説明

化粧材

【課題】絵柄層を有する化粧材において、荷の積み降ろし際には、表面に傷を付けてしまうこと無く容易に取り扱うことが可能であるとともに積み重ねた際の荷崩れのおそれがなく、また、持続した耐表面汚染性を有する化粧材を提供する。
【解決手段】化粧材1は、基材2と、基材2上に設けられ、水性接着剤からなるシーラー層3と、シーラー層3よりも上層に設けられ、水性インキからなる絵柄層4と、絵柄層4を覆って最表面6aを形成する表面保護層6とを備え、表面保護層6は、油性樹脂または電離放射線硬化性モノマーの硬化により形成されたマトリックス樹脂に、シリコーンオイルを含んだ汚染防止剤を含有してなり、最表面6aの動摩擦係数が0.1以上0.3以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧材に関するものであり、より具体的には、ノックダウン方式の組み立て家具(readyto−assemble furniture)や一般内装材等に用いられるフラットまたは立体模様化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅建材や家具など、例えばノックダウン方式の組み立て家具などに使われてきた化粧材は、高光沢を付与する表面保護層を有している。このような表面保護層は動摩擦係数が小さくて滑りやすく、特に、層間密着性や耐汚染性の効果を持たせる為にシリコーンオイル等を添加すると、さらに動摩擦係数が小さくなる。このため、木質基材等に積層して化粧板に加工して、運搬あるいは保管のために複数枚を積み重ねた場合、互いに滑って荷が崩れてしまうおそれがあり、取り扱いが困難である問題があった。
【0003】
このため、基材と印刷層とシーラー層とトップコート層からなり、トップコート層が架橋性樹脂からなり、動摩擦係数が0.3から0.6の範囲に制御されてなる化粧材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この化粧材によれば、動摩擦係数を上記範囲とすることで、積み重ねた場合に滑って落下するのを防止することができるとされている。
【特許文献1】特開2006−137195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の化粧材によれば、化粧板とした場合に、動摩擦係数を上記範囲とすることで、各化粧板を積み重ね、あるいは、降ろす際に大きな力が必要となってしまい、また、互いが擦れあって表面に傷が付きやすくなってしまう問題があった。
さらに、化粧材としては、表面の耐汚染性がさらに優れたものであるとともに、その耐汚染性がより長期にわたって維持されるものが望まれていた。
【0005】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、絵柄層を有する化粧材において、荷の積み降ろし際には、表面に傷を付けてしまうこと無く容易に取り扱うことが可能であるとともに積み重ねた際の荷崩れのおそれがなく、また、持続した耐表面汚染性を有する化粧材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の化粧材は、基材と、該基材上に設けられ、水性接着剤からなるシーラー層と、 該シーラー層よりも上層に設けられ、水性インキからなる絵柄層と、該絵柄層を覆って最表面を形成する表面保護層とを備え、該表面保護層は、油性樹脂または電離放射線硬化性モノマーの硬化により形成されたマトリックス樹脂に、シリコーンオイルを含んだ汚染防止剤を含有してなり、前記最表面の動摩擦係数が0.1以上0.3以下であることを特徴としている。
【0007】
この発明に係る化粧材によれば、表面保護層の最表面の動摩擦係数が0.1以上0.3以下であることで、化粧板として積層した際に互いの摩擦力で、崩れてしまうことなく、また、積み降ろしの際には表面に傷付くこと無く容易に取り扱うことが可能である。また、表面保護層にシリコーンオイルを含むことで、持続した耐表面汚染性を有している。
【0008】
また、上記の化粧材において、前記表面保護層の前記最表面には、凹凸模様が施されていることがより好ましいとされている。
この発明に係る化粧材によれば、凹凸模様により木の導管模様などを表現することができる。
【0009】
また、上記の化粧材において、前記表面保護層と前記絵柄層との間には、水性接着剤からなるプライマー層が介装されていることがより好ましいとされている。
この発明に係る化粧材によれば、表面保護層と絵柄層との層間密着性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の化粧材は、基材と、該基材上に設けられ、油性インキからなる絵柄層と、該絵柄層を覆って最表面を形成する表面保護層とを備え、該表面保護層は、電離放射線硬化性モノマーの硬化により形成されたマトリックス樹脂に、シリコーンオイルを含んだ汚染防止剤を含有してなり、前記最表面の動摩擦係数が0.1以上0.3以下であることを特徴としている。
【0011】
この発明に係る化粧材によれば、表面保護層の最表面の動摩擦係数が0.1以上0.3以下であることで、化粧板として積層した際に互いの摩擦力で、崩れてしまうことなく、また、積み降ろしの際には表面に傷付くこと無く容易に取り扱うことが可能である。また、表面保護層にシリコーンオイルを含むことで、持続した耐表面汚染性を有している。
【0012】
また、上記の化粧材において、前記表面保護層と前記絵柄層とに間に介装され、油性接着剤からなるプライマー層を備えていることがより好ましいとされている。
この発明に係る化粧材によれば、表面保護層と絵柄層との層間密着性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の化粧材によれば、表面保護層を備えることで、荷の積み降ろし際には、表面に傷を付けてしまうこと無く容易に取り扱うことが可能であるとともに積み重ねた際の荷崩れのおそれがなく、また、持続した耐表面汚染性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、この発明に係る第1の実施形態を示している。
図1に示すように、本実施形態の化粧紙(化粧材)1は、紙からなる基材2と、基材2上に設けられたシーラー層3と、シーラー層3上に設けられ水性インキからなる絵柄層4と、絵柄層4上に設けられたプライマー層5と、プライマー層5上に設けられ最表面6aを形成する表面保護層6とを備える。以下に各構成の詳細について説明する。
【0015】
基材2は、通常化粧紙の基材として使用されているものであれば、特に制限なく用いることができ、より具体的には、薄葉紙、紙間強化紙、含浸紙などを用いることができる。特に、坪量20〜60g/mの晒もしくは未晒薄葉紙、紙間強化紙等の薄葉紙、坪量50〜250g/mの含浸紙等を好適に使用することができる。
【0016】
なお、本実施形態では、化粧材として、基材に紙を使用した化粧紙について説明しているが、これに限るものでは無く、紙以外のものを基材としても良い。この場合、例えば、天然繊維又は合成繊維からなる織布又は不織布、ホモ又はランダムポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、共重合ポリエステル樹脂、アモルファス状態の結晶性ポリエステル樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレン樹脂、メチルメタアクリレート樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂等のアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、繊維素系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、フッ素系樹脂等の合成樹脂系基材、木材単板、突板、合板、集成材、パーティクルボード、中密度繊維板等の木質系基材、石膏板、セメント板、珪酸カルシウム板、陶磁器板等の無機質系基材、鉄、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属系基材等、又はそれらの複合体、積層体等、従来公知の任意の材料が使用可能であり、その形状も、例えばフィルム状乃至シート状、板状、異型成型体等、一切制限はない。
【0017】
基材2上に設けられるシーラー層3は、水性接着剤からなり、接着層として基材2と上層の絵柄層4との層間密着性を向上させるものである。塗布量としては、乾燥後で0.5g/m以上4.0g/m以下であることが好ましい。シーラー層3を形成する水性接着剤としては、バインダー樹脂を水溶液または水性エマルジョンの形態で含有するものが選択される。バインダー樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、カゼイン、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、アミノ酸系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、繊維素誘導体等の樹脂を選択可能であるが、油性樹脂でも良く、さらに二重結合を有していてもいなくてもよい。
【0018】
また、水性接着剤に含まれるバインダー樹脂は、必ずしも単一の樹脂である必要はない。すなわち、ある二重結合を有するバインダー樹脂に対して、その他の二重結合を有するバインダー樹脂や二重結合を有さない樹脂を1種または2種以上混合しても良い。その際の二重結合を有する樹脂の含有量は、平均で1.0〜150mgKOH/gの範囲であることが好ましい。
【0019】
また、水性接着剤には、紫外線や電子線等のエネルギー線によりラジカル重合して硬化するエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーの1種または2種以上を含有させるものとしても良い。このようなモノマーを、二重結合を有する樹脂の含有量として、バインダー樹脂中に平均値として、1.0〜150mgKOH/gの範囲で含有させることにより、密着性及び耐汚染性を向上させることができ、特に耐汚染性向上の点において有効である。また、密着性の向上は、水性接着剤に含まれるモノマーが、表面保護層6を構成する後述する電離放射線硬化性モノマーと反応することによる。
【0020】
この複数種の樹脂の混合は、樹脂同士が性能を補完し合うのに有効である。例えば、二重結合を多く有するが、コストが高い樹脂に対して、二重結合を有さないが密着性に優れてコストが低い樹脂を混合した混合樹脂を用いることにより、全体として密着性が優れ、コスト的にも満足できる水性接着剤組成物を得ることができる。
【0021】
また、水性接着剤に含まれる水性バインダー樹脂が酸基を有する場合、水性接着剤に硬化剤を添加することができる。この場合、硬化剤としては、水性バインダー樹脂に含まれる酸基と反応性を有する官能基を有する硬化剤が使用される。そのような硬化剤は、官能基として、エポキシ基、オキサゾリン基、アジリジニル基、カルボジイミド基、シラノール基、アルコキシリル基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基等を有することができる。硬化剤1分子中にこれらの官能基は、1種またはそれ以上存在し得る。硬化剤を含有する水性接着剤は、塗布後加熱乾燥により硬化させることができる。
【0022】
硬化剤の官能基の量は、水性バインダー樹脂の酸基量の0.01当量以上、0.50当量以下であることが好ましい。官能基の量が0.01当量より少ない場合は、硬化剤を含有させたことによる効果を得ることができない。また、官能基の量が、0.50当量より多い場合は、水性バインダー樹脂の分子間架橋が過剰になり、シーラー層3が剛直となる。このため、隣接する層との密着性が悪化し、極端な場合、水性接着剤層による表面保護層6の歪み緩和効果が不足し、表面保護層6との密着性も悪化する傾向にある。さらに、各層間の密着性が不良となることから、耐汚染性の悪化にもつながる。
【0023】
硬化剤の骨格としては、特に制限はない。例えば、ペンタエリスリトールやトリメチロールプロパン、ソルビトール、グリセロール、レゾルシノール、ビスフェノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等の比較的低い分子量の骨格が挙げられる。
【0024】
硬化剤は、その種類も多様であるため、一概に適性分子量は決められないが、分子量が約500未満になると、その添加量にもよるが、得られた化粧紙に粘着性が残ってしまい、化粧紙同士が接着してしまう場合がある。一方、分子量が1000を超えると、樹脂の酸基量に対して硬化剤の官能基量が少なくなり、十分な耐汚染性が得られない場合や、水性接着剤組成物の粘度が高くなり、分子量が大きい場合と同じ不具合を生じる場合がある。従って、硬化剤は、500以上1000以下の分子量を有することが好ましい。
【0025】
シーラー層3に設けられた絵柄層4は、水性絵柄インキを塗布し、乾燥することにより形成することができる。水性絵柄インキは、水性バインダー樹脂と着色料(顔料等)を含むものであれば、特に制限はないが、水性バインダー樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、カゼイン、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、アミノ酸系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレングリコール、繊維素誘導体等の樹脂を、水溶液または水性エマルジョンの形態で含むことが好ましい。これらのバインダー樹脂は、水性絵柄層として印刷後に乾燥工程を経ることにより難水溶化する性質を有している。バインダー樹脂が水溶性樹脂(カルボン酸基、アミン基等を有する樹脂)である場合、そのカルボン酸基をアミンで中和した形態で、あるいはアミノ基を酸で中和した形態で用いることができる。バインダー樹脂としては、建材物性の比較的良好な(メタ)アクリル樹脂またはウレタン樹脂が好ましい。また、これら水性バインダー樹脂は、酸基を有しても有していなくてもよい。
【0026】
また、最表面6aを形成する表面保護層6は、電離放射線硬化性モノマーと、シリコーンオイルを含む汚染防止剤とから形成されている。ここで、電離放射線とは、一般に物質に電離作用を及ぼす放射線をいい、X線、γ線、β線(電子線)、及び、短波長紫外線を含むが、本発明では、光開始剤による紫外線硬化型樹脂も使用できるので、電離作用を及ぼすことのない長波長紫外線も含む。
【0027】
表面保護層6に含まれる電離放射線硬化性モノマーとは、モノマーのみからなる。すなわち、樹脂形成成分としてオリゴマー(二量体以上で、かつ分子量1万未満の多量体)およびポリマー(分子量1万以上の重合体)を含まない。
【0028】
表面保護層6に上記のような電離放射線を照射すると、電離放射線硬化性モノマーは、硬化(架橋)してマトリックス樹脂を形成し、そのマトリックス樹脂内に汚染防止剤が組み込まれる。また、電離放射線硬化性モノマー組成物に含まれるモノマーは、下地層(絵柄層4、シーラー層3、プライマー層5等)に浸透し、電離放射線の照射により下地層においても硬化し、層間接着強度を有意に向上させる(投錨効果)。オリゴマーおよびポリマーは、一般に粘度が高く、塗工後の平滑性や投錨効果が十分でない。
【0029】
具体的には、表面保護層6に含まれる電離放射線硬化性モノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物を用いることができ、それらには単官能モノマー、二官能モノマーおよび三官能以上の多官能モノマーが含まれる。通常、モノマーは親水性を有しない非親水性のものであり、例えば、−CHO基、−OH基および−COOH基のいずれも持たない。
【0030】
上記電離照射硬化性モノマーにおいて、エチレン性不飽和二重結合を有する単官能モノマーとしては、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、エトキシ化ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロポキシ化ノニルフェノール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレン(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートジプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
また、二官能モノマーとしては、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(水素化)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、(水素化)エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、(水素化)プロピレングリコール変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0032】
また、多官能モノマーとしては、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレートエステル、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0033】
また、表面保護層6に含まれる電離放射線硬化性モノマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリアクリル(メタ)アクリレート等のモノマーが、粘度が低いので塗工後の表面が平滑になりやすく、また、シーラー層3、絵柄層4等への投錨効果も向上するので、望ましい。
【0034】
なお、最表面6aを形成する表面保護層6としては、油性樹脂と、シリコーンオイルを含む汚染防止剤とから形成されるものとしても良い。ここで、油性樹脂としては、2液ウレタン樹脂、変性アクリル樹脂、マレイン酸変性アクリル樹脂、アクリルポリオール、変性アクリルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエステルポリオール、アルキッド樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。また、硬化剤のイソシアネートとして、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシサネート、イソホロンジイソシアネート、ジフエニルメタンジイソシアネート及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0035】
表面保護層6に含まれるシリコーンオイルを含む汚染防止剤は、表面保護層6の最表面6aに汚れが付着してしまうことを防止するものであり、また付着した汚れを各種洗剤、溶剤を使用して拭き取ることを容易にするものでもある。この汚染防止剤は、電離放射線硬化性モノマーから構成されるマトリックス樹脂内に組み込まれているので、汚れの拭き取りによって表面保護層6の最表面6aから掃去されても、表面保護層6内部から再び最表面6aにブリードしてくるために、耐汚染性を常に表面保護層6の最表面6aに付与することができ、それ故に長期にわたって耐汚染性を維持することができる。
【0036】
汚染防止剤に含まれるシリコーンオイルとしては、無変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイルを用いることができる。シリコーンオイルの量は、電離放射線硬化性モノマーとの合計重量を基準として、0.2重量%以上、4.0重量%以下であることが好ましい。シリコーンオイルの量が0.2重量%未満であると添加効果が得られず、また、4.0重量%を超えると、シリコーンオイルが絵柄層4やシーラー層3などの水性樹脂下地層の表面に多量に存在する結果、下地水性樹脂がはじかれ、表面保護層6との密着不良の原因となり得る。
【0037】
表面保護層6には、耐磨耗性をさらに向上させるために、粒径が4μm以上15μm以下の針状シリカや透明シリカ、有機無機シリカゲル粒子、(メタ)アクリル樹脂ビーズ、ウレタン樹脂ビーズ、尿素ホルムアルデヒド樹脂粉末等を添加することもできる。通常、これら粒状添加物は、電離放射線硬化性モノマーとの合計重量を基準として、0.5重量%以上20.0重量%以下の範囲で添加することができる。なお、これらの添加物は、透明性、密着性や耐汚染性を低下させるものではない。
【0038】
また、表面保護層6において、上記の電離放射線硬化性モノマーと汚染防止剤とに、さらに分子中にヒドロキシル基を有する溶媒を混合したものを塗工した後、電離放射線を照射することにより、生成するマトリックス樹脂分子にヒドロキシル基を導入することができる。このようにすることで、表面保護層6に含まれる電離放射線硬化性モノマーは、上記のように通常親水性を有さないが、硬化して生成する樹脂分子が親水性を持つようになる。このため、電離放射線硬化性モノマーを含む表面保護層6と、その下地層(水性樹脂組成物で形成される絵柄層4やシーラー層3等)との濡れ性を向上させて接着性を高めることができる。分子中にヒドロキシル基を有する溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、n−ブタノール、2−プロパノール等の低級アルコール等がある。係る溶媒の添加量は、電離放射線硬化性モノマー100重量部に対して、3重量部以上20重量部以下であることが好ましい。
【0039】
また、表面保護層6の塗布量としては、得られるマトリックス樹脂の比重により多少左右されるが、乾燥後で、通常1〜50g/m、好ましくは1〜25g/m、最適には、7g/mの量で塗布することが好ましい。さらに、表面保護層6の最表面6aにおける動摩擦係数を0.1以上0.3以下にする。
なお、動的摩擦係数は、SLIP/PEEL TESTER Model SP−2000(IMASS.INC.製)を使用して評価した値である。より詳しくは、重さ200g、幅62.5mm×長さ62.5mmの金属性重りに厚み3mmの発泡ウレタンフォームを巻いた重りに試料を巻きつけ、上記の化粧紙1を貼り付けた化粧板において最表面6a上に乗せて、1270mm/minの速度で動かすことによって動摩擦係数を測定するものである。
【0040】
また、絵柄層4と表面保護層6との間に介装されたプライマー層5は、接着層として層間密着性を向上させるものである。プライマー層5は、表面保護層6の硬化の際の収縮による歪み等を防止するために、(メタ)アクリル樹脂を主成分(バインダー樹脂の合計重量の50重量%以上を占める)として含有するバインダー樹脂を含む水性接着剤により形成することが好ましい。水性接着剤は、バインダー樹脂を水溶液または水性エマルジョンの形態で含有する。(メタ)アクリル樹脂に加えて水性接着剤中に配合され得るバインダー樹脂としては、ウレタン樹脂、カゼイン、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、アミノ酸系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、繊維素誘導体等の樹脂を例示することができる。なかでも、ウレタン樹脂が好ましい。これらのことを除けば、プライマー層5を形成する水性接着剤は、上記シーラー層3を提供する水性接着剤と同じであるので、その詳細(二重結合の存在、その含有量、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーおよび二重結合の量、硬化剤等)を省略する。なお、プライマー層5の塗布量は、乾燥後で0.5g/m以上10.0g/m以下程度であることが好ましい。
【0041】
(第2の実施形態)
図2は、この発明に係る第2の実施形態を示している。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0042】
図2に示すように、この実施形態の化粧紙10は、第1の実施形態の化粧紙1と同様の層構造を有するが、表面保護層6及びプライマー層5に形成された凹部6b、5aによって表現される凹凸模様が施されている。このような凹凸模様は、絵柄層4上にパターン状に設けられた水性撥液性樹脂組成物11によって付与され、水性撥液性樹脂組成物11を通して絵柄層4がパターン状に露出することで、例えば木の導管模様などが表現できる。
【0043】
より詳しくは、水性撥液性樹脂組成物11は、撥液剤と、水性バインダー樹脂とを含んでいて、これらは、水溶液または水性エマルジョンの形態で含有されている。水性バインダー樹脂としては水性アクリル樹脂を、撥液剤としては水性フッ素樹脂を含むものが特に好ましい。また、水性撥液性樹脂組成物11は、必要に応じて、顔料、硬化剤を含有することができる。そして、凹凸模様は、このような水性撥液性樹脂組成物11を、絵柄層4上に所定のパターンで形成した後に、プライマー層5となる水性プライマー組成物(水性接着剤)を塗布し、さらに、表面保護層6となる電離放射線硬化性モノマー組成物を塗布することによって形成される。プライマー層5及び表面保護層6は、水性撥液性樹脂組成物11が存在する部分において含まれている撥液剤によりはじかれ、水性撥液性樹脂組成物11が存在しない絵柄層4上にのみ選択的に積層される。こうして、表面保護層6及びプライマー層5には、水性撥液性樹脂組成物11に対応する位置で凹部6b、5aが形成されることとなり、木の導管模様などを表現することが可能となる。
なお、表面保護層6を木目柄や抽象柄で全面艶消し塗工した後、導管等の抜き柄を印刷し、導管模様などを光沢差により視認させることもできる。
【0044】
(第3の実施形態)
図3は、この発明に係る第3の実施形態を示している。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0045】
図3に示すように、この実施形態の化粧紙20では、絵柄層21は、パターン状に形成されている。また、絵柄層21とシーラー層3との間には、隠蔽層22が介装されている。そして、隠蔽層22上において、絵柄層21を覆うようにしてプライマー層5が形成され、さらに、表面保護層6が形成されている。また、表面保護層6の最表面6aには、エンボス加工により凹部23が形成されていて、これにより凹凸模様が施され、木の導管模様などが表現できる。
【0046】
絵柄層21としては、パターン状に形成されているのを除いて、第1の実施形態の化粧紙1の絵柄層4と同様である。また、隠蔽層22は、不透明顔料と、バインダー樹脂とを含む水性隠蔽性インキにより形成される。不透明顔料としては、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック等を用いることができる。バインダー樹脂としては、水性ウレタン樹脂、水性アクリル樹脂、カゼイン等を用いることができ、これら樹脂は水溶液または水性エマルジョンの形態で水性隠蔽性インキに含有される。
【0047】
(第4の実施形態)
図4は、この発明に係る第4の実施形態を示している。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0048】
図4に示すように、この実施形態の化粧紙30は、プライマー層5を設けていないことを除いて、第1の実施形態の化粧紙10と同様の構成である。本実施形態の化粧紙30のようにプライマー層5を設けていなくても、表面保護層6を構成する電離放射線硬化性モノマーによりもたらせられる投錨効果により、表面保護層6と絵柄層4との密着性は有意に高いものである。
【0049】
(第5の実施形態)
図5は、この発明に係る第5の実施形態を示している。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0050】
図5に示すように、この実施形態の化粧紙40は、プライマー層5を設けていないことを除いて、第2の実施形態の化粧紙10と同様の構成である。この場合も、表面保護層6を構成する電離放射線硬化性モノマーによりもたらせられる投錨効果により、表面保護層6と絵柄層4との密着性は有意に高いものである。
【0051】
(第6の実施形態)
図6は、この発明に係る第6の実施形態を示している。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0052】
図6に示すように、この実施形態の化粧紙50は、プライマー層5を設けていないことを除いて、第3の実施形態の化粧紙20と同様の構成である。この場合も、表面保護層6を構成する電離放射線硬化性モノマーによりもたらせられる投錨効果により、表面保護層6と絵柄層21及び隠蔽層22との密着性は有意に高いものである。
【0053】
(第7の実施形態)
図7は、この発明に係る第7の実施形態を示している。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0054】
図7に示すように、この実施形態の化粧紙60の層構成は、シーラ層が設けられていないことを除いて、第3の実施形態の化粧紙20と同様である。また、この実施形態の化粧紙60では、絵柄層61として、油性インキ及び油性接着剤を用いており、また、プライマー層62として、油性接着剤を用いている。また、隠蔽層63は、不透明顔料と油性バインダー樹脂とを含む油性隠蔽性インキにより形成される。
【0055】
絵柄層61に油性インキを用いる場合の油性バインダー樹脂としては、硝化綿、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ブチラール樹脂などを単体あるいは混合物で油性溶剤と共に用いたものが挙げられる。ここで、油性溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルイソブチルケトン、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル等、または、これらの混合物が挙げられる。
【0056】
また、プライマー層62に用いる油性接着剤としては、ポリエステルポリオールと各種イソシアネート、アクリルオリゴマーと各種イソシアネート、アクリルポリオールと各種イソシアネート、アクリルオリゴマーとアクリルポリオールの混合物と各種イソシアネート等が挙げられる。特には、油性2液ウレタン樹脂が好適に用いられるが、特にこれに限定されるものではない。
前記各種イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0057】
隠蔽層63に用いる不透明顔料としては、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック等が挙げられる。また、油性バインダー樹脂としては、絵柄層61と同様のものが挙げられる。
【0058】
このような絵柄層61として油性インキを使用した化粧材60において、シーラ層を設けずとも、油性接着剤からなるプライマー層62を設けることで、層間密着強度が向上する。また、最表面6aの動摩擦係数を0.1以上0.3以下とすることで、滑り過ぎず、適度な滑り性を付与することができるので、積載性も向上させることができる。
【0059】
(第8の実施形態)
図8は、この発明に係る第8の実施形態を示している。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0060】
図8に示すように、この実施形態の化粧紙70は、プライマー層62を設けないことを除いて、第7の実施形態の化粧紙60と同様の構成である。この場合も、表面保護層6を構成する電離放射線硬化性モノマーによるもたらされる投錨効果により、表面保護層6と絵柄層21及び隠蔽層22との密着性は有意に高いものである。
【0061】
次に、以下に示す実施例1〜10に基づいて、上記第1〜第7の実施形態の各化粧紙1、10、20、30、40、50、70の詳細について説明する。
【実施例1】
【0062】
本実施例では、以下のようにして、図1に示すような第1の実施形態の化粧紙1を作製した。
すなわち、坪量30g/mの紙間強化紙(A20C、天間特殊製紙(株)製)を基材2とし、基材2の表面に、反応基を残存させた水性ウレタン樹脂系塗料(LW059 Sealer、東洋インキ製造(株)製)を、乾燥後の塗布量が1.0g/mとなるように塗布してシーラー層3を形成した。
このシーラー層3上に、全体を100重量部として、水性アクリル樹脂バインダー(東洋インキ製造(株)製、固形分25重量%、酸価150mgKOH/g)50重量部、硬化剤オキサゾリン環を有する水性樹脂(固形分40重量%、官能基価252mgKOH/g)1重量部、インキ(PCW、東洋インキ製造(株)製;ジスアゾ系赤色顔料、ジスアゾ系黄色顔料、及び、フタロシアニン系藍色顔料からなる)5重量部、並びに、水44重量部からなる水性絵柄インキを用いて、木目柄をグラビア印刷して、絵柄層4を形成した。
この絵柄層4の上に、プライマー層5として、水性アクリル樹脂エマルジョン(固形分40重量%)と、水性ウレタン樹脂エマルジョン(二重結合を有するウレタン樹脂エマルジョン、固形分40重量%)との重量比7:3の混合物(Liochem社製Primer−A)を水で希釈し、乾燥後の塗布量が2g/mとなるように塗工した。
このプライマー層5上に、電離放射線硬化型モノマー(ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート50重量部、エトキシ化トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート50重量部)と、アミノ変性シリコーンオイル0.5重量%と、粒径が10μmの透明針状シリカ5.0重量%とを混合したものを、10g/mの量で塗工した後、窒素雰囲気中で電子線を照射して硬化させて表面保護層6を形成した。照射条件は、線量50KGy(5Mrad)、125V、ライン速度200m/分であった。
以上によって作製された化粧紙1ついて、上記方法によって表面保護層6の最表面6aの動摩擦係数を測定した結果、動摩擦係数は0.150であった。
【実施例2】
【0063】
本実施例では、以下のようにして、図2に示すような第2の実施形態の化粧紙10を作製した。なお、基材2、シーラー層3、絵柄層4、プライマー層5、及び、表面保護層6の詳細については、実施例1と同様である。
本実施例では、絵柄層4上に、水性撥液性樹脂組成物11(全体を100重量部として、水性アクリル樹脂40重量部、水性メラミン樹脂25重量部、水性フッ素樹脂エマルジョン30重量部、およびカーボンブラック5重量部からなる)を所定のパターンで形成し、プライマー層5及び表面保護層6を積層することで、凹部6b、5aを形成し、導管模様を印刷した。
以上によって作製された化粧紙10ついて、上記方法によって表面保護層6の最表面6aの動摩擦係数を測定した結果、動摩擦係数は0.125であった。
【実施例3】
【0064】
本実施例では、以下のようにして、図3に示すような第3の実施形態の化粧紙20を作製した。なお、基材2、シーラー層3、プライマー層5、及び、表面保護層6の詳細については、実施例1と同様である。
本実施例では、シーラー層3上に、水性隠蔽性インキ(酸化チタン系白色顔料、酸化鉄系茶色顔料、酸化鉄黄土色顔料、及び、カーボンブラック系黒色顔料からなる東洋インキ製造(株)製インキ)を乾燥後の塗布量が10g/mとなるようにグラビア印刷し、隠蔽層22を形成した。そして、隠蔽層22上に、所定のパターンで絵柄層21を形成した。絵柄層21の詳細については、実施例1の絵柄層4と同様であるので説明を省略する。そして、隠蔽層22及び絵柄層21を覆うようにしてプライマー層5を形成し、さらに表面保護層6を形成した。最後に、表面保護層6の最表面6aに、室温から100℃程度に加熱した凹凸ローラを用いて凹部23を形成することで、凹凸模様を付与した。なお、加熱することなく凹部23を形成可能であれば、凹凸ローラを加熱する必要は無い。
以上によって作製された化粧紙20ついて、上記方法によって表面保護層6の最表面6aの動摩擦係数を測定した結果、動摩擦係数は0.200であった。
【実施例4】
【0065】
本実施例では、図4に示すような第4の実施形態の化粧紙30を作製した。なお、プライマー層5を設けなかったことを除いて、実施例1と同様である。
そして、作製された化粧紙30について、上記方法によって表面保護層6の最表面6aの動摩擦係数を測定した結果、動摩擦係数は0.125であった。
【実施例5】
【0066】
本実施例では、図5に示すような第5の実施形態の化粧紙40を作製した。なお、プライマー層5を設けなかったことを除いて、実施例2と同様である。
そして、作製された化粧紙40について、上記方法によって表面保護層6の最表面6aの動摩擦係数を測定した結果、動摩擦係数は0.125であった。
【実施例6】
【0067】
本実施例では、図6に示すような第6の実施形態の化粧紙50を作製した。なお、プライマー層5を設けなかったことを除いて、実施例3と同様である。
そして、作製された化粧紙50について、上記方法によって表面保護層6の最表面6aの動摩擦係数を測定した結果、動摩擦係数は0.125であった。
【実施例7】
【0068】
本実施例では、図1に示すような第1の実施形態の化粧紙10を作製した。なお、表面保護層6を形成する電離放射線硬化型組成物に電離放射線硬化性モノマー100重量部に対して水5.0重量部を添加したことを除いて実施例1と同様である。
そして、作製された化粧紙10について、上記方法によって表面保護層6の最表面6aの動摩擦係数を測定した結果、動摩擦係数は0.125であった。
【実施例8】
【0069】
本実施例では、図1に示すような第1の実施形態の化粧紙10を作製した。なお、シーラー層3を形成する水性ウレタン樹脂系塗料に、硬化剤として、Liochem社製LT109 EB Hardennerを5重量部添加したことを除いて、実施例1と同様である。
そして、作製された化粧紙10について、上記方法によって表面保護層6の最表面6aの動摩擦係数を測定した結果、動摩擦係数は0.125であった。
【実施例9】
【0070】
本実施例では、図7に示すような第7の実施形態の化粧紙60を作製した。
すなわち、坪量30g/mの紙間強化紙(A20C、天間特殊製紙(株)製)を基材2とし、基材2上に、硝化綿樹脂系油性隠蔽インキ(酸化チタン系白色顔料、酸化鉄系茶色顔料、酸化鉄系黄土色顔料、及び、カーボンブラック系黒色顔料からなる東洋インキ製造(株)製)を用いて、隠蔽層63を形成した。次に、隠蔽層63上に、ジスアゾ系赤色顔料、ジスアゾ系黄色顔料及びフタロシアニン系藍色顔料からなる油性絵柄インキを用いて、木目柄のグラビア印刷を行い、絵柄層61を形成した。
この絵柄層61の上に、プライマー層62として、油性2液ウレタン樹脂(クリルオリゴマーと、アクリルポリオールと、硬化剤ヘキサメチレンジイソシアネートとの重量比50:50:4の混合物)を有機溶剤(酢酸エチルと酢酸ブチルとの重量比7:3の混合物)で希釈(油性2液ウレタン樹脂100重量部対して有機溶剤20重量部)し、乾燥後の塗布量が2g/mとなるように塗工した。
このプライマー層62の上に、電離放射線硬化型モノマー(ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート50重量部、エトキシ化トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート50重量部)とアミノ変性シリコーンオイル0.5重量%と、粒径が10μmの透明針状シリカを5.0重量%とを混合したものを、10g/mの量で塗工した後、窒素雰囲気中で電子線を照射して硬化させて表面保護層6を形成した。照射条件は、線量50KGy(5Mrad)、125V、ライン速度200m/分であった。
以上によって作製された化粧紙60ついて、上記方法によって表面保護層6の最表面6aの動摩擦係数を測定した結果、動摩擦係数は0.120であった。
【実施例10】
【0071】
本実施例では、図8に示すような第8の実施形態の化粧紙70を作製した。なお、プライマー層62を設けなかったことを除いて、実施例9と同様である。
そして、作製された化粧紙70について、上記方法によって表面保護層6の最表面6aの動摩擦係数を測定した結果、動摩擦係数は0.120であった。
【0072】
次に、実施例1〜10と比較するために、以下に示す比較例1〜3に係る化粧紙を作製した。
【0073】
<比較例1>
本比較例では、実施例1の化粧紙1において、表面保護層6に含まれるアミノ変性シリコーンオイルの含有率を4.5重量%とした。これ以外については、実施例1の化粧紙1と同様である。
そして、作製された比較例1の化粧紙について、上記方法によって表面保護層6の最表面6aの動摩擦係数を測定した結果、動摩擦係数は0.090であった。
【0074】
<比較例2>
本比較例では、実施例1の化粧紙1において、表面保護層6に含まれるアミノ変性シリコーンオイルの含有率を0.1重量%とした。これ以外については、実施例1の化粧紙1と同様である。
そして、作製された比較例2の化粧紙について、上記方法によって表面保護層6の最表面6aの動摩擦係数を測定した結果、動摩擦係数は0.370であった。
【0075】
<比較例3>
本比較例では、実施例1の化粧紙1において、表面保護層6にアミノ変性シリコーンオイルを含有させなかった。これ以外については、実施例1の化粧紙1と同様である。
そして、作製された比較例3の化粧紙について、上記方法によって表面保護層6の最表面6aの動摩擦係数を測定した結果、動摩擦係数は0.450であった。
【0076】
<性能評価>
次に、実施例1〜10、比較例1〜3の各化粧紙について、パーティクルボードに尿素系接着剤で接着して化粧板を作製し、各化粧板について、積載性、密着性、及び、耐汚染性についての性能評価を行った。耐汚染性については、耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性、及び、耐染着性の四項目によって評価した。以下、各性能評価方法の詳細を示すとともに、その結果について、表1に動摩擦係数の測定結果と合わせて示す。
【0077】
1. 積載性
厚さ25mm×幅300mm×長さ300mmのパーティクルボードに化粧紙を接着して化粧板をそれぞれ20枚ずつ作製し、各実施例及び各比較例と対応する化粧板について、それぞれ20枚重ねた後に全体を5°傾斜させて、積載滑り落ち試験を行った。評価としては、化粧板が崩れるか否か、また、化粧紙表面に傷が形成されてしまうか否かによって行う。ここで、表1の積載性の欄において、○は、崩れないことを意味し、×は、滑って崩れる、あるいは、滑らないが化粧紙表面に傷ができることを意味している。
【0078】
2.密着性
厚さ5mmのパーティクルボードに化粧紙を接着して化粧板を作製し、各実施例及び各比較例と対応する化粧板について、化粧紙に1mm幅の桝目を25個カッターでつけた後、25mm幅のセロテープ(登録商標:ニチバン(株))をベンコットン(旭化成工業(株)製)を用いて貼付け、24時間放置後、セロテープ(登録商標:ニチバン(株))を水平に対して上方45度の角度で引っ張った。このとき、剥がれた桝目片の数を計測し、5個以内の場合を合格とした。ここで、表1の密着性の欄において、◎は、剥がれた桝目片が無いことを意味し、○は、剥がれた桝目片1〜5個であることを意味し、×は、6個以上であることを意味している。
【0079】
3.耐汚染性
厚さ5mmのパーティクルボードに化粧紙を接着して化粧板を作製し、各実施例及び各比較例と対応する化粧板について、以下のような試験を行い、各化粧板の化粧紙の表面の観察を行った。
(a)耐酸性
各化粧板の化粧紙上に10%クエン酸水溶液を十分に含浸させた脱脂綿を置き、時計皿で覆い、18時間放置した。18時間後、その表面を脱脂綿で拭き取った後の表面状態を観察し、未処理のものと比較した。
(b)耐アルカリ性
クエン酸水溶液の代わりに、10%アンモニア水溶液を用いて、耐酸性評価と同様にして耐アルカリ性評価を行った。
(c)耐溶剤性
クエン酸水溶液の代わりに、イソプロピルアルコールと水との体積比70:30の混合物を用いて、耐酸性評価と同様にして耐溶剤性評価を行った。
(d)耐染着性
クエン酸水溶液の代わりに、紫色染料インキ(アルコール溶剤系)を用いて、耐酸性評価と同様にして耐染着性評価を行った。
耐酸性、耐アルカリ性、及び、耐溶剤性については、表面観察において、ふくれ、剥がれ、軟化、著しい変色、艶変化が無いかどうか確認した。ここで、表1の試験結果を示す各欄において、◎は、上記のような点が無く外観上問題がなかったことを意味し、○は、上記のような点が少し見られるものの外観上問題が無かったことを意味し、△は、上記のような点がやや見られ外観上問題が有ったことを意味し、×は、明らかに変化が見られ外観上問題があったことを意味している。
また、耐染着性については、上記インキの色が残るか否かを確認した。ここで、表1の試験結果を示す欄において、◎は、化粧紙表面に色が残らず、外観上問題が無かったことを意味し、○は、化粧紙表面に色がやや残るものの外観上問題が無かったことを意味し、△は、化粧紙表面に色が少し残り外観上問題があったことを意味し、×は、化粧紙表面に色が明瞭に残り外観上問題があったことを意味している。
【0080】
【表1】

【0081】
表1に示すように、実施例1〜10では、積載性、密着性、及び、耐汚染性について、満足する結果を得ることができた。
一方、比較例1では、積載性の評価において、滑って崩れてしまい、不合格との判定となった。これは、化粧紙の最表面6aにおける動摩擦係数が0.090と小さくなってしまったことに起因するものと考えられる。また、密着性の評価において、剥がれた桝目片が6個以上となり不合格の判定となった。これは、シリコーンオイルの含有量が多く、動摩擦係数の減少によりセロテープ(登録商標:ニチバン(株))が剥がれ易くなるものの、層間密着性が顕著に低下してしまい、結果として、層間剥離が助長されることによるものと考えられる。
また、比較例2では、積載性の評価において、僅かに崩れるのみであったが、表面に傷が確認され、不合格の判定となった。これは、化粧紙の最表面6aにおける動摩擦係数が0.370と大きくなってしまったことに起因するものと考えられる。また、密着性の評価において、剥がれた桝目片が6個以上となり不合格の判定となった。これは、表面保護層6に含まれるシリコーンオイルの含有量が少なく動摩擦係数の増大にして、セロテープ(登録商標:ニチバン(株))が剥がれにくくなったことによるものと考えられる。
また、比較例3では、積載性の評価において、殆ど滑らずに崩れることは無かったが、表面に傷が確認され、不合格の判定となった。これは、化粧紙の最表面6aにおける動摩擦係数が0.450と大きくなってしまったことに起因するものと考えられる。また、密着性の評価において、剥がれた桝目片が6個以上となり不合格の判定となった。これは、表面保護層6にシリコーンオイルが含有されていないことで動摩擦係数が増大して、セロテープ(登録商標:ニチバン(株))が剥がれにくくなったことによるものと考えられる。また、各耐汚染性の評価においても不合格の判定となり、同様にシリコーンオイルが含有されていないことに起因するものと考えられる。
【0082】
以上のように、本発明の化粧紙によれば、水性組成物からなる絵柄層4、21、61のいずれかを有し、基材上において上記に示すような構成でシーラー層3、絵柄層4、21、61のいずれか、及び、表面保護層6が積層され、表面保護層6が油性樹脂または電離放射線硬化性モノマーの硬化により形成されたマトリックス樹脂に、シリコーンオイルを含んだ汚染防止剤を含有してなり、動摩擦係数を0.1以上0.3以下としていることで、荷の積み降ろし際には、表面に傷を付けてしまうこと無く容易に取り扱うことが可能であるとともに積み重ねた際の荷崩れのおそれがなく、また、持続した耐表面汚染性を有している。
【0083】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の化粧材は、特に表面にフラットまたは立体模様を表現したものであって、ノックダウン方式の組み立て家具や一般内装材等に使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】この発明の第1の実施形態の化粧紙の断面図である。
【図2】この発明の第2の実施形態の化粧紙の断面図である。
【図3】この発明の第3の実施形態の化粧紙の断面図である。
【図4】この発明の第4の実施形態の化粧紙の断面図である。
【図5】この発明の第5の実施形態の化粧紙の断面図である。
【図6】この発明の第6の実施形態の化粧紙の断面図である。
【図7】この発明の第7の実施形態の化粧紙の断面図である。
【図8】この発明の第8の実施形態の化粧紙の断面図である。
【符号の説明】
【0086】
1、10、20、30、40、50、60、70 化粧紙(化粧材)
2 基材
3 シーラー層
4、21、61 絵柄層
5、62 プライマー層
5a 凹部
6 表面保護層
6a 最表面
6b 凹部
22、63 隠蔽層
23 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
該基材上に設けられ、水性接着剤からなるシーラー層と、
該シーラー層よりも上層に設けられ、水性インキからなる絵柄層と、
該絵柄層を覆って最表面を形成する表面保護層とを備え、
該表面保護層は、油性樹脂または電離放射線硬化性モノマーの硬化により形成されたマトリックス樹脂に、シリコーンオイルを含んだ汚染防止剤を含有してなり、前記最表面の動摩擦係数が0.1以上0.3以下であることを特徴とする化粧材。
【請求項2】
請求項1に記載の化粧材において、
前記表面保護層の前記最表面には、凹凸模様が施されていることを特徴とする化粧材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の化粧材において、
前記表面保護層と前記絵柄層との間には、水性接着剤からなるプライマー層が介装されていることを特徴とする化粧材。
【請求項4】
基材と、
該基材上に設けられ、油性インキからなる絵柄層と、
該絵柄層を覆って最表面を形成する表面保護層とを備え、
該表面保護層は、電離放射線硬化性モノマーの硬化により形成されたマトリックス樹脂に、シリコーンオイルを含んだ汚染防止剤を含有してなり、前記最表面の動摩擦係数が0.1以上0.3以下であることを特徴とする化粧材。
【請求項5】
請求項4に記載の化粧材において、
前記表面保護層と前記絵柄層とに間に介装され、油性接着剤からなるプライマー層を備えることを特徴とする化粧材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−247020(P2008−247020A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315759(P2007−315759)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】