説明

区分から構成された一体的な電極設計による電解セル

本発明は、2つの半殻体からなる、入力装置および出力装置と、流れ制御のための構成要素と、膜ならびにアノードおよびカソードとを主に含む電解セルに関する。電極(1)は任意の表面構造を有してよく、電極は、それぞれの半殻体に接続された導電性細長片(2)に、膜に対向する側で接続される。本発明の主な特徴は、電極を区分から構成し、継ぎ目のない一体物として単一の半完成品から、隣接する支持細長片と共に各電極区分を作製することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入口装置および出口装置と、流れ制御のための構成要素と、膜によって離隔されたアノードおよびカソードとを含む、2つの半殻体(セミシェル)から本質的に構成される電解セルに関する。電極は任意の表面構造を有してよく、この電極は、複数の導電性細長片(ストリップ)を介して、膜に対向する側の各半殻体に接続される。本発明によれば、2つの電極の少なくとも1つは、区分から構成された(セグメント化された)構造を備え、電極区分のそれぞれ、およびその隣接する支持細長片は、一体的な(モノリシックな)継ぎ目のない組立体として単一の半完成品から作製される。
【背景技術】
【0002】
電極と半殻体後壁とに垂直に配置された、すなわち押圧の方向に位置合わせされた細長片を介して各半殻体の内壁に電極を溶接することは、現行技術の慣例である。電気的に絶縁するスペーサは、膜が複数のスペーサ間に咬持され、その結果、外側から作用する押圧によって固定されるように、膜と電極との間の領域に挿入される。スペーサは、対向する対になって配置され、細長片は、電極の対向する側のスペーサに対応して位置付けられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の電解槽は、例えばDE19641125やEP0189535に記載されている。セル構成要素は、完成したセルの必要な剛性および強度を同時に保証する必要材料の量を最小化するように最適化される。DE19641125に従って装置を作製するときは、一部が比較的小さな厚さを有する個々の部材を予め作製し、その部材を矯正テーブルに位置付け、部材を溶接してまとめ、セルを組み立てる必要がある。1つの電解槽室が、通常数千の個々のセルから構成されることを考慮すると、大量注文の場合、これは、非常に時間がかかり、高価な方法である。
【0004】
例えば、材料の熱膨張、構成要素の不正確な位置付け、または個々の構成要素の寸法のばらつきによって生じることがある小さなずれでさえ、組み付けの問題またはセル動作の問題につながることがあるため、セル構成要素の寸法精度について厳しい要件が満たされなければならない。
【0005】
したがって、本発明の目的の1つは、現在の技術の不正確さを克服し、寸法精度が改善された、組み付けが容易なセル構成要素を含む電解槽を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的および他の目的は、入口装置および出口装置と、流れ制御のための構成要素と、膜によって離隔されたアノードおよびカソードとを含む、2つの半殻体から本質的に構成される電解セルを用いて達成される。電極は、任意の表面構造、形状、または穿孔(貫通孔、パーフォレーション)を有してよい。膜に対向する側では、電極は、細長片を介して各半殻体と電気的に接続され、少なくとも1つの、好ましくは2つの隣接する支持細長片を備える継ぎ目のない一体物(モノリス)として、各電極区分が単一の半完成品から形成される、区分から構成された設計によって特徴付けられる。
【0007】
本発明の電極の区分から構成された構造は、特に、本体高さの許容誤差が1つの構成要素または処理工程のみに依存するため、許容マージン(tolerance margin)を結果的に減少させることができる点で特に有利であり、これは、標準的技法における大きな電極寸法(2〜3m2)を考慮すると、特に重要である。反対に、現行技術の設計では、構成許容誤差全体は、接合部がさらに溶接工程の熱衝撃に曝される2つの別個の構成要素の特徴、すなわち細長片の長さおよび電極シートの厚さによって決定される。
【0008】
細長片がすでに電極に取り付けられているため、電極を膜平面に平行に位置付けることが容易になる。細長片足部の接触領域中、膜に平行な水平面に、相応する大きな許容誤差を与えることにより、位置合わせの際の変位に対する余裕も簡単に得ることができる。細長片が電極に固定されると、細長片はそれ以上溶接されず、曲げ機械または打抜き機械上で冷却形成されるため、熱歪みが生じなくなる。さらなる利点は、明らかに、標準的技法に必要な構成要素と比較して個々の構成要素の数量が少ないことにある。
【0009】
本発明の改善された実施形態では、細長片は、継ぎ目のない一体要素として同一の一体的な半完成品から形成され、次いで電解セルの各半殻体に溶接される、電極に平行に位置合わせされた1つまたは複数の足部を備える。細長片足部は、溶接を容易にし、また、小型の組立体としての一体的な電極区分の、およびセルの剛性を高める。
【0010】
より好ましい実施形態では、電極区分の足部は、有利には、隣接する電極区分の歯形に適合する歯として成形される。
本発明の好ましい実施形態では、細長片足部は、細長片の長さ全体に沿って湾曲され、その結果すべてが電極に平行になり、同じ方向を向く。この変形形態は、一体的な電極区分に取り付けられる足部の任意の幅を可能にする。
【0011】
また、本発明は、膜を固定し力を分配するために、隣接する電極区分の細長片間、および電極と細長片との間の遷移縁部(transition edges)上に位置付けられる成形片も提供する。成形片および電極区分の遷移領域は、挿入または係合され得るように形成される。スペーサは、理想的には、1つの部分を含むように成形され、この部分は、膜の上に位置し、電極と、隣接する細長片間の空間によって形成された溝にバネまたはプラグとして挿入されるさらなる部分とによって支持される。
【0012】
従来技術の標準的技法に対して、スペーサの改善された位置付けの重要な利点は、前記スペーサが、驚くべきことに、それぞれの対応片を電極区分を用いてより精密に重ね合うようにしたという点に見出された。すなわち、電気的に絶縁された各スペーサは、精密に重ね合っていないスペーサの任意の対が不活性膜表面領域を広げることになるように、接触領域において膜を不活性にする。
【0013】
本発明のさらに改善された実施形態は、流れ制御または組立体の補強のための少なくとも1つのプレートを収容することができる溝を備えた細長片を備える。
流れ制御のための後者のオプションおよび関連した利点は、このような挿入されたプレートが原因で、細長片の位置合わせの場合に必要な自由度が失われることになるため、製造技術の理由で従来技術のセルにおいては得られない。しかし、本発明の電解セルでは、細長片は固定されており、電極の遷移縁部に配置されたスペーサがその細長片に位置合わせされるため、このオプションは容易に実施され得る。
【0014】
特に好ましい実施形態は、電極に対して最大15°に角度付けされたプレートを収容するための溝を備える。セル動作の際に形成されるハロゲンガスは、気泡の形態で生じ、その結果、電解セルの上部では、大量の部分が泡や気泡に占められる。電極の上部における大きな開放断面を構築する傾斜されたプレートは、セルからの泡の放出および電極の下部への残りの溶液の戻り流を最適化することを可能にする。
【0015】
以下、本発明は、例として与えられ、本発明の範囲の限定として企図されない添付図面を用いて説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、AおよびBで示される、電極1の2つの区分(セグメント)の斜視図を示す。電極1は、両側の遷移領域3を介して細長片2に固定される。
細長片2は、電極1の主表面に平行な足部4を備え、細長片2に垂直に外側に向かって湾曲している。細長片足部4は、セル壁の後側10に固定される。図1に示される足部4は連続している。
【0017】
図2は、電極1と細長片2との間の遷移領域3に配置されたスペーサ7を例示する。上部8が遷移領域3に位置し、下部9が、隣接する細長片2によって形成された間隙に挿入された成形片も図示されている。図2に示される足部4も連続した足部である。
【0018】
図3は、細長片足部4が歯として成形された実施形態を示す。歯の列は、隣接する細長片の下の構造相(construction phase)に挿入され、その結果できるだけ小さい支持表面が形成される。個々の歯の寸法は、起こり得る必要な位置合わせのために、挿入された状態で、かつ溶接前に、小さな調節空間が設けられるように選択される。
【0019】
また、図3は、この例では層状構造(lamellar structure)を有する2つの電極区分を示す。溝5が細長片2中に設けられ、溝の中にプレート6が挿入される。一方では、このプレートは、電極区分の安定性を改善し、他方では、このプレートは、それぞれの向流を構築する2つの流路を画定する。セル動作の際は、電極1とプレート6との間の空間に上向きの流れがあり、セル後壁10(点線で示す)とプレート6との間の空間に下向きの流れがある。流れの変化は、電解槽の上下端での空間において生じる。試験セルでは、アノード表面積全体2.7m2を有する従来技術の設計の平面電極は、18区分を備える本発明の電極に置き換えられ、各区分は電極表面積0.15m2を有いている。こうしたセルは、電流密度3kA/m2および6kA/m2で動作した。
【0020】
本発明の電解セルの使用は、電流密度3kA/m2で8mVだけ、また電流密度6mVで約16mVだけセル電圧の減少を可能にした。
上述の説明は、本発明を限定するものと解釈すべきではなく、本発明の範囲から逸脱することなく種々の実施形態によって実施することができ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ規定される。
【0021】
本出願の明細書および特許請求の範囲では、用語「備える(comprise)」ならびに「備える(comprising)」および「備えた(comprised)」などのその変化形は、他の要素または追加の構成要素の存在を排除することを企図しない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による2つの電極区分の斜視図である。
【図2】スペーサが設けられた本発明による2つの電極区分の斜視図である。
【図3】補強および流れ制御のためのプレートを備える本発明による2つの電極区分の好ましい実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの半殻体によって区切される電解セルであって、前記2つの半殻体のそれぞれは、多数の導電性細長片によって電極に固定され、前記電極は、膜によって分離される主表面を有するアノードおよびカソードから構成される、電界セルにおいて、前記電極の少なくとも1つが多数の電極区分から作られ、前記電極区分のそれぞれが、それぞれの前記半殻体に固定する前に、前記導電性細長片の少なくとも1つに取り付けられ、前記電極区分および当該電極区分に取り付けられる前記導電性細長片が、継ぎ目のない一体要素として単一の半完成品から得られることを特徴とする電解セル。
【請求項2】
前記電極区分のそれぞれが、前記導電性細長片のうちの2つに取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のセル。
【請求項3】
前記導電性細長片が、前記少なくとも1つの電極の前記主表面に平行な突出する足部を備え、当該足部が、前記単一の半完成品から得られる前記継ぎ目のない一体要素の一部であり、前記足部が、前記電解セルのそれぞれの前記半殻体に溶接されることを特徴とする請求項1または2に記載のセル。
【請求項4】
前記足部が、隣接する電極区分の対向する歯形に合う歯として成形されることを特徴とする請求項3に記載のセル。
【請求項5】
前記足部が、前記少なくとも1つの電極の前記主表面に平行な位置にあり、同じ方向に向かうように、前記細長片の長さ全体に沿って湾曲されることを特徴とする請求項3または4のいずれか一項に記載のセル。
【請求項6】
複数の成形片が、隣接する電極区分の前記細長片の間に配置され、かつ前記電極及び前記細長片の間で遷移縁部に配置されており、組立状態において、前記膜の上に位置する第1の部分と、前記細長片間に位置する第2の部分とを含むことを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載のセル。
【請求項7】
前記細長片が、少なくとも1つの補強プレートが挿入される溝を備えることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載のセル。
【請求項8】
前記プレートを収容する前記溝が、前記電極に対して最大15°に角度付けされることを特徴とする請求項7に記載のセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−528795(P2008−528795A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551642(P2007−551642)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000644
【国際公開番号】WO2006/079523
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(502043101)ウデノラ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ (14)
【Fターム(参考)】