説明

医療用ガイドワイヤ

【課題】
医療用のガイドワイヤにおいて、先端部のU字屈曲からの復元性の向上、ガイドワイヤ使用時のガイドワイヤのU字屈曲発達の防止を達成することを目的とする。
【解決手段】
ガイドワイヤ1は、外側可撓管体4の内側でコアシャフト2の先端部22を囲う内側可撓管体5を備え、内側可撓管体5は、その先端51がコアシャフト2の先端から後端側に離間して位置するように配され、内側可撓管体5の先端51は、コアシャフト2に第1接合部6で接合されている。これにより、第1接合部6で剛性が高くなるので、ガイドワイヤ1の使用時に、血管等の管腔内でU字形状に屈曲しても、その屈曲は、剛性の高い第1接合部6の存在により発展しにくくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管、尿管、器官等へのカテーテルの挿入や、血管の動脈瘤形成部への体内留置具の挿入の際にガイドとして用いられる医療の分野に好適な医療用ガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用ガイドワイヤには、一般的に、先端側の柔軟性と、手元操作が先端側へ伝達しやすいこととが要求されている。
そこで、上記の要求を満たすべく、従来のガイドワイヤ100には、コアシャフト101の外周にコイルスプリング体102が外装されて構成され、コアシャフト101の先端部103を柔軟性向上のため細く加工したものがある(図8参照)。
【0003】
ところで、ガイドワイヤ100を用いてカテーテルや体内留置具等のデバイスを体内の目的部位まで誘導する際には、ガイドワイヤ100の先端部が血管内で意図せずU字形状に折れ曲がることがある。また、目的以外の血管への迷入を防止したり、復元力を利用して血管壁への係止力を高めたりするために、ガイドワイヤ100を予めU字形状に屈曲させて導入する手技もある。
【0004】
また、積極的にガイドワイヤ100をU字屈曲させて血管内への導入を行う手技では、ガイドワイヤ100が挿入される血管径や血管形状に応じて、ガイドワイヤ100のごく先端部分だけをU字屈曲させればいい場合や、ガイドワイヤ100の先端部分全体をU字屈曲させなければならない場合がある。
【0005】
ここで、従来のガイドワイヤ100では、コアシャフト101の先端部103を細くしているので剛性が低く、応力集中による屈曲が起こりやすい。そして、一度コアシャフト101がU字形状に折れ曲がってしまうと塑性変形してしまい、U字形状を解除しても残留角度が残る。そして、この残留角度により、その後のガイドワイヤ100の操作性が低下してしまい、ガイドワイヤ100を手術途中で交換しなければならない場合があった。
【0006】
尚、ガイドワイヤ100には、コアシャフト101の先端部103を撚線構造としたものがあるが(特許文献1参照)、このようなガイドワイヤ100では、屈曲状態からの復元性をある程度有するものの、曲率の大きなU字形状に屈曲した場合には、U字形状を解除しても復元せず、残留角度の問題は解決されなかった。
【0007】
また、ガイドワイヤ100には、コイルスプリング体102とコアシャフト101との間に放射線不透過性の内コイルを配したものがある(特許文献2、3参照)。このようなガイドワイヤ100では、内コイルがある部分ではガイドワイヤ100の先端部の剛性が向上するものの、やはりU字形状に折れ曲がった後の残留角度の問題は解決されなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−161491号公報
【特許文献2】特開平8−173547号公報
【特許文献3】特表2006−511304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、ガイドワイヤ先端部のU字屈曲からの復元性の向上、ガイドワイヤ使用時のガイドワイヤのU字屈曲発達の防止にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
〔請求項1の手段〕
請求項1に記載の医療用ガイドワイヤ(以下、ガイドワイヤと呼ぶ)は、細径の先端部を有するコアシャフトと、前記コアシャフトの外周を囲う外側可撓管体と、前記外側可撓管体の内側で前記コアシャフトの先端部を囲う内側可撓管体と、前記コアシャフトの先端と前記外側可撓管体の先端とを接合した先端接合部とを備えたものを対象として、特に、前記内側可撓管体の先端が前記コアシャフトの先端から後端側に離間して位置するように、前記内側可撓管体の先端と前記コアシャフトとを接合した第1接合部を備えたことを特徴とする。
【0011】
これによれば、内側可撓管体の先端がコアシャフトの先端から後端側に離間して位置するように、内側可撓管体の先端とコアシャフトとを接合した第1接合部を備えたので、医療用ガイドワイヤの使用時に、血管等の管腔内でU字形状に屈曲しても、その屈曲は、剛性の高い第1接合部の存在により、第1接合部より後端側には発展しにくくなる。すなわち、医療用ガイドワイヤが血管内で意図せず屈曲してしまった場合、使用者が手元で医療用ガイドワイヤを押し進めても、剛性の高い第1接合部の存在により、第1接合部の手前で屈曲が止まり、U字屈曲が発達してしまうことがない。この結果、U字屈曲の発達を、柔軟性に優れた医療用ガイドワイヤの先端部分にとどめることができる。つまり、高い復元性が確保された部分でU字屈曲されるので、医療用ガイドワイヤが屈曲したまま塑性変形してしまうことがなく、医療用ガイドワイヤの復元性が向上する。
【0012】
〔請求項2の手段〕
請求項2に記載のガイドワイヤは、請求項1に記載の医療用ガイドワイヤにおいて、前記内側可撓管体は、その外径が先端に向かって徐々に細くなるテーパ状を呈していることを特徴とする。
これによれば、先端に向かって内側可撓管体の剛性が徐々に低くなるため、ガイドワイヤを先端に向けて剛性が低くなる剛性徐変構造とすることができる。このため、剛性の急激な変化による応力集中の発生を低減することができる。また、内側可撓管体の先端側の径を細くすることで、ガイドワイヤの柔軟性が向上し、管腔末梢部への挿入性が向上する。
【0013】
〔請求項3の手段〕
請求項3に記載のガイドワイヤは、請求項1に記載の医療用ガイドワイヤにおいて、前記内側可撓管体は、その外径が先端に向かって段階的に細くなっていることを特徴とする。
これによれば、請求項2と同様にガイドワイヤを剛性徐変構造にすることができるとともに、管腔末梢部への挿入性を向上することができる。また、段階的に細くすることで、内側可撓管体の所望の位置を所望の剛性に設定することができる。
【0014】
〔請求項4の手段〕
請求項4に記載のガイドワイヤは、請求項2または3に記載の医療用ガイドワイヤにおいて、前記内側可撓管体は、その内径が先端から後端にかけて一定であることを特徴とする。
これによれば、コアシャフト及び撚線の内側可撓管体への挿入が容易となり、好適なガイドワイヤの組み付けを容易にすることができる。
【0015】
〔請求項5の手段〕
請求項5に記載のガイドワイヤは、請求項1〜4のいずれかに記載の医療用ガイドワイヤにおいて、前記内側可撓管体は、複数の金属素線を撚合してなる多条の中空撚線コイルであることを特徴とする。
これによれば、内側可撓管体を多条中空撚線コイルとすることで、単線コイルと比較して、トルク伝達性が向上する。このため、使用者の狙い通りにガイドワイヤが操作できるので、治療時間を短縮できる。
【0016】
〔請求項6の手段〕
請求項6に記載のガイドワイヤは、請求項1〜5のいずれかに記載の医療用ガイドワイヤにおいて、前記外側可撓管体は、単コイルであり、前記外側可撓管体の先端から所定距離範囲において、前記外側可撓管体の後端部よりも単コイルのピッチが広がったピッチ拡大部を備え、前記第1接合部は、前記ピッチ拡大部の範囲内に配置されていることを特徴とする。
これによれば、ガイドワイヤの先端の柔軟性を確保し、より滑らかな剛性徐変構造を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ガイドワイヤの側面図(一部断面図含む)である(実施例1)。
【図2】ガイドワイヤ先端部の側部断面図である(実施例1)。
【図3】(a)、(b)はガイドワイヤ先端部の血管内でのU字屈曲発達を示す図である(実施例1)。
【図4】ガイドワイヤ先端部の血管内でのU字屈曲発達を示す図である(実施例1)。
【図5】ガイドワイヤ先端部の側部断面図である(実施例2)。
【図6】コアシャフトの部分側面図である(変形例)。
【図7】ガイドワイヤ先端部の側部断面図である(変形例)。
【図8】ガイドワイヤ先端部の側部断面図である(従来例)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
最良の形態1のガイドワイヤは、細径の先端部を有するコアシャフトと、コアシャフトの外周を囲う外側可撓管体と、外側可撓管体の内側でコアシャフトの先端部とを囲う内側可撓管体とを備える。
そして、コアシャフトの先端が外側可撓管体の先端と接合され、内側可撓管体は、その先端が、コアシャフトの先端から後端側に離間して位置するように配され、内側可撓管体の先端と、コアシャフトとが接合する第1接合部と、第1接合部の後端側で外側可撓管体と内側可撓管体とを接合した少なくとも1箇所の第2接合部とが設けられている。
【0019】
また、コアシャフトは、先端に段部を介して径小に形成された径小部を有し、第2接合部は、軸方向において段部の近傍の位置に設けられている。
また、内側可撓管体は、複数の金属素線を撚合してなる多条の中空撚線コイルであり、外径が先端に向かって徐々に細くなるテーパ状を呈している。また、内側可撓管体は、その内径が先端から後端にかけて一定である。また、中空撚線コイルを形成する金属素線は、ステンレス合金で形成されている。
【0020】
そして、外側可撓管体は単コイルであり、外側可撓管体の先端から所定距離範囲において、外側可撓管体の後端部よりも単コイルのピッチが広がったピッチ拡大部を備え、ピッチ拡大部の後端は、第1接合部よりも後端側に配置されている。
【0021】
最良の形態2のガイドワイヤは、内側可撓管体の内部で、コアシャフトの先端部と並行に配される撚線を備える。
【実施例】
【0022】
〔実施例1の構成〕
実施例1のガイドワイヤ1の構成を、図1〜3を用いて説明する。図1、2において、図示右側が先端側、左側が後端側である。
ガイドワイヤ1は、コアシャフト2と、コアシャフト2が貫挿される外側可撓管体4と、外側可撓管体4の内側に設けられた内側可撓管体5とを備え、コアシャフト2を内側可撓管体5に貫挿し、さらに、これらを外側可撓管体4内に貫挿してなる。
【0023】
コアシャフト2は、ステンレス合金で形成されており、後端側に太径の把持部21を有し、先端側に細径の先端部22を有する。コアシャフト2の先端部22は段階的に細くされており、段部23を介して径小にされた径小部25を有する。尚、本実施例では、例えば、径小部25の外径は0.03mmである。
【0024】
外側可撓管体4は、ステンレス素線により形成された単コイルであり、本実施例では、例えば、外径0.05mmのステンレス素線で単線コイルの外径0.355mmに形成されている。
また、外側可撓管体4は、先端側により柔軟性を与えるため先端側のみコイルピッチが広げられたピッチ拡大部43を有する。このピッチ広げは、軸方向において、後述する内側可撓管体5の先端51よりも後端側まで施されている。
尚、外側可撓管体4は、可撓性を有していればよく、単コイルに限らず、中空撚線コイル、樹脂チューブ等であってもよい。
【0025】
外側可撓管体4は、コアシャフト2の先端側のみに外装されて外側可撓管体4の後端42がコアシャフト2の後端側の太径部分の外周面に固着されている。また、外側可撓管体4の外周面には、親水性の樹脂被覆が施されている。
【0026】
内側可撓管体5は、複数本のステンレス素線により形成された中空撚線コイルである。中空撚線コイルは、複数本の素線をロープ撚線機を用いてロープ状に撚合わせて、中心材を抜いた中空形態、または、複数の素線を中空状に撚合構成した形態が好ましい。
本実施例では、例えば、柔軟性とトルク伝達性のバランスを良好にするため、外径0.04mmのステンレス素線を6本撚合して外径0.188mmに形成されている。
また、内側可撓管体5の先端部52は、電解研磨により外径が先端に向かって小さくなるテーパ状に加工されている。尚、内側可撓管体5の内径は後端から先端にかけて一定である。
【0027】
内側可撓管体5は、外側可撓管体4の内径よりも小さい外径に形成され、軸方向長さは外側可撓管体4よりも小さく、軸方向において、内側可撓管体5の先端51は外側可撓管体4の先端よりも後端側に位置し、内側可撓管体5の後端53は外側可撓管体4の後端42よりも先端側に位置する。
【0028】
また、コアシャフト2との関係では、内側可撓管体5の先端51は、コアシャフト2の先端よりも後端側、且つ、径小部25の後端より先端側に位置し、内側可撓管体5の後端53は段部23より後端側に位置する。
すなわち、内側可撓管体5は、軸方向において、その先端51がコアシャフト2の先端から後端側に離間して位置するように配されている。
【0029】
そして、ガイドワイヤ1には、内側可撓管体5の先端51と、コアシャフト2が接合する第1接合部6が設けられている。具体的には、内側可撓管体5の先端位置において、内側可撓管体5とコアシャフト2がはんだ付けにより固着されて第1接合部6が構成されている。また、ピッチ拡大部43の後端は、第1接合部6よりも後端側に位置している。
なお、内側可撓管体5の後端53は、コアシャフト2の外周面に固着されている。
【0030】
また、ガイドワイヤ1には、第1接合部6の後端側で外側可撓管体4と内側可撓管体5とを接合した2箇所の第2接合部7a、7bとが設けられている。
第2接合部7aは、軸方向において段部23の位置で、外側可撓管体4と内側可撓管体5とがはんだ付けにより固着されて構成されている。
第2接合部7bは、軸方向において第2接合部7aの後端側且つ内側可撓管体5の後端53の先端側の位置で、外側可撓管体4と内側可撓管体5とがはんだ付けにより固着されて構成されている。
【0031】
〔実施例1の作用効果〕
【0032】
本実施例のガイドワイヤ1では、コアシャフト2の先端部22が先端に向かって段階的に細くなっており、外側可撓管体4の内側でコアシャフト2の先端部22を囲う内側可撓管体5を備える。これによれば、柔軟性確保のため細径にされたコアシャフト2の外周を内側可撓管体5が囲うため、ガイドワイヤ1の復元性が向上する。
【0033】
また、内側可撓管体5は、その先端51がコアシャフト2の先端から後端側に離間して位置するように配され、内側可撓管体5の先端51と、コアシャフト2とが接合する第1接合部6が設けられている。
【0034】
これによれば、第1接合部6の先端側と後端側とで剛性差が生じる上、第1接合部6で剛性が高くなる。すなわち、第1接合部6の先端側は「外側可撓管体4+コアシャフト2」でなり、第1接合部6の後端側は「外側可撓管体4+内側可撓管体5+コアシャフト2」でなるので、第1接合部6を境界に剛性差が生じ、第1接合部6では内側可撓管体5の先端51とコアシャフト2とがはんだ付けにより固着されるため剛性が高くなる。
【0035】
このため、ガイドワイヤ1の使用時に、血管等の管腔内でU字形状に屈曲しても、その屈曲は、剛性の高い第1接合部6の存在により、第1接合部6より後端側には発展しにくくなる。
すなわち、ガイドワイヤ1が血管内で意図せずガイドワイヤ1が屈曲してしまった場合(図3(a)参照)、使用者が手元でガイドワイヤ1を押し進めても、剛性の高い第1接合部6の存在により、第1接合部6手前で屈曲が止まり(図3(b)参照)、U字屈曲が発達してしまうことがない。
【0036】
この結果、U字屈曲の発達を、柔軟性に優れたガイドワイヤ1の先端部分にとどめることができる。つまり、高い復元性が確保された部分でU字屈曲されるので、ガイドワイヤ1が屈曲したまま塑性変形してしまうことがなく、ガイドワイヤ1の復元性が向上する。
【0037】
また、ガイドワイヤ1は、第1接合部6の後端側で外側可撓管体4と内側可撓管体5とを接合した少なくとも1箇所の第2接合部7a、7bとが設けられている。
これにより、第1接合部6でU字屈曲発達が止められず、第1接合部6の後端側が屈曲したとしても、第1接合部6の後端側に剛性の高い第2接合部7a、7bが存在するため、第2接合部7a、7bより後端側にはU字屈曲発達しにくくなる(図4参照)。すなわち、第1接合部6と第2接合部7a、7bとで段階的にガイドワイヤ1のU字屈曲の発達を防止することができる。
そして、第2接合部7a、7bでU字屈曲発達が止まるため、少なくとも復元性に優れた内側可撓管体5が存在する部分でのみU字屈曲されるので、屈曲解除によるガイドワイヤ1の復元性がよい。
【0038】
また、積極的にガイドワイヤ1をU字屈曲させて血管内への導入を行う手技では、ガイドワイヤ1が挿入される血管径や血管形状に応じて、ガイドワイヤ1のごく先端部分だけをU字屈曲させればいい場合や、ガイドワイヤ1の先端部分全体をU字屈曲させなければならない場合がある。
そこで、第1接合部6と第2接合部7a、7bとを設けて段階的にU字屈曲防止機能を設けることで、手技に応じて、第1接合部6又は第2接合部7a、7bがU字屈曲発達防止機能を使い分けることができ、使用者の操作が行いやすくなる。
【0039】
すなわち、ガイドワイヤ1を細い血管に導入する場合には、第1接合部6の先端側でガイドワイヤ1は屈曲されるので、第1接合部6が主にU字屈曲発達防止機能を果たす。
また、ガイドワイヤ1をU字屈曲したまま太い血管などに導入する際には、第1接合部6よりも後端側で屈曲させた状態で血管内に挿入されることになるので、第2接合部7a、7bがU字屈曲発達防止機能を果たす(図4参照)。
いずれの場合も、上述のように復元性の確保された部分でU字屈曲発達を止めるので、屈曲解除によるガイドワイヤ1の復元性がよい。
【0040】
また、本実施例では、第2接合部7aが、軸方向において段部23の近傍の位置に設けられていため、コアシャフト2において段部23を境界に前後の剛性差が生まれるので、第2接合部7a前後での剛性差が顕著に生じる。このため、第2接合部7aではU字屈曲発達がさらに効果的に抑制される。
【0041】
また、外側可撓管体4は単コイルであり、外側可撓管体4の先端から所定距離範囲において、外側可撓管体4の後端部よりも単コイルのピッチが広がったピッチ拡大部43を備え、ピッチ拡大部43の後端は、第1接合部6よりも後端側に配置されている。
これにより、ガイドワイヤ1の先端の柔軟性を確保し、より滑らかな剛性徐変構造を形成することができる。
【0042】
すなわち、本実施例のガイドワイヤ1は、先端側から後端側に向けて曲げ剛性が高くなっていく剛性徐変構造となっている。
具体的には、ガイドワイヤ1の先端から、「外側可撓管体4のピッチ広げ有り部分+コアシャフト2」部分、「外側可撓管体4のピッチ広げ有り部分+内側可撓管体5+コアシャフト2」部分、「外側可撓管体4のピッチ広げ無し部分+内側可撓管体5+コアシャフト2」部分の順に、徐々に曲げ剛性が高くなる。そして、さらに後端側では、コアシャフト2の径の変化により徐々に曲げ剛性が高くなる。
このため、剛性の急激な変化による応力集中の発生をより低減することができ、トルク伝達性が向上する。
【0043】
また、内側可撓管体5を多条中空撚線コイルとしているので、単線コイルと比較して、トルク伝達性が向上する。このため、使用者の狙い通りにガイドワイヤ1が操作できるので、治療時間を短縮できる。
また、内側可撓管体5の先端部52が、先端に向かって徐々に細くなるテーパ状に形成されているため、上述したガイドワイヤ1の剛性徐変構造をより細かくなだらかに設定できる。また、内側可撓管体5の先端側の径を細くすることで、ガイドワイヤ1の柔軟性が向上し、管腔末梢部への挿入性が向上する。
【0044】
また、内側可撓管体5の内径が先端から後端にかけて一定であるため、コアシャフト2の内側可撓管体5への挿入が容易となり、好適なガイドワイヤ1の組み付けを容易にすることができる。
【0045】
また、中空撚線コイルを形成する金属素線は、ステンレス合金で形成されているので、内側可撓管体5の剛性を高めることができ、ガイドワイヤ1のトルク伝達性及び操作性を向上することができる。
【0046】
〔実施例2の構成〕
実施例2のガイドワイヤ11の構成を、実施例1とは異なる点を中心に、図5を用いて説明する。図5において、図示右側が先端側、左側が後端側である。
本実施例のガイドワイヤ11は、内側可撓管体5の内部で、コアシャフト2の先端部22と並行に配される撚線8を備える。そして、ガイドワイヤ11は、コアシャフト2とともに撚線8を内側可撓管体5に貫挿し、さらに、これらを外側可撓管体4内に貫挿してなる。
【0047】
撚線8は、複数本のステンレス線材等の金属素線を撚合して形成されている。本実施例では、例えば、外径0.014mmのステンレス素線を7本撚合して形成されている。
撚線8はコアシャフト2の先端部22と並行して配されており、撚線8の先端はコアシャフト2の先端とともに外側可撓管体4の先端の先端ロー付け部41にはんだ付けされており、撚線8の後端はコアシャフト2の径小部25の後端よりも後端側に位置し、コアシャフト2とともに内側可撓管体5にはんだ付けされている。
【0048】
〔実施例2の作用効果〕
撚線8は素線間で相対的に微小な移動が可能であるため、自由度があり、柔軟性が高い上、塑性変形し難く、復元性が高い。
このため、柔軟性確保のため細径にしたコアシャフト2の先端部22と並行に、塑性変形しにくい撚線8を設けることで、ガイドワイヤ11のU字屈曲からの復元性が向上する。
【0049】
〔変形例〕
実施例1及び実施例2では、コアシャフト2の先端部22が先端に向かって段階的に細くされていたが、先端に向かってテーパ状に細くされていてもよい。
【0050】
実施例1及び実施例2では、コアシャフト2はステンレス合金で形成されていたが、コアシャフト2の先端部分(少なくとも径小部25)を復元性に優れている擬弾性合金(例えば、Ni−Ti合金)で形成し、後端側をステンレス合金で形成してもよい。これによれば、ガイドワイヤ1、11の先端部の復元性を向上させるとともに、トルク伝達性及び操作性を向上することができる。
【0051】
また、図6に示すように、径小部25の先端部分をステンレス合金で形成し(第1先端部26)、径小部25の後端部分を擬弾性合金で形成し(第2先端部27)、径小部25よりも後端側のコアシャフト2をステンレス合金で形成してもよい。これによれば、擬弾性合金によりコアシャフト2の先端部22の復元性を向上させることができる。また、擬弾性合金で形成された部分の先端側及び後端側の両方にステンレス合金で形成された部分を設けることにより、後端側のトルクを確実に先端側に伝達することができ、トルク伝達性及び操作性をさらに向上することができる。
【0052】
また、実施例1及び実施例2では、内側可撓管体5の先端部52が先端に向かってテーパ状に細くされていたが、段階的に細くしてもよい。
【0053】
また、実施例1及び実施例2では、内側可撓管体5はステンレス素線のみにより形成されていたが、擬弾性合金素線のみで形成してもよい。これによれば、内側可撓管体5の復元性をさらに高めることができる。
また、ステンレス素線と擬弾性合金素線を組み合わせて内側可撓管体5を形成してもよい(例えば、3本のステンレス素線と3本の擬弾性合金素線の組み合わせ)。これによれば、ステンレス合金で中の内側可撓管体5の剛性を高め、擬弾性合金で内側可撓管体5の復元性を高めることができる。このため、ガイドワイヤ1、11のトルク伝達性、操作性、及び復元性を向上することができる。
【0054】
実施例1及び実施例2のガイドワイヤ1、11は、コアシャフト2の先端側のみを外側可撓管体4が囲う構造であったが、外側可撓管体4がコアシャフト2の全体に外装される構造であってもよい。
【0055】
実施例1及び実施例2のガイドワイヤ1、11は、第2接合部7a、7bで、外側可撓管体4と内側可撓管体5のみを接合して構成されていたが、内側可撓管体5の内部にまではんだを流して固着してもよい。すなわち、例えば、実施例2のガイドワイヤ11において、接合部7aを、外側可撓管体4と内側可撓管体5と撚線8とコアシャフト2とをはんだ付けで固着して構成してもよい(図7参照)。
【符号の説明】
【0056】
1 ガイドワイヤ
11 ガイドワイヤ
2 コアシャフト
22 コアシャフトの先端部
23 段部
25 径小部
26 第1先端部
27 第2先端部
4 外側可撓管体
43 ピッチ拡大部
5 内側可撓管体
51 内側可撓管体の先端
6 第1接合部
7a 第2接合部
7b 第2接合部
8 撚線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細径の先端部を有するコアシャフトと、
前記コアシャフトの外周を囲う外側可撓管体と、
前記外側可撓管体の内側で前記コアシャフトの先端部を囲う内側可撓管体と、
前記コアシャフトの先端と前記外側可撓管体の先端とを接合した先端接合部と
を備えた医療用ガイドワイヤにおいて、
前記内側可撓管体の先端が前記コアシャフトの先端から後端側に離間して位置するように、前記内側可撓管体の先端と前記コアシャフトとを接合した第1接合部を備えたことを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用ガイドワイヤにおいて、
前記内側可撓管体は、その外径が先端に向かって徐々に細くなるテーパ状を呈していることを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
【請求項3】
請求項1に記載の医療用ガイドワイヤにおいて、
前記内側可撓管体は、その外径が先端に向かって段階的に細くなっていることを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
【請求項4】
請求項2または3に記載の医療用ガイドワイヤにおいて、
前記内側可撓管体は、その内径が先端から後端にかけて一定であることを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の医療用ガイドワイヤにおいて、
前記内側可撓管体は、複数の金属素線を撚合してなる多条の中空撚線コイルであることを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の医療用ガイドワイヤにおいて、
前記外側可撓管体は、単コイルであり、前記外側可撓管体の先端から所定距離範囲において、前記外側可撓管体の後端部よりも単コイルのピッチが広がったピッチ拡大部を備え、
前記第1接合部は、前記ピッチ拡大部の範囲内に配置されていることを特徴とする医療用ガイドワイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−55731(P2012−55731A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−276319(P2011−276319)
【出願日】平成23年12月16日(2011.12.16)
【分割の表示】特願2009−143732(P2009−143732)の分割
【原出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(390030731)朝日インテック株式会社 (140)
【Fターム(参考)】