説明

医療用パウチ

【課題】人工肛門や瘻孔から排泄された大量の排出物を長時間に亘って安定して回収できる医療用パウチを提供する。
【解決手段】体の表面に取り付けて該体から排出された排泄物や浸出液を受け入れて貯留するための袋体6を具備した医療用パウチにおいて、袋体6の内部に設けられ排泄物や浸出液から固形状成分を分離するためのフィルター手段20と、排泄物や浸出液から分離された固形状成分と該固形状成分が分離された液状成分とを別々に排出するための複数の排出手段11,12とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用パウチに関し、とくに人工肛門や小腸瘻等の瘻孔から排出された大量の排泄物や浸出液を回収するため、体表に取り付けて使用する医療用パウチに関する。
【背景技術】
【0002】
人工肛門(ストーマ)は腸を切除する手術の場合に造設されて便を排泄する。消化管ストーマには大腸の結腸につくられるコロストミー(結腸ストーマ)と、小腸の回腸につくられるイレオストミー(回腸ストーマ)、さらには、まれに空腸にもつくられる。
【0003】
小腸の回腸や空腸に人工肛門を造設した場合に排泄される便は、大腸で水分が吸収されることがなく、食物の消化残滓に体内に摂取した水分のほとんどすべてが混入した状態の、いわゆる水様便となって排出され、かつ短時間で大量の排泄となる。このため、通常の医療用パウチを使用した場合には排泄物を貯留する袋体が短時間で一杯になり、これに伴ない、袋体から排泄物を排出する作業が頻繁に必要となる。
【0004】
アルケア社、商品名「イレファイン」では、袋体の排出部を水様便を排出しやすい管状のものとし、かりに排泄物に汚泥状物が混在した場合でも、揉み出す(ミルキング)ことができるように可撓性を持たせ、夜間にはチューブを連結して外部の容器へ連続的な排出を可能としている。コロプラスト社、商品名「アシュラ イレオパウチ」では、袋体の容量を通常の2倍として排出作業のインターバルが長くなるようにしている。同社、商品名「アシュラ ナイトドレナージ」では、術後における患者のケア用として、体への取り付け部から貯留部までの部分を延長し、排出操作を患者の体から離間した位置で行うことができるようにして患者の負担を軽減している。
【0005】
臓器や器官の上皮面と他の臓器の上皮面が交通した状態を瘻孔といい、小腸と体表との間にできる管状の孔を小腸瘻という。小腸瘻においては、小腸液、膵液、胆汁などの内蔵分泌物や瘻管からの浸出液が大量に排出し、これらの排出液の処理を行いながら創部の管理を行わなければならない。消化管と尿路と体表が交通した瘻孔においても同様に大量の浸出液が生じる。このような瘻孔からの排出液を回収するため瘻孔の周囲の体表に取り付ける袋が使用され、例えば、本出願人による商品名「ウエルケア・ドレーン」、「サージドレーン・オープントップ」等が販売されている。特許文献1,2,3は前記回収用袋に関するものである。このような袋では、排出液をいったん回収し、袋の一端に設けた排出用の管状コネクターにチューブを接続し、回収した排出液を外部に設けた容器に排出している。
【0006】
【特許文献1】特開平9−192155号公報
【特許文献2】特開2001−170159号公報
【特許文献3】特開2001−231802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来技術では、袋体の容量を増大するために大型化すると使用者に違和感が避けられないため通常の生活レベルの維持が困難となる。実質的な容量をさらに増加させるため排出口を外部の容器へチューブを使用して連通させた場合には、排泄物中の固形状成分によって排出口が詰まる可能性があり、その都度、泥状分を揉み出す操作が必要になるため使用者は安眠をとることができない。チューブを大径化すれば使用者に違和感が避けられない。
【0008】
小腸瘻等に取り付ける回収用袋では、まれではあるが、患者が食物を摂取した場合には、大量の浸出液に消化されない食物が固形状成分として混入するため、袋に接続したチューブが目詰まりするおそれがある。このため余分なケアが必要となる。
【0009】
そこで、本発明は上記従来技術の問題を解決し、人工肛門や瘻孔から排泄された大量の排出物を長時間に亘って安定して回収できる医療用パウチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、上記課題は下記により解決される。体の表面に取り付けて該体から排出された排泄物や浸出液を受け入れて貯留するための袋体を具備した医療用パウチにおいて、前記袋体の内部に設けられ排泄物や浸出液から固形状成分を分離するためのフィルター手段と、前記排泄物や浸出液から分離された固形状成分と該固形状成分が分離された液状成分とを別々に排出するための複数の排出手段とを設けたことを特徴とする(請求項1の発明)。
【0011】
前記請求項1の発明の実施態様としては、下記請求項2ないし8の発明が好ましい。前記請求項1に記載の医療用パウチにおいて、前記フィルター手段が多孔性のシート状部材であることを特徴とする(請求項2の発明)。また、前記請求項2に記載の医療用パウチにおいて、前記多孔性のシート状部材において、液状成分が通過する透孔の直径が0.04〜5mmであることを特徴とする(請求項3の発明)。さらに、前記請求項2に記載の医療用パウチにおいて、前記袋体が少なくとも2枚の熱可塑性樹脂からなるフィルムから構成され、前記多孔性のシート状部材が熱可塑性樹脂から成り、前記袋体を構成する少なくとも2枚のフィルムが前記多孔性のシート状部材を挟んで該多孔性シート状部材とともに周縁部において結合されていることを特徴とする(請求項4の発明)。また、前記請求項1に記載の医療用パウチにおいて、前記複数の排出手段が袋体の下部に並んで設けられていることを特徴とする(請求項5の発明)。
【0012】
また、前記請求項2に記載の医療用パウチにおいて、前記袋体が、体に近接して配置され前記排泄物や浸出液を受け入れる開口が形成された前側フィルムと該前側フィルムに対して該体から離れて配置された後側フィルムとを有し、前記前側フィルムと前記後側フィルムが前記多孔性のシート状部材を挟んで該多孔性シート状部材とともに周縁部において結合されて前記袋体を構成するとともに該構成された袋体の内部が前記多孔性のシート状部材を挟んで前記前側フィルムに接する室と前記後側フィルムに接する室との2つの室に分割され、該2つの室のそれぞれの下部に前記複数の排出手段のうちの一つをそれぞれ設けたことを特徴とする(請求項6の発明)。
【0013】
さらに、前記請求項6に記載の医療用パウチにおいて、前記前側フィルムと前記後側フィルムが前記多孔性のシート状部材を挟んで前記袋体の少なくとも上端部を含む周縁部において結合されたことを特徴とする(請求項7の発明)。また、前記請求項6に記載の医療用パウチにおいて、前記多孔性のシート状部材の上端が前記前側フィルムの開口の下方においてその内面から周縁部に亘って結合されたことを特徴とする(請求項8の発明)。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、液状成分と共に固形状成分を含む大量の排出物であっても、排出経路の目詰まりがなく、長時間に亘って安定して回収できる医療用パウチが提供できる。また、本発明に係る医療用パウチは、従来の医療用パウチに簡単な部材を追加するだけで、排泄物から液状成分と固形状成分とを分離することが可能となるため、安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の医療用パウチの主な要件に係る実施形態について以下に述べる。なお、医療用パウチの具体的な構成については、後述する実施例の項で述べる。
本発明のフィルター手段は、排泄物が袋体の内部を流下したときに、排泄物から固形状成分を有効に分離できればよく、実質的には、排出口を目詰まりさせる固形状成分が分離されればよい。水様便における固形状成分は、泥状便や軟便の固形状成分のように水分と分離が困難なものではなく、比較的、粒径が大きく形状性があるため、フィルター手段を通過したときに液状成分と分離されやすい。
【0016】
フィルター手段としては多孔性シート状部材が好ましい。前記多孔性シート状部材とは小径の透孔を多数設けた薄いシート状の部材である。例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、EVA等を原料に数10〜数100μmの厚さに押し出し成形でつくられたほぼ方形の透孔を有するメッシュシート,プラスチックの糸から編成した網であってほぼ方形の透孔を有するメッシュシート、連続したシートにパンチングの後加工によって円形の透孔を形成したマルチ穴あきシート等が使用できる。またポリエチレン等からなる不織布シートも使用できる。多孔性シート状部材の材質はプラスチック以外に紙であってもよい。また、多孔性シート状部材は、袋体に好適に内蔵されるように、柔軟で袋体に接着剤を用いて固設することができるものであることが好ましい。
【0017】
フィルター手段の液状成分が通過するための前記透孔は、前記相当直径に換算して0.04mm〜5mm、好ましくは0.1〜4mm、さらに好ましくは0.5〜3mmである。0.04mm以下では短時間で目詰まりするため本来の目的である長期間の使用に耐えられない。5mm以上では固形状成分のほとんどが通過してしまうため分離による実質的な効果が得られ難い。
【0018】
フィルター手段の面積は、用途に応じて、例えば、夜間の睡眠時間程度の時間において目詰まりなく使用できるものであれば、とくに限定されない。なお、フィルター手段は、2枚以上の多孔性シートを透孔の寸法が大きいものから順に重ねてもよい。
【0019】
袋体が熱可塑性樹脂フィルムから構成され、かつ多孔性のシート状部材が熱可塑性樹脂からなる場合には、ヒートシール等のシール手段によって、袋体とフィルター部材とを一体に溶融して組み立てることができる。袋体を構成する2枚のフィルムが多孔性のシート状部材を挟んで周縁部を結合されるときは、該結合部において熱可塑性樹脂同士が溶融して空隙を埋めるため漏水がなくシールされた袋体を構成することができる。
【0020】
袋体を構成する熱可塑性樹脂フィルムとしては、耐水性、ガスバリア性を有し、しなやかで、シール性を有するプラスチックフィルムからなり、従来からオストミーパウチに使用されるものを使用することができる。例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、又は、これらに酢酸ビニル、ポリアクリル酸等をブレンド又は共重合させた単層または積層フィルムである。
【0021】
本発明の複数の排出手段は、フィルター手段によって分離された液状成分と固形状成分とが別々に排出されるものであればよい。液状成分の排出口は管状のものが好ましく、開閉自在なキャップを取り付けるとともに、外部に設けたバッグ等の容器に連通させるため、チューブを接続しやすいものが好ましい。また管状とした場合には混在した汚泥が堆積したときに揉み出すことができるように可撓性のある材料からなることが好ましい。固形状成分の排出口は袋体の一端をシールすることなく開放したものが使用でき、クリップやパウチの表面にとりつけた面ファスナー等の周知の閉鎖手段によって開閉自在とすることができる。
【0022】
袋体の内部においてフィルター手段が配置される位置は、排泄物の経路であればとくに限定されないが、通常の使用形態において、人工肛門から排泄物が落下する下流側にフィルター手段が配置されていればよい。したがって少なくとも固形状成分が分離された液状成分を排出させる排出口はフィルター手段のさらに下流側となる袋体の下部に配置され、この場合、分離された固形状成分を排出する排出口とともに袋体の下部に並べて設けることができる。
【実施例】
【0023】
次に、図1および図2に基づき、本発明のオストミーパウチの実施例について以下に述べる。
(実施例1)
図1は、本発明のオストミーパウチに係る実施例1の模式的構成図であり、図1(a)は身体に取り付ける方向から見た正面図、図1(b)は図1(a)のA−A線に沿った側断面図である。なお、説明の便宜上、特に図1(b)における各部材の横方向の寸法は、実際のものとはかなり異なる寸法比率で示している。
【0024】
図1において、1は面板、2は開口、3は粘着層、4はラミネート層、5は快適層、6は袋体、7は前側フィルム、8は後側フィルム、9は中間部材、9aはメッシュシート、9bは中間フィルム部材、11は液状成分の排出口、12は固形状成分の排出口、13は逆止弁用ポリエチレンフィルム、14a,14bはスポット溶接部、15は外周部、16は前室、17は後室である。以下に、各部材の構成および機能等の詳細を述べる。
【0025】
面板1は中心に人工肛門を受け入れる開口2が形成され、人体に装着する側から順に粘着層3、ラミネート層4、不織布材料からなる快適層5が積層される。快適層5は、袋体6とほぼ同じ大きさであって、開口2に露出した周縁部は排泄物が浸透しないようにシールされ、また袋体6の下方まで延在している。なお、この面板1と袋体6は嵌合または粘着等の結合手段によって脱着自在なものが好ましいが、本実施例では結合手段等については説明を省略する。
【0026】
袋体6は、前側フィルム7、後側フィルム8とを有し、袋体内部は中間部材9によって、前側フィルム7に接する前室16と後側フィルム8に接する後室17とに2分割されている。さらに、前室16および後室17の袋体下部に、それぞれ、固形状成分排出用の排出口12および液状成分排出用の排出口11を設けた構成を有する。
【0027】
前側フィルム7、後側フィルム8は、例えば、ポリ塩化ビニリデンフィルムをメタロセン触媒を使用して製作したポリエチレンフィルムで挟んだラミネートフィルムからなる。中間部材9は、多孔性シート部材であるメッシュシート9aと中間フィルム部材9bとを、図面では省略されているが、それぞれの隣接する端部を互いに重ねて接合してなる。中間フィルム部材9bはポリエチレンフィルムからなる。フィルターとなるメッシュシート9aはタキロン社製、商品名「スターネット」であり、これはポリエチレンを主原料に押し出し成形した厚さ0.25mm、メッシュ密度が21本/インチのものである。液状成分の排出口11は、図示を省略しているが、外周を階段状に縮小した、いわゆる筍状のコネクターが付設され、外部に設けた容器に排出するための弾性チューブを嵌め込めるようにしており、さらに、着脱自在のキャップが取り付けられるようにしている。
【0028】
固形状成分の排出口12を形成する袋体6の下部は、図示を省略しているが、固形状成分を排出しないときには終端部を巻き上げて面ファスナーやクリップ等の閉鎖手段で固定し、排出するときには閉鎖手段の閉鎖を解除し終端部を開放して排出させる。また、袋体6に比べて硬い液状成分の排出口11のコネクターが皮膚に接触すると皮膚を刺激して炎症を起こすことがあるため、図1では明瞭ではないが、上記のように巻き上げた際の終端部の長さは、巻き上げた状態で排出口11のコネクターが皮膚と接触しない長さとすることが好ましい。
【0029】
後室17の下部には液状成分の逆流を防止するために逆止弁を設けることができる。逆止弁は、逆止弁用ポリエチレンフィルム13の上端を後側フィルム8の内面に結合し、下方の2箇所14a、14bにおいて中間フィルム部材9bにスポット溶接することによって、逆止弁用ポリエチレンフィルム13と中間フィルム部材9bとの間に形成される隙間によって構成される。なお、逆止弁用ポリエチレンフィルム13を設けることなく、メッシュシート9aを排出口11のできるだけ近傍まで延在させてもよい。
【0030】
袋体の各部はつぎのように組み立てられる。前側フィルム7、後側フィルム8の外周部15は上方部ではメッシュシート9aを挟んでヒートシールされ、メッシュシートを挟んだヒートシール部分に続く部分では中間フィルム部材9bを挟んでヒートシールされる。後側フィルム8の下部分は中央部を液状成分の排出口11の外周に巻き付けて密着するとともに両側は中間フィルム部材9bに接合される。前側フィルム7の下方は外周部両側において中間フィルム部材9bに接合される。このため、袋体6の内部はメッシュシート9aと中間フィルム部材9bとで形成する中間部材9を境にして、前室16と後室17とに分割される。なお、袋体6には後側フィルム8の外側にも快適層を設けたり、また防臭フィルター等、従来から使用される公知の部材を取り付けることができる。
【0031】
次に、排泄物から固形状成分を分離する作用について説明する。ここでは、通常の使用方法に沿って、使用者である患者はベットに横向きになっており、本発明のオストミーパウチは身体に直角に、すなわち、開口2に対して排出口11および12が下方に位置するように取り付けられる。また液状成分の排出口11には外部に設けた容器に連通するようにチューブが取り付けられ、固形状成分の排出口12は巻き上げられて面ファスナーまたはクリップにより封止されている。
【0032】
人工肛門から排出された水様便は、袋体の前室16に排出されるとメッシュシート9aに当たり、液状成分は後室17に透過し(矢印18)、固形状成分は前室16の下方に落ちる(矢印19)。前室16に排出されてメッシュシート9aに至らなかった水様便はそのまま前室16の下方に落ちる。このため前室16の下部には水様便が固形状成分が沈んだ状態となって溜まって行く。後室17に入った液状成分は、中間フィルム部材9bと逆止弁用ポリエチレンフィルム13とで構成された逆止弁作用を有する隙間を通過して液状成分の排出口11の内部に流下し、さらに排出口11に連結したチューブを経由して、外部に設けた容器に排出される。
【0033】
さらに水様便の排出が続くと、前室16に溜まった水様便の液面が中間フィルム部材9bの上端に達し、溜まった水様便の上部に存在する液状成分が中間フィルム部材9bの上端を越えると、メッシュシート9aで分離されて後室17に溢れ出す。このようにして水様便中の固形状成分は前室16に貯留され、液状成分はメッシュシート9aで分離されて後室17へ入り、外部に排出される。このため、大量の水様便がそのまま袋体に貯留されることはなく、またメッシュシート9aで固形状成分が分離されるため、チューブが目詰まりすることはない。前室16が、溜まった固形状成分で一杯になったときは固形状成分の排出口12を開放して排出する。
【0034】
(実施例2)
次に、図2に基づき実施例2について説明する。図2は、本発明のオストミーパウチに係る実施例2の模式的構成図であり、図2(a)は身体に取り付ける方向から見た正面図、図2(b)は図2(a)のB−B線に沿った側断面図である。図2の実施例ではフィルター手段が袋体の下方に配置されている点が実施例1と異なり、実施例1と同様な機能を有する部材には同じ符号を付して、その詳細説明を省略する。
【0035】
本実施例におけるフィルター手段20は、直径2mmの透孔が縦横8mmピッチで形成された透孔領域20aと透孔のない連続領域20bとを有する厚さ30μmのポリエチレンシートからなる。フィルター手段20は透孔領域20aでは上端部20cにおいて前側フィルム7の内面に接合され、連続領域20bでは後側フィルム8と重ねられ排出口11のコネクターを挟んで前側フィルム7とともに液密に接合している。このため、袋体6の内部はフィルター手段20の透孔領域20aを境にして身体側下方が分割される。ここでは透孔領域20aの上流側を上室21、透孔領域20aによって固形状成分が分離された液状成分が流入する下流側を下室22とよぶ。本実施例では下室22が袋体6の下部の一部にのみに存在し、袋体6の容積のほとんどを上室21が占めるため、袋体6に固形状成分を効率よく収容できる。
【0036】
本実施例では排泄物は以下のように分離される。人工肛門から排出された水様便は、袋体の上室21に排出されるとフィルター手段20の透孔領域20aに当たって固形状成分を分離して液状成分は下室22に透過する(矢印23)。分離された固形状成分は上室21の下方(図面では右下隅)に落ちて溜まる(矢印24)。このため上室21の下部には水様便が固形状成分が沈んだ状態となって溜まって行く。下室22に入った液状成分は、排出口11のコネクター内部に流下し、さらに排出口11のコネクターに連結したチューブを経由して、外部に設けた容器に排出される。上室21に溜まった水様便の液状成分は連続領域20bの上縁20dを越えると下室22に流れ込み始める。上室21が分離された固形状成分で一杯になったときは排出口12を開放して溜まった固形状成分を排出する。
【0037】
そのほか種々の変形が可能である。上記実施例はいずれも人工肛門に対応したオストミーパウチとして使用するものだが、例えば、実施例2のものを瘻孔や創傷に対応する場合には、袋体の後側フィルム8の瘻孔や創傷に対向する部位を開閉可能として創部等の観察や処置ができるようにしてもよい。
【0038】
また、固形状成分を排出するときには、同時に袋体6の内面やフィルター手段に付着した排泄物を洗浄することができるように、洗浄用の開口を別に設けてもよい。袋体6は上端をシールせずファスナーを設けたり、またはファスナーを設けず適宜クリップ等の閉鎖手段を使用することによって開閉可能とすることができる。この場合、通常の使用時には上端を閉鎖し、内部の洗浄が必要となったときは閉鎖を解除して上部から洗浄水を導入する。実施例2の場合には後側フィルム8の上部にキャップ付きの洗浄水導入口を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明のオストミーパウチに係る実施例1の模式的構成図。
【図2】本発明のオストミーパウチに係る実施例2の模式的構成図。
【符号の説明】
【0040】
1:面板、2:開口、3:粘着層、4:ラミネート層、5:快適層、6:袋体、7:前側フィルム、8:後側フィルム、9:中間部材、9a:メッシュシート、9b:中間フィルム部材、11:液状成分の排出口、12:固形状成分の排出口、13:逆止弁用ポリエチレンフィルム、14a,14b:スポット溶接部、15:外周部、16:前室、17:後室、20:フィルタ手段、20a:透孔領域、20b:連続領域、20c:上端部、20d:連続領域の上縁、21:上室、22:下室。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
体の表面に取り付けて該体から排出された排泄物や浸出液を受け入れて貯留するための袋体を具備した医療用パウチにおいて、
前記袋体の内部に設けられ排泄物や浸出液から固形状成分を分離するためのフィルター手段と、前記排泄物や浸出液から分離された固形状成分と該固形状成分が分離された液状成分とを別々に排出するための複数の排出手段とを設けたことを特徴とする医療用パウチ。
【請求項2】
前記フィルター手段が多孔性のシート状部材であることを特徴とする請求項1に記載の医療用パウチ。
【請求項3】
前記多孔性のシート状部材において、液状成分が通過する透孔の直径が0.04〜5mmであることを特徴とする請求項2に記載の医療用パウチ。
【請求項4】
前記袋体が少なくとも2枚の熱可塑性樹脂からなるフィルムから構成され、前記多孔性のシート状部材が熱可塑性樹脂から成り、前記袋体を構成する少なくとも2枚のフィルムが前記多孔性のシート状部材を挟んで該多孔性シート状部材とともに周縁部において結合されていることを特徴とする請求項2に記載の医療用パウチ。
【請求項5】
前記複数の排出手段が袋体の下部に並んで設けられていることを特徴とする請求項1に記載の医療用パウチ。
【請求項6】
前記袋体が、体に近接して配置され前記排泄物や浸出液を受け入れる開口が形成された前側フィルムと該前側フィルムに対して該体から離れて配置された後側フィルムとを有し、
前記前側フィルムと前記後側フィルムが前記多孔性のシート状部材を挟んで該多孔性シート状部材とともに周縁部において結合されて前記袋体を構成するとともに該構成された袋体の内部が前記多孔性のシート状部材を挟んで前記前側フィルムに接する室と前記後側フィルムに接する室との2つの室に分割され、
該2つの室のそれぞれの下部に前記複数の排出手段のうちの一つをそれぞれ設けたことを特徴とする請求項2に記載の医療用パウチ。
【請求項7】
前記前側フィルムと前記後側フィルムが前記多孔性のシート状部材を挟んで前記袋体の少なくとも上端部を含む周縁部において結合されたことを特徴とする請求項6に記載の医療用パウチ。
【請求項8】
前記多孔性のシート状部材の上端が前記前側フィルムの開口の下方においてその内面から周縁部に亘って結合されたことを特徴とする請求項6に記載の医療用パウチ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−82697(P2007−82697A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274176(P2005−274176)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000151380)アルケア株式会社 (88)
【Fターム(参考)】