説明

医療デジタルデーターのグラフ表示

【課題】従来の携帯ホルター心電位計の生体情報データーのデジタルデーターは、心房細動、心室細動の兆候である微細予兆波の初動観察が困難な問題があった。これは、特定の周波数でサンプリングした微細なパルス状アナログ電位信号をデジタルグラフ表示で再現した時、階段状の不完全な波形となる確立が高い為である。
【解決手段】心電位アナログデーターをデジタル変換し得た時系列のデーター点の 第1基点データー点と直前のデーター点を結ぶ直線と第2基点データー点と直後のデーター点を結ぶ直線の交点を求め、デジタル変換の際不完全となった波形を増幅した新たなデーター点としてグラフ表示することにより心房細動、心室細動の予兆波発見の為の初動観察グラフ表示を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療行為によって得る生体情報アナログデーターである心電位波をデジタルデーターに変換した際、サンプリング周波数では完全な波形として取得困難な高速微細な電位波の近似的増幅グラフ表示に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホルター心電位計から得られる医療アナログデーターを12bitまたは16bitの量子化変換、変換速度2マイクロ秒、サンプル周波数100から250Hzでデジタルデーターに変換している。心房細動、心室細動の原因である異常P波R波の高速微細電位の発生があったか否かは、正常P波、QRS波(R)の挙動変化、及び、心拍変動によって結果的に心臓異常として知り得る。この時は、既に心臓疾患として進行した状態と言わざるを得ない。非特許文献1を参照。
医療アナログデーターである心電位波をデジタルデーターに変換する時、量子化水準によって分割した電位値として変換するサンプリング点間の中間に属する電位値は変換されない。デジタルデーターを再度、グラフ表示をした時の線図は階段状となる。従って、高速微細電位の表示は不明瞭となる。非特許文献2を参照。
一般に自覚症状の発生や既に発病している状況に対し、携帯ホルター心電図計を用い24時間患者心電位計測を行うケースがあるが、心臓疾患に至る初期の心房細動、心室細動の予兆において高速微細電位が計測し難く疑わしい場合、また、患者の心理的不安がある場合には入院によって心内心電位測定を1キロHzから数キロHzのサンプリング周波数で実施し、細動電位のアナログデーターを得て診断を行う。特許文献1を参照。
心電位異常の初期微信号の認識は心臓疾患予防の早期診断のために重要であり、精密なシステムや機器による診断に至るまでに、従来の携帯ホルター心電位計のデーターを元に初動観察を促す必要性がある。
【0003】
従来の技術の図による説明
【0004】
図1に示す様に、正常な心電図に対し、P波、QRS波(R)、T波、U波の電位量、発生周期が異常を示した波形を観察し頻脈や余脈の診断を行っている。特に、R−R間隔は重要なファクターとして判断する。しかし、これは心臓活動の結果であって、その原因となる心房や心室の心筋付近で発生する異常発電による高速微細電位の測定は携帯ホルター心電位計では表示が難しく手段を示していない。
【0005】
図4及び図5に示す様に、デジタルデータ−を元に再度グラフ表示を行った場合、各データー間の形状は階段状となる。
【0006】
図4に示す様に、医療アナログデーターをデジタル変換し更にデーターの圧縮を行なった後に解凍、拡大再グラフ表示を行った場合も同様である。心臓活動の結果ファクターを取得後、微細電位を確認しても初動観察のデーターと確認し難い。
【0007】
以上の様に、医療アナログデーターである微細な心電位データーの初動観察を促すデジタルデーターの取得は、患者の日常の生活時間内では困難な状況であり、今後の心臓疾患の早期発見予防治療に必要かつ重要な課題である。

【0008】
【非特許文献1】「研究紹介 医療ネットワークとデジタルホルター心電計の心電図データ圧縮」、東京電気大学電子工学科信号処理研究室、小濱隆司
【非特許文献2】「非絶縁型アナログ入出力ボードAD12−8(PM)取扱説明書」、株式会社コンテック、2004年、p.46
【特許文献1】特開2002−219109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上に述べた携帯ホルター心電位計などの100Hzから250Hzの周波数でサンプリングした医療アナログデーターのデジタル変換をしたとき250Hzより高速微細な電位信号は変換し難いので心臓異常活動における初動観察が困難である。
洞結節発生の電位信号の速度は1m/秒〜1cm/秒であるが、刺激伝導距離が非常に短い場合、心房や心室に発生した異常な発電による電位刺激は発生と同時に瞬時の収縮運動予兆に至る。初期の自覚症状のない異常発電は微細であり顕在化したf波の検出に至らず、初動観察が困難である。
【0010】
本発明は、250Hz以下の周波数でサンプリングしたアナログデーターを従来のデジタル変換技術において、変換データーと変換データーの間に発生している未取得電位信号点を近似的に増幅再現をして心臓異常活動の初動観察を促し心臓疾患発生の早期予防処置医療の実現を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために、医療アナログデーターをデジタル変換の後、X軸を時間軸としY軸を電位量とした直交座標のグラフ表示をしたとき、任意のデーターを第1基点データーとし、第1基点データー点と直前のデーター点を結びそのプラス方向、及び、マイナス方向の延長直線とX軸との角度を求め第1基点データーの角度成分を定める。
【0012】
また、第2の課題解決手段は、第1基点データーの直後のデーター点が頂点・谷の変極点を除く点の場合、及び、第1基点データーの延長直線上にない場合は、直後のデーターを第2基点データー点としてその次のデーター点とを結びその延長直線を求め、第1基点データーの延長直線と第2基点データーの延長直線の交点を求め、新たなデーター点としてグラフ表示のプロット点とする。このデーター点はグラフ表示を増幅した結果となる。
【0013】
また、第3の課題解決手段として、解決手段の第1と第2の一連の処理をX軸の時間の経過と共に、次々と各データーにおいて時系列的に繰返すことによってデジタル変換時のサンプリング数より多くのデーターを得て、同時に増幅したグラフ表示を行う様に構成したものである。
【0014】
上記第1の課題解決手段による作用は次の通りである。電位の大きさを与えるデジタルデーターに角度成分を付加することによって時間軸のX軸に対して傾きを得る。本来、スカラー値であるデジタルデーターに角度成分を与えることによって時間の経過に伴う次データーへの方向性を求めることができる。

【0015】
第2の課題解決手段による作用は、第1基点データーの延長線と第2基点の延長線が交わるか否かを判定することができ、交わる場合は新たなデーター点を求めることができる。このデーター点は250Hz以下のサンプリング周波数により得ることが出来なかったサンプリングデジタルデーターの間に存在するデーターを推定できる効果を発揮する。
【0016】
第3の課題解決手段による作用は、デジタル変換時にサンプリングデジタルデーターで表示できなかったデジタルデーター間のデーターを時系列連続的に得ることによりサンプリングデジタルデーターの間の電位信号をグラフ表示の新たなデーター点として推定できると同時に微細な信号の増幅表示の効果を発揮する。
本発明で得たグラフ表示と元のデーターによるグラフ表示を重ねて表示することによって各心電波形の変化の確認を促す効果を発揮する。
【発明の効果】
【0017】
上述したように本発明のサンプリングデジタルデーターの間におけるデーターの取得により近似的データー点のグラフ表示を可能とし、心電位の異常を示唆する微細な信号を増幅したグラフ表示を提供できる。
【0018】
また、新たに得たデーターの挙動が心電位の異常を示すものであるかどうかを判断する方法として、本発明を実施しない元のデジタルデーターによるグラフを重ね合わせて表示することにより、2種のグラフの比較を行える様にし、初動観察によって疑わしい心電位異常の有無の判断を高める効果を発揮するものである。
さらに、疑わしい心電位の異常が細動電位であるかどうかの医療判断を確実に得る為に更に精密な心内心電位測定の必要性を促し、心臓異常の早期発見に結び付く効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図3に基づいて説明する。
【0020】
図1の標準的心電図パターンの模式図より実施形態を説明する。P波1、Q点2、R点3、S点4からなるQRS波、T波5、U波6から構成する波形パターンの心房細動の予兆を確認するU波6とP波1の状況、心室細動の予兆を確認するQRS波のQ点2R点3間上の状況において発生している目視困難な予兆波7を示す。
【0021】
図2に目視困難な予兆波7を拡大し、グラフ表示を増幅する実施形態を説明する。
X軸を時間軸10、Y軸を電位軸9とし、アナログデーターの心電位波形をデジタルデーターに変換した時のサンプリング周波数によるデーター点毎にX軸Y軸の分割線13を描く。予兆波7付近のデーターを第1基点データー点14とし、直前のデーター点15と直線A16で結びその延長線A17を得る。第1基点データー点14の直後のデーター点が延長線A17上にない場合は第1基点データー点14の直後のデーター点を第2基点データー点18とする。第2基点データー点18の直後のデーター点19と直線B20で結びその延長線B21を得る。延長線17と延長線21の交点を新たなデーター点22として求め、第1基点データー点14と第2基点データー点18の間のグラフ表示点とする。


図1に示す、心電位波形のP波のスタート点11からU波の終点12までの1周期間のデーター点毎にこの処理を繰返す。以降、発生周期毎に同様の処理を繰返す。
【0022】
また、新たなグラフ表示点群は本来のデーター群に加えてP波のスタート点11よりU波の終点12までの増幅表示点として新たなデーター点22を得る構成とする。
【0023】
以下、上記構成の動作を説明する。新たなデーター点22の増幅点はX軸の時間軸に対し、図1の本来のデーター群と時系列に表示するもとし、観察困難な予兆波7以外の部分では単にY軸の電位軸に対し膨らんだグラフの形状となる。また、交点を得ることが出来ない。それに対し予兆波7の近辺のデーターは予兆波7の形状を増幅した結果となり観察可能な状態となり得る。
【0024】
更に、図1の本来のデーター群によるグラフと新たなデーター点22の増幅点によるグラフのスタート点11を同じくして表示することによって、2つのグラフの比較が可能となりP波1U波6の付近における表示傾向が顕著に違いのある部分の観察を促すことが可能となる。また、QRS波のQR間の違いについても観察の機会を得る効果が得られるものである。
【実施例】
【0025】
本発明は、携帯ホルター心電位測定において得られる心電位波形で明確に観察し得ない微小な波形を増幅表示することによって、診察現場における初動観察を実現し心臓疾患の早期発見治療に至る医療判断を可能とする例を挙げることができる。
また、増幅表示によって得られる心房・心室細動の波形を自動的に抽出するソフトウェアーと連動することによって患者自身が自主的に初動観察データーを医師に提示し診断を得るシステムの構築が対象にあげられる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
現在、心臓疾患は3大疾病とされ増加の一途をたどっている。しかし、心臓疾患の多様性と患者の日常生活における心電位測定電極の着脱の制限があり、常時測定による心臓活動の初動観察による早期不調の適切な診断を得ることは難しいとされている。しかしながら、心臓疾患の減少には早期発見治療による患者の生活・食習慣の改善に期待しなくてはならない。その為には、患者自身に疾患が進行した段階ではなく初期の不整脈傾向が現れた段階で改善治療及び指導を行い、早期治療認識を持つことが必要不可欠となる。本発明を用いて心電位波形の微細な部分の初動観察を可能とすることによって携帯ホルター心電位計による診断が慎重かつ容易となり、心臓疾患のより精密な検査への展開の機会を得ると同時に患者の不安を解消し、心臓疾患の予防医療に貢献できることと、患者自身の医療情報を患者の所有権の下管理することが出来ることにより、患者の医療知識増進と適確な健康管理による医療費削減に貢献できることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】予兆波の発生がある心電位波形図
【図2】予兆波増幅の説明図
【図3】拡大増幅の条件を示すフローチャート系統図
【図4】従来の心電図データーのデジタル化グラフ
【図5】デジタル化データーの特性図 5
【符号の説明】
【0028】
1 P波 2 Q点
3 R点 4 S点
5 T波 6 U波
7 予兆波 8 1周期(1〜1.5Hz)
9 電位軸 10 時間軸
11 スタート点 12 終点
13 分割線 14 第1基点データー点
15 直前のデーター点 16 直線
17 延長線 18 第2基点データー点
19 直後のデーター点 20 直線
21 延長線 22 新たなデーター点(増幅点)
23 正常波部分 24 微細波発生部分
25 電位減少部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療アナログデーターをデジタル変換の後X軸を時間軸とし、Y軸を電位量とした直交座標のグラフ表示をしたとき、表示する任意の各データーを第1基点データーとし、第1基点データーと直前のデーターの各点を結びそのプラス方向、及び、マイナス方向の延長直線とX軸との角度を求め各データーの方向成分を定める。
【請求項2】
第1基点データーの直後のデーターが請求項1で求めた延長直線1上にない場合は、直後のデーターを第2基点データーとしてその次のデーターとの各点を結びその延長直線2を求め、延長直線1と延長直線2の交点を新たなデーターとしグラフ表示のデーター点とする。
【請求項3】
X軸の時間軸の経過と共に、デジタル変換時の各データーを時系列に請求項1と請求項2の処理を繰返すことによって電位量を増幅したデーター点のグラフ表示を行う。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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