説明

医用画像処理クライアント装置及び医用画像処理サーバ装置

【課題】ネットワークの転送レートの大小に関らず、専門性の高い高度な医用画像処理の処理結果を確実且つ高速に提供すること。
【解決手段】画像記憶部12は、医用画像処理の処理対象である医用画像のデータを記憶している。クライアント側送信部15は、医用画像のデータを広域ネットワークを介して送信する。転送レート検出部14は、広域ネットワークの単位時間当たりのデータ伝送量を検出する。クライアント側制御部11は、検出されたデータ伝送量に応じて、送信される医用画像のデータサイズを変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像処理クライアント装置及び医用画像処理サーバ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像診断装置で収集された医用画像のデータは、専門性の高い高度な医用画像処理に供される。医用画像処理は、高性能な医用画像診断装置、又は、医用画像処理を専門に扱うサーバ装置において実行される。
【0003】
汎用的な利用を目的として、CDやDVD等の光学ディスクに医用画像のデータを記録してユーザに提供されている。この際、光学ディスクには、医用画像のデータの簡易表示の提供のため、医用画像のデータとともに、簡易的な医用画像表示アプリケーションプログラムも記録されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010―157184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
専門性の高い高度な医用画像処理アプリケーションプログラムは高価である。従って、このような高度な医用画像処理アプリケーションプログラムを医用画像のデータとともに光学ディスクに記録してユーザに提供することは現実的に困難である。また、クライアント装置に高度な医用画像処理アプリケーションプログラムを実行させることは、ハードウェア資源の観点から現実的に困難である。
【0006】
院外のクライアント装置において高度な医用画像処理を実行したい場合がある。この場合、光学ディスクに記録された処理対象の医用画像のデータは、クライアント装置から広域ネットワークを介して医用画像処理サーバ装置に送信され、医用画像処理サーバ装置で高度な医用画像処理に供される。広域ネットワークの転送レート(単位時間あたりのデータ伝送量)を十分に確保できない場合、データの送信時間が延びたり、処理結果を受信するまでの時間が延びたり、医用画像処理が実行できなかったりする。
【0007】
目的は、ネットワークの転送レートの大小に関らず、専門性の高い高度な医用画像処理の処理結果を確実且つ高速に提供可能な医用画像処理クライアント装置及び医用画像処理サーバ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態に係る医用画像処理クライアント装置は、医用画像処理を実行するサーバ装置にネットワークを介して接続された医用画像処理クライアント装置であって、前記医用画像処理の処理対象である医用画像のデータを記憶する画像記憶部と、前記医用画像のデータを前記ネットワークを介して送信する送信部と、前記ネットワークの単位時間当たりのデータ伝送量を検出する検出部と、前記検出されたデータ伝送量に応じて前記送信される医用画像のデータサイズを変更する制御部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る医用画像処理クライアント装置と医用画像処理サーバ装置とのネットワーク環境の概念図。
【図2】図1の医用画像処理クライアント装置の構成を示す図。
【図3】図1の医用画像処理サーバ装置の構成を示す図。
【図4】図1の医用画像処理クライアント装置と医用画像処理サーバ装置との処理の典型的な流れを示す図。
【図5】図2のクライアント側操作部による関心領域の設定例を示す図。
【図6】図2のクライアント側操作部による関心領域の他の設定例を示す図。
【図7】図1の医用画像処理サーバ装置により発生されるヒストグラムの一例を示す図。
【図8】本実施形態に係るスクリーンキャプチャ画像の一例を示す図。
【図9】本実施形態に係るスクリーンキャプチャ画像の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる医用画像処理クライアント装置と医用画像処理サーバ装置とを説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に関る医用画像処理クライアント装置1と医用画像処理サーバ装置2とのネットワーク環境の概念図である。図1に示すように、医用画像処理サーバ装置2は、病院内に設けられた院内ネットワーク100に接続されている。院内ネットワーク100は、例えば、LAN(local area network)等により実現されている。また、医用画像処理サーバ装置2は、WAN(wide area network)等の広域ネットワーク200を介して医用画像処理クライアント装置1に接続されている。広域ネットワーク200としては、例えば、ダイヤルアップ接続や無線接続が利用される。典型的には、院内ネットワーク100の転送レートは、広域ネットワーク200の転送レートに比して速い。転送レートは、ネットワークの単位時間当たりのデータ伝送量を指す。転送レートは、ネットワークの帯域幅に対応する。ネットワークの単位時間当たりの最大データ伝送量を、リアルタイムに検出される転送レートと区別するために、最大転送レートと呼ぶことにする。院内ネットワーク100の最大転送レートも広域ネットワーク200の最大転送レートに比して速い。
【0012】
院内ネットワーク100には、医用画像処理サーバ装置2の他に、医用画像診断装置3や医用画像管理装置4、院内クライアント装置5等が接続されている。
【0013】
医用画像診断装置3は、患者に関する医用画像のデータを収集する。医用画像診断装置3は、X線診断装置やX線コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴イメージング装置、超音波診断装置、PET装置、SPECT装置等のモダリティである。医用画像診断装置3により収集された医用画像のデータは、医用画像管理装置4に管理される。また、医用画像のデータは、医用画像処理クライアント装置1において処理されるために光学ディスク6に記録される。この光学ディスク6には、医用画像のデータの他に、医用画像を簡易的に表示するための医用画像表示アプリケーションプログラム(以下、簡易表示アプリケーションと呼ぶことにする。)も記録される。光学ディスク6としては、CDやDVDが適当である。
【0014】
院内クライアント装置5は、センター側操作者により操作される汎用コンピュータである。院内クライアント装置5は、医用画像管理装置4から医用画像のデータを読み出し、医用画像のデータに専門性の高い高度な医用画像処理を施すために、医用画像のデータを医用画像処理サーバ装置2に送信する。
【0015】
上述のように医用画像処理クライアント装置1と医用画像処理サーバ装置2とは、広域ネットワーク200を介して接続される。
【0016】
医用画像処理クライアント装置1は、リモート側操作者により操作される汎用コンピュータである。典型的には、医用画像処理クライアント装置1の性能は、医用画像処理サーバ装置2の性能に比して劣っている。医用画像処理クライアント装置1は、光ディスク6から医用画像のデータと簡易表示アプリケーションとを読み出し、読み出された簡易表示アプリケーションで医用画像を簡易的に表示する。また、医用画像処理クライアント装置1は、医用画像のデータに専門性の高い高度な医用画像処理を施すために、医用画像のデータを医用画像処理サーバ装置2に送信する。この際、医用画像処理クライアント装置1は、送信する医用画像のデータサイズを、広域ネットワーク200の転送レートに応じて制約する。
【0017】
医用画像処理サーバ装置2は、医用画像処理クライアント装置1に比して高性能なハードウェア資源を装備し、専門性の高い高度な医用画像処理を実行するワークステーションである。医用画像処理サーバ装置2は、高度の医用画像処理のためのアプリケーションプログラム(以下、医用アプリケーションと呼ぶことにする。)を管理している。医用画像処理サーバ装置2は、医用画像処理クライアント装置1や院内クライアント装置5からの医用画像のデータを受信し、受信された医用画像のデータに医用画像処理を実行し、処理結果のデータを発生する。医用画像処理サーバ装置2は、処理結果のデータを送信元の医用画像処理クライアント装置1や院内クライアント装置5に送信する。なお、医用画像処理サーバ装置2は、医用画像処理クライアント装置1からの医用画像のデータが削減されていない場合と削減されている場合とで医用画像処理におけるデータ処理方法を変更する。
【0018】
このように、医用画像処理クライアント装置1と医用画像処理サーバ装置2とは、広域ネットワーク200によるシンクライアントシステムを構成する。あるいは医用画像処理サーバ装置2は、広域ネットワーク200を介して医用画像処理クライアント装置1に高度な医用画像処理を提供するASP(application service provider)として機能する。
【0019】
次に図2を参照しながら、医用画像処理クライアント装置1の構成について説明する。図2に示すように、医用画像処理クライアント装置1は、クライアント側制御部11を中枢として、画像記憶部12、制約内容記憶部13、転送レート検出部14、クライアント側送信部15、クライアント側受信部16、クライアント側表示部17、及びクライアント側操作部18を有する。
【0020】
画像記憶部12は、光ディスク6に記録された医用画像のデータを読み出して、医用画像処理クライアント装置1に内蔵された記憶装置に記憶する。一つの検査や一つのシリーズに属する複数の医用画像のデータは、一つの医用画像ファイルに含まれる。
【0021】
制約内容記憶部13は、データサイズの複数の制約内容の各々に制約条件を関連付けた制約内容ファイルを記憶する。
【0022】
転送レート検出部14は、広域ネットワーク200の転送レートをリアルタイムに検出する。より具体的には、転送レート検出部14は、ICMP(internet control message protocol)通信技術のping(packet internet groper)コマンドやtracert(trace route)コマンドを利用して、医用画像処理クライアント装置1と医用画像処理サーバ装置2との間の広域ネットワーク200の転送レートを検出する。なおpingコマンドやtracertコマンドは、コンピュータ装置に標準的に実装されているネットワークコマンドである。
【0023】
クライアント側送信部15は、クライアント側制御部11による制御に従って、画像記憶部12に記憶された医用画像のデータを広域ネットワーク200を介して医用画像処理サーバ装置2に送信する。具体的には、クライアント側送信部15は、転送レートに応じて、医用画像ファイルに含まれる全ての医用画像のデータ、又は全ての医用画像のデータのうちの一部分のデータを送信する。以下、医用画像ファイルに含まれる全ての医用画像のデータを全体データと呼び、全体データのうちの一部分のデータを部分データと呼ぶことにする。部分データは、複数の医用画像のデータのうちの特定の時間範囲に含まれる医用画像のデータであったり、複数の医用画像のデータの各々の関心領域のデータであったりする。
【0024】
クライアント側受信部16は、医用画像処理サーバ装置2から広域ネットワーク200を介して送信された種々のデータを受信する。例えば、クライアント側受信部16は、医用画像処理の処理結果のデータを受信する。
【0025】
クライアント側表示部17は、光学ディスク6に記録されている簡易表示アプリケーションを利用して、医用画像を表示する。また、クライアント側表示部17は、医用画像処理サーバ装置2からの医用画像処理の処理結果を表示する。
【0026】
クライアント側操作部18は、リモート側操作者からの入力デバイスを介して入力された各種指令や情報入力をクライアント側制御部11に入力する。具体的には、入力デバイスとしては、キーボード、マウス、各種ボタン、タッチパネル等が適宜利用可能である。
【0027】
クライアント側制御部11は、転送レートの大小に関らず、医用画像処理サーバ装置2によって医用画像のデータに医用画像処理を確実且つ高速に実行させるために、医用画像処理クライアント装置1内の各部を制御する。例えば、クライアント側制御部11は、検出されたデータ伝送量に応じて、送信される医用画像のデータサイズを変更する。より詳細には、クライアント制御部11は、検出された転送レートと既定の閾値とを比較する。クライアント側制御部11は、転送レートが閾値よりも大きいと判断した場合、全体データを医用画像処理サーバ装置2に送信するためにクライアント側送信部15を制御する。クライアント側制御部11は、転送レートが閾値よりも小さいと判断した場合、部分データを医用画像処理サーバ装置2に送信するためにクライアント側送信部15を制御する。この場合、クライアント側制御部11は、制約内容記憶部13に記憶されている制約内容ファイルを利用して医用画像のデータサイズを削減する。
【0028】
次に図3を参照しながら、医用画像処理サーバ装置2の構成について説明する。図3に示すように、医用画像処理サーバ装置2は、サーバ側制御部21を中枢として、医用アプリケーション記憶部22、サーバ側受信部23、サーバ側送信部24、及び画像処理部25を有する。
【0029】
医用アプリケーション記憶部22は、専門性の高い高度な医用画像処理を行うための医用アプリケーションを記憶している。典型的には、複数の医用アプリケーションが記憶されている。
【0030】
サーバ側受信部23は、広域ネットワーク200を介して医用画像処理クライアント装置1から送信された種々のデータを受信する。例えば、サーバ側受信部23は、全体データ又は部分データを受信する。
【0031】
サーバ側送信部24は、広域ネットワーク200を介して医用画像処理クライアント装置1に種々のデータを送信する。例えば、サーバ側送信部24は、医用画像処理の処理結果のデータを送信する。
【0032】
画像処理部25は、サーバ側制御部21による制御に従って、医用アプリケーション記憶部22に記憶されている医用アプリケーションを読み出して実行し、全体データ又は部分データ等の医用画像のデータに医用画像処理を施す。
【0033】
サーバ側制御部21は、医用画像処理クライアント装置1からの全体データ又は部分データ等の医用画像のデータに医用画像処理を施すために、医用画像処理サーバ装置2内の各部を制御する。具体的には、サーバ側制御部21は、医用画像のデータが全体データである場合と部分データである場合とで医用画像処理のデータ処理方法を変更するように画像処理部25を制御する。
【0034】
以下、本実施形態に関る医用画像処理クライアント装置1と医用画像処理サーバ装置2との動作例について説明する。
【0035】
まずは、医用画像処理クライアント装置1の制約内容記憶部13に記憶されている制約内容ファイルについて説明する。上述のように、制約内容ファイルは、制約条件と制約内容とを関連付けたファイルである。
【0036】
制約条件は、画像データサイズ、医用アプリケーションの種類、医用画像の種類の少なくとも1つにより決定される。医用画像の種類は、その医用画像のデータを収集したモダリティの種類により分類される。また、医用画像の種類は、含まれる医用画像の枚数により、マルチフレーム又はシングルフレームのように分類されてもよい。医用アプリケーションの種類は、その医用アプリケーションの処理対象の医用画像の種類により分類される。例えば、X線画像用のアプリケーション、CT画像用のアプリケーション、MR画像用のアプリケーション等に分類される。また、医用アプリケーションの種類は、医用画像の撮像部位に応じて分類されてもよい。画像データサイズは、処理対象の医用画像のデータサイズに対応する。例えば、マルチフレームを処理対象とする場合、シングルフレームを処理対象とする場合に比して、格段に画像データサイズが大きい。
【0037】
制約内容は、データサイズの削減方法を意味する。換言すれば、全体データから部分データの抽出方法を意味する。制約内容としては、例えば、「時間範囲の設定により制約する」、「関心領域の設定により制約する」等がある。関心領域の場合、さらに関心領域数や関心領域の大きさ等が設定される。関心領域数としては、例えば、関心領域数の上限が制約条件毎に設定されている。また、関心領域の大きさとしては、例えば、関心領域の大きさの上限が制約条件毎に設定されている。また、医用画像処理サーバ装置2への医用画像のデータの送信方法として、スクリーンキャプチャ(スクリーンショット)機能の有効又は無効を設定可能である。スクリーンキャプチャ機能が有効の場合、医用画像のデータがそのまま送信される。スクリーンキャプチャ機能が無効の場合、医用画像のスクリーンキャプチャ画像が送信される。
【0038】
次に、図4を参照しながら、医用画像処理クライアント装置1と医用画像処理サーバ装置2との処理の流れを説明する。
【0039】
図4に示すように、クライアント側制御部11は、リモート側操作者によるクライアント側操作部18を介した指示に従って、光学ディスク6に記録されている簡易表示アプリケーションを起動し、医用画像を簡易的にクライアント側表示部17に表示する(ステップS1)。簡易表示アプリケーションが起動されるとリモート側操作者は、クライアント側操作部18を介して医用画像処理サーバ装置2による高度な医用画像処理(医用画像解析)の開始指示を入力する。開始指示が入力されるとクライアント側制御部11は、医用画像処理の開始処理を開始する(ステップS2)。まずクライアント側制御部11は、クライアント側送信部15を制御し、広域ネットワーク200を介して医用アプリケーションの起動要求を医用画像処理サーバ装置2に送信する(ステップS3)。起動要求がサーバ側受信部23に受信されるとサーバ側制御部21は、この起動要求に対応する医用アプリケーションを医用アプリケーション記憶部22から読み出して起動する(ステップS4)。
【0040】
医用アプリケーションの起動後、クライアント側制御部11は、転送レート検出部14を制御し、広域ネットワーク200の転送レートを検出する(ステップS5)。具体的には、転送レート検出部14は、上述のpingコマンドやtracertコマンドを利用し、転送レートに関する応答要求を広域ネットワーク200に送信する。応答要求を受けた広域ネットワーク(より詳細には、医用画像処理クライアント装置1と医用画像処理サーバ装置2との間に設けられた中継装置や医用画像処理サーバ装置2)は、医用画像処理クライアント装置1に転送レートに関する応答を送信する(ステップS6)。クライアント側受信部16は、転送レートに関する応答を受信し、受信された応答は、クライアント側制御部11を介して転送レート検出部14に供給される。転送レート検出部14は、供給された応答を受けて転送レートを計算する。計算された転送レートは、クライアント側制御部11に供給される。なお転送レートの検出部14は、医用画像処理サーバ装置2にも設けられていても良い。
【0041】
転送レートが供給されるとクライアント側制御部11は、転送レートに応じて、医用アプリケーションに供される医用画像のデータサイズに制約を設けるか否かを判定する(ステップS7)。例えば、クライアント側制御部11は、検出された転送レートと予め設定された閾値とを比較する。閾値は、例えば、100KB/secに設定される。供給された転送レートが閾値よりも大きい場合、クライアント側制御部11は、制約を設けないと判定する(ステップS7:NO)。この場合、医用アプリケーションの実行対象の画像ファイルに含まれる全体データが制約無しに送信される。一方、供給された転送レートが閾値よりも小さい場合、クライアント側制御部11は、制約を設けると判定する(ステップS7:YES)。この場合、実行対象の医用画像ファイルに含まれる全データのうちの部分データのみが送信される。なお閾値は、100KB/secに限定されず他の値に設定されてもよい。閾値は、クライアント側操作部18を介して任意に設定可能である。
【0042】
ステップS7において制約を設けないと判定した場合(ステップS7:NO)、クライアント側制御部11は、医用アプリケーションの実行対象の画像ファイル内の全体データを画像記憶部12から読み出す(ステップS8)。クライアント側制御部11は、クライアント側表示部17を制御し、読み出された全体データを簡易表示アプリケーションでフレーム毎に表示する(ステップS9)。そしてクライアント側制御部11は、全体データから画素に関するデータ(以下、画素データと呼ぶことにする。)を取得する(ステップS10)。例えば、画素データは、送信対象の画素の座標のデータや画素値のデータ等のデータである。
【0043】
一方、ステップS7において制約を設けると判定した場合(ステップS7:YES)、クライアント側制御部11は、実行対象の医用画像ファイルに含まれる複数の医用画像のデータサイズ、実行対象の医用画像の種類、及び実行対象の医用アプリケーションの種類の少なくとも1つが満足する制約条件を設定する(ステップS11)。クライアント側制御部11は、設定された制約条件に従って制約内容ファイルを検索し、設定された制約条件に制約内容ファイル上で関連付けられた制約内容を読み出す(ステップS12)。クライアント側制御部11は、画像記憶部12から全体データを読み出し(ステップS13)、読み出された全体データを制約内容に従って削減する。これにより部分データが抽出される。
【0044】
時間範囲の設定により制約する場合、時系列の複数の医用画像のデータ(マルチフレームデータ)の中から特定の時間範囲に含まれる医用画像のデータが抽出される。抽出された医用画像のデータが部分データとして扱われる。特定の時間範囲は、画像処理等により自動的に設定されてもよいし、リモート側操作者によりクライアント側操作部18を介して設定されてもよい。典型的には、時系列の複数の医用画像のデータを含む医用画像ファイルのデータサイズは、静止画像のデータサイズに比して格段に大きい。従って特定の時間範囲に含まれる医用画像のデータのみに送信対象を制限することによって、送信するデータサイズを削減したり、ネットワークの負担を軽減したりすることができる。
【0045】
関心領域の設定により制約する場合、医用画像の全領域のデータのうちの関心領域のデータが抽出される。制約ファイルは、関心領域の大きさや関心領域の数についての制約を設定することができる。画像処理対象の画素データを関心領域の画素データに制限することで、送信対象のデータサイズを削減したり、ネットワークの負担を軽減したりすることができる。また、関心領域の大きさに上限を設けることにより、画像処理対象の画像のデータサイズに関らず、画像処理対象の領域のデータのサイズを一定にすることができる。
【0046】
部分データが抽出されるとクライアント側制御部11は、クライアント側表示部17を制御し、抽出された部分データをフレーム毎に表示する(ステップS14)。そしてクライアント側制御部11は、部分データから画素データを取得する(ステップS15)。これにより制約付の画素データが取得される。この取得処理の詳細は後述する。なおステップS15においてスクリーンキャプチャ機能が有効の場合、画素データの代わりにスクリーンキャプチャ画像のデータが取得される。以下、ステップS10やS15により取得されたデータを取得データと呼ぶことにする。
【0047】
ステップS10又はS15が行われるとクライアント側制御部11は、クライアント側送信部15を制御し、取得データを広域ネットワーク200を介して医用画像処理サーバ装置2に送信する(ステップS16)。サーバ側制御部21は、サーバ側受信部23を制御し、取得データを受信する(ステップS17)。受信された取得データは、画像処理部25に供給される。そしてサーバ側制御部21は、画像処理部25を制御し、取得データに医用画像処理を施す(ステップS18)。この際、サーバ側制御部21は、取得データが全体データであるのか、あるいは部分データであるのかを判断する。取得データが全体データであると判断した場合、サーバ側制御部21は、全体データ用のデータ処理方法で画像処理部25に医用画像処理を実行させる。全体データ用のデータ処理方法は、医用画像ファイルに含まれる複数の医用画像の全体を処理対象とする方法である。一方、取得データが部分データであると判断した場合、サーバ側制御部21は、部分データ用のデータ処理方法で画像処理部25に医用画像を実行させる。部分データ用のデータ処理方法は、医用画像ファイルに含まれる複数の医用画像のうちの一部分を処理対象とする方法である。このようにして画像処理部25は、取得データに医用画像処理を施し、処理結果のデータを発生する。
【0048】
処理結果のデータが発生されるとサーバ側制御部21は、サーバ側送信部24を制御し、処理結果のデータを広域ネットワーク200を介して医用画像処理クライアント装置1に送信する(ステップS19)。クライアント側制御部11は、クライアント側受信部16を制御し、医用画像処理サーバ装置2からの処理結果のデータを受信する(ステップS20)。受信された処理結果のデータは、クライアント側表示部17に供給される。そしてクライアント側制御部11は、クライアント側表示部17を制御し、処理結果を表示する(ステップS21)。
【0049】
以下に、ステップS13において実行される部分データの抽出処理の具体例について説明する。
【0050】
医用画像処理を環状動脈の一部に実行する場合を考える。この場合、処理対象となる治療前の医用画像ファイルと治療後の医用画像ファイルとがクライアント側操作部18を介してそれぞれ選択される。次に各医用画像ファイルの中から処理対象の時間範囲が指定される。例えば、治療毎の医用画像においては、狭窄部位が視覚的に明瞭に判別可能なフレームがクライアント側操作部18を介して指定される。治療後の医用画像においては、狭窄部位の再還流部位が視覚的に明瞭に判別可能なフレームがクライアント側操作部18を介して指定される。
【0051】
次に指定された時間範囲の先頭フレームから順番に取得データが取得される。取得データの取得方法は、スクリーンキャプチャ機能が無効の場合と有効の場合との2つに大別される。以下、画素データの取得方法に応じて動作例を分けて説明する。
【0052】
1番目の取得方法:
1番目の取得方法は、スクリーンキャプチャ機能が無効の場合における取得方法である。まず、クライアント側操作部18を介して医用画像に関心領域が設定される。治療前の医用画像の場合、関心領域は、図5に示すように、画像処理対象である狭窄部位を含む画素領域に設定される。治療後の医用画像の場合、関心領域は、図6に示すように、再還流部位を含む画素領域に設定される。なお関心領域は、複数の画素を含む画素領域の指定(領域指定)により設定されても、1つの画素の指定(点指定)により設定されてもよい。関心領域の設定後、設定された時間範囲に含まれる複数の医用画像は、クライアント側表示部17に動画表示される。動画表示中、関心領域に含まれる画素の画素値が画素データ(取得データ)として取得される。取得データは、フレーム番号とともに医用画像処理サーバ装置2に供給される。
【0053】
治療前の取得データと治療後の取得データとは、医用画像処理サーバ装置2において医用画像処理に供される。処理結果のデータとして、図7に示すようなヒストグラムのデータが生成される。図7に示すように、ヒストグラムには、治療前の関心領域の時間経過に伴う画素値変化と治療後の関心領域の時間経過に伴う画素値変化とが示されている。ヒストグラムのデータは、処理結果のデータとして医用画像処理クライアント装置1に送信される。
【0054】
2番目の取得方法:
2番目の取得方法は、スクリーンキャプチャ機能が有効の場合における取得方法である。まず、1番目の取得方法と同様にして、関心領域が設定される。そして設定された時間範囲に含まれる時系列の医用画像が所定のレイアウトで動画表示される。そして動画表示中、スクリーンキャプチャ機能により表示画面(スクリーンキャプチャ画像)のデータが取得される。以下に関心領域が点指定の場合と領域指定の場合とにおける表示レイアウトを説明する。
【0055】
図8は、関心領域ROI1が点指定により設定された場合の表示レイアウトを示す図であり、スクリーンキャプチャ画像の一例を示す図である。図8に示すように、画像表示領域R1の横に関心領域の画素情報表示領域R2が配置されている。関心領域ROI1が点指定の場合、画素情報表示領域R2には、関心領域の座標や関心領域ROI1の画素値が表示される。図8の場合、関心領域ROI1の座標は、(x,y)=(x1,y1)であり、画素値はpv1である。動画表示中、スクリーンキャプチャにより表示画面のデータがフレーム毎に取得される。すなわち、取得された表示画面のデータ(取得データ)は、関心領域の座標や関心領域の画素値の数値に関するグラフィックデータを含んでいる。なおスクリーンキャプチャは、画面全体のキャプチャであっても、アクティブウィンドウのキャプチャであってもよい。
【0056】
図9は、関心領域ROI2が領域指定により設定された場合の表示レイアウトを示す図であり、スクリーンキャプチャ画像の一例を示す図である。図9に示すように、関心領域ROI2が領域指定の場合、画素情報表示領域R2には、関心領域ROI2に含まれる複数画素の最小画素値Min、最大画素値Max、平均画素値Ave、分散値Var、及び偏差値Devの値が表示される。図9の場合、ROI2の最小画素値Minはpvminであり、最大画素値Maxはpvmaxであり、平均画素値Aveはpvaveであり、分散値Varはpvvar、偏差値Devはpvdevである。動画表示中、スクリーンキャプチャ機能により表示画面のデータがフレーム毎に取得される。取得された表示画面のデータ(取得データ)は、関心領域の最小画素値や最大画素値、平均画素値、分散値、及び偏差値の数値に関するグラフィックデータを含んでいる。
【0057】
治療前の取得データと治療後の取得データとは、医用画像処理サーバ装置2において医用画像処理に供される。処理結果のデータとして、図7に示すようなヒストグラムのデータが生成される。なお、2番目の取得方法(スクリーンキャプチャによる取得方法)の場合、文字認識のため、表示画面のデータにパターンマッチング処理が施される。具体的には、表示画面に含まれる文字のグラフィカルデータを予め記憶されたパターンと照合し、文字を認識する。認識された文字のデータは、1番目の取得方法における画素データとして利用される。ヒストグラムのデータは、処理結果のデータとして医用画像処理クライアント装置1に送信される。
【0058】
上述のスクリーンキャプチャ機能の有効又は無効は、クライアント側操作部18を介して設定可能である。すなわち、画像表示機能の特性によって、関心領域を設定するアプリケーションにより取得データを取得するのか、あるいは、スクリーンキャプチャ機能により取得データを取得するのかをリモート側操作者により任意に設定可能である。関心領域の設定処理を実行する場合、制約内容ファイルにより関心領域数や関心領域の大きさに制限が設けられる。例えば、関心領域数の上限が例えば、2に設定されていた場合、関心領域は2個までしか設定できず、3個目の関心領域は設定不可能である。同様に、関心領域の大きさの上限が例えば、20ピクセルに設定されていた場合、20ピクセル以下の大きさの関心領域しか設定できない。
【0059】
上記構成により本実施形態に係る医用画像処理クライアント装置1は、広域ネットワーク200の転送レートに応じて、医用画像処理サーバ装置2に送信する医用画像のデータに制約を設ける。具体的には、転送レートが閾値を超える場合、すなわち、転送レートが十分確保できている場合、処理対象の医用画像ファイル内の全ての医用画像のデータを送信する。一方、転送レートが閾値を超えない場合、全ての医用画像のデータのうちの一部分のデータのみを送信する。
【0060】
かくして本実施形態に係る医用画像処理クライアント装置及び医用画像処理サーバ装置は、ネットワークの転送レートの大小に関らず、専門性の高い高度な医用画像処理の処理結果を確実且つ高速に提供することが可能となる。
【0061】
なお、医用画像処理クライアント装置1は、低スペックのハードウェア資源を有しているため、医用画像処理クライアント装置1の処理量は少ない方が良い。このため、例えば、転送レート検出部14が医用画像処理サーバ装置2に設けられていても良い。この場合、図4のステップS3の医用アプリケーションの起動要求を受けた後、転送レートの検出が医用画像処理サーバ装置2により行われる。また、同様の理由により、制約内容記憶部13が医用画像処理サーバ装置2に設けられていても良い。この場合、医用画像処理サーバ装置2は、医用画像処理クライアント装置1から実行対象の医用画像ファイルに含まれる複数の医用画像のデータサイズ、実行対象の医用画像の種類、及び実行対象の医用アプリケーションの種類の少なくとも1つが満足する制約条件を受信する。次に医用画像処理サーバ装置2は、受信された制約条件に従って制約内容ファイルを検索し、設定された制約条件に制約内容ファイル上で関連付けられた制約内容を読み出す。そして医用画像処理サーバ装置2は、制約内容のデータを医用画像処理クライアント装置1に送信する。医用画像処理クライアント装置1は、送信された制約内容に従って全体データから部分データを抽出する。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0063】
1…医用画像処理クライアント装置、2…医用画像処理サーバ装置、3…医用画像診断装置、4…医用画像管理装置、5…院内クライアント装置、6…光学ディスク、11…クライアント側制御部、12…画像記憶部、13…制約内容記憶部、14…転送レート検出部、15…クライアント側送信部、16…クライアント側受信部、17…クライアント側表示部、18…クライアント側操作部、21…サーバ側制御部、22…医用アプリケーション記憶部、23…サーバ側受信部、24…サーバ側送信部、25…画像処理部、100…院内ネットワーク、200…広域ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像処理を実行するサーバ装置にネットワークを介して接続された医用画像処理クライアント装置であって、
前記医用画像処理の処理対象である医用画像のデータを記憶する画像記憶部と、
前記医用画像のデータを前記ネットワークを介して送信する送信部と、
前記ネットワークの単位時間当たりのデータ伝送量を検出する検出部と、
前記検出されたデータ伝送量に応じて前記送信される医用画像のデータサイズを変更する制御部と、
を具備する医用画像処理クライアント装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記検出されたデータ伝送量が閾値より大きい場合、前記医用画像のデータを前記サーバ装置に送信するために前記送信部を制御し、前記検出されたデータ伝送量が前記閾値よりも小さい場合、前記医用画像のデータのうちの一部分のデータを前記サーバ装置に送信するために前記送信部を制御する、請求項1記載の医用画像処理クライアント装置。
【請求項3】
データサイズの複数の制約内容の各々に制約条件を関連付けて記憶する制約内容記憶部であって、前記制約条件は、画像データサイズ、アプリケーション種類、画像種類のうちの少なくとも1つにより決定される制約内容記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記検出されたデータ伝送量が前記閾値よりも小さい場合、前記医用画像のデータ及び前記医用画像処理の少なくとも1つが満足する制約条件に前記制約内容記憶部上で関連付けられている制約内容を特定し、前記特定された制約内容に従って前記医用画像のデータから前記一部分のデータを抽出する、
請求項1記載の医用画像処理クライアント装置。
【請求項4】
前記制約内容は、前記医用画像のデータのうちの特定の時間範囲に含まれるデータを抽出する方法、及び前記医用画像のデータの関心領域のデータを抽出する方法である、請求項1記載の医用画像処理クライアント装置。
【請求項5】
前記送信部は、前記医用画像のデータに代えて、前記医用画像のスクリーンキャプチャ画像のデータを送信する、請求項1記載の医用画像処理クライアント装置。
【請求項6】
クライアント装置にネットワークを介して接続された医用画像処理サーバ装置であって、
前記クライアント装置から医用画像のデータを受信する受信部と、
前記受信された医用画像のデータに医用画像処理を施す画像処理部と、
前記受信された医用画像のデータが全体データである場合と部分データである場合とで前記画像処理の方法を変更するように前記画像処理部を制御する制御部と、
を具備する医用画像処理サーバ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−65814(P2012−65814A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212669(P2010−212669)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】