説明

化粧板原紙及び化粧板

【課題】低圧メラミン化粧板の製造において、メラミン樹脂の浸透性を良くし、且つメラミン樹脂量をセーブできる化粧板原紙。
【解決手段】主原材料の木材パルプのろ水度を450〜550mlCSFに調整し、ウエットプレス後の乾燥した紙の密度を0.63〜0.73g/cmに調整し、キャレンダーで紙の密度を0.74〜0.96g/cmなるよう調整した化粧板原紙により、メラミン樹脂の浸透性を良くし、且つメラミン樹脂量のセーブもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧板原紙及び化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
テーブルや家具や床材などに使われる化粧板はパーティクルボードや合板に代表される木
質系ボードにメラミン樹脂を含浸した化粧板原紙を貼り合わせることにより製造されてい
る。メラミン化粧板の中でも、低圧メラミン化粧板の製造においては生産性を上げること
が近年特に望まれている(特許文献1)。
【0003】
化粧板原紙にメラミン樹脂を含浸する工程では、メラミン樹脂の紙へのしみこみ具合によ
り含浸加工スピードが決まるため、より浸透性に優れる化粧板原紙であればそれだけ、含
浸加工スピードを上げることができ、生産性を向上することができる。
【0004】
また、コストダウンの為に、メラミン樹脂の含浸量を抑えることによりコストダウンがで
きる樹脂セービングタイプの化粧板原紙が望まれている。
【0005】
しかしながら、メラミン樹脂の浸透性をよくすることと樹脂の含浸量を抑えるという相反
する2つの性能を兼ね備えた化粧板原紙が待ち望まれている。
【0006】
紙の浸透性を良くするには一般的には密度を下げることで改善されることが知られている
。方法としてはパルプの叩解を抑えたり、ウエットプレスを弱めたり、キャレンダーでの
圧密処理を弱めたりすることが一般的である。しかしこれらの処理では浸透性もよくなる
と同時に樹脂の含浸量も増えてしまうため、結果的にコストアップにつながってしまう。

【0007】
化粧板原紙のメラミン樹脂の浸透性を良くする方法としては、製紙原料の吸水性に優れる
填料である粉末シリカやアルミノシリケートや種子殻を添加する方法が考案されている。
ただこれだと、遮蔽剤の填料に更に浸透性を良くする填料を加えるため、紙を構成する填
料分の比率が高くなり、十分な強度を得ることが難しい場合ある(特許文献2)。
【0008】
また、化粧板原紙に界面活性剤やでんぷんをあらかじめ添加しておく方法が開示されてい
るが、これはメラミン含浸加工時に、浸透助剤が含浸加工機に溶出してトラブルを起こす
可能性がある(特許文献3)。
【0009】
また、化粧板原紙ではないが、ウエットプレス後の密度とキャレンダー処理後の密度を規
定して浸透性のよい積層板原紙が上げられているが、この密度だと、樹脂セービング性と
の両立はできず、含浸率が増えコストアップとなる(特許文献4)。
【0010】
また、紙の空隙率を上げて、浸透性を良くすることが提案されているが、樹脂セービング
性との両立はできない(特許文献5)。
【0011】
また、熱キャレンダー処理により密度を上げずに紙の平滑性と含浸性の両立する方法が挙
げられている。樹脂セービング性の記載はない(特許文献6)。
【0012】
また、抄紙時に循環系の微細繊維を除去して含浸性を良くする方法が考案されている。新
たに濾過設備が必要となり設備投資費がかさむ問題があった(特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000−265652号公報
【特許文献2】特開昭51−23303号公報、特開昭51−026304号公報、特開平06−166998号公報
【特許文献3】特開2008−081897号公報、特開2002−201588号公報
【特許文献4】特開平3−899号公報
【特許文献5】特開平03−890号公報
【特許文献6】特開平05−263391号公報
【特許文献7】特開平07−26497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、化粧板原紙において、特に低圧メラミン製造工程の中で、メラミン樹脂を化粧
板原紙に含浸する工程で、樹脂の浸透性をよくすることにより生産性を向上しつつ樹脂の
含浸量を抑えることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、かかる課題を解決するため、化粧板原紙の主原材料である木材パルプのろ
水度を調整し、ウエットプレスで密度調整し、更にキャレンダーで密度調整することによ
り、メラミン樹脂の紙内部への浸透を均一に速くするとともに含浸される樹脂量を抑える
ことにより、含浸工程での生産性アップとコストダウンを可能とすることを見いだし本発
明を完成するに至った。 すなわち本発明は、(1) 主成分である木材パルプのろ水度を
450〜550mlCSFに調整し、ウエットプレスで乾燥後の紙の密度が0.63〜0
.73g/cmになるよう調整し、且つキャレンダー処理で密度を0.74〜0.96
g/cmになるよう調整することにより、良好なメラミン樹脂の樹脂浸透性と樹脂セー
ビング性を得られる化粧板原紙を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、主成分の木材パルプのろ水度を450〜550mlCSFに調整し、ウ
エットプレス後の乾燥した紙の密度を0.63〜0.73g/cmに調整し、キャレン
ダーで密度0.74〜0.96g/cmに調整することにより、メラミン樹脂の浸透性
と樹脂セービング性を両立できた化粧板原紙を作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。 本発明で用いられる原紙は、木材パルプを主成分とす
るものでのである。 使用できるパルプとしては、NBKP、NBSP、LBKP、LB
SP等が挙げられるが、特にLBKP単独或いはNBKPとLBKPを混合して使用する
ことが好ましい。
【0018】
パルプはろ水度を450〜550mlCSFに叩解する。叩解する方法としては公知のも
のであれば特に限定するものでなく、例としてはビーターやダブルディスクリファナーや
コニカルリファイナーやシンリンダーリファイナーが挙げられる。
【0019】
木材パルプのろ水度が450mlCSF以下だと、樹脂の浸透性が悪くなり、550ml
CSF以上だと樹脂セービング性が悪くなる可能性がある。
【0020】
紙に化粧板原紙としての特性を持たせるため、遮蔽剤である二酸化チタンを添加する。ま
た、意匠性を持たせるために公知の顔料や染料や意匠材料を添加することが望ましい。顔
料としては例えば弁柄(酸化鉄)がある。
【0021】
また公知の製紙薬品を内添する。例えば湿潤紙力増強剤であるポリアクリルアミドエピク
ロロヒドリンがある。
【0022】
上記の方法で作製した紙料を公知の抄造法で紙にする。具体的には標準角形シートマシン
や長網抄紙機による抄造法がある。
【0023】
ウエットプレスとはワイヤー上でウエブ形成後、乾燥前にある程度脱水するための装置で
、具体的には角形自動シートプレス機や2本のロールの間にウエブを通すウエットプレス
ロールが挙げられる。ウエットプレス圧力を適正に調整することにより、当該密度の原紙
を得られる。ウエットプレス圧力は、ろ水度との関係で、適切に調整する必要があるが、
角形自動シートプレス機を用いた場合、おおむね2〜6kgf/cmとすることで、本
願の密度を得ることが出来る。
【0024】
ウエットプレス後、乾燥後の紙の密度を0.63〜0.73g/cmに調整する。ウエ
ットプレス後の乾燥後の紙の密度が0.63g/cm以下だと樹脂セービング性が悪く
なり、0.73g/cm以上だと樹脂の浸透性が悪くなる。
【0025】
キャレンダーとはドライヤーで乾燥した後の紙を圧密化処理するためのもので、複数のロ
ールの間に紙を通し、圧力をかける装置である。ロールとしては金属ロールや樹脂ロール
や熱ロールがある。抄紙機に付属のものをマシンキャレンダーといい、オフラインのもの
ではスーパーキャレンダーがある。熱ロール温度と線圧で圧密具合を適正に調整すること
により当該密度の原紙が得られる。ろ水度とウエットプレス後の乾燥密度との関係により
圧密具合は適正に調整する必要があるが、熱ロールと樹脂ロールを用いた場合、おおむね
熱ロール温度は、20〜80℃、線圧は8〜32kgf/cmとすることで、本願の密度
を得ることが出来る。
【0026】
キャレンダー処理後の密度を0.74〜0.96g/cmに調整する。キャレンダー処
理後の紙の密度を0.74g/cm以下だと樹脂セービング性が悪くなる。0.96g
/cm以上だと樹脂浸透性と樹脂セービング性のバランスが取りにくくなる場合がある

【実施例】
【0027】
以下実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。 本実施例、比較例における評価は、以下
の方法によった。
(1)ろ水度JIS P8121に基づき測定した。
(2)米坪JIS P8124に基づき測定した。
(3)厚さ、密度JIS P 8118に基づき測定した。
(4)メラミン樹脂の浸透性メラミン樹脂(メラミンホルムアルデヒド樹脂)の55%水溶液を用い、20℃に調整した後、化粧板原紙の表面からしみこませ、紙の裏面にメラミン樹脂が均一にしみこむまで目視で観察し、かかった時間をストップウオッチで測定した。数値が低い方が樹脂浸透性に優れる。
(5)メラミン樹脂の含浸量メラミン樹脂の55%水溶液に化粧板原紙を1分間浸せきし、ガラス棒で余分な樹脂を掻き落とし、140℃x3時間乾燥し、含浸率を測定した。含浸率の計算は下の式で算出した。含浸率が低い方が樹脂セービング性に優れる。
含浸率(%)={(含浸紙の絶乾重量)―(化粧板原紙の絶乾重量)}/(化粧板原紙の絶乾重量)x100
【0028】
(実施例1) 広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)100重量部をダブルディスクリ
ファイナーで叩解し、500mlCSFとした。これに二酸化チタン25重量部、弁柄重
量2部、湿潤紙力剤:ポリアクリルアミドエピクロロヒドリン1重量部、硫酸アルミニウ
ム2重量部を添加して、アルミン酸ナトリウムでPHを中性に調整した。これを手漉きマ
シンで100g/mのウエブを形成し、ウエットプレス機(熊谷理機製、角形自動シー
トプレス)で4kgf/cmx3分脱水して、シリンダードライヤーで乾燥した。更に
テストキャレンダー(興人自家製、熱ロールと樹脂ロール)で線圧8kgf/cm、キャ
レン温度20℃に設定して圧密処理して化粧板原紙を作製した。
【0029】
(実施例2) 広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)100重量部をダブルディスクリ
ファイナーで叩解し、545mlCSFとした。これに実施例1と同じ方法で化粧板原紙
を作製した。
【0030】
(実施例3) 針葉樹クラフトパルプ(NBKP)10重量部と広葉樹晒しクラフトパル
プ(LBKP)90重量部をダブルディスクリファイナーで叩解し、545mlCSFと
した。これに二酸化チタン25重量部、湿潤紙力剤:ポリアクリルアミドエピクロロヒド
リン1重量部、硫酸アルミニウム2重量部を添加して、アルミン酸ナトリウムでPHを中
性に調整した。これを手漉きマシンで100g/mのウエブを形成し、ウエットプレス
機で4kgf/cmx3分脱水して、シリンダードライヤーで乾燥した。更にテストキ
ャレンダーで線圧32kgf/cm、キャレン温度60℃に設定して圧密処理して化粧板原紙
を作製した。
【0031】
(実施例4)広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)100重量部をディスクリファイナ
ーで叩解し、545mlCSFとした。これに二酸化チタン25重量部、湿潤紙力剤:ポ
リアクリルアミドエピクロロヒドリン1
重量部、硫酸アルミニウム2重量部を添加して、アルミン酸ナトリウムでPHを中性に調
整した。これを手漉きマシンで100g/mのウエブを形成し、ウエットプレス機で4
kgf/cmx3分脱水して、シリンダードライヤーで乾燥した。更にテストキャレン
ダーで線圧32kgf/cm、キャレン温度80℃に設定して圧密処理して化粧板原紙を
作製した。
【0032】
(比較例1)広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)100重量部をディスクリファイナ
ーで叩解し、400mlCSFとした。これに実施例1と同じ手順で100g/mの化
粧板原紙を作製した。
【0033】
(比較例2)広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)100重量部をディスクリファイナ
ーで叩解し、564mlCSFとした。これに二酸化チタン25重量部、湿潤紙力剤:ポ
リアクリルアミドエピクロロヒドリン1重量部、硫酸アルミニウム2重量部を添加して、
アルミン酸ナトリウムでPHを中性に調整した。これを手漉きマシンで100g/m
ウエブを形成し、ウエットプレス機で4kgf/cmx3分脱水して、シリンダードラ
イヤーで乾燥した。更にテストキャレンダーで線圧8kgf/cm、キャレン温度20℃
に設定して圧密処理して化粧板原紙を作製した。
【0034】
(比較例3)針葉樹クラフトパルプ(NBKP)10重量部と広葉樹晒しクラフトパルプ
(LBKP)90重量部をディスクリファイナーで叩解し、550mlCSFとした。こ
れに二酸化チタン25重量部、湿潤紙力剤:ポリアクリルアミドエピクロロヒドリン1重
量部、硫酸アルミニウム2重量部を添加して、アルミン酸ナトリウムでPHを中性に調整
した。これを手漉きマシンで100g/mのウエブを形成し、ウエットプレス機で2k
gf/cmx3分脱水して、シリンダードライヤーで乾燥した。更にテストキャレンダ
ーで線圧32kgf/cm、キャレン温度80℃に設定して圧密処理して化粧板原紙を作
製した。
【0035】
(比較例4)広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)100重量部をディスクリファイナ
ーで叩解し、500mlCSFとした。これに二酸化チタン25重量部、弁柄2重量部、
湿潤紙力剤:ポリアクリルアミドエピクロロヒドリン1重量部、硫酸アルミニウム2重量
部を添加して、アルミン酸ナトリウムでPHを中性に調整した。これを手漉きマシンで1
00g/mのウエブを形成し、ウエットプレス機で6kgf/cmx3分脱水して、
シリンダードライヤーで乾燥した。更にテストキャレンダーで線圧8kgf/cm、キャ
レン温度20℃に設定して圧密処理して化粧板原紙を作製した。
【0036】
(比較例5)広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)100重量部をディスクリファイナ
ーで叩解し、485mlCSFとした。これに二酸化チタン25重量部、弁柄2重量部、
湿潤紙力剤:ポリアクリルアミドエピクロロヒドリン1重量部、硫酸アルミニウム2部を
添加して、アルミン酸ナトリウムでPHを中性に調整した。これを手漉きマシンで100
g/mのウエブを形成し、ウエットプレス機で2kgf/cmx3分脱水して、シリ
ンダードライヤーで乾燥した。更にテストキャレンダーで線圧8kgf/cm、キャレン
温度20℃に設定して圧密処理して化粧板原紙を作製した。
【0037】
(実施例5)実施例1〜4及び比較例1〜5で作製した化粧板原紙にメラミン樹脂55%
溶液を用いて、それぞれ含浸した。これを市販のMDF(中密度繊維板、厚さ10mm)
に熱圧プレス機を用い、成形して、低圧メラミン化粧板を得た。熱圧条件は185℃・2
0kgf/cm・1分間で行った。
【0038】
実施例5で作製した化粧板の表面仕上がりを目視で観察して評価した。かすれなく表面仕
上がり良好:○、一部かすれあり:△、全面にかすれあり:Xとした。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0043】
以上本発明によると、メラミン樹脂の浸透性が良く、かつ樹脂の含浸率を抑えることがで
きる化粧板原紙を提供することにより、低圧メラミン成形の工程でメラミン樹脂を含浸す
る工程の生産性アップとコストダウンをすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材パルプにより作製され、二酸化チタンが内添された化粧板原紙において、木材パルプ
のろ水度が450〜550mlCSFに調整され、ウエットプレスを調整することにより
乾燥後の紙の密度が0.63〜0.73g/cmに調整され、且つキャレンダー処理後
の密度が0.74〜0.96g/cmに調整して作製されたことを特徴とする化粧板原
紙。
【請求項2】
請求項1の化粧板原紙を用いて作製された化粧板。

【公開番号】特開2010−174388(P2010−174388A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15841(P2009−15841)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000142252)株式会社興人 (182)
【Fターム(参考)】