説明

医用画像表示装置及び医用画像表示方法

【課題】 複数臓器の3次元画像データを独立に生成/表示する。
【解決手段】 閾値設定部81は、略等しい画素値を有する第1の臓器及び第2の臓器の画像情報を含む当該被検体のボリュームデータに対し第1の閾値及び第2の閾値を設定し、連結領域抽出部4は、これらの閾値に基づいて選択された第1の画素群の各々において2つの第1の連結領域を抽出する。次いで、共通/差分領域検出部6は、前記2つの第1の連結領域の差異に基づき共通領域と差分領域を検出し、共通/差分領域合成部7は、合成指示部83からの指示信号に基づいて共通領域と差分領域を合成し第2の連結領域を形成する。そして、3次元画像データ生成部3は、前記ボリュームデータの第2の連結領域における第2の画素群を用いて第1の臓器の3次元画像データを生成/表示し、更に、第2の画素群が削除された第1の画素群を用いて第2の臓器の3次元画像データを生成/表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像表示装置及び医用画像表示方法に係り、特に、血管や骨等を分離して3次元表示することを可能とする医用画像表示装置及び医用画像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像診断は、コンピュータ技術の発展に伴って実用化されたX線CT装置やMRI装置などによって急速な進歩を遂げ、今日の医療において必要不可欠なものとなっている。特に近年のX線CT装置やMRI装置では生体情報の検出ユニットや演算処理ユニットの高速化、高性能化に伴なって画像データのリアルタイム表示が可能となり、更に、3次元画像データの生成と表示も容易に行なわれるようになった。
【0003】
例えば、X線CT装置においては、被検体の周囲に対向して配置されたX線管とX線検出器を高速回転すると共に前記被検体をその体軸方向に連続移動することにより複数のスライス断面におけるX線投影データを収集し、これらのX線投影データを再構成処理することにより3次元データ(ボリュームデータ)の生成が行なわれている。又、近年では、検出素子が2次元的に配列されたX線検出器を用いたマルチスライス方式によりX線投影データの収集に要する時間は更に短縮され3次元画像データのリアルタイム表示も可能となった。
【0004】
一方、上述の方法によって得られたボリュームデータに対しレンダリング処理等のデータ処理を行なって3次元画像データを生成する方法も実用化されている。
【0005】
従来、診断の対象となる臓器(以下では、関心臓器と呼ぶ。)の3次元画像データを選択的に観察する場合、ボリュームデータの画素値(ボクセル値)に対して所定の閾値を設定し、この閾値以上の画素値を有するボリュームデータの画素に対してデータ処理を行ない所望の3次元画像データの生成と表示を行なっていた。
【0006】
又、X線CT装置によって収集されたボリュームデータにおける骨と造影剤投与後の血管のようにその画素値に顕著な差異が無い場合には、上述の閾値設定によって選択されたボリュームデータに対し、所定範囲の画素値を有する隣接画素を順次連結する、所謂、連結領域抽出法を適用することにより抽出された連結領域の画素群を用いて関心臓器の3次元画像データを生成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この場合、連結領域抽出法によって抽出されたボリュームデータの連結領域における画素群を用いて3次元画像データを生成する方法と、前記連結領域における画素群が削除されたボリュームデータの画素群を用いて3次元画像データを生成する方法とがあり、関心臓器に対して好適な方法が選択されている。
【特許文献1】特開平7−299060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
当該被検体に対しボリュームデータが収集される3次元領域において複数臓器(例えば、上述の骨と血管)の各々が乖離して存在する場合には、連結領域抽出法を用いることにより関心臓器の3次元画像データを他の臓器の3次元画像データと分離して生成することが可能となる。しかしながら、多くの場合、関心臓器の一部は上述の3次元領域において他の臓器と接触しており、閾値設定によって選択された画素群においても夫々の臓器に対応する画素群は隣接して形成されるため、連結領域抽出法を適用しても関心臓器の3次元画像データを選択的に得ることは困難となる。
【0008】
このような場合、従来は、連結領域抽出法によって抽出された連結領域の画素群を用いて生成した3次元画像データを観察しながら、関心臓器が他の臓器に対して分離表示されるように閾値を試行錯誤的に更新する方法がとられ、最適な閾値が設定されるまでに多くの時間と労力を要していた。
【0009】
又、最適な閾値が設定された場合においても、臓器の画素の中で前記閾値より小さな画素値を有する画素は削除され、例えば、骨の画素群においてはその周辺部が実際のものより小さくなるように選択される。このため、従来では、膨張処理法等によって輪郭補正を行ない、補正後の骨の画素群が削除された前記閾値設定後のボリュームデータの画素群に基づいて血管等の関心臓器に対する3次元画像データの生成が行なわれてきた。しかしながら、上述の膨張処理法を適用しても正確な輪郭補正は困難であり、関心臓器に対する3次元画像データの生成において補正誤差に起因する画質劣化が発生するという問題点を有していた。
【0010】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、被検体に対して収集されたボリュームデータに基づいて3次元画像データの生成と表示を行なう際、関心臓器の3次元画像データを容易かつ正確に選択表示することが可能な医用画像表示装置及び医用画像表示方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に係る本発明の医用画像表示装置は、被検体を撮影して得られたボリュームデータの画素値に対し閾値を設定する閾値設定手段と、前記閾値に基づいて前記ボリュームデータから選択された第1の画素群に対し第1の連結領域を抽出する連結領域抽出手段と、異なる前記閾値の各々に対応させて前記連結領域抽出手段が抽出した複数の前記第1の連結領域に基づいて共通領域と差分領域を検出する共通/差分領域検出手段と、前記共通領域と前記差分領域との合成/非合成に対する指示信号を発生する合成指示手段と、前記指示信号に基づいて前記共通領域と前記差分領域とを合成し第2の連結領域を形成する共通/差分領域合成手段と、前記ボリュームデータ及び前記第2の連結領域に基づいて3次元画像データを生成する3次元画像データ生成手段と、前記3次元画像データを表示する表示手段とを備えたことを特徴としている。
【0012】
又、請求項11に係る本発明の医用画像表示方法は、閾値設定手段が、被検体を撮影して得られたボリュームデータの画素値に対し閾値を設定するステップと、連結領域抽出手段が、前記閾値に基づいて前記ボリュームデータから選択された第1の画素群に対し複数の第1の連結領域を抽出するステップと、共通/差分領域検出手段が、異なる前記閾値の各々に対応して抽出された複数の前記第1の連結領域に基づいて共通領域と差分領域を検出するステップと、合成指示手段が、前記共通領域及び前記差分領域に対し、これらの領域を合成/非合成するための指示信号を発生するステップと、共通/差分領域合成手段が、前記指示信号に基づいて前記共通領域と前記差分領域とを合成し第2の連結領域を形成するステップと、3次元画像データ生成手段が、前記ボリュームデータの前記第2の連結領域における第2の画素群及び前記第2の画素群が削除された前記第1の画素群の少なくとも何れかを用いて3次元画像データを生成するステップと、表示手段が、前記3次元画像データを表示するステップとを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被検体に対して収集されたボリュームデータに基づいて関心臓器に対する3次元画像データの生成と表示を行なう際、関心臓器の3次元画像データを容易かつ正確に選択表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0015】
以下に述べる本発明の実施例では、例えば、骨(第1の臓器)の3次元画像データ及び前記第1の臓器と略等しい画素値を有する造影剤投与後の血管(第2の臓器)の3次元画像データを分離させて生成/表示する際、先ず、当該被検体から収集された複数枚の原画像データに基づいて生成したボリュームデータに対し異なる第1の閾値及び第2の閾値を設定し、これらの閾値に基づいて前記ボリュームデータから選択した2つの画素群(第1の画素群)の各々において連結領域(第1の連結領域)を抽出する。
【0016】
次いで、第1の閾値による第1の連結領域と第2の閾値による第1の連結領域との差異に基づいて共通領域と差分領域を検出し、操作者によって入力される合成/非合成の指示信号に基づき共通領域と差分領域を合成して第2の連結領域を形成する。そして、前記ボリュームデータの第2の連結領域における第2の画素群を用いて第1の臓器に対する3次元画像データを生成し、更に、第2の画素群が削除された第1の画素群を用いて第2の臓器に対する3次元画像データを生成する。
【0017】
尚、以下に述べる本実施例では、ボリュームデータに対して2つの閾値(第1の閾値及び第2の閾値)を設定し、これらの閾値より大きな画素値を有する画素に対して連結領域の抽出を行なう場合について述べるが、これに限定されるものではなく、3つ以上の閾値の各々に対して連結領域の抽出を行なってもよい。
【0018】
(医用画像表示装置の構成)
以下、本発明の実施例における医用画像表示装置の構成につき図1のブロック図を用いて説明する。
【0019】
図1に示す医用画像表示装置100は、医用画像診断装置によって生成された複数枚の2次元画像データ(原画像データ)を保存する原画像データ記憶部1と、前記原画像データに基づいて3次元データ(ボリュームデータ)を生成するボリュームデータ生成部2と、このボリュームデータにおける後述の第1の画素群及び第2の画素群を用いて3次元画像データを生成する3次元画像データ生成部3と、前記第1の画素群に対し第1の連結領域を抽出する連結領域抽出部4と、連結領域の領域情報を保存する連結領域情報記憶部5を備えている。
【0020】
更に、医用画像表示装置100は、異なる2つの閾値(第1の閾値及び第2の閾値)の各々に基づいてボリュームデータから選択された2つの第1の画素群における連結領域の差異により共通領域及び差分領域を検出する共通/差分領域検出部6と、後述の入力部8から供給される指示信号に基づいて共通領域と差分領域とを合成し第2の連結領域を形成する共通/差分領域合成部7と、ボリュームデータの画素値に対する閾値の設定、連結領域の抽出における始点の設定、差分領域と共通領域との合成/非合成に対する指示信号の入力等を行なう入力部8と、3次元画像データ生成部3において生成された3次元画像データを表示する表示部9と、上述の各ユニットを統括的に制御するシステム制御部10を備えている。
【0021】
原画像データ記憶部1は、ネットワーク15を介して別途設置されたX線CT装置やMRI装置等の医用画像診断装置と接続され、これらの医用画像診断装置によって生成された当該被検体の複数スライス断面における複数枚の原画像データは、その撮影位置を示す撮影位置情報と共に原画像データ記憶部1に保存される。但し、ネットワーク15の替わりにMO(光磁気ディスク)等の記憶媒体や通常の信号ケーブル等を用いて原画像データを医用画像診断装置から収集してもよい。
【0022】
ボリュームデータ生成部2は、図示しない演算回路と記憶回路を備え、前記演算回路は、システム制御部10を介し入力部8から供給される3次元画像データの生成開始コマンド信号に従って原画像データ記憶部1に保存された原画像データとその付帯情報である撮影位置情報を読み出す。そして、撮影位置に対応させて原画像データを配列すると共にこれらの原画像データに対し必要に応じて補間処理を行なって等方的なボクセルで構成されるボリュームデータを生成し、得られたボリュームデータを前記記憶回路に保存する。
【0023】
一方、3次元画像データ生成部3は、後述する入力部8の閾値設定部81から供給される第1の閾値及び第2の閾値によって選択された第1の画素群、第1の画素群において抽出された第1の連結領域における画素群、共通/差分領域合成部7によって形成された第2の連結領域における第2の画素群、更には、第2の画素群が削除された第1の画素群等に対し所定のデータ処理を行なって3次元画像データを生成する。
【0024】
例えば、3次元画像データとしてボリュームレンダリング画像データを生成する3次元画像データ生成部3は、図2に示すように、ボリュームデータ選択部31、ボリュームデータ補正部32、不透明度・色調設定部33、レンダリング処理部34及び3次元画像データ記憶部35を備えている。
【0025】
ボリュームデータ選択部31は、入力部8の閾値設定部81から供給される第1の閾値及び第2の閾値の情報に基づき、これらの閾値より大きな画素値を有する第1の画素群をボリュームデータ生成部2の記憶回路に保存されているボリュームデータの中から選択する。
【0026】
ボリュームデータ選択部31は、上述の第1の画素群において抽出された第1の連結領域における画素群や共通/差分領域合成部7によって形成された第2の連結領域における第2の画素群をボリュームデータ生成部2の記憶回路に保存されているボリュームデータあるいは第1の画素群の中から選択し、更に、第2の画素群が削除された第1の画素群の選択を行なう。
【0027】
ボリュームデータ補正部32は、ボリュームデータ選択部31によって選択された上述の第1の画素群及び第2の画素群の画素値を予め設定された3次元表示用の視線ベクトルと臓器境界面に対する法線ベクトルとの内積値に基づいて補正する。一方、不透明度・色調設定部33は、補正された画素値に基づいて不透明度や色調を設定し、更に、共通/差分領域検出部6から供給される領域判定信号に基づいて共通領域及び差分領域の各々の画素群に対して異なる色調を設定する。
【0028】
レンダリング処理部34は、不透明度・色調設定部33によって設定された不透明度及び色調に基づき前記画素群をレンダリング処理して3次元画像データ(ボリュームレンダリング画像データ)を生成し、得られた3次元画像データを3次元画像データ記憶部35に保存する。
【0029】
図1に戻って、連結領域抽出部4は、後述する入力部8の始点設定部82から供給される始点の位置情報に基づき、この始点に対応した前記第1の画素群の画素(始点画素)を基準として第1の連結領域を抽出する。即ち、連結領域抽出部4は、始点に設定された前記第1の画素群における始点画素に隣接する第1の隣接画素の画素値と入力部8の閾値設定部81から供給される閾値とを比較し、第1の隣接画素が閾値より大きな画素値を有している場合には、始点画素と第1の隣接画素は同一臓器に対応する画素と判定し連結処理を行なう。
【0030】
次いで、第1の隣接画素に隣接する第2の隣接画素、第2の隣接画素に隣接する第3の隣接画素・・・に対しても同様の手順によって連結処理を行なう。そして、連結領域の領域情報(例えば、連結された画素の位置情報)を検出し、得られたこれらの情報を連結領域情報記憶部5に保存する。この場合、連結領域抽出部4は、入力部8の閾値設定部81から供給される第1の閾値及び第2の閾値の各々に基づいて選択された第1の画素群に対して上述の連結処理を行ない、抽出した連結領域の領域情報を夫々の閾値に対応させて連結領域情報記憶部5に保存する。
【0031】
次に、共通/差分領域検出部6は、図示しない演算回路と記憶回路を備え、前記演算回路は、上述の第1の閾値及び第2の閾値の各々に基づく連結処理によって抽出された連結領域の領域情報を比較することにより、何れの閾値に対しても連結されている領域(以下では、共通領域と呼ぶ。)と、一方の閾値(通常は低い閾値)に対してのみ連結されている領域(以下では、差分領域と呼ぶ。)を検出し、これらの領域情報を前記記憶回路に保存する。
【0032】
一方、共通/差分領域合成部7は、後述する入力部8の合成指示部83から供給される合成/非合成の指示信号に基づいて上述の共通領域と差分領域との合成を行なう。尚、共通領域と差分領域との合成方法の具体例については後述の3次元画像データの生成手順において説明する。
【0033】
入力部8は、表示パネルやキーボード、各種スイッチ、選択ボタン、マウス等の入力デバイスを備えたインターラクティブなインターフェースであり、ボリュームデータに対し第1の閾値及び第2の閾値を設定する閾値設定部81と、前記閾値に基づいてボリュームデータから選択された第1の画素群に対し連結領域抽出のための始点画素を設定する始点設定部82と、共通/差分領域検出部6によって検出された第1の連結領域における共通領域と差分領域との合成/非合成を指示する合成指示部83を備えている。又、入力部8では、被検体情報の入力、3次元画像データ生成条件の設定、更には、各種コマンド信号の入力等も上述の入力デバイスや表示パネルを用いて行なわれる。
【0034】
表示部9は、図示しない表示データ生成回路と変換回路とモニタを備えている。前記表示データ生成回路は、3次元画像データ生成部3が生成した3次元画像データに対し被検体情報等の付帯情報を重畳して表示用データを生成する。そして、前記変換回路は、表示用データに対してD/A変換とテレビフォーマット変換を行ない前記モニタに表示する。尚、この表示部9と入力部8を用いることにより、操作者は医用画像表示装置100との対話が可能になっている。
【0035】
システム制御部10は、図示しないCPUと記憶回路を備え、前記記憶回路には入力部8にて入力/設定された上述の被検体情報や3次元画像データ生成条件等が保存される。そして、前記CPUは、上述の設定情報に基づいて3次元画像データ生成部3を制御し各種3次元画像データを生成する。尚、図1では、説明を簡単にするために、入力部8の閾値設定部81が設定する閾値や始点設定部82が設定する始点位置、更には、合成指示部83が発生する指示信号等に関する情報は3次元画像データ生成部3、連結領域抽出部4及び共通/差分領域合成部7へ直接供給される場合について示したが、システム制御部10を介して上述の各ユニットへ供給してもよい。
【0036】
(関心臓器に対する3次元画像データの生成手順)
次に、本実施例の関心臓器に対する3次元画像データの生成手順につき図3のフローチャートに沿って説明する。尚、ここでも、第1の閾値に基づいて抽出された第1の連結領域と第2の閾値に基づいて抽出された第1の連結領域を比較することによって共通領域と差分領域を検出し、共通領域に対する差分領域の合成/非合成によって形成した第2の連結領域に基づいて関心臓器に対する3次元画像データを選択的に生成する場合について述べるが、閾値の設定方法はこれに限定されるものではなく、更に多くの閾値を設定し、これらの閾値の各々に基づいて第1の連結領域を抽出してもよい。
【0037】
医用画像表示装置100による3次元画像データの生成に先立ち、医用画像診断装置によって収集された当該被検体の複数スライス断面における2次元画像データ(原画像データ)は、その撮影位置情報を付帯情報としてネットワーク15を介し医用画像表示装置100に予め供給され、原画像データ記憶部1に保管される。
【0038】
3次元画像データの生成に際し、医用画像表示装置100の操作者は、入力部8において当該被検体の3次元画像データを生成するためのコマンド信号を入力し(図3のステップS1)、システム制御部10を介して前記コマンド信号を受信したボリュームデータ生成部2は、原画像データ記憶部1に保管されている種々の原画像データの中から当該被検体の関心臓器の画像情報を含む連続した複数枚の原画像データを読み出す。そして、その付帯情報である撮影位置情報に対応させて前記原画像データを配列すると共に必要に応じてこれらの原画像データを補間処理し、等方的なボクセルを有するボリュームデータを生成する(図3のステップS2)。
【0039】
一方、操作者は、入力部8の閾値設定部81においてボリュームデータの画素値に対する第1の閾値β1を設定し(図3のステップS3)、システム制御部10を介して第1の閾値β1の情報を受信した3次元画像データ生成部3は、第1の閾値β1より大きな画素値を有する第1の画素群をボリュームデータ生成部2の記憶回路から読み出す。そして、この画素群に対しレンダリング処理等のデータ処理を行なうことによって3次元画像データを生成し、得られた3次元画像データを表示部9のモニタに表示する(図3のステップS4)。
【0040】
又、上述の3次元画像データの生成に用いられた第1の画素群の画素情報は連結領域抽出部4に供給され、図示しない自己の記憶回路に保存される。次いで、表示部9に表示された3次元画像データを観察した操作者は、入力部8の始点設定部82に設けられた入力デバイスを用い、連結処理に必要な始点を前記3次元画像データの所望位置に設定する(図3のステップS5)。
【0041】
システム制御部10を介し始点設定部82から始点の位置情報を受信した連結領域抽出部4は、自己の記憶回路に保存されている第1の画素群に対し前記始点に対応する始点画素を設定し、更に、この始点画素を基準とした連結処理を行なって第1の連結領域を検出する(図3のステップS6)。そして、検出された第1の連結領域の領域情報を3次元画像データ生成部3へ供給する。3次元画像データ生成部3は、前記連結領域の領域情報に基づき第1の連結領域における画素群をボリュームデータ生成部2の記憶回路に保存されているボリュームデータから読み出して3次元画像データを生成し表示部9に表示する。
【0042】
第1の閾値β1に基づいて生成された3次元画像データを表示部9において観察した操作者は、この第1の閾値β1の設定が適当であると判定した場合には、入力部8より連結領域情報記憶部5に対して保存指示信号を供給し、連結領域抽出部4において抽出された第1の連結領域の領域情報を連結領域情報記憶部5に保存する(図3のステップS7)。
【0043】
一方、上述の第1の閾値β1の設定が不適当であると判定した場合には第1の閾値β1を更新した後第1の連結領域を再度検出し、この第1の連結領域に対応したボリュームデータの画素群を用いて生成された3次元画像データの観察により更新後の第1の閾値β1に対する良否判定を繰り返す。
【0044】
以上述べた方法によって第1の閾値β1に対する連結領域の領域情報が連結領域情報記憶部5に保存されたならば、操作者は、入力部8の閾値設定部81において第2の閾値β2(β2>β1)を設定し、この第2の閾値β2に基づいた第1の連結領域の検出が上述と同様の手順によって行なわれる。そして、検出された第2の閾値β2に基づく第1の連結領域の領域情報も連結領域情報記憶部5に保存される(図3のステップS3乃至S7)。
【0045】
ここで、ボリュームデータ生成部2によって生成されたボリュームデータにおける第1の臓器(骨)の画素値及び第2の臓器(血管)の画素値と第1の閾値β1及び第2の閾値β2の具体例につき図4を用いて説明する。例えば、第1の臓器の画素値は下限値α2と上限値α4の間に、又、第2の臓器の画素値は下限値α1と上限値α3の間に存在し、α1<α2<α3<α4の関係にある場合、第1の閾値β1及び第2の閾値β2は、β1<α1、α2<β2<α3になるように設定される。
【0046】
この場合、ボリュームデータに対する第1の閾値β1の設定によって第1の臓器及び第2の臓器に対する全ての画素が第1の画素群として選択される。一方、第2の閾値β2がα2<β2<α3において設定された場合、第1の臓器に対する一部の画素と第2の臓器に対する大部分の画素が削除された第1の画素群が選択される。
【0047】
次に、ボリュームデータにおける第1の臓器及び第2の臓器の画素値に対し第1の閾値β1及び第2の閾値β2が図4のように設定された場合、連結領域抽出部4の連結処理により抽出された第1の連結領域の画素群に基づく3次元画像データを図5に示す。
【0048】
図5(a)は、第1の閾値β1に基づいて抽出された第1の連結領域の3次元画像データであり、この場合、第1の臓器(骨)と第2の臓器(血管)に対応した画素の略全てが連結されて第1の連結領域が形成される。従って、この第1の連結領域における画素群を用いて生成された3次元画像データでは第1の臓器P1と第2の臓器P2の全領域が網状パターンで示すように重畳表示され、各々の臓器を分離して観察することは不可能である。例えば、関心臓器として第2の臓器P2を観察する場合、第1の臓器P1の後方に位置する第2の臓器P2を観察することはできない。
【0049】
一方、図5(b)は、第2の閾値β2に基づいて抽出された第1の連結領域の3次元画像データであり、この場合、第2の閾値β2より小さな画素値を有する第1の臓器及び第2の臓器の画素は削除され、削除された画素によって連結されなくなった画素群も同時に削除される。即ち、第2の閾値β2の設定と連結処理により第2の臓器に対する画素群の大部分と第1の臓器に対する画素郡の一部(例えば、骨の周辺部に対応した画素群)が削除されて第1の連結領域が形成される。そして、この第1の連結領域における画素群を用いて生成された3次元画像データでは、前記周辺部等が削除された第1の臓器が網状パターンで示すように表示される。
【0050】
上述のステップS7において第1の閾値β1に基づく第1の連結領域の領域情報と第2の閾値β2に基づく第1の連結領域の領域情報の保存が終了したならば、共通/差分領域検出部6は、連結領域情報記憶部5に保存された第1の閾値β1及び第2の閾値β2の各々に対する第1の連結領域を比較することにより共通領域と差分領域を検出し(図3のステップS8)、検出した各々の領域の情報を3次元画像データ生成部3へ供給する。
【0051】
一方、3次元画像データ生成部3は、ボリュームデータ生成部2の記憶回路に保存されているボリュームデータの中から上述の共通領域及び差分領域の領域情報に対応する画素群を夫々読み出す。そして、これら画素群の各々に対し、例えば異なる色調を設定して3次元画像データを生成し表示部9に表示する。
【0052】
図6は、表示部9において合成表示された共通領域及び差分領域の3次元画像データを示したものであり、網状パターンによって示した領域は共通領域Rcを、又、白色で示した領域は差分領域Rsを示している。即ち、第1の臓器の中心部は共通領域Rcとして表示され、第1の臓器の周辺部や細部は第2の臓器と共に複数の差分領域Rsとして表示される。
【0053】
共通領域Rcと差分領域Rsが異なる色によって表示された3次元画像データを表示部9において観察した操作者は、差分領域Rsと共通領域Rcとの合成の是非を判定し、共通領域Rcと合成すべき差分領域Rsに対しては、入力部8の合成指示部83において合成指示信号を入力する。例えば、共通領域Rcが第1の臓器の画素群によって形成されている場合、操作者は、第1の臓器の周辺部に対応する差分領域Rs1と共通領域Rcとの合成を行ない、第2の臓器に起因する差分領域Rs2と共通領域Rcとの合成は行なわない旨の指示を入力部8の合成指示部83にて行なう。
【0054】
そして、共通/差分領域合成部7は、合成指示部83から供給された合成指示信号に従い共通領域と差分領域とを合成して第2の連結領域を形成し(図3のステップS9)、この第2の連結領域の領域情報を3次元画像データ生成部3へ供給する。
【0055】
第2の連結領域の領域情報を受信した3次元画像データ生成部3は、この領域情報に対応した第2の画素群をボリュームデータ生成部2の記憶回路から読み出し、第1の臓器に対する3次元画像データを生成する(図3のステップS10)。更に、第2の画素群が削除された第1の閾値β1に基づく第1の画素群を用いて第2の臓器に対する3次元画像データを生成する(図3のステップS11)。そして、得られた第1の臓器と第2の臓器の3次元画像データの各々は、表示部9のモニタにおいて独立表示、並列表示、あるいは、異なる色調等の表示形態によって合成表示される(図3のステップS12)。
【0056】
図7は、共通領域と差分領域の合成/非合成によって形成された第2の連結領域に基づき上述のステップ10にて生成される第1の臓器の3次元画像データ(図7(a))とステップS11にて生成される第2の臓器の3次元画像データを示したものであり、各々の臓器の3次元画像データが独立に生成される。従って、関心臓器に対する3次元画像データを他の臓器にあまり影響されることなく観察することが可能となる。但し、第2の臓器である血管を関心臓器として観察する場合、第1の臓器に対する3次元画像データの生成及び表示は必ずしも必要としない。
【0057】
以上述べた本発明の実施例によれば、当該被検体に対して収集されたボリュームデータに基づき関心臓器に対する3次元画像データの生成と表示を行なう際、隣接する他の臓器の影響をあまり受けることなく関心臓器の3次元画像データを正確に表示することができる。
【0058】
特に、画素値に著しい差異がなく、所定の画像化領域において互いに接触する複数臓器から得られたボリュームデータに対して複数閾値に基づく連結領域の抽出とその比較を行なうことにより、前記ボリュームデータの中からこれらの臓器の各々に対応する画素群を選択することができ、従って、複数臓器の各々に対する3次元画像データを独立に生成することが可能となる。そして、このとき得られた各臓器に対する3次元画像データを並列表示あるいは異なる色調等によって合成表示することにより有効な診断を行なうことができる。
【0059】
更に、上述の実施例によれば、複数閾値の設定と連結処理によって抽出された複数連結領域の差異に基づいて検出された共通領域と差分領域との合成/非合成は操作者の指示によって行なわれるため、関心臓器に対する3次元画像データの良否を決定する第2の連結領域を確実に形成することが可能となる。又、操作者は、異なる色調等の表示形態によって合成表示された共通領域及び差分領域の観察下にて合成/非合成に対する指示を行なうことができるため、精度の高い指示を短時間かつ容易に行なうことができる。
【0060】
以上の理由により、本実施例によれば、関心臓器に対する診断精度と診断効率が大幅に向上し、操作者の負担を軽減することができる。
【0061】
以上、本発明の実施例について述べてきたが、本発明は、上述の実施例に限定されるものでは無く変形して実施してもよい。例えば、既に述べたように、ボリュームデータに対して2つの閾値(第1の閾値及び第2の閾値)を設定し、これらの閾値より大きな画素値を有する画素に対して連結領域の抽出を行なう場合について述べたが、これに限定されるものではなく、3つ以上の閾値の各々に対して連結領域の抽出を行なってもよい。又、前記閾値を下限値とした所定範囲の画素値を有する画素に対して連結領域を抽出してもよい。
【0062】
又、上述の実施例では、第2の臓器の3次元画像データの生成(図3のステップS11)に際し、共通領域と差分領域の合成によって形成された第2の連結領域を削除した第1の連結領域(具体的には、第1の閾値β1に基づく第1の連結領域)における第2の画素群を用いて3次元画像データを生成する場合について述べたが、第2の連結領域を削除したボリュームデータを用いて3次元画像データを生成してもよい。
【0063】
更に、第1の連結領域の領域情報に基づいて差分領域及び共通領域の検出や第2の連結領域の形成を行なったが、第1の連結領域における第1の画素群に基づいて上述の検出や形成を行なっても構わない。又、3次元画像データとしてボリュームレンダリング画像データを生成する場合について述べたが、これに限定されるものではなく、サーフェイスレンダリング画像データ等の他の3次元画像データであってもよい。
【0064】
一方、医用画像表示装置100は、医用画像診断装置から供給される原画像データを処理してボリュームデータを生成するボリュームデータ生成部2を備えている場合について示したが、前記ボリュームデータは医用画像診断装置から直接供給されてもよい。
【0065】
尚、上述の実施例では、骨と血管に対して3次元画像データを生成する場合について述べたが、他の臓器であってよく、又、これらの臓器から得られたボリュームデータに対する閾値設定も図4に示した方法に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施例に係る医用画像表示装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】同実施例の医用画像表示装置が備える3次元画像データ生成部の構成を示すブロック図。
【図3】同実施例の関心臓器に対する3次元画像データの生成手順を示すフローチャート。
【図4】同実施例における第1の臓器及び第2の臓器の画素値と第1の閾値及び第2の閾値との関係を説明するための図。
【図5】同実施例の連結処理によって抽出される第1の連結領域の画素群に基づいて生成される3次元画像データの具体例を示す図。
【図6】同実施例の表示部において合成表示される共通領域及び差分領域の3次元画像データを示す図。
【図7】同実施例の第2の連結領域における第2の画素群に基づいて生成される第1の臓器及び第2の臓器の3次元画像データを示す図。
【符号の説明】
【0067】
1…原画像データ記憶部
2…ボリュームデータ生成部
3…3次元画像データ生成部
31…ボリュームデータ選択部
32…ボリュームデータ補正部
33…不透明度・色調設定部
34…レンダリング処理部
35…3次元画像データ記憶部
4…連結領域抽出部
5…連結領域情報記憶部
6…共通/差分領域検出部
7…共通/差分領域合成部
8…入力部
81…閾値設定部
82…始点設定部
83…合成指示部
9…表示部
10…システム制御部
15…ネットワーク
100…医用画像表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を撮影して得られたボリュームデータの画素値に対し閾値を設定する閾値設定手段と、
前記閾値に基づいて前記ボリュームデータから選択された第1の画素群に対し第1の連結領域を抽出する連結領域抽出手段と、
異なる前記閾値の各々に対応させて前記連結領域抽出手段が抽出した複数の前記第1の連結領域に基づいて共通領域と差分領域を検出する共通/差分領域検出手段と、
前記共通領域と前記差分領域との合成/非合成に対する指示信号を発生する合成指示手段と、
前記指示信号に基づいて前記共通領域と前記差分領域とを合成し第2の連結領域を形成する共通/差分領域合成手段と、
前記ボリュームデータ及び前記第2の連結領域に基づいて3次元画像データを生成する3次元画像データ生成手段と、
前記3次元画像データを表示する表示手段とを
備えたことを特徴とする医用画像表示装置。
【請求項2】
始点設定手段を備え、前記連結領域抽出手段は、前記第1の画素群に対し前記始点設定手段が設定する始点画素を基準として前記第1の画素群に対する連結処理を行ない前記第1の連結領域を抽出することを特徴とする請求項1記載の医用画像表示装置。
【請求項3】
前記共通/差分領域検出手段は、前記連結領域抽出手段が抽出した前記複数の第1の連結領域を比較することにより前記共通領域と前記差分領域を検出することを特徴とする請求項1記載の医用画像表示装置。
【請求項4】
前記共通/差分領域検出手段は、前記複数の第1の連結領域の領域情報に基づいて前記共通領域及び前記差分領域を検出することを特徴とする請求項1記載の医用画像表示装置。
【請求項5】
前記表示手段は、前記3次元画像データ生成手段が前記第1の画素群を用いて生成した3次元画像データにおける前記共通領域及び前記差分領域を異なる表示形態によって表示することを特徴とする請求項1記載の医用画像表示装置。
【請求項6】
前記表示手段は、前記差分領域及び前記共通領域を異なる色調によって表示することを特徴とする請求項5記載の医用画像表示装置。
【請求項7】
前記合成指示手段は、前記表示手段によって表示された前記3次元画像データにおける前記共通領域及び前記差分領域に対し、これらの領域を合成/非合成するための前記指示信号を発生することを特徴とする請求項5記載の医用画像表示装置。
【請求項8】
前記表示手段は、前記第1の連結領域における画素群を用いて前記3次元画像データ生成手段が生成した3次元画像データを表示し、前記閾値設定手段は、前記表示手段が表示した前記第1の連結領域に対する前記3次元画像データに基づいて前記閾値を更新することを特徴とする請求項1記載の医用画像表示装置。
【請求項9】
ボリュームデータ生成手段を備え、前記ボリュームデータ生成手段は、医用画像診断装置によって撮影された前記被検体における複数枚の原画像データに基づいて前記ボリュームデータを生成することを特徴とする請求項1記載の医用画像表示装置。
【請求項10】
前記ボリュームデータ生成手段は、MRI装置及びCT装置の少なくとも何れかによって撮影された前記被検体における複数枚の2次元画像データに基づいて前記ボリュームデータを生成することを特徴とする請求項9記載の医用画像表示装置。
【請求項11】
閾値設定手段が、被検体を撮影して得られたボリュームデータの画素値に対し閾値を設定するステップと、
連結領域抽出手段が、前記閾値に基づいて前記ボリュームデータから選択された第1の画素群に対し複数の第1の連結領域を抽出するステップと、
共通/差分領域検出手段が、異なる前記閾値の各々に対応して抽出された複数の前記第1の連結領域に基づいて共通領域と差分領域を検出するステップと、
合成指示手段が、前記共通領域及び前記差分領域に対し、これらの領域を合成/非合成するための指示信号を発生するステップと、
共通/差分領域合成手段が、前記指示信号に基づいて前記共通領域と前記差分領域とを合成し第2の連結領域を形成するステップと、
3次元画像データ生成手段が、前記ボリュームデータの前記第2の連結領域における第2の画素群及び前記第2の画素群が削除された前記第1の画素群の少なくとも何れかを用いて3次元画像データを生成するステップと、
表示手段が、前記3次元画像データを表示するステップとを
有することを特徴とする医用画像表示方法。
【請求項12】
前記閾値設定手段による閾値設定のステップに先行し、ボリュームデータ生成手段が、医用画像診断装置によって撮影された前記被検体における複数枚の原画像データに基づいて前記ボリュームデータを生成するステップを有することを特徴とする請求項11記載の医用画像表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−67992(P2008−67992A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−251001(P2006−251001)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】