説明

医用撮影装置および寝台動作制御方法

【課題】X線CT装置において、寝台の左右動を含めた動作を安全かつ容易に制御する。
【解決手段】寝台制御部19が、操作者から天板21の上下動、前後動または左右動の指示を受け付けた場合に、その時点での天板21の高さH、前後方向の移動量Z、および、左右方向の移動量Xをそれぞれ取得し、取得した移動量に基づいて、各方向に天板21を移動できるか否かを判定して、天板21の動作を制御する。また、寝台制御部19が、操作者からオートホーム機能の動作の指示を受け付けた場合に、その時点での天板21のその時点での天板21の高さH、前後方向の移動量Z、および、左右方向の移動量Xをそれぞれ取得し、取得した移動量に基づいて、天板21の上下方向、前後方向および左右方向の動作を制御し、天板21を自動的にホームポジションまで移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検体の断層像を撮影する医用撮影装置における寝台の動作制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線診断装置などの医用撮影装置に設置される寝台には、撮影位置を調整するために、上下動機構や前後動機構だけでなく、左右動機構を有するものがある(例えば、特許文献1参照。)。このうち、左右動機構は、心臓や腕など、左右にある局所的な部位の撮影位置を調整する際に有用なだけでなく、患者(被検体)が寝台に乗り降りする際の動作を容易にする場合にも利用することができる。
【0003】
図10は、従来の寝台の構成を示す図である。同図に示すように、一般的には、寝台2は、ベースフレーム23と、上部フレーム22と、天板21とから構成され、ベースフレーム23と上部フレーム22の側面の位置は、同一直線上あるいはそれに近い位置となる。そのため、寝台2に乗り降りする際には、患者の膝は90度に近い曲げ角度となる。
【0004】
このような姿勢では、図11(b)に示すように、体の重心が後方に置かれるため、患者は容易に腰掛けや立ち上がりの動作を行うことができない。これに対し、図11(a)に示すように、膝が90度未満の角度で曲がっている場合には、重心を体の中心に置くことができるため、患者は安定して寝台2に腰掛けたり、寝台2から立ち上がったりすることができる。
【0005】
そこで、患者が乗り降りする際に、寝台の左右動機構を利用して、上部フレーム22を天板21とともにベースフレーム23上で左方向または右方向に所定の距離だけ移動する。これにより、患者は、安定した動作で容易に腰掛けや立ち上がりの動作を行うことができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−171148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、架台1に開口されたドーム3内に患者を配置して断層画像の撮影を行うX線CT装置において、寝台2に左右動機構を設ける場合には、天板21の上下方向および前後方向の位置に応じて、寝台2の左右方向への移動範囲が制限されるという問題がある。X線CT装置では、撮影時には天板21が患者とともにドーム3内に挿入されるため、ドーム3によって天板21の移動範囲が制限されるからである。
【0008】
そのため、X線CT装置の寝台に左右動機構を設ける場合には、天板21がドーム3内に衝突することを防ぎ、天板21を上下方向、前後方向および左右方向に安全に移動するための、上下動機構、前後動機構および左右動機構がそれぞれ連携したインタロック制御が必要になる。
【0009】
この発明は、上述した従来技術における課題を解決するためになされたものであり、寝台の左右動を含めた動作を安全かつ容易に制御することができる医用撮影装置および寝台制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
また、本発明は、天板に載せられた被検体の断層像を撮影する医用撮影装置であって、前記被検体が容易に乗降可能な所定の位置に前記天板を移動することを指示する移動指示を受け付ける移動指示受付手段と、前記天板の上下方向、前後方向および左右方向の位置をそれぞれ検出する天板位置検出手段と、前記移動指示受付手段により前記移動指示が受け付けられた場合に、前記天板位置検出手段により検出された上下方向、前後方向および左右方向の位置に基づいて、前記天板の上下方向、前後方向および左右方向の動作を制御し、前記天板を自動的に前記所定の位置に移動する天板移動手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、天板に載せられた被検体の断層像を撮影する医用撮影装置における寝台動作制御方法であって、前記医用撮影装置は、移動指示受付手段、天板位置検出手段および天板移動手段を備え、前記移動指示受付手段が、前記被検体が容易に乗降可能な所定の位置に前記天板を移動することを指示する移動指示を受け付ける移動指示受付ステップと、前記天板位置検出手段が、前記天板の上下方向、前後方向および左右方向の位置をそれぞれ検出する天板位置検出ステップと、前記天板移動手段が、前記移動指示受付ステップにより前記移動指示が受け付けられた場合に、前記天板位置検出ステップにより検出された上下方向、前後方向および左右方向の位置に基づいて、前記天板の上下方向、前後方向および左右方向の動作を制御し、前記天板を自動的に前記所定の位置に移動する天板移動ステップと、を含んだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、寝台の左右動を含めた動作を安全かつ容易に制御することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施例に係るX線CT装置による寝台の動作制御の概念を説明するための図である。
【図2】本実施例に係るX線CT装置における座標系、定数および変数の定義を説明するための図である。
【図3】本実施例に係るX線CT装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図4】寝台制御部によるインタロック制御の処理手順を示すフローチャート(1)である。
【図5】寝台制御部によるインタロック制御の処理手順を示すフローチャート(2)である。
【図6】寝台制御部による左右方向のオートホーム制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】寝台制御部による前後方向のオートホーム制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】寝台制御部による上下方向のオートホーム制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】スリュー機構を有するX線CT装置における寝台の動作制御を説明するための図である。
【図10】従来の寝台の構成を示す図である。
【図11】寝台乗降時の被検体の姿勢を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る医用撮影装置および寝台動作制御方法の好適な実施例を詳細に説明する。
【実施例】
【0015】
まず、本実施例に係るX線CT装置による寝台の動作制御の概念について説明する。図1は、本実施例に係るX線CT装置による寝台の動作制御の概念を説明するための図である。同図に示すように、本実施例に係るX線CT装置は、撮影対象の被検体Pを載せる寝台2を備え、寝台2は、被検体Pを載せる天板21と、天板21を支持する上部フレーム22と、上部フレーム22を支持するとともに、寝台2を床面に固定するベースフレーム23とから構成されている。
【0016】
ここで、寝台2は、操作者からの指示に応じて、ベースフレーム23上で上部フレーム22とともに天板21を上下方向または左右方向に移動したり、上部フレーム22上で天板21を架台1に向かう方向(以下、「IN方向」と呼ぶ)およびその反対方向(以下、「OUT方向」と呼ぶ)に前後に移動したりすることが可能であり、これにより、撮影時に被検体Pを架台1に開口されたドーム3内に挿入するなど、被検体Pの位置を調整することができる。
【0017】
そして、本実施例に係るX線CT装置は、上下方向、IN/OUT方向および左右方向への移動指示を受け付けた場合に、その時点での天板21の位置に基づいて、天板21を各方向へ移動することが可能であるか否かを判定し、判定した結果に基づいて、天板21の動作を制御するインタロック制御を行う。
【0018】
例えば、X線CT装置は、天板21がドーム3内に収まる高さの範囲内および横方向の範囲内にある場合には、天板21のIN/OUT方向への移動を許可し、一方、天板21がドーム3より低い位置にある場合には、天板21のIN方向への移動を禁止するよう制御する。
【0019】
また、例えば、X線CT装置は、天板21がドーム3の外に抜け切っている場合には、天板21の上下および左右方向への移動を許可し、一方、天板21がドーム3内に挿入されている場合には、ドーム3内に収まる範囲、すなわち、ドーム3の内壁に衝突しない範囲内で天板21の上下および左右方向への移動を許可するよう制御する。
【0020】
このインタロック制御によって、本実施例に係るX線CT装置では、左右方向への移動を含めた寝台2の動作を安全に制御することができるようにしている。
【0021】
さらに、本実施例に係るX線CT装置は、被検体Pが容易に腰掛けたり立ち上がったりできる天板21の位置をホームポジションとしてあらかじめ記憶しておき、操作者からの指示を契機に、インタロック制御を行いながら、自動的に天板21を任意の位置からホームポジションに移動するオートホーム機能を備える。
【0022】
ここで、ホームポジションとは、図1(b)に示すように、寝台2に乗降する際に被検体Pが膝の曲げ角度を90度未満にすることができる天板21の位置であり、架台1の外部に位置し、かつ、上部フレーム22とともにベースフレーム23上で所定の幅だけ左または右方向に移動した位置である。
【0023】
このオートホーム機能によって、本実施例に係るX線CT装置では、被検体Pが乗降しやすい位置に寝台2を容易に移動することができるようにしている。
【0024】
次に、寝台2のインタロック制御を行うために必要な座標系、定数および変数の定義について説明する。図2は、本実施例に係るX線CT装置における座標系、定数および変数の定義を説明するための図である。同図(a)は、架台1の正面図であり、同図(b)は、架台1および寝台2の側面図である。
【0025】
まず、図2に示すように、左右方向にx軸、上下方向にy軸、IN/OUT方向にz軸を、それぞれ定義する。ここで、z軸は、寝台2の側面のうち架台1の反対側にある側面の中心を通るように定義し、このz軸が床面と交差する点を各座標の原点として定義する。
【0026】
続いて、定数として、架台1のドーム3の中心までの高さをa、ドーム3の半径をR、天板21のx軸方向の幅を2×L、天板21のz軸方向の長さをT、寝台2の側面のうち架台1の反対側にある側面から架台1までの距離をD、天板21とドーム3との間のx軸およびy軸方向のクリアランス保証値をC、天板21と架台1との間のz軸方向のクリアランス保証値をCとする。例えば、クリアランス保証値CおよびCには、国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)において規定されたIEC60601−1−2に準ずる安全保証値である25mmを設定する。
【0027】
さらに、変数として、天板21の左右方向への移動量をX、天板21の高さをH、天板21の前後方向(IN方向)への移動量をZとし、前述したホームポジションの位置は、(X,H,Z)=(X,H,0)として定義する。ここで、Xは、図1に示したように、寝台2に乗降する際に被検体Pが膝の曲げ角度を90度未満にすることができるようにするための左または右方向への天板21の移動量であり、Hは、寝台2に乗降する際に被検体Pが容易に乗り降りできる高さである。これらXおよびHは、それぞれ、例えば被検体Pの身長などに応じて、あらかじめ定数として定義される。
【0028】
本実施例に係るX線CT装置は、ここで定数として定義したa、R、L、T、D、C、XおよびHを、あらかじめそれぞれ記憶しておき、変数として定義したX、HおよびZをそれぞれ検出することによって、インタロック制御を行う。
【0029】
例えば、a−R+C<H<a+R−Cであった場合には、天板21の上下方向の位置がドーム3内に収まる高さであると判断することができる。この場合、X線CT装置は、天板21のOUT方向への移動を許可し、また、IN方向への移動については、天板21が、左右方向でドーム3内に収まる位置にある場合には移動を許可し、左右方向で収まる位置にない場合には、移動を禁止する。一方、0<H≦a−R+Cであった場合には、X線CT装置は、天板21の上下方向の位置がドーム挿入可能範囲より低いと判断することができる。この場合、X線CT装置は、天板21のIN方向への移動を禁止する。
【0030】
また、天板21と架台1との間のz軸方向の距離をCとすると、C=D−(T+Z)の式で算出することができる。そして、例えば、C>Cであった場合には、天板21がドーム3の外に抜け切っていると判断することができる。この場合、X線CT装置は、天板21の上下および左右方向への移動を許可する。一方、C≦Cであった場合には、天板21がドーム3内に挿入されているか、または、クリアランス保証値C以下となるまでドーム3に近付いていると判断することができる。この場合、X線CT装置は、0<H≦a−R+Cとなる下方向への移動を禁止する。
【0031】
また、天板21とドーム3内壁との間のx軸方向の距離をCとすると、Cは、以下の式で算出することができる。
【0032】
【数1】

【0033】
そして、例えば、天板21がドーム3内に挿入されており、さらに、上記の式で算出した距離Cがクリアランス保証値Cより大きい場合には、天板21の左右方向への移動量Xをさらに増やすことが可能、すなわち、天板21をさらにドーム3内壁に近づけることが可能であると判断することができる。この場合、X線CT装置は、天板21の左右方向への移動を許可する。
【0034】
これに対し、天板21がドーム3内に挿入されており、さらに、上記の式で算出した距離Cがクリアランス保証値Cであった場合には、天板21の左右方向への移動量Xをさらに増やすことは不可能、すなわち、天板21をさらにドーム3内壁に近づけることは不可能であると判断することができる。この場合、X線CT装置は、天板21の左右方向への移動を禁止する。
【0035】
一方、例えば、天板21がドーム3外に抜け切っており、上記の式で算出した距離Cがクリアランス保証値Cより大きい場合には、天板21が、IN方向に移動した場合に、ドーム3内に収まる位置にあると判断することができる。この場合、X線CT装置は、天板21のIN方向への移動を許可する。
【0036】
これに対し、例えば、天板21がドーム3外に抜け切っており、上記の式で算出した距離Cがクリアランス保証値C以下であった場合には、天板21が、IN方向に移動した場合に、ドーム3内に収まる位置にないか、または、クリアランス保証値C以下となるまでドーム3の内壁に近付くと判断することができる。この場合、X線CT装置は、天板21のIN方向への移動を禁止する。
【0037】
次に、本実施例に係るX線CT装置の構成について説明する。図3は、本実施例に係るX線CT装置の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、このX線CT装置は、架台1と、寝台2と、コンソール4とから構成される。
【0038】
寝台2は、撮影対象の被検体Pを載せる台であり、天板21と、上部フレーム22と、ベースフレーム23とから構成される。
【0039】
天板21は、被検体Pを載せる板であり、上部フレーム22によって上下方向(図2に示したy軸方向)、IN/OUT方向(図2に示したz軸方向)および左右方向(図2に示したx軸方向)に移動される。
【0040】
上部フレーム22は、ベースフレーム23上で天板21を上下方向、IN/OUT方向および左右方向に移動することによって、被検体Pの位置を調整する装置である。この上部フレーム22は、図3には図示していないが、天板21とともに上下方向に移動するための上下動機構や、天板21とともに左右方向に移動するための左右動機構、天板21をIN/OUT方向に前後に移動するための前後動機構を、それぞれ備えている。
【0041】
なお、ここでは、上部フレーム22が、ベースフレーム23上で天板21とともに左右方向に移動する場合について説明するが、上部フレーム22は、天板21のみを上部フレーム22上で左右方向に移動するように構成されていてもよい。
【0042】
ベースフレーム23は、上部フレーム22を支持するとともに、寝台2を床面に固定する土台である。
【0043】
コンソール4は、架台1から出力される生データに基づいて被検体Pの断層画像を作成して表示したり、X線CT装置を操作するための入力を受け付けたりする装置である。
【0044】
架台1は、被検体PにX線を照射するとともに、当該被検体Pを透過したX線に基づいて生成した生データをコンソール4に出力する装置であり、X線管10と、X線検出器12と、高電圧発生器13と、架台駆動装置14と、データ収集部15と、寝台操作部16と、上下動エンコーダ17aと、前後動エンコーダ17bと、左右動エンコーダ17cと、位置情報記憶部18と、寝台制御部19とを有する。
【0045】
X線管10は、高電圧発生器13により供給される高電圧によって、被検体Pに対して照射するX線を発生する装置であり、X線検出器12は、被検体Pを透過したX線を検出する装置である。X線管10とX線検出器12とは、架台駆動装置14によって回転駆動されるリング状の回転フレーム11に、回転軸を挟んで互いに対向する位置に搭載される。
【0046】
回転フレーム11は、中央部分に開口されたドーム3を有しており、そのドーム3内に、寝台2の天板21に載せられた患者が挿入される。そして、架台駆動装置14が回転フレーム11を回転させることによって、X線管10とX線検出器12とが対向した状態で被検体Pの周りを回転するように構成される。
【0047】
データ収集部15は、DAS(Data Acquisition System)とも呼ばれ、X線検出器12によって検出された信号を増幅し、さらに、デジタル信号に変換する装置である。データ収集部15は、これによって得られるデジタル信号を生データとしてコンソール4に出力する。
【0048】
寝台操作部16は、寝台2の動作に関する操作を受け付ける入力装置である。具体的には、この寝台操作部16は、上部フレーム22を上下方向に動作させる指示を受け付けるための上下動ボタンや、上部フレーム22を左右方向に動作させる指示を受け付けるための左右動ボタン、天板21を架台1のドーム3内に出し入れするようIN/OUT方向に動作させる指示を受け付けるための前後動ボタンなどの操作ボタンを有する。
【0049】
また、寝台操作部16は、任意の位置からあらかじめ定義されたホームポジションに天板21を自動的に移動するオートホーム機能を動作させるためのオートホームボタンも有する。
【0050】
そして、寝台操作部16は、これらの操作ボタンが操作者によって操作された場合に、寝台制御部19に対して、天板21の上下動、前後動(IN/OUT方向への動作)、左右動およびオートホーム機能の動作を行うように指示する。
【0051】
上下動エンコーダ17aは、天板21の上下方向の移動量を検出する計測器である。この上下動エンコーダ17aは、上部フレーム22の上下動機構が駆動された場合に、その駆動量を計測し、計測した値に基づいて、図2に示した天板21の高さHを算出して位置情報記憶部18に格納する。
【0052】
前後動エンコーダ17bは、天板21のIN/OUT方向の移動量を検出する計測器である。この前後動エンコーダ17bは、上部フレーム22の前後動機構が駆動された場合に、その駆動量を計測し、計測した値に基づいて、図2に示した天板21の前後方向への移動量Zを算出して位置情報記憶部18に格納する。
【0053】
左右動エンコーダ17cは、天板21の左右方向への移動量を検出する処理部である。この左右動エンコーダ17cは、上部フレーム22の左右動機構が駆動された場合に、その駆動量を計測し、計測した値に基づいて、図2に示した天板21の左右方向への移動量Xを算出して位置情報記憶部18に格納する。
【0054】
寝台制御部19は、操作者からの指示に基づいて、寝台2の動作を制御する処理部である。具体的には、この寝台制御部19は、寝台操作部16またはコンソール4から天板21の上下動、前後動、左右動、または、オートホーム機能の動作を指示された場合に、それぞれの指示に基づいて、位置情報記憶部18を参照して、天板21の高さH、前後方向への移動量Zおよび左右方向への移動量Xを取得し、インタロック制御を行いながら、上部フレーム22に備えられた上下動機構、左右動機構および前後動機構を駆動し、上部フレーム22および天板21を移動させる。
【0055】
なお、この寝台制御部19は、図2に示した定数a、R、L、T、D、C、C、XおよびHを、あらかじめ、例えば内部位置情報記憶部などにそれぞれ記憶しているものとする。
【0056】
次に、寝台制御部19によるインタロック制御の処理手順について説明する。図4および5は、寝台制御部19によるインタロック制御の処理手順を示すフローチャートである。寝台制御部19は、寝台2に対する左右動または前後動の指示を受け付けると、図4に示すように、まず、位置情報記憶部18を参照して、天板21の高さH(上下動位置情報)を取得する(ステップS101)。
【0057】
そして、寝台制御部19は、a−R+C<H<a+R−Cであった場合には(ステップS102,Yes)、天板21の高さがドーム3内に収まる範囲内にあると判断して、天板21の前後動を許可するとともに(ステップS103)、位置情報記憶部18を参照して、天板21の前後方向への移動量Z(前後動位置情報)を取得する(ステップS104)。
【0058】
ここで、D−(T+Z)>Cであった場合には(ステップS105,Yes)、寝台制御部19は、天板21がドーム3の外に抜け切っていると判断し、天板21の左右動を許可するとともに(ステップS106)、位置情報記憶部18を参照して、天板21の左右方向への移動量X(左右動位置情報)を取得する(ステップS107)。
【0059】
そして、寝台制御部19は、
【数2】

であった場合には(ステップS108,Yes)、その時点では、天板21が、前後移動した場合にドーム3内に収まる位置にあると判断し、寝台2の前後動を許可したまま(ステップS103)、再度、位置情報記憶部18を参照して、天板21の前後方向への移動量Zを取得し(ステップS104)、ステップS105の判定を行う。
【0060】
このように、寝台制御部19は、ステップS105の条件およびステップS108の条件が成立している間は、天板21がドーム3の外に抜け切っており、かつ、天板21が、IN方向に移動した場合にドーム3内に収まる位置にあると判断し、天板21の前後動および左右動を許可したまま、ステップS103以降の処理を繰り返して行う。
【0061】
そして、寝台制御部19は、ステップS108の判定において、
【数2】

でなかった場合には(ステップS108,No)、その時点では、天板21が、IN方向に移動した場合に、ドーム3内に収まる位置にないか、または、クリアランス保証値C以下となるまでドーム3の内壁に近付くと判断し、天板21のIN方向への移動を禁止(OUT方向への移動は許可)し(ステップS109)、再度、位置情報記憶部18を参照して、天板21の左右方向への移動量Xを取得し(ステップS107)、ステップS108の判定を行う。
【0062】
このように、寝台制御部19は、ステップS108の条件が成立しない間は、天板21が、IN方向に移動した場合にドーム3内に収まる位置にないと判断し、天板21のIN方向への移動を禁止し続ける。
【0063】
また、寝台制御部19は、ステップS105において、D−(T+Z)>Cでなかった場合には(ステップS105,No)、天板21がドーム3内に挿入されているか、または、クリアランス保証値C以下となるまでドーム3に近付いていると判断し、位置情報記憶部18を参照して、天板21の左右方向への移動量Xを取得する(ステップS110)。
【0064】
そして、寝台制御部19は、
【数2】

であった場合には(ステップS111,Yes)、その時点では、天板21の左右方向への移動量Xをさらに増やすことが可能、すなわち、天板21をさらにドーム3内壁に近づけることができると判断し、天板21の左右動を許可し(ステップS112)、再度、位置情報記憶部18を参照して天板21の左右方向への移動量Xを取得し(ステップS110)、ステップS111の判定を行う。
【0065】
そして、寝台制御部19は、ステップS111において、
【数2】

でなかった場合には(ステップS111,No)、その時点では、天板21をこれ以上ドーム3内壁に近づけることができないと判断し、天板21の左右方向への移動量Xの符号方向(ベクトル方向)への移動を禁止(逆方向への移動は許可)し(ステップS113)、再度、位置情報記憶部18を参照して、天板21の左右方向への移動量Xを取得し(ステップS110)、ステップS111の判定を行う。
【0066】
このように、寝台制御部19は、ステップS111の条件が成立している間は、天板21の左右方向への移動量Xをさらに増やすことが可能であると判断し、天板21の左右動を許可し続けるが、ステップS111の条件が成立しない状態まで天板21がドーム3の内壁に近付いていると判断した場合には、天板21の左右方向への移動量Xの符号方向(ベクトル方向)への移動を禁止する。
【0067】
一方、ステップS102において、a−R+C<H<a+R−Cでなかった場合には(ステップS102,No)、図5に示すように、寝台制御部19は、天板21の上下方向の位置がドーム3より低いと判断して、天板21のIN方向への移動を禁止(OUT方向への移動は許可)し(ステップS114)、さらに、位置情報記憶部18を参照して、天板21の前後方向への移動量Zを取得する(ステップS115)。
【0068】
そして、寝台制御部19は、D−(T+Z)>Cであった場合には(ステップS116,Yes)、その時点では、天板21がドーム3の外に抜け切っていると判断し、寝台2の左右動を許可し(ステップS117)、再度、位置情報記憶部18を参照して、天板21の前後方向への移動量Zを取得し(ステップS115)、ステップS116の判定を行う。
【0069】
一方、ステップS116において、D−(T+Z)>Cでなかった場合には(ステップS116,No)、寝台制御部19は、クリアランス保証値C以下となるまで天板21がドーム3に近付いていると判断し、天板21の左右動を禁止し(ステップS118)、再度、位置情報記憶部18を参照して、天板21の前後方向への移動量Zを取得し(ステップS115)、ステップS116の判定を行う。
【0070】
このように、寝台制御部19は、ステップS116の条件が成立している間は、天板21がドーム3の外に抜け切っていると判断し、天板21の左右動を許可し続けるが、ステップS116の条件が成立しない状態になった場合は、天板21がクリアランス保証値C以下となるまでドーム3に近付いていると判断し、天板21の左右動を禁止する。
【0071】
以上のように、寝台制御部19が、天板21の前後方向の移動量Zに基づいて、天板21がドーム3に挿入されているか否かを判定し、天板21がドーム3に挿入されていると判定した場合に、天板21の左右方向の移動範囲をドーム3の内側に制限するので、天板21がドーム3の内壁に衝突するのを防ぐことが可能になり、寝台2の動作を安全に制御することができる。
【0072】
また、寝台制御部19が、天板21がドーム3に挿入されていないと判定した場合に、天板21の左右方向の移動量Xに基づいて、天板21がドーム3の外側に位置しているか否かを判定し、天板21がドーム3の外側に位置していると判定した場合に、天板21のIN方向の移動範囲を架台1の手前までに制限するので、天板21が架台1に衝突するのを防ぐことが可能になり、寝台2の動作を安全に制御することができる。
【0073】
また、寝台制御部19が、天板21がドーム3に挿入されていないと判定した場合に、天板21の高さHに基づいて、天板21がドーム3より下方に位置しているか否かを判定し、天板21がドーム3より下方に位置していると判定した場合に、天板21のIN方向の移動範囲を架台1の手前までに制限するので、天板21が架台1に衝突するのを防ぐことが可能になり、寝台2の動作を安全に制御することができる。
【0074】
次に、寝台制御部19によるオートホーム制御の処理手順について説明する。図6、7および8は、寝台制御部19によるオートホーム制御の処理手順を示すフローチャートである。寝台制御部19は、操作者によって寝台操作部16のオートホームボタンが押下されると、上部フレーム22の左右動機構、前後動機構および上下動機構を制御し、ホームポジションに向けて、寝台2の左右方向、前後方向および上下方向への移動をそれぞれ同時に開始する。
【0075】
以下では、これら3つの方向ごとに、オートホーム制御の処理手順を説明する。図6は左右方向のオートホーム制御の処理手順を、図7は前後方向のオートホーム制御の処理手順を、図8は上下方向のオートホーム制御の処理手順を、それぞれ示している。
【0076】
まず、左右方向については、寝台制御部19は、図6に示すように、寝台操作部16のオートホームボタンが押下されると(ステップS201,Yes)、上部フレーム22の左右動機構を制御して、架台1のドーム3の中心方向に向けて天板21の左右動を開始した後に(ステップS202)、位置情報記憶部18を参照して、天板21の左右方向への移動量Xを取得する(ステップS203)。
【0077】
その後、寝台制御部19は、X=0となるまで移動量Xの取得を繰り返し、X=0となった場合には(ステップS204,Yes)、上部フレーム22の左右動機構を制御して、天板21の左右動を停止する(ステップS205)。
【0078】
続いて、前後方向については、寝台制御部19は、図7に示すように、寝台操作部16のオートホームボタンが押下されると(ステップS301,Yes)、上部フレーム22の前後動機構を制御して、架台1のドーム3の外に向けて天板21の前後動を開始するとともに(ステップS302)、位置情報記憶部18を参照して、天板21の前後方向への移動量Zを取得する(ステップS303)。
【0079】
その後、寝台制御部19は、Z=0となるまで移動量Zの取得を繰り返し、Z=0となった場合には(ステップS304,Yes)、上部フレーム22の前後動機構を制御して、天板21の前後動を停止する(ステップS305)。
【0080】
続いて、上下方向については、寝台制御部19は、図8に示すように、寝台操作部16のオートホームボタンが押下されると(ステップS401,Yes)、まず、位置情報記憶部18を参照して、天板21の前後方向への移動量Zを取得する(ステップS402)。
【0081】
ここで、D−(T+Z)>Cでなかった場合には(ステップS403,No)、寝台制御部19は、天板21がドーム3内に挿入されているか、または、クリアランス保証値C以下となるまでドーム3に近付いていると判断し、位置情報記憶部18を参照して、天板21の高さHおよび左右方向への移動量Xを取得する(ステップS404、S405)。
【0082】
そして、寝台制御部19は、
【数2】

であった場合には(ステップS406,Yes)、その時点では、天板21の高さHをさらに減らすことが可能であると判断し、上部フレーム22の上下動機構を制御して、天板21の降下を開始する(ステップS407)。
【0083】
一方、寝台制御部19は、
【数2】

でなかった場合には(ステップS406,No)、その時点では、天板21の高さHをこれ以上減らすことができないと判断し、上部フレーム22の上下動機構を制御して、天板21の降下を停止する(ステップS408)。
【0084】
その後、寝台制御部19は、ステップS402に戻って、再度、天板21の前後方向への移動量Zを取得し、D−(T+Z)>Cとなるまで、ステップS404からステップS408までの処理を繰り返す。
【0085】
そして、D−(T+Z)>Cとなった場合には(ステップS403,Yes)、寝台制御部19は、上部フレーム22の上下動機構を制御して、天板21の下方向への移動を開始した後に(ステップS409)、位置情報記憶部18を参照して、天板21の高さHを取得する(ステップS410)。
【0086】
その後、寝台制御部19は、H=Hとなるまで高さHの取得を繰り返し、H=Hとなった場合には(ステップS411,Yes)、上部フレーム22の上下動機構を制御して、天板21の降下を停止する(ステップS412)。
【0087】
天板21の降下を停止した後に、寝台制御部19は、位置情報記憶部18を参照して、天板21の左右方向への移動量X、および、天板21の前後方向への移動量Zを取得する(ステップS413、S414)。
【0088】
そして、寝台制御部19は、X≠0またはZ≠0であった場合には(ステップS415,No)、さらに移動量XおよびZの取得を繰り返し、X=0かつZ=0となった場合には(ステップS415,Yes)、上部フレーム22の左右動機構を制御して、天板21を、X=Xとなる位置(ホームポジション)まで左右方向に移動する(ステップS416)。
【0089】
このように、寝台制御部19が、オートホームボタンが押下された場合に、天板21の高さH、前後方向への移動量Zおよび左右方向への移動量Xに基づいて、天板21を各方向に移動できるか否かを判定し、その判定結果に基づいて、天板21の移動を許可または禁止しながら、自動的に天板21をホームポジションまで移動するので、被検体Pが乗降しやすい位置に寝台2を容易に移動することができる。
【0090】
上述してきたように、本実施例では、寝台制御部19が、操作者から天板21の上下動、前後動または左右動の指示を受け付けた場合に、その時点での天板21の高さH、前後方向の移動量Z、および、左右方向の移動量Xをそれぞれ取得し、取得した移動量に基づいて、各方向に天板21を移動できるか否かを判定して、天板21の動作を制御するので、天板21の左右動を含めた寝台2の動作を安全に制御することができる。
【0091】
また、本実施例では、寝台制御部19が、操作者からオートホーム機能の動作の指示を受け付けた場合に、その時点での天板21のその時点での天板21の高さH、前後方向の移動量Z、および、左右方向の移動量Xをそれぞれ取得し、取得した移動量に基づいて、天板21の上下方向、前後方向および左右方向の動作を制御し、天板21を自動的にホームポジションまで移動するので、被検体Pが乗降しやすい位置に寝台2を容易に移動することができる。
【0092】
なお、上記実施例では、それぞれ互いに直交する上下、IN/OUTおよび左右の3方向に寝台2が移動する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図9に示すように、天板21および上部フレーム22が、天板21に対して垂直に交わる所定の軸を中心(スリュー中心)として回転するスリュー機構を有する場合にも同様に適用することができる。
【0093】
この場合は、回転センサなど、上部フレーム22が回転した角度(スリュー角)を検出するための手段を設け、これにより検出されたスリュー角に基づいて、スリューによる天板21の左右方向の移動量を算出する。
【0094】
具体的には、スリュー角度をθ、スリュー中心から、OUT方向への天板の移動可能な限界までの距離をL0とすると、スリューによる左右方向の移動量Xは、X=(T+Z−L0)×tanθで算出することができる。
【0095】
そして、寝台制御部19が、上記の式を用いて移動量Xを算出し、算出したXを、前後動エンコーダ17bによって検出された移動量Xに加えたうえで、左右方向への天板21の移動可否を判定するようにする。
【0096】
また、上記実施例では、オートホーム機能について説明したが、撮影時などに、架台1のドーム3内の中心位置、または、中心位置から所定の距離だけ左右にずらした位置などの所定の位置に、天板21を自動的に移動するオートセット機能をさらに備えていてもよい。すなわち、この場合も、寝台制御部19は、天板21の高さH、前後方向への移動量Zおよび左右方向への移動量Xに基づいて、天板21を各方向に移動できるか否かを判定し、その判定結果に基づいて、天板21の移動を許可または禁止しながら、自動的に天板21をドーム3内の所定の位置まで移動するよう寝台2の動作を制御する。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上のように、本発明に係る医用撮影装置および寝台動作制御情報は、寝台の左右動機構を有する医用撮影装置に有用であり、特に、上下動機構および前後動機構と連携して寝台の動作を制御する必要がある場合に適している。
【符号の説明】
【0098】
1 架台
2 寝台
3 ドーム
4 コンソール
10 X線管
11 回転フレーム
12 X線検出器
13 高電圧発生器
14 架台駆動装置
15 データ収集部
16 寝台操作部
17a 上下動エンコーダ
17b 前後動エンコーダ
17c 左右動エンコーダ
18 位置情報記憶部
19 寝台制御部
21 天板
22 上部フレーム
23 ベースフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架台ドーム内で天板に載せられた被検体の断層像を撮影する医用撮影装置であって、
前記被検体が容易に乗降可能な所定の位置に前記天板を移動することを指示する移動指示を受け付ける移動指示受付手段と、
前記天板の上下方向、前後方向および左右方向の位置をそれぞれ検出する天板位置検出手段と、
前記移動指示受付手段により前記移動指示が受け付けられた場合に、前記天板位置検出手段により検出された上下方向、前後方向および左右方向の位置に基づいて、前記天板の上下方向、前後方向および左右方向の動作を制御し、前記天板を自動的に前記所定の位置に移動する天板移動手段と、
を備えたことを特徴とする医用撮影装置。
【請求項2】
前記被検体が容易に乗降可能な所定の位置は、前記天板が、前記架台ドーム内の中心を通る前後方向の軸から所定の距離だけ左方向あるいは右方向に移動した位置であることを特徴とする請求項1に記載の医用撮影装置。
【請求項3】
天板に載せられた被検体の断層像を撮影する医用撮影装置における寝台動作制御方法であって、
前記医用撮影装置は、移動指示受付手段、天板位置検出手段および天板移動手段を備え、
前記移動指示受付手段が、前記被検体が容易に乗降可能な所定の位置に前記天板を移動することを指示する移動指示を受け付ける移動指示受付ステップと、
前記天板位置検出手段が、前記天板の上下方向、前後方向および左右方向の位置をそれぞれ検出する天板位置検出ステップと、
前記天板移動手段が、前記移動指示受付ステップにより前記移動指示が受け付けられた場合に、前記天板位置検出ステップにより検出された上下方向、前後方向および左右方向の位置に基づいて、前記天板の上下方向、前後方向および左右方向の動作を制御し、前記天板を自動的に前記所定の位置に移動する天板移動ステップと、
を含んだことを特徴とする寝台動作制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−106083(P2012−106083A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−48438(P2012−48438)
【出願日】平成24年3月5日(2012.3.5)
【分割の表示】特願2007−19536(P2007−19536)の分割
【原出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】