説明

化粧用パックシート

【目的】顔面部位毎の化粧成分の必要量に応じて適切な量の化粧成分を供給して、美容効果を必要充分且つ有効に発揮させることができる化粧用パックシートを提供する。
【構成】凍結乾燥コラーゲン膜体の全面に支持シートがプレス加工により一体的に積層されてなり、前記支持シート表面には縦横に交差する複数本の凸条がプレス加工により施されており、美容液等の化粧水を浸透させて用いる構成であることを特徴とする化粧用パックシートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧用パックシートに関し、詳しくは美容液等の化粧水を浸透させて使用するパックシートに関する。
【背景技術】
【0002】
化粧用パックシートは、美容液・化粧水等の化粧成分を浸透させたシートを顔面に密着状態となるように貼り付けることで、顔面の美容効果を得るものである。
【0003】
シートは顔面の形や凹凸等に対応するように、目・鼻・口の部分に開口を設け、顔の輪郭と略一致する形状等に形成されたものが一般的である(特許文献1〜3等参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平03−294213
【特許文献2】特開平10−016109
【特許文献3】特開2004−051521
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3の技術は、いずれも積層構成を有する化粧用パックシートであり、使用に際して化粧成分を浸透させ、顔面に密着させることで顔面の美容効果を得る構成を有している。
【0006】
これらの技術では、化粧用パックシートに浸透させた化粧成分は、該化粧用パックシートに貯留し、この貯溜した状態から肌へ順次供給される構成となっている。
【0007】
しかし、化粧成分の肌の吸収は顔面全面で均一ではなく、肌の状態(例えば、きめの状態等)や肌の部位(頬部、鼻梁部、目尻部、顎部、額部等)によって吸収量や吸収速度が異なるものであるため、化粧成分の貯溜バランスに偏りが生じることがあり、化粧成分の吸収量が大であったり、吸収速度が速い部位では、化粧成分の供給量に差が生じてしまったり、貯留量によっては肌への供給が途切れがちになってしまう場合があることが判った。また反対に、化粧成分の吸収量が小であったり、吸収速度が遅い部位では、化粧成分の供給過多になってしまったり、吸収されずに化粧用パックシート側に貯溜されたまま無駄に廃棄されてしまう場合があることも判った。
【0008】
そこで本発明の課題は、顔面部位毎の化粧成分の必要量に応じて適切な量の化粧成分を供給して、美容効果を必要充分且つ有効に発揮させることができる化粧用パックシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明は下記構成を有する。
【0010】
1.凍結乾燥コラーゲン膜体の全面に不織布よりなる支持シートがプレス加工により一体的に積層されてなり、前記支持シート表面には縦横に交差する複数本の凸条がプレス加工により施されており、美容液等の化粧水を浸透させて用いる構成であることを特徴とする化粧用パックシート。
【0011】
2.前記支持シートが不織布よりなることを特徴とする上記1に記載の化粧用パックシート。
【0012】
3.前記化粧用パックシートが、鼻部を除く顔面全面シートと鼻部シートとの組合せから成ることを特徴とする上記1又は2に記載の化粧用パックシート。
【0013】
4.前記鼻部を除く顔面全面シートと鼻部シートが、切り離し可能な分離線を介して連接された構成であることを特徴とする上記3に記載の化粧用パックシート。
【0014】
5.前記鼻部を除く顔面全面シートと鼻部シートとの組合せ又は組合せの一組が、一つの包装体に包装されていることを特徴とする上記3又は4に記載の化粧用パックシート。
【0015】
6.前記鼻部を除く顔面シートが、前記鼻部シートの大きさと略同一の大きさに折畳まれた状態で前記一つの包装体に包装されていることを特徴とする上記5に記載の化粧用パックシート。
【0016】
7.前記化粧用パックシートが、頬部、鼻梁部、目尻部、顎部、額部のいずれか一つの部分乃至は複数部分を覆う顔面部分シートであることを特徴とする上記1又は2に記載の化粧用パックシート。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に示す発明によれば、顔面部位毎の化粧成分の必要量に応じて適切な量の化粧成分を供給して、美容効果を必要充分且つ有効に発揮させることができる化粧用パックシートを提供することができる。
【0018】
特に、肌の状態や部位による化粧水の吸収量・吸収速度の違いによって化粧水の供給量・貯溜量のバランスに偏りが生じても、支持シート表面にプレス加工により施された縦横に交差する凸条が化粧水の導管の役目を果たすことになり、化粧水の貯溜量が少なくなった部分へ多い部分から補給することができるので、貯溜バランス及び供給バランスを均一化することができる。従って、化粧成分を多く必要とする肌の部位へ必要充分な化粧水の供給が可能であると共に、化粧成分をそれ程必要としていない肌の部位への化粧水の供給過多も抑制することができるので、顔面全面に亘って美容効果を必要充分且つ有効に発揮させることができる。
【0019】
また、縦横に交差する複数本の凸条は支持体としての骨格の機能を果たすので化粧用パックシートの保形性を向上させることができる。
【0020】
更に、化粧水を浸透させる際に、縦横に交差する凸条によって囲まれる凹部に化粧水の一部乃至大部分が流れ落ちることなく一旦保持されるので、従前に比して化粧水の保持量が多く、しかも凸条及び凹部によって構成される凹凸によって支持シートの表面積が従前に比して大となるので、化粧水の浸透速度が速い。
【0021】
更にまた、付随的効果として、化粧用パックシート1を顔面に貼り付ける際に、いずれの面側を顔面に貼り付けるかの判別が容易となるので、貼り付け面を誤ることを防止することができる。
【0022】
請求項2に示す発明によれば、柔軟性を有する不織布の特性によって支持シートを柔軟に形成できるので、顔面全面及び鼻部への美容効果をより高めることができる等の効果を奏する。しかも、凸条の存在により、柔軟性を維持した上で化粧用パックシートの保形性をも発揮できる。
【0023】
請求項3に示す発明によれば、鼻部を除く顔面全面シートと、鼻部シートを別体構成にしたことにより、顔面全面シートが鼻部を除く顔面全面に馴染んだ状態で密着し、顔面から隆起する鼻部は鼻部シートが馴染んだ状態で密着することになるので、顔面全面にシートを馴染んだ状態で密着させることができる。しかも、凸条の存在により、鼻部にも美容効果を必要充分且つ有効に発揮させることができる。
【0024】
請求項4に示す発明によれば、顔面全面シートと鼻部シートとが連接された状態で化粧水を浸透させることができるので、別体の2枚のシートの夫々に化粧水を浸透させる構成よりも化粧水を浸透させる手間が少なくなるだけでなく、2枚のシートの化粧水浸透度を一致させることが容易である。また、製造時に顔面全面シートと鼻部シートとを同一の原材料シート上においてプレス加工等によって同時に形成できるのでコストダウンを図ることができる。
【0025】
請求項5に示す発明によれば、一つの包装体を開封するだけで顔面全面シートと鼻部シートの両方のシートを得ることができる。また、一度に使用する一枚毎に一つの包装体に包装することで、より衛生的となる。
【0026】
請求項6に示す発明によれば、包装時の大きさをコンパクトにすることが可能となる。
【0027】
請求項7に示す発明によれば、美容効果を必要とする顔面の部位に応じた顔面部分シートを用いることで、必要とする部位のみに美容効果を必要充分且つ有効に発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、添付の図面に従って本発明を詳細に説明する。
【0029】
図1は本発明に係る化粧用パックシートの一実施例を示す平面図及び一部拡大図、図2は層構成の一例を示す部分拡大断面図、図3は包装体に包装された態様の一例を示す平面図、図4は顔面に貼り付ける状態を説明する拡散斜視図、図5は包装体に包装する態様の他の例を示す説明平面図、図6は本発明に係る化粧用パックシートの他の実施例を示す平面図、図7は本発明に係る化粧用パックシートの他の実施例を示す平面図である。
【0030】
本発明に係る化粧用パックシート1は、図2に示すように凍結乾燥コラーゲン膜体11の全面に支持シート12がプレス加工により一体的に積層されてなり、図1に示すように前記支持シート12表面には縦横に交差する複数本の凸条13がプレス加工により施されており、美容液等の化粧水を浸透させて用いる構成である。
【0031】
凍結乾燥コラーゲン膜体11は、化粧用パックシート1を顔面に貼り付けた際に顔面側に位置すると共に、該顔面に化粧水を供給する層である。凍結乾燥コラーゲン膜体1としては、例えば、下記(A)、(B)に示すような技術を挙げることができる。
【0032】
(A)ポリビニルアルコールと可溶性コラーゲンを主体とした溶液を0℃以下に凍結後、室温にて解凍処理して凍結乾燥コラーゲン膜体を得る。ここで用いるポリビニルアルコールのけん化度は75〜99モル%が、また、平均重合度は500以上であることが好ましく、けん化度75モル%未満、平均重合度500未満では軟弱なゲルが得られるに過ぎない。
【0033】
また、基剤全量に対するポリビニルアルコール配合量は10〜15質量%が好ましく、配合量が10質量%よりも少ない場合には、ゲルが軟弱で、ベタつく等の現象を生じ、また、15質量%を超えると、ゲルが強くなって徐放性、貼着性が悪くなる場合がある。
【0034】
尚、可溶性コラーゲンの配合量は適宜であって、特に限定されるものではない。
【0035】
例えば、ポリビニルアルコールと可溶性コラーゲンを主体とした混合溶液を好ましくは成型用鋳型内に注入し、0℃以下に凍結させた後、室温に戻し解凍して成型する。
【0036】
(B)常法に従って前処理した原材料をアルカリ処理し、次いで酸処理した後、洗浄し、細砕し、冷凍し、凍結乾燥することによって、海綿状コラーゲンを製造する方法において、
a)前記アルカリ処理の間に、原材料の表面が、原材料の全量に対して3〜6質量%が分解されてマクロ分子のペプチドとなる程度に、原材料の表面を変性し、
b)前記凍結乾燥の際に、既に本質的に乾燥されている原材料を、0.5〜3.0mバールの真空の下に110°〜150℃の範囲の温度を作用させることにより、所定の海綿状コラーゲンが得られる。
【0037】
即ち、得られる海綿状コラーゲンは、アルカリ処理により変性された全材料の3〜6質量%に亘る表面を化学的架橋助剤の使用なしで、凍結乾燥の際に熱処理することにより得られる、水性媒体中で安全な架橋構造を有する。
【0038】
化学的な補助物質を全く使用せずに、架橋化された水性媒体中において安定な海綿状コラーゲンを、純天然物質として製造することができる。化粧品用の活性物質とコラーゲンとの共同作用によってその強力化が達成される。これによって純粋な化粧品の活性物質担持供給システムが得られる。
【0039】
コラーゲンの製造に慣用される良質の原材料、例えば、牛皮、豚皮又は牛のアキレス腱について、塩蔵又は冷蔵された出発物質の柔軟化、灰汁処理(Aeschern)、肉の除去及び粒起層(銀面)(Narbenschicht)の除去による慣用される前処理をひと先ず行なう。塩蔵した材料の場合には、貯蔵期間は、数か月に及んでもよいが、冷蔵した材料の場合には、1週間以内に加工を行う必要がある。保存の形態及び方法によって、膨潤状態及び膨潤性が影響を受けるので、特に塩蔵材料の場合には、十分に洗浄し灰汁処理することによって、保存の形態に前処理を適合させる必要がある。
【0040】
この材料は、次に、アルカリによって処理し、その直後に酸によって処理する。非コラーゲン性の異物は全てこの処理によって原材料から除去される。化学的な清浄化の1つの目安は、アミド窒素の定量である。即ち、これは、出発値に対して約0.3〜0.5mモル/g分減少させねばならない。この例では、アミド窒素は、化学処理の終了後において、約0.20〜0.40mモル/gとすることが好ましい。
【0041】
アルカリ処理は、従来の方法においてよりも著しく強化されることが好ましい。このアルカリ処理は、1〜5週間(好ましくは2〜4週間)行い、その際に使用する水酸化ナトリウムの濃度は、1〜3質量%である。
【0042】
次に処理中の材料を十分に水洗いし、アルカリ残分を可及的に完全に除去する。
【0043】
次に、酸処理を、約2〜4%塩酸によって約10〜20時間かけて行う。処理剤のpH値は、0.5〜1.5、好ましくは1とする。
【0044】
アルカリ処理によって、コラーゲンの一部が変性される。この一部分は、全コラーゲン量の約3〜6質量%とする。
【0045】
このようにして処理した材料は、そのpH値が約2.5〜3.5、好ましくは、2.7〜3.3となるまで、流水中において洗浄する。
【0046】
処理されたコラーゲン材料は、洗浄後において、一様に酸性化され、その表面及び個々の繊維が粘着性となっている。
【0047】
出発物質の強力なアルカリ処理を行うことによって、仕上げされた海綿状コラーゲンにおいて繊維がよりよく互いに付着し、海綿状コラーゲンの可撓性及び柔軟性は損なわれない。しかし変性過程が繊維の表面のみについてなされ、変性後の生成物の量が前記のように約3〜6質量%となるように、工程の管理を行うことが必要となる。
【0048】
ヘキソサミン含量の定量は、コラーゲンの結合組織−付随物質、例えばグリコースアミノグリカン、糖蛋白質及びプロテオグリカンの目安である。これらの物質は、アルカリ処理によって加水分解され、洗い落とされる。例えば、場合によっては、アミノ酸1000モルに対し1モルにより少ないヘキソサミンが存在する。
【0049】
特定アミノ酸の定量は、生成物のアミノ酸パターンの認識上有用である。即ち、アミノ酸残基1000についてグリシン残基349という測定値は、純コラーゲンの理論値(アミノ酸残基3当りグリシン残基1個)に非常に良く対応している。ヒドロキシプロリン残基及び残余アミノ酸についても同様であり、これらの残基の含量は、純コラーゲンにおいての含量に対応している。
【0050】
コラーゲンの全量に対する変性コラーゲンの量比は、トリプシンを用いて確認される。トリプシンは、変性されたコラーゲンのみを加水分解しうるため、変性された部分の量比は、この酵素によって選択的に確認され、また全コラーゲンは、酸加水分解によって、又はコラゲナーゼによって、それぞれ測定できる。変性コラーゲンの全コラーゲンに対する量比は、約3〜6%であることが好ましい。
【0051】
部分的な変性と、pH値2〜4、好ましくは2.7〜3.3までの洗浄とによって、処理材料は、さらに予細砕され、均質化され、繊維上に分解され、水性分散体とされる。この分散体の乾燥重量は、約1.5〜3質量%、好ましくは2質量%であり、pH値は、希塩酸による処理によって、約2.5〜3.5、好ましくは3に調節される。
【0052】
活性物質を含有する海綿状コラーゲンを製造するには、分散体にこの活性物質を添加する。海綿状コラーゲンは、活性物質の担体としてすぐれた特性を示し、化粧品の活性物質の負荷に好適である。これに関連して、コラーゲン自身は、多数の電解質、代謝物質及び薬剤と結合することによってイオン交換体の如く作用する。
【0053】
特に好ましい実施態様によれば、ATP負荷リポソームが分散体に添加される。リポソームの量は、分散体中のコラーゲンの乾燥重量を基準として約2質量%とする。
【0054】
必要に応じて活性物質が富化された、コラーゲン分散体は、0.5〜4時間、好ましくは1〜3時間、−10℃〜−30℃、好ましくは−25℃の温度で、シートの形状に凍結させる。
【0055】
シートは、必要ならば−3℃〜−5℃の温度で中間的に貯蔵することができる。貯蔵時に、コンディショニング効果が発現され、それが最終生成物に有利に作用する。その際に粘度がわずかに減少し、それによって生成物の再現性が改善される。凍結されたシートは、好ましくは、少くとも24時間貯蔵する。
【0056】
凍結させ、必要に応じて中間的に貯蔵したあとに、シートを凍結乾燥する。
【0057】
凍結乾燥の実施が、湿った状態にある海綿状生成物の安定性にとって大切な意味をもつ。即ち、110℃〜150℃の温度である長い期間に亘って凍結乾燥を行った場合、コラーゲン分子の架橋化が生起し、それによってコラーゲンが調質され、湿った状態においての安定性が高くなる。この架橋化は、非常に緩徐に行われ、既に本質的に乾燥した状態にある処理材料に真空下において高温を作用させることによって達せられる。従って、既に本質的に乾燥した状態となっている処理材料に、0.5〜3.0mバール(50〜300Pa)の真空下に、110℃〜150℃の温度を少くとも約12時間作用させる。
【0058】
架橋化の効果は、全ての慣用される測定法に従って、実証できる。一例として、コラゲナーゼに対するコラーゲン構造の耐性は、架橋化の目安であり、架橋化されていない処理材料は、架橋化されている処理材料よりも相当に早く分解される。
【0059】
完成した生成物は、望みの厚さに切断でき、乾燥した材料の機械的強度は、熱処理によっては影響されない。凍結乾燥時の熱による架橋化によって、吸水能力は、約20〜50質量%減少する。湿った状態においての生成物の安定性は、生成物から皮膚への活性物質の移行が可能となる程度に改善される。
【0060】
本発明において、支持シート12は、凍結乾燥コラーゲン膜体11の支持体となると共に、浸透した化粧水を貯溜すると共に貯留した化粧水を凍結乾燥コラーゲン膜体11に供給する層である。該支持シート12としては、凍結乾燥コラーゲン膜体11の支持体となると共に、化粧水が浸透し易く且つ浸透した化粧水を貯溜し易い成分・組成・構成のものであれば、この種の化粧パックシートに用いられる公知公用の化粧水浸透層のいずれを用いてもよく、不織布であることが好ましい。
【0061】
支持シート12を不織布で形成した場合は、柔軟性を有する不織布の特性によって支持シートを柔軟に形成できるので、顔面全面及び鼻部への美容効果をより高めることができる等の効果を奏する。好ましい不織布としては、吸水性が抑制された合成布、特にレーヨン(登録商標)が挙げられ、必要最小限の美容液量によって肌に吸収移行可能である。
【0062】
支持シート12の表面にプレス加工により施された縦横に交差する複数本の凸条13は、該支持シート12に浸透して貯溜する化粧水の導管の役目を果たすと共に支持体としての骨格の機能を果たすものである。
【0063】
縦横に交差する複数本の凸条13によって、支持シート12に貯留する化粧水は部位によって貯溜バランスが偏ることなく該支持シート12全面に亘って均一に化粧水を貯留することができる。従って、部分的に化粧水の貯溜量が減った場合、即ち、肌の状態や部位による化粧水の吸収量・吸収速度の違いによって化粧水の供給量・貯溜量のバランスに偏りが生じた場合であっても、縦横に交差する凸条13が化粧水の導管の役目を果たすことになるので、化粧水の貯溜量が少なくなった部分へ多い部分から補給することで貯溜バランス及び供給バランスを均一化することができる。依って、化粧成分を多く必要とする肌の部位へ必要充分な化粧水の供給が可能であると共に、化粧成分をそれ程必要としていない肌の部位への化粧水の供給過多も抑制することができるので、顔面全面に亘って美容効果を必要充分且つ有効に発揮させることができる。
【0064】
また、化粧用パックシート1に化粧水を浸透させる際に、縦横に交差する凸条13によって囲まれる凹部14(図2参照)に化粧水の一部乃至大部分が流れ落ちることなく一旦保持されるので、単に平滑な表面を有する場合に比して化粧水の保持量が多く、しかも凸条13及び凹部14によって構成される凹凸によって支持シート12の表面積が平滑な表面を有する場合に比して大となるので、化粧水の浸透速度が速い。
【0065】
更に、付随的効果として、化粧用パックシート1を顔面に貼り付ける際に、いずれの面側を顔面に貼り付けるかの判別が容易となるので、貼り付け面を誤ることを防止することができる。
【0066】
以上の形状を有する化粧用パックシート1は、下記のような形状に形成されることが好ましい。
【0067】
化粧用パックシート1の具体的形状としては、例えば、図1に示すように、顔面の中の鼻部を除く部分を覆う構成の顔面全面シート15と、鼻部を覆う構成の鼻部シート16との組合せから成ることが好ましい。
【0068】
顔面全面シート15には、目の部分には目部開口15Aが設けられ、鼻部の部分には該鼻部の隆起を逃がすことで顔面全面シート15が顔面に馴染み易くするための鼻部切込み15Bが形成され、口の部分には口部切込み15Cが形成されている。
【0069】
尚、目部開口15Aを設けることなく、瞼部も顔面全面シート15を密着状態で貼り付けることで瞼部にも化粧水による美容効果を発揮させる構成も本発明に包含される。
【0070】
尚また、顔面全面シート15は、本実施例では口部には開口を有さない構成とすることにより、口部切込み15Cを形成することなく、口部も顔面全面シート15を密着状態で貼り付けることで唇にも化粧水による美容効果を発揮させる構成や、鼻部切り込み15Bを形成することなく顔面全面シート15を隆起する鼻部に添うように密着状態で貼り付けることで別体構成である鼻部シート16を設けない構成も本発明に包含される。
【0071】
鼻部切込み15B及び/又は口部切込み15Cが形成されている場合、夫々の切込み線の端部には端部透孔15Dが設けられていることが好ましい。端部透孔15Dが設けられていることにより、鼻部切込み15B及び/又は口部切込み15Cの夫々の切込み線の端部に力が掛かった際に該力を逃がす作用を果たすので、該切込み線の端部から裂けてしまうのを防止することができる。
【0072】
鼻部シート16は鼻部全体を覆う形状を有するものであり、本実施例に示すように略六角形状に形成し、図4に示すように山型側を上方(眉間方向)に向けた状態で鼻部に貼り付けることで鼻部全体を覆うことができる。尚、該鼻部シート16は、鼻部全体を覆うことができれば本実施例の略六角形状に限らず他の形状であってもよく、鼻孔を除く鼻下側まで覆う形状であってもよい。
【0073】
以上の構成を有する化粧用パックシート1は、図3に示すように、顔面全面シート15と鼻部シート16との組合せが、一つの包装体2に包装された状態で、保管・流通・販売されることが好ましい。尚、包装体2に包装する際、使用者が鼻部シート16の向き{本実施例では山型側を上方(眉間方向)に向けた状態}を誤らないように顔面全面シート15の鼻部切込み15Bの上に正しい向きで載置した状態で包装することが好ましい。
【0074】
また、包装体2への包装は、図4に示す顔面全面シート15を広げた状態のまま包装する態様に限らず、一部ないし全部を折り畳んだ状態で包装することもできる。例えば、図6に示すように、顔面全面シート15を鼻部シート16の大きさと略同一の大きさとなるように折畳線18部分で折畳むことでコンパクトな状態で包装体2に包装することもできる。
【0075】
包装体2は、化粧用パックシート1複数枚が一つの包装体2に包装されていてもよいが、好ましくは一つの包装体2に、化粧用パックシート1が単独で包装されていることが好ましい。
【0076】
また、包装体2は、内部が透視できるように少なくとも片面の少なくとも一部が実質的に透明で形成されていることが好ましい。
【0077】
包装体2に包装された化粧用パックシート1を取り出すには、包装体2の一部を端部21から該化粧用パックシート1が取り出せる位置まで剥離することで可能である。尚、剥離し始めの位置である端部21が判別し易いように、該端部21部分に矢符等のマーク22を付しておくことが好ましい。
【0078】
包装体2から化粧用パックシート1を取り出した後、顔面洗面シート15と鼻部シート16の両方に化粧水を浸透させた後、図4に示すように顔面に貼り付ける。
【0079】
尚、化粧用パックシート1への化粧水の浸透は、包装体2から取り出す前に行ってもよい。即ち、包装体2の端部21を剥離した後、該剥離した部分から包装体2の中に適量の化粧水を入れて顔面全面シート15と鼻部シート16の両方に化粧水を浸透させる。化粧水が浸透した後、顔面全面シート15と鼻部シート16を取り出す。
【0080】
顔面全面シート15と鼻部シート16とを顔面に貼り付ける順番としては、図4に示すように、先ず、鼻部に鼻部シート16を密着状態となるように貼り付けて鼻部に馴染ませ、次に、顔面全面シート15を顔面全面に密着状態となるように貼り付けて顔面全面に馴染ませることが好ましい。鼻部シート16を先に貼り付けることで、立体的に隆起する鼻部により馴染ませることが可能となるが、本発明はこの順番に限定されず、顔面全面シート15を先に貼り付けてもよい。顔面全面シート15を先に貼り付ける場合、該顔面シート15を貼り付けた後に、鼻部切込み15Bを開いて鼻部を露出させた後、該露出した鼻部に鼻部シート16を鼻部全面に密着状態となるように貼り付けて鼻部全面に馴染ませる。
【0081】
以上、本発明に係る化粧用パックシートの一実施例について説明したが、本発明は上記に限定されず、本発明の範囲内において他の態様を採ることができる。
【0082】
例えば、図6に示す他の実施例では、顔面全面シート15と鼻部シート16は、切り離し可能な分離線18を介して連接された一枚構成のシートとし、使用に際して該分離線18から顔面全面シート15と鼻部シート16とを切り離すことにより、切り離し前は一枚構成のシートだったものを分割する構成を有するものである。
【0083】
包装体2から化粧用パックシート1を取り出した後、化粧水を浸透させ、分離線18から顔面全面シート15と鼻部シート16を切り離した後、図4に示すように顔面に貼り付ける。
【0084】
図6に示す実施例によれば、製造時に、一つのパーツとして同時にプレス加工を施したり、包装体2による包装を同時に行うことができるので、顔面全面シート15と鼻部シート16とが別体シートである構成に比して手間が少なくなりコストダウンを図ることができる。
【0085】
また、製造時だけでなく、使用者が化粧水を浸透させる際にも顔面全面シート15と鼻部シート16は連接された一枚のシートであることから一度に浸透させることができると共に、顔面全面シート15と鼻部シート16の化粧水浸透度を一致させることが容易である。
【0086】
更に、本発明に係る化粧用パックシートは、頬部、鼻梁部、目尻部、顎部、額部のいずれか一つの部分乃至は複数部分を覆う顔面部分シートとすることもできる。例えば、図7は、左右の頬部19A・19A、鼻梁部19B、左右の目尻部19C・19Cの複数部分を覆う顔面部分シート19とした態様を示す。美容効果を必要とする顔面の部位に応じた顔面部分シートを用いることで、必要とする部位のみに美容効果を必要充分且つ有効に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明に係る化粧用パックシートの一実施例を示す平面図及び一部拡大図
【図2】層構成の一例を示す部分拡大断面図
【図3】包装体に包装された態様の一例を示す平面図
【図4】顔面に貼り付ける状態を説明する拡散斜視図
【図5】包装体に包装する態様の他の例を示す説明平面図
【図6】本発明に係る化粧用パックシートの他の実施例を示す平面図
【図7】本発明に係る化粧用パックシートの他の実施例を示す平面図
【符号の説明】
【0088】
1 化粧用パックシート
11 凍結乾燥コラーゲン膜体
12 支持シート
13 凸条
14 凹部
15 顔面全面シート
15A 目部開口
15B 鼻部切込み
15C 口部切込み
15D 端部透孔
16 鼻部シート
17 折畳線
18 分離線
19 顔面部分シート
19A 頬部
19B 鼻梁部
19C 目尻部
2 包装体
21 端部
22 マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結乾燥コラーゲン膜体の全面に支持シートがプレス加工により一体的に積層されてなり、前記支持シート表面には縦横に交差する複数本の凸条がプレス加工により施されており、美容液等の化粧水を浸透させて用いる構成であることを特徴とする化粧用パックシート。
【請求項2】
前記支持シートが不織布よりなることを特徴とする請求項1に記載の化粧用パックシート。
【請求項3】
前記化粧用パックシートが、鼻部を除く顔面全面シートと鼻部シートとの組合せから成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧用パックシート。
【請求項4】
前記鼻部を除く顔面全面シートと鼻部シートが、切り離し可能な分離線を介して連接された構成であることを特徴とする請求項3に記載の化粧用パックシート。
【請求項5】
前記鼻部を除く顔面全面シートと鼻部シートとの組合せ又は組合せの一組が、一つの包装体に包装されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の化粧用パックシート。
【請求項6】
前記鼻部を除く顔面シートが、前記鼻部シートの大きさと略同一の大きさに折畳まれた状態で前記一つの包装体に包装されていることを特徴とする請求項5に記載の化粧用パックシート。
【請求項7】
前記化粧用パックシートが、頬部、鼻梁部、目尻部、顎部、額部のいずれか一つの部分乃至は複数部分を覆う顔面部分シートであることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧用パックシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−19000(P2009−19000A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181717(P2007−181717)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(397063833)株式会社シーボン (2)
【Fターム(参考)】