を形成しやすいので好ましい。特にシリコーン系のオクタメチルシクロテトラシロキサン(=環状シリコーン4量体)、デカメチルシクロペンタシロキサン(=環状シリコーン5量体)、粘度が10cst以下のジメチルポリシロキサン、炭化水素系のイソパラフィンを用いることが好ましい。フッ素系溶剤を用いる場合、HFEのC49OCH3、C49OC25、C49OC37またはC49OC49を使用することが最も好ましい。この溶剤は揮発性があり、化粧品で汎用される溶剤、オイルの多くに可溶であり、しかもフッ素系ポリマーの溶解性が非常に高い。
本発明の化粧品は、含フッ素共重合体0.1〜30重量%を必須成分として、フッ素化合物処理粉体および/またはフッ素系オイルを0.1重量%以上含んでよい。
【0047】
また、本発明の化粧品は、含フッ素共重合体を相溶化剤または分散剤として、非フッ素化合物(例えば、非フッ素系溶剤)中に、フッ素化合物処理粉体および/またはフッ素系オイルを相溶化または分散させていてよい。
【0048】
フッ素系オイルが、パーフルオロポリエーテル、ハイドロフルオロエーテルまたは一般式:
【化15】

[式中、R1aおよびR1dは、水素原子、または部分的にあるいは完全にフッ素化された炭素数1〜20の脂肪族基、R1bおよびR1cは、水素原子、炭素数1〜20の脂肪族基、または部分的にあるいは完全にフッ素化された炭素数1〜20の脂肪族基である。ただし、R1a〜R1dの少なくとも1つが、部分的にあるいは完全にフッ素化された炭素数1〜20の脂肪族基である。nは1〜20の数である。]
もしくは
【化16】

[式中、R2aは、水素原子、部分的にあるいは完全にフッ素化された炭素数1〜20の脂肪族基、R2b、R2aおよびR2dは、炭素数1〜20の脂肪族基、部分的にあるいは完全にフッ素化された炭素数1〜20の脂肪族基である。ただし、R2a〜R2dの少なくとも1つが部分的にあるいは完全にフッ素化された炭素数1〜20の脂肪族基である。mは1〜20の数である。]
で示される化合物であってよい。
【0049】
本発明の含フッ素共重合体を配合する化粧品に使用される原料は、通常、化粧品に用いられるものならば特に限定はない。
例えば、粉体は、タルク、カオリン、雲母、雲母チタン、酸化チタン、酸化鉄、酸化マグネシウム、一酸化亜鉛、二酸化亜鉛、重質もしくは軽質炭酸カルシウム、第2燐酸カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、アルミナ、シリカゲル、カーボンブラック、酸化アンチモン、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成雲母などの無機粉体;蛋白質粉末、魚鱗箔、金属石鹸、ポリ塩化ビニル、ナイロン12、微結晶繊維粉末、タール色素、レーキなどの有機粉末等が挙げられる。これらは、未処理でもシリコーンやフッ素化合物で処理されていても良い。例えば、粉体はフッ素化合物処理粉体であってよい。
【0050】
また粉体以外にも、例えば、ワセリン、ラノリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、高級脂肪酸、高級アルコール等の固形・半固形油分;スクワラン、流動パラフィン、エステル油、ジグリセライド、トリグリセライド、シリコーン油等の流動油分;パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤;水溶性および油溶性ポリマー、界面活性剤、有機染料等の色剤、エタノール、防腐剤、酸化防止剤、色素、増粘剤、pH調整剤、香料、紫外線吸収剤、保湿剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤などが挙げられる。
【0051】
本発明の化粧品は通常の方法に従って製造され、ファンデーション、おしろい、チークカラー、アイカラー、マスカラ、アイライナー、ネイルカラーなどの仕上化粧品;乳液、クリームなどの基礎化粧品;シャンプー、リンスなどの頭髪化粧品に使用できる。
【0052】
本発明の化粧品用共重合体は、次に示すフッ素化合物処理粉体の欠点の改善のために用いることが出来る。
・非フッ素原料と親和性が悪い。
・のび、密着性などの使用感が悪い。
・化粧品製造時に粉塵として舞い上がる。
・非フッ素系溶剤に対する分散性が悪い。
【0053】
このとき、本発明の共重合体で処理されるフッ素化合物処理粉体は、フッ素系リン酸エステル、例えば一般式:
[Rf−A−O]nPO(OM)3-n
[式中、Rfは炭素数6〜16のポリフルオロアルキル基もしくはパーフルオロポリエーテル基、
Aは炭素数1〜4のアルキレン基、
【化17】

(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基、R2は炭素数1〜4のアルキレン基である)、もしくは、
【化18】

であり、Mは水素原子、金属原子、アンモニウムまたは置換アンモニウムを示し、nは1〜3の数を示す。]
で示されるフッ素系リン酸エステルで処理されたものであってよい。
【0054】
例えば、粉体に対して、3〜7重量%のパーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩で処理されたフッ素化合物処理粉体が挙げられる。
フッ素化合物処理粉体は、粉末、例えば無機粉末または有機粉末等をフッ素化合物で処理したものが挙げられる。これらの粉体は共重合体で表面処理するときに、2種類以上のものを混合してもよい。さらに、処理粉体を化粧品に配合するときにも、2種類以上のものを混合してもよい。
【0055】
化粧品用共重合体は、湿式法、または、乾式法でフッ素化合物処理粉体の表面に付着させるが、より均一に表面処理するためには、湿式法の方が好ましい。具体的には、共重合体そのもの、あるいは、共重合体溶液を有機溶剤で希釈した溶液にフッ素化合物処理粉体を混合し、室温、あるいは、加熱下でフッ素化合物処理粉体が有機溶剤溶液で均一に濡れるまで撹拌する。このときの撹拌には、ヘンシェルミキサー、振動式ボールミル、回転式ボールミル、スーパーミキサー、プラネタリーミキサーなどの撹拌装置が使用される。ラボスケールで撹拌するときは、家庭用のジューサーミキサーを用いても良い。有機溶剤溶液中の共重合体の濃度は、特に限定されないが、粉体混合時の撹拌の際に、粘度が高くなりすぎないように調製する。撹拌後、真空状態、あるいは、加熱して有機溶剤を留去し、上記の撹拌装置で処理粉体を均一に分散する。ラボスケールで撹拌するときは、家庭用のジューサーミキサー、あるいは、スピードカッターを用いても良い。
【0056】
本発明の化粧品用共重合体は、シリコーン処理粉体の耐水性、撥油性の改善のためにも用いることが出来る。このとき処理されるシリコーン処理粉体としては、湿式法でメチルハイドロジェンポリシロキサンで処理したものや化学気相蒸着法で1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンで処理したものなどが例示される。シリコーン処理粉体の被処理粉体は、前述したフッ素処理粉体と同様に化粧品で汎用されるタルク、カオリン、雲母、雲母チタン、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛などが挙げられる。シリコーン処理粉体を共重合体で表面処理するときに、2種類以上のシリコーン処理粉体を混合しても良い。さらに、処理粉体を化粧品に配合するときにも、2種類以上のシリコーン処理粉体を混合しても良い。
【0057】
化粧品用共重合体は、前述したフッ素処理粉体と同様に湿式法、または、乾式法でシリコーン処理粉体の表面に付着させるが、より均一に表面処理するためには、湿式法の方が好ましい。
本発明の共重合体で被覆した粉体において、共重合体の量は、被覆後の粉体の0.1〜50重量%、例えば、1〜30重量%であってよい。
【0058】
本発明では、表面処理の際に必要ならば、使用感を改質するための適当な薬剤を併用しても良い。化粧品用粉体の使用感を改質するための薬剤としては、レシチン、N−モノ長鎖アシル塩基性アミノ酸、シリコーン、キトサン、コラーゲン、ワックスなどが例示される。
【0059】
従来、パーフルオロポリエーテルに代表されるフッ素系オイルは非フッ素原料と親和性が悪いために、化粧品への配合が難しかった。本発明は、上記の問題を解決するために、鋭意研究した結果、特定の組成のフッ素系(メタ)アクリレート共重合体を乳化剤として、フッ素系オイルを、シリコーン系溶剤、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤またはケトン系溶剤などの非フッ素系溶剤中に乳化して、フッ素系オイル/非フッ素系溶剤型の非水エマルションとすることで、化粧品への配合を容易にした。
【0060】
本発明は、化粧品用共重合体を乳化剤として、非フッ素系溶剤中に、フッ素系オイルを乳化して得られる非水エマルションを含む化粧品であって、
非フッ素系溶剤が、シリコーン系溶剤、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤またはケトン系溶剤のいずれかであり、
フッ素系オイルが、パーフルオロポリエーテル、ハイドロフルオロエーテル、または、一般式:
【化19】

[式中、R1aおよびR1dは、水素原子、または部分的にあるいは完全にフッ素化された炭素数1〜20の脂肪族基、R1bおよびR1cは、水素原子、炭素数1〜20の脂肪族基、または部分的にあるいは完全にフッ素化された炭素数1〜20の脂肪族基である。ただし、R1a〜R1dの少なくとも1つが、部分的にあるいは完全にフッ素化された炭素数1〜20の脂肪族基である。nは1〜20の数である。]
もしくは
【化20】

[式中、R2aは、水素原子、部分的にあるいは完全にフッ素化された炭素数1〜20の脂肪族基、R2b、R2cおよびR2dは、炭素数1〜20の脂肪族基、部分的にあるいは完全にフッ素化された炭素数1〜20の脂肪族基である。ただし、R2a〜R2dの少なくとも1つが部分的にあるいは完全にフッ素化された炭素数1〜20の脂肪族基である。mは1〜20の数である。]
で示される化合物である化粧品も提供する。
【0061】
乳化剤の量は、フッ素系オイル100重量部に対して1〜50重量部、例えば5〜20重量部であってよい。非フッ素系オイルの量は、フッ素系オイル100重量部に対して50〜10,000重量部、例えば100〜1000重量部であってよい。
【0062】
一般に、油溶性ポリマーを大量に化粧品に配合するときは、揮発性溶剤に溶解させた形態で配合される。これは油溶性ポリマーが固形あるいは弾力性のあるゴム状のために、製剤化しにくいためである。環状シリコーン、イソパラフィンに代表される揮発性溶剤は、油溶性ポリマーを溶解させる能力が高く、また、化粧品に高い機能性を付与できる反面、皮膚刺激が非常に強く、低刺激性が求められる敏感肌用化粧品では使用できない。このため、製剤化が容易なペースト状油溶性ポリマーが望まれてきた。ここでいうペースト状とは、常温で流動性がなく、手の力で容易に肌に塗布できる程度のレオロジー的性質を有するものである。
【0063】
本発明においても大部分の共重合体は固形あるいはゴム状であるが、上記の問題を解決するために、鋭意研究した結果、特定の組成のフッ素系(メタ)アクリレート共重合体がペースト状であることを発見した。
本発明は、フッ素系(メタ)アクリレートと含ケイ素重合性化合物からなる共重合体を必須成分とする化粧品であって、共重合体がフッ素系(メタ)アクリレートと含ケイ素重合性化合物の重量比3/7〜7/3のペースト状であり、揮発性溶剤を配合しないことを特徴とする化粧品も提供する。
【0064】
その共重合体の組成は、フッ素系(メタ)アクリレートと含ケイ素重合性化合物の重量比が3/7〜7/3、例えば4/6〜6/4であってよい。この共重合体に固形あるいはゴム状ポリマーを適量混合することにより、ペーストの性質を変化させることができる。ペースト状の共重合体の量は、化粧品全体に対して、1〜100重量%、例えば2〜80重量%であってよい。
【0065】
本発明では、ペースト状共重合体を必須成分として揮発性溶剤がないことを除けば、通常、化粧品で使用できる原料を使用することができる。例えば、共重合体の他に粉体、高沸点オイル、固体油、水、水溶性高分子、乳化剤、保湿剤の少なくともいずれか一つを配合してよい。
【0066】
フッ素系(メタ)アクリレートと含ケイ素重合性化合物を必須成分として重合した含フッ素共重合体を選択すると、フッ素系(メタ)アクリレートに由来する耐水性、撥水撥油性と、含ケイ素重合性化合物に由来する耐水性、撥水性、使用感(「すべり感」、「さらさら感」など)を満足したものが得られる。また含ケイ素重合性化合物を共重合することにより化粧品で汎用されるシリコーン油に溶解しやすくなる。フッ素原料とシリコーン原料を多量に配合する化粧品製剤に配合すると、相溶化剤として作用し、製剤の安定性が向上する。
【0067】
さらに、フッ素系(メタ)アクリレートと含ケイ素重合性化合物に加えて、アルキル(メタ)アクリレート(アルキル基の炭素数は1〜4であることが好ましい。)またはアルキル(メタ)アクリレートマクロモノマー(アルキル基の炭素数は1〜22であることが好ましい。)を重合している含フッ素共重合体を選択すると炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤に対する溶解性を改善することができる。特にアルキル(メタ)アクリレートマクロモノマーを用いた場合は、含フッ素(メタ)アクリレートセグメント、含ケイ素重合性化合物セグメント、アルキル(メタ)アクリレートマクロモノマーセグメントから成るグラフト共重合体となり、溶剤に対する溶解性が向上し、低フッ素濃度で高い耐水性と撥水撥油性を発現する。フッ素原料と、シリコーン原料、炭化水素系溶剤またはエステル系溶剤またはケトン系溶剤を配合する化粧品製剤に配合すると、相溶化剤として作用し、製剤の安定性が向上する。
【0068】
また、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを含む含フッ素共重合体を選択すると、汗と皮脂が共存する環境においても化粧崩れしにくくなる。一般に親水性モノマーを含有しない含フッ素共重合体の表面は、乾燥状態では油をはじくが、水が共存したときは逆に油で濡れてしまう[”フルオロアルキルアクリレートポリマーの表面特性と応用",久保元伸,表面,33,185(1995)]。これを防止するためには、親水性モノマー、特にポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを共重合すればよい。皮膚上においても汗と皮脂の量は外部環境に応じて変化する。ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを含む含フッ素共重合体では、どのような環境下でも撥水撥油性を示す。ただし、これらのモノマーを用いると、耐水性が若干弱くなる傾向がある。
【実施例】
【0069】
本発明の実施例について具体的に説明するが、この説明が本発明を限定するものではない。
【0070】
製造例1
還流冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた四つ口フラスコ中にCH2=CHCOO(CH2)2(CF2CF2)nCF2CF3(以下、FAと省略する。)(n=3、4、5の化合物の重量比が5:3:1の混合物)20g、側鎖メルカプト変性シリコーン:
【化21】

(信越化学工業製KF-2001) (以下、「Si−SH」と省略する。) 20g、トルエン 158gを入れ、60℃に加熱後、30分間窒素気流下で撹拌した。これにt−ブチルパーオキシピバレート(商品名パーブチルPV、日本油脂製)2gを添加し、6時間重合した。反応液中の残存FAをガスクロマトグラフィーで分析することより、FAの重合率が95%であることを確認した。得られた反応液をメタノールで沈殿、真空乾燥して、FA/Si−SH(=5/5wt.)共重合体を単離した。得られたFA/Si−SH共重合体の分子量をGPCで測定すると、重量平均分子量は20,000(ポリスチレン換算)であった。
【0071】
製造例2
製造例1のモノマーであるSi−SH 20gを、Si-SH 10gおよびn−ブチルアクリレート(BA) 10gに置き換える以外は製造例1と同じ方法で重合を行い、FA/Si-SH/BA(=5/2.5/2.5wt.)共重合体を得た。共重合体の重量平均分子量は18,000であった。
【0072】
製造例3
製造例1のモノマーであるSi−SH 20gを、両末端メルカプト変性シリコーン:
【化22】

(信越化学工業製X-22-167B) (以下、Si-DSHと省略) 20gに置き換える以外は製造例1と同じ方法で重合を行い、FA/Si-DSH(=5/5wt.)共重合体を得た。共重合体の重量平均分子量は25,000であった。
【0073】
製造例4
製造例1のモノマーであるSi-SH 20gを、Si-DSH 10gおよびBA 10gに置き換える以外は製造例1と同じ方法で重合を行い、FA/Si-DSH/BA(=5/2.5/2.5wt.)共重合体を得た。共重合体の重量平均分子量は22,000であった。
【0074】
製造例5
製造例1のモノマーであるSi-SH 20gを、アゾ基含有シリコーン:
【化23】

(和光純薬工業製VPS-0501) (以下、Azo-Siと省略する。) 10gおよびBA 10gに置き換える以外は製造例1と同じ方法で重合を行い、FA/Azo-Si/BA(=5/2.5/2.5wt.)共重合体を得た。共重合体の重量平均分子量は24,000であった。
【0075】
製造例6
製造例1のモノマーであるSi-SH 20gを、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン:
【化24】

(チッソ製サイラエースS710) (以下、TMS-MAと省略)20gに置き換える以外は製造例1と同じ方法で重合を行い、FA/TMS-MA(=5/5wt.)共重合体を得た。共重合体の重量平均分子量は21,000であった。
【0076】
実施例1および比較例1
製造例1、2、3、4、5および6で得られた共重合体を5重量%となるように環状シリコーン5量体(デカメチルシクロペンタシロキサン)、または、イソパラフィン(エクソン製アイソパーG)に溶解した。これらの溶液(共重合体濃度:非フッ素系溶剤中に5wt%)とパーフルオロポリエーテル(ダイキン工業製デムナムS-20)との界面張力をスピニングドロップ法[装置クルス社製(ドイツ)スピニングドロップ式界面張力計SITE-04]で測定した。また、比較例として、非フッ素系アクリル・シリコーン共重合体[信越化学工業製KP-545(ポリマー組成 Si-MM/メチルメタクリレート/ブチルメタクリレート/2-エチルヘキシルアクリレート=50/35/7.5/7.5wt.)]、フッ素変性シリコーンFS-1265(東レ・ダウコーニングシリコーン社製)を用いて界面張力を同様に測定した。結果を表1に示す。
【0077】
アクリル・シリコーン共重合体中のSi−MMは、式:
【化25】

[式中、Meはメチル基である。]
で示されるシリコーンマクロモノマーである。
【0078】
【表1】

【0079】
本発明の共重合体を非フッ素系溶剤中に配合すると、何も配合しないときと比較して、20〜60%に界面張力が低下した。これは共重合体がパーフルオロポリエーテル―非フッ素系溶剤界面に吸着していることの証明である。一方、比較例1では全く界面張力の低下は認められず、非フッ素系アクリル・シリコーン共重合体やフッ素変性シリコーンは、単に非フッ素系溶剤に溶解しているだけで、界面に吸着する能力はないことがわかる。
【0080】
実施例2および比較例2
製造例1、2、3、4、5、6で得られた共重合体を5重量%となるようにHCFC225(CF3CF2CHCl2)に溶解し、ガラス基板上にキャスト法で製膜した。これらの共重合体塗膜の水または流動パラフィンに対する接触角を測定した。また、比較例1で用いた非フッ素系アクリル・シリコーン共重合体、およびフッ素変性シリコーンFS−1265についても同様に測定した。結果を表2に示す。本発明の共重合体は比較例よりも高い接触角を示した。
【0081】
【表2】

【0082】
実施例3および比較例3
パーフルオロポリエーテル(ダイキン工業製デムナムS-20)10gと、製造例1、2、3、4、5および6で得られた共重合体の環状シリコーン5量体(デカメチルシクロペンタシロキサン)またはイソパラフィンの5重量%溶液20gを、超音波ホモジナイザーで1分間、乳化した。製造例1、2、3、4、5および6で得られた共重合体では、粒径約200〜300nmの安定な微細エマルションが得られた。しかし、比較例3[非フッ素系アクリル・シリコーン共重合体(信越化学工業製KP-545(ポリマー組成 Si-MM/メチルメタクリレート/ブチルメタクリレート/2-エチルヘキシルアクリレート=50/35/7.5/7.5wt.))またはフッ素変性シリコーンFS-1265のいずれかを共重合体として用いる。]では全くエマルションは形成しなかった。
【0083】
以下の実施例および比較例において、表3に示す混合粉体を使用して、化粧品を調製した。(1)〜(6)のフッ素処理粉体は、未処理粉体に対して5%のパーフルオロアルキルエチルリン酸エステルジエタノールアミン塩で処理されたものである。(7)〜(9)のシリコーン処理粉体は、2%のメチルハイドロジェンポリシロキサンで処理されたものである。
【0084】
【表3】

【0085】
化粧持ち(皮膜の撥水撥油性に由来)、使用感(すべり感、さらさら感)、耐水性を次の基準で評価した。
◎:非常に良い
○:良い
△:普通
×:悪い
××:非常に悪い
【0086】
評価は官能評価の専門パネラー5名が行い、その平均を結果とした。また、耐水性はポリエステルフィルム上に均一に塗膜し、1日放置して皮膜を形成させたものを試料とした。皮膜を水に1時間浸漬し、空気中で1日放置した後の皮膜上の対水接触角によって評価した。
接触角が110〜130°のときを◎、90〜109°のときを〇、60〜89°のときを△、30〜59°のときを×、29°以下のときを××とした。
【0087】
実施例4および比較例4
表3に示す混合粉体の構成成分であるフッ素処理粉体(1)〜(6)を、次に示す方法で、製造例1のFA/Si−SH(=5/5wt.)共重合体で表面処理した。フッ素処理粉体(1)〜(6)が混合されたもの40g、FA/Si−SH共重合体2g、トルエン100gを、ジューサーミキサーで30秒間混合した。これをアルミバットに入れて、60℃で1昼夜乾燥した。乾燥後、スピードカッターで粉砕して、FA/Si−SH共重合体で表面処理されたフッ素処理粉体を得た。
【0088】
製造例1のFA/Si−SH(=5/5wt.)共重合体の代りに、比較例1と同じ非フッ素系アクリル・シリコーン共重合体で表面処理されたフッ素処理粉体を使用したものを比較例4とした。
【0089】
上述のFA/Si−SH共重合体または非フッ素系アクリル・シリコーン共重合体で表面処理されたフッ素処理粉体69.7重量%を含む混合粉体89.8重量%、パラオキシ安息香酸エステル0.1重量%、ジメチルポリシロキサン10重量%および香料0.1重量%を用いて、パウダリーファンデーションを製造した。成分(1)または(2)、および(3)をアトマイザーで混合粉砕し、これをヘンシェルミキサーに移して、成分(4)および(5)を加え、均一に混合した。これを金型に入れ、プレス成型して、パウダリーファンデーションとした。パウダリーファンデーションの化粧持ち、耐水性および使用感を評価した。結果を表4に示す。
【0090】
【表4】

表の数値は重量%
【0091】
実施例5〜9
実施例4で使用したFA/Si-SH(=5/5wt.)共重合体を、製造例2(実施例5)、製造例3(実施例6)、製造例4(実施例7)、製造例5(実施例8)および製造例6(実施例9)のそれぞれの共重合体に置き換える以外は、実施例4と同じ手順を繰り返した。実施例5〜9において、化粧持ち、耐水性および使用感ともに、◎であった。
【0092】
実施例10および比較例5
表5に示す組成でネイルカラーを製造した。成分(1)〜(10)をディスパーで混合攪拌し、これに成分(11)、(12)を加えて、さらに混合攪拌して、ネイルカラーを得た。成分(11)の粉体は、実施例4と同様の方法で、製造例2のFA/Si−SH/BA(=5/2.5/2.5wt)共重合体で表面処理した。また、製造例2のFA/Si−SH/BA(=5/2.5/2.5wt)共重合体の代りに、比較例1と同じ非フッ素系アクリル・シリコーン共重合体で表面処理されたフッ素処理粉体を使用したものを比較例5とした。分散性を次の基準で評価した。
◎:非常に良い
〇:良い
△:普通
×:悪い
××:非常に悪い
【0093】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フッ素系(メタ)アクリレートから誘導された繰り返し単位5〜99重量部および
(B)メルカプト変性シリコーンおよびアゾ基含有シリコーンからなる群から選択された少なくとも1種の含ケイ素重合性化合物から誘導された繰り返し単位95〜1重量部
を有してなる化粧品用共重合体。
【請求項2】
繰り返し単位(A)および(B)に加えて、
(C)ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレートマクロモノマーおよびアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択された少なくとも1種の非フッ素系モノマーから誘導された繰り返し単位1〜50重量部を有してなる請求項1に記載の化粧品用重合体。
【請求項3】
フッ素系(メタ)アクリレートが、
一般式(I−1):
【化1】


[式中、Rfは炭素数6〜16のポリフルオロアルキル基もしくはパーフルオロポリエーテル基であり、
Aは炭素数1〜4のアルキレン基、
【化2】

(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基、R2は炭素数1〜4のアルキレン基である)、もしくは、
【化3】


であり、Xは、水素原子またはメチル基である。]
で示される化合物、または
一般式(I−2):
【化4】


[式中、Rfは炭素数6〜16のポリフルオロアルキル基もしくはパーフルオロポリエーテル基、
1は炭素数1〜4のアルキレン基、
【化5】

(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基、R2は炭素数1〜4のアルキレン基である)、もしくは、
【化6】


であり、X11は、水素原子またはメチル基であり、Y11は水素原子またはメチル基であり、mは5〜100である。]
で示されるフッ素系(メタ)アクリレートマクロモノマーである請求項1に記載の化粧品用共重合体。
【請求項4】
メルカプト変性シリコーンが一般式:
【化7】


[式中、R1は、場合によりエーテル結合1個または2個で遮断されている直鎖状または分岐鎖状の炭素鎖を有する炭素数1〜10の2価の飽和炭化水素基であり、lは10〜20であり、mは10〜200であり、nは1〜10である。]
で示される請求項1に記載の化粧品用共重合体。
【請求項5】
アゾ基含有シリコーンが一般式:
【化8】


[式中、xは10〜200であり、nは1〜20である。]
で示される請求項1に記載の化粧品用共重合体。
【請求項6】
ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートが、
一般式(III−1):
CH2=CR11COO−(R12−O)n−R13 (III−1)
[式中、R11およびR13は水素またはメチル基、R12は炭素数2〜6のアルキレン基、nは1〜50の整数を表す。]
で示される請求項2に記載の化粧品用共重合体。
【請求項7】
アルキル(メタ)アクリレートマクロモノマーが、
一般式(III−2):
【化10】


[式中、X21およびY21のそれぞれは水素原子またはメチル基であり、nは1〜22であり、mは5〜100である。]
で示される請求項2に記載の化粧品用共重合体。
【請求項8】
アルキル(メタ)アクリレートが、一般式(III−3):
【化11】


[式中、Xは水素原子またはメチル基であり、nは1〜22である。]
で示される請求項1に記載の化粧品用共重合体。

【公開番号】特開2008−50620(P2008−50620A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277797(P2007−277797)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【分割の表示】特願平10−74234の分割
【原出願日】平成10年3月23日(1998.3.23)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】