説明

医療用データ処理装置およびそれを備えた放射線断層撮影装置

【課題】断層画像に写り込む非病巣集積部の影響を除き、正確な診断がしやすい画像を取得できる医療用データ処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の構成によれば、CT画像P1に写り込んだ被検体の構造物を抽出し、被検体内の放射性薬剤の分布がイメージングされたPET画像P2を抽出部分とそれ以外に分離する分離部12を備えている。そして、本発明の構成は、分離された画像の部分に対して輝度補正が施される構成となっている。このように本発明においては、PET画像P2にトリミング処理を施して、輝度補正をするようにしているので、被検体の関心部位における薬剤分布を鮮明に知ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性薬剤がイメージングされた断層画像に処理を施す医療用データ処理装置およびそれを備えた放射線断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関には、放射線で被検体の断層像を撮影する放射線断層撮影装置が備えられている。このような放射線断層撮影装置として、例えば被検体内の放射性薬剤の分布をイメージングするPET(Positron Emission Tomography)装置がある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
PET装置で撮影される断層画像は、被検体をある平面で裁断したときの画像となっており、輝度によって放射性薬剤の濃度が表されている。断層画像において、放射性薬剤が多く集まっている部分は、ガンなどの病巣である可能性がある。
【0004】
一方、放射性薬剤は、病巣でなくても膀胱や脳などに集積する特性を有している。したがって、断層画像は、病巣と疑われる塊と、膀胱などの特定の器官とが放射性薬剤集積部として一緒に写り込んだ画像となっている。病巣でない集積部分を正常集積または生理集積と呼ぶ。このような集積部分をまとめて非病巣集積部と呼ぶことにする。術者が断層画像を用いて診断を行うときは、断層画像における非病巣集積部以外の部分から病巣を探し出すような診断を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−277551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来構成によれば、次のような問題点がある。
すなわち、術者が断層画像を用いて診断を行う場合に、画像における非病巣集積部が病巣の発見の妨げとなってしまう。
【0007】
断層画像に写り込んでいる病巣の輝度は、それほど高いものではないのが一般的である。したがって、断層画像には、非病巣集積部が病巣よりも目立って写り込んでいる場合も少なくない。この様な画像を用いて正確に診断を行うことは困難である。
【0008】
また、病巣が非病巣集積部に隣接して存在している場合、もはや病巣と非病巣集積部の境目を認識することはできない。したがって、このような病巣は、術者の診断で看過される可能性が高い。
【0009】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、断層画像に写り込む非病巣集積部の影響を除き、正確な診断がしやすい画像を取得できる医療用データ処理装置およびそれを備えた放射線断層撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る医療用データ処理装置は、被検体内に放射線を透過させることにより被検体内の形態がイメージングされた透過画像に写り込んだ被検体の構造物を抽出する抽出手段と、被検体内の放射性薬剤の分布がイメージングされた薬剤分布画像を抽出手段により抽出された部分とそれ以外の部分とに分離する分離手段と、分離手段によって分離された部分に対し輝度補正を施す輝度補正手段とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
[作用・効果]本発明の構成によれば、透過画像に写り込んだ被検体の構造物を抽出し、被検体内の放射性薬剤の分布がイメージングされた薬剤分布画像を抽出部分とそれ以外に分離する分離手段を備えている。そして、本発明の構成は、分離された画像の部分に対して輝度補正が施される構成となっている。薬剤分布画像は、画像全体に亘って輝度補正が施されている。したがって、薬剤分布画像においては、被検体の膀胱など、放射性薬剤が集中しやすい部分が視認しやすいように輝度補正が施されている。この様な画像を診断しても被検体の関心部位の放射性薬剤分布を正確に知ることはできない。本発明においては、薬剤分布画像にトリミング処理を施して、輝度補正をするようにしているので、被検体の関心部位における薬剤分布を鮮明に知ることができる。また、病巣が被検体の膀胱などの非病巣集積部に隣接している場合であっても、本発明によれば、病巣が非病巣集積部から分離される。したがって、本発明によれば鮮明な薬剤分布を示す画像が取得できる。
【0012】
また、上述の医療用データ処理装置において、輝度補正手段は、薬剤分布画像における構造物に相当する部分に対し輝度補正を施せばより望ましい。
【0013】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示すものとなっている。上述の構成によれば、薬剤分布画像における構造物に相当する部分に対して輝度補正が行われるので、被検体の関心部位である構造物内部の放射性薬剤分布が鮮明に表された画像が生成できる。
【0014】
また、上述の医療用データ処理装置において、輝度補正手段は、薬剤分布画像における構造物を除外した部分に相当する部分に対し輝度補正を施せばより望ましい。
【0015】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示すものとなっている。上述の構成によれば、薬剤分布画像における構造物を除外した部分に相当する部分に対して輝度補正が行われるので、放射性薬剤分布の診断に邪魔な部分が取り除かれて輝度補正された画像を生成できる。
【0016】
また、本発明に係る放射線断層撮影装置は、被検体内に放射線を透過させることにより被検体内の放射線透過率がイメージングされた透過画像を取得する透視画像取得手段と、被検体内の放射性薬剤の分布がイメージングされた薬剤分布画像を取得する薬剤分布画像取得手段と、透過画像に写り込んだ被検体の構造物を抽出する抽出手段と、薬剤分布画像を抽出手段により抽出された部分とそれ以外の部分とに分離する分離手段と、分離手段によって分離された部分に対し輝度補正を施す輝度補正手段とを備えることを特徴とするものである。
【0017】
また、上述の放射線断層撮影装置において、輝度補正手段は、薬剤分布画像における構造物に相当する部分に対し輝度補正を施せばより望ましい。
【0018】
また、上述の放射線断層撮影装置において、輝度補正手段は、薬剤分布画像における構造物を除外した部分に相当する部分に対し輝度補正を施せばより望ましい。
【0019】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の医療用データ処理装置を搭載した放射線断層撮影装置の具体的な態様について示している。上述の構成によれば、薬剤分布画像にトリミング処理を施して、輝度補正をするようにしているので、被検体の関心部位における薬剤分布を鮮明に表せる放射線断層撮影装置が提供できる。
【0020】
また、上述の放射線断層撮影装置において、透視画像取得手段および薬剤分布画像取得手段は、被検体を導入させる開口部が設けられたガントリをそれぞれ備え、透視画像取得手段のガントリと薬剤分布画像取得手段のガントリとは、互いの開口部が連接するように配列されていればより望ましい。
【0021】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示すものとなっている。本発明に係る放射線断層撮影装置が上述のようなPET/CT装置であれば、被検体の写り込む位置が互いに一致した透視画像と薬剤分布画像とを取得することができる。PET/CT装置によれば、ほぼ同時に透視画像と薬剤分布画像とが撮影され、互いの画像の撮影の間における被検体の位置変化が少ないからである。これにより、薬剤分布画像をより正確に被検体の内部構造に沿ってトリミングできるので、より実際の薬剤分布に忠実な輝度補正画像を取得することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の構成によれば、透過画像に写り込んだ被検体の構造物を抽出し、被検体内の放射性薬剤の分布がイメージングされた薬剤分布画像を抽出部分とそれ以外に分離する分離手段を備えている。そして、本発明の構成は、分離された画像の部分に対して輝度補正が施される構成となっている。このように本発明においては、薬剤分布画像にトリミング処理を施して、輝度補正をするようにしているので、被検体の関心部位における薬剤分布を鮮明に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1に係る医療用データ処理装置の全体構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係る医療用データ処理装置の動作を説明する模式図である。
【図3】実施例1に係る医療用データ処理装置の動作を説明する模式図である。
【図4】実施例1に係る医療用データ処理装置の動作を説明する模式図である。
【図5】実施例1に係る医療用データ処理装置の動作を説明する模式図である。
【図6】実施例1に係る医療用データ処理装置の動作を説明する模式図である。
【図7】実施例2に係る放射線断層撮影装置の全体構成を説明する機能ブロック図である。
【図8】実施例2に係る放射線断層撮影装置の構成を説明する斜視図である。
【図9】実施例2に係る放射線断層撮影装置の動作を説明するフローチャートである。
【実施例1】
【0024】
<医療用データ処理装置の全体構成>
実施例1に係る医療用データ処理装置(以降、単にデータ処理装置8と呼ぶ)は、図1に示すように、被検体のCT画像P1とPET画像P2とを入力すると、PET画像P2の一部が抜き出されて輝度補正された輝度補正画像P4が出力される構成となっている。CT画像P1とは、被検体に対して放射線を照射することにより、被検体を透過してきた放射線を検出して得られる被検体の断層画像である。PET画像P2は、被検体の体内における放射性薬剤の分布をイメージングした被検体の断層画像である。CT画像P1は、被検体内の形態がイメージングされたものとなっており、形態画像とも呼ばれる。すなわち、CT画像P1には、被検体内の臓器が写り込んでいる。PET画像P2とCT画像P1とは、被検体における同一の裁断位置における同一の部分の断層像を同一の倍率で表したものとなっている。異なる点は、CT画像P1は被検体の内部構造を表したものとなっているのに対し、PET画像P2は放射性薬剤の分布を表したものとなっている点である。
【0025】
実施例1に係るデータ処理装置8は、図1に示すように、CT画像P1に写り込んだ被検体の構造物を抽出する抽出部11と、PET画像P2を抽出部11により抽出された部分とそれ以外の部分とに分離する分離部12と、分離部12によって分離された部分に対し輝度補正を施す輝度補正部13を備えている。
【0026】
CT画像P1は、図2に示すように、被検体の臓器の断層像が写り込んでいる。図2では、被検体の骨が写り込んでいるが、実際には膀胱、腎臓または肝臓などの他の臓器も写り込んでいる。CT画像P1は、抽出部11に入力される。
【0027】
抽出部11は、CT画像P1に写り込む臓器の形状を認識して、CT画像P1から臓器に関する像を抽出する。この抽出方法としては、輪郭抽出などの方法が挙げられる。図3は、抽出された被検体の臓器を表している。図3では、被検体における大腿骨が抽出されている。CT画像P1から抽出される臓器は、術者が操作卓26を操作して変更することができる。被検体における大腿骨の位置は、例えば、図3に示すような二値画像P1aによって表現される。図3の例においては、抽出部11は、大腿骨を抽出しているが、大腿骨に代えて膀胱、腎臓または肝臓を抽出するようにしてもよい。
【0028】
次に、PET画像P2について説明する。PET画像P2は、図4に示すように、被検体における放射性薬剤の分布が写り込んでいる。図4における点線の位置は、被検体の大腿骨の位置を表している。このように、図4を参照したとしても、被検体の大腿骨の形状を認識することは難しい。なお、PET画像P2は、撮影時に撮影装置の機能により輝度調整がなされている。この輝度調整はPET画像P2の全域を通じて行われたものである。この事前の輝度調整について説明する。図4の例の場合は、画像の上部に放射性薬剤が高密度になっている領域が存在している。したがって、PET画像P2に対する輝度調整は、この上部領域が明確に視認できるように施されている。この輝度調整に伴い、図4における放射性薬剤が比較的低密度な画像の下部の輝度は一律に低く抑えられている。
【0029】
PET画像P2は、分離部12に入力される。分離部12には、抽出部11が生成した二値画像P1aも入力される。分離部12は、PET画像P2における二値画像P1aが示す部分を抜き出して、分離画像P3を生成する。このとき生成された分離画像P3は、図5に示すように被検体の大腿骨が抜き出されたものとなっている。
【0030】
分離部12の動作としては、被検体の大腿骨を抜き出すのに代えて、大腿骨の外側の部分を抜き出して分離画像P3を生成するようにしてもよい。この様な動作ができることにより、例えば、分離部12は、PET画像P2において被検体の膀胱に相当する部分を抜き出して分離画像P3を生成することができる。被検体の膀胱は、PET画像P2を用いた診断をするときに診断の邪魔となる臓器である。したがって、膀胱を抜き出す画像処理を行えば、膀胱に診断を妨げられることがなく、より正確な診断が可能となる。
【0031】
分離部12により被検体の大腿骨が分離されたものとして説明を続行する。分離画像P3は、輝度補正部13に入力される。輝度補正部13は、分離画像P3に輝度補正を施して輝度補正画像P4を生成する。輝度補正の具体的方法としては、例えば、ダイナミックレンジ圧縮がある。この処理のソースとなる分離画像P3は、被検体の大腿骨に相当するPET画像の部分のみが写り込んでいる画像である。したがって、輝度補正部13は、PET画像P2における大腿骨に相当する部分に対し輝度補正を施すことになる。
【0032】
また、分離部12が生成する二値画像P1aが大腿骨を除外した画像であったときは、輝度補正部13は、PET画像P2における大腿骨を除外した部分に相当する部分に対し輝度補正を施すことになる。
【0033】
図6は、輝度補正画像P4を示している。輝度補正画像P4は、大腿骨内部の放射性薬剤分布が視認しやすいように輝度補正が施されたものとなっている。これにより、分離画像P3に写り込んだ大腿骨の内部において一律に低かった画素値が調整され、より幅広い画素値をもって放射性薬剤分布が表現される。したがって、輝度補正画像P4は、図6に示すように分離画像P3を視認しただけでは気が付かない大腿骨内部の詳細な放射性薬剤分布が表現される。
【0034】
主制御部27は、各制御部を統括的に制御する目的で設けられている。この主制御部27は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより各部11,12,13を実現している。操作卓26は、術者の指示を入力する目的で設けられている。記憶部28は、各部11,12,13が用いるパラメータなどを記憶している。表示部25は、生成した輝度補正画像P4を表示する目的で設けられている。
【0035】
以上のように、本発明の構成によれば、CT画像P1に写り込んだ被検体の構造物を抽出し、被検体内の放射性薬剤の分布がイメージングされたPET画像P2を抽出部分とそれ以外に分離する分離部12を備えている。そして、本発明の構成は、分離された画像の部分に対して輝度補正が施される構成となっている。PET画像P2は、画像全体に亘って輝度補正が施されている。したがって、PET画像P2においては、被検体の膀胱など、放射性薬剤が集中しやすい部分が視認しやすいように輝度補正が施されている。この様な画像を診断しても被検体の関心部位の放射性薬剤分布を正確に知ることはできない。本発明においては、PET画像P2にトリミング処理を施して、輝度補正をするようにしているので、被検体の関心部位における薬剤分布を鮮明に知ることができる。また、病巣が被検体Mの膀胱などの非病巣集積部に隣接している場合であっても、本発明によれば、病巣が非病巣集積部から分離される。したがって、本発明によれば鮮明な薬剤分布を示す輝度補正画像P4が取得できる。
【0036】
上述の構成によれば、PET画像P2における構造物に相当する部分に対して輝度補正が行われるので、被検体の関心部位である構造物内部の放射性薬剤分布が鮮明に表された画像が生成できる。
【0037】
また、上述の構成によれば、PET画像P2における構造物を除外した部分に相当する部分に対して輝度補正が行われるので、放射性薬剤分布の診断に邪魔な部分が取り除かれて輝度補正された画像を生成できる。
【実施例2】
【0038】
実施例2は、実施例1の医療用データ処理装置を放射線断層撮影装置に組み込んだ構成となっている。実施例1で説明した抽出部11,分離部12,輝度補正部13は、実施例2においては画像編集部22としてまとめて表すことにする。
【0039】
<放射線断層撮影装置の構成>
以下、本発明に係る放射線断層撮影装置の実施例を図面を参照しながら説明する。実施例2におけるγ線およびX線は、本発明の放射線の一例である。図7は、実施例2に係る放射線断層撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。実施例2における放射線断層撮影装置は、CT装置9aとPET装置9bとを備えているPET/CT装置である。
【0040】
<PET装置の構成>
まずPET装置9bについて説明する。実施例2に係るPET装置9bは、被検体Mを載置する天板10と、天板10をその長手方向(z方向)から導入させる開口を有するガントリ11と、ガントリ11の内部に設けられた天板10をz方向に導入させるリング状の検出器リング12とを備えている。検出器リング12に設けられた開口は、z方向(天板10の長手方向、被検体Mの体軸方向)に伸びた円筒形となっている。検出器リング12は、本発明の検出器に相当する。
【0041】
天板10は、ガントリ11(検出器リング12)の開口をz方向から貫通するように設けられているとともに、z方向に沿って進退自在となっている。この様な天板10の摺動は、天板移動機構15によって実現される。天板移動機構15は、天板移動制御部16によって制御される。天板移動制御部16は、天板移動機構15を制御する天板移動制御手段である。天板10は、その全域が検出器リング12の外側に位置している位置から摺動して、検出器リング12の開口にその一方側から導入されるとともに、検出器リング12の内部を貫通して、検出器リング12の開口のもう一方側から突き出ることができる。検出器リング12は、被検体内で発生する対消滅γ線を検出するものである。また、実施例2の構成の天板移動機構15やガントリ11とガントリ45の位置関係などは、採用しうる態様の例示にすぎない。したがって、本発明の構成は、これに限られるものではない。
【0042】
ガントリ11の内部には、被検体Mから放射される対消滅γ線を検出する検出器リング12が備えられている。この検出器リング12は、被検体Mの体軸方向に伸びた筒状であり、そのz方向の長さは、15〜30cm程度である。クロック19は、検出器リング12に入力される。検出器リング12から出力される検出データは、クロック19を基にしたγ線をどの時点で取得されたかという時刻情報が付与され、後述の同時計数部20に入力されることになる。
【0043】
同時計数部20では、検出器リング12から出力された検出データの同時イベント判定を行なう。なお、同時計数部20による検出データの同時イベント判定は、クロック19によって検出データに付与された時刻情報が用いられる。検出器リング12に同時に入射したと判定された2つのγ線が被検体内の放射性薬剤に起因する対消滅γ線であるとして、その2つのγ線の検出データをPET画像生成部21に送出する。
【0044】
PET画像生成部21は、同時計数部20を通じて検出器リング12から出力された検出データを基にPET画像P2を生成する。このPET画像P2は、ある裁断面における被検体Mの断層像であり、対消滅γ線の発生強度がイメージングされている。画像編集部22は、輝度補正画像P4を生成する目的で設けられている。
【0045】
検出器リング12の構成について説明する。実施例2によれば、100個前後の放射線検出器1がz方向に垂直な平面上の仮想円に配列することで1つの単位リングが形成される。この単位リングがz方向に配列されて検出器リング12が構成される。
【0046】
放射線検出器1の構成について簡単に説明する。図8は、実施例2に係る放射線検出器の構成を説明する斜視図である。放射線検出器1は、図8に示すようにγ線を蛍光に変換するシンチレータ2と、蛍光を検出する光検出器3とを備えている。そして、シンチレータ2と光検出器3との介在する位置には、蛍光を授受するライトガイド4が備えられている。
【0047】
シンチレータ2は、シンチレータ結晶が3次元的に配列されて構成されている。シンチレータ結晶は、Ceが拡散したLu2(1−X)2XSiO(以下、LYSOとよぶ)によって構成されている。そして、光検出器3は、どのシンチレータ結晶が蛍光を発したかという蛍光発生位置を特定することができるようになっているとともに、蛍光の強度や、蛍光の発生した時刻をも特定することができる。また、実施例2の構成のシンチレータ2は、採用しうる態様の例示にすぎない。したがって、本発明の構成は、これに限られるものではない。
【0048】
なお、PET装置9bは、各部を統括的に制御する主制御部41と、形態断層画像等を表示する表示部36とを備えている。この主制御部41は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより、各部16,20,21,22,23,24を実現している。なお、上述の各部はそれらを担当する制御装置に分割されて実現されてもよい。
【0049】
設定記憶部37は、検査に関する各種パラメータを記憶するものであり、操作卓35は、術者の各種操作を入力させるものである。操作卓35は、本発明の入力手段に相当する。
【0050】
<CT装置の構成>
次に、実施例2に係るCT装置9aの構成について説明する。図7に示すように、CT装置9aは、ガントリ45を有している。ガントリ45には、z方向に伸びた開口が設けられており、この開口に天板10が挿入されている。なお、CT装置9aは、PET装置9bにz方向から隣接する。CT装置9aのガントリ45と、PET装置のガントリ11とは、互いの開口部がz方向に連接するように配列されている。これにより、被検体Mの天板10における位置を極力変更させないでCT画像P1とPET画像P2とを連続して撮影することができる
【0051】
ガントリ45の内部には、X線を被検体Mに向けて照射するX線管43と、被検体Mを透過してきたX線を検出するX線検出器44と、X線管43とX線検出器44とを支持する支持体47とが備えられている。支持体47は、リング形状となっており、z軸周りに回転自在となっている。この支持体47の回転は、例えばモータのような動力発生手段と、例えば歯車のような動力伝達手段とから構成される回転機構39が実行する。また、回転制御部40は、この回転機構39を制御するものである。支持体47(X線管43とX線検出器44)の回転における中心軸は、検出器リング12の中心軸と一致している。すなわち、CT装置9aは、その中心軸を検出器リング12の中心軸を共有してz方向からPET装置に隣接して設けられている。X線管43は、本発明の放射線源に相当し、X線検出器44は、本発明の放射線検出手段に相当する。
【0052】
CT画像生成部48は、X線検出器44から出力されたX線検出データを基に、被検体MのX線形態断層画像(CT画像P1)を生成するものである。このCT画像P1は、ある裁断面における被検体Mの断層像であり、被検体Mの内部におけるX線の透過しやすさがイメージングされている。CT画像生成部48は、本発明の断層画像生成手段に相当する。PET画像生成部21が生成するPET画像P2とCT画像生成部48が生成するCT画像P1とは、被検体における同一の裁断位置における同一の部分の断層像を同一の倍率で表したものとなっている。異なる点は、CT画像P1は被検体の内部構造を表したものとなっているのに対し、PET画像P2は放射性薬剤の分布を表したものとなっている点である。
【0053】
主制御部41は、各種のプログラムを実行することにより、PET装置9bに係る各部の他、回転制御部40,CT画像生成部48,およびX線管制御部46とを実現している。なお、上述の各部はそれらを担当する制御装置に分割されて実現されてもよい。X線管制御部46は、X線管43の管電流、管電圧、パルス幅等を制御する目的で設けられたものである。
【0054】
<放射線断層撮影装置の動作>
次に、実施例2に係る放射線断層撮影装置の動作について説明する。放射線断層撮影装置を用いて、被検体Mの検診を行うには、図9に示すように、被検体Mが天板10に載置され(載置ステップS1),被検体MにX線を照射してCT画像P1を取得する(CT画像取得ステップS2)。そして、被検体内から発生する対消滅γ線を検出してPET画像P2を取得し(PET画像取得ステップS3),CT画像P1を基にPET画像P2の編集を行う(画像編集ステップS4)。以降、これらの各ステップについて順を追って説明する。
【0055】
<載置ステップS1,CT画像取得ステップS2>
まず、被検体Mが天板10に載置される。術者が操作卓35を通じてCT画像P1の取得開始の指示を行うと、天板10が移動し、被検体Mがガントリ45の内部に導入される。そして、X線管43とX線検出器44とは、互いの相対位置を保った状態でz軸周りに回転する。
【0056】
術者が操作卓35を通じてX線の照射開始を指示すると、X線管43は間歇的にX線を被検体Mに向けて照射し、その度ごとに、CT画像生成部48は、X線透視画像を生成する。この複数枚のX線透視画像は、CT画像生成部48において例えば、既存のバック・プロジェクション法を用いて単一のCT画像P1に組み立てられる。
【0057】
<PET画像取得ステップS3>
CT画像P1の取得後、術者が操作卓35を通じてPET画像P2の取得の指示を与えると、天板10が移動し、被検体Mがガントリ11の内部に導入される。被検体Mには、予め放射性薬剤が注射投与されており、放射性薬剤が対消滅γ線を発生させる。こうして、被検体の体内で発生した対消滅γ線は、検出器リング12で検出される。検出器リング12は、同時計数部20に検出データを送出し、同時計数部20は、検出データの同時イベント判定を行う。なお、検出データは、入射時間と、エネルギーと、入射時間とが関連したデータセットとなっている。
【0058】
同時計数部20で同時イベントと判定された検出データは、PET画像生成部21に送出される。PET画像生成部21は、所定の幅で配列された平面の各々で被検体Mを裁断したときの断層像であるとともに、対消滅γ線の発生状況がイメージ化されたPET画像P2を生成する。
【0059】
<画像編集ステップS4>
CT画像P1とPET画像P2とは、画像編集部22に入力される。画像編集部22は、CT画像P1に写り込んだ被検体の構造物を基にPET画像P2をトリミングして、トリミングされた画像に対して輝度補正を施す。この動作については、図3〜図6を用いて既に説明済みである。輝度補正画像P4が表示部36に表示されて検査は終了となる。
【0060】
以上のように、実施例2は、本発明の医療用データ処理装置を搭載した放射線断層撮影装置の具体的な態様について示している。上述の構成によれば、PET画像P2にトリミング処理を施して、輝度補正をするようにしているので、被検体の関心部位における薬剤分布を鮮明に表せる放射線断層撮影装置が提供できる。
【0061】
また、本発明に係る放射線断層撮影装置が上述のようなPET/CT装置であれば、被検体の写り込む位置が互いに一致した透視画像とPET画像P2とを取得することができる。PET/CT装置によれば、ほぼ同時に透視画像とPET画像P2とが撮影され、互いの画像の撮影の間における被検体の位置変化が少ないからである。これにより、PET画像P2をより正確に被検体の内部構造に沿ってトリミングできるので、より実際の薬剤分布に忠実な輝度補正画像P4を取得することができる。
【0062】
本発明は、上述の構成に限られず、下記のように変形実施することが可能である。
【0063】
(1)上述した実施例のいうシンチレータ結晶は、LYSOで構成されていたが、本発明においては、その代わりに、LGSO(Lu2(1−X)2XSiO)やGSO(GdSiO)などの他の材料でシンチレータ結晶を構成してもよい。本変形例によれば、より安価な放射線断層撮影装置が提供できる。
【0064】
(2)上述した実施例において、光検出器は、光電子増倍管で構成されていたが、本発明はこれに限らない。光電子増倍管に代わって、フォトダイオードやアバランシェフォトダイオードや半導体検出器などを用いてもよい。
【0065】
(3)本発明は、上述したCT画像P1に代えて、MRI画像を用いることができる。また、上述したPET画像P2に代えてSPECT画像を用いることもできる。
【符号の説明】
【0066】
11 抽出部(抽出手段)
12 分離部(分離手段)
13 輝度補正部(輝度補正手段)
P1 CT画像(透過画像)
P2 PET画像(薬剤分布画像)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に放射線を透過させることにより被検体内の形態がイメージングされた透過画像に写り込んだ被検体の構造物を抽出する抽出手段と、
被検体内の放射性薬剤の分布がイメージングされた薬剤分布画像を前記抽出手段により抽出された部分とそれ以外の部分とに分離する分離手段と、
前記分離手段によって分離された部分に対し輝度補正を施す輝度補正手段とを備えることを特徴とする医療用データ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用データ処理装置において、
前記輝度補正手段は、前記薬剤分布画像における前記構造物に相当する部分に対し輝度補正を施すことを特徴とする医療用データ処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の医療用データ処理装置において、
前記輝度補正手段は、前記薬剤分布画像における前記構造物を除外した部分に相当する部分に対し輝度補正を施すことを特徴とする医療用データ処理装置。
【請求項4】
被検体内に放射線を透過させることにより被検体内の放射線透過率がイメージングされた透過画像を取得する透視画像取得手段と、
被検体内の放射性薬剤の分布がイメージングされた薬剤分布画像を取得する薬剤分布画像取得手段と、
前記透過画像に写り込んだ被検体の構造物を抽出する抽出手段と、
前記薬剤分布画像を前記抽出手段により抽出された部分とそれ以外の部分とに分離する分離手段と、
前記分離手段によって分離された部分に対し輝度補正を施す輝度補正手段とを備えることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項5】
請求項4に記載の放射線断層撮影装置において、
前記輝度補正手段は、前記薬剤分布画像における前記構造物に相当する部分に対し輝度補正を施すことを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項6】
請求項4に記載の放射線断層撮影装置において、
前記輝度補正手段は、前記薬剤分布画像における前記構造物を除外した部分に相当する部分に対し輝度補正を施すことを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項7】
請求項4ないし請求項6のいずれかに記載の放射線断層撮影装置において、
前記透視画像取得手段および前記薬剤分布画像取得手段は、被検体を導入させる開口部が設けられたガントリをそれぞれ備え、
前記透視画像取得手段のガントリと前記薬剤分布画像取得手段のガントリとは、互いの開口部が連接するように配列されていることを特徴とする放射線断層撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−88386(P2013−88386A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231593(P2011−231593)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】