説明

医療用ワゴン

【課題】美観を損なうことなく、ベッドサイドをすっきりまとめられ、投薬や医療器材等の取り違えによる医療過誤の発生を可及的に防止することができる医療用ワゴンを提供する。
【解決手段】医療用ワゴンは、四隅を支柱2に支持された複数のテーブル3,4,5が上下に配設され、下端部に移動用車輪6を設け、テーブルに長尺で有底筒状の吸引用チューブ収納容器8を保持するチューブ収納容器保持部を形成して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機関において回診時や等に使用される医療用ワゴンに関し、特に老人医療や呼吸器系等の医療の回診時等に使用される医療用ワゴンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、病院等の医療機関の特に呼吸器系の治療や老人介護では、痰や食べ物がのどや気管に溜まったり詰まりたりしやすく、これら溜まったり詰まったものを吸引して通路を確保する必要がある。
こうした溜まったり詰まったりしたものを吸引するには、一端が吸引装置に連結された長い吸引用チューブをのどや気管に差し入れて吸引するようにしており、使用後の吸引用チューブは消毒液等で消毒した後、長く形成されたチューブ収納用容器に入れて保管するようにしている。
【0003】
この吸引用チューブを収納する収納用容器は、その容器本体の長さが例えば50cm程度と比較的長く、一般的には使用後の吸引用チューブを消毒する処理部材容器とともにベッドの手すりやサイドテーブルの側面部分に掛止具を介して吊持されている。
そして、回診や治療でこの吸引用チューブを使用する場合、介護職員や看護師、医師等が回診時に必要な他の医療用機器を積んだ医療用ワゴン(例えば特許文献1)をベッドサイドに運び、ベッドサイドの手摺りに設けたチューブ収納用容器から吸引用チューブを取出して使用し、使用後は処理部材で消毒して再び収納用容器に収納するようにしている。
ベッドサイドの手摺りに設けられたチューブ収納用容器内の吸引用チューブや処理容器の内の処理剤は定期的に交換したり充填するようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2002―355128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように吸引用チューブのチューブ収納用容器や処理部材容器をベッドの手すりやサイドテーブルの側面部分に掛止具を介して吊持したものでは、外観が見苦しいだけでなく、このチューブ収納用容器並びに処理部材容器がサイドテーブルの側面から出っ張った状態になることから、これに患者らやワゴン等が接触すると外れやすく、収納した吸引用チューブがチューブ収納容器から飛び出たり、処理部材容器から処理部材が飛び出した周囲に散乱する場合もあり、衛生上にも問題があった。
【0006】
そこで、処理部材容器等をサイドテーブル上に載置して側方に突出するのをなくすことも考えられるが、サイドテーブルにはテレビや患者個人の私物、投薬や医療器材等の多くのものが置かれており、十分なスペースもなく、多くの医療機材が混在することにより、取り違え等による医療過誤の発生にもつながるおそれもあった。
また、多忙時には上記チューブ収納用容器内の吸引用チューブや処理容器の内の処理剤の定期的な交換や充填を失念してしまうこともあり、この点でも衛生上に問題があった。
本発明は上記問題点に鑑み提案されたもので、美観を損なうことなく、ベッドサイドをすっきりまとめられ、投薬や医療器材等の取り違えによる医療過誤の発生を可及的に防止することができるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、四隅を支柱に支持された複数のテーブルが上下に配設され、下端部に移動用車輪を設け、テーブルに長尺で有底筒状の吸引用チューブ収納容器を保持するチューブ収納容器保持部を形成した医療用ワゴンを提供することを最も主要な特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の医療用ワゴンでは、チューブ収納容器保持部がテーブルに穿設された容器装着孔で形成したことや、チューブ収納容器保持部の近傍にチューブ等の処理部材容器の容器収納部を設けたこと、さらにはチューブ収納容器保持部が最上部のテーブルとその下方テーブルに渡って容器本体を支持したことも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、医療用ワゴンを、四隅を支柱に支持された複数のテーブルが上下に配設され、下端部に移動用車輪を設け、テーブルに長尺で有底筒状の吸引用チューブ収納容器を保持するチューブ収納容器保持部を形成して必要時にベッドサイドに搬送するようにしてあるので、従来のように吸引用チューブのチューブ収納用容器や処理部材容器をベッドの手すりやサイドテーブルの側面部分に掛止具を介して吊持したもののように、外観が見苦しくなることがない。
【0010】
また、チューブ収納用容器や処理部材容器がサイドテーブルの側面から両容器が出っ張らず、すっきりした状態になる。
これにより、従来のように患者やワゴン等、他物が接触したりして、チューブ収納容器に収納した吸引用チューブが飛び出たり、処理部材容器から処理部材が飛び出した周囲に散乱するのを防止することができ、衛生面も大幅に向上する。
【0011】
加えて、チューブ収納用容器又は/及び処理部材容器が医療用ワゴンに設けてあるので、これらをサイドテーブルに設ける場合のようにテーブル上に多くの医療機材が混在するのを防止して、取り違え等による医療過誤の発生も可及的に防止できる利点もある。
【0012】
さらに、本発明にかかる医療用ワゴンでは、テーブルに長尺で有底筒状の吸引用チューブ収納容器を保持するチューブ収納容器保持部を形成するだけの簡単な構造で済み、安価に実施することが出来る利点もある。
また、必要に応じてベッドサイドに搬送し、使用後は例えばナースステーションに戻せるので、多忙時でもチューブ収納用容器内の吸引用チューブや処理容器の内の処理剤の定期的な交換や、交換定期的な充填が簡単に且つ確実に行なえる利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明にかかる医療用ワゴンの最も好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は医療用ワゴンの全体斜視図、図2は医療用ワゴンの平面図、図3は医療用ワゴンの正面図、図4は医療用ワゴンの側面図、図5は一部分解斜視を夫々示し、図中符号1は医療用ワゴンを全体的に示す。
この医療用ワゴン1は、四隅が支柱2・2・2・2に支持された三つのテーブル3・4・5を上下に配するとともに、各支柱2の下端には移動用の自在車輪6が設けられている。
各支柱2はステンレススチールパイプで形成されており、この医療用ワゴン1の上段のテーブル3までの高さは約87cmになっている。
【0014】
上記各テーブル3・4・5は、所定の大きさの四角に形成されたステンレススチール製板材の周囲四辺を下方に折り曲げ、折り曲げられて突合せられた辺部分を溶着したもので、各テーブル3・4・5の上面の周縁部には積載物の落下を防止するために、小径のパイプで形成された手すり7が設けてある。
この手すり7は、中段及び下段のテーブル4・5の表面には周縁の四辺にそれぞれ立設し、上段のテーブル3には三辺にそって、一体に形成されたものが立設されている。
【0015】
そして、この医療用ワゴン1の角隅部分にはチューブ収納用容器8並びに処理部材容器9が並んだ状態で着脱可能に取り付けてある。
処理部材容器9は、使用後の吸引用チューブ(図示せず)を殺菌消毒するための薬液を含浸させたガーゼ等を収納するもので、透明な合成樹脂で形成された広口の有底筒状の容器本体10とその上部開口を蓋する蓋体11とからなる(図3乃至図5参照)。
容器本体10の開口寄り部分の外周には設置用フランジ12が突出形成してあり、フランジ12の下方の容器本体部分10aは僅かに下窄まりとなるテーパ状にしてある。
【0016】
この処理部材容器9が取り付けられる部分の上段のテーブル3には、図5に示すように上記容器本体10のフランジ12の下方の外径と略同径か僅かに大き目にした大径の容器装着孔13が穿設されており、この容器装着孔13に上方から挿入された処理部材容器9のフランジ12部分が受け止められることにより着脱可能に装着される。
【0017】
上記チューブ収納用容器8は、使用後の吸引用チューブを収納するもので、透明な合成樹脂で形成された小径で細長い有底筒状の容器本体14とその上部開口を蓋する蓋体15とからなり、容器本体14の開口寄り部分の外周には設置用フランジ16が突出形成してある。
また、容器本体14に形成されたフランジ16の下方の容器本体部分14aは僅かに下窄まりとなるテーパ状にしてある(図1乃至図6参照)。
このチューブ収納用容器8が取り付けられる部分の上段のテーブル3には、前記容器本体14のフランジ16の下方の外径と略同径か僅かに大き目にした小径の容器装着孔17が穿設されている。
【0018】
また、このチューブ収納用容器8は比較的長い(本例においては約50cm)のに対して上段のテーブル3と中段のテーブル4との間が約35cmとなっていることから、中段のテーブル4にもチューブ収納用容器8の下端寄り部が挿入される第2の容器装着孔18が、上記上段のテーブル3に形成された容器装着孔17と同心状に穿設されている。
これにより、上段のテーブル3の容器装着孔17の上方から挿入されたチューブ収納用容器は、その上部が上段のテーブルにフランジ部分で受け止められ、下端寄り部分が中段のテーブル4の第2の容器装着孔18に保持された状態に着脱可能に装着される。
【0019】
上記のように構成された医療用ワゴン1を使用する手順を次に説明する。
この医療用ワゴン1の角隅部分に形成された容器装着孔13・17にチューブ収納用容器8並びに処理部材容器9の容器本体10・14をそれぞれ装着し、チューブ収納用容器には吸引用チューブをその一端部(吸引装置に連結される側の端部)が導出された状態で挿入し、開口部を蓋体15で閉じる。
このとき、詳細については図示するのを省略してあるが、チューブ収納用容器8の容器本体14と蓋体15のそれぞれにチューブ通過用の切り欠きがあり、この切り欠きを合致させた状態で蓋すると、容器本体14に収納され外部に導出された吸引用チューブの部分がつぶされることなく収納される。
【0020】
一方、処理剤容器9には消毒液を含浸させたガーゼやコットンを入れて蓋し、各テーブルにはその他の回診等に必要な器具や薬剤を載置して患者等のベッドサイドに搬送する。
こうして、吸引用チューブをチューブ収納用容器8に、消毒液を含浸させたガーゼやコットンは処理剤容器9にそれぞれ収納すると、患者等のベッドサイドはこれらに器材がない分、すっきりと整頓することができる。
吸引等の施術後の医療用ワゴン1は、吸引用チューブを消毒した後、再びチューブ収納用容器8に収納してナースセンター等に搬送して戻す。
こうした搬送時にも長細く嵩張るチューブ収納用容器8は、医療用ワゴン1に確りと保持されているので、振動や他物が当たったりしたときでも、チューブ等が飛び出したりすることがない。
また、上述のように、医療用ワゴン1には吸引等に必要な器具や薬剤をまとめて載置することができ、取り違え等による事故をも防止することができる。
【0021】
尚、上記実施の形態ではテーブルが上下三段にしてあるがこうしたものに限られず、二段や四段以上にしてもよいことは言うまでもなく、引き出し付きの医療用ワゴン1にも本発明を実施できるのは勿論のことである。
また、上記実施の形態ではチューブ収納用容器8の容器本体14の下端部を中段のテーブル4に保持させるようにしてあるが、容器本体14の長さとテーブル間の長さとの関係により、容器例えば本体を上段のテーブルにのみ支持させたり、下段のテーブルにかけて保持させる等、種々変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】は本発明にかかる医療用ワゴンの全体斜視図である。
【図2】は本発明にかかる医療用ワゴンの平面図である。
【図3】は本発明にかかる医療用ワゴンの正面図である。
【図4】は本発明にかかる医療用ワゴンの側面図である。
【図5】は本発明にかかる医療用ワゴンに装着したチューブ収納用容器及び処理部材容 器部分の分解斜視図である。
【図6】は本発明にかかる医療用ワゴンに装着したチューブ収納用容器部分の縦断面図 である。
【符号の説明】
【0023】
1・・・医療用ワゴン
2・・・支柱
3・・・上段のテーブル
4・・・中段のテーブル
5・・・下段のテーブル
8・・・チューブ収納用容器
9・・・処理部材容器
14・・・チューブ収納用容器の容器本体
17・・・チューブ収納用容器の容器装着孔
18・・・第2の容器装着孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四隅を支柱に支持された複数のテーブルが上下に配設され、下端部に移動用車輪を設け、テーブルに長尺で有底筒状の吸引用チューブ収納容器を保持するチューブ収納容器保持部を形成したことを特徴とする医療用ワゴン。
【請求項2】
チューブ収納容器保持部がテーブルに穿設された容器装着孔で形成したことを特徴とする請求項1に記載の医療用ワゴン。
【請求項3】
チューブ収納容器保持部の近傍にチューブ等の処理部材容器の容器収納部を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の医療用ワゴン。
【請求項4】
チューブ収納容器保持部が、最上部のテーブルとその下方テーブルに渡って容器本体を支持したことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の医療用ワゴン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−82660(P2007−82660A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273478(P2005−273478)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(504145489)有限会社色彩舎 (1)
【Fターム(参考)】