説明

医用画像診断支援システム

【課題】医用画像データを受信した処理装置が速やかに所望の処理を開始することのできる医用画像診断支援システムを提供する。
【解決手段】コンソール12は、撮影機10によって取得した元画像データを複製してCAD装置16、診断装置18、20、22及び画像蓄積装置32に予め送信し、CAD装置16は、元画像データをCAD処理して得られるCAD画像データを複製して診断装置18、20、22及び画像蓄積装置32に予め送信する。診断装置18、20、22は、予め送信されている元画像データ及びCAD画像データを用いて速やかに所望の処理を開始することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体の医用画像データをネットワークに接続された複数の処理装置間で送受信することにより、前記被写体に対する診断作業を支援する医用画像診断支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療・診断技術の分野では、X線撮影装置、CT(Computed Tomography)装置、MR(Magnetic Resonance)装置等の各種モダリティ装置によって取得した患者の医用画像データをネットワークを経由して他の処理装置、例えば、当該医用画像データを所望する医師の診断装置に送信し、この診断装置に医用画像を表示して読影診断を行うようにした医用画像診断支援システムが構築されている。また、このシステムのネットワークには、例えば、医用画像データをソフトウエアにより解析して異常陰影部位を抽出し、この異常陰影部位に係る情報を診断のために提供する画像診断支援装置(以下、「CAD(Computer Aided Diagnosis)装置」という。)、医用画像データをフイルムに出力して医師に提供するための出力装置、生成された医用画像データを長期保存のために蓄積するストレージ装置である画像蓄積装置等も接続される(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、このような医用画像診断支援システムで扱われる医用画像データは、データ量が極めて多いため、診断作業を効率的に遂行するには、データの送信速度を向上させる必要があることはもとより、医用画像データを装置間で送受信する際の作業フローを事前に十分検討しておく必要がある。
【0004】
この場合、特許文献2では、モダリティ装置から複数の医用画像データを取得した確認装置が、他の確認装置による医用画像データのリスト要求に応じて当該リストを前記他の確認装置に送信することにより、医用画像データが診断に提供可能な状態であるか否かを判断できるようにした従来技術を開示している。
【0005】
【特許文献1】特開2004−295184号公報
【特許文献2】特開2005−224472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、医用画像データのリストは、確認装置から送信要求があった際に纏めて送信されるため、大量の医用画像データからなるリストの送信が完了するまでにかなりの時間を要し、その間の待機時間が増大して作業に支障を来すおそれがある。
【0007】
また、確認装置間でのリストの送受信は、医用画像データが診断に提供可能であるか否かを判断するためであって、診断作業そのものを行うためではない。診断作業を行うためには、確認装置が送信されたリストから診断可能であると判断した後、必要な医用画像データをネットワークを介して所定の診断装置に送信する処理が必要である。この場合、診断装置では、確認装置での判断処理が完了した後に送信された医用画像データに基づいて診断作業を行うこととなるため、診断作業を開始できるまでに長時間を要してしまう。
【0008】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたものであり、取得した医用画像データを予め指定した処理装置に送信し、医用画像データを受信した処理装置が速やかに所望の処理を開始することのできる医用画像診断支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の医用画像診断支援システムは、被写体の医用画像データをネットワークに接続された複数の処理装置間で送受信することにより、前記被写体に対する診断作業を支援する医用画像診断支援システムにおいて、
所定の前記処理装置に設けられ、前記所定の処理装置が処理した前記医用画像データを送信する送信先の前記処理装置を指定する送信先指定手段と、
前記所定の処理装置に設けられ、前記所定の処理装置が処理した前記医用画像データに係る画像付帯データを他の前記処理装置に送信する処理に先立ち、前記医用画像データを指定した前記送信先の処理装置に送信する処理を行う送信処理手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の医用画像診断支援システムでは、医用画像データに係る画像付帯データの送信に先立ち、医用画像データを予め指定した処理装置に送信することにより、処理装置は、画像付帯データを受信した際に、既に受信している医用画像データを用いて所望の処理を速やかに開始することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、病院内に構築される本実施形態の医用画像診断支援システムの全体構成図である。医用画像診断支援システムは、X線撮影装置、CT装置、MR装置等の撮影機10及びそれを制御するコンソール12(検像装置)からなるモダリティ装置14と、モダリティ装置14によって取得した被写体の医用画像データを解析して異常陰影部位等を抽出するCAD装置16(解析装置)と、CAD装置16によって抽出された異常陰影部位等を医用画像データに反映させたCAD画像データに基づき、読影診断を行うための複数の診断装置18、20、22とがネットワーク24に接続される。なお、ネットワーク24には、複数のモダリティ装置14及び複数のCAD装置16を必要に応じて接続することができる。
【0012】
また、ネットワーク24には、病院内における医事情報を統括的に管理する医事情報システム(以下、「HIS(Hospital Information System)」という。)26と、病院内の放射線科において取り扱われる医用画像やその他の情報を同科内で統括的に管理する放射線科情報システム(以下、「RIS(Radiology Information System)」という。)28と、モダリティ装置14によって取得した医用画像データをフイルム等に画像として出力する出力装置30と、医用画像データ、CAD画像データ及びその画像付帯データを蓄積する画像蓄積装置32(保存装置)とが接続される。
【0013】
図2は、モダリティ装置14を構成するコンソール12の制御ブロック図である。コンソール12は、インタフェース(I/F)34を介してネットワーク24に接続されており、撮影機10による医用画像の撮影に必要な撮影情報を入力する入力部36と、撮影情報や撮影された医用画像等を表示する表示部38と、撮影機10による撮影で取得した医用画像データである元画像データを記憶する元画像データメモリ40と、入力部36から入力された撮影情報やI/F34を介して外部より取得した情報を前記元画像データに対する画像付帯データとして記憶する画像付帯データメモリ42と、元画像データを送信する送信先である他の処理装置を送信先データとして記憶する送信先データメモリ44(送信先指定手段)と、前記送信先データに従って元画像データを複製して送信する処理を行う送信処理部46(送信処理手段)とを備える。
【0014】
ここで、入力部36から入力される撮影情報とは、例えば、被写体のIDコード、氏名等を含む被写体情報、撮影部位、撮影方法、撮影者、撮影日時等であり、入力された撮影情報は、画像付帯データとして画像付帯データメモリ42に記憶される。なお、撮影情報の一部は、ネットワーク24を介してHIS26又はRIS28から取得することもできる。また、入力部36から表示部38に表示された医用画像の検像結果を入力し、画像付帯データとして画像付帯データメモリ42に記憶させることもできる。さらに、入力部36から元画像データの送信先を入力し、送信先データとして送信先データメモリ44に記憶させることもできる。
【0015】
図3は、CAD装置16の制御ブロック図である。CAD装置16は、インタフェース(I/F)48を介してネットワーク24に接続されており、モダリティ装置14から送信された元画像データの画像解析に必要な処理条件等を入力する入力部50と、解析結果であるCAD画像を表示する表示部52と、元画像データに対する画像解析を行うCAD処理部54と、モダリティ装置14から送信された元画像データを記憶する元画像データメモリ56と、CAD処理された元画像データであるCAD画像データを記憶するCAD画像データメモリ58と、CAD結果を付加した画像付帯データを記憶する画像付帯データメモリ60と、CAD画像データを送信する送信先である他の処理装置を送信先データとして記憶する送信先データメモリ62と、前記送信先データに従ってCAD画像データを複製して送信する処理を行う送信処理部64とを備える。
【0016】
本実施形態の医用画像診断支援システムは、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、図4に示すデータフローチャート及び図5、図6に示す処理フローチャートに基づき、医用画像診断支援システムの動作を説明する。
【0017】
例えば、放射線科の技師長は、コンソール12の入力部36から撮影機10による撮影に必要な撮影情報を入力し、撮影機10に設定する(ステップS1)。なお、撮影情報の一部は、ネットワーク24を介してHIS26又はRIS28から取得することもできる。設定された撮影情報は、画像付帯データとして画像付帯データメモリ42に記憶される。
【0018】
次に、撮影技師は、設定された撮影情報に従って撮影機10を操作し、被写体の撮影を行う(ステップS2)。撮影機10によって撮影された被写体の医用画像データである元画像データは、ネットワーク24を介してコンソール12に送信され(ステップS3)、表示部38に表示される。
【0019】
そこで、技師長は、表示部38に表示された医用画像に輪郭強調処理、コントラスト調整処理等の必要に応じた画像処理を施して検像し(ステップS4)、適切な画像と判断した場合には、技師長の検像結果である所見、画像処理条件等を画像付帯データとして画像付帯データメモリ42に付加するとともに(ステップS5)、画像処理された元画像データを元画像データメモリ40に記憶させる(ステップS6)。一方、不適切な画像であると判断した場合には、撮影技師に対して撮影機10による再撮影を指示する。
【0020】
被写体に対する所望の撮影処理が終了すると(ステップS7)、送信処理部46は、送信先データメモリ44に予め設定されている送信先データに従い、元画像データの送信先を選択する(ステップS8)。なお、送信先は、技師長がコンソール12の入力部36を用いて設定することも可能である。
【0021】
送信処理部46は、元画像データメモリ40から元画像データを読み出し、選択された送信先にネットワーク24を介して送信する(ステップS9)。例えば、図4のデータフローチャートの実線で示すように、送信先として、元画像データを必要とするCAD装置16、診断装置18、20、22及び画像蓄積装置32が選択された場合、これらの各装置に対して元画像データが複製されて送信される。なお、元画像データは、ステップS4における検像処理の結果、適切な画像であると判断された際に逐一送信するようにしてもよい。
【0022】
次いで、送信処理部46は、画像付帯データメモリ42から画像付帯データを読み出し、図4のデータフローチャートの点線で示すように、ネットワーク24を介して次の処理装置であるCAD装置16に送信する(ステップS10)。
【0023】
CAD装置16は、ネットワーク24を介してモダリティ装置14から元画像データを受信し(ステップS11)、元画像データメモリ56に記憶させた後(ステップS12)、当該元画像データに係る画像付帯データを受信し(ステップS13)、画像付帯データメモリ60に記憶させる。次いで、CAD処理部54は、解析ソフトウエアを用いて元画像データを解析するCAD処理を行うことで異常陰影部位等を抽出し(ステップS14)、そのCAD結果を反映させたCAD画像データを作成し(ステップS15)、CAD画像データメモリ58に記憶させる(ステップS16)。また、異常陰影部位等を示すCAD結果は、画像付帯データに付加され(ステップS17)、画像付帯データメモリ60に記憶される。
【0024】
なお、CAD処理部54では、元画像データを解析することにより、診断装置18、20、22での読影診断に適した複数のCAD画像データの配置関係を求め、その配置関係に従ってCAD画像データをCAD画像データメモリ58に記憶させておくことができる。また、CAD処理を行う際、元画像データから必要な被写体領域を抽出し、その領域以外をトリミングした元画像データ及びCAD画像データを生成して記憶させることにより、必要なデータ容量を削減することができるとともに、他の処理装置へのデータ転送効率を向上させることができる。
【0025】
元画像データに対するCAD処理が終了すると、送信処理部64は、送信先データメモリ62に予め設定されている送信先データに従い、CAD画像データの送信先を選択する(ステップS18)。
【0026】
送信処理部64は、CAD画像データメモリ58からCAD画像データを読み出し、選択された送信先にネットワーク24を介して送信する(ステップS19)。例えば、図4のデータフローチャートの実線で示すように、送信先として、CAD画像データを必要とする診断装置18、20、22及び画像蓄積装置32が選択された場合、これらの各装置に対してCAD画像データが複製されて送信される。
【0027】
次いで、送信処理部64は、画像付帯データメモリ60からCAD結果を含む画像付帯データを読み出し、図4のデータフローチャートの点線で示すように、ネットワーク24を介して次の処理装置である診断装置18に送信する(ステップS20)。
【0028】
診断装置18は、モダリティ装置14から事前に送信されている元画像データに基づいて元画像66(図7)を表示するとともに、CAD装置16から送信されたCAD画像データに基づいてCAD画像68(図8)をCAD装置16で求めた配置関係で表示し、これらの元画像66及びCAD画像68と、CAD装置16から送信された画像付帯データとを用いて、医師による第1読影診断が行われる。この場合、診断装置18には、モダリティ装置14から元画像データが既に送信されているため、医師は、速やかに第1読影診断を開始することができる。なお、画像付帯データには、コンソール12において付加された技師長の所見が付加されている。第1読影診断の結果、患者に対する医師による問診結果、元画像66及びCAD画像68を用いた視触診結果等が画像付帯データに付加され、次の診断装置20に送信される。
【0029】
また、診断装置20では、モダリティ装置14から事前に送信されている元画像データと、CAD装置16から事前に送信されているCAD画像データと、モダリティ装置14から送信された技師長の所見と、診断装置18から送信された第1読影診断の結果とを用いて、他の医師による第2読影診断が行われる。この場合、診断装置20には、モダリティ装置14及びCAD装置16から元画像データ及びCAD画像データが既に送信されているため、医師は、速やかに第2読影診断を開始することができる。第2読影診断の結果は、画像付帯データに付加され、診断装置22に送信される。
【0030】
さらに、診断装置22では、モダリティ装置14から事前に送信されている元画像データと、CAD装置16から事前に送信されているCAD画像データと、モダリティ装置14から送信された技師長の所見と、診断装置18及び20から送信された第1読影診断の結果及び第2読影診断の結果とを用いて、最終判定を行う医師による第3読影診断が行われる。この場合、診断装置22には、モダリティ装置14及びCAD装置16から元画像データ及びCAD画像データが既に送信されているため、医師は、速やかに第3読影診断を開始することができる。第3読影診断の結果は、画像付帯データに付加され、画像蓄積装置32に送信されて蓄積される。なお、画像蓄積装置32には、モダリティ装置14及びCAD装置16から元画像データ及びCAD画像データが既に送信されて蓄積されている。
【0031】
なお、上述した実施形態では、元画像データと、CAD結果を反映させたCAD画像データとを診断装置18、20、22及び画像蓄積装置32に送信するようにしているが、元画像データとCAD結果とを診断装置18、20、22及び画像蓄積装置32に送信し、診断装置18、20、22及び画像蓄積装置32において、CAD結果を用いて元画像データからCAD画像データを生成するようにしてもよい。この場合、CAD画像データの送信が不要となる分、送信するデータ量を大幅に削減することができる。
【0032】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態の医用画像診断支援システムの全体構成図である。
【図2】モダリティ装置を構成するコンソールの制御ブロック図である。
【図3】CAD装置の制御ブロック図である。
【図4】本実施形態の医用画像診断支援システムのデータフローチャートである。
【図5】本実施形態の医用画像診断支援システムにおけるモダリティ装置を中心とする処理フローチャートである。
【図6】本実施形態の医用画像診断支援システムにおけるCAD装置を中心とするフローチャートである。
【図7】本実施形態の医用画像診断支援システムにおいて取得した元画像の説明図である。
【図8】本実施形態の医用画像診断支援システムにおいて取得したCAD画像の説明図である。
【符号の説明】
【0034】
10…撮影機 12…コンソール
14…モダリティ装置 16…CAD装置
18、20、22…診断装置 24…ネットワーク
26…HIS 28…RIS
30…出力装置 32…画像蓄積装置
66…元画像 68…CAD画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の医用画像データをネットワークに接続された複数の処理装置間で送受信することにより、前記被写体に対する診断作業を支援する医用画像診断支援システムにおいて、
所定の前記処理装置に設けられ、前記所定の処理装置が処理した前記医用画像データを送信する送信先の前記処理装置を指定する送信先指定手段と、
前記所定の処理装置に設けられ、前記所定の処理装置が処理した前記医用画像データに係る画像付帯データを他の前記処理装置に送信する処理に先立ち、前記医用画像データを指定した前記送信先の処理装置に送信する処理を行う送信処理手段と、
を備えることを特徴とする医用画像診断支援システム。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記所定の処理装置は、前記医用画像データを検像する検像装置であることを特徴とする医用画像診断支援システム。
【請求項3】
請求項1記載の装置において、
前記所定の処理装置は、前記医用画像データを解析する解析装置であることを特徴とする医用画像診断支援システム。
【請求項4】
請求項1記載の装置において、
前記送信先の処理装置は、前記医用画像データを解析する解析装置、前記医用画像データに基づく画像を表示して診断作業を行うための診断装置、前記医用画像データを保存する保存装置の中の少なくとも1つであることを特徴とする医用画像診断支援システム。
【請求項5】
請求項1記載の装置において、
前記送信処理手段は、前記医用画像データを複製し、複数の前記送信先の処理装置に送信する処理を行うことを特徴とする医用画像診断支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−330514(P2007−330514A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165914(P2006−165914)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】