医療用バルーンおよびその製造方法
増強された穿刺抵抗および耐引掻性等の増強された特性を有する医療用バルーンが提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用バルーンおよび該医療用バルーンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
身体は、動脈、他の血管および他の体内管腔等の様々な通路を備える。これらの通路は、時に、例えば腫瘍によって閉塞されたり、またはプラークによって制限されたりする。閉塞された体内管を拡張するために、例えば血管形成術において、バルーンカテーテルを用いることができる。
【0003】
バルーンカテーテルは、長く細いカテーテル本体上に保持された膨縮可能なバルーンを備え得る。バルーンは、体内への挿入を容易にする目的で、バルーンカテーテルの半径方向の外形を縮小するために、最初はカテーテル本体のまわりに折り重ねられている。
【0004】
使用中、折り重ねられたバルーンは、血管内に配置されたガイドワイヤー上にバルーンカテーテルを通すことによって、血管内の目標位置、例えばプラークによって閉塞された部分に搬送され得る。次に、バルーンは、例えばバルーンの内部に流体を導入することによって膨張させられる。バルーンを膨張させることにより、その血管が血流速度の増大を可能にし得るように、血管を半径方向に容易に拡張することができる。使用後、バルーンは収縮させられて、身体から抜去される。
【0005】
別の技術において、バルーンカテーテルはまた、ステントまたはステントグラフトのような医療装置を配置して、閉塞した通路を補強および/または開放するために用いられ得る。例えば、ステントは、ステントが標的部位に輸送されるときには圧縮形態または大きさが縮小された形態で、ステントを支持するバルーンカテーテルによって、身体の内側に搬送され得る。前記部位に到達すると、バルーンは、拡張したステントを変形させ、そのステントを管腔壁に接触した状態で所定位置に固定するように膨張させられ得る。次に、バルーンは収縮させられて、カテーテルは抜去される。ステントの搬送は、ヒース(Heath)の特許文献1においてさらに記載されており、前記特許文献の全開示は、参照により余すところなく本願に援用される。
【0006】
1つの一般的なバルーンカテーテルの設計は、外側チューブに包囲された内側チューブという同軸的配置を有する。内側チューブは、一般的には、ガイドワイヤー上において装置を搬送するために用いられ得る管腔を備える。膨張流体は内側チューブと外側チューブとの間を通過する。この設計の一例は、アーネイ(Arney)の特許文献2に記載されており、前記特許文献の全容は、参照により余すところなく本願に援用される。
【0007】
別の一般的な設計において、カテーテルは、並列して配置されたガイドワイヤー管腔および膨張管腔を画定する本体を備える。この配置の例は、ワング(Wang)の特許文献3に記載されており、前記特許文献の全容は、参照により余すところなく本願に援用される。
【特許文献1】米国特許第6,290,721号明細書
【特許文献2】米国特許第5,047,045号明細書
【特許文献3】米国特許第5,195,969号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、穿刺抵抗(puncture resistance)、耐引掻性、可撓性、破裂強度および薬物放出等の特性を向上させた医療用バルーンおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において、本開示は、炭化された基材ポリマー材料を含む一体的な修飾領域を備えた基材ポリマー系(base polymer system)を有するバルーン壁を備える医療用バルーンを特徴とする。
【0010】
別の態様において、本開示は、炭化された基材ポリマー材料を含む一体的な修飾領域を備えた基材ポリマー系を有するバルーン壁を備える医療用バルーンカテーテルを特徴とする。
【0011】
別の態様において、本開示は、ポリマー系を提供する工程と、前記ポリマー系をプラズマ侵入イオン注入(plasma immersion ion implantation)によって処理する工程と、処理されたポリマー系を医療用バルーンに用いる工程とを有する医療用バルーンを製造する方法を特徴とする。
【0012】
別の態様において、本開示は、ポリマー系を提供する工程と、前記ポリマー系をイオン注入によって処理して、非ポリマー系材料の実質的な被着を行うことなく、ポリマー系を修飾する工程と、処理されたポリマー系を医療用バルーンに用いる工程とを有する医療用バルーンを製造する方法を特徴とする。
【0013】
別の態様において、本開示は、上述の方法のうちのいずれかよって形成された医療用バルーンを特徴とする。
別の態様において、本開示は、共押し出しポリマーを含む基材ポリマー系を含む医療装置を特徴とし、前記基材ポリマー系は炭化された基材ポリマー系材料の一体的な修飾領域を有する。
【0014】
別の態様において、本開示はラマンスペクトル(Raman)においてDピークおよび/またはGピークを示す医療用バルーンを特徴とする。
他の態様または実施形態は、上記の態様の特徴および/または下記の1つ以上の特徴の組み合わせを有し得る。炭化された領域はダイヤモンド状の材料を含有し、かつ/または、炭化された領域は黒鉛材料を含有する。修飾領域は、架橋した基材ポリマー材料の領域を備える。架橋した領域は、炭化された基材ポリマー材料およびほぼ未修飾の基材ポリマー材料に直接結合されている。医療用バルーンは、酸化した基材ポリマー材料の領域を含み得る。その酸化した領域は、基材ポリマー系にさらに結合することなく、炭化された材料(carbonized material)に直接結合されている。修飾領域は、基材ポリマー系の露出面から延びている。基材ポリマー系の弾性率(modulus of elasticity)は、修飾領域を有さない基材ポリマー系の+/−10%以内である。修飾領域の厚さは約10〜約200nmである。修飾領域は、基材ポリマー系の全厚の約1%以下である。炭化された基材ポリマー材料の硬度係数は、約500ビッカーズ硬度(kgf/mm2)以上である。バルーンは、約5パーセント以上の表面割れ目密度を有する破面組織を有する。基材ポリマー系は治療薬を保持する。基材ポリマー系は共押し出しポリマー層を備える。バルーンのコンプライアンス(compliancy)は、約2バール〜約15バールの内部圧力において、バルーンの初期直径の10パーセント未満である。バルーンカテーテルは、脈管系で使用するための大きさを有する。バルーンカテーテルは、冠動脈で使用するための大きさを有する。バルーンカテーテルは、バルーン上に配置されたステントを備える。イオンエネルギーおよび線量は、ポリマー系に炭化された領域を形成するように制御される。イオンエネルギーは、約15keV以上の範囲であり、かつ約1×1015イオン/cm2以上の線量である。ステントは医療用バルーンの周りに位置する。ポリマー系の処理は、水素、ヘリウム、ホウ素、ネオン、炭素、酸素、窒素、アルゴン、またはこれらの混合物のうちから選択されるイオンを用いる。修飾領域は、共押し出しポリマーの界面(interface)を備える。
【0015】
実施形態は、以下の利点の1つ以上を有し得る。所与の用途に対して、穿刺抵抗(puncture resistance)、耐引掻性、可撓性、破裂強度および薬物放出のような特性が高められたバルーンが提供される。とりわけ、ステントデリバリーバルーンは、高い耐引掻性を備える。バルーンの耐引掻性は、例えばダイヤモンド状材料(例えば、ダイヤモンド状炭素または非晶質ダイヤモンド)を含む、基材ポリマー系に密着した相対的に硬い領域を備えるバルーン壁を備えることによって増強される。
【0016】
さらなる特徴、実施形態および利点は以下に述べる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1A〜図1Cを参照すると、ステント10は、カテーテル14の先端付近に保持されたバルーン12上に配置されており、例えば冠状動脈のような血管などの管腔16を通って、バルーンおよびステントを保持している部分が閉塞18(図1A)の領域に到達するまで案内される。次に、バルーン12を膨張させることによって、ステント10は半径方向に拡張され、血管壁に対して押圧され、その結果として、閉塞18は圧迫され、それを包囲する血管壁は半径方向の拡張を受ける(図1B)。次に、バルーンから圧力が解放され、カテーテルは血管から抜去される(図1C)。
【0018】
図2Aを参照すると、全厚TWを有するバルーン壁20は、ステントに晒される外面22と、バルーン内部において膨張流体に晒される内面29とを備える。バルーン壁は、未修飾領域26と、厚さTMの硬い修飾領域28とを備える基材ポリマー系から形成される。未修飾基材ポリマーは、壁の全厚TWと修飾領域の厚さTMとの差である厚さTBを有する。
【0019】
図2Bを参照すると、修飾領域は、酸化領域30(例えば、カルボニル基およびアルデヒド基、カルボン酸基および/またはアルコール基を有する)と、炭化領域32(例えば、増加したsp2結合、特に芳香族炭素−炭素結合および/またはsp3ダイヤモンド状炭素−炭素結合を有する)と、架橋領域34とを含む一連の小領域を有する。特定の実施形態において、架橋領域34は、未修飾基材ポリマー系および炭化領域32に直接結合された、ポリマーの架橋が増進した領域である。炭化領域32は、一般的には、ダイヤモンド状炭素(DLC)中に存在するような、高レベルのsp3混成炭素原子、例えば、25パーセント超のsp3、40パーセント超、50パーセント超のsp3混成炭素原子を含むバンドである。炭化層32に結合され、かつ大気に露出した酸化領域30は、基材ポリマー系に比べて高い酸素含有量を有する。炭化領域の硬い性質、すなわち耐引掻性は、例えばステントの緊縮(crimping)中に生じ得るピンホールの形成を低減する。例えば、ステントとバルーン外面との間に配置された塵粒は、緊縮中に、バルーンへと押し付けられ、バルーンを貫通して、ピンホールを形成する。修飾領域の段階的に配列された多重領域構造は、未修飾基材ポリマーに対する修飾層の密着性を高め、剥離の可能性を低減する。さらに、構造における段階的配列の性質と、壁の全厚に対して修飾領域の厚さが薄いこととにより、バルーンは未修飾バルーンの機械的性質をほぼ維持することが可能となる。様々な領域、例えば、炭化領域、酸化領域、および架橋領域の存在は、例えば赤外線分光法、ラマン分光法、UV−vis分光法を用いて、検出することができる。例えば、ラマン分光法測定は並進対称の変化に対して感度が高く、しばしば炭素膜における無秩序さおよび結晶子の形成の検討において有用である。ラマンの検討において、黒鉛は1580cm−1において特徴的なピーク(黒鉛(graphite)の「G」と称される)を示す場合がある。無秩序な黒鉛(Disordered graphite)は、1350cm−1(無秩序(disorder)の「D」と称される)において第2のピークを有する。該ピークは、材料中に存在するsp3結合の程度に関連していることが報告されている。無秩序な黒鉛におけるDピークの出現は、構造内における6員環(six−fold ring)およびクラスターの存在を示し、したがって、材料中におけるsp3結合の存在を示し得る。XPSは、黒鉛および非晶質炭素成分からダイヤモンド相を区別するために用いられてきた別の技術である。スペクトルの解析によって、材料内に存在する結合の種類に関して推論がなされ得る。このアプローチはDLC材料中におけるsp3/sp2比を決定するために適用されてきた。(例えば、ラオ(Rao)、Surface & Coatings Technology 197、154〜160頁、2005年を参照されたい。前記文献の全開示は、参照により余すところなく本願に援用される)。
【0020】
バルーンはプラズマ侵入イオン注入(「PIII」)を用いて修飾することができる。図3Aおよび図3Bを参照すると、PIIIの間、窒素プラズマのようなプラズマ40中の荷電種は、名目上の非拡張状態にあり、かつサンプルホルダ41に配置されたバルーン13に向かって、高速で加速される。バルーンに向かうプラズマの荷電種の加速は、プラズマとバルーンの下に位置する電極との間の電位差によって駆動される。バルーンと衝突すると、荷電種は、それらの高い速度により、ある距離だけバルーン内に侵入し、バルーンの材料と反応して、上記で検討した領域を形成する。一般に、侵入深さは、少なくともある程度は、プラズマとバルーンの下に位置する電極との間の電位差によって制御される。所望により、例えばサンプルホルダの上方に配置された金属グリッド43の形態にある付加的な電極を用いることができる。そのような金属グリッドは、高電圧パルス間においてバルーンがrf−プラズマと直接接触することを防止するのに有利であり、バルーン材料の帯電効果を低減することができる。
【0021】
図3Cを参照すると、PIII処理システム80の実施形態は、真空ポンプに接続された吸引口(vacuum port)84を有する真空チャンバ82と、プラズマを生成するチャンバ82に、例えば窒素のようなガスを搬送するためのガス源130とを備える。システム80は、例えばガラス製または石英製である一連の誘電体窓86を備え、誘電体窓86はチャンバ82内の真空を維持するためにo−リング90によって密閉されている。窓86のうちのいくつかには、RFプラズマ源92が取り外し可能に取り付けられており、各RFプラズマ源は接地されたシールド98内に位置するヘリカルアンテナ96を有する。RFプラズマ源が取り付けられていない窓は、例えばチャンバ82への観察口として有用である。各アンテナ96は、ネットワーク102および結合コンデンサ104を介して、RF発生器100と電気的に連絡している。各アンテナ96はまた、同調コンデンサ106とも電気的に連絡している。各同調コンデンサ106は,制御装置110からの信号D,D’,D”によって制御される。各同調コンデンサ106を調整することによって、各RFアンテナ96からの出力が調整され、生成されるプラズマの均質性を維持する。プラズマからのイオンに直接曝露されるバルーンの領域は、バルーンをバルーンの軸線のまわりに回転させることにより制御することができる。バルーン全体の均質な修飾を高めるために、処理中にバルーンを連続的に回転させることができる。これに代わって、回転は間欠的であってもよいし、または選択された領域をマスクして、それらのマスクされた領域の処理を排除してもよい。PIIIの付加的な詳細は、チュー(Chu)の米国特許第6,120,260号;ブルクナー(Brukner)、Surface and Coatings Technology、103〜104頁および227〜230頁(1998年);およびクッシェンコ(Kutsenko)、Acta Materialia、52、4329〜4335頁(2004年)によって記載されている。前記文献の各々の全開示は、参照により余すところなく本願に援用される。
【0022】
バルーンの修飾は、選択した深さにおいて所望の種類の修飾を生じるように制御される。また修飾の性質および深さは、バルーンの全体的な機械的性質を調整するように制御される。特定の実施形態において、前記修飾は、基材ポリマー系の引張強さ、伸びおよび弾性率のような機械的性質が修飾の存在によって実質的に変更されないように制御される。実施形態において、修飾されたポリマーの引張強さ、伸びおよび弾性率は、未修飾のポリマーのそれらの各値とほぼ同一であるか、またはそれ以上である。さらに、前記修飾は、破裂強度、抜去力、トルクおよび固定性(securement)のようなバルーン性能特性が修飾の存在によって実質的に変更されないように、または改善されるように制御される。
【0023】
修飾の種類および深さは、PIIIプロセスにおいて、イオンの種類、イオンエネルギーおよびイオン線量の選択によって制御される。実施形態においては、上記に記載したように、3つの小領域の修飾が提供される。他の実施形態において、PIIIプロセス・パラメータの制御によって、あるいは例えば溶媒溶解、または切断もしくは削摩による機械的な層の除去、または熱処理により1つ以上の層を除去する後処理によって、形成された3つより多いか、また少ない小領域が存在してもよい。具体的には、より高いイオンエネルギーおよび線量は、炭化領域、特にDLC成分または黒鉛成分を有する領域の形成を増進する。実施形態において、イオンエネルギーは、25keV以上のように約5keV以上であり、例えば、約30keV以上かつ約75keV以下である。実施形態におけるイオン線量は、1×1016イオン/cm2以上のような、約1×1014以上の範囲にあり、例えば、約5×1016イオン/cm2以上、かつ約1×1019イオン/cm2以下である。酸化領域の特徴付けおよびプロセス条件の変更は、カルボニル基およびヒドロキシル基の吸収に関するFTIR ATR分光法の結果に基づいて行うことができる。また、架橋領域は、FTlR ATR分光法、UV力分光法およびラマン分光法を用いて、C=C基の吸収を解析することにより特徴づけることができ、プロセス条件はその結果に基づいて変更される。さらに、プロセス条件は、架橋領域のゲル分率の分析に基づいて変更することができる。試料のゲル分率は、例えばソックスレー抽出器を使用して、試料をo−キシレンのような沸騰させた溶媒中で24時間にわたって抽出することによって測定することができる。24時間後、抽出物から溶媒を除去し、次に、試料を、恒量になるまで、50℃の真空炉中で乾燥させる。ゲル分率とは、試料の初期重量と抽出された試料の乾燥重量との差を、試料の総初期重量で割ったものである。
【0024】
実施形態において、修飾領域28の厚さTMは、約1500nm未満であり、例えば約1000nm未満、約750nm未満、約500nm未満、約250nm未満、約150nm未満、約100nm未満、または約50nm未満である。実施形態において、酸化領域30は、約5nm未満、例えば約2nm未満、または約1nm未満の厚さT1を有し得る。実施形態において、炭化領域32は、約500nm未満、例えば約350nm未満、約250nm未満、約150nm未満、または約100nm未満の厚さT2を有することができ、炭化領域32は、外面22から10nm未満、例えば5nm未満、または1nm未満の深さに存在し得る。実施形態において、架橋領域34は、約1500nm未満、例えば約1000nm未満、または約500nm未満の厚さT3を有し、外面22から約500nm未満、例えば約350nm未満、約250nm未満、または約100nm未満の深さに存在し得る。
【0025】
実施形態において、修飾済みバルーンの破裂強度、抜去力(withdrawal force)、トルクおよび固定性は、未修飾バルーンのそれらの値の±約35%以下以内、例えば±15%以内、例えば±5%または±1%以内である。特定の実施形態において、抜去力および固定性は、バルーン壁の修飾によって、約15%以上、例えば、約25%以上増大される。バルーンの全体的な機械的性質に対する修飾領域の影響を最小限にするために、修飾の深さは、修飾領域の機械的性質がバルーンの全体的な機械的性質に実質的に影響しないように選択され得る。実施形態において、修飾領域の厚さTMは、未修飾基材ポリマー系の厚さTBの約1%以下であり、例えば約0.5%以下または約0.05%以上である。実施形態において、バルーンは、ポリマーの機械的性質またはバルーン性能を変更するために修飾され得る。例えば、相対的に厚い炭化層または架橋層を備えるようにバルーンを修飾することにより、バルーン剛性を高めることができる。実施形態において、修飾層の厚さTMは、未修飾基材ポリマー系の全厚TBの約25%以上であり、例えば50〜90%であり得る。実施形態において、前記壁は、約0.005インチ(約0.127mm)未満、例えば約0.0025インチ(約0.0635mm)未満、約0.002インチ(約0.0508mm)未満、約0.001インチ(約0.0254mm)未満、または約0.0005インチ(約0.0127mm)未満の全厚を有する。
【0026】
特定の実施形態において、バルーンは、血管形成術および/またはステント搬送のために、冠動脈のような脈管系で使用するための大きさを有する。バルーンは、約5バール以上、例えば15バール以上の破裂強度を有する。基材ポリマー系は、例えば、バルーンに所望の特性を与えるポリマー、ポリマーブレンド、またはポリマーの層状構造である。特定の実施形態において、基材ポリマーは低膨張性(low distendibility)かつ高破裂強度のポリマーを含有する。ポリマーは、二軸配向ポリマー、熱可塑性エラストマー、エンジニアリングサーモプラスチックエラストマー、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレン、ポリアミド(例えばナイロン66)、ポリエーテルブロックアミド(例えばPEBAX(登録商標))、ポリプロピレン(PPS)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、イソプレンゴム(Pl)、ニトリルゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレンジエン系ゴム(EPDM)、ブチルゴム(BR)、熱可塑性ポリウレタン樹脂(PU)(例えばPELLETHANE(登録商標)等のグリコールエーテルおよびイソシアナートに基づくもの)を含む。特定の実施形態において、下記一般式を有するポリ(エーテル−アミド)ブロックコポリマーが用いられる。
【0027】
【化1】
前記式中、PAは、例えばナイロン12などのポリアミド部分を表し、PEは、例えばポリ(テトラメチレングリコール)などのポリエーテル部分を表わす。そのようなポリマーは、商品名PEBAX(登録商標)でアトフィナ社(ATOFlNA)から市販されている。
【0028】
特定の実施形態において、図4Aおよび図4Bを参照すると、基材ポリマー系は、同一または異なるポリマーの複数のポリマー層を共押し出しすることによって形成される。バルーン61は、界面67において接合された第1ポリマー層63および第2ポリマー層65を有する壁69を備える。バルーン61はPIIIを用いて修飾されて、修飾バルーン71を提供することができる。図4Bに示した実施形態において、バルーン61の第1層63および界面67はPIIIによって修飾されて、バルーン71の修飾層73および修飾界面75を生成する。特にこの実施形態において、層65は実質的に未修飾である。バルーン61の第1層63の修飾は、硬いピンホール耐性層を提供するとともに、界面を介した修飾はバルーン71の隣接した層の間の密着性を高める。このような実施形態においては、結合層を低減または回避することができる。特定の実施形態において、バルーンは、層のすべてまたはいくつかが修飾されている3つ以上の層(例えば5つ、7つ、またはそれ以上の層)を有し得る。共押し出しポリマー層から形成されたバルーンは、ワングの米国特許第5,366,442号および同第5,195,969号、ハムリン(Hamlin)の米国特許第5,270,086号、およびチン(Chin)の米国特許第6,951,675号に記載されている。前記特許文献の各々の全容は、参照により余すところなく本願に援用される。バルーンは例えば、ステントを搬送するために使用することができる。前記ステントは、PIIIを用いて処理された生体内分解性ステントのようなステントであり得る。適当なステントは、本願と同時に出願され譲渡された「BIOERODIBLE ENDOPROSTHESES AND METHODS OF MAKING THE SAME」米国特許出願第 号[代理人整理番号第10527−730001号]に記載されている。前記特許文献の全開示は、参照により余すところなく本願に援用される。
【0029】
バルーンはまた、望ましい表面形態を提供するために修飾され得る。図5Aを参照すると、修飾前のバルーン表面50は相対的に平坦で、特徴がないポリマープロファイルを備えて示されている(バルーンはPRBAX(登録商標)7033から形成されている)。図5Bを参照すると、PIIIによる修飾の後、表面は複数の亀裂52を備える。亀裂の大きさおよび密度は表面粗さに影響を与え得る。表面粗さは、ステントとバルーンとの間の摩擦を高めることができ、体内への搬送中におけるステントの保持性を向上する。図5C参照すると、一部の実施形態において、割れ目密度(fracture density)は、割れ目線52によって画定される表面の破断されていない「島」53が、約20μm2以下、例えば約10μm2以下、または約5μm2以下であるような状態である。実施形態において、割れ目線は、例えば、幅が10μm未満であり、例えば幅が5未満μm、2.5μm未満、1μm未満、0.5μm未満、または0.1未満μmである。亀裂または割れ目線はまた、抗血栓形成剤、麻酔薬、または抗炎症剤のような治療薬のための貯蔵器として用いられ得る。適当な薬剤はパクリタキセルである。薬剤は、浸漬またはディッピングにより、バルーン表面に塗布され得る。他の薬剤は、米国特許出願公開第2005/0215074号に記載されており、前記特許文献の全開示は、参照により余すところなく本願に援用される。バルーンは、塩、糖または糖誘導体のような保護層または放出層によって被覆され得る。適当な層は米国特許第6,939,320号に記載されており、前記特許文献の全開示は、参照により余すところなく本願に援用される。
【0030】
さらなる実施形態は以下の実施例中に存する。
実施例
材料
試験は、PEBAX(登録商標)7033からなる2mm径および4mm径のバルーン上で行なわれる。前記バルーンは、69のショアD硬度を有し、ボストン サイエンティフィック(マサチューセッツ州ナティック)製である。PIII処理の前に、バルーンをアルコールで清浄する。試験は、PBBAX(登録商標)7033ペレットを研磨されたPTFE板の間において250〜300℃で数分間にわたってプレスすることによって製造された20×20×1mmのPEBAX(登録商標)7033板についても行われる。1mmの厚さを有するシリコン板と同様に、50mkmの厚さを有する低密度ポリエチレン(LDPE)膜を購入したままで用いる。
【0031】
方法および装置
PIIIにはローゼンドルフ リサーチ センター(Rossendorf Research Center)の大型チャンバを用いる(例えばゲンツェル(Guenzel)、Surface & Coatings Technology、136、47〜50頁、2001年、またはゲンツェル(Guenzel)、J.Vacuum Science & Tech.B、17(2)、895〜899頁、1999年参照のこと。前記各文献の全開示は、参照により余すところなく本願に援用される)。残気の圧力は10−3Paであり、PIII中の窒素の作動圧力は10−1Paであった。プラズマは、13.56MHzで作動する高周波発生器によって生成される。5μs幅、かつ30、20、10および5kVのピーク電圧の高電圧パルスが用いられる。過熱を防止するため、0.2Hz〜200Hzのパルス繰り返し周期を用いる。試料のPIII処理は、5−1014〜1017イオン/cm2に及ぶ線量で行なわれる。バルーンの位置は、サンプルホルダを用いて固定される。バルーンの外面を均一に処理するために、バルーンは、処理中に3回(各回につき120度ずつ)回転される。高電圧パルスの間にrf−プラズマと試料とが直接接触するのを防止し、ポリマー材料が帯電するのを防止するために、金属グリッドの形態の付加的な電極がサンプルホルダの上面に取り付けられる。FTIR ATRスペクトルは、ダイヤモンドATR結晶を備えたニコレ(Nicolet)230、またはGe ATR結晶を備えたニコレ マグナ(Nicolet Magna)750によって記録することができる。走査数は100であり、分解能は2cm−1である。スペクトルはニコレOMNICソフトウェアによって解析される。UV透過性スペクトルは、200〜700nmの波長スペクトル領域において10nmステップで記録され得る。ポリマー表面に沿った線量分布の均質性を判定する定量分析には、光学密度スケールが用いられる。ポリマー表面上における線量分布の均質性の分析には、xy−座標上でのスペクトルのマッピングの型が用いられる。マッピングの空間分解能は約4×4mmである。マイクロ−ラマンスペクトルは、ラブラム(LabRam)分析ソフトウェアを備えたジョバン イボン(Jobin Yvon)HR800において、Nd:YAGレーザー照射(2ω、λ=532.14nm)によって励起された後方散乱モードにおいて記録される。レーザー光線の焦光およびラマン散乱光の収集のためには、光学顕微鏡が用いられる。レーザー光線の強度は試料の過熱を防止するように制御される。スペクトル分解は4cm−1である。取得される走査数は100〜4000であり、実際の数は試料の信号対雑音に依存する。
【0032】
引張試験は、ツウィック(Zwick)引張試験機上で行なわれる。30×2×0.03mmのPEBAX(登録商標)7033細片が用いられる。細片には、2mmの板を介して相互に連結された6枚の刃を備えたマルチブレードナイフを用いてバルーンを切断する。クランプに対して強固に機械的に固定するために、エポキシ接着剤を用いて、細片の端をアルミニウムホイルに接着する。1つの試料分析に5枚の細片が用いられる。試験の荷重方向はバルーンの長手方向軸線に対応する。5mm/分のクロスヘッド速度が適用される。結果の分析は歪み応力図によって行われる。破壊におけるモジュラス(modulus)、伸びおよび応力が分析される。モジュラスは、歪み応力曲線の直線部分の初期によって決定される。
【0033】
引掻試験は、固定された試料を有するテーブルと、1ミクロンの先端を有するダイヤモンド圧子を備えた釣り合い錘(balance)とを備えた試験装置によって行なわれる。前記テーブルは0.15mm/秒の速度で移動する。ダイヤモンド圧子は1、2、5、20および50グラムの重量で荷重される。引掻試験にはPEBAX(登録商標)7033板が用いられる。引掻深さおよび幅は光学的形状測定(optical profilometry)によって測定される。引掻試験装置は、ポリエチレン板、ポリアミド板およびポリテトラフルオロエチレン板について較正される。硬度は、20nmの直径を有するシリコン先端および80nN/mnの定数を有するカンチレバーを用いた接触モードのAFM法によって測定される。(例えば、プリクリル(Prikryl)、Surface & Coatings Technology、200、468〜471頁、2005年参照。前記文献の全開示は、参照により余すところなく本願に援用される)。
【0034】
PIIIによる処理後のPEBAX(登録商標)7033試料における構造変化
図6は、30keVでのPIII処理後に、1850cm−1〜900cm−1まで取得したPEBAX(登録商標)7033膜の一連のFTIR ATRスペクトルである。最下部のスペクトルは未処理の膜であり、他のスペクトルは、5×1014、1015、5×1015、1016、5×1016および1017イオン/cm2でそれぞれ処理された膜である。PIII線量による1638cm−1ピークの広がり、および1720/1737cm−1のダブレットの出現は、1650〜1750cm−1の領域における新たな重複した線によって引き起こされたものと考えられる。これらの新たな線は、炭素−炭素二重結合および炭素−酸素二重結合の振動である。そのような線の出現は、イオン源の作用下におけるPEBAX(登録商標)ポリマーの炭化および酸化に関係する。
【0035】
図7は、30keVでのPIII処理後に3700cm−1〜2550cm−1まで取得したPEBAX(登録商標)7033膜の一連のFTIR ATRスペクトルである。最下部のスペクトルは未処理の膜であり、他のスペクトルは、5×1014、1015、5×1015、1016、5×1016および1017イオン/cm2でそれぞれ処理された膜である。スペクトル中、3600〜3200cm−1領域に新たな線が観察される。この広いピークはヒドロキシル基のO−H振動に対応する。O−H基は未処理のPEBAX(登録商標)の巨大分子中に(鎖末端において)存在しているが、それらの濃度はPIII処理後よりもはるかに低い。処理済みの試料のスペクトルにおける強いOH線の出現は、解重合過程に起因する。解重合過程では、壊れたポリマー鎖端が酸素と反応し、試料中のO−H濃度を効果的に増大する。
【0036】
図8は、20keVでのPIII処理後に1900cm−1〜775cm−1まで取得したPEBAX(登録商標)7033膜の一連のラマンスペクトルである。最下部のスペクトルは未処理の膜であり、他のスペクトルは、5×1014、1015、5×1015、1016、および5×1016イオン/cm2でそれぞれ処理された膜である。未処理のPEBAX(登録商標)のスペクトルでは、1645、1446、1381、1305、1121、1074cm−1の線がポリアミド−ポリエーテル巨大分子(PEBAX(登録商標))の振動に対応していた。処理済みの試料のスペクトルでは、このような線の強度はPIII線量が増大するにつれて減少し、1510cm−1を中心とした新たな広いピークが出現する。このピークは非晶質炭素の振動に対応する。高線量においては、PEBAX(登録商標)に本質的に関連する振動は消失し、非晶質ダイヤモンドに関連する広いピークによって置き換わる。ラマンスペクトルにおけるこれらの強い変化は、膜の外側部分のみにおいて観察される。これは膜の外側部分のみが炭化されることを示している。膜のより深い部分に対するレーザー焦点の焦点ぼけまたはずれは、未処理のPEBAX(登録商標)のスペクトルを生ずる。
【0037】
図9は、30keVでのPIII処理後に1900cm−1〜775cm−1まで取得したPEBAX(登録商標)7033膜の一連のラマンスペクトルである。最下部のスペクトルは未処理の膜であり、他のスペクトルは、5×1014、1015、5×1015、1016、5×1016および1017イオン/cm2でそれぞれ処理された膜である。30keVエネルギーでのPIII処理の後、相対的に低い線量(5×1014〜1×1015イオン/cm2)で処理された試料のラマンスペクトルは、図8に示したものに非常に類似して見える。しかしながら、相対的に高い線量(5×1015以上)では、ラマンスペクトルは、1580および1350cm−1において2つの比較的鋭いピークを含んでいる。これらの線は黒鉛型構造およびDLC構造の形態にある炭素に対応する。1580cm−1のピークはG−ピークと呼ばれ、1350cm−1のピークはDピークと呼ばれる。これらの線は、30keVのエネルギーを有するイオンによって処理された試料においてのみ観察される。また、より高線量におけるダイヤモンド状炭素材料のラマンスペクトルは、シャオ(Shiao)、Thin Solid Films、第283巻、145〜150頁(1996年)によって記載されており、前記文献の全開示は、参照により余すところなく本願に援用される。
【0038】
図10Aおよび図10Bを参照すると、PIIIの作用下でのPEBAX(登録商標)における構造変化もまた、紫外線領域および可視領域の透過スペクトルによって観察することができる。図10Aは、20keVでのPIII処理後に500nm〜240nmまで取得したPEBAX(登録商標)7033膜の一連のUV−Vis透過スペクトルであり、図10Bは30keVでの処理後の一連のものである。双方の図において、最下部のスペクトルは未処理の膜であり、他のスペクトルは、5×1014、1015、5×1015、1016、5×1016および1017イオン/cm2によってそれぞれ処理された膜である。PIII修飾は、スペクトルにおいて付加的な重複した線の形成をもたらす。これらのスペクトルから、短波長線は長波長線より大きな強度を有しており、吸収の強度は線量の増加に伴って増大していることは明らかである。これらの付加的な線は、縮合芳香族およびポリエン構造を含む不飽和炭素−炭素構造中のπ−電子による光の吸収に起因する。縮合構造の数の増大によって、吸収線の位置はスペクトルの赤方に偏移させられる。これは、長い共役不飽和炭素−炭素基の形成を示す。
【0039】
図11Aおよび図11Bを参照すると、2つの別個の波長における光学密度によって、PRBAX(登録商標)7033膜中の不飽和炭素−炭素構造の定量分析が行われている。そのような分析において、250nmは、n=1に対応し、550nmは、n=4に対応する。ここで、nは共役芳香族構造の数である。低線量では、不飽和炭素−炭素構造の収集の率は低い。しかしながら、約1015イオン/cm2の線量から大きな吸収の増大が開始する。n=1の構造の形成は低線量で開始し、n=4である高度に共役した炭素−炭素構造はより高線量において出現する。
【0040】
ここで図12を参照すると、PEBAX(登録商標)7033膜のUVスペクトルおよびLDPEのUVスペクトルを比較すると、PEBAX(登録商標)膜は、より低レベルの不飽和炭素−炭素構造を有する。透過スペクトルが、PEBAX(登録商標)膜およびLDPEの初期の膜に対する吸収線を含んでいないため、250nmにおける光学密度は、修飾されたポリマー領域からのみの吸収として解釈することができる。従って、同一のPIII線量における光学密度の値は、定量的な比較に用いることができる。PEBAX(登録商標)膜中の不飽和炭素−炭素構造の概算は、PIIIのすべての線量について、LDPEと比較して、68±8%を与える。この数は、PEBAX(登録商標)の約3分の2が炭化層の形成に関与することを意味する。
【0041】
図13を参照すると、PEBAX(登録商標)7033の表面形態は、PIII処理の高い線量において強く変化し、これは顕微鏡写真において観察可能である。処理の低い線量では、表面形態は著しく変化しない。1015イオン/cm2の線量では、表面はいくらかのひび(cracks)および亀裂(fissures)を含んでいる。しかしながら、より高線量では、ひびおよび亀裂の広範囲な網状組織が観察される。ひびおよび亀裂の網状組織にもかかわらず、バルクポリマーからの炭化領域の剥離は観察されない。
【0042】
PIIIによる処理後のPHBAX(登録商標)膜の機械的性質
図14を参照すると、PIII処理済みPEBAX(登録商標)7033膜の応力‐歪曲線は、対応する未処理の膜の応力‐歪曲線とほとんど同一である。試験したすべてのPEBAX(登録商標)膜の曲線は、すべての線量およびエネルギーについて類似している。
【0043】
図15を参照すると、破壊における強度もまた、PIII処理後において変化するようには見えない。さらに、図16および図17を参照すると、破壊における伸び率および弾性率は、統計的にはPIII処理によって影響されない。
【0044】
未修飾領域の厚さ(これらの試料に対しては約30,000nmと推定される)に対する修飾領域の厚さ(これらの試料については100nm未満と推定される)を用いて、PEBAX(登録商標)膜のPIII修飾が、なぜこれらの膜の試験した機械的特性において著しい変化をもたらさないのかを説明することができる。
【0045】
PIII処理後のPEBAX(登録商標)膜の表面硬度および引掻試験
図21を参照すると、参考にシリコン板の荷重曲線が用いられており、硬い表面上におけるカンチレバーの典型的な変形挙動が示されている。曲線の傾斜が相対的に急勾配であり(高い弾性率を示す)、ヒステリシスが殆どまたは全く生じないことに注目されたい。対照的に、未処理のPEBAX(登録商標)7033膜の荷重曲線は同じほど急勾配でなく(低い弾性率を示す)、かなりのヒステリシスを示す。最初は、PEBAX(登録商標)荷重曲線は、先端荷重の作用下におけるポリマー材料の変形に対応する下方の曲線をたどる。非荷重曲線は先端の引き返し動作に対応し、荷重曲線および非荷重曲線が同一でないため、ヒステリシスが観察される。ヒステリシスは、荷重下の高分子(polymer macromolecules)の運動および構造的な遷移(conformational transitions)による機械的エネルギーの損失によって引き起こされる。そのような挙動は相対的に柔軟な材料に典型的なものである。
【0046】
ここで、1016イオン/cm2の線量および30keVでPIIIによって処理されたPEBAX(登録商標)7033板の荷重曲線である図22を参照する。前記曲線は、図21に示した未処理の板の曲線よりも概して急勾配であり、ヒステリシスはほとんど消失していることに注目されたい。そのような曲線は、シリコンの基準曲線に類似しており、PEBAX(登録商標)板が硬い表面を有することを示している。
【0047】
図23および図24を参照すると、相対的に低線量では、処理済みのPEBAX(登録商標)板の荷重曲線は、より複雑である。一般に、これらの荷重曲線には2つの部分が存在する。第1部分は、高いモジュラスに対応する急勾配曲線を有し、一方、第2部分の曲線は、同じほどには急勾配ではなく、低いモジュラスに対応する。観察された荷重曲線の複雑な特徴は、炭化領域内へのAFM先端の侵入によって引き起こされるものと考えられる。相対的に低い線量では、この層は先端による侵入を止めるのに十分なほど硬くはなく、また厚くはない。
【0048】
図25は、上記に記載した荷重曲線の2つの部分の弾性率の依存性を示す。図25に見られるように、第1部分の弾性率は最初に増大するが、荷重曲線の第2部分の弾性率は、相対的に一定のままである。しかしながら、線量1016のイオン/cm2では、曲線は線形になり、各部分の弾性率は等しくなる。この線量では、炭化層は先端荷重を保持するのに十分なほど硬くなると考えられる。
【0049】
図18および図19を参照すると、引掻試験の結果が示されている。20keVおよび30keVにおいて様々な線量で処理されたPEBAX(登録商標)7033板に様々な荷重を掛ける。(欄内の線量は1015イオン/cm2の倍数で表わされている)。修飾済みのPEBAX(登録商標)板と未修飾のPEBAX(登録商標)板との間に有意な差は見られない。
【0050】
ここで、図20を参照すると、未処理のPEBAX(登録商標)板の硬度係数において、20keVおよび30keVにおいて様々な線量で処理されたPEBAX(登録商標)板と比較した場合、有意な差は見られない。修飾領域の厚さは非常に小さいため、引掻試験装置は修飾領域の変化を測定するのに十分なほど感度が高くない。引掻試験装置のダイヤモンド圧子が薄い修飾領域内に侵入するものと考えられる。
【0051】
図26を参照すると、炭化領域の弾性率は侵入するイオンのエネルギーに依存し、エネルギーが高いほどより高いモジュラスをもたらす。特に高いモジュラスは30keVのエネルギーについて観察された。30keV後のモジュラスの急増は、黒鉛構造およびDLC構造の形成に関係し得る。
【0052】
PIII処理後のPEBAX(登録商標)膜の表面硬度の均質性
上記で検討したように、修飾領域の硬度は、線量およびイオンエネルギーの関数である。表面硬度を均質にするためには、線量は等しく全表面上にわたって分散されなければならない。バルーンは円筒形であるので、図27に示すように、線量分布は角依存性を有する。PIII処理中にバルーンを連続的に回転させることによって、最も均質な表面硬度が提供されるであろう。しかしながら、これが可能でない場合、バルーンを3回(各回につき120度ずつ)回転させることによって、適当な均質性が提供され、表面硬度においてわずか10パーセントの偏差を有する。上記に記載したバルーン試料を調製するためには、この3回転法を用いた。
【0053】
表面硬度の不均質性の別の理由は、処理面付近におけるプラズマの変動および対応するイオン流の変動である。この効果は、高電圧パルスの間において、体積中のプラズマ密度の変動およびポリマー表面の帯電効果によって引き起こされる。この効果は、バルーン試料の上に付加的な電極を配置することによって大幅に低減することができる。この目的のために、サンプルホルダと電気的に連絡した金属グリッドを用いた。この配置は、イオンがバルーン表面への途中でグリッドを介して通過することを可能にする。線量分布は、LDPE膜からのUV−visスペクトルを用いてマップされ得る。そのようなマッピングを図28に示す。
【0054】
図28および図29に示したように、サンプルホルダの中央部は10%以上変化しない線量を提供する。中央部の大きさは、付加的な電極の大きさに依存する。付加的な電極が無い場合には、線量分布は制御されない。上記で検討した試料において、均一な線量の領域の直径は約50mmである。上記で検討したバルーンはすべて、サンプルホルダの中心部において処理される。
【0055】
未修飾バルーンおよび修飾済みバルーンの抜去、破裂、トルクおよび固定性
下記の表は、未修飾バルーンおよび修飾済みバルーンに対するバルーンの抜去、破裂、トルクおよび固定性に関するデータを提供する。修飾済みバルーンは、上述したように30keVで1016イオン/cm2の線量を用いて、PIIIによって処理される。
【0056】
【表1】
バルーン抜去力は、デベンズ(Devens)の米国特許出願公開第2004/0210211号によって概説された方法を用いて測定される。前記特許文献の全開示は、参照により余すところなく本願に援用される。簡潔に述べると、バルーン抜去力は、ポリマーチューブによって画定された曲がりくねった通路からバルーンを取り出すのに必要な力を判定することによって測定される。デベンズ(米国特許出願公開第2004/0210211号)によって説明されているように、カテーテルおよびチューブに作用する力は、一連のトランスデューサによって測定することができる。トルクは、バルーン抜去力試験に用いられるのと同一の曲がりくねった通路内においてバルーンを回転させて、回転に対する抵抗力を判定することによって測定される。平均破裂強度は、ワング(Wang)の米国特許第6,171,278号およびレヴィー(Levy)の米国特許第4,490,421号に記載されているように、バルーンが20℃で破裂する膨張圧の判定により測定される。前記特許文献の各々の全開示は、参照により余すところなく本願に援用される。固定性はASTM F2393−04を用いて測定され、前記文献の全開示は、参照により余すところなく本願に援用される。
【0057】
実施形態において、バルーンは様々な血管または血管外の用途おいて用いることができる。典型的な用途としては、神経系、頚動脈、食道、または尿管が挙げられる。
上述したような処理の後、バルーンはさらに処理されて、例えば、さらなるコーティング、例えば薬剤を含有するヒドロゲルまたはポリマーマトリックスコーティングを備えることができる。実施形態において、バルーンは、薬剤または薬剤を含有するポリマーマトリックスで処理され、続いて、その薬剤、マトリックスおよび/または下方に位置するバルーンを修飾するためにイオンによって処理され得る。そのような処理は、バルーンからの薬剤の放出を増強または遅延させることができる。実施形態において、他の医療装置、例えば共押し出しされたシャフトのような共押し出しされた医療装置が、上述したようにイオンによって処理される。さらなる実施形態は以下の特許請求の範囲内に存する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1A】折り畳んだ状態のステントの搬送を示す部分長手方向断面図。
【図1B】図1Aのステントの拡張を示す部分長手方向断面図。
【図1C】図1Aおよび図1Bのステントの体内管腔内における展開を示す部分長手方向断面図。
【図2A】未修飾基材ポリマー系領域および硬い基材ポリマー修飾領域を示す、バルーンの壁の断面図における横方向の端部を示す図。
【図2B】図2Aに示したバルーン壁の一部の構造的構成の概略図。
【図3A】プラズマ侵入イオン注入(「PIII」)装置の概略断面図。
【図3B】サンプルホルダ(金属グリッド電極は視界から部分的に外れている)中にある10個のバルーンの概略平面図。
【図3C】図3Aのプラズマ侵入イオン注入装置の詳細断面図。
【図4A】修飾前のバルーン壁を示す、共押し出しバルーンの長手方向断面図。
【図4B】修飾後のバルーン壁を示す、図4Aの共押し出バルーンの長手方向断面図。
【図5A】修飾前のバルーン表面の顕微鏡写真。
【図5B】修飾後のバルーン表面の顕微鏡写真。
【図5C】亀裂および亀裂によって画定される「島」を示す、修飾後のバルーン表面の概略平面図。
【図6】30keVでのPIII処理後に1850cm−1〜900cm−1まで取得したPEBAX(登録商標)7033膜の一連のFTIR ATRスペクトルであり、最下部のスペクトルは未処理の膜であり、他のスペクトルは、5×1014、1015、5×1015、1016、5×1016、および1017イオン/cm2でそれぞれ処理された膜である。
【図7】30keVでのPIII処理後に3700cm−1〜2550cm−1まで取得したPEBAX(登録商標)7033膜の一連のFTIR ATRスペクトルであり、最下部のスペクトルは未処理の膜であり、他のスペクトルは、5×1014、1015、5×1015、1016、5×1016、および1017イオン/cm2でそれぞれ処理された膜である。
【図8】20keVでのPIII処理後に1900cm−1〜775cm−1まで取得したPEBAX(登録商標)7033膜の一連のラマンスペクトルであり、最下部のスペクトルは未処理の膜であり、他のスペクトルは、5×1014、1015、5×1015、1016、および5×1016イオン/cm2でそれぞれ処理された膜である。
【図9】30keVでのPIII処理後に1900cm−1〜775cm−1まで取得したPEBAX(登録商標)7033膜の一連のラマンペクトルであり、最下部のスペクトルは未処理の膜であり、他のスペクトルは、5×1014、1015、5×1015、1016、5×1016、および1017イオン/cm2でそれぞれ処理された膜である。
【図10A】20keVでのPIII処理後に500nm〜240nmまで取得したPEBAX(登録商標)7033膜の一連のUV−Vis透過スペクトルであり、最下部のスペクトルは未処理の膜であり、他のスペクトルは、5×1014、1015、5×1015、1016、5×1016、および1017イオン/cm2でそれぞれ処理された膜である。
【図10B】30keVでのPIII処理後に500nm〜240nmまで取得したPEBAX(登録商標)7033膜の一連のUV−Vis透過スペクトルであり、最下部のスペクトルは未処理の膜であり、他のスペクトルは、5×1014、1015、5×1015、1016、5×1016、および1017イオン/cm2でそれぞれ処理された膜である。
【図11A】20keVおよび30keVにおけるPIII線量の関数として、PEBAX(登録商標)7033膜の250nmにおける光学密度を示す図。
【図11B】20keVおよび30keVにおけるPIII線量の関数として、PEBAX(登録商標)7033膜の550nmにおける光学密度を示す図。
【図12】5keV、10keV、20keVおよび30keVにおけるPIII線量の関数として、低密度ポリエチレン(LDPE)膜の250nmにおける光学密度を示す図。
【図13】30keVにおいて1016イオン/cm2で処理した後のPEBAX(登録商標)7033のバルーン表面の顕微鏡写真。
【図14】PIIIで処理したいくつかのPEBAX(登録商標)7033膜に対する応力−歪み曲線を示す図。
【図15】20keVおよび30keVにおける線量の関数として、PIIIで処理したPEBAX(登録商標)7033膜の強度を示す図。
【図16】20keVおよび30keVにおける線量の関数として、PEBAX(登録商標)7033膜の破壊における伸び率を示す図。
【図17】20kcVおよび30keVにおける線量の関数として、PEBAX(登録商標)7033膜の弾性率を示す図。
【図18】20keVでの様々な線量におけるPEBAX(登録商標)7033板の引掻試験を示す図(欄内の線量は1015イオン/cm2の倍数で表わされている)。
【図19】30keVでの様々な線量におけるPEBAX(登録商標)7033板の引掻試験を示す図(欄内の線量は1015イオン/cm2の倍数で表わされている)。
【図20】20keVおよび30keVにおける線量の関数として、PEBAX(登録商標)7033板の硬度係数を示す図。
【図21】硬質シリコン板(参照としての)および未処理のPEBAX(登録商標)7033板について原子間力顕微鏡(AFM)を用いて得られた荷重曲線を示す図。
【図22】1016イオン/cm2の線量および30keVにおいてPIIIで処理されたPEBAX(登録商標)7033板についてAFMを用いて得られた荷重曲線を示す図。
【図23】1015イオン/cm2の線量および30keVにおいてPIIIで処理されたPEBAX(登録商標)7033板についてAFMを用いて得られた荷重曲線を示す図。
【図24】5×1014イオン/cm2の線量および10keVにおいてPIIIで処理されたPEBAX(登録商標)7033板についてAFMを用いて得られた荷重曲線を示す図。
【図25】10keVにおいて様々な線量で処理されたPEBAX(登録商標)7033板について、荷重曲線の第1部分(モジュール1)および荷重曲線の第2部分(モジュール2)の見掛け硬さ係数を示す図。
【図26】10keV、20keVおよび30keVにおける線量の関数として、PEBAX(登録商標)7033板の弾性率を示す図。
【図27】バルーン角度の関数として、正規化された線量分布を示す図。
【図28】付加的な電極を有するPIII装置の線量分布を示す図。
【図29】X−Y平面における図28の線量分布。
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用バルーンおよび該医療用バルーンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
身体は、動脈、他の血管および他の体内管腔等の様々な通路を備える。これらの通路は、時に、例えば腫瘍によって閉塞されたり、またはプラークによって制限されたりする。閉塞された体内管を拡張するために、例えば血管形成術において、バルーンカテーテルを用いることができる。
【0003】
バルーンカテーテルは、長く細いカテーテル本体上に保持された膨縮可能なバルーンを備え得る。バルーンは、体内への挿入を容易にする目的で、バルーンカテーテルの半径方向の外形を縮小するために、最初はカテーテル本体のまわりに折り重ねられている。
【0004】
使用中、折り重ねられたバルーンは、血管内に配置されたガイドワイヤー上にバルーンカテーテルを通すことによって、血管内の目標位置、例えばプラークによって閉塞された部分に搬送され得る。次に、バルーンは、例えばバルーンの内部に流体を導入することによって膨張させられる。バルーンを膨張させることにより、その血管が血流速度の増大を可能にし得るように、血管を半径方向に容易に拡張することができる。使用後、バルーンは収縮させられて、身体から抜去される。
【0005】
別の技術において、バルーンカテーテルはまた、ステントまたはステントグラフトのような医療装置を配置して、閉塞した通路を補強および/または開放するために用いられ得る。例えば、ステントは、ステントが標的部位に輸送されるときには圧縮形態または大きさが縮小された形態で、ステントを支持するバルーンカテーテルによって、身体の内側に搬送され得る。前記部位に到達すると、バルーンは、拡張したステントを変形させ、そのステントを管腔壁に接触した状態で所定位置に固定するように膨張させられ得る。次に、バルーンは収縮させられて、カテーテルは抜去される。ステントの搬送は、ヒース(Heath)の特許文献1においてさらに記載されており、前記特許文献の全開示は、参照により余すところなく本願に援用される。
【0006】
1つの一般的なバルーンカテーテルの設計は、外側チューブに包囲された内側チューブという同軸的配置を有する。内側チューブは、一般的には、ガイドワイヤー上において装置を搬送するために用いられ得る管腔を備える。膨張流体は内側チューブと外側チューブとの間を通過する。この設計の一例は、アーネイ(Arney)の特許文献2に記載されており、前記特許文献の全容は、参照により余すところなく本願に援用される。
【0007】
別の一般的な設計において、カテーテルは、並列して配置されたガイドワイヤー管腔および膨張管腔を画定する本体を備える。この配置の例は、ワング(Wang)の特許文献3に記載されており、前記特許文献の全容は、参照により余すところなく本願に援用される。
【特許文献1】米国特許第6,290,721号明細書
【特許文献2】米国特許第5,047,045号明細書
【特許文献3】米国特許第5,195,969号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、穿刺抵抗(puncture resistance)、耐引掻性、可撓性、破裂強度および薬物放出等の特性を向上させた医療用バルーンおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において、本開示は、炭化された基材ポリマー材料を含む一体的な修飾領域を備えた基材ポリマー系(base polymer system)を有するバルーン壁を備える医療用バルーンを特徴とする。
【0010】
別の態様において、本開示は、炭化された基材ポリマー材料を含む一体的な修飾領域を備えた基材ポリマー系を有するバルーン壁を備える医療用バルーンカテーテルを特徴とする。
【0011】
別の態様において、本開示は、ポリマー系を提供する工程と、前記ポリマー系をプラズマ侵入イオン注入(plasma immersion ion implantation)によって処理する工程と、処理されたポリマー系を医療用バルーンに用いる工程とを有する医療用バルーンを製造する方法を特徴とする。
【0012】
別の態様において、本開示は、ポリマー系を提供する工程と、前記ポリマー系をイオン注入によって処理して、非ポリマー系材料の実質的な被着を行うことなく、ポリマー系を修飾する工程と、処理されたポリマー系を医療用バルーンに用いる工程とを有する医療用バルーンを製造する方法を特徴とする。
【0013】
別の態様において、本開示は、上述の方法のうちのいずれかよって形成された医療用バルーンを特徴とする。
別の態様において、本開示は、共押し出しポリマーを含む基材ポリマー系を含む医療装置を特徴とし、前記基材ポリマー系は炭化された基材ポリマー系材料の一体的な修飾領域を有する。
【0014】
別の態様において、本開示はラマンスペクトル(Raman)においてDピークおよび/またはGピークを示す医療用バルーンを特徴とする。
他の態様または実施形態は、上記の態様の特徴および/または下記の1つ以上の特徴の組み合わせを有し得る。炭化された領域はダイヤモンド状の材料を含有し、かつ/または、炭化された領域は黒鉛材料を含有する。修飾領域は、架橋した基材ポリマー材料の領域を備える。架橋した領域は、炭化された基材ポリマー材料およびほぼ未修飾の基材ポリマー材料に直接結合されている。医療用バルーンは、酸化した基材ポリマー材料の領域を含み得る。その酸化した領域は、基材ポリマー系にさらに結合することなく、炭化された材料(carbonized material)に直接結合されている。修飾領域は、基材ポリマー系の露出面から延びている。基材ポリマー系の弾性率(modulus of elasticity)は、修飾領域を有さない基材ポリマー系の+/−10%以内である。修飾領域の厚さは約10〜約200nmである。修飾領域は、基材ポリマー系の全厚の約1%以下である。炭化された基材ポリマー材料の硬度係数は、約500ビッカーズ硬度(kgf/mm2)以上である。バルーンは、約5パーセント以上の表面割れ目密度を有する破面組織を有する。基材ポリマー系は治療薬を保持する。基材ポリマー系は共押し出しポリマー層を備える。バルーンのコンプライアンス(compliancy)は、約2バール〜約15バールの内部圧力において、バルーンの初期直径の10パーセント未満である。バルーンカテーテルは、脈管系で使用するための大きさを有する。バルーンカテーテルは、冠動脈で使用するための大きさを有する。バルーンカテーテルは、バルーン上に配置されたステントを備える。イオンエネルギーおよび線量は、ポリマー系に炭化された領域を形成するように制御される。イオンエネルギーは、約15keV以上の範囲であり、かつ約1×1015イオン/cm2以上の線量である。ステントは医療用バルーンの周りに位置する。ポリマー系の処理は、水素、ヘリウム、ホウ素、ネオン、炭素、酸素、窒素、アルゴン、またはこれらの混合物のうちから選択されるイオンを用いる。修飾領域は、共押し出しポリマーの界面(interface)を備える。
【0015】
実施形態は、以下の利点の1つ以上を有し得る。所与の用途に対して、穿刺抵抗(puncture resistance)、耐引掻性、可撓性、破裂強度および薬物放出のような特性が高められたバルーンが提供される。とりわけ、ステントデリバリーバルーンは、高い耐引掻性を備える。バルーンの耐引掻性は、例えばダイヤモンド状材料(例えば、ダイヤモンド状炭素または非晶質ダイヤモンド)を含む、基材ポリマー系に密着した相対的に硬い領域を備えるバルーン壁を備えることによって増強される。
【0016】
さらなる特徴、実施形態および利点は以下に述べる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1A〜図1Cを参照すると、ステント10は、カテーテル14の先端付近に保持されたバルーン12上に配置されており、例えば冠状動脈のような血管などの管腔16を通って、バルーンおよびステントを保持している部分が閉塞18(図1A)の領域に到達するまで案内される。次に、バルーン12を膨張させることによって、ステント10は半径方向に拡張され、血管壁に対して押圧され、その結果として、閉塞18は圧迫され、それを包囲する血管壁は半径方向の拡張を受ける(図1B)。次に、バルーンから圧力が解放され、カテーテルは血管から抜去される(図1C)。
【0018】
図2Aを参照すると、全厚TWを有するバルーン壁20は、ステントに晒される外面22と、バルーン内部において膨張流体に晒される内面29とを備える。バルーン壁は、未修飾領域26と、厚さTMの硬い修飾領域28とを備える基材ポリマー系から形成される。未修飾基材ポリマーは、壁の全厚TWと修飾領域の厚さTMとの差である厚さTBを有する。
【0019】
図2Bを参照すると、修飾領域は、酸化領域30(例えば、カルボニル基およびアルデヒド基、カルボン酸基および/またはアルコール基を有する)と、炭化領域32(例えば、増加したsp2結合、特に芳香族炭素−炭素結合および/またはsp3ダイヤモンド状炭素−炭素結合を有する)と、架橋領域34とを含む一連の小領域を有する。特定の実施形態において、架橋領域34は、未修飾基材ポリマー系および炭化領域32に直接結合された、ポリマーの架橋が増進した領域である。炭化領域32は、一般的には、ダイヤモンド状炭素(DLC)中に存在するような、高レベルのsp3混成炭素原子、例えば、25パーセント超のsp3、40パーセント超、50パーセント超のsp3混成炭素原子を含むバンドである。炭化層32に結合され、かつ大気に露出した酸化領域30は、基材ポリマー系に比べて高い酸素含有量を有する。炭化領域の硬い性質、すなわち耐引掻性は、例えばステントの緊縮(crimping)中に生じ得るピンホールの形成を低減する。例えば、ステントとバルーン外面との間に配置された塵粒は、緊縮中に、バルーンへと押し付けられ、バルーンを貫通して、ピンホールを形成する。修飾領域の段階的に配列された多重領域構造は、未修飾基材ポリマーに対する修飾層の密着性を高め、剥離の可能性を低減する。さらに、構造における段階的配列の性質と、壁の全厚に対して修飾領域の厚さが薄いこととにより、バルーンは未修飾バルーンの機械的性質をほぼ維持することが可能となる。様々な領域、例えば、炭化領域、酸化領域、および架橋領域の存在は、例えば赤外線分光法、ラマン分光法、UV−vis分光法を用いて、検出することができる。例えば、ラマン分光法測定は並進対称の変化に対して感度が高く、しばしば炭素膜における無秩序さおよび結晶子の形成の検討において有用である。ラマンの検討において、黒鉛は1580cm−1において特徴的なピーク(黒鉛(graphite)の「G」と称される)を示す場合がある。無秩序な黒鉛(Disordered graphite)は、1350cm−1(無秩序(disorder)の「D」と称される)において第2のピークを有する。該ピークは、材料中に存在するsp3結合の程度に関連していることが報告されている。無秩序な黒鉛におけるDピークの出現は、構造内における6員環(six−fold ring)およびクラスターの存在を示し、したがって、材料中におけるsp3結合の存在を示し得る。XPSは、黒鉛および非晶質炭素成分からダイヤモンド相を区別するために用いられてきた別の技術である。スペクトルの解析によって、材料内に存在する結合の種類に関して推論がなされ得る。このアプローチはDLC材料中におけるsp3/sp2比を決定するために適用されてきた。(例えば、ラオ(Rao)、Surface & Coatings Technology 197、154〜160頁、2005年を参照されたい。前記文献の全開示は、参照により余すところなく本願に援用される)。
【0020】
バルーンはプラズマ侵入イオン注入(「PIII」)を用いて修飾することができる。図3Aおよび図3Bを参照すると、PIIIの間、窒素プラズマのようなプラズマ40中の荷電種は、名目上の非拡張状態にあり、かつサンプルホルダ41に配置されたバルーン13に向かって、高速で加速される。バルーンに向かうプラズマの荷電種の加速は、プラズマとバルーンの下に位置する電極との間の電位差によって駆動される。バルーンと衝突すると、荷電種は、それらの高い速度により、ある距離だけバルーン内に侵入し、バルーンの材料と反応して、上記で検討した領域を形成する。一般に、侵入深さは、少なくともある程度は、プラズマとバルーンの下に位置する電極との間の電位差によって制御される。所望により、例えばサンプルホルダの上方に配置された金属グリッド43の形態にある付加的な電極を用いることができる。そのような金属グリッドは、高電圧パルス間においてバルーンがrf−プラズマと直接接触することを防止するのに有利であり、バルーン材料の帯電効果を低減することができる。
【0021】
図3Cを参照すると、PIII処理システム80の実施形態は、真空ポンプに接続された吸引口(vacuum port)84を有する真空チャンバ82と、プラズマを生成するチャンバ82に、例えば窒素のようなガスを搬送するためのガス源130とを備える。システム80は、例えばガラス製または石英製である一連の誘電体窓86を備え、誘電体窓86はチャンバ82内の真空を維持するためにo−リング90によって密閉されている。窓86のうちのいくつかには、RFプラズマ源92が取り外し可能に取り付けられており、各RFプラズマ源は接地されたシールド98内に位置するヘリカルアンテナ96を有する。RFプラズマ源が取り付けられていない窓は、例えばチャンバ82への観察口として有用である。各アンテナ96は、ネットワーク102および結合コンデンサ104を介して、RF発生器100と電気的に連絡している。各アンテナ96はまた、同調コンデンサ106とも電気的に連絡している。各同調コンデンサ106は,制御装置110からの信号D,D’,D”によって制御される。各同調コンデンサ106を調整することによって、各RFアンテナ96からの出力が調整され、生成されるプラズマの均質性を維持する。プラズマからのイオンに直接曝露されるバルーンの領域は、バルーンをバルーンの軸線のまわりに回転させることにより制御することができる。バルーン全体の均質な修飾を高めるために、処理中にバルーンを連続的に回転させることができる。これに代わって、回転は間欠的であってもよいし、または選択された領域をマスクして、それらのマスクされた領域の処理を排除してもよい。PIIIの付加的な詳細は、チュー(Chu)の米国特許第6,120,260号;ブルクナー(Brukner)、Surface and Coatings Technology、103〜104頁および227〜230頁(1998年);およびクッシェンコ(Kutsenko)、Acta Materialia、52、4329〜4335頁(2004年)によって記載されている。前記文献の各々の全開示は、参照により余すところなく本願に援用される。
【0022】
バルーンの修飾は、選択した深さにおいて所望の種類の修飾を生じるように制御される。また修飾の性質および深さは、バルーンの全体的な機械的性質を調整するように制御される。特定の実施形態において、前記修飾は、基材ポリマー系の引張強さ、伸びおよび弾性率のような機械的性質が修飾の存在によって実質的に変更されないように制御される。実施形態において、修飾されたポリマーの引張強さ、伸びおよび弾性率は、未修飾のポリマーのそれらの各値とほぼ同一であるか、またはそれ以上である。さらに、前記修飾は、破裂強度、抜去力、トルクおよび固定性(securement)のようなバルーン性能特性が修飾の存在によって実質的に変更されないように、または改善されるように制御される。
【0023】
修飾の種類および深さは、PIIIプロセスにおいて、イオンの種類、イオンエネルギーおよびイオン線量の選択によって制御される。実施形態においては、上記に記載したように、3つの小領域の修飾が提供される。他の実施形態において、PIIIプロセス・パラメータの制御によって、あるいは例えば溶媒溶解、または切断もしくは削摩による機械的な層の除去、または熱処理により1つ以上の層を除去する後処理によって、形成された3つより多いか、また少ない小領域が存在してもよい。具体的には、より高いイオンエネルギーおよび線量は、炭化領域、特にDLC成分または黒鉛成分を有する領域の形成を増進する。実施形態において、イオンエネルギーは、25keV以上のように約5keV以上であり、例えば、約30keV以上かつ約75keV以下である。実施形態におけるイオン線量は、1×1016イオン/cm2以上のような、約1×1014以上の範囲にあり、例えば、約5×1016イオン/cm2以上、かつ約1×1019イオン/cm2以下である。酸化領域の特徴付けおよびプロセス条件の変更は、カルボニル基およびヒドロキシル基の吸収に関するFTIR ATR分光法の結果に基づいて行うことができる。また、架橋領域は、FTlR ATR分光法、UV力分光法およびラマン分光法を用いて、C=C基の吸収を解析することにより特徴づけることができ、プロセス条件はその結果に基づいて変更される。さらに、プロセス条件は、架橋領域のゲル分率の分析に基づいて変更することができる。試料のゲル分率は、例えばソックスレー抽出器を使用して、試料をo−キシレンのような沸騰させた溶媒中で24時間にわたって抽出することによって測定することができる。24時間後、抽出物から溶媒を除去し、次に、試料を、恒量になるまで、50℃の真空炉中で乾燥させる。ゲル分率とは、試料の初期重量と抽出された試料の乾燥重量との差を、試料の総初期重量で割ったものである。
【0024】
実施形態において、修飾領域28の厚さTMは、約1500nm未満であり、例えば約1000nm未満、約750nm未満、約500nm未満、約250nm未満、約150nm未満、約100nm未満、または約50nm未満である。実施形態において、酸化領域30は、約5nm未満、例えば約2nm未満、または約1nm未満の厚さT1を有し得る。実施形態において、炭化領域32は、約500nm未満、例えば約350nm未満、約250nm未満、約150nm未満、または約100nm未満の厚さT2を有することができ、炭化領域32は、外面22から10nm未満、例えば5nm未満、または1nm未満の深さに存在し得る。実施形態において、架橋領域34は、約1500nm未満、例えば約1000nm未満、または約500nm未満の厚さT3を有し、外面22から約500nm未満、例えば約350nm未満、約250nm未満、または約100nm未満の深さに存在し得る。
【0025】
実施形態において、修飾済みバルーンの破裂強度、抜去力(withdrawal force)、トルクおよび固定性は、未修飾バルーンのそれらの値の±約35%以下以内、例えば±15%以内、例えば±5%または±1%以内である。特定の実施形態において、抜去力および固定性は、バルーン壁の修飾によって、約15%以上、例えば、約25%以上増大される。バルーンの全体的な機械的性質に対する修飾領域の影響を最小限にするために、修飾の深さは、修飾領域の機械的性質がバルーンの全体的な機械的性質に実質的に影響しないように選択され得る。実施形態において、修飾領域の厚さTMは、未修飾基材ポリマー系の厚さTBの約1%以下であり、例えば約0.5%以下または約0.05%以上である。実施形態において、バルーンは、ポリマーの機械的性質またはバルーン性能を変更するために修飾され得る。例えば、相対的に厚い炭化層または架橋層を備えるようにバルーンを修飾することにより、バルーン剛性を高めることができる。実施形態において、修飾層の厚さTMは、未修飾基材ポリマー系の全厚TBの約25%以上であり、例えば50〜90%であり得る。実施形態において、前記壁は、約0.005インチ(約0.127mm)未満、例えば約0.0025インチ(約0.0635mm)未満、約0.002インチ(約0.0508mm)未満、約0.001インチ(約0.0254mm)未満、または約0.0005インチ(約0.0127mm)未満の全厚を有する。
【0026】
特定の実施形態において、バルーンは、血管形成術および/またはステント搬送のために、冠動脈のような脈管系で使用するための大きさを有する。バルーンは、約5バール以上、例えば15バール以上の破裂強度を有する。基材ポリマー系は、例えば、バルーンに所望の特性を与えるポリマー、ポリマーブレンド、またはポリマーの層状構造である。特定の実施形態において、基材ポリマーは低膨張性(low distendibility)かつ高破裂強度のポリマーを含有する。ポリマーは、二軸配向ポリマー、熱可塑性エラストマー、エンジニアリングサーモプラスチックエラストマー、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレン、ポリアミド(例えばナイロン66)、ポリエーテルブロックアミド(例えばPEBAX(登録商標))、ポリプロピレン(PPS)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、イソプレンゴム(Pl)、ニトリルゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレンジエン系ゴム(EPDM)、ブチルゴム(BR)、熱可塑性ポリウレタン樹脂(PU)(例えばPELLETHANE(登録商標)等のグリコールエーテルおよびイソシアナートに基づくもの)を含む。特定の実施形態において、下記一般式を有するポリ(エーテル−アミド)ブロックコポリマーが用いられる。
【0027】
【化1】
前記式中、PAは、例えばナイロン12などのポリアミド部分を表し、PEは、例えばポリ(テトラメチレングリコール)などのポリエーテル部分を表わす。そのようなポリマーは、商品名PEBAX(登録商標)でアトフィナ社(ATOFlNA)から市販されている。
【0028】
特定の実施形態において、図4Aおよび図4Bを参照すると、基材ポリマー系は、同一または異なるポリマーの複数のポリマー層を共押し出しすることによって形成される。バルーン61は、界面67において接合された第1ポリマー層63および第2ポリマー層65を有する壁69を備える。バルーン61はPIIIを用いて修飾されて、修飾バルーン71を提供することができる。図4Bに示した実施形態において、バルーン61の第1層63および界面67はPIIIによって修飾されて、バルーン71の修飾層73および修飾界面75を生成する。特にこの実施形態において、層65は実質的に未修飾である。バルーン61の第1層63の修飾は、硬いピンホール耐性層を提供するとともに、界面を介した修飾はバルーン71の隣接した層の間の密着性を高める。このような実施形態においては、結合層を低減または回避することができる。特定の実施形態において、バルーンは、層のすべてまたはいくつかが修飾されている3つ以上の層(例えば5つ、7つ、またはそれ以上の層)を有し得る。共押し出しポリマー層から形成されたバルーンは、ワングの米国特許第5,366,442号および同第5,195,969号、ハムリン(Hamlin)の米国特許第5,270,086号、およびチン(Chin)の米国特許第6,951,675号に記載されている。前記特許文献の各々の全容は、参照により余すところなく本願に援用される。バルーンは例えば、ステントを搬送するために使用することができる。前記ステントは、PIIIを用いて処理された生体内分解性ステントのようなステントであり得る。適当なステントは、本願と同時に出願され譲渡された「BIOERODIBLE ENDOPROSTHESES AND METHODS OF MAKING THE SAME」米国特許出願第 号[代理人整理番号第10527−730001号]に記載されている。前記特許文献の全開示は、参照により余すところなく本願に援用される。
【0029】
バルーンはまた、望ましい表面形態を提供するために修飾され得る。図5Aを参照すると、修飾前のバルーン表面50は相対的に平坦で、特徴がないポリマープロファイルを備えて示されている(バルーンはPRBAX(登録商標)7033から形成されている)。図5Bを参照すると、PIIIによる修飾の後、表面は複数の亀裂52を備える。亀裂の大きさおよび密度は表面粗さに影響を与え得る。表面粗さは、ステントとバルーンとの間の摩擦を高めることができ、体内への搬送中におけるステントの保持性を向上する。図5C参照すると、一部の実施形態において、割れ目密度(fracture density)は、割れ目線52によって画定される表面の破断されていない「島」53が、約20μm2以下、例えば約10μm2以下、または約5μm2以下であるような状態である。実施形態において、割れ目線は、例えば、幅が10μm未満であり、例えば幅が5未満μm、2.5μm未満、1μm未満、0.5μm未満、または0.1未満μmである。亀裂または割れ目線はまた、抗血栓形成剤、麻酔薬、または抗炎症剤のような治療薬のための貯蔵器として用いられ得る。適当な薬剤はパクリタキセルである。薬剤は、浸漬またはディッピングにより、バルーン表面に塗布され得る。他の薬剤は、米国特許出願公開第2005/0215074号に記載されており、前記特許文献の全開示は、参照により余すところなく本願に援用される。バルーンは、塩、糖または糖誘導体のような保護層または放出層によって被覆され得る。適当な層は米国特許第6,939,320号に記載されており、前記特許文献の全開示は、参照により余すところなく本願に援用される。
【0030】
さらなる実施形態は以下の実施例中に存する。
実施例
材料
試験は、PEBAX(登録商標)7033からなる2mm径および4mm径のバルーン上で行なわれる。前記バルーンは、69のショアD硬度を有し、ボストン サイエンティフィック(マサチューセッツ州ナティック)製である。PIII処理の前に、バルーンをアルコールで清浄する。試験は、PBBAX(登録商標)7033ペレットを研磨されたPTFE板の間において250〜300℃で数分間にわたってプレスすることによって製造された20×20×1mmのPEBAX(登録商標)7033板についても行われる。1mmの厚さを有するシリコン板と同様に、50mkmの厚さを有する低密度ポリエチレン(LDPE)膜を購入したままで用いる。
【0031】
方法および装置
PIIIにはローゼンドルフ リサーチ センター(Rossendorf Research Center)の大型チャンバを用いる(例えばゲンツェル(Guenzel)、Surface & Coatings Technology、136、47〜50頁、2001年、またはゲンツェル(Guenzel)、J.Vacuum Science & Tech.B、17(2)、895〜899頁、1999年参照のこと。前記各文献の全開示は、参照により余すところなく本願に援用される)。残気の圧力は10−3Paであり、PIII中の窒素の作動圧力は10−1Paであった。プラズマは、13.56MHzで作動する高周波発生器によって生成される。5μs幅、かつ30、20、10および5kVのピーク電圧の高電圧パルスが用いられる。過熱を防止するため、0.2Hz〜200Hzのパルス繰り返し周期を用いる。試料のPIII処理は、5−1014〜1017イオン/cm2に及ぶ線量で行なわれる。バルーンの位置は、サンプルホルダを用いて固定される。バルーンの外面を均一に処理するために、バルーンは、処理中に3回(各回につき120度ずつ)回転される。高電圧パルスの間にrf−プラズマと試料とが直接接触するのを防止し、ポリマー材料が帯電するのを防止するために、金属グリッドの形態の付加的な電極がサンプルホルダの上面に取り付けられる。FTIR ATRスペクトルは、ダイヤモンドATR結晶を備えたニコレ(Nicolet)230、またはGe ATR結晶を備えたニコレ マグナ(Nicolet Magna)750によって記録することができる。走査数は100であり、分解能は2cm−1である。スペクトルはニコレOMNICソフトウェアによって解析される。UV透過性スペクトルは、200〜700nmの波長スペクトル領域において10nmステップで記録され得る。ポリマー表面に沿った線量分布の均質性を判定する定量分析には、光学密度スケールが用いられる。ポリマー表面上における線量分布の均質性の分析には、xy−座標上でのスペクトルのマッピングの型が用いられる。マッピングの空間分解能は約4×4mmである。マイクロ−ラマンスペクトルは、ラブラム(LabRam)分析ソフトウェアを備えたジョバン イボン(Jobin Yvon)HR800において、Nd:YAGレーザー照射(2ω、λ=532.14nm)によって励起された後方散乱モードにおいて記録される。レーザー光線の焦光およびラマン散乱光の収集のためには、光学顕微鏡が用いられる。レーザー光線の強度は試料の過熱を防止するように制御される。スペクトル分解は4cm−1である。取得される走査数は100〜4000であり、実際の数は試料の信号対雑音に依存する。
【0032】
引張試験は、ツウィック(Zwick)引張試験機上で行なわれる。30×2×0.03mmのPEBAX(登録商標)7033細片が用いられる。細片には、2mmの板を介して相互に連結された6枚の刃を備えたマルチブレードナイフを用いてバルーンを切断する。クランプに対して強固に機械的に固定するために、エポキシ接着剤を用いて、細片の端をアルミニウムホイルに接着する。1つの試料分析に5枚の細片が用いられる。試験の荷重方向はバルーンの長手方向軸線に対応する。5mm/分のクロスヘッド速度が適用される。結果の分析は歪み応力図によって行われる。破壊におけるモジュラス(modulus)、伸びおよび応力が分析される。モジュラスは、歪み応力曲線の直線部分の初期によって決定される。
【0033】
引掻試験は、固定された試料を有するテーブルと、1ミクロンの先端を有するダイヤモンド圧子を備えた釣り合い錘(balance)とを備えた試験装置によって行なわれる。前記テーブルは0.15mm/秒の速度で移動する。ダイヤモンド圧子は1、2、5、20および50グラムの重量で荷重される。引掻試験にはPEBAX(登録商標)7033板が用いられる。引掻深さおよび幅は光学的形状測定(optical profilometry)によって測定される。引掻試験装置は、ポリエチレン板、ポリアミド板およびポリテトラフルオロエチレン板について較正される。硬度は、20nmの直径を有するシリコン先端および80nN/mnの定数を有するカンチレバーを用いた接触モードのAFM法によって測定される。(例えば、プリクリル(Prikryl)、Surface & Coatings Technology、200、468〜471頁、2005年参照。前記文献の全開示は、参照により余すところなく本願に援用される)。
【0034】
PIIIによる処理後のPEBAX(登録商標)7033試料における構造変化
図6は、30keVでのPIII処理後に、1850cm−1〜900cm−1まで取得したPEBAX(登録商標)7033膜の一連のFTIR ATRスペクトルである。最下部のスペクトルは未処理の膜であり、他のスペクトルは、5×1014、1015、5×1015、1016、5×1016および1017イオン/cm2でそれぞれ処理された膜である。PIII線量による1638cm−1ピークの広がり、および1720/1737cm−1のダブレットの出現は、1650〜1750cm−1の領域における新たな重複した線によって引き起こされたものと考えられる。これらの新たな線は、炭素−炭素二重結合および炭素−酸素二重結合の振動である。そのような線の出現は、イオン源の作用下におけるPEBAX(登録商標)ポリマーの炭化および酸化に関係する。
【0035】
図7は、30keVでのPIII処理後に3700cm−1〜2550cm−1まで取得したPEBAX(登録商標)7033膜の一連のFTIR ATRスペクトルである。最下部のスペクトルは未処理の膜であり、他のスペクトルは、5×1014、1015、5×1015、1016、5×1016および1017イオン/cm2でそれぞれ処理された膜である。スペクトル中、3600〜3200cm−1領域に新たな線が観察される。この広いピークはヒドロキシル基のO−H振動に対応する。O−H基は未処理のPEBAX(登録商標)の巨大分子中に(鎖末端において)存在しているが、それらの濃度はPIII処理後よりもはるかに低い。処理済みの試料のスペクトルにおける強いOH線の出現は、解重合過程に起因する。解重合過程では、壊れたポリマー鎖端が酸素と反応し、試料中のO−H濃度を効果的に増大する。
【0036】
図8は、20keVでのPIII処理後に1900cm−1〜775cm−1まで取得したPEBAX(登録商標)7033膜の一連のラマンスペクトルである。最下部のスペクトルは未処理の膜であり、他のスペクトルは、5×1014、1015、5×1015、1016、および5×1016イオン/cm2でそれぞれ処理された膜である。未処理のPEBAX(登録商標)のスペクトルでは、1645、1446、1381、1305、1121、1074cm−1の線がポリアミド−ポリエーテル巨大分子(PEBAX(登録商標))の振動に対応していた。処理済みの試料のスペクトルでは、このような線の強度はPIII線量が増大するにつれて減少し、1510cm−1を中心とした新たな広いピークが出現する。このピークは非晶質炭素の振動に対応する。高線量においては、PEBAX(登録商標)に本質的に関連する振動は消失し、非晶質ダイヤモンドに関連する広いピークによって置き換わる。ラマンスペクトルにおけるこれらの強い変化は、膜の外側部分のみにおいて観察される。これは膜の外側部分のみが炭化されることを示している。膜のより深い部分に対するレーザー焦点の焦点ぼけまたはずれは、未処理のPEBAX(登録商標)のスペクトルを生ずる。
【0037】
図9は、30keVでのPIII処理後に1900cm−1〜775cm−1まで取得したPEBAX(登録商標)7033膜の一連のラマンスペクトルである。最下部のスペクトルは未処理の膜であり、他のスペクトルは、5×1014、1015、5×1015、1016、5×1016および1017イオン/cm2でそれぞれ処理された膜である。30keVエネルギーでのPIII処理の後、相対的に低い線量(5×1014〜1×1015イオン/cm2)で処理された試料のラマンスペクトルは、図8に示したものに非常に類似して見える。しかしながら、相対的に高い線量(5×1015以上)では、ラマンスペクトルは、1580および1350cm−1において2つの比較的鋭いピークを含んでいる。これらの線は黒鉛型構造およびDLC構造の形態にある炭素に対応する。1580cm−1のピークはG−ピークと呼ばれ、1350cm−1のピークはDピークと呼ばれる。これらの線は、30keVのエネルギーを有するイオンによって処理された試料においてのみ観察される。また、より高線量におけるダイヤモンド状炭素材料のラマンスペクトルは、シャオ(Shiao)、Thin Solid Films、第283巻、145〜150頁(1996年)によって記載されており、前記文献の全開示は、参照により余すところなく本願に援用される。
【0038】
図10Aおよび図10Bを参照すると、PIIIの作用下でのPEBAX(登録商標)における構造変化もまた、紫外線領域および可視領域の透過スペクトルによって観察することができる。図10Aは、20keVでのPIII処理後に500nm〜240nmまで取得したPEBAX(登録商標)7033膜の一連のUV−Vis透過スペクトルであり、図10Bは30keVでの処理後の一連のものである。双方の図において、最下部のスペクトルは未処理の膜であり、他のスペクトルは、5×1014、1015、5×1015、1016、5×1016および1017イオン/cm2によってそれぞれ処理された膜である。PIII修飾は、スペクトルにおいて付加的な重複した線の形成をもたらす。これらのスペクトルから、短波長線は長波長線より大きな強度を有しており、吸収の強度は線量の増加に伴って増大していることは明らかである。これらの付加的な線は、縮合芳香族およびポリエン構造を含む不飽和炭素−炭素構造中のπ−電子による光の吸収に起因する。縮合構造の数の増大によって、吸収線の位置はスペクトルの赤方に偏移させられる。これは、長い共役不飽和炭素−炭素基の形成を示す。
【0039】
図11Aおよび図11Bを参照すると、2つの別個の波長における光学密度によって、PRBAX(登録商標)7033膜中の不飽和炭素−炭素構造の定量分析が行われている。そのような分析において、250nmは、n=1に対応し、550nmは、n=4に対応する。ここで、nは共役芳香族構造の数である。低線量では、不飽和炭素−炭素構造の収集の率は低い。しかしながら、約1015イオン/cm2の線量から大きな吸収の増大が開始する。n=1の構造の形成は低線量で開始し、n=4である高度に共役した炭素−炭素構造はより高線量において出現する。
【0040】
ここで図12を参照すると、PEBAX(登録商標)7033膜のUVスペクトルおよびLDPEのUVスペクトルを比較すると、PEBAX(登録商標)膜は、より低レベルの不飽和炭素−炭素構造を有する。透過スペクトルが、PEBAX(登録商標)膜およびLDPEの初期の膜に対する吸収線を含んでいないため、250nmにおける光学密度は、修飾されたポリマー領域からのみの吸収として解釈することができる。従って、同一のPIII線量における光学密度の値は、定量的な比較に用いることができる。PEBAX(登録商標)膜中の不飽和炭素−炭素構造の概算は、PIIIのすべての線量について、LDPEと比較して、68±8%を与える。この数は、PEBAX(登録商標)の約3分の2が炭化層の形成に関与することを意味する。
【0041】
図13を参照すると、PEBAX(登録商標)7033の表面形態は、PIII処理の高い線量において強く変化し、これは顕微鏡写真において観察可能である。処理の低い線量では、表面形態は著しく変化しない。1015イオン/cm2の線量では、表面はいくらかのひび(cracks)および亀裂(fissures)を含んでいる。しかしながら、より高線量では、ひびおよび亀裂の広範囲な網状組織が観察される。ひびおよび亀裂の網状組織にもかかわらず、バルクポリマーからの炭化領域の剥離は観察されない。
【0042】
PIIIによる処理後のPHBAX(登録商標)膜の機械的性質
図14を参照すると、PIII処理済みPEBAX(登録商標)7033膜の応力‐歪曲線は、対応する未処理の膜の応力‐歪曲線とほとんど同一である。試験したすべてのPEBAX(登録商標)膜の曲線は、すべての線量およびエネルギーについて類似している。
【0043】
図15を参照すると、破壊における強度もまた、PIII処理後において変化するようには見えない。さらに、図16および図17を参照すると、破壊における伸び率および弾性率は、統計的にはPIII処理によって影響されない。
【0044】
未修飾領域の厚さ(これらの試料に対しては約30,000nmと推定される)に対する修飾領域の厚さ(これらの試料については100nm未満と推定される)を用いて、PEBAX(登録商標)膜のPIII修飾が、なぜこれらの膜の試験した機械的特性において著しい変化をもたらさないのかを説明することができる。
【0045】
PIII処理後のPEBAX(登録商標)膜の表面硬度および引掻試験
図21を参照すると、参考にシリコン板の荷重曲線が用いられており、硬い表面上におけるカンチレバーの典型的な変形挙動が示されている。曲線の傾斜が相対的に急勾配であり(高い弾性率を示す)、ヒステリシスが殆どまたは全く生じないことに注目されたい。対照的に、未処理のPEBAX(登録商標)7033膜の荷重曲線は同じほど急勾配でなく(低い弾性率を示す)、かなりのヒステリシスを示す。最初は、PEBAX(登録商標)荷重曲線は、先端荷重の作用下におけるポリマー材料の変形に対応する下方の曲線をたどる。非荷重曲線は先端の引き返し動作に対応し、荷重曲線および非荷重曲線が同一でないため、ヒステリシスが観察される。ヒステリシスは、荷重下の高分子(polymer macromolecules)の運動および構造的な遷移(conformational transitions)による機械的エネルギーの損失によって引き起こされる。そのような挙動は相対的に柔軟な材料に典型的なものである。
【0046】
ここで、1016イオン/cm2の線量および30keVでPIIIによって処理されたPEBAX(登録商標)7033板の荷重曲線である図22を参照する。前記曲線は、図21に示した未処理の板の曲線よりも概して急勾配であり、ヒステリシスはほとんど消失していることに注目されたい。そのような曲線は、シリコンの基準曲線に類似しており、PEBAX(登録商標)板が硬い表面を有することを示している。
【0047】
図23および図24を参照すると、相対的に低線量では、処理済みのPEBAX(登録商標)板の荷重曲線は、より複雑である。一般に、これらの荷重曲線には2つの部分が存在する。第1部分は、高いモジュラスに対応する急勾配曲線を有し、一方、第2部分の曲線は、同じほどには急勾配ではなく、低いモジュラスに対応する。観察された荷重曲線の複雑な特徴は、炭化領域内へのAFM先端の侵入によって引き起こされるものと考えられる。相対的に低い線量では、この層は先端による侵入を止めるのに十分なほど硬くはなく、また厚くはない。
【0048】
図25は、上記に記載した荷重曲線の2つの部分の弾性率の依存性を示す。図25に見られるように、第1部分の弾性率は最初に増大するが、荷重曲線の第2部分の弾性率は、相対的に一定のままである。しかしながら、線量1016のイオン/cm2では、曲線は線形になり、各部分の弾性率は等しくなる。この線量では、炭化層は先端荷重を保持するのに十分なほど硬くなると考えられる。
【0049】
図18および図19を参照すると、引掻試験の結果が示されている。20keVおよび30keVにおいて様々な線量で処理されたPEBAX(登録商標)7033板に様々な荷重を掛ける。(欄内の線量は1015イオン/cm2の倍数で表わされている)。修飾済みのPEBAX(登録商標)板と未修飾のPEBAX(登録商標)板との間に有意な差は見られない。
【0050】
ここで、図20を参照すると、未処理のPEBAX(登録商標)板の硬度係数において、20keVおよび30keVにおいて様々な線量で処理されたPEBAX(登録商標)板と比較した場合、有意な差は見られない。修飾領域の厚さは非常に小さいため、引掻試験装置は修飾領域の変化を測定するのに十分なほど感度が高くない。引掻試験装置のダイヤモンド圧子が薄い修飾領域内に侵入するものと考えられる。
【0051】
図26を参照すると、炭化領域の弾性率は侵入するイオンのエネルギーに依存し、エネルギーが高いほどより高いモジュラスをもたらす。特に高いモジュラスは30keVのエネルギーについて観察された。30keV後のモジュラスの急増は、黒鉛構造およびDLC構造の形成に関係し得る。
【0052】
PIII処理後のPEBAX(登録商標)膜の表面硬度の均質性
上記で検討したように、修飾領域の硬度は、線量およびイオンエネルギーの関数である。表面硬度を均質にするためには、線量は等しく全表面上にわたって分散されなければならない。バルーンは円筒形であるので、図27に示すように、線量分布は角依存性を有する。PIII処理中にバルーンを連続的に回転させることによって、最も均質な表面硬度が提供されるであろう。しかしながら、これが可能でない場合、バルーンを3回(各回につき120度ずつ)回転させることによって、適当な均質性が提供され、表面硬度においてわずか10パーセントの偏差を有する。上記に記載したバルーン試料を調製するためには、この3回転法を用いた。
【0053】
表面硬度の不均質性の別の理由は、処理面付近におけるプラズマの変動および対応するイオン流の変動である。この効果は、高電圧パルスの間において、体積中のプラズマ密度の変動およびポリマー表面の帯電効果によって引き起こされる。この効果は、バルーン試料の上に付加的な電極を配置することによって大幅に低減することができる。この目的のために、サンプルホルダと電気的に連絡した金属グリッドを用いた。この配置は、イオンがバルーン表面への途中でグリッドを介して通過することを可能にする。線量分布は、LDPE膜からのUV−visスペクトルを用いてマップされ得る。そのようなマッピングを図28に示す。
【0054】
図28および図29に示したように、サンプルホルダの中央部は10%以上変化しない線量を提供する。中央部の大きさは、付加的な電極の大きさに依存する。付加的な電極が無い場合には、線量分布は制御されない。上記で検討した試料において、均一な線量の領域の直径は約50mmである。上記で検討したバルーンはすべて、サンプルホルダの中心部において処理される。
【0055】
未修飾バルーンおよび修飾済みバルーンの抜去、破裂、トルクおよび固定性
下記の表は、未修飾バルーンおよび修飾済みバルーンに対するバルーンの抜去、破裂、トルクおよび固定性に関するデータを提供する。修飾済みバルーンは、上述したように30keVで1016イオン/cm2の線量を用いて、PIIIによって処理される。
【0056】
【表1】
バルーン抜去力は、デベンズ(Devens)の米国特許出願公開第2004/0210211号によって概説された方法を用いて測定される。前記特許文献の全開示は、参照により余すところなく本願に援用される。簡潔に述べると、バルーン抜去力は、ポリマーチューブによって画定された曲がりくねった通路からバルーンを取り出すのに必要な力を判定することによって測定される。デベンズ(米国特許出願公開第2004/0210211号)によって説明されているように、カテーテルおよびチューブに作用する力は、一連のトランスデューサによって測定することができる。トルクは、バルーン抜去力試験に用いられるのと同一の曲がりくねった通路内においてバルーンを回転させて、回転に対する抵抗力を判定することによって測定される。平均破裂強度は、ワング(Wang)の米国特許第6,171,278号およびレヴィー(Levy)の米国特許第4,490,421号に記載されているように、バルーンが20℃で破裂する膨張圧の判定により測定される。前記特許文献の各々の全開示は、参照により余すところなく本願に援用される。固定性はASTM F2393−04を用いて測定され、前記文献の全開示は、参照により余すところなく本願に援用される。
【0057】
実施形態において、バルーンは様々な血管または血管外の用途おいて用いることができる。典型的な用途としては、神経系、頚動脈、食道、または尿管が挙げられる。
上述したような処理の後、バルーンはさらに処理されて、例えば、さらなるコーティング、例えば薬剤を含有するヒドロゲルまたはポリマーマトリックスコーティングを備えることができる。実施形態において、バルーンは、薬剤または薬剤を含有するポリマーマトリックスで処理され、続いて、その薬剤、マトリックスおよび/または下方に位置するバルーンを修飾するためにイオンによって処理され得る。そのような処理は、バルーンからの薬剤の放出を増強または遅延させることができる。実施形態において、他の医療装置、例えば共押し出しされたシャフトのような共押し出しされた医療装置が、上述したようにイオンによって処理される。さらなる実施形態は以下の特許請求の範囲内に存する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1A】折り畳んだ状態のステントの搬送を示す部分長手方向断面図。
【図1B】図1Aのステントの拡張を示す部分長手方向断面図。
【図1C】図1Aおよび図1Bのステントの体内管腔内における展開を示す部分長手方向断面図。
【図2A】未修飾基材ポリマー系領域および硬い基材ポリマー修飾領域を示す、バルーンの壁の断面図における横方向の端部を示す図。
【図2B】図2Aに示したバルーン壁の一部の構造的構成の概略図。
【図3A】プラズマ侵入イオン注入(「PIII」)装置の概略断面図。
【図3B】サンプルホルダ(金属グリッド電極は視界から部分的に外れている)中にある10個のバルーンの概略平面図。
【図3C】図3Aのプラズマ侵入イオン注入装置の詳細断面図。
【図4A】修飾前のバルーン壁を示す、共押し出しバルーンの長手方向断面図。
【図4B】修飾後のバルーン壁を示す、図4Aの共押し出バルーンの長手方向断面図。
【図5A】修飾前のバルーン表面の顕微鏡写真。
【図5B】修飾後のバルーン表面の顕微鏡写真。
【図5C】亀裂および亀裂によって画定される「島」を示す、修飾後のバルーン表面の概略平面図。
【図6】30keVでのPIII処理後に1850cm−1〜900cm−1まで取得したPEBAX(登録商標)7033膜の一連のFTIR ATRスペクトルであり、最下部のスペクトルは未処理の膜であり、他のスペクトルは、5×1014、1015、5×1015、1016、5×1016、および1017イオン/cm2でそれぞれ処理された膜である。
【図7】30keVでのPIII処理後に3700cm−1〜2550cm−1まで取得したPEBAX(登録商標)7033膜の一連のFTIR ATRスペクトルであり、最下部のスペクトルは未処理の膜であり、他のスペクトルは、5×1014、1015、5×1015、1016、5×1016、および1017イオン/cm2でそれぞれ処理された膜である。
【図8】20keVでのPIII処理後に1900cm−1〜775cm−1まで取得したPEBAX(登録商標)7033膜の一連のラマンスペクトルであり、最下部のスペクトルは未処理の膜であり、他のスペクトルは、5×1014、1015、5×1015、1016、および5×1016イオン/cm2でそれぞれ処理された膜である。
【図9】30keVでのPIII処理後に1900cm−1〜775cm−1まで取得したPEBAX(登録商標)7033膜の一連のラマンペクトルであり、最下部のスペクトルは未処理の膜であり、他のスペクトルは、5×1014、1015、5×1015、1016、5×1016、および1017イオン/cm2でそれぞれ処理された膜である。
【図10A】20keVでのPIII処理後に500nm〜240nmまで取得したPEBAX(登録商標)7033膜の一連のUV−Vis透過スペクトルであり、最下部のスペクトルは未処理の膜であり、他のスペクトルは、5×1014、1015、5×1015、1016、5×1016、および1017イオン/cm2でそれぞれ処理された膜である。
【図10B】30keVでのPIII処理後に500nm〜240nmまで取得したPEBAX(登録商標)7033膜の一連のUV−Vis透過スペクトルであり、最下部のスペクトルは未処理の膜であり、他のスペクトルは、5×1014、1015、5×1015、1016、5×1016、および1017イオン/cm2でそれぞれ処理された膜である。
【図11A】20keVおよび30keVにおけるPIII線量の関数として、PEBAX(登録商標)7033膜の250nmにおける光学密度を示す図。
【図11B】20keVおよび30keVにおけるPIII線量の関数として、PEBAX(登録商標)7033膜の550nmにおける光学密度を示す図。
【図12】5keV、10keV、20keVおよび30keVにおけるPIII線量の関数として、低密度ポリエチレン(LDPE)膜の250nmにおける光学密度を示す図。
【図13】30keVにおいて1016イオン/cm2で処理した後のPEBAX(登録商標)7033のバルーン表面の顕微鏡写真。
【図14】PIIIで処理したいくつかのPEBAX(登録商標)7033膜に対する応力−歪み曲線を示す図。
【図15】20keVおよび30keVにおける線量の関数として、PIIIで処理したPEBAX(登録商標)7033膜の強度を示す図。
【図16】20keVおよび30keVにおける線量の関数として、PEBAX(登録商標)7033膜の破壊における伸び率を示す図。
【図17】20kcVおよび30keVにおける線量の関数として、PEBAX(登録商標)7033膜の弾性率を示す図。
【図18】20keVでの様々な線量におけるPEBAX(登録商標)7033板の引掻試験を示す図(欄内の線量は1015イオン/cm2の倍数で表わされている)。
【図19】30keVでの様々な線量におけるPEBAX(登録商標)7033板の引掻試験を示す図(欄内の線量は1015イオン/cm2の倍数で表わされている)。
【図20】20keVおよび30keVにおける線量の関数として、PEBAX(登録商標)7033板の硬度係数を示す図。
【図21】硬質シリコン板(参照としての)および未処理のPEBAX(登録商標)7033板について原子間力顕微鏡(AFM)を用いて得られた荷重曲線を示す図。
【図22】1016イオン/cm2の線量および30keVにおいてPIIIで処理されたPEBAX(登録商標)7033板についてAFMを用いて得られた荷重曲線を示す図。
【図23】1015イオン/cm2の線量および30keVにおいてPIIIで処理されたPEBAX(登録商標)7033板についてAFMを用いて得られた荷重曲線を示す図。
【図24】5×1014イオン/cm2の線量および10keVにおいてPIIIで処理されたPEBAX(登録商標)7033板についてAFMを用いて得られた荷重曲線を示す図。
【図25】10keVにおいて様々な線量で処理されたPEBAX(登録商標)7033板について、荷重曲線の第1部分(モジュール1)および荷重曲線の第2部分(モジュール2)の見掛け硬さ係数を示す図。
【図26】10keV、20keVおよび30keVにおける線量の関数として、PEBAX(登録商標)7033板の弾性率を示す図。
【図27】バルーン角度の関数として、正規化された線量分布を示す図。
【図28】付加的な電極を有するPIII装置の線量分布を示す図。
【図29】X−Y平面における図28の線量分布。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化された基材ポリマー材料を含む一体的な修飾領域を備えた基材ポリマー系を有するバルーン壁を備える、医療用バルーン。
【請求項2】
炭化された領域はダイヤモンド状材料を含有する、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項3】
炭化された領域は黒鉛材料を含有する、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項4】
前記修飾領域は、架橋した基材ポリマー材料からなる領域を備える、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項5】
前記架橋した領域は、前記炭化された基材ポリマー材料と、ほぼ未修飾の基材ポリマー材料とに直接結合されている、請求項4に記載の医療用バルーン。
【請求項6】
酸化した基材ポリマー材料からなる領域を備え、その酸化した領域は、前記基材ポリマー系にさらに結合することなく、前記炭化された基材ポリマー材料に直接結合されている、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項7】
前記修飾領域は、前記基材ポリマー系の露出面から延びている、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項8】
前記基材ポリマー系の弾性率は、修飾領域を含まない該基材ポリマー系の約+/−10%以内である、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項9】
前記修飾領域の厚さは約10〜約200nmである、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項10】
前記修飾領域は、前記基材ポリマー系の全厚の約1%以下である、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項11】
前記炭化された基材ポリマー材料の硬度係数は、約500ビッカーズ硬度(kgf/mm2)以上である、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項12】
約5パーセント以上の表面割れ目密度を有する破面組織を含む、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項13】
前記基材ポリマー系は治療薬を保持する、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項14】
前記基材ポリマー系は共押し出しポリマー層を備える、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項15】
バルーンのコンプライアンスは、約2バール〜約15バールの内部圧力において、バルーンの初期直径の10パーセント未満である、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項16】
炭化された基材ポリマー材料を含む一体的な修飾領域を備えた基材ポリマー系を有するバルーン壁を備える医療用バルーンカテーテル。
【請求項17】
脈管系で使用するための大きさを有する、請求項16に記載に記載のバルーンカテーテル。
【請求項18】
冠動脈で使用するための大きさを有する、請求項17に記載のバルーンカテーテル。
【請求項19】
バルーン上に配置されたステントを備える、請求項16に記載のバルーンカテーテル。
【請求項20】
Dピークを示す医療用バルーン。
【請求項21】
Gピークも示す、請求項20に記載の医療用バルーン。
【請求項22】
Dピークを示す第1領域と、Gピークを示す第2領域とを有する、請求項20に記載の医療用バルーン。
【請求項23】
前記第1領域および第2領域は、バルーンから異なる深さに位置する、請求項22に記載の医療用バルーン。
【請求項24】
前記第1領域および第2領域は、バルーンの異なる長手方向位置または半径方向位置に位置する、請求項22に記載の医療用バルーン。
【請求項25】
治療薬を保持する、請求項20に記載の医療用バルーン。
【請求項26】
前記治療薬は、バルーンのDピークを示す領域中および/または同領域上に存在する、請求項22に記載の医療用バルーン。
【請求項27】
医療用バルーンを製造する方法であって、
ポリマー系を提供する工程と、
前記ポリマー系をプラズマ侵入イオン注入によって処理する工程と、
前記処理されたポリマー系を医療用バルーンに用いる工程とを有する、方法。
【請求項28】
前記ポリマー系に炭化領域を形成するように、イオンエネルギーおよび線量を制御する工程を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
約15keV以上の範囲のイオンエネルギーおよび約1×1015イオン/cm2以上の線量に制御する工程を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
ステントを医療用バルーンの周りに提供する工程を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記ポリマー系の処理は、水素、ヘリウム、ホウ素、ネオン、炭素、酸素、窒素、アルゴン、またはこれらの混合物のうちから選択されるイオンを用いる、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
請求項27に記載の方法によって形成された医療用バルーン。
【請求項33】
医療用バルーンを製造する方法であって、
ポリマー系を提供する工程と、
前記ポリマー系をイオン注入によって処理して、非ポリマー系材料の実質的な被着を行うことなく、該ポリマー系を修飾する工程と、
前記処理されたポリマー系を医療用バルーンに用いる工程とを有する、方法。
【請求項34】
前記ポリマー系を炭化するために、該ポリマー系を処理する工程を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項33に記載の方法によって形成された医療用バルーン。
【請求項36】
共押し出しポリマーを含む基材ポリマー系を備え、前記基材ポリマー系は炭化された基材ポリマー系材料の一体的な修飾領域を有する、医療装置。
【請求項37】
前記修飾領域は、共押し出しポリマーの界面を含む、請求項36に記載の医療装置。
【請求項38】
医療用バルーンである、請求項36に記載の医療装置。
【請求項39】
前記医療用バルーンの周りにステントを備える、請求項38に記載の医療装置。
【請求項40】
前記基材ポリマー系は治療薬を保持する、請求項36に記載の医療装置。
【請求項1】
炭化された基材ポリマー材料を含む一体的な修飾領域を備えた基材ポリマー系を有するバルーン壁を備える、医療用バルーン。
【請求項2】
炭化された領域はダイヤモンド状材料を含有する、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項3】
炭化された領域は黒鉛材料を含有する、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項4】
前記修飾領域は、架橋した基材ポリマー材料からなる領域を備える、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項5】
前記架橋した領域は、前記炭化された基材ポリマー材料と、ほぼ未修飾の基材ポリマー材料とに直接結合されている、請求項4に記載の医療用バルーン。
【請求項6】
酸化した基材ポリマー材料からなる領域を備え、その酸化した領域は、前記基材ポリマー系にさらに結合することなく、前記炭化された基材ポリマー材料に直接結合されている、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項7】
前記修飾領域は、前記基材ポリマー系の露出面から延びている、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項8】
前記基材ポリマー系の弾性率は、修飾領域を含まない該基材ポリマー系の約+/−10%以内である、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項9】
前記修飾領域の厚さは約10〜約200nmである、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項10】
前記修飾領域は、前記基材ポリマー系の全厚の約1%以下である、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項11】
前記炭化された基材ポリマー材料の硬度係数は、約500ビッカーズ硬度(kgf/mm2)以上である、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項12】
約5パーセント以上の表面割れ目密度を有する破面組織を含む、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項13】
前記基材ポリマー系は治療薬を保持する、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項14】
前記基材ポリマー系は共押し出しポリマー層を備える、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項15】
バルーンのコンプライアンスは、約2バール〜約15バールの内部圧力において、バルーンの初期直径の10パーセント未満である、請求項1に記載の医療用バルーン。
【請求項16】
炭化された基材ポリマー材料を含む一体的な修飾領域を備えた基材ポリマー系を有するバルーン壁を備える医療用バルーンカテーテル。
【請求項17】
脈管系で使用するための大きさを有する、請求項16に記載に記載のバルーンカテーテル。
【請求項18】
冠動脈で使用するための大きさを有する、請求項17に記載のバルーンカテーテル。
【請求項19】
バルーン上に配置されたステントを備える、請求項16に記載のバルーンカテーテル。
【請求項20】
Dピークを示す医療用バルーン。
【請求項21】
Gピークも示す、請求項20に記載の医療用バルーン。
【請求項22】
Dピークを示す第1領域と、Gピークを示す第2領域とを有する、請求項20に記載の医療用バルーン。
【請求項23】
前記第1領域および第2領域は、バルーンから異なる深さに位置する、請求項22に記載の医療用バルーン。
【請求項24】
前記第1領域および第2領域は、バルーンの異なる長手方向位置または半径方向位置に位置する、請求項22に記載の医療用バルーン。
【請求項25】
治療薬を保持する、請求項20に記載の医療用バルーン。
【請求項26】
前記治療薬は、バルーンのDピークを示す領域中および/または同領域上に存在する、請求項22に記載の医療用バルーン。
【請求項27】
医療用バルーンを製造する方法であって、
ポリマー系を提供する工程と、
前記ポリマー系をプラズマ侵入イオン注入によって処理する工程と、
前記処理されたポリマー系を医療用バルーンに用いる工程とを有する、方法。
【請求項28】
前記ポリマー系に炭化領域を形成するように、イオンエネルギーおよび線量を制御する工程を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
約15keV以上の範囲のイオンエネルギーおよび約1×1015イオン/cm2以上の線量に制御する工程を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
ステントを医療用バルーンの周りに提供する工程を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記ポリマー系の処理は、水素、ヘリウム、ホウ素、ネオン、炭素、酸素、窒素、アルゴン、またはこれらの混合物のうちから選択されるイオンを用いる、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
請求項27に記載の方法によって形成された医療用バルーン。
【請求項33】
医療用バルーンを製造する方法であって、
ポリマー系を提供する工程と、
前記ポリマー系をイオン注入によって処理して、非ポリマー系材料の実質的な被着を行うことなく、該ポリマー系を修飾する工程と、
前記処理されたポリマー系を医療用バルーンに用いる工程とを有する、方法。
【請求項34】
前記ポリマー系を炭化するために、該ポリマー系を処理する工程を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項33に記載の方法によって形成された医療用バルーン。
【請求項36】
共押し出しポリマーを含む基材ポリマー系を備え、前記基材ポリマー系は炭化された基材ポリマー系材料の一体的な修飾領域を有する、医療装置。
【請求項37】
前記修飾領域は、共押し出しポリマーの界面を含む、請求項36に記載の医療装置。
【請求項38】
医療用バルーンである、請求項36に記載の医療装置。
【請求項39】
前記医療用バルーンの周りにステントを備える、請求項38に記載の医療装置。
【請求項40】
前記基材ポリマー系は治療薬を保持する、請求項36に記載の医療装置。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公表番号】特表2009−527283(P2009−527283A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555453(P2008−555453)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/062042
【国際公開番号】WO2007/098330
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/062042
【国際公開番号】WO2007/098330
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】
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