説明

化粧層用プリプレグの製造方法と化粧板

【課題】 従来の化粧板としての基本的特性を損なうことなく、表面平滑性に優れ、高い表面光沢度を有する化粧板が得られる化粧層用プリプレグの製造方法、ならびに、この製造方法で得られた化粧層用プリプレグを用いてなる化粧板を提供する。
【解決手段】 化粧板に用いられる化粧層用プリプレグの製造方法であって、
(a)化粧層用紙基材に第一の熱硬化性樹脂組成物を含浸、乾燥させ、樹脂含浸化粧紙を製造する工程、
(b)上記樹脂含浸化粧紙を予備加圧する工程、及び、
(c)上記予備加圧後の樹脂含浸化粧紙の化粧面側表面に、第二の熱硬化性樹脂組成物により樹脂層を形成する工程、を有することを特徴とする、化粧層用プリプレグの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧層用プリプレグの製造方法と化粧板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧板は、表面が硬く、耐熱性や耐汚染性に優れ、意匠性においても美しい外観を有し、更に豊富な色調、色柄の中から選択できることから、家具テーブル、会議用テーブル、事務デスク等の天板、あるいは住宅やオフィスビルの内装材などに広く使用されている。
【0003】
化粧板の意匠性は、化粧層用基材の色調・模様や、成形時に用いられるプレスプレートの表面形状によって決定され、例えば、柄模様を有する光沢仕様の化粧板を得る場合は、化粧層用基材として柄模様が印刷されたグラビア印刷化粧紙を用い、鏡面仕上げのプレスプレートを用いて加熱加圧成形されるのが一般的である。(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、このようにして得られた化粧板は、主に化粧層用基材の厚みや坪量の不均一性に起因する表面凹凸を有しており、表面平滑性や表面光沢度においては必ずしも充分なものではなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平07−285207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の化粧板としての基本的特性を損なうことなく、表面平滑性に優れ、高い表面光沢度を有する化粧板が得られる化粧層用プリプレグの製造方法、ならびに、この製造方法で得られた化粧層用プリプレグを用いてなる化粧板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、以下の本発明(1)〜(9)によって達成される。
(1)化粧板に用いられる化粧層用プリプレグの製造方法であって、
(a)化粧層用紙基材に第一の熱硬化性樹脂組成物を含浸、乾燥させ、樹脂含浸化粧紙を製造する工程、
(b)上記樹脂含浸化粧紙を予備加圧する工程、及び、
(c)上記予備加圧後の樹脂含浸化粧紙の化粧面側表面に、第二の熱硬化性樹脂組成物により樹脂層を形成する工程、
を有することを特徴とする、化粧層用プリプレグの製造方法。
(2)上記第一の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂としてメラミン樹脂を含有するものである上記(1)に記載の化粧層用プリプレグの製造方法。
(3)上記第二の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂とともに、一次粒子の平均粒径が5〜500nmである無機充填材を含有するものである上記(1)又は(2)に記載の化粧層用プリプレグの製造方法。
(4)上記無機充填材は、シリカを含有するものである上記(3)に記載の化粧層用プリプレグの製造方法。
(5)上記第二の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂としてメラミン樹脂を含有するものである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の化粧層用プリプレグの製造方法。
(6)上記(b)工程において予備加圧する際の圧力は、3〜20MPaである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の化粧層用プリプレグの製造方法。
(7)上記(c)工程において形成される樹脂層の厚みは、5〜50μmである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の化粧層用プリプレグの製造方法。
(8)上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の製造方法で得られた化粧層用プリプレグを、芯材層用プリプレグを含む化粧板用材料の表面側に積層し、これを加熱加圧成形してなることを特徴とする化粧板。
(9)化粧層表面に5〜40μmの表面樹脂層を有する上記(8)に記載の化粧板。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法により得られた化粧層用プリプレグを用いて化粧板を製造することにより、従来の化粧板としての基本的特性を損なうことなく、表面平滑性に優れ、高い表面光沢度を有する化粧板が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の化粧層用プリプレグの製造方法、及び、化粧板について説明する。
本発明の化粧層用プリプレグの製造方法(以下、単に「製造方法」ということがある)は、化粧板に用いられる化粧層用プリプレグの製造方法であって、
(a)化粧層用紙基材に第一の熱硬化性樹脂組成物を含浸、乾燥させ、樹脂含浸化粧紙を製造する工程、
(b)上記樹脂含浸化粧紙を予備加圧する工程、及び、
(c)上記予備加圧後の樹脂含浸化粧紙の化粧面側表面に、第二の熱硬化性樹脂組成物により樹脂層を形成する工程、
を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の化粧板は、上記本発明の製造方法で得られた化粧層用プリプレグを、芯材層用プリプレグを含む化粧板用材料の表面側に積層し、これを加熱加圧成形してなることを特徴とする。
【0010】
まず、本発明の製造方法について詳細に説明する。
本発明の製造方法は、まず、
(a)化粧層用紙基材に第一の熱硬化性樹脂組成物を含浸、乾燥させ、樹脂含浸化粧紙を製造する工程、
を有する。
【0011】
上記(a)工程で用いられる化粧層用紙基材としては特に限定されないが、例えば、セルロース抄造紙にグラビア印刷などにより色柄や模様を印刷した化粧紙などを用いることができる。
紙基材の坪量としても特に限定されないが、通常、30〜200g/mのものを用いることができる。
【0012】
上記(a)工程で用いられる第一の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含有するものである。
ここで熱硬化性樹脂としては特に限定されないが、例えば、レゾール型、ノボラック型などのフェノール樹脂、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらは単独で用いることもできるし、二種類以上を併せて用いることもできる。
【0013】
これらの熱硬化性樹脂の中でも、メラミン樹脂を含有するものを用いることが好ましい。メラミン樹脂は透明性が高く、変色・黄変しにくいので、化粧層用紙基材に印刷された色柄や模様を損なうことが少ない。
【0014】
上記第一の熱硬化性樹脂組成物としては、上記熱硬化性樹脂のほかにも、硬化剤、硬化促進剤のような硬化剤、カップリング剤、界面活性剤、顔料などの各種添加剤を配合することができる。
【0015】
上記(a)工程において、樹脂含浸化粧紙を製造する方法としては、公知の手法を適用することができる。
例えば、上記第一の熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤や水などの溶剤に溶解又は分散混合して樹脂組成物ワニスを調製し、これを化粧層用紙基材に含浸させた後、所定温度で乾燥することにより、所定量の第一の熱硬化性樹脂組成物を担持させるとともに、熱硬化性樹脂の反応を中途まで進行させたBステージの樹脂含浸化粧紙を得ることができる。
上記乾燥する温度は、用いる熱硬化性樹脂の種類により各々好適な温度範囲を選択することができるが、例えば熱硬化性樹脂としてメラミン樹脂を用いた場合は、通常、100〜150℃で実施することができる。
【0016】
上記(a)工程で得られる樹脂含浸化粧紙において、化粧層用紙基材と第一の熱硬化性樹脂組成物との比率は特に限定されないが、樹脂含浸化粧紙全体に対して、第一の熱硬化性樹脂組成物(固形分)の割合が40〜60重量%であるものを好適に用いることができる。
【0017】
次に、本発明の製造方法においては、
(b)上記樹脂含浸化粧紙を予備加圧する工程、
を有する。
【0018】
上記(b)工程は、上記(a)工程で得られた樹脂含浸化粧紙を、化粧板を製造する前に予備加圧するものである。これにより、主に化粧層用紙基材の厚みや坪量の不均一性に起因する樹脂含浸化粧紙の表面凹凸を低減させ、樹脂含浸化粧紙の平滑性を高めることができる。
そして、このように平滑性の高い樹脂含浸化粧紙に、後述する(c)工程において表面に樹脂層を形成することにより、厚みの均一性が高い表面樹脂層を化粧板表面に形成することができ、化粧板に高い表面平滑性と表面光沢性を付与することができる。
【0019】
樹脂含浸化粧紙を予備加圧する方法としては特に限定されないが、例えば、樹脂含浸化粧紙を平板プレス装置で加圧する方法、所定のクリアランスを有したロール対間を通す方法、などが挙げられる。
【0020】
平板プレス装置で加圧する方法を適用する場合は、樹脂含浸化粧紙1枚を2枚のプレスプレート(鏡面板)で挟んで実施することが好ましい。このほか、樹脂含浸化粧紙と鏡面板とを交互に積層して、複数枚数の樹脂含浸化粧紙について同時に処理する方法によってもよい。これにより、平滑性の高い樹脂含浸化粧紙を得ることができる。
また、所定のクリアランスを有したロール対間を通す方法による場合は、樹脂含浸化粧紙に圧力が作用する時間が短時間であるため、複数対のロール間を通して行うことが好ましい。
【0021】
上記予備加圧する際の条件としては特に限定されないが、例えば平板プレス装置を用いる場合には、圧力3〜20MPaで実施することが好ましい。これにより、上記効果を充分に発現させることができる。
また、上記圧力下での加圧時間としては特に限定されないが、20〜120秒間実施することができる。
また、温度は、常温で実施することもできるし、樹脂含浸化粧紙に担持された樹脂組成物が溶融しない程度の温度で加温して行うこともできる。
【0022】
次に、本発明の製造方法においては、
(c)上記予備加圧後の樹脂含浸化粧紙の化粧面側表面に、第二の熱硬化性樹脂組成物により樹脂層を形成する工程、
を有する。
【0023】
上記(c)工程で用いられる第二の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含有するものである。
ここで熱硬化性樹脂としては特に限定されないが、例えば、レゾール型、ノボラック型などのフェノール樹脂、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらは単独で用いることもできるし、二種類以上を併せて用いることもできる。
【0024】
これらの熱硬化性樹脂の中でも、メラミン樹脂を含有するものを用いることが好ましい。メラミン樹脂は透明性が高く、変色・黄変しにくいので、化粧層用紙基材に印刷された色柄や模様を損なうことが少ない。また、表面硬度や耐薬品性にも優れるので、表面耐衝撃強度の高い化粧板を得ることができる。
【0025】
上記第二の熱硬化性樹脂組成物としては、上記熱硬化性樹脂のほか、硬化剤、硬化促進剤のような硬化剤のほか、カップリング剤、界面活性剤、顔料などの各種添加剤を配合することができる。
【0026】
また、第二の熱硬化性樹脂組成物は、上記熱硬化性樹脂のほか、一次粒子の平均粒径が5〜500nmである無機充填材(以下、単に「微粒充填材」という)を含有することができる。
これにより、化粧板の表面光沢度、表面硬度、耐摩耗性を向上させることができる。
【0027】
ここで用いられる微粒充填材としては特に限定されないが、例えば、無水シリカ、コロイダルシリカのようなシリカ、マグネシア、ジルコニア、シリコンカーバイド、無水酸化アルミ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウムなどを用いることができる。
【0028】
これらの微粒充填材の中でも、無水シリカ、コロイダルシリカのようなシリカを含有するものであることが好ましい。シリカは安全性が高く、また、比較的低価格で入手することができるので、化粧板を製造するコストの高騰を抑えることができる。
そして特に、コロイダルシリカを用いることが好ましい。コロイダルシリカは取り扱い性に優れるとともに、第二の熱硬化性樹脂組成物中へ容易に分散させることができる。
【0029】
また、シリカを水あるいは有機溶剤中に分散させた形態のものも好ましく用いることができる。このような形態のシリカを得る方法としては特に限定されないが、例えば、クレアミックス(エム・テクニック社製)、T.K.フィルミックス(特殊機化工業社製)などの高速撹拌装置を用いて、水あるいは有機溶剤中に所定量のシリカ粒子を高速で撹拌して分散させる方法により得ることができる。
【0030】
第二の熱硬化性樹脂組成物に用いられる微粒充填材は、一次粒子の平均粒径が5〜500nmである。これにより、微粒充填材を含有する第二の熱硬化性樹脂組成物により樹脂層を形成しても、樹脂層の下側にある化粧紙に印刷された色柄や模様による意匠性を実質的に損なうことがない。
また、このように粒径が極めて小さい粒子を分散させた樹脂組成物から樹脂層を形成することにより、樹脂層中の熱硬化性樹脂が微小なマトリックスに分割され、このマトリックス単位で熱硬化性樹脂の硬化収縮や温度収縮による寸法変化を少しずつ吸収することができるので、化粧板の表面樹脂層にクラックを生じたり、これにより表面硬度や意匠性が低下したりするのを抑えることができる。
このような目的のためには、上記微粒充填材は、一次粒子の平均粒径が10〜50nmのものであることがさらに好ましい。
【0031】
微粒充填材の一次粒子の平均粒径が上記下限値より小さいと、第二の熱硬化性樹脂組成物を用いて樹脂組成物ワニスを調製する際に、微粒充填材の配合量によっては粘度が高くなりやすく、作業性が低下することがある。また、上記上限値を越えると、化粧板の意匠性を低下させたり、化粧板の表面平滑性が低下したりすることがある。また、樹脂層中において熱硬化性樹脂を微小なマトリックスに分割する効果が低下することがある。
【0032】
上記(c)工程で用いられる第二の熱硬化性樹脂組成物において、熱硬化性樹脂と微粒充填材との配合割合としては特に限定されないが、熱硬化性樹脂100重量部に対して、1〜50重量部であることが好ましい。さらに好ましくは2〜40重量部である。
微粒充填材の配合割合が上記下限値未満では、微粒充填材を配合する効果を充分に発現できないことがある。また、上記上限値を越えると、樹脂組成物ワニスを調製する際に粘度が高くなりやすく、作業性が低下することがある。また、流動性が過小になり化粧板の表面平滑性が低下することがある。
【0033】
上記(c)工程において、樹脂含浸化粧紙の化粧面側表面に、第二の熱硬化性樹脂組成物により樹脂層を形成する方法としては特に限定されないが、例えば、上記第二の熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤や水などの溶剤に溶解又は分散混合して樹脂組成物ワニスを調製し、これを樹脂含浸化粧紙の化粧面側表面に塗工して、次いで所定の温度で乾燥することにより樹脂層を形成させることができる。
樹脂含浸化粧紙の化粧面側表面に樹脂組成物ワニスを塗工する方法としては例えば、コンマコーターやロールコーターなどを用いて塗工する方法、薄膜スプレー装置などの噴霧装置を用いて塗工する方法、などが挙げられる。
なお、上記樹脂層は、上記樹脂組成物ワニスを塗工後、ワニスを調製する際に用いた溶剤を除去するだけでもよいし、熱硬化性樹脂の反応を中途まで進行させたBステージまで処理して形成することもできる。
【0034】
上記第二の熱硬化性樹脂組成物を用いて樹脂組成物ワニスを調製する方法としては特に限定されないが、熱硬化性樹脂、微粒充填材、添加剤などを所定量配合し、これを溶解又は分散する溶媒とともに撹拌混合することによって得られる。
ここで撹拌混合する方法としては特に限定されないが、例えば、通常の撹拌羽根を備えた撹拌装置、ディスパーザー、ホモミキサーのほか、高速撹拌装置として、例えば、クレアミックス(エム・テクニック社製)、T.K.フィルミックス(特殊機化工業社製)などを用いることができる。これらの中でも、上記高速撹拌装置を用いることが好ましい。これにより、微粒充填材の分散性を高め、熱硬化性樹脂と微粒充填材との均一混合性を高めることができる。
【0035】
上記(c)工程において形成される樹脂層の厚みは特に限定されないが、5〜50μmであることが好ましい。これにより、表面平滑性に優れ、表面光沢度の高い化粧板を得ることができる。
樹脂層の厚みが上記下限値未満では、化粧板に形成される表面樹脂層の厚みが充分ではなく、表面平滑性や表面光沢度を向上させる効果が充分でないことがある。また、上記上限値を超える厚みの樹脂層を形成することはできるが、上記効果のさらなる向上がみられ
ず、経済的でないことがある。
【0036】
本発明の製造方法においては、上記(b)工程において予備加圧された樹脂含浸化粧紙の表面に上記樹脂層を形成することを特徴とする。これにより、予備加圧されない樹脂含浸化粧紙を用いた場合に比べて、樹脂層としても均一性が高い厚みのものを容易に得ることができる。
そして、ここで形成された厚みの均一性が高い樹脂層は、化粧板の製造時においても実質的にその均一性が保持されやすいため、厚みの均一性が高い表面樹脂層を有した化粧板を得ることができ、表面平滑性や表面光沢度など、本発明の作用を効果的に発現することができる。
【0037】
次に、本発明の化粧板について説明する。
本発明の化粧板は、上記本発明の製造方法で得られた化粧層用プリプレグを、芯材層用プリプレグを含む化粧板用材料の表面側に積層し、これを加熱加圧成形してなることを特徴とする。
【0038】
本発明の化粧板において、芯材層用プリプレグは芯材層を形成するために用いられるものである。
芯材層用プリプレグに用いられる基材としては特に限定されないが、例えば、天然有機繊維、ガラス等の無機繊維、ポリエステル等の合成繊維などを単独もしくは混紡、混抄により複数種用いた紙、織布、あるいは不織布などが使用できる。
これらの中でも、高圧メラミン化粧板用としては、通常、坪量50〜250g/mのクラフト紙を用いることができる。また、難燃性又は不燃性の化粧板用としては、坪量30〜200g/mのガラス不織布やガラス織布を用いることができる。
【0039】
本発明の化粧板に用いられる芯材層用プリプレグは、上記基材に、熱硬化性樹脂、あるいは、熱硬化性樹脂と無機充填材を主成分とする樹脂ワニスを含浸又は担持させ、硬化性樹脂の反応をBステージまで進行させたものを好適に用いることができる。
【0040】
本発明の化粧板の構成としては、例えば、芯材層用プリプレグの所定枚数を積層して、その両表面側に本発明の化粧層用プリプレグを1枚ずつ用いることもできるし、芯材層用プリプレグの所定枚数を積層して、その片表面側に本発明の化粧層用プリプレグを1枚用い、反対側の表面側にはバック層用プリプレグを用いることもできる。
【0041】
本発明の化粧板はこのように、化粧層用プリプレグ、芯材層用プリプレグなどを所定の順序で積層し、平板プレス装置等を用いてこれらを加熱加圧成形することにより製造することができる。
加熱加圧成形の条件としては特に限定されないが、例えば、温度130〜170℃、圧力4〜10MPa、時間20〜120分間により行うことができる。
【0042】
本発明の化粧板において、化粧板表面に形成される表面樹脂層の厚みとしては特に限定されないが、5〜40μmとすることができる。これにより、表面平滑性に優れ、高い表面光沢度を有する化粧板とすることができる。表面樹脂層の厚みが上記下限値未満では、表面平滑性や表面光沢度が充分に向上しないことがある。
この表面樹脂層は、化粧板の平面方向において、厚みの均一性が高いことが好ましい。これにより、上記効果に加えて、化粧板の意匠性の均一性を高めることができる。
【0043】
以上に説明したように、本発明の化粧層用プリプレグは、樹脂含浸化粧紙を予備加圧し、樹脂含浸化粧紙の平滑性を高めた後、その化粧面側表面に樹脂層が形成されたものである。
そして、このような樹脂層を有する化粧層用プリプレグを用いることにより、厚みの均一性が高い表面樹脂層を有する化粧板を製造することができ、得られた化粧板は、高い表面平滑性、表面光沢度を有する。
また、表面樹脂層が微粒充填材を含有するものとすることにより、耐磨耗特性や表面硬度を向上させることができる。
本発明の化粧板は例えば、家具、事務用品、建築用内装材などに好適に用いることができるものである。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
【0045】
1.第一の熱硬化性樹脂組成物ワニスの調製
メラミン(M)とホルムアルデヒド(F)との反応モル比(F/M)が1.7となるように配合し、これを反応温度95℃で、水混和度が16ml/5mlとなるまで反応させ、メラミン樹脂溶液を得た。このメラミン樹脂溶液中のメラミン樹脂固形分は50重量%、溶剤成分の比率は、メタノール:水=5:95であった。このメラミン樹脂溶液100重量部に対して、硬化促進剤として、日東理研工業社製・「キャタニットA」0.5重量部を添加混合して、第一の熱硬化性樹脂組成物ワニスA(以下、単に「樹脂ワニスA」という)を得た。
【0046】
2.第二の熱硬化性樹脂組成物ワニスの調製(1)
上記樹脂ワニスAと同様にして、第二の熱硬化性樹脂組成物ワニスB(以下、単に「樹脂ワニスB」という)を得た。
【0047】
3.第二の熱硬化性樹脂組成物ワニスの調製(2)
上記樹脂ワニスAの樹脂固形分100重量部に対して、微粒充填材として、扶桑化学社製・「コロイダルシリカ PL−1」(一次粒子の平均粒径15nm)10重量部(固形分換算値)を配合した。
これを、高速撹拌装置(エム・テクニック社製・「クレアミックス」)を用いて、回転数15000rpmで3分間撹拌処理し、第二の熱硬化性樹脂組成物ワニスB(以下、単に「樹脂ワニスB」という)を得た。
【0048】
3.第二の熱硬化性樹脂組成物ワニスの調製(3)
上記樹脂ワニスAの樹脂固形分100重量部に対して、微粒充填材として、扶桑化学社製・「コロイダルシリカ PL−3」(一次粒子の平均粒径35nm)10重量部(固形分換算値)を配合した。
これを、高速撹拌装置(エム・テクニック社製・「クレアミックス」)を用いて、回転数15000rpmで3分間撹拌処理し、第二の熱硬化性樹脂組成物ワニスB(以下、単に「樹脂ワニスB」という)を得た。
【0049】
4.化粧層用プリプレグの製造
4.1 実施例1
(1)樹脂含浸化粧紙の製造
米坪90g/mの白色チタン紙に、上記で得られた樹脂ワニスAを含浸させた後、熱風乾燥装置で乾燥させ、米坪190g/m、揮発分6重量%の樹脂含浸化粧紙を得た。(2)樹脂含浸化粧紙の予備加圧
上記で得られた樹脂含浸化粧紙を、厚さ1.6mmのステンレス製プレスプレート(鏡面仕上げ)にはさみ、平板プレス装置を用いて、常温下で、5MPaで30秒間加圧した。
(3)化粧層用プリプレグの製造
予備加圧した後の樹脂含浸化粧紙の化粧面側に、上記で得られた樹脂ワニスBを、薄膜スプレー装置(アトマックス社製・「アトマックスノズル」)を用いて48g/m塗工し、135℃で100秒間、次いで、105℃で40秒間加熱乾燥して、化粧面に厚さ22μmの樹脂層が形成された化粧層用プリプレグ1を得た。
【0050】
4.2 実施例2
(1)樹脂含浸化粧紙の製造
実施例1と同様にして行った。
(2)樹脂含浸化粧紙の予備加圧
実施例1と同様にして行った。
(3)化粧層用プリプレグの製造
予備加圧した後の樹脂含浸化粧紙の化粧面側に、上記で得られた樹脂ワニスBを、実施例1と同じ薄膜スプレー装置を用いて96g/m塗工し、135℃で150秒間、次いで、105℃で40秒間加熱乾燥して、化粧面に厚さ45μmの樹脂層が形成された化粧層用プリプレグ2を得た。
【0051】
4.3 実施例3
(1)樹脂含浸化粧紙の製造
実施例1と同様にして行った。
(2)樹脂含浸化粧紙の予備加圧
実施例1と同様にして行った。
(3)化粧層用プリプレグの製造
予備加圧した後の樹脂含浸化粧紙の化粧面側に、上記で得られた樹脂ワニスBを、実施例1と同じ薄膜スプレー装置を用いて48g/m塗工し、135℃で100秒間、次いで、105℃で40秒間加熱乾燥して、化粧面に厚さ22μmの樹脂層が形成された化粧層用プリプレグ3を得た。
【0052】
4.4 実施例4
(1)樹脂含浸化粧紙の製造
実施例1と同様にして行った。
(2)樹脂含浸化粧紙の予備加圧
実施例1と同様にして行った。
(3)化粧層用プリプレグの製造
予備加圧した後の樹脂含浸化粧紙の化粧面側に、上記で得られた樹脂ワニスBを、実施例1と同じ薄膜スプレー装置を用いて96g/m塗工し、135℃で150秒間、次いで、105℃で40秒間加熱乾燥して、化粧面に厚さ45μmの樹脂層が形成された化粧層用プリプレグ4を得た。
【0053】
4.5 実施例5
(1)樹脂含浸化粧紙の製造
実施例1と同様にして行った。
(2)樹脂含浸化粧紙の予備加圧
実施例1と同様にして行った。
(3)化粧層用プリプレグの製造
予備加圧した後の樹脂含浸化粧紙の化粧面側に、上記で得られた樹脂ワニスBを、実施例1と同じ薄膜スプレー装置を用いて48g/m塗工し、135℃で100秒間、次いで、105℃で40秒間加熱乾燥して、化粧面に厚さ22μmの樹脂層が形成された化粧層用プリプレグ5を得た。
【0054】
4.6 実施例6
(1)樹脂含浸化粧紙の製造
実施例1と同様にして行った。
(2)樹脂含浸化粧紙の予備加圧
実施例1と同様にして行った。
(3)化粧層用プリプレグの製造
予備加圧した後の樹脂含浸化粧紙の化粧面側に、上記で得られた樹脂ワニスBを、実施例1と同じ薄膜スプレー装置を用いて96g/m塗工し、135℃で150秒間、次いで、105℃で40秒間加熱乾燥して、化粧面に厚さ45μmの樹脂層が形成された化粧層用プリプレグ6を得た。
【0055】
5.芯材層用プリプレグの製造
坪量75g/m 、比重0.23g/cm 、有機バインダー量11重量%のガラス繊維不織布に、水酸化アルミニウム(昭和電工社製・「H−100C」、平均粒径100μm)50部、水酸化アルミニウム(昭和電工社製・「H−32」、平均粒径8μm)40部、水溶性レゾール型フェノール樹脂8部(固形分)、水及びメタノール20部からなる芯材層用樹脂組成物を調製した。
この芯材層用樹脂組成物を、ガラス繊維不織布の重量に対して、固形分換算で20重量倍塗工して、芯材層用プリプレグを得た。
【0056】
6.化粧板の製造
6.1 実施例11
上記で得られた芯材層用プリプレグ4枚を積層し、その表裏両面側に、実施例1で得られた化粧層用プリプレグ1を1枚ずつ積層して、厚さ1.6mmのステンレス製プレスプレート(鏡面仕上げ)にはさみ、平板プレス装置により、140℃、8MPaの条件下で20分間加熱加圧成形し、厚さ約3mmの難燃タイプの化粧板を得た。
【0057】
6.2 実施例12
実施例1で得られた化粧層用プリプレグ1の代わりに、実施例2で得られた化粧層用プリプレグ2を用いた以外は、実施例11と同様にして化粧板を得た。
【0058】
6.3 実施例13
実施例1で得られた化粧層用プリプレグ1の代わりに、実施例3で得られた化粧層用プリプレグ3を用いた以外は、実施例11と同様にして化粧板を得た。
【0059】
6.4 実施例14
実施例1で得られた化粧層用プリプレグ1の代わりに、実施例4で得られた化粧層用プリプレグ4を用いた以外は、実施例11と同様にして化粧板を得た。
【0060】
6.5 実施例15
実施例1で得られた化粧層用プリプレグ1の代わりに、実施例5で得られた化粧層用プリプレグ5を用いた以外は、実施例11と同様にして化粧板を得た。
【0061】
6.6 実施例16
実施例1で得られた化粧層用プリプレグ1の代わりに、実施例6で得られた化粧層用プリプレグ6を用いた以外は、実施例11と同様にして化粧板を得た。
【0062】
6.7 比較例11
実施例1で得られた化粧層用プリプレグ1の代わりに、実施例1で得られた樹脂含浸化粧紙を用いた以外は、実施例11と同様にして化粧板を得た。
【0063】
6.8 比較例12
実施例1で得られた化粧層用プリプレグ1の代わりに、実施例1で得られた、樹脂含浸化粧紙を予備加圧したものを用いた以外は、実施例11と同様にして化粧板を得た。
【0064】
実施例1〜6で得られた化粧層用プリプレグ、実施例11〜16で得られた化粧板、及び、比較例11〜12で得られた化粧板の特性について、表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
7.評価方法
(1)化粧層用プリプレグの樹脂層の厚み
樹脂含浸化粧紙と化粧層用プリプレグとの重量差(樹脂層を形成する前後の重量差)と、第二の熱硬化性樹脂組成物の固形分比重とから算出した。
【0067】
(2)化粧板の表面樹脂層の厚み
化粧板(1m×1m)を、大きさ200mm×200mmの試料25枚に裁断し、各試料の平面方向の略中心部の断面を顕微鏡で観察し、25箇所の厚みを測定し、この平均値とR(最大値−最小値)を算出した。
【0068】
(3)表面光沢性
化粧板表面について、村上色彩技術研究所社製・像鮮明度光沢計「DGM−30」を用いて、像鮮明度を測定した。測定条件は、光の入射角度30度、受光角度30度で実施した。この測定値は、正反射軸の反射光量(100)に対する、軸に対して±0.3度の範囲内での計測光量の比率を示したものであり、反射光の拡散度により表面平滑度、表面光沢性を示す指標である。
【0069】
(4)化粧板の表面粗さ
化粧板表面について、ミツトヨ社製・3D精密形状測定装置を用い、Raを測定した。
【0070】
(5)化粧板の耐摩耗性
JIS K 6902(熱硬化性樹脂化粧板試験方法)に準拠して、化粧紙の印刷色の層が最初に切り取られたときの回転数を測定した。
【0071】
(6)化粧板の表面硬度
JIS K 6902に準拠して、ダイヤモンド針を用いて化粧板の引っ掻き硬さを測定した。
試験条件は、ダイヤモンド針に与える荷重を10gから開始し、この荷重を10gずつ増やしていき、引っ掻きキズが確認された直前のg数で示した。
【0072】
実施例1〜6は、本発明の化粧層用プリプレグである。
そして、実施例11〜16は、上記本発明の化粧層用プリプレグを用いた化粧板であり、比較例11、比較例12と比較して、表面平滑性に優れ、高い表面光沢度を有する化粧板とすることができた。
特に、実施例13〜16は、化粧板の表面樹脂層中に微粒充填材が配合されており、耐磨耗特性や表面硬度についても大きく向上させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、本発明の製造方法により得られた化粧層用プリプレグを用いて化粧板を製造することにより、従来の化粧板としての基本的特性を損なうことなく、表面平滑性に優れ、高い表面光沢度を有する化粧板を製造することができる。
本発明の化粧板は、例えば、例えば、家具、事務用品、建築用内装材などに好適に用いることができるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧板に用いられる化粧層用プリプレグの製造方法であって、
(a)化粧層用紙基材に第一の熱硬化性樹脂組成物を含浸、乾燥させ、樹脂含浸化粧紙を製造する工程、
(b)前記樹脂含浸化粧紙を予備加圧する工程、及び、
(c)前記予備加圧後の樹脂含浸化粧紙の化粧面側表面に、第二の熱硬化性樹脂組成物により樹脂層を形成する工程、
を有することを特徴とする、化粧層用プリプレグの製造方法。
【請求項2】
前記第一の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂としてメラミン樹脂を含有するものである請求項1に記載の化粧層用プリプレグの製造方法。
【請求項3】
前記第二の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂とともに、一次粒子の平均粒径が5〜500nmである無機充填材を含有するものである請求項1又は2に記載の化粧層用プリプレグの製造方法。
【請求項4】
前記無機充填材は、シリカを含有するものである請求項3に記載の化粧層用プリプレグの製造方法。
【請求項5】
前記第二の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂としてメラミン樹脂を含有するものである請求項1ないし4のいずれかに記載の化粧層用プリプレグの製造方法。
【請求項6】
前記(b)工程において予備加圧する際の圧力は、3〜20MPaである請求項1ないし5のいずれかに記載の化粧層用プリプレグの製造方法。
【請求項7】
前記(c)工程において形成される樹脂層の厚みは、5〜50μmである請求項1ないし6のいずれかに記載の化粧層用プリプレグの製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の製造方法で得られた化粧層用プリプレグを、芯材層用プリプレグを含む化粧板用材料の表面側に積層し、これを加熱加圧成形してなることを特徴とする化粧板。
【請求項9】
化粧層表面に5〜40μmの表面樹脂層を有する請求項8に記載の化粧板。

【公開番号】特開2006−231709(P2006−231709A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49823(P2005−49823)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】