説明

医用画像診断装置及び制御方法

【課題】PET撮影によって収集された投影データにおける画質劣化要因の有無や程度を短時間で判定すること。
【解決手段】実施形態の医用画像診断装置100は、簡易PET画像データ生成部41と、PET画像データ生成部43と、表示部6とを備える。簡易PET画像データ生成部41は、放射性同位元素を投与した被検体から放射されるγ線の発生源の位置を所定投影面に対して所定方向に投影した情報に基づいて簡易PET画像データを生成する。PET画像データ生成部43は、簡易PET画像データの評価結果に基づいて、被検体から放射されるγ線を検出した検出結果に基づいて生成されたPET撮影モードの投影データを用いてPET画像データを生成する。表示部6は、簡易PET画像データ及びPET画像データを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射性同位元素によって標識した薬剤が投与された被検体から放出されるγ線を検出することにより、検査対象部位における放射性同位元素の分布を画像化する医用画像診断装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置、MRI装置、X線CT装置及び核医学イメージング装置などを用いた医用画像診断は、コンピュータ技術の発展に伴って急速な進歩を遂げ、今日の医療において必要不可欠なものとなっている。
【0003】
上述のX線診断装置やX線CT装置は、臓器や腫瘍等の輪郭を描出することによって診断を行なう、所謂、形態診断を目的としている。これに対し、上述の核医学イメージング装置は、生体組織に選択的に取り込まれた放射性同位元素又は放射性同位元素で標識された標識化合物から放射されるγ線を体外から計測し、計測したγ線の線量分布を画像化することにより被検体に対する機能診断を可能としている。
【0004】
核医学イメージング装置として、ガンマカメラ、シングルフォトンエミッションCT装置(SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置)、ポジトロンエミッションCT装置(PET(Positron Emission Computed Tomography)装置)等が臨床の場で使用されている。
【0005】
ガンマカメラは、放射性同位元素によって標識された薬剤(以下、放射性同位元素と呼ぶ。)が投与された被検体の内部から放出されるγ線を、前記被検体に対向させて配置した平面検出器によって測定する。これにより、ガンマカメラは、この平面検出器に投影された放射性同位元素の分布を2次元の画像データ(ガンマ画像データ)として生成する装置である。ガンマカメラは、平面検出器の前面に装着されたコリメータによってγ線の入射方向を特定している。
【0006】
SPECT装置は、放射性同位元素が投与された被検体の周囲でガンマカメラと同様の平面検出器を移動する。あるいは、SPECT装置は、放射性同位元素が投与された被検体の周囲にガンマカメラと同様の平面検出器を複数配置する。これにより、SPECT装置は、前記被検体に対し複数の方向から検出したγ線情報に対しX線CT装置と同様の再構成処理を行なって画像データ(SPECT画像データ)を生成する。
【0007】
一方、PET装置は、陽電子(ポジトロン)を放出する核種によって標識した放射性同位元素が投与された被検体から、この陽電子が電子と結合して消滅する際に放射される一対のγ線を、被検体の周囲に配置したリング状の検出器によって検出する。PET装置は、検出器によって検出される一対のγ線情報を再構成処理することにより画像データ(PET画像データ)の生成を行なっている。
【0008】
又、近年では、X線CT装置とPET装置とが一体化された、所謂、X線CT組み合わせ型ポジトロンCT装置(以下では、PET−CT装置と呼ぶ。)も開発されている。このPET−CT装置によれば、同一被検体に対する形態診断及び機能診断を効率よく行なうことが可能となる。更に、このPET−CT装置によれば、PET撮影によって収集された投影データを再構成処理してPET画像データを生成する際、X線CT画像データの画素値に基づいて生成された減弱補正データ(減弱マップ)を用いて前記投影データを補正することにより良質なPET画像データを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−47602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
PET画像データの収集においては、被検体に投与された放射性同位元素から放射されるγ線の検出方向及び検出位置の情報に基づいてサイノグラム等の投影データを生成し、この投影データを再構成処理することによりPET画像データの生成を行なう。そして、得られたPET画像データを表示部等に表示することにより、PET画像データの画質を劣化させる体動等の影響(以下では、画質劣化要因と呼ぶ。)の前記投影データにおける有無及びその程度を判定し、許容出来ない画質劣化要因が存在する場合には、投影データを再度収集する方法が行なわれてきた。
【0011】
しかしながら、このような従来の方法では、投影データの再構成処理に多大の時間を要するため、投影データを再収集する場合には被検体に対する放射性同位元素の投与を再度行なう必要があった。又、PET画像データの観察により画質劣化要因の存在が確認された時点で被検体は既に検査室を離れている場合が多く、このような場合には、被検体に対して再来院を依頼する必要があった。そして、このような被検体に対する放射性同位元素の再投与や再来院の要請は、検査効率を大幅に低下させるのみならず被検体の負担が増大するという問題点を有していた。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、PET撮影によって収集された投影データにおける画質劣化要因の有無や程度を短時間で判定することが可能な医用画像診断装置及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態の医用画像診断装置は、簡易PET画像データ生成部と、PET画像データ生成部と、表示部とを備える。簡易PET画像データ生成部は、放射性同位元素を投与した被検体から放射されるγ線の発生源の位置を所定投影面に対して所定方向に投影した情報に基づいて簡易PET画像データを生成する。PET画像データ生成部は、前記簡易PET画像データの評価結果に基づいて、前記被検体から放射されるγ線を検出した検出結果に基づいて生成されたPET撮影モードの投影データを用いてPET画像データを生成する。表示部は、前記簡易PET画像データ及び前記PET画像データを表示する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態における医用画像診断装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】本実施形態の医用画像診断装置が備えるX線CT撮影部の具体的な構成を示すブロック図。
【図3】本実施形態の医用画像診断装置が備えるPET撮影部の具体的な構成を示すブロック図。
【図4】本実施形態のPET撮影部に設けられた検出器モジュールの具体的な構成を示す図。
【図5A】本実施形態の簡易PET撮影モードにおけるγ線の検出方向及び検出位置を示す図(1)。
【図5B】本実施形態の簡易PET撮影モードにおけるγ線の検出方向及び検出位置を示す図(2)。
【図6】本実施形態の画像データ合成部において生成される評価用画像データを説明するための図。
【図7】本実施形態の移動機構部によって移動するX線CT架台部及びPET架台部を説明するための図。
【図8】本実施形態におけるPET画像データの生成手順を示すフローチャート。
【図9】本実施形態の変形例における医用画像診断装置の全体構成を示すブロック図。
【図10A】本実施形態及びその変形例の評価用画像データによって判定される画質劣化要因の具体例を説明するための図(1)。
【図10B】本実施形態及びその変形例の評価用画像データによって判定される画質劣化要因の具体例を説明するための図(2)。
【図11】簡易PET画像データ生成処理の変形例を説明するための図(1)。
【図12】簡易PET画像データ生成処理の変形例を説明するための図(2)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して医用画像診断装置の実施形態を説明する。
【0016】
以下に述べる本実施形態の医用画像診断装置は、先ず、X線管及びX線検出器を所定の位置に固定した状態での被検体に対するX線撮影によって収集されるスキャノグラム撮影モードの投影データに基づいてスキャノグラムを生成する。次いで、医用画像診断装置は、放射性同位元素が投与された前記被検体の体内から放射されるγ線の検出方向及び検出位置に基づいてPET撮影モードの投影データを生成する。ここで、医用画像診断装置は、PET撮影モードの投影データを生成すると共に、前記γ線の検出結果の中から抽出した前記X線撮影のX線照射方向(具体的には、X線照射方向の中心方向)と略等しい方向から検出されたγ線の検出位置に基づいて簡易PET画像データを生成する。そして、医用画像診断装置は、得られた簡易PET画像データを上述のスキャノグラムに重畳して評価用画像データを生成する。そして、表示部においてγ線の検出位置に対応する観測点がリアルタイム表示される評価用画像データの観察により、PET撮影モードの投影データに画質劣化要因としての体動や薬剤漏れの影響が含まれていないことが確認されたならば、医用画像診断装置は、この投影データ(PET撮影モードの投影データ)を再構成処理して診断用のPET画像データを生成する。
【0017】
尚、以下の実施形態では、スキャノグラム撮影モードの投影データに基づく形態画像データとしてのスキャノグラムの生成とPET撮影モードの投影データに基づく機能画像データとしてのPET画像データの生成とを可能とする医用画像診断装置について述べる。しかし、以下の実施形態では、X線管及びX線検出器を被検体の周囲で高速回転して得られるX線CT撮影モードの投影データに基づいて生成される3次元の画像データあるいは所定断面(例えば、コロナル断面)におけるMPR画像データ等を形態画像データとしてもよい。
【0018】
(装置の構成)
本発明の実施形態における医用画像診断装置の構成につき図1乃至図7を用いて説明する。尚、図1は、本実施形態における医用画像診断装置の全体構成を示すブロック図であり、図2及び図3は、本実施形態の医用画像診断装置が備えるX線CT撮影部及びPET撮影部の具体的な構成を示すブロック図である。
【0019】
図1に示す本実施形態の医用画像診断装置100は、X線CT撮影部1と、PET撮影部2と、形態画像データ生成部3と、機能画像データ生成部4と、画像データ合成部5と、表示部6とを備えている。X線CT撮影部1は、被検体150からX線CT撮影モードの投影データを収集する。本実施形態に係るX線CT撮影部1は、所定の位置に固定された回転架台部のX線発生部11から放射され被検体150を透過したX線を投影データ生成部12により検出してスキャノグラム撮影モードの投影データを生成する。PET撮影部2は、放射性同位元素が投与された被検体150の体内から放射される1対のγ線を、被検体150の周囲に配列された検出器モジュール21により検出し、その検出方向及び検出位置に基づいてPET撮影モードの投影データを生成する。形態画像データ生成部3は、X線CT撮影部1において生成されたスキャノグラム撮影モードの投影データを用いて形態画像データとしてのスキャノグラムを生成する。機能画像データ生成部4は、X線CT撮影部1におけるX線照射方向(具体的には、X線照射方向の中心方向)と略等しい方向から検出されたγ線の検出位置に基づいて簡易PET画像データを生成する。更に機能画像データ生成部4は、PET撮影部2において生成されたPET撮影モードの投影データに基づいて機能画像データとしてのPET画像データを生成する。画像データ合成部5は、スキャノグラムに簡易PET画像データを重畳することによりPET撮影モードの投影データが有する画質劣化要因の評価を目的とした評価用画像データを生成する。表示部6は、画像データ合成部5において生成された評価用画像データや機能画像データ生成部4において生成されたPET画像データを表示する。
【0020】
更に、医用画像診断装置100は、天板7と、移動機構部8と、入力部9と、システム制御部10とを備えている。天板7は、図示しない寝台に据え付けられており、被検体150を載置する。移動機構部8は、X線CT撮影部1を有するX線CT架台部及びPET撮影部2を有するPET架台部(何れも図示せず)を体軸方向(図1のz方向)へ移動させることにより、被検体150の検査対象部位を各々の撮影野へ配置する。入力部9は、被検体情報の入力、スキャノグラム撮影モード、簡易PET撮影モード及びPET撮影モードの選択の入力、これらの撮影モードにおける撮影条件の設定の入力、スキャノグラム、簡易PET画像データ及びPET画像データの生成条件及び表示条件の設定の入力、各種コマンド信号の入力等を行なう。システム制御部10は、医用画像診断装置100が有する上述の各ユニットを統括的に制御する。
【0021】
次に、医用画像診断装置100が備える上述の各ユニットの構成と機能につき更に詳しく説明する。
【0022】
図1に示したX線CT撮影部1は、図2に示すように、X線発生部11、投影データ生成部12、回転架台部13及び固定架台部14を備える。X線発生部11は、X線管111と、高電圧発生器112と、X線絞り器113と、スリップリング114とを備えている。X線管111は、被検体150に対してX線を照射する。高電圧発生器112は、X線管111の陽極と陰極の間に印加する高電圧を発生する。X線絞り器113は、X線管111から放射されたX線の照射範囲を設定する。スリップリング114は、回転架台部13に対して所定の電力を供給する。
【0023】
X線管111は、X線を発生する真空管であり、高電圧発生器112から供給される高電圧によって加速した電子をタングステンターゲットに衝突させてX線を放射する。一方、X線絞り器113は、X線管111と被検体150との間に設けられ、X線管111から放射されたX線を所定の撮影領域に絞り込む機能と被検体150に対するX線の照射強度分布を設定する機能とを有している。例えば、X線絞り器113は、X線管111から放射されたX線ビームを撮影領域に対応したコーンビーム状あるいはファンビーム状のX線ビームに成形する。
【0024】
次に、投影データ生成部12は、X線検出器121と、データ収集ユニット122と、データ伝送回路123とを備えている。X線検出器121は、被検体150を透過したX線を検出する。データ収集ユニット122は、DAS(Data Acquisition System)ユニットであり、X線検出器121から出力された複数チャンネルの検出信号に対して電流/電圧変換とA/D変換とを行なう。以下では、データ収集ユニット122をDASユニット122と呼ぶ。データ伝送回路123は、DASユニット122の出力信号に対してパラレル/シリアル変換、電気/光/電気変換及びシリアル/パラレル変換を行なう。
【0025】
投影データ生成部12のX線検出器121は、例えば、2次元配列された図示しない複数個のX線検出素子を備え、このX線検出素子の各々は、X線を光に変換するシンチレータと光を電気信号に変換するフォトダイオードとによって構成されている。そして、これらのX線検出素子は、X線管111の焦点を中心とした円弧に沿って回転架台部13に取り付けられている。
【0026】
一方、DASユニット122は、X線検出器121の検出信号に対して電流/電圧変換とA/D変換とを行なう。そして、データ伝送回路123は、図示しないパラレル/シリアル変換器と電気/光/電気変換器とシリアル/パラレル変換器とを有し、DASユニット122から出力された検出信号は、回転架台部13に取り付けられたパラレル/シリアル変換器において時系列的な1チャンネルの投影データに変換され、電気/光/電気変換器を用いた光通信により固定架台部14に取り付けられたシリアル/パラレル変換器に供給される。
【0027】
次いで、1チャンネルの投影データは、シリアル/パラレル変換器において複数チャンネルの投影データに変換され、スキャノグラム撮影モードの投影データとして形態画像データ生成部3の投影データ記憶部31に保存される。
【0028】
尚、上述のデータ伝送方法は、回転架台部13に設けられた投影データ生成部12と固定架台部14の外部に設けられた形態画像データ生成部3との間の信号伝送が可能であれば他の方法に替えることが可能であり、例えば、既に述べたスリップリング等のデバイスを使用しても構わない。
【0029】
この場合、X線発生部11のX線管111及びX線絞り器113と上述の投影データ生成部12のX線検出器121及びDASユニット122とは、被検体150を挟むように対向して回転架台部13に装着される。そして、スキャノグラム撮影モードでは、図2に示すように、X線管111及びX線絞り器113が被検体150の上方に配置され、X線検出器121が下方に配置されるように、回転架台部13は所定の位置に固定される。
【0030】
次に、図1のPET撮影部2は、図3に示すように、検出器モジュール21と、検出データ処理部22とを有している。検出器モジュール21は、被検体150の周囲において同心円状に配列され、放射性同位元素が投与された被検体150の体内から放射される1対のγ線を検出する。検出データ処理部22は、検出されたγ線とノイズとの弁別、γ線の検出時刻や検出位置の計測、同時計測された1対のγ線の検出位置に基づく検出方向の計測を行ない、更には、所定期間におけるγ線のカウント値をγ線検出位置及びγ線検出方向に対応させて累積演算することによりPET撮影モードの投影データを生成する。尚、同時計測された1対のγ線の検出位置を結ぶ線分は、同時計測線(LOR:Line Of Response)と呼ばれる。被検体150の体内から放射される1対のγ線の発生源は、LOR上に位置する。
【0031】
複数個からなる検出器モジュール21(21−1乃至21−Nm)は、天板7に載置された状態でPET撮影部2の撮影野に配置された被検体150の周囲において同心円状に配列される。被検体150から放射されたγ線は、これらの検出器モジュール21によって一旦可視光に変換された後、電気信号(検出信号)に変換される。
【0032】
図4は、本実施形態のPET撮影部に設けられた検出器モジュールの具体的な構成を示す図である。図4に示すように、検出器モジュール21−1乃至21−Nmの各々は、短冊状のシンチレータ211と、光電子増倍管212と、ライトガイド213とを有している。シンチレータ211は、被検体150から放射されるγ線を検出して可視光に変換する。光電子増倍管212は、シンチレータ211によって変換された可視光を電気信号に変換すると共に変換した微弱な電気信号を増幅する。ライトガイド213は、シンチレータ211から出力された可視光を光電子増倍管212へ伝達する。
【0033】
シンチレータ211は、ビスマスジャーマネイド(BGO:(BiGe12))、タリウム活性化ヨウ化ナトリウム(NaI(Tl))、フッ化バリウム(BaF)等の材料が用いられる。特に、PET撮影部2の検出器モジュール21には、単位体積当たりのγ線光電吸収率が高いビスマスジャーマネイドや応答速度の速いフッ化バリウムが好適である。
【0034】
光電子増倍管212は、例えば、数百個からなる光子を10〜1010個の電子に増幅し、出力段である陽極にその電子を収集して電気信号に変換するものであり、図示しない光電陰極と電子増倍器を備えている。光電陰極には、その波長特性がシンチレータ211の発光波長に略均しい多アルカリ物質あるいは酸素やセシウムで活性化したバイアルカリ物質が用いられ、入射光子数に対する発生光電子数は通常20%乃至30%である。一方、電子増倍器は、2次電子放出現象に基づき、電子の伝搬経路に沿って配置された多段の電極と増幅された電子を収集する陽極とから構成されている。そして、管電圧が200V乃至300Vの場合の1段当たりの増幅率は約5倍であるため、上述の10の増幅率を得るためには10段程度の電極が設けられる。
【0035】
ライトガイド213は、シンチレータ211と光電子増倍管212を光学的にカップリングするためのものであり、シンチレータ211から出力された可視光を効率よく光電子増倍管212へ伝達するために光透過性に優れたプラスチック材が用いられる。
【0036】
図3へ戻って、PET撮影部2の検出データ処理部22は、上述の検出器モジュール21−1乃至21−Nmの各々に接続されているNmチャンネルのデータ処理ユニット221−1乃至221−Nmを備えている。また、検出データ処理部22は、データ処理ユニット221−1乃至221−Nmから出力されたγ線の検出位置情報に基づいてγ線の検出方向を計測する検出方向計測部222を備えている。また、検出データ処理部22は、所定期間における検出信号のカウント値をγ線検出位置及びγ線検出方向に対応させて順次累積加算することによりPET撮影モードの投影データを生成する投影データ生成部223を備えている。
【0037】
尚、ここでは、被検体150に投与された放射性同位元素Sから放射される1対のγ線が検出器モジュール21−a及び21−bによって検出された場合を想定し、検出器モジュール21−a及び21−bに接続されているデータ処理ユニット221−a及び221−bのみを示している。
【0038】
検出データ処理部22のデータ処理ユニット221−a及び221−b各々は、信号合成部231と、信号弁別部232と、波形整形部233と、検出時刻計測部234と、検出位置計測部235とを備えている。信号合成部231は、検出器モジュール21−aまたは21−bの光電子増倍管212から供給された複数チャンネルの検出信号を加算合成する。信号弁別部232は、信号合成部231において合成された検出信号を用いてγ線に起因する検出信号とノイズとの弁別を各々の波高値に基づいて行なう。波形整形部233は、信号合成部231から出力された合成後の検出信号を矩形波に整形する。検出時刻計測部234は、信号弁別部232において弁別された検出信号に対応するγ線の検出時刻を波形整形部233から供給された矩形波のフロントエッジ等に基づいて計測する。検出位置計測部235は、信号弁別部232において弁別された検出信号に対応するγ線の検出位置を検出器モジュール21−aまたは21−bの光電子増倍管212から供給された複数チャンネルの検出信号に基づいて計測する。一例を挙げると、検出位置計測部235は、アンガーロジック(Anger logic)による重心計算を行なうことで、1つのγ線に由来する複数の光子を放出したシンチレータ211を特定し、特定したシンチレータ211の位置を、γ線の検出位置とする。尚、データ処理ユニット221を構成する各ユニットの具体的な構成と機能については、特開2007−107995号公報等において記載されているため詳細な説明は省略する。
【0039】
次に、検出データ処理部22の検出方向計測部222は、データ処理ユニット221−1乃至221−Nmの各々に設けられた検出時刻計測部234から供給されるγ線の検出時刻及び検出位置計測部235から供給されるγ線の検出位置の情報に基づき、被検体150の体内から放射されるγ線の検出方向を計測する。例えば、検出方向計測部222は、検出時刻の差が所定の時間幅となる2つの検出位置を、被検体150の体内から放出された1対のγ線を略同時に検出した位置とする。そして、例えば、検出方向計測部222は、これら2つの検出位置を結ぶ線分をLORとし、LORの方向をγ線の検出方向として計測する。
【0040】
一方、投影データ生成部223は、被検体150から放射されるγ線を検出した検出結果に基づくPET撮影モードの投影データを生成する。投影データ生成部223は、累積演算機能を有する図示しない記憶回路を備え、検出方向計測部222から供給された検出信号のカウント値を上述のγ線の検出位置及び検出方向に対応させて前記記憶回路に保存する。そして、例えば、検出器モジュール21−aと検出器モジュール21−bによるγ線の検出が所定期間において行なわれる度に、検出信号のカウント値は、検出位置及び検出方向に対応した前記記憶回路のアドレスにおいて累積加算される。
【0041】
更に、検出データ処理部22は、検出器モジュール21−a及び検出器モジュール21−bと異なる他の検出器モジュール21において1対のγ線が検出された場合においても、γ線の検出位置と検出方向を上述と同様の方法によって計測し、検出信号のカウント値をγ線の検出位置及び検出方向に対応した前記記憶回路のアドレスにおいて累積加算する。即ち、所定期間内において順次検出されるγ線のカウント値は、検出位置及び検出方向に対応した記憶回路のアドレスにおいて累積加算され、これにより、PET撮影モードの投影データが生成される。
【0042】
次に、図1に示した形態画像データ生成部3は、投影データ記憶部31、スキャノグラム生成部32及びスキャノグラム記憶部33を備える。回転架台部13を所定の位置に固定させた状態で後述のX線CT架台部を被検体150の体軸方向(z方向)へ順次スライド移動させながら行なわれるX線撮影によって収集されたスキャノグラム撮影モードの投影データは、撮影モードの識別情報や撮影位置情報(即ち、X線CT架台部の位置情報)等が付帯情報として付与されたうえで、投影データ記憶部31に保存される。
【0043】
スキャノグラム生成部32は、撮影モードの識別情報に基づいて投影データ記憶部31から読み出したスキャノグラム撮影モードの投影データを、その付帯情報である撮影位置情報に基づいて合成する。これにより、スキャノグラム生成部32は、体軸方向に広範囲なスキャノグラムを生成する。そして、得られたスキャノグラムは、スキャノグラム記憶部33に一旦保存される。尚、このとき生成されるスキャノグラムは、通常のX線診断装置によって得られる透視画像データに類似したものとなる。
【0044】
一方、機能画像データ生成部4は、簡易PET画像データ生成部41、投影データ記憶部42及びPET画像データ生成部43を備えている。
【0045】
簡易PET画像データ生成部41は、放射性同位元素を投与した被検体150から放射されるγ線の発生源の位置を所定投影面に対して所定方向に投影した情報に基づいて簡易PET画像データを生成する。本実施形態では、形態画像データの撮影方向を所定方向とし、形態画像データの撮影断面を所定投影面とする。そして、本実施形態に係る簡易PET画像データ生成部41は、被検体150から放射されるγ線の検出位置情報の中で、形態画像データの撮影方向に対応する方向から検出された検出位置情報に基づいて簡易PET画像データを生成する。換言すると、本実施形態では、簡易PET画像データ生成部41は、被検体150から放射されるγ線の検出位置情報の中で、形態画像データの撮影断面に垂直な方向に対応する方向から検出された検出位置情報に基づいて簡易PET画像データを生成する。尚、形態画像データの撮影方向は、スキャノグラム撮影時にX線発生部11からコーンビーム状あるいはファンビーム状に照射されたX線ビームの中心方向である。以下では、形態画像データの撮影方向を、X線照射方向の中心方向と記載する場合がある。
【0046】
また、簡易PET画像データ生成部41は、PET撮影モードの投影データの収集過程で検出されたγ線の検出位置情報に基づいて簡易PET画像データを生成する。本実施形態では、簡易PET画像データ生成部41は、PET撮影モードの投影データの収集過程で所定方向から検出されたγ線の検出位置情報に基づいて簡易PET画像データを生成する。
【0047】
また、簡易PET画像データ生成部41は、γ線の発生源の位置に対応するデータシートのアドレスに、検出時刻からの時間経過と共に輝度が減弱する計測点を順次配置することにより簡易PET画像データを生成する。本実施形態に係る簡易PET画像データ生成部41は、所定方向である形態画像データの撮影方向から検出されたγ線の検出位置に対応するデータシートのアドレスに、検出時刻からの時間経過と共に輝度が減弱する計測点を順次配置することにより簡易PET画像データを生成する。
【0048】
例えば、簡易PET画像データ生成部41は、図示しない分布データ形成部、経過時間計測部及びルックアップテーブルを備え、検出データ処理部22の検出方向計測部222によって計測されたγ線の検出方向がスキャノグラム撮影モードにおけるX線照射方向の中心方向(例えば、図2のy方向)と略等しい場合、このγ線の検出位置に対応するデータシートのアドレスに所定の輝度を有した計測点を順次配置する。これにより、簡易PET画像データ生成部41は、上述のX線照射方向の中心方向と直交する投影面にγ線発生源の分布状態が投影された簡易PET画像データを生成する。
【0049】
即ち、X線照射方向の中心方向と略同一の方向(y方向)を検出方向とするγ線がPET撮影部2の検出器モジュール21によって検出された場合、上述の経過時間計測部は、検出データ処理部22の検出時刻計測部234によって計測された前記γ線の検出時刻から観測時刻までの経過時間を計測する。ここで、上述のルックアップテーブルは、経過時間と計測点の輝度値との対応データが、投与薬剤情報を含むPET撮影モードの撮影条件を単位として予め保管されている。経過時間計測部は、ルックアップテーブルの中から前記経過時間の計測結果に対応した輝度値を抽出する。
【0050】
そして、分布データ形成部は、γ線の検出位置に対応したデータシートのアドレスに時間経過と共に変化する輝度値を有した複数の計測点を配置することにより、その輝度が検出時刻において最大値を有し時間経過と共に減弱する複数の計測点によって構成された簡易PET画像データを生成する。
【0051】
図5A及びBは、本実施形態の簡易PET撮影モードにおけるγ線の検出方向及び検出位置を示す図である。図5Aは、スキャノグラム撮影モードにおけるX線照射方向の中心方向を示している。又、図5Bは、被検体150の体内から放射されるγ線がX線照射方向の中心方向と略等しい方向において検出された場合の検出位置a1乃至aN及びb1乃至bNを示している。但し、説明を簡単にするために、図5AにおけるX線照射方向の中心方向はy方向としている。又、図5Bでは、体軸方向に垂直な1つの断面におけるγ線検出位置のみを説明し、体軸方向に垂直な他の複数断面におけるγ線検出位置についての説明は省略しているが、本実施形態では、体軸方向に垂直な他の複数断面におけるγ線検出位置も同様の方法によって検出される。
【0052】
図5Aに示す一例では、本実施形態で形態画像データとして用いられるスキャノグラムは、被検体150の組織形態を、zx平面に対してy方向に投影した画像データである。従って、図5Bに示すように、検出位置a1及び検出位置b1を結ぶLORがy方向に略等しい方向であることから、当該LOR上のいずれかの位置に存在する発生源S1の位置をzx平面に対してy方向に投影した位置は、発生源S1のz座標及びx座標であると共に、検出位置a1のz座標及びx座標となり、検出位置b1のz座標及びx座標となる。
【0053】
また、図5Bに示す発生源S2の位置をzx平面に対してy方向に投影した位置は、検出位置a2及び検出位置b2それぞれのz座標及びx座標となり、図5Bに示す発生源S3の位置をzx平面に対してy方向に投影した位置は、検出位置a3及び検出位置b3それぞれのz座標及びx座標となる。また、図5Bに示す発生源S4の位置をzx平面に対してy方向に投影した位置は、検出位置a4及び検出位置b4それぞれのz座標及びx座標となり、図5Bに示す発生源SNの位置をzx平面に対してy方向に投影した位置は、検出位置aN及び検出位置bNそれぞれのz座標及びx座標となる。
【0054】
すなわち、LORの方向が撮影断面に垂直な方向(撮影方向)に略一致する方向であるならば、γ線の発生源の位置を撮影断面へ投影した位置は、撮影方向における当該発生源の位置が特定されなくても、当該LORの方向を決定するために用いられた2つの検出位置情報から求めることができる。尚、形態画像データの撮影方向及び撮影断面は、y方向及びzx断面だけでなく、操作者により任意に変更することができる。例えば、簡易PET画像データ生成部41は、検出位置計測部235で計測された検出位置の情報を、設定された撮影方向及び撮影断面で定まる直交座標系での位置情報に変換することで、γ線の発生源の位置を撮影断面へ投影した位置を求めることができる。このように、簡易PET画像データ生成部41は、撮影断面におけるγ線の発生源の位置が描出された簡易PET画像データを、再構成処理を行なうことなく、生成する。
【0055】
図1へ戻って、機能画像データ生成部4の投影データ記憶部42には、PET撮影部2に備えられた検出データ処理部22の投影データ生成部223が、複数からなる検出信号のカウント値を累積加算して生成したPET撮影モードの投影データが一旦保存されている。そして、PET画像データ生成部43は、PET撮影モードの投影データを用いてPET画像データを生成する。PET画像データ生成部43は、投影データ記憶部42から読み出したPET撮影モードの投影データを再構成処理して診断用のPET画像データを生成する。
【0056】
次に、画像データ合成部5は、図示しない加算合成処理部を有し、形態画像データ生成部3のスキャノグラム記憶部33に保存されている体軸方向に広範囲なスキャノグラムと、機能画像データ生成部4の簡易PET画像データ生成部41において略リアルタイムで生成される簡易PET画像データを合成することにより、PET撮影モードの投影データにおける画質劣化要因の評価を目的とした評価用画像データを生成する機能を有している。この場合、スキャノグラムと簡易PET画像データとの合成は、上述のスキャノグラム撮影モードの撮影位置情報(即ち、X線CT架台部の位置情報)及び簡易PET撮影モードの撮影位置情報(即ち、PET架台部の位置情報)に基づいて行なわれる。
【0057】
図6は、本実施形態の画像データ合成部において生成される評価用画像データを説明するための図である。図6に示す画像データ1000は、図5Aの矢印で示したy方向を中心とするX線照射によって収集されたスキャノグラム撮影モードの投影データに基づいて形態画像データ生成部3のスキャノグラム生成部32が生成した被検体150の広範囲なスキャノグラムを示している。また、図6に示す画像データ2000は、上述のX線照射方向の中心方向と同一の方向において検出されたγ線の検出位置に基づいて機能画像データ生成部4の簡易PET画像データ生成部41が生成した簡易PET画像データを示している。また、図6に示す画像データ3000は、画像データ合成部5が、上述の簡易PET画像データとスキャノグラムとを合成することによって生成した評価用画像データを夫々示している。
【0058】
そして、表示部6に示された上述の評価用画像データにおいて、例えば、簡易PET画像データを構成する計測点の各々がスキャノグラムの破線で示された検査対象臓器の内部に分布している場合、PET撮影モードの投影データの収集時における体動の影響は許容可能な範囲にあると判定される。
【0059】
次に、図1の表示部6は、図示しない表示データ生成部、変換処理部及びモニタを備えている。表示データ生成部は、画像データ合成部5において生成された評価用画像データや機能画像データ生成部4のPET画像データ生成部43において生成されたPET画像データを所定の表示フォーマットに変換して表示データを生成し、変換処理部は、表示データ生成部によって生成された表示データに対しD/A変換やTVフォーマット変換等の変換処理を行なってモニタに表示する。本実施形態では、表示部6は、時間経過と共に輝度が減弱する複数の計測点を有した簡易PET画像データをリアルタイムで表示する。具体的には、本実施形態では、表示部6は、評価用画像データをリアルタイムで表示する。
【0060】
一方、移動機構部8は、図示しない架台回転部、架台移動部及び移動機構制御部を備える。架台回転部は、移動機構制御部から供給される架台回転制御信号に従ってX線管111及びX線検出器121が搭載されたX線CT撮影部1の回転架台部13を回転させ、スキャノグラム画像データの生成に好適な位置に配置する。
【0061】
架台移動部は、移動機構制御部から供給された架台移動制御信号に従い、X線CT撮影部1を有するX線CT架台部及びPET撮影部2を有するPET架台部を床面に設けられたガイドレールに沿って被検体150の体軸方向へ移動させる。
【0062】
移動機構制御部は、入力部9からシステム制御部10を介して供給されるスキャノグラム撮影モード及びPET撮影モードの撮影条件に基づいて生成した架台回転制御信号を架台回転部へ供給し、架台移動制御信号を架台移動部へ供給する。
【0063】
図7は、本実施形態の移動機構部によって移動するX線CT架台部及びPET架台部を説明するための図である。図7に示すように検査室の床面160には被検体150を載置する天板7を有した寝台161が据え付けられ、天板7の体軸方向(z方向)にガイドレール162が配設されている。そして、移動機構部8は、被検体150の検査対象部位(検査対象臓器)がX線CT撮影部1の撮影野及びPET撮影部2の撮影野に配置されるように、X線CT撮影部1を有するX線CT架台部163及びPET撮影部2を有するPET架台164をガイドレール162に沿って体軸方向へ移動させる。これにより、スキャノグラム撮影モード及びPET撮影モードにおける撮影位置が設定される。
【0064】
次に、図1の入力部9は、キーボード、選択スイッチ、マウス等の入力デバイスや表示パネルを備え、表示部6と組み合わせて用いることによりインタラクティブなインターフェースを形成している。そして、被検体情報の入力、スキャノグラム撮影モード、簡易PET撮影モード及びPET撮影モードの選択、これらの撮影モードにおける撮影条件の設定、スキャノグラム、簡易PET画像データ及びPET画像データの生成条件及び表示条件の設定、被検体150に投与される放射性同位元素の情報(投与薬剤情報)の入力、更には、X線CT撮影開始指示信号、PET撮影開始指示信号及びPET画像データ生成指示信号をはじめとする各種指示信号の入力等が、上述の表示パネルや入力デバイスを用いて行なわれる。本実施形態では、入力部9は、PET画像データの生成を行なうための指示信号(PET画像データ生成指示信号)を簡易PET画像データの評価結果に基づいて入力する。具体的には、本実施形態では、入力部9は、PET画像データ生成指示信号を評価用画像データの評価結果に基づいて入力する。より具体的には、入力部9は、評価用画像データを観察した操作者から、PET画像データ生成指示信号を受け付け、受け付けたPET画像データ生成指示信号を、システム制御部10に入力する。
【0065】
一方、システム制御部10は、図示しないCPUと記憶回路を備え、入力部9から供給される上述の入力情報、選択情報及び設定情報は、前記記憶回路に保存される。そして、CPUは、前記記憶回路から読み出したこれらの情報に基づいて医用画像診断装置100に備えられた各ユニットを統括的に制御し、スキャノグラム、簡易PET画像データ、評価用画像データ及びPET画像データの生成を実行させる。例えば、PET画像データ生成指示信号を入力部6から通知されたシステム制御部10の制御に従って、PET画像データ生成部43は、PET撮影モードの投影データを再構成処理することで、PET画像データを生成する。
【0066】
(PET画像データの生成手順)
次に、本実施形態におけるPET画像データの生成手順につき図8のフローチャートに沿って説明する。図8は、本実施形態におけるPET画像データの生成手順を示すフローチャートである。
【0067】
被検体150に対するX線CT撮影及びPET撮影に先立ち、医用画像診断装置100の操作者は、被検体150に対し11C、13N,15O,18F等の陽電子(ポジトロン)放出核種で標識された放射性同位元素(RI)を投与する(図8のステップS1)。次いで、操作者は、初期設定を行なう(図8のステップS2)。すなわち、操作者は、入力部9において被検体情報の入力、投与薬剤情報(即ち、放射性同位元素の種類、投与量V0、投与時刻t0等)の入力、スキャノグラム撮影モード及びPET撮影モードにおける撮影条件の設定、スキャノグラム、簡易PET画像データ、評価用画像データ及びPET画像データの生成条件及び表示条件の設定等を行なう。そして、これらの入力情報や設定情報は、システム制御部10の記憶回路に保存される。
【0068】
次に、操作者は、被検体150を天板7に載置した後入力部9において架台移動指示信号を入力し、被検体150がX線CT撮影部1の撮影野に配置されるようにX線CT架台部163をガイドレール162に沿って体軸方向へ移動させる。そして、X線CT架台部163の移動が終了したならば、操作者は、スキャノグラムの生成を目的としたX線CT撮影を開始するための指示信号(X線CT撮影開始指示信号)を入力部9において入力する(図8のステップS3)。
【0069】
この指示信号を受信したシステム制御部10は、スキャノグラム撮影モードの投影データ(第1の投影データ)の生成を実行させる(図8のステップS4)。すなわち、システム制御部10は、X線CT撮影部1に設けられた各ユニットを自己の記憶回路から読み出したスキャノグラム撮影モードの撮影条件に基づいて制御し、X線管111及びX線検出器121が装着された回転架台部13を所定の位置に固定した状態で体軸方向へ順次移動する被検体150に対してX線撮影を行なう。そして、このとき得られたスキャノグラム撮影モードの投影データは、撮影モードの識別情報や撮影位置情報(即ち、X線CT架台部163の位置情報)等を付帯情報として形態画像データ生成部3の投影データ記憶部31に保存される。
【0070】
一方、形態画像データ生成部3のスキャノグラム生成部32は、スキャノグラムの生成及び保存を行なう(図8のステップS5)。すなわち、スキャノグラム生成部32は、撮影モードの識別情報に基づいて投影データ記憶部31から読み出したスキャノグラム撮影モードの投影データをその付帯情報である撮影位置情報に基づいて合成し、ノイズ低減や輪郭強調を目的としたフィルタリング処理等を必要に応じて行なって体軸方向に広範囲なスキャノグラムを生成する。そして、得られたスキャノグラムは、スキャノグラム記憶部33に保存される。
【0071】
上述の手順によってスキャノグラムの生成と保存が終了したならば、操作者は、入力部9において架台移動指示信号を再度入力し、被検体150の検査対象部位がPET撮影部2の撮影野に配置されるようにPET架台部164をガイドレール162に沿って体軸方向へ移動させる。そして、PET架台部164の移動が終了したならば、操作者は、簡易PET画像データ及びPET画像データの生成を目的としたPET撮影を開始するための指示信号(PET撮影開始指示信号)を入力部9において入力する(図8のステップS6)。
【0072】
この指示信号を受信したシステム制御部10は、PET撮影部2に設けられた各ユニットを自己の記憶回路から読み出したPET撮影モードの撮影条件に基づいて制御し被検体150に対するPET撮影を開始する。そして、PET撮影部2のデータ処理ユニット221に備えられた投影データ生成部223は、検出方向計測部222から供給された検出信号のカウント値をγ線の検出位置及び検出方向に対応させて保存すると共に、所定時間内に同一の検出位置及び検出方向にて検出された検出信号のカウント値を順次累積加算することによりPET撮影モードの投影データ(第2の投影データ)を生成し、得られた投影データ(第2の投影データ)を機能画像データ生成部4の投影データ記憶部42に保存する。(図8のステップS7)。
【0073】
一方、機能画像データ生成部4の簡易PET画像データ生成部41は、上述の検出方向計測部222によって計測されたγ線の検出方向がスキャノグラム撮影モードにおけるX線照射方向の中心方向と同一の場合、このγ線の検出位置に対応するデータシートのアドレスにその輝度が時間経過と共に減弱する計測点を順次配置することにより上述のX線照射方向と直交する投影面にγ線発生源の分布状態が投影された簡易PET画像データを生成する(図8のステップS8)。
【0074】
次いで、画像データ合成部5は、形態画像データ生成部3のスキャノグラム記憶部33に保存されている体軸方向に広範囲なスキャノグラムと機能画像データ生成部4の簡易PET画像データ生成部41において略リアルタイムで生成される簡易PET画像データとを合成して評価用画像データを生成し、表示部6のモニタに表示する(図8のステップS9)。
【0075】
一方、表示部6に表示されている評価用画像データを観察した医用画像診断装置100の操作者は、この評価用画像データに基づき、既に収集されたPET撮影モードの投影データ(第2の投影データ)における画質劣化要因の有無を判定する(図8のステップS10)。そして、画質劣化要因が存在していないと判定した場合(図8のステップS10のNo)、入力部9においてPET画像データ生成指示信号を入力し、システム制御部10を介してこの指示信号を受信した機能画像データ生成部4のPET画像データ生成部43は、投影データ記憶部42から読み出したPET撮影モードの投影データを再構成処理することによって診断用のPET画像データを生成し、得られたPET画像データは、表示部6のモニタに表示される(図8のステップS11)。ここで、ステップS11において、表示部6は、PET画像データを表示しても良いし、評価用画像データとPET画像データとを表示しても良い。
【0076】
又、上述のステップ9にて生成された評価用画像データの観測により許容出来ない画質劣化要因がPET撮影モードの投影データに存在していると判定した場合(図8のステップS10のYes)、操作者は、この投影データを再度収集するための指示信号を入力部9において入力する。そして、この指示信号を受信したシステム制御部10は、PET撮影部2が有する各ユニットを制御して上述のステップS7乃至ステップS9を繰り返すことにより新たな投影データの生成と評価用画像データの生成及び表示を実行させる。
【0077】
尚、上述の手順では、被検体150に対する放射性同位元素の投与をX線CT撮影開始前に行なったが、X線CT撮影が終了した時点で行なっても構わない。また、ステップアンドシュート(step and shoot)方式により被検体150の全身PET撮影を行なう場合、本実施形態では、ステップS11の後、ステップS11で生成されたPET画像データの検査対象部位と一部重複する検査対象部位がPET撮影部2の撮影野に配置されるようにPET架台部164が移動され、その後、ステップS7以降の処理が行なわれる。
【0078】
(変形例)
次に、本実施形態の変形例につき図9を用いて説明する。図9は、本実施形態の変形例における医用画像診断装置の全体構成を示すブロック図である。
【0079】
上述の実施形態では、形態画像データとしてのスキャノグラムと機能画像データとしてのPET画像データを生成することが可能な医用画像診断装置について述べたが、本変形例では、上述のPET画像データのみを生成する医用画像診断装置について述べる。
【0080】
即ち、本変形例の医用画像診断装置では、先ず、他の医用画像診断装置によって生成された被検体150の形態画像データを形態画像データ記憶部に保存する。次いで、本変形例の医用画像診断装置は、放射性同位元素が投与された被検体150の体内から放射されるγ線の検出方向及び検出位置に基づいてPET撮影モードの投影データを生成すると共に、前記γ線の検出結果の中から抽出した前記形態画像データの撮影方向あるいは撮影断面に垂直な方向と略等しい方向から検出されたγ線の検出位置に基づいて簡易PET画像データを生成する。そして、本変形例の医用画像診断装置は、得られた簡易PET画像データを形態画像データ記憶部から読み出した上述の形態画像データに重畳して評価用画像データを生成する。そして、本変形例の医用画像診断装置は、表示部においてγ線の検出位置がリアルタイム表示される評価用画像データの観察によりPET撮影モードの投影データに許容できない画質劣化要因が含まれていないことが確認されたならば、この投影データを再構成処理して診断用のPET画像データを生成する。
【0081】
尚、本変形例における医用画像診断装置の全体構成を示す図9のブロック図において、図1に示した医用画像診断装置100のユニットと同一の構成及び機能を有するユニットは同一の符号を付加し詳細な説明は省略する。
【0082】
即ち、図9に示す本変形例の医用画像診断装置200は、PET撮影部2と、形態画像データ記憶部50と、機能画像データ生成部4と、画像データ合成部5aと、表示部6とを備えている。PET撮影部2は、放射性同位元素が投与された被検体150の体内から放射される1対のγ線をその周囲に配列された検出器モジュール21により検出し、その検出方向及び検出位置に基づいてPET撮影モードの投影データを生成する。形態画像データ記憶部50には、別途設置された他の医用画像処理装置等によって収集された形態画像データを予め保管されている。機能画像データ生成部4は、この形態画像データの撮影方向あるいは撮影断面に垂直な方向と略等しい方向から検出されたγ線の検出位置に基づいて簡易PET画像データを生成し、更に、PET撮影部2において生成されたPET撮影モードの投影データに基づいて機能画像データとしてのPET画像データを生成する。画像データ合成部5aは、形態画像データに簡易PET画像データを重畳することによりPET撮影モードの投影データにおける画質劣化要因の評価を目的とした評価用画像データを生成する。表示部6は、画像データ合成部5aにおいて生成された評価用画像データや機能画像データ生成部4において生成されたPET画像データを表示する。
【0083】
更に、医用画像診断装置200は、被検体150を載置する天板7と、PET撮影部2を有する図示しないPET架台部を体軸方向(図9のz方向)へ移動させることにより被検体150の検査対象部位をPET撮影部2の撮影野へ配置する移動機構部8aとを備えている。更に、医用画像診断装置200は、被検体情報の入力、簡易PET撮影モード及びPET撮影モードの選択、これらの撮影モードにおける撮影条件の設定、簡易PET画像データ、評価用画像データ及びPET画像データの生成条件及び表示条件の設定、各種コマンド信号の入力等を行なう入力部9aと、医用画像診断装置200が有する上述の各ユニットを統括的に制御するシステム制御部10aを備えている。
【0084】
そして、形態画像データ記憶部50には、例えば、X線CT装置やMRI装置によって生成されたスキャノグラムや被検体150のコロナル断面におけるMPR(Multi Planar Reconstruction)画像データ、更には、X線診断装置によって生成された透視画像データ等が撮影位置情報を付帯情報として予め保管されている。
【0085】
一方、画像データ合成部5aは、図示しない加算合成処理部を有し、形態画像データ記憶部50に保存されている体軸方向に広範囲な形態画像データと、機能画像データ生成部4の簡易PET画像データ生成部41において略リアルタイムで生成される簡易PET画像データとを合成して、PET撮影モードの投影データが有する画質劣化要因の評価を目的とした評価用画像データを生成する機能を有している。この場合、形態画像データと簡易PET画像データの合成は、各々の画像データに付加されている撮影位置情報に基づいて行なわれる。
【0086】
次に、移動機構部8aは、図示しない架台移動部と移動機構制御部を備える。架台移動部は、移動機構制御部から供給された架台移動制御信号に従い、PET撮影部2を有するPET架台部を床面に設けられたガイドレールに沿って被検体150の体軸方向へ移動させる。一方、移動機構制御部は、入力部9aからシステム制御部10aを介して供給されるPET撮影モードの撮影条件に基づいて生成した架台移動制御信号を上述の架台移動部へ供給する。
【0087】
入力部9aは、キーボード、選択スイッチ、マウス等の入力デバイスや表示パネルを備え、表示部6と組み合わせて用いることによりインタラクティブなインターフェースを形成している。そして、被検体情報の入力、簡易PET撮影モード及びPET撮影モードの選択、これらの撮影モードにおける撮影条件の設定、簡易PET画像データ及びPET画像データの生成条件及び表示条件の設定、被検体150に投与される放射性同位元素の情報(投与薬剤情報)の入力、更には、PET撮影開始指示信号及びPET画像データ生成指示信号をはじめとする各種指示信号の入力等が上述の表示パネルや入力デバイスを用いて行なわれる。
【0088】
一方、システム制御部10aは、図示しないCPUと記憶回路を備え、入力部9aから供給される上述の入力情報、選択情報及び設定情報は記憶回路に保存される。そして、CPUは、前記記憶回路から読み出したこれらの情報に基づいて医用画像診断装置200に備えられた各ユニットを統括的に制御し、簡易PET画像データ、評価用画像データ及びPET画像データの生成を実行させる。
【0089】
尚、本変形例におけるPET画像データの生成手順は、図8に示したステップS6乃至ステップS10の手順と同様であるため説明は省略する。
【0090】
次に、上述の実施形態及びその変形例の評価用画像データによって判定される画質劣化要因の具体例につき図10A及び図10Bを用いて説明する。図10A及び図10Bは、実施形態及びその変形例の評価用画像データによって判定される画質劣化要因の具体例を説明するための図である。
【0091】
図10Aは、PET撮影モードの投影データに被検体150の体動に起因する顕著な画質劣化要因が発生した場合の評価用画像データを示したものであり、この場合、簡易PET画像データに示された複数からなる計測点の一部は、スキャノグラム等の形態画像データに示された検査対象臓器の外部に表示される。従って、操作者は、簡易PET画像データの検査対象臓器近傍に示された計測点の位置や数に基づいて投影データを再収集するか否かを判断することができる。
【0092】
一方、図10Bは、被検体150に対する放射性同位元素の投与時に、薬剤注入部の薬剤漏れに起因した画質劣化要因がPET撮影モードの投影データに発生した場合の評価用画像データを示したものであり、この場合、γ線の発生源を示す多くの計測点が形態画像データに示された被検体上肢の薬剤注入部近傍に表示される。このような薬剤漏れ等に起因する多くのγ腺が検査対象臓器以外の部位において検出された場合、これらが画質劣化要因となり良好なPET画像データを得ることが困難となる。このような場合、操作者は、評価用画像データの検査対象臓器以外の部位に示される計測点の位置、数及び発生頻度等に基づいて投影データを再収集するか否かを判断することが可能となる。
【0093】
以上述べた本実施形態及びその変形例によれば、放射性同位元素が投与された被検体から放射されるγ線の検出情報に基づいて投影データを生成し、この投影データを再構成処理してPET画像データを生成する際、所定方向から検出されるγ線に基づいて生成した簡易PET画像データにより、前記投影データにおける画質劣化要因の有無や程度を短時間で判定することができる。
【0094】
特に、前記被検体から収集したスキャノグラム等の形態画像データと前記簡易PET画像データとを合成して表示することにより、投影データの収集時に発生した被検体の体動による影響や放射性同位元素の投与時における薬剤漏れの影響等を正確かつ容易に把握することができる。
【0095】
又、簡易PET画像データでは、その輝度が検出時刻において最大値を有し時間経過と共に減弱する計測点がリアルタイム表示されるため、上述の体動や薬剤漏れ等に起因した画質劣化要因の時間的変化をリアルタイムで捉えることが可能となる。
【0096】
即ち、本実施形態及びその変形例によれば、PET撮影モードの投影データに基づいてPET画像データを生成する際、所定方向から検出されたγ線の検出位置情報に基づいて生成される簡易PET画像データをリアルタイムで観察することにより前記投影データにおける各種画質劣化要因の有無や程度を判定することが可能となる。そして、本実施形態及びその変形例によれば、許容出来ない画質劣化要因が前記投影データに存在する場合には、当該被検体に対する投影データの再収集をPET画像データの生成を待たずに行なうことができる。
【0097】
このため、常に良好なPET画像データの生成が可能となり診断精度が向上する。又、画質劣化要因が発生した場合には投影データの再収集が即時実施されるため、放射性同位元素の再投与や再来院等が不要となり検査効率が大幅に改善されるのみならず被検体の負担を軽減することができる。
【0098】
以上、本開示の実施形態及びその変形例について述べてきたが、本開示は、上述の実施形態及びその変形例に限定されるものではなく、更に変形して実施することが可能である。例えば、上述の実施形態では、スキャノグラム撮影モードの投影データに基づいた形態画像データとしてのスキャノグラムの生成とPET撮影モードの投影データに基づいた機能画像データとしてのPET画像データの生成を可能とする医用画像診断装置について述べた。しかし、上述の実施形態は、X線管111及びX線検出器121を被検体150の周囲で高速回転して得られるX線CT撮影モードの投影データに基づいて生成される3次元の画像データあるいは所定断面(例えば、コロナル断面)における2次元の画像データを形態画像データとしてもよい。この場合の2次元の画像データは、X線CT撮影モードの投影データを再構成処理して得られる3次元データ(ボリュームデータ)に基づくMPR(Multi Planar Reconstruction)画像データあるいはMIP(Maximum Intensity Projection)画像データであっても構わない。
【0099】
又、上述の実施形態では、X線CT架台部163及びPET架台部164をガイドレール162に沿って体軸方向へ移動させることにより被検体150の検査対象部位をX線CT撮影部1及びPET撮影部2の撮影野に配置する場合について述べた。しかし、上述の実施形態は、被検体150が載置された天板7を体軸方向へ移動させることにより上述の撮影野に対する検査対象部位の配置を行なってもよい。
【0100】
更に、上述の実施形態及びその変形例では、スキャノグラム等の形態画像データと簡易PET画像データとを合成して生成した評価用画像データを用いてPET撮影モードの投影データにおける画質劣化要因を評価する場合について述べたが、簡易PET画像データを用いて上述の画質劣化要因を評価しても構わない。例えば、薬剤漏れが発生している場合の簡易PET画像データには、図10Bに例示するように、検査対象臓器と推定される部位から離れた部位において多数の計測点が描出される。従って、画質劣化要因として薬剤漏れの有無を判定する場合ならば、上述の実施形態及びその変形例は、簡易PET画像データを評価用画像データとして表示しても良い。かかる場合、PET画像データは、簡易PET画像データの評価結果に基づいて生成される。
【0101】
更に、上述の実施形態及びその変形例では、γ線の発生源の位置を所定投影面に対して所定方向に投影した情報として、LORの方向が所定方向となる検出位置情報を用いて簡易PET画像データを生成する場合について述べた。しかし、簡易PET画像データは、以下に説明する変形例により生成される場合であっても良い。図11及び図12は、簡易PET画像データ生成処理の変形例を説明するための図である。
【0102】
上述したように、PET装置は、検出時刻の差が所定の時間幅となる2つの検出位置を1対のγ線を略同時に検出した位置として、PET画像データを再構成するための投影データを生成している。一方、近年、検出時刻間の時間差を利用して、LOR上におけるγ線の発生源の位置を推定するTOF(Time Of Flight)−PET装置が実用化されている。すなわち、TOF−PET装置は、図11に示すように、LORの各位置においてγ線発生源が存在する確率分布D1を、検出時間差を用いて推定することができる。そこで、医用画像診断装置100または医用画像診断装置200がTOF−PET装置である場合、簡易PET画像データ生成部41は、γ線の検出位置情報及び検出時刻情報に基づいて推定される当該γ線の発生源の位置を用いて簡易PET画像データを生成する。
【0103】
例えば、簡易PET画像データ生成部41は、図11に示すように、LORにおける確率分布D1を、撮影断面であるzx平面に対してy方向に投影した確率分布D2を求める。そして、例えば、簡易PET画像データ生成部41は、確率分布D2のピークとなる位置を、上述した計測点とすることで簡易PET画像データを生成する。
【0104】
TOF機能を用いた変形例では、LORの方向が如何なる方向であっても簡易PET画像データに用いることができる。例えば、TOF機能を用いた変形例では、所定時間内に順次特定されるLOR全てを用いて、簡易PET画像データを生成することができる。その結果、TOF機能を用いた変形例では、画質劣化要因の有無や程度を正確に評価することができる。ただし、この変形例では、検出時間差を用いてγ線の発生源の位置を推定する処理を行なうために、所定方向のLORを用いる方法と比較して、簡易PET画像データの生成及び表示におけるリアルタイム性が若干低下する。
【0105】
そこで、TOF機能を用いる場合、簡易PET画像データ生成部41は、簡易PET画像データの生成に用いるLORを限定しても良い。例えば、簡易PET画像データ生成部41は、所定方向がy方向である場合、簡易PET画像データの生成に用いるLORをxy平面に含まれるLORに限定しても良い。また、例えば、簡易PET画像データ生成部41は、簡易PET画像データの生成に用いるLORを、xy平面に含まれるLORであり、かつ、方向がxy平面上において所定範囲の方向となるLORに限定しても良い。また、例えば、簡易PET画像データ生成部41は、図12に示すように、簡易PET画像データの生成に用いるLORを、方向がx方向と略等しいLORに限定しても良い。また、簡易PET画像データ生成部41は、TOF機能を用いる方法と、上述した所定方向に略等しい方向のLORを用いる方法とを併用して、簡易PET画像データを生成しても良い。
【0106】
尚、本開示の実施形態に係る医用画像診断装置100及びその変形例に係る医用画像診断装置200の一部は、コンピュータをハードウェアとして用いることでも実現することができる。例えば、上述の医用画像診断装置100(200)が備えるシステム制御部10(10a)等は、コンピュータに搭載されたCPU等のプロセッサに所定の制御プログラムを実行させることにより各種機能を実現することができる。この場合、システム制御部10(10a)等は、上述の制御プログラムをコンピュータに予めインストールしてもよく、又、コンピュータによる読み取りが可能な記憶媒体への保存あるいはネットワークを介して配布された制御プログラムのコンピュータへのインストールであっても構わない。
【0107】
以上、説明したとおり、実施形態及び変形例によれば、PET撮影によって収集された投影データにおける画質劣化要因の有無や程度を短時間で判定することが可能となる。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0109】
1…X線CT撮影部
11…X線発生部
12…投影データ生成部
2…PET撮影部
21…検出器モジュール
22…検出データ処理部
3…形態画像データ生成部
31…投影データ記憶部
32…スキャノグラム生成部
33…スキャノグラム記憶部
4…機能画像データ生成部
41…簡易PET画像データ生成部
42…投影データ記憶部
43…PET画像データ生成部
5、5a…画像データ合成部
6…表示部
7…天板
8、8a…移動機構部
9、9a…入力部
10、10a…システム制御部
50…形態画像データ記憶部
100、200…医用画像診断装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性同位元素を投与した被検体から放射されるγ線の発生源の位置を所定投影面に対して所定方向に投影した情報に基づいて簡易PET画像データを生成する簡易PET画像データ生成部と、
前記簡易PET画像データの評価結果に基づいて、前記被検体から放射されるγ線を検出した検出結果に基づいて生成されたPET撮影モードの投影データを用いてPET画像データを生成するPET画像データ生成部と、
前記簡易PET画像データ及び前記PET画像データを表示する表示部と、
を備える、医用画像診断装置。
【請求項2】
前記被検体から収集された形態画像データに前記簡易PET画像データを重畳して評価用画像データを生成する画像データ合成部、
を更に備え、
前記PET画像データ生成部は、前記評価用画像データの評価結果に基づいて前記PET画像データを生成し、
前記表示部は、前記評価用画像データ及び前記PET画像データを表示する、請求項1記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記簡易PET画像データ生成部は、前記被検体から放射されるγ線の検出位置情報の中で、前記形態画像データの撮影方向あるいは撮影断面に垂直な方向に対応する方向から検出された検出位置情報に基づいて前記簡易PET画像データを生成する、請求項2記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記被検体からX線CT撮影モードの投影データを収集するX線CT撮影部と、
前記X線CT撮影手段により前記被検体から収集されたX線CT撮影モードの投影データに基づいて前記撮影方向におけるスキャノグラムあるいは前記撮影断面におけるMPR(Multi Planar Reconstruction)画像データの少なくとも何れかを前記形態画像データとして生成する形態画像データ生成部と、
を更に備える、請求項3記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記画像データ合成部は、別途設置されたX線CT装置あるいはMRI装置により前記被検体から収集された前記撮影方向におけるスキャノグラムあるいは前記撮影断面におけるMPR画像データの少なくとも何れかに前記簡易PET画像データを重畳して前記評価用画像データを生成する、請求項3記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記簡易PET画像データ生成部は、前記PET撮影モードの投影データの収集過程で検出された前記γ線の検出位置情報に基づいて前記簡易PET画像データを生成する、請求項1記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記簡易PET画像データ生成部は、前記γ線の発生源の位置に対応するデータシートのアドレスに、検出時刻からの時間経過と共に輝度が減弱する計測点を順次配置することにより前記簡易PET画像データを生成する、請求項1記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記表示部は、前記時間経過と共に輝度が減弱する複数の計測点を有した前記簡易PET画像データをリアルタイム表示する、請求項7記載の医用画像診断装置。
【請求項9】
前記PET画像データの生成を行なうための指示信号を前記簡易PET画像データの評価結果に基づいて入力する指示信号入力部、
を更に備え、
前記PET画像データ生成部は、前記指示信号に従って前記PET撮影モードの投影データを再構成処理し前記PET画像データを生成する、請求項1記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
前記簡易PET画像データ生成部は、前記γ線の検出位置情報及び検出時刻情報に基づいて推定される当該γ線の発生源の位置を用いて前記簡易PET画像データを生成する、請求項1記載の医用画像診断装置。
【請求項11】
簡易PET画像データ生成部が、放射性同位元素を投与した被検体から放射されるγ線の発生源の位置を所定投影面に対して所定方向に投影した情報に基づいて簡易PET画像データを生成し、
PET画像データ生成部が、前記簡易PET画像データの評価結果に基づいて、前記被検体から放射されるγ線を検出した検出結果に基づいて生成されたPET撮影モードの投影データを用いてPET画像データを生成し、
表示部が、前記簡易PET画像データ及び前記PET画像データを表示する、
ことを含む制御方法。
【請求項12】
画像データ合成部が、前記被検体から収集された形態画像データに前記簡易PET画像データを重畳して評価用画像データを生成する、
ことを更に含み、
前記PET画像データ生成部は、前記評価用画像データの評価結果に基づいて前記PET画像データを生成し、
前記表示部は、前記評価用画像データ及び前記PET画像データを表示する、請求項11記載の制御方法。
【請求項13】
前記簡易PET画像データ生成部は、前記被検体から放射されるγ線の検出位置情報の中で、前記形態画像データの撮影方向あるいは撮影断面に垂直な方向に対応する方向から検出された検出位置情報に基づいて前記簡易PET画像データを生成する、請求項12記載の制御方法。
【請求項14】
X線CT撮影部が、前記被検体からX線CT撮影モードの投影データを収集し、
形態画像データ生成部が、前記X線CT撮影手段により前記被検体から収集されたX線CT撮影モードの投影データに基づいて前記撮影方向におけるスキャノグラムあるいは前記撮影断面におけるMPR(Multi Planar Reconstruction)画像データの少なくとも何れかを前記形態画像データとして生成する、
ことを更に含む、請求項13記載の制御方法。
【請求項15】
前記画像データ合成部は、別途設置されたX線CT装置あるいはMRI装置により前記被検体から収集された前記撮影方向におけるスキャノグラムあるいは前記撮影断面におけるMPR画像データの少なくとも何れかに前記簡易PET画像データを重畳して前記評価用画像データを生成する、請求項13記載の制御方法。
【請求項16】
前記簡易PET画像データ生成部は、前記PET撮影モードの投影データの収集過程で検出された前記γ線の検出位置情報に基づいて前記簡易PET画像データを生成する、請求項11記載の制御方法。
【請求項17】
前記簡易PET画像データ生成部は、前記γ線の発生源の位置に対応するデータシートのアドレスに、検出時刻からの時間経過と共に輝度が減弱する計測点を順次配置することにより前記簡易PET画像データを生成する、請求項11記載の制御方法。
【請求項18】
前記表示部は、前記時間経過と共に輝度が減弱する複数の計測点を有した前記簡易PET画像データをリアルタイム表示する、請求項17記載の制御方法。
【請求項19】
指示信号入力部が、前記PET画像データの生成を行なうための指示信号を前記簡易PET画像データの評価結果に基づいて入力する、
ことを更に含み、
前記PET画像データ生成部は、前記指示信号に従って前記PET撮影モードの投影データを再構成処理し前記PET画像データを生成する、請求項11記載の制御方法。
【請求項20】
前記簡易PET画像データ生成部は、前記γ線の検出位置情報および検出時刻情報に基づいて特定される当該γ線の発生源の位置を用いて前記簡易PET画像データを生成する、請求項11記載の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−225905(P2012−225905A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−41290(P2012−41290)
【出願日】平成24年2月28日(2012.2.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】