説明

医療台における支脚器支持構造

【課題】 比較的簡単な構成で操作も比較的簡単であるにもかかわらず、人が支脚器22の内側付近に容易に近づくことができる、医療台における支脚器支持構造を提供する。
【解決手段】 支脚器22が方向転換機構31を介して取り付けられている支持アーム20が、第1の支持アーム部52と、第2の支持アーム部53と、両者の間に介在している連結部とを備えている。そして、第2の支持アーム部53の往動によって、通常の支脚器使用状態にある支脚器22が、医療台の中心線から遠ざかった第2の支脚器使用状態まで往動するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の脚部を支持するための支脚器と、この支脚器が方向転換機構を介して取り付けられている支持アームと、この支持アームが往復動可能に取り付けられている基枠とを備え、上記支脚器が上記方向転換機構において方向転換し得るように構成され、上記支脚器の中間復動位置などの復動位置から通常の支脚器使用状態(換言すれば、患者が開脚姿勢などのために本来の支脚器として用いることができる高さ位置などにある状態)としての往動位置までの往動が、上記支持アームの往動を伴って行われるように構成された、医療台における支脚器支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、上述のような支脚器支持構造を備えている分娩台(以下、「特許文献1の分娩台」という。)が開示されている。そして、この特許文献1の分娩台における支脚器支持構造においては、医療台の取扱者が、分娩台のベッド状態においてベッド部分の補助台として用いられている支脚器を手で持って復動位置から通常の支脚器使用状態まで迅速に往動させることができる。具体的には、この往動は、ベッド部分の補助台として用いられている支脚器がその上側表面を変更させるための第1の向き変え動作と、支脚器がその基端部側に対してその先端部側を下降させる第2の向き変え動作とを方向転換機構でもって行うことを含んでいる。さらに、上記往動は、支脚器が上昇するように支持アームを往回動させる上昇動作も含んでいる。このために、ベッド部分の補助台として用いられる復動位置から通常の支脚器使用状態である往動位置まで支脚器を往動させるための複雑な動作を円滑に行うことができる。したがって、上記取扱者は、自分自身や医療台を使用する患者などの医療台の周囲の人に危険が及ばないように、支脚器を迅速に往動させることが可能であるので、緊急の分娩開始などの緊急の診療事態に合わせて、支脚器を復動位置から支脚器使用状態に安全かつ迅速に移行させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のように構成された、特許文献1の分娩台における支脚器支持構造において、通常の支脚器使用状態における左右一対の支脚器のうちのいずれか一方または両方を分娩台の前後方向に延在する中心線からさらに移動させたい場合がある。このような場合は、お産の介助者が、分娩によって患者から生まれ出てくる新生児を分娩台の児受け台の側面から受け取る場合を含んでいる。なぜならば、このようなお産の介助の場合には、介助者が右側または左側の支脚器と児受け台とのほぼ中間の位置に入りやすくするために、支脚器のうちのいずれか一方または両方を、その開き角度をさらに大きくすることなどによって、上記中心線からさらに外側に移動させるのが望ましいからである。
【0005】
本発明は、特許文献1の分娩台における支脚器支持構造の上述のような欠点を、比較的簡単な構成でもって、効果的に是正し得るようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、患者の脚部を支持するための支脚器と、この支脚器が方向転換機構を介して取り付けられている支持アームと、この支持アームが往復動可能に取り付けられている基枠とを備え、上記支脚器が上記方向転換機構でもって方向転換し得るように構成され、上記支脚器の復動位置から通常の支脚器使用状態としての往動位置までの往動が、上記支持アームの往動を伴って行われるように構成されている、医療台における支脚器支持構造において、上記支持アームが、その基端部側の第1の支持アーム部と、その先端部側の第2の支持アーム部と、上記第2の支持アーム部を上記第1の支持アーム部に対して往復動可能に上記第1の支持アーム部に連結している連結部とを備え、上記第2の支持アーム部が上記第1の支持アーム部に対して往動することによって、上記通常の支脚器使用状態としての上記往動位置にある上記支脚器が、上記医療台の前後方向に延在する中心線から平面的に見て遠ざかった第2の支脚器使用状態まで往動するように構成されたことを特徴とする支脚器支持構造に係るものである。
【0007】
そして、本発明は、その第1の実施態様においては、上記連結部が、上記第2の支持アーム部を上記第1の支持アーム部に対する復動位置にロックするロック手段を備え、上記ロック手段に対してロック解除操作を行うことによって、上記第1の支持アーム部に対する上記第2の支持アーム部の上記ロックが解除されるように構成されているのが好ましい。また、本発明は、その第2の実施態様においては、上記第2の支持アーム部が、上記第1の支持アーム部に往復回動可能に軸支されているのが好ましい。なお、上記第1および第2の実施態様においては、上記ロック手段が、上記第1の支持アーム部および上記第2の支持アーム部のうちのいずれか一方にその中間部を回動可能に軸支されたほぼL字形状のロックレバーを含み、上記ロックレバーの一端部に設けられた係合部が上記第1の支持アーム部および上記第2の支持アーム部のうちの他方に設けられた係合用凹部に係合することによって、上記第2の支持アーム部が、上記第1の支持アーム部に対してロックされるように構成され、上記ロックレバーの他端部から構成されたロック解除操作部を操作することによって、上記第1の支持アーム部に対する上記第2の支持アーム部のロックが解除されるように構成されているのが好ましい。
【0008】
そして、本発明は、その第3の実施態様においては、上記支脚器の上記復動位置が中間復動位置であり、上記支脚器が、上記中間復動位置から第2の復動位置までさらに復動することができるように構成され、上記支脚器が、上記第2の復動位置においては、ベッド部分の補助台として機能するように構成されているのが好ましい。なお、上記第3の実施態様においては、上記支脚器の上記第2の復動位置から上記往動位置への往動動作が、上記支脚器がその上側表面を変更させるための第1の向き変え動作と、上記支脚器がその基端部側に対してその先端部側を下降させる第2の向き変え動作と、上記支脚器が上記支持アームの往回動によって持ち上げられる動作とを含んでいるのが好ましい。この場合、上記第2の復動位置においては、上記支脚器の上記上側表面が、上記補助台の上側表面として機能することができるように、ほぼ平坦な面に構成され、上記支脚器が上記第1の向き変え動作を行った後には、上記支脚器の上記上側表面が、上記ほぼ平坦な面から、凹部を有する脚乗せ面に変更されるように構成されているのが好ましい。
【0009】
さらに、本発明は、その第4の実施態様においては、上記医療台の前後方向に延在する中心線と上記支脚器との間の平面的に見た最短距離を、上記通常の支脚器使用状態においては第1の最短距離とするとともに、上記第2の支脚器使用状態においては第2の最短距離としたときに、上記第1の最短距離に対する上記第2の最短距離の比が、1.10〜1.40(さらに好ましくは、1.15〜1.35)の範囲であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、通常の支脚器使用状態にある支脚器を、支脚器用支持アームに方向転換機構とは別に設けた連結部でもって、医療台の前後方向に延在する中心線から見て遠ざかった第2の支脚器使用状態まで往動させることができる。したがって、比較的簡単な構成で操作も比較的簡単であるにもかかわらず、人が支脚器の内側付近に容易に近づけるようにすることができ、例えば、本発明を分娩台に適用した場合には、お産の介助者は、支脚器と児受け台とのほぼ中間の位置に入りやすいから、分娩によって患者から生まれ出てくる新生児を分娩台の児受け台の側面からでも容易に受け取ることができる。
【0011】
そして、請求項2に係る発明によれば、通常の支脚器使用状態にある支脚器が第2の支脚器使用状態まで不測に往動するのを比較的簡単な構成でもって、効果的に防止することができる。また、請求項3に係る発明によれば、第1の支持アーム部に対する第2の支持アーム部の往復動を、比較的簡単な構成でもって、比較的円滑に行うことができる。さらに、請求項4に係る発明によれば、第1の支持アーム部に対する第2の支持アーム部の往復回動や、通常の支脚器使用状態から第2の支脚器使用状態までの支脚器の不測の往動を、できるだけ簡単な構成でもって、できるだけ円滑に行うことができる。
【0012】
また、請求項5に係る発明によれば、支脚器をベッド部分の補助台として使用することができるから、ベッド部分の構成を合理化することができ、しかも、患者をベッド部分に容易に導入させることができる。
【0013】
また、請求項6に係る発明によれば、支脚器がその上側表面を変更させるための第1の向き変え動作と、支脚器がその基端部側に対してその先端部側を下降させる第2の向き変え動作とがそれぞれ行われるから、支脚器の第2の復動位置から往動位置への複雑な往動動作を比較的円滑に行うことができる。
【0014】
また、請求項7に係る発明によれば、支脚器が、ベッド部分の補助台としての機能と、本来の支脚器としての機能との両方を、比較的良好に発揮することができる。
【0015】
さらに、請求項8に係る発明によれば、患者に対して肉体的および精神的に過度の負担を与えることがないにもかかわらず、お産の介助者は、支脚器と児受け台とのほぼ中間の位置に容易に入ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を分娩台に適用した一実施例における分娩台のベッド状態での概略的な斜視図である。(実施例1)
【図2】図1の分娩台の、図1と同様のベッド状態での右側面図である。(実施例1)
【図3】図1の分娩台の、図1と同様のベッド状態での平面図である。(実施例1)
【図4】図1の分娩台の第1の支脚器使用状態での右側面図である。(実施例1)
【図5】図1の分娩台の、図4と同様の第1の支脚器使用状態での平面図である。(実施例1)
【図6】図1の分娩台の第2の支脚器使用状態での平面図である。(実施例1)
【図7】図3に示す支脚器支持構造の概略的な平面図である。(実施例1)
【図8A】図5に示す右側支脚器用支持アームの要部の、図5と同様の第1の支脚器使用状態での水平断面図である。(実施例1)
【図8B】図6に示す右側支脚器用支持アームの要部の、図6と同様の第2の支脚器使用状態での水平断面図である。(実施例1)
【図9】図2に示す右側支脚器付近の、図2と同様のベッド状態での後面図である。(実施例1)
【図10】図9の右側支脚器付近の、図9に示すベッド状態から図14に示す支脚器使用状態に移行する第1の移行段階での後面図である。(実施例1)
【図11】図10の右側支脚器付近の左側面図である。(実施例1)
【図12】図9の右側支脚器付近の、図10に示す第1の移行段階から図14に示す第2の移行段階に移行する途中における第1の位置での左側面図である。(実施例1)
【図13】図9の右側支脚器付近の、図10に示す第1の移行段階から図14に示す第2の移行段階に移行する途中における第2の位置での左側面図である。(実施例1)
【図14】図9の右側支脚器付近の、図9に示すベッド状態から図14に示す支脚器使用状態に移行する第2の移行段階での後面図である。(実施例1)
【図15】図14の右側支脚器付近の左側面図である。(実施例1)
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
つぎに、本発明を分娩台に適用した一実施例を、「1、分娩台の概略的な構成」、「2、支脚器支持構造の構成」、「3、分娩台の概略的な動作」、「4、支脚器支持構造の動作」に項分けして、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
1、分娩台の概略的な構成
分娩台1は、図1、図2および図4に示すように、産科などの分娩室の床面上などに設置される第1の基枠としてのキャスタ付き下側基枠2を備えている。したがって、この下側基枠2は、例えばその四隅にそれぞれキャスタ3を有している。そして、これらのキャスタ3は、上記床面上などに配置されるように構成されている。さらに、キャスタ付き下側基枠2上には、第2の基枠としての昇降基枠4が、例えば前後一対の周知の昇降機構5a、5bを介して配設されている。なお、これらの昇降機構5a、5bは、例えば、モータ駆動される送りねじ機構であってよい。そして、昇降基枠4は、扁平な箱型形状の基枠本体(図示せず)を有していてよく、また、この基枠本体をそれぞれ被覆している上側カバー部6aおよび下側カバー部6bが互いに一体化されているカバー部材6を有していてよい。
【0019】
前側の昇降機構5aには、図2および図4に示すように、昇降基枠4の前側部分が、前側の支軸7によって、回動可能に軸支されている。また、後側の昇降機構5bには、昇降基枠4の後側部分が、後側の支軸(図示せず)によって、回動可能にかつ前後方向に移動可能に軸支されている。したがって、前側支軸7は、昇降基枠4の前側部分に設けられたほぼ円形状の孔に挿入されている。また、上記後側支軸は、昇降基枠4の後側部分にほぼ水平方向に延在するように設けられた長孔(図示せず)に挿入されている。
【0020】
昇降基枠4の前側部分の上端付近には、図1〜図6に示すように、患者の背部を支持するための背もたれ11の前端部が、支軸(図示せず)によって、回動可能に軸支されている。そして、昇降基枠4の後側部分には、背もたれ11を傾動させるための油圧シリンダなどの作動手段(図示せず)が、取り付け固定されている。また、上記作動手段の作動アームの先端部は、別の支軸によって、背もたれ11の前後方向におけるほぼ中間の部分に軸支されている。さらに、昇降基枠4の前端部付近には、図1〜図6に示すように、患者の臀部を支持するための座板10が、取り付け固定されている。
【0021】
昇降基枠4には、図1〜図6に示すように、2種類で合計3個の患者用ガードがそれぞれ取り付けられている。そして、1種類目のガードは、患者の頭部(換言すれば、背もたれ11の後端部)に対向するように、昇降基枠4の後端部に取り付けられた取り外し自在のヘッドボード12である。なお、このヘッドボード12は、患者が使用する枕などが背もたれ11から後方に落下するのを防止する機能を有している。そして、2種類目のガードは、患者の上半身の左右両側部(換言すれば、背もたれ11の左右両側部)に対向するように、昇降基枠4の左右両側部のうちの前後方向における中間部から後方部にかけて取り付けられた左右両側のサイドフェンス13a、13bである。なお、これら左右両側のサイドフェンス13a、13bは、患者などが分娩台(特に、ベッド状態にある分娩台)1から左側または右側に落下するのを防止する機能を有しているが、この場合には、特に取り外し自在には構成されてはいない。さらに、昇降基枠4の左右両側には、左右一対のフェンスガイド機構14が取り付けられている。そして、これら左右一対のフェンスガイド機構14は、左右一対のサイドフェンス13a、13bをそれぞれ上昇位置(図1に示す状態)または下降位置に選択的に位置保持させることができる。
【0022】
分娩台1が図1〜図3に示すベッド状態であるときには、座板10の前方には、後側の児受け台16および前側の児受け台15が、この座板10の前端付近に隣接して、順次配置される。そして、これらの後側児受け台16および前側児受け台15から成る児受け台17は、分娩台使用状態においては、下方に移動しているので、分娩によって患者から生まれ出てくる新生児を受けることができる。なお、この児受け台17の支持構造の構成および動作は、本発明の要旨ではないので、本文においては、それらの説明は適宜省略する。しかし、上記児受け台支持構造の構成および動作は、特許文献1の分娩台の場合と実質的に同一であることができる。また、分娩台1が図1〜図3に示すベッド状態であるときには、児受け台17の左右両側には、左右一対の支脚器21、22が、この児受け台17に隣接して、それぞれ配置される。さらに、図1〜図7における符号20は、左右一対の支脚器21、22を昇降基枠4にそれぞれ取り付けるための左右一対の支脚器用支持アームを示している。そして、これら左右一対の支持アーム20のそれぞれの先端部には、左右一対の支脚器21、22がそれぞれ取り付けられている。なお、これら左右一対の支脚器21、22の支持構造の構成については、次項の「2、支脚器支持構造の構成」において詳述する。
【0023】
分娩台1は、図1〜図6に示すように、座板10の左右両側にそれぞれ隣接している左右一対のグリップ装置23、24を備えている。そして、これら左右一対のグリップ装置23、24のそれぞれは、昇降基枠4に円筒状などの取り付け部材28を介して取り付け固定される円筒状などの被取り付け部材27と、この被取り付け部材27に連結機構25を介して回動可能に連結されているグリップ部材26とを備えていてよい。なお、これら左右一対のグリップ部材26は、図4に示す起立状態においては、患者のための怒責グリップとして機能する。また、これら左右一対のグリップ部材26のそれぞれは、図1〜図3、図5および図6に示すように、取扱者が座板10の左側また右側に収納された倒伏状態まで手動でもって回動させることができるように構成されている。
【0024】
2、支脚器支持構造の構成
左側支脚器21の支持構造と右側支脚器22の支持構造とは、図5などに示すように、分娩台1の前後方向に延在する中心線L(図3、図5および図6参照)を対称軸として、実質的に互いに左右対称的に構成されている。したがって、以下において、右側支脚器22の支持構造の構成について図7〜図15を参照しつつ説明し、左側支脚器21の支持構造の構成についての説明は、適宜省略する。
【0025】
分娩台1が図1〜図3に示す支脚器不使用状態としてのベッド状態であるときの右側支脚器22が、図7および図9に示されている。そして、この右側支脚器22は、図7および図9に示すように、方向転換機構31を介して右側支脚器用の右側支持アーム20の一端部側(換言すれば、先端部側)に連結されている。また、この支持アーム20の他端部側(換言すれば、基端部側)は、図2および図7に示すように、昇降基枠4に支軸33によって回動可能に軸支されている。さらに、支持アーム20の上記一端部側には、支軸(以下、「第1の軸」という。)34が固着されている。そして、この第1の軸34が軸受部材35の第1の軸受部36に回動可能に軸支されているので、軸受部材35は、支持アーム20の先端部に第1の軸34を介して回動可能に取り付けられている。なお、第1の軸34の軸心は、図1〜図3に示すベッド状態において、後方から前方に向かうにしたがって外方(換言すれば、右側)に向かって多少傾斜しているのが好ましい。このために、支持アーム20の先端部側には、屈曲部20aが設けられている。そして、第1の軸34がこの屈曲部20aに固着されている。また、第1の軸34の一端面には、ストッパ部材37が固着されている。そして、このストッパ部材37には、図9に示すように、支脚器フレーム41の復回動位置を規制することができるストッパ部38が設けられている。
【0026】
分娩台1が図1〜図3、図7および図9に示すベッド状態であるときには、分娩台1の前後方向に延在する中心線Lは、図示の実施例においては、支持アーム20の長さ方向に延在する中心線Lと実質的に同方向(換言すれば、ほぼ平行)である。なお、第1の軸34の軸心方向Lが中心線LまたはLと成す角度θ(図7参照)は、図示の実施例においては、図7に示すように平面的に見て約20°であり、図9に示すように側面的に見て約0°である。そして、上記角度θは、実用性の観点から見て一般的に、平面的に見て、10°〜30°の範囲であるのが好ましく、15°〜25°の範囲であるのがさらに好ましく、側面的に見て、−10°〜10°の範囲であるのが好ましく、−5°〜5°の範囲であるのがさらに好ましい。
【0027】
軸受部材35は、図7〜図15に示すように、第2の軸受部42をさらに備えている。そして、この第2の軸受部42には、支軸(以下、「第2の軸」という。)43が回動可能に軸支されている。また、この第2の軸43には、支脚器22が一体的に取り付けられている支脚器フレーム41が回動可能に軸支されている。この場合、支脚器フレーム41が第2の軸受部42(換言すれば、軸受部材35)に対して回動可能に構成されていれば、第2の支軸43が第2の軸受部42または支脚器フレーム41に固着されていてもよい。なお、第2の軸43の軸心は、図1〜図3に示すベッド状態においては、ほぼ垂直方向に延在していてよい。しかし、第2の軸43の軸心方向が、図1〜図3に示すベッド状態において、垂直方向に対していずれかの方向に多少傾斜していてもよい。そして、この傾斜角度は、実用性の観点から見て一般的に、0°〜10°の範囲であるのが好ましく、0°〜5°の範囲であるのがさらに好ましい。
【0028】
軸受部材35には、支脚器21が図5、図6、図14および図15に示す支脚器使用状態にあるときに、軸受部材35に対する支脚器フレーム41の回動をロックするロック機構44が設けられている。そして、このロック機構44は、図11などに示すように、上記ロックを解除するために操作される操作部材としての操作レバー45を備えている。また、この操作レバー45は、支軸49によって、支脚器フレーム41に回動可能に軸支されている。なお、ロック機構44は、操作レバー45に設けられた係合部としてのロックピン46と、ストッパ部材37に設けられた被係合部としての突起部47とから成る係合機構を備えていてよい。そして、ロックピン46は、支脚器フレーム41に設けられた長孔48に挿入されている。また、操作レバー45が支軸49を支点として往復回動するときには、ロックピン46が、長孔48にガイドされて、この長孔48の一端側と他端側との間を往復動するように構成されている。したがって、方向転換機構31は、第1および第2の軸34、43、軸受け部材35、支脚器フレーム41、ストッパ部材37、操作レバー45およびロック機構44を備えている。
【0029】
支脚器用支持アーム20の基端部は、図2に示すように、支軸33(その軸心は、図7において符号51で示されている。)によって、昇降基枠4に回動可能に軸支されている。なお、図2および図4に示す符号61は、支脚器22を図5および図6に示す支脚器使用状態からベッド状態に戻すときに、取扱者によって図2に示す反時計方向に往回動操作されるロック解除操作手段としてのロック解除操作レバーである。そして、このように往回動操作されたときには、支持アーム20は、ロック解除されるので、この支持アーム20、支脚器22などの自重などによって、支軸33を支点として図4の時計方向に図2に示す復回動位置まで復回動するように構成されている。また、支脚器用支持アーム20は、図7、図8Aおよび図8Bに示すように、基端部側の支持アーム部(以下、「第1の支持アーム部」という。)52と、先端部側の支持アーム部(以下、「第2の支持アーム部」という。)53と、第1の支持アーム部52と第2の支持アーム部53とを連結している連結部54とを備えている。そして、この連結部54は、第1の支持アーム部52に対して第2の支持アーム部53を回動可能に軸支している支軸55と、第1の支持アーム部52に対して第2の支持アーム部53を回動不能にロックすることができるロック手段またはロック部材としてのほぼL字形状のロックレバー56とを備えている。なお、このロックレバー56の中間部(換言すれば、屈曲部)は、支軸57によって、第2の支持アーム部53に回動可能に軸支されている。そして、このロックレバー56は、弾性付勢手段としての板ばねなどのばね58によって、図8Aにおける時計方向に弾性的に付勢されている。
【0030】
上述のとおりであるから、支脚器21、22が支持アーム20の先端部に取り付けられているとの既述の記載は、具体的には、支脚器21、22が支持アーム20のうちの第2のアーム部53の先端部に取り付けられていることを意味している。そして、支持アーム20の基端部側が昇降基枠4に支軸33によって回動可能に軸支されているとの既述の記載は、具体的には、支脚器21、22のうちの第1のアーム部52の基端部側が昇降基枠4に支軸33によって回動可能に軸支されていることを意味している。また、軸受部材35が支持アーム20の先端部に第1の軸34を介して回動可能に取り付けられているとの既述の記載は、具体的には、軸受部材35が第2のアーム部53の先端部に第1の軸34を介して回動可能に取り付けられていることを意味している。さらに、以上において記述した支脚器支持構造の構成以外の支脚器支持構造の構成は、特許文献1の分娩台の場合と実質的に同一であることができる。
【0031】
3、分娩台の概略的な動作
分娩台1が図1〜図3に示す通常のベッド状態にあるときには、背もたれ11は、ほぼ水平な状態に倒伏している。この場合、取扱者が所定のスイッチ(図示せず)を操作することによって、前記作動手段の前記作動アームが次第に伸長するので、背もたれ11を前方に向かって任意の角度で傾斜した起立位置まで持ち来すことができる。また、取扱者は、所定のスイッチ(図示せず)を操作することによって、この起立動作とは逆の倒伏動作を背もたれ11に行わせることもできる。
【0032】
分娩台1が図1〜図3に示す通常のベッド状態にあるときに、取扱者は、左右一対の支脚器21、22のそれぞれを、図4において鎖線で示すように、順次または同時に支脚器使用状態に移行させることができる。この場合、取扱者が、まず、支脚器21、22のそれぞれを手で持って、これらの支脚器21、22の長さ方向にほぼ沿って延在している第1の回動中心(換言すれば、図7に示す第1の軸34)を支点としてほぼ90°往回動させると、支脚器21、22は、第1の移行段階に移行する。ついで、取扱者が、支脚器用支持アーム20の先端部においてほぼ左右方向に延在している第2の回動中心(換言すれば、図7に示す第2の軸43)を支点として、支脚器21、22を自重などにより図2における時計方向に往回動させると、支脚器21、22は、第2の移行段階に移行する。ついで、取扱者が、左右一対の支脚器21、22のそれぞれを手で持ち上げると、支脚器用支持アーム20が上記第3の回動中心(換言すれば、図4に示す支軸33)を支点として図4の反時計方向に往回動する。このために、これらの支脚器21、22のそれぞれは、図4において実線または鎖線に示すように、適当な高さの支脚器使用状態に持ち来される。なお、ベッド部分の補助台状態から支脚器使用状態への支脚器21、22の上述のような往動とは逆の復動も、図4に示すロック解除操作レバー61を前述のように往回動操作してから、同様に行うことができる。なお、この支脚器21、22の支持構造の動作については、次項の「4、支脚器支持構造の動作」において、さらに詳述する。
【0033】
一方、取扱者は、分娩台1が図1〜図3に示すベッド状態にあるときにはベッド部分の補助台として機能している児受け台17を、本来の児受け台として機能させることができる。この場合、取扱者が、第1のロック解除用操作部を操作状態にしたままで、図1〜図4に示す上昇位置にある児受け台17の上面を手で下方に押して左右一対のリンク機構を作動させると、児受け台17が下降位置まで往動して第1の児受け台使用状態になる。そして、取扱者が、第2のロック解除用操作部を操作状態にしたままで、前方位置にある児受け台17を後方に向かって手で押すことにより児受け台17を後進させれば、後側児受け台16が昇降基枠4内に移動するので、児受け台17は、第2の児受け台使用状態になる。また、児受け台17のベッド部分の補助台状態から第2の児受け台使用状態への上述のような往動とは逆の復動も、同様に行うことができる。なお、本項(すなわち、「3、分娩台の概略的な動作」の項)においてそれぞれ上述した背もたれ11の動作は、特許文献1の分娩台の場合と実質的に同一の構成でもって、同様に行われるものであってよい。
【0034】
図1〜図3、図5および図6においては、左右一対のグリップ装置23、24のそれぞれのグリップ部材26は、倒伏した状態(換言すれば、収納された状態であって、グリップ不使用状態)で示されている。そして、この倒伏状態にある左右一対のグリップ部材26は、連結部25からほぼ水平な状態で前方に向かって延在しているので、分娩台1のベッド状態においては、このベッド部分(具体的には、座板10)の左側面および右側面にそれぞれ隣接している。したがって、患者が分娩台1に乗ったり分娩台1から降りたりするときに、グリップ部材26(換言すれば、グリップ装置23、24)を跨いでも、患者の衣服類がグリップ部材26に引っ掛かるおそれがない。
【0035】
図1〜図3、図5および図6に示すグリップ不使用状態において、患者、看護師などの取扱者が、グリップ部材26を手で握ってから、連結機構25を支点として図2における反時計方向に往回動させると、グリップ装置23は、図4に示すグリップ使用状態へと移行する。なお、図4においては、グリップ部材26は、起立した状態(換言すれば、本来のグリップ部材26の状態であって、グリップ使用状態)になっている。そして、左右一対のグリップ装置23、24の左右一対のグリップ部材26は、分娩台1(具体的には、座板10)の左右両側に起立状態でそれぞれ隣接している。したがって、分娩台1を使用する患者は、左右一対のグリップ部材26を怒責グリップなどとして有効に利用することができる。また、取扱者がロック解除したときには、取扱者は、左右一対のグリップ部材26のそれぞれを、自重などによって、起立状態から倒伏状態に復動させることができる。
【0036】
4、支脚器支持構造の動作
左側支脚器21の支持構造と右側支脚器22の支持構造とは、分娩台1の前後方向に延在する中心線Lを対称軸(図3、図5および図6参照)として、個別にではあるが、実質的に互いに左右対称的な動作を行う。したがって、以下において、右側支脚器22の支持構造の動作については、図7〜図15を参照しつつ詳細に説明し、左側支脚器21の支持構造の動作についての具体的な説明は、適宜省略する。
【0037】
分娩台1が図1〜図3に示すベッド状態にあるときに、分娩台1の取扱者は、左右一対の支脚器21、22を順次または同時に図4〜図6に示す支脚器使用状態に移行させることができる。この点を右側支脚器22について説明すると、取扱者は、まず、図1〜図3、図7および図9に示す状態にある右側支脚器22を手で掴んで第1の軸34の軸心Lを支点としてほぼ外側(すなわち、ほぼ右側)に向かってほぼ90°往回動させることによって、右側支脚器22を図10および図11に示す第1の移行段階に移行させる。なお、分娩台1が図1〜図3に示すベッド状態にあるときには、図7および図9に示すように、支脚器フレーム41の被ストッパ部62がストッパ部材37のストッパ部38に当接することによって、第1の軸34の軸心Lを支点とする支脚器フレーム41の復回動方向の位置が規制されている。そして、上述のように右側支脚器22がほぼ90°往回動すると、図10に示すように、軸受部材35の被ストッパ部64がストッパ部材37のストッパ部65に当接することによって、支脚器フレーム41の往回動方向の位置が規制される。また、この状態においては、右側支脚器22の脚乗せ面66が図11に示すようにほぼ上方に向けられる。
【0038】
分娩台1が図1〜図3に示すベッド状態にあるときには、左側および右側支脚器21、22は、ベッド部分67の補助台として機能し得るように、ほぼ平坦な面68を上側表面にしている。したがって、このベッド状態にあるときには、背もたれ11、座板10、児受け台17および左右一対の支脚器21、22のそれぞれの上側表面は、図1〜図3に示すように、互いにほぼ同一の高さであるとともに、ほぼ平坦であるので、ベッド部分67は、全体として、ほぼ平坦な上側表面を有している。そして、左側および右側支脚器21、22は、上述のようにほぼ90°往回動して図10および図11に示す第1の移行段階に移行したときには、患者の脚部を乗せるのに適した凹部71を有する脚乗せ面66を上側表面にする。なお、右側支脚器22が第1の軸34を支点として往回動する角度は、図示の実施例においては、約90°である。そして、上記往回動の角度は、実用性の観点から見て一般的に、80°〜100°の範囲であるのが好ましく、85°〜95°の範囲であるのがさらに好ましい。
【0039】
ついで、取扱者が図10および図11に示すように第1の移行段階にある右側支脚器22を手で持ったままで自重などによって往動させると、右側支脚器22は、第2の軸43を支点として、図10および図11に示す第1の移行段階の位置から図12に示す第1の位置および図13に示す第2の位置をそれぞれ経由して図14および図15に示す第2の移行段階の位置へと図11の反時計方向に往回動する。そして、この状態においては、支脚器フレーム41の被ストッパ部がストッパ部材37のストッパ部に当接することによって、支脚器フレーム41の往回動方向の位置が規制される。これと同時に、操作レバー45のロックピン46はk、ストッパ部材37の突起部47に図12に示すように当接することによって、図13に示す状態を経由してから、この突起部47を図15に示すように乗り越えて、この突起部47に係合する。このために、操作レバー45は、ストッパ部材37(ひいては、第2の支持アーム部53)にロックされる。
【0040】
図1〜図3に示す分娩台1のベッド状態や、右側支脚器22の図10および図11に示す第1の移行段階ならびに図14および図15に示す第2の移行段階においては、支持アーム20を支軸33を支点として特には往回動させてはいないので、右側支脚器22はまだ支脚器使用状態にはなっていない。また、左側および右側支脚器21、22が第2の軸43を支点として往回動する角度θ(図示しないが、図12の場合と図15の場合との第2の支持アーム部53に対する支脚器21、22の角度差を意味している。)は、図示の実施例においては、約58°である。そして、上記往回動の角度θは、実用性の観点から見て一般的に、40°〜75°の範囲であるのが好ましく、50°〜65°の範囲であるのがさらに好ましい。
【0041】
ついで、取扱者が図15に示す第2の移行段階にある右側支脚器22を支軸33(図2参照)を支点として手で適当な高さまでほぼ上方へ持ち上げると、図4および図5に示す第1の支脚器使用状態が得られる。この場合、右側支脚器22と支持アーム20との間に介在している方向転換機構31は、右側支脚器22と同様に単に往回動するだけであって、特に別の動作をすることはない。なお、図4および図5に示す第1の支脚器使用状態(図6に示す後述の第2の支脚器使用状態においても同じ)において、支持アーム20が支軸33を支点として、例えばほぼ水平な復回動位置から往回動する角度は、その最大往回動角度θ(図4参照)を規制されているのが好ましい。このために、支持アーム20の復回動位置を規制するための復回動用の被ストッパ部と、支持アーム20の最大往回動位置を規制するための往回動用の被ストッパ部とが、支持アーム20にそれぞれ配設されている。また、昇降基枠4には、これら2種類の被ストッパ部がそれぞれ当接して位置規制されるストッパ部が配設されている。なお、支持アーム20が図2に示す復回動位置から支軸33を支点として往回動する最大往回動角度θは、図示の実施例においては、約50°である。そして、上記最大往回動角度θは、実用性の観点から見て一般的に、40°〜60°の範囲であるのが好ましく、45°〜55°の範囲であるのがさらに好ましい。また、図2に示す復回動位置にある支持アーム20の長さ方向に延在する中心線L(図7参照)が分娩台1の前後方向に延在する中心線Lと成す角度(具体的には、側方から見た角度)は、図示の実施例においては、ほぼ0°である。そして、この中心線Lが中心線Lと成す上記角度は、実用性の観点から見て一般的に、−10°〜10°の範囲であるのが好ましく、−5°〜5°の範囲であるのがさらに好ましい。
【0042】
図4および図5に示す第1の支脚器使用状態において、右側支脚器22を図1〜図3に示すベッド状態に戻すときには、取扱者は、まず、図4に示す操作レバー61を前述のように往回動させる。この往回動によって、支持アーム20は、ロック解除されるので、この支持アーム20、右側支脚器22などの自重などによって、支軸33を支点として図4の時計方向に図2に示す復回動位置まで復回動する。この復回動の際に、この復回動が急激に行われないためのダンパ(図示せず)を設けることができる。この結果、右側支脚器22は、図4および図5に示す第1の支脚器使用状態から図14および図15に示す前記第2の移行段階へと移行する。この移行の際には、図7に示すように右側支脚器22と支持アーム20との間に介在している方向転換機構31は、右側支脚器22と同様に単に復回動するだけであって、特に別の動作を行うことはない。
【0043】
右側支脚器22が図14および図15に示す第2の移行段階から図10および図11に示す第1の移行段階に移行するときには、右側支脚器22の支持構造においては、この第1の移行段階から上記第2の移行段階に移行するときとはほぼ逆の動作が行われる。また、右側支脚器22が図10および図11に示す第1の移行段階から図1〜図3および図9に示すベッド状態に移行するときには、右側支脚器22の支持構造においては、このベッド状態から上記第1の移行段階に移行するときとは、ちょうど逆の動作が行われる。
【0044】
右側支脚器22が図14および図15に示す第2の移行段階から図10および図11に示す第1の移行段階に移行するときの右側支脚器22の支持構造の動作について、以下において具体的に説明する。この場合、取扱者が、ロック解除操作レバー45の操作部45aを手で掴んでから、この操作レバー45を支軸49を支点として図15における時計方向に回動させると、ロックピン46が、図13に示すようにストッパ部材37の突起部47を乗り越えるので、図12に示すように突起部47によるロックを解除され、このために、ストッパ部材37による支脚器フレーム41のロックが解除される。したがって、その後は、右側支脚器22の支持構造においては、第1の移行段階から第2の移行段階に移行するときとはちょうど逆の動作が行われて、第1の移行段階が得られる。
【0045】
図4および図5に示す第1の支脚器使用状態において、左右一対の支脚器21、22のうちのいずれか一方または両方を分娩台1の中心線Lからさらに外側に移動させたい場合がある。このような場合は、お産の介助者が分娩によって患者から生まれ出てくる新生児を分娩台1の児受け台17の側面から受け取る場合を含んでいる。なぜならば、このようなお産の介助の場合には、介助者が右側または左側の支脚器21、22と児受け台17とのほぼ中間の位置に入りやすくするために、支脚器21、22のうちのいずれか一方または両方を、その開き角度をさらに大きくすることなどによって、中心線Lからさらに外側に移動させるのが望ましいからである。
【0046】
つぎに、支脚器21、22のうちのいずれか一方または両方を分娩台1の中心線Lからさらに外側に移動させる点について、図7、図8A、図8Bなどを参照しつつ説明する。この場合、図4および図5に示す通常の支脚器使用状態としての第1の支脚器使用状態においては、支脚器支持アーム20の第1の支持アーム部52と第2の支持アーム部53とは、図7および図8Aに示すように、平面的に見てほぼ一直線状に配置されている。そして、この状態においては、取扱者が、ロックレバー56の操作部56aを手で掴んでから、このロックレバー56を板ばね58の弾性付勢力に逆らって支軸57を支点として図8Aの反時計方向に往回動させることができる。また、この往回動によって、第1の支持アーム部52の係合用凹部72に係合していたロックレバー56の係合部56bが、この係合用凹部72から離脱するので、第1の支持アーム部52に対する第2の支持アーム部53のロックが解除される。そして、このロック解除状態においては、取扱者は、第1の支持アーム部52に対して、第2の支持アーム部53を支軸55を支点として図8Aの時計方向に第2の支持アーム部53の自重などにより往回動させることができる。このために、図8Bなどに示すように、支脚器21、22のうちのいずれか一方または両方を、中心線Lからさらに外側に向かって、ほぼ水平方向に移動させることができるので、図6に示す特殊な支脚器使用状態としての第2の支脚器使用状態が得られる。なお、このような第2の支持アーム部53の往回動は、第2の支持アーム部53の被ストッパ部73が第1の支持アーム部52のストッパ部74に当接するまで、第2の支持アーム部53の自重などによって行われる。したがって、お産の介助者は、右側または左側の支脚器21、22と児受け台17とのほぼ中間の位置に入ってから、分娩によって患者から生まれ出てくる新生児を受け取ることができる。
【0047】
右側または左側の支脚器21、22を図6に示す第2の支脚器使用状態から図4および図5に示す第1の支脚器使用状態に移行させるときには、取扱者が、支脚器21、22を手で持ってから、外側から内側に向かって移動させればよい。この場合、第2の支持アーム部53が、図8Aに示すように、第1の支持アーム部52とほぼ一直線状になるので、ロックレバー56は、板ばね58の弾性付勢力によって、支軸57を支点として図8Bに示す時計方向に回動し、このために、図8Aに示す第1の支脚器使用状態が得られる。
【0048】
図6および図8Bに示す第2の支脚器使用状態において、第1の支持アーム部52の長さ方向(換言すれば、線分L)に対して第2の支持アーム部53の長さ方向が成す角度θ(図8B参照)は、図示の実施例においては、平面的に見て約15°である。そして、上記角度θは、実用性の観点から見て一般的に、平面的に見て、10°〜20°の範囲であるのが好ましく、12°〜18°の範囲であるのがさらに好ましい。また、図示の実施例においては、分娩台1の前後方向に延在する中心線Lと左側または右側の支脚器21、22とのそれぞれの最短距離は、平面的に見て、
(a)図3に示すベッド状態における最短距離Lが、約23cm、
(b)図5に示す第1の支脚器使用状態における最短距離Lが、約29cm、および
(c)図6に示す第2の支脚器使用状態における最短距離Lが、約36cm、
である。そして、上記(a)項〜(c)項に記載のそれぞれの最短距離L〜Lは、実用性の観点から見て一般的に、
(A)最短距離Lが、15〜30cm(18〜28cm)の範囲、
(B)最短距離Lが、18〜38cm(22〜36cm)の範囲、
(C)最短距離Lが、24〜48cm(28〜44cm)の範囲、
であるのが好ましい。なお、上記(A)項〜(C)項におけるかっこ内の記載は、さらに好ましい数値範囲である。さらに、上記(a)項に記載の最短距離Lに対する上記(c)項に記載の最短距離Lの比は、約1.55である。そして、この比(L/L)は、実用性の観点から見て一般的に、1.15〜1.95の範囲であるのが好ましく、1.25〜1.85の範囲であるのがさらに好ましい。また、上記(b)項に記載の最短距離Lに対する上記(c)項に記載の最短距離Lの比は、約1.25である。そして、この比(L/L)は、実用性の観点から見て一般的に、1.10〜1.40の範囲であるのが好ましく、1.15〜1.35の範囲であるのがさらに好ましい。
【0049】
以上において記述した支脚器支持構造の動作以外の支脚器支持構造の動作は、特許文献1の分娩台の場合と実質的に同一であることができる。
【0050】
以上において、本発明の一実施例について詳細に説明したが、本発明は、この実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に基づいて各種の変更および修正が可能である。
【0051】
例えば、上述の実施例においては、本発明を分娩台1に適用したが、本発明は、産婦人科用検診台などの検診台、その他の医療台にも適用することができる。
【0052】
また、上述の実施例においては、取扱者は、ベッド状態にある支脚器21、22を前記第1の移行段階および前記第2の移行段階を順次経由して第1の支脚器使用状態に往動させるようにした。しかし、取扱者は、ベッド状態にある支脚器21、22を第1の支脚器使用状態にするために支脚器21、22に各種の移行段階を経由させて第1の支脚器使用状態にすることができる。例えば、まず、ベッド状態にある支脚器21、22を上記第1の移行段階にし、つぎに、上記第2の移行段階から上記第1の支脚器使用状態に移行する場合と同様に、支持アーム20を往回動させて支脚器21、22を上昇させ、つぎに、上記第1の移行段階から上記第2の移行段階に移行する場合と同様に、支脚器21、22を第2の軸43を支点として往回動させることによって、第1の支脚器使用状態が得られるようにしてもよい。そして、この点は、支脚器21、22が第1の支脚器使用状態からベッド状態に移行する場合も同様である。さらに、第1の支持アーム部52に対する第2の支持アーム部53の往回動も、児受け台17が邪魔にならない位置にある限り、第1の支脚器使用状態以外の状態でも同様に行うことができる。
【0053】
また、上述の実施例においては、左側および右側の支脚器21、22の不使用状態が、分娩台1のベッド状態であるように構成したが、必ずしもこのように構成する必要はなく、ベッド状態以外の状態であってもよい。
【0054】
また、上述の実施例においては、ロックレバー56を第2の支持アーム部53に回動可能に軸支するようにしたが、ロックレバー56を第1の支持アーム部52に回動可能に軸支することもできる。
【0055】
さらに、上述の実施例においては、左側および右側の支脚器21、22の第2の支持アーム部53を第1の支持アーム部52に対して支軸55を支点として往復回動させるようにした。しかし、往復回動以外の他の往復動作(例えば、カムとカム溝とを用いた倣い動作)を行わせるようにしてもよい。また、この点は、昇降基枠4への支持アーム20の取り付け構造についても、同様に当てはまる。
【符号の説明】
【0056】
1 分娩台(医療台)
4 昇降基枠(第2の基枠)
20 支脚器用支持アーム
21 左側支脚器
22 右側支脚器
31 方向転換機構
52 基端部側の支持アーム部(第1の支持アーム部)
53 先端部側の支持アーム部(第2の支持アーム部)
54 連結部
56 ロックレバー(ロック手段、ロック部材)
56a ロック解除操作部
56b 係合部
66 脚乗せ面
67 ベッド部分
68 ほぼ平坦な面
71 凹部
72 係合用凹部
中心線
第1の最短距離
第2の最短距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の脚部を支持するための支脚器と、
この支脚器が方向転換機構を介して取り付けられている支持アームと、
この支持アームが往復動可能に取り付けられている基枠とを備え、
上記支脚器が上記方向転換機構でもって方向転換し得るように構成され、
上記支脚器の復動位置から通常の支脚器使用状態としての往動位置までの往動が、上記支持アームの往動を伴って行われるように構成されている、医療台における支脚器支持構造において、
上記支持アームが、その基端部側の第1の支持アーム部と、その先端部側の第2の支持アーム部と、上記第2の支持アーム部を上記第1の支持アーム部に対して往復動可能に上記第1の支持アーム部に連結している連結部とを備え、
上記第2の支持アーム部が上記第1の支持アーム部に対して往動することによって、上記通常の支脚器使用状態としての上記往動位置にある上記支脚器が、上記医療台の前後方向に延在する中心線から平面的に見て遠ざかった第2の支脚器使用状態まで往動するように構成されていることを特徴とする支脚器支持構造。
【請求項2】
上記連結部が、上記第2の支持アーム部を上記第1の支持アーム部に対する復動位置にロックするロック手段を備え、
上記ロック手段に対してロック解除操作を行うことによって、上記第1の支持アーム部に対する上記第2の支持アーム部の上記ロックが解除されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の支脚器支持構造。
【請求項3】
上記第2の支持アーム部が、上記第1の支持アーム部に往復回動可能に軸支されていることを特徴とする請求項1または2に記載の支脚器支持構造。
【請求項4】
上記ロック手段が、上記第1の支持アーム部および上記第2の支持アーム部のうちのいずれか一方にその中間部を回動可能に軸支されたほぼL字形状のロックレバーを含み、
上記ロックレバーの一端部に設けられた係合部が上記第1の支持アーム部および上記第2の支持アーム部のうちの他方に設けられた係合用凹部に係合することによって、上記第2の支持アーム部が、上記第1の支持アーム部に対してロックされるように構成され、
上記ロックレバーの他端部から構成されたロック解除操作部を操作することによって、上記第1の支持アーム部に対する上記第2の支持アーム部のロックが解除されるように構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の支脚器支持構造。
【請求項5】
上記支脚器の上記復動位置が中間復動位置であり、
上記支脚器が、上記中間復動位置から第2の復動位置までさらに復動することができるように構成され、
上記支脚器が、上記第2の復動位置においては、ベッド部分の補助台として機能するように構成されていることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載の支脚器支持構造。
【請求項6】
上記支脚器の上記第2の復動位置から上記往動位置への往動動作が、上記支脚器がその上側表面を変更させるための第1の向き変え動作と、上記支脚器がその基端部側に対してその先端部側を下降させる第2の向き変え動作と、上記支脚器が上記支持アームの往回動によって持ち上げられる動作とを含んでいることを特徴とする請求項5に記載の支脚器支持構造。
【請求項7】
上記第2の復動位置においては、上記支脚器の上記上側表面が、上記補助台の上側表面として機能することができるように、ほぼ平坦な面に構成され、
上記支脚器が上記第1の向き変え動作を行った後には、上記支脚器の上記上側表面が、上記ほぼ平坦な面から、凹部を有する脚乗せ面に変更されるように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の支脚器支持構造。
【請求項8】
上記医療台の前後方向に延在する中心線と上記支脚器との間の平面的に見た最短距離を、上記通常の支脚器使用状態においては第1の最短距離とするとともに、上記第2の支脚器使用状態においては第2の最短距離としたときに、上記第1の最短距離に対する上記第2の最短距離の比が、1.10〜1.40の範囲であることを特徴とする請求項1〜7のうちのいずれか1つに記載の支脚器支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−234970(P2011−234970A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110300(P2010−110300)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(390022541)アトムメディカル株式会社 (38)
【Fターム(参考)】