説明

化粧料

【課題】 負電荷酸素原子を含有した酸性度がpH5よりも高い酸性水を配合した化粧料を提供する。
【解決手段】 負電荷酸素原子を含有した酸性度がpH5よりも高い酸性水を含有することを特徴とする化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料に関し、特に安全性が高く防腐効果が大きな防腐剤として酸性水を含有した化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
水に特定の機能を付加した水は機能性水とも称されている。また、少量の塩類を含む水を隔膜を有する電解槽で電気分解を行うことによって、酸性を示す酸性水とアルカリ性を示すアルカリ水を製造することが知られている。
【0003】
各種の塩を電解質として添加した水を電気分解して得られる酸性水には、添加した塩に由来する物質が含まれているために、得られた酸性水によって処理した後には添加した塩に由来する物質によって使用目的等が限られる。
【0004】
そこで、陽イオン交換膜の両面に、それぞれ陽極と陰極とを密着させた固体電解質型の電解槽において、電解質を含有していない超純水を使用して電気分解を行うことによって、酸性水、アルカリ水を提供することが提案されている(例えば、特許文献1)。
ところが、得られる酸性水の酸性度は充分なものではなく防腐剤として使用することができるものではなかった。
【特許文献1】特開平10−286571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、防腐性と殺菌性を有する物質として化粧料の特性には悪影響を及ぼさず、人体に対する影響が少なく、安全性が高くて殺菌、および防腐効果が大きな物質を含有した化粧料を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、負電荷酸素原子を含有した酸性度がpH5よりも高い酸性水を含有する化粧料によって解決することができる。
また、酸素原子、負電荷酸素原子、水素原子のみを構成単位とする酸性水を含有した前記の化粧料である。
酸性水を防腐剤として含有した前記の化粧料である。
化粧料の製造方法において、活性酸素を包接した複合酸化物を加熱して生成した負電荷酸素原子を水と接触させて得られた酸性度がpH5よりも高い酸性水を配合することによる化粧料の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の化粧料は、酸素原子、水素原子以外を含んでいない酸性水を、殺菌剤および防腐剤として配合したものであって、有機物からなる防腐剤を使用した場合のようにアレルギー問題、皮膚刺激等の問題が生じがたい、より安全性が高い化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、負電荷酸素原子を含有する気体を水と接触することによって得られた酸性度を高めた水、すなわち酸性水が、化粧料の防腐剤として安全性が高く、防腐効果も大きいことを見いだしたものである。
本出願人は負電荷酸素原子を含有した気体の有する酸化作用、殺菌作用等を利用することをWO2003/050037、特開2005−1908号公報、特開2006−6670号公報等において提案している。
これらの発明においては、複合酸化物焼成体面に電極を配置して電圧を印加したり、あるいは加熱することによって、負電荷酸素原子を生成させ、希ガス等を利用して生成した負電荷酸素原子を搬送して、対象物の酸化、あるいは殺菌等の目的で利用することを提案している。
ところが、負電荷酸素原子を含有した気体を水と接触させることによって酸性度が大きな酸性水が得られることは、全く予期し得ないことであった。
【0009】
また、負電荷酸素原子を含有した気体を水と接触することによって、酸性度が大きな酸性水が得られる理由は定かではないが、得られた酸性水は、負電荷酸素原子を含有したものであって強力な殺菌作用を有しており、パラベン等の化粧料用防腐剤と同様の効果を奏することを見いだしたものである。
【0010】
本発明の化粧料は、負電荷酸素原子を含有する気体を水に接触させることによって生成した酸性水を配合したものである。酸性水は、酸素原子、負電荷酸素原子、水素原子のみを含むものである。したがって、生成した酸性水はその作用を別にすれば、一般の水とは変わらないものであって取扱が容易であるという特徴を有している。
また、本発明において、酸素原子、水素原子、負電荷酸素原子のみを含むものであるとは、例えばイオン交換水等を原料にして製造した酸性水にあっては、水を構成する原子である、酸素原子、水素原子、負電荷酸素原子のみを構成単位としており、原料としたイオン交換水等に由来する不可避的な不純物をわずかに含有するものを意味している。
【0011】
また、本発明の化粧料においては、水を原料として製造した酸性水以外にも、その配合する化粧料に応じて、その他の殺菌剤、防腐剤を併用しても良い。
【0012】
本発明の化粧料に配合する酸性水の製造に使用する複合酸化物焼成体としては、負電荷酸素原子を包接した複合酸化物焼結体を用いて製造することができる。
具体的には、酸化カルシウム・酸化アルミニウム複合酸化物(12CaO・7Al23 以下、C12A7とも称す)、あるいはこれらに更に酸化セリウム等を含有する複合酸化物を焼成した複合酸化物焼成体を用いることができる。
【0013】
複合酸化物焼成体がカルシウムアルミネートである場合には、カルシウム源の物質としては、酸化カルシウム等の酸化物、あるいは酸素含有雰囲気で焼成することによって酸化カルシウムを生成する各種の物質を挙げることができ、水酸化カルシウムまたは炭酸カルシウム等が好適である。
またアルミニウム源としては、酸化アルミニウム等の酸化物、もしくは酸素含有雰囲気で焼成した場合に、格別の処理が必要な気体を発生することなく酸化アルミニウムを生成する水酸化アルミニウム等の物質を用いることができる。
【0014】
負電荷酸素原子の発生用の複合酸化物焼成体は、加熱することによって負電荷酸素原子の発生効率を高めることができる。複合酸化物焼成体の加熱は、各種の方法を用いることができるが、発熱体を一体に形成したセラミックヒータ等と複合酸化物焼成体の膜とを一体とすることによって、小型で加熱効率が高い装置を得ることができる。
例えば、発熱体を内部に形成したアルミナ等からなるセラミックヒータ上に、厚み5から1,000μmの複合酸化物焼結体薄膜を形成させたヒータ一体型の装置を用いることによって、効率的な加熱を実現できる。
【0015】
負電荷酸素原子の発生用の複合酸化物焼成体は、C12A7の場合には、700℃以上の温度に加熱し、またセリウム酸化物を含むC12A7の場合には400℃以上に加熱して使用することが好ましい。
【0016】
また、発生した負電荷酸素原子は、単独であるいは搬送用気体とともに水と接触させることによって酸性水を製造することができる。
搬送用気体としては、ヘリウム、アルゴン、キセノン等の希ガス、窒素、乾燥空気等を用いることができる。
また、搬送用気体、あるいは負電荷酸素原子を含有した気体を任意の位置に誘導する配管あるいはチューブは、不導体を用いる場合には、静電帯電列が正となる材質を用いることができるがナイロン、ガラス等が好ましい。また、金属材料を用いる場合には、耐食性の酸化膜を形成したものを用いることができる。
【0017】
酸性水は、負電荷酸素原子を水と接触させることによって得られ、生成する酸性水の酸性度は、負電荷酸素原子を含有した気体との接触時間が長くなるほど高くなる。
負電荷酸素原子発生装置から発生する負電荷酸素原子は、負電荷酸素原子発生装置の発生部の圧力が低いほど発生効率も高いので、負電荷酸素原子発生部を大気圧よりも減圧として負電荷酸素原子を搬送用気体によって搬送して、大気圧以上の圧力として水と接触させることが好ましい。水との接触は、負電荷酸素原子を搬送する気体を水中へ注入して曝気することによって行うことができる。また、水との接触前には、負電荷酸素気体を搬送する気体の温度は、接触する水と同等の温度まで冷却することが好ましい。
【0018】
負電荷酸素原子の発生部の圧力を減圧とし、水との接触部は大気圧として圧力差を形成することによって、負電荷酸素原子の発生効率を高めるとともに、酸性水の生成効率を高めることができる。
例えば、負電荷酸素原子を搬送用気体とともにポンプによって負電荷酸素原子を吸引して水中へ注入することによって、負電荷酸素原子発生部の圧力を大気圧よりも減圧し、水との接触部の圧力を大気圧以上に高めることができる。
また、ポンプに代えてアスピレータを使用し、アスピレータへの供給水として酸性水の 製造用の水を供給してアスピレータにおいて負電荷酸素原子を水と接触させても良い。
【0019】
図1は、本発明の化粧料に配合する酸性水の製造方法の一例を説明する図である。
酸性水の製造装置1は、負電荷酸素原子発生装置2を有しており、負電荷酸素原子発生装置2は、その内部にセラミックヒータと一体化した負電荷酸素発生素子3を設けている。
負電荷酸素発生素子3は、アルミナ製のセラミック中に発熱体を一体に形成したセラミックヒータに上に形成されており、図に示す発生装置2には3個の負電荷酸素発生素子3を管の内部に配置したものであり、1個の場合に比べて発生量を多くすることができる。
負電荷酸素原子発生素子3には、加熱電流供給回路から加熱電極端子4へと加熱電流が供給されて負電荷酸素原子発生素子3の温度を所定の温度に加熱される。
【0020】
一方、負電荷酸素原子発生装置2に接続された搬送気体供給手段5から、ヘリウム、アルゴン、窒素、乾燥空気等が搬送気体として供給される。負電荷酸素原子発生装置2に設けた搬送管6には、ポンプ7が設けられており、搬送気体を吸引することによって負電荷酸素原子発生素子3の表面を負圧を形成するとともに、ポンプの出力側を正圧として水槽8内部の水中に供給し、水との接触によって負電荷酸素原子を含んだ酸性水を効率的に発生することができる。
以下に、実施例を参照して本発明を説明する。
【実施例】
【0021】
実施例1
(酸性水の調製)
セラミックヒータに酸化カルシウム・酸化アルミニウム複合酸化物(12CaO・7Al23)の薄膜を積層した縦、横がそれぞれ122mmのヒータ一体型の負電荷酸素原子発生素子の3個を、C12A7の複合酸化物層が内側となるように正三角形の管状に配置して、ヒータへの電流を調整して内側の表面温度を700℃に保持した。
次いで、搬送用気体として、アルゴンを5l/minの流量で供給し、発生器出口に取り付けたステンレス製フレキシブルチューブにてガスを冷却した後、ナイロン製チューブにて、ヤマト化学製超純水製造装置WD500で製造した100mlの超純水中に5時間注入し、酸性度を測定したところ、pH4であった。
【0022】
次いで、得られた酸性水を電子スピン共鳴装置(日本電子製 JFS−FE−3X)によって測定したところ、図2に示すように負電荷酸素原子を示すピークが確認された。
更に、発生させた負電荷酸素原子を100mlの純水中に50時間注入し、得られた水の酸性度を測定したところpHは3であった。また、電子スピン共鳴装置によって測定したところ、図2に示すように、酸性度がpH4の酸性水に比べて負電荷酸素原子を示すより大きなピークが観測された。
また、比較のために、負電荷酸素原子を含有する気体を注入していない水についても同様に測定して図2に示した。
【0023】
実施例2
実施例1によって得られた酸性水の微生物に対する特性を測定するために、酸性水に対して、黒かび(C.Cladosporioides NBRC6348)、赤色酵母(Rhodotorula sp)、大腸菌(E.coli NBRC3972)、および黄色ブドウ球菌(S.aureus NBRC13276)をそれぞれ、1000個/mlの濃度となるにように混合して25℃で15分間作用させた。
次いで、黒かび、赤色酵母はPDA培地に、大腸菌、黄色ブドウ球菌は、SCDAgar培地に100μlずつ塗布し、培養温度30℃において、黒かびは3日間、その他のものは1日間、それぞれ培養器において培養した後、微生物のコロニー数を計数した。
【0024】
比較のために、それぞれの微生物について同様の濃度の生理食塩水に分散した試料を調製して同様に培養し、培養後の微生物のコロニー数を計数した。
酸性水で処理した微生物のコロニーの数に対する酸性水を含まない生理食塩水中に分散した菌体によるコロニー数の比を生存率として表1に示した。
【0025】
比較例1
酸性水に代えて表1に記載の酸性度の硫酸を用いた点を除き実施例1と同様にして微生物の生存率を測定し、その結果を表1に示す。
【0026】
表1
微生物種類 処理液種類 処理液pH 生存率
黒かび 酸性水 2.9 0.00084
黒かび 硫酸 2.5 0.30
赤色酵母 酸性水 3.0 <0.00035
赤色酵母 硫酸 2.9 0.81
大腸菌 酸性水 4.0 0.0077
大腸菌 硫酸 4.0 0.70
黄色ブドウ球菌 酸性水 4.0 0.45
黄色ブドウ球菌 硫酸 4.0 1.0
【0027】
実施例3
実施例1で得られたpH3.0の酸性水を用いて表2に示す組成の化粧水を調製しそこにかび(Penisillum sp)を3×104個/ml接種し、35℃7日間保存した。なお、配合比は、質量部で示し、全量を100質量部とした。
その後、PDA培地に0.1ml塗布し培養温度30℃において3日間培養した後、かびのコロニーを計測し、死滅効果を確認し、その結果を表3に示す。
【0028】
表2
グリセリン エタノール コラーゲン 尿素 酸性水 蒸留水
化粧水1 4.9 7.7 0.01 − 残部 −
化粧水2 4.9 7.7 0.01 − − 残部
化粧水3 9.8 3.9 − 4.9 残部 −
化粧水4 9.8 3.9 − 4.9 − 残部
表3
生存率
0日 1日 4日 7日
化粧水1 1.0 0.02 − <0.004
化粧水2 1.0 0.77 0.71 0.71
化粧水3 1.0 <0.02 − <0.00
化粧水4 1.00 0.80 0.73 0.47
【0029】
実施例4
実施例1で得られたpH3.5の酸性水を用いて表4に示す組成の保湿クリームを調製し、30℃雰囲気にて1ヶ月使用したところ、酸性水を使わない組成のクリームではかびによる汚染が見られたが酸性水を使用したクリームでは汚染が見られなかった。
【0030】
表4
成分 質量部
アプリコットオイル 5
アーモンドオイル 2
セチルアルコール 0.5
レモン精油 1.5
モノステアリン酸グリセリル 1.5
ステアロイル乳酸ナトリウム 2.5
グリセリン 4
ビタミンE 1
アロエ濃縮液 (エアグリーン社製) 5
pH3.5酸性水 77
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の化粧料は、負電荷酸素原子を含有する気体を水に接触して製造した酸性水を配合したものであって、負電荷酸素原子による微生物の死滅あるいは微生物の増殖の抑制の作用を有し、有機化合物からなる防腐剤を添加した場合と同様の効果をそうするとともに、アレルギー等に対しても安全であるという特徴を有している。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の化粧料に配合する酸性水の製造方法の一例を説明する図である。
【図2】図2は、酸性水を電子スピン共鳴装置によって測定した測定結果を説明する図である。
【符号の説明】
【0033】
1…酸性水の製造装置、2…負電荷酸素原子発生装置、3…負電荷酸素発生素子、4…加熱電極端子、5…搬送気体供給手段、6…搬送管、7…ポンプ、8…水槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負電荷酸素原子を含有した酸性度がpH5よりも高い酸性水を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項2】
酸素原子、負電荷酸素原子、水素原子のみを構成単位とする酸性水であることを特徴とする請求項1記載の化粧料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−29756(P2009−29756A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197518(P2007−197518)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(503210740)株式会社Oxy Japan (12)
【Fターム(参考)】