医療用器具の伸縮式保持アーム装置
【課題】医療用器具を保持する位置が近い場合に保持剛性が向上する医療用器具の伸縮式保持アーム装置を提供する。
【解決手段】第1アーム7と第2アーム14がジョイント部12に対してスライド自在なため、プローブ22を近い位置に保持する場合は、第1アーム7及び第2アーム14の少なくとも一方をスライドさせて、第1アーム7の基端部8からジョイント部12を経由して第2アーム14の先端部に至る実質的長さを短くすることができる。第1アーム7と第2アーム14の合計の実質的長さを短くすることにより、第2アーム14の先端に保持しているプローブ22の保持剛性が向上するため、プローブ22の位置が変動せず、本来の性能を発揮することができる。
【解決手段】第1アーム7と第2アーム14がジョイント部12に対してスライド自在なため、プローブ22を近い位置に保持する場合は、第1アーム7及び第2アーム14の少なくとも一方をスライドさせて、第1アーム7の基端部8からジョイント部12を経由して第2アーム14の先端部に至る実質的長さを短くすることができる。第1アーム7と第2アーム14の合計の実質的長さを短くすることにより、第2アーム14の先端に保持しているプローブ22の保持剛性が向上するため、プローブ22の位置が変動せず、本来の性能を発揮することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用器具の伸縮式保持アーム装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、近年、各種の器具が使用されている。例えば、超音波エコープローブ、内視鏡、脳ベラ、吸引管など多種のものが使用されている。そして、このような医療用器具をベッドで寝ている患者の特定部位に対して正確に位置決めして保持する保持アーム装置が各種提案されている。
【0003】
例えば、複数のアームをボールジョイントを介して連結した構造の保持アーム装置がある。この種の保持アーム装置は、直線状に延ばすことにより遠い位置に医療用器具を保持でき、くの字状に屈曲することにより近い位置に医療用器具を保持できるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−52158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の保持アーム装置にあっては、複数のアームを単にボールジョイントで連結した構造のため、遠い位置までカバーしようとして保持アーム装置の長さを長くすると、医療用器具を保持している保持アーム装置の先端部の支持剛性が低下し、医療用器具の保持剛性が低下する。医療用器具の保持剛性が低下すると、医療用器具の位置が微妙に変動し、医療用器具の性能に影響を与えるおそれがある。保持アーム装置は、直線状に伸ばした場合も、くの字状に屈曲させた場合も、その実質長さには変化ないため、医療用器具を近い位置に保持する場合も、遠い位置に保持する場合と同様に保持剛性が低下する。
【0006】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、医療用器具を保持する位置が近い場合に保持剛性が向上する医療用器具の伸縮式保持アーム装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、基端部が水平方向で回転自在に支持された第1アームと、第1アームと高さ位置が相違する第2アームと、第2アームを第1アームに対して少なくとも水平方向で回転自在に連結するジョイント部と、第2アームの先端に設けられた医療用器具を保持するための保持部とを備え、前記ジョイント部に対して第1アーム及び第2アームの少なくとも一方が長手方向でスライド自在で且つ任意位置でロック自在であることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、第1アーム及び第2アームがそれぞれ水平な長板状であることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、ジョイント部が上下中間位置にクラッチ式のボールジョイントを備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、第2アームと保持部との間にクラッチ式のボールジョイントを備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、ボールジョイントのスイッチが保持部に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、第1アームと第2アームを連結しているジョイント部に対して第1アーム及び第2アームの少なくとも一方が長手方向でスライド自在なため、医療用器具を近い位置に保持する場合はスライドさせて、第1アームの基端部からジョイント部を経由して第2アームの先端部に至る実質的長さを短くすることができ、医療用器具の保持剛性を向上させることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、第1アーム及び第2アームがそれぞれ水平な長板状であるため、第1アームと第2アームとの間にジョイント部を介在する構造でありながら、第1アームと第2アームによる合計上下寸法を比較的小さくすることができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、ジョイント部が上下中間位置にボールジョイントを備えているため、ボールジョイントを中心にして第2アームを第1アームに対してあらゆる方向へ角度変化させることができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、第2アームと保持部との間にボールジョイントを備えているため、ボールジョイントを中心にして医療用器具を保持している保持部を第2アームに対してあらゆる方向へ角度変化させることができる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、ボールジョイントのスイッチが保持部に設けられているため、医療用器具を手でもった状態のまま、ボールジョイントのロック・フリー操作を行うことができ便利である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る伸縮式保持アーム装置を示す斜視図。
【図2】伸縮式保持アーム装置を示す平面図。
【図3】伸縮式保持アーム装置を示す側面図。
【図4】医療用器具を取付ける状態を示す保持部の断面図。
【図5】医療用器具の取付け後の状態を示す図4相当の断面図。
【図6】図5中矢示SA−SA線に沿う保持部の断面図。
【図7】医療用器具を外した状態を示す図6相当の保持部の断面図。
【図8】直線状に伸ばして最大長さにした伸縮式保持アーム装置を示す平面図。
【図9】最大長さのまま屈曲させた状態を示す伸縮式保持アーム装置の平面図。
【図10】直線状に短くした状態の伸縮式保持アーム装置を示す平面図。
【図11】直線状に短くした他の状態の伸縮式保持アーム装置を示す平面図。
【図12】実質長さが短い状態のまま屈曲させた状態を示す伸縮式保持アーム装置の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好適な実施形態を図1〜図12を用いて説明する。
【0019】
この実施形態に係る医療用器具の伸縮式保持アーム装置は、ストレッチャー、ICUベッド、病棟ベッド等のベッドに取付けられて使用されるものである。ベッドの頭部側の一辺にはレール1が固定され、そこにスライダー2が移動自在に係合されている。スライダー2はノブ3を回すことにより任意位置で固定することができる。
【0020】
スライダー2の上面には、アリ溝状の凹部が形成された固定部4が設けられ、そこに支柱部5が脱着自在に取付けられている。支柱部5の上部には円柱状のセンター部6が設けられている。
【0021】
センター部6の内部にはエアークラッチが内蔵されており、センター部6は支柱部5を中心に水平方向で回転自在で且つ任意回転位置でロック自在になっている。このセンター部6に第1アーム7の基端部8が一体的に結合されている。従って、第1アーム7もセンター部6と一緒に水平方向で回転する。第1アーム7の長手方向に垂直な断面の形状は長手方向に沿って一定で、典型的には水平方向に延びる長板状を成し、長さは30cmである。第1アーム7の先端には抜け落ち防止用のストッパ9が設けられている。
【0022】
第1アーム7の基端部8には、圧縮エアーを供給するエアーホース10が連結されている。センター部6は、図示せぬ内蔵されたバネ機構により回転が常時ロック状態となっており、後述するエアースイッチ11を押した場合のみエアーが供給されて、回転フリーになる。
【0023】
第1アーム7の途中位置には、基本的に円柱形状のジョイント部12が挿通されている。第1アーム7はジョイント部12の上部を貫通し、ジョイント部12は第1アーム7の長手方向に沿ってスライド自在になっている。ジョイント部12の上端にはストッパリング13が設けられ、これを右方向に回転させることにより、ストッパリング13の一部がジョイント部12内において第1アーム7と当接してスライドがロックされ、左側へ回すことにより当接が解除されてスライド自在となる。ジョイント部12を第1アーム7に対してロックする機構は何でも良く、一般的なネジでロックするようにしても良い。
【0024】
第2アーム14はジョイント部12の下部を貫通し、ジョイント部12は第2アーム14の長手方向に沿ってスライド自在である。第2アーム14も第1アーム7と同様に水平な板形状をしており、長さは22cmである。ジョイント部12の下端にもストッパリング15が設けられ、これを回転させることにより、第2アーム14をジョイント部12に対してスライド自在且つロック自在にできる。第2アーム14の他端には抜け落ち防止用のストッパ16が設けられている。
【0025】
ジョイント部12の上下中間部にはボールジョイント17が設けられている。このボールジョイント17により、ジョイント部12の下部は第2アーム14ごと、水平方向で360度回転可能になると共に上下方向であらゆる方向へ傾くことができる。このボールジョイント17はエアークラッチ方式で、前記センター部6に内蔵されたエアークラッチと同時にエアーが供給される。このボールジョイント17も常時ロックで、エアー供給時のみフリーとなる。
【0026】
第2アーム14の先端には、別のボールジョイント18を介して保持部19が設けられている。このボールジョイント18もジョイント部12に設けられた前記ボールジョイント17と同様の機能を有する。
【0027】
保持部19は回転軸20を中心に回動自在なホルダー21を有している。ホルダー21の回転位置は回転軸20における摩擦力により維持されている。ホルダー21には、医療用器具としてのプローブ22が取付けられている。プローブ22は先端から任意出力の超音波を発生させることができる。
【0028】
このプローブ22を取付けるホルダー21の本体部には内部にエアースイッチ11が内蔵されている。ホルダー21の本体以外の部分は板状になっていて、基端にはU字形の差込部23、中間にはスイッチレバー(スイッチ)24を有する開口部25、先端には固定ネジ26を有するアリ溝27が設けられている。
【0029】
プローブ22の先端付近にはリング状の固定金具28が設けられ、その固定金具28にはアリ形の突起29が形成されている。従って、図4及び図5に示すように、プローブ22の基端をホルダー21の差込部23に差し込みながら、固定金具28の突起29をアリ溝27に差し込み、固定ネジ26を回して突起29をアリ溝27内で固定することにより、プローブ22をホルダー21に対して取付けることができる。
【0030】
ホルダー21の開口部25に設けられたスイッチレバー24は回転軸30を中心に回転するバラフライ型で、一端はホルダー21から外側へ突出しており、他端はエアースイッチ11のプッシュボタン31により持ち上げられた状態になっている。
【0031】
エアースイッチ11には、前述したエアーホース10から供給されたエアーがエアーチューブ(図示省略)を介して供給される。供給されたエアーはエアースイッチ11を通過した後、更にエアーチューブ(図示省略)を介して前述のセンター部6、ボールジョイント17、18の3カ所のエアークラッチ部分へ同時に供給されるようになっている。
【0032】
エアーの供給は、スイッチレバー24の一端を押すことにより、スイッチレバー24が回転して、その他端がエアースッチ11のプッシュボタン31を押すことにより開始され、スイッチレバー24から指を離してプッシュボタン31が内蔵スプリングにより復帰することにより停止する。
【0033】
従って、操作者は、保持部19に保持されているプローブ22を手で持って、そのままスイッチレバー24の一端を押すことにより、エアーをセンター部6、ボールジョイント17、18の3カ所に同時供給して、第1アーム7、第2アーム14、保持部19の全てをフリー状態にすることができる。そのため、保持部19で保持されたプローブ22を希望する任意の位置に位置決めすることができる。位置決めした後、スイッチレバー24から手を離せば、エアーの供給が停止され、センター部6、ボールジョイント17、18のそれぞれがロック状態となり、プローブ22の位置決め状態はそのまま保持される。
【0034】
第1アーム7と第2アーム14はそれぞれジョイント部12に対してスライドすることができるため、第1アーム7と第2アーム14の全長を調整して、プローブ22が届く範囲を設定することができる。
【0035】
患者におけるプローブ22を位置決めする位置が遠い場合は、図8に示すように、ジョイント部12を第1アーム7の先端付近に位置させ、そのジョイント部12から第2アーム14を最大限に引き出して直線状に伸ばした状態にする。このようにすることにより、第1アーム7と第2アーム14による最大の長さL1(a1+b1)を得ることができる。この状態では、第1アーム7及び第2アーム14が伸びきっているため、第2アーム14の先端の保持部19の支持剛性は十分とは言えず、プローブ22の保持剛性も従来と同程度のものである。
【0036】
しかしながら、第1アーム7及び第2アーム14を最大長さL1よりも短くして近い位置にプローブ22を位置決めする場合は、第1アーム7及び第2アーム14がジョイント部12に対してスライド自在であるため、実質長さを短くして支持剛性を向上させることができる。
【0037】
例えば、長さがL2の近い位置にプローブ22を位置決めする場合、従来のようにスライドできない構造だと、図9のように第1アーム7及び第2アーム14をくの字状に屈曲させなければならない。このように屈曲させた場合、近い位置にプローブ22を位置決めする場合でも、第1アーム7と第2アーム14による実質的長さ(a1+b1)は図8の場合と変わらないため、プローブ22の支持剛性が向上するものではない。
【0038】
これに対して、図10及び図11のように、ジョイント部12で第1アーム7及び/又は第2アーム14をスライドさせることにより、第1アーム7及び第2アーム14の直線状を保ったまま長さL2を短くすれば、その実質的長さ〔(a2+b2)又は(a3+b3)〕も短くなる。従って、プローブ22の保持に関連する支持構造の実質的長さが短くなるので、プローブ22を保持している保持部19の支持剛性が向上しプローブ22の保持剛性が向上するため、プローブ22の位置が変動せず本来の性能を発揮することができる。
【0039】
また、第1アーム7及び第2アーム14が直線状のため、くの字状に屈曲させる場合のように屈曲部(ジョイント部12)が周囲に突出することなく、周辺スペースの有効利用を図ることもできる。
【0040】
尚、図12に示すように、近い位置にプローブ22を位置する場合に、第1アーム7と第2アーム14を意図的に屈曲させて、その部分に作業スペースSを生じさせたい場合がある。そのような場合も、第1アーム7の基端部8からジョイント部12を経て第2アーム14の先端に至る実質長さ(a4+b4)が短いため、プローブ22の保持剛性は依然として高い。
【0041】
また、この実施形態によれば、第1アーム7及び第2アーム14がそれぞれ水平な長板状であるため、図3に示すように、第1アーム7と第2アーム14との間にジョイント部12を介在する構造でも、第1アーム7と第2アーム14による合計上下寸法Hを比較的小さくすることができる。
【0042】
更に、ジョイント部12が上下中間位置にボールジョイント17を備えているため、ボールジョイント17を中心にして第2アーム14を第1アーム7に対してあらゆる方向へ角度変化させることができる。
【0043】
更に、第2アーム14と保持部19との間にもボールジョイント18を備えているため、ボールジョイント18を中心にしてプローブ22を保持している保持部19を第2アーム14に対してあらゆる方向へ角度変化させることができる。
【0044】
更に、前述のように、センター部6、ボールジョイント17、18をフリーにするスイッチレバー24が保持部19に設けられているため、プローブ22を手でもった状態のまま、ボールジョイント17、18等のロック・フリー操作を行うことができ便利である。
【0045】
以上の実施形態では、ジョイント部12に対して第1アーム7及び第2アーム14の両方をスライドさせる構造を示したが、どちらか一方でも良い。第2アーム14を第1アーム7の下側に位置させた例を示したが、逆にしても良い。センター部6やボールジョイント17、18にエアークラッチ方式を採用したが、オイルクラッチ方式や電磁クラッチでも良い。
【符号の説明】
【0046】
7 第1アーム
8 基端部
12 ジョイント部
14 第2アーム
17、18 ボールジョイント
19 保持部
22 プローブ(医療用器具)
24 スイッチレバー(スイッチ)
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用器具の伸縮式保持アーム装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、近年、各種の器具が使用されている。例えば、超音波エコープローブ、内視鏡、脳ベラ、吸引管など多種のものが使用されている。そして、このような医療用器具をベッドで寝ている患者の特定部位に対して正確に位置決めして保持する保持アーム装置が各種提案されている。
【0003】
例えば、複数のアームをボールジョイントを介して連結した構造の保持アーム装置がある。この種の保持アーム装置は、直線状に延ばすことにより遠い位置に医療用器具を保持でき、くの字状に屈曲することにより近い位置に医療用器具を保持できるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−52158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の保持アーム装置にあっては、複数のアームを単にボールジョイントで連結した構造のため、遠い位置までカバーしようとして保持アーム装置の長さを長くすると、医療用器具を保持している保持アーム装置の先端部の支持剛性が低下し、医療用器具の保持剛性が低下する。医療用器具の保持剛性が低下すると、医療用器具の位置が微妙に変動し、医療用器具の性能に影響を与えるおそれがある。保持アーム装置は、直線状に伸ばした場合も、くの字状に屈曲させた場合も、その実質長さには変化ないため、医療用器具を近い位置に保持する場合も、遠い位置に保持する場合と同様に保持剛性が低下する。
【0006】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、医療用器具を保持する位置が近い場合に保持剛性が向上する医療用器具の伸縮式保持アーム装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、基端部が水平方向で回転自在に支持された第1アームと、第1アームと高さ位置が相違する第2アームと、第2アームを第1アームに対して少なくとも水平方向で回転自在に連結するジョイント部と、第2アームの先端に設けられた医療用器具を保持するための保持部とを備え、前記ジョイント部に対して第1アーム及び第2アームの少なくとも一方が長手方向でスライド自在で且つ任意位置でロック自在であることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、第1アーム及び第2アームがそれぞれ水平な長板状であることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、ジョイント部が上下中間位置にクラッチ式のボールジョイントを備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、第2アームと保持部との間にクラッチ式のボールジョイントを備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、ボールジョイントのスイッチが保持部に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、第1アームと第2アームを連結しているジョイント部に対して第1アーム及び第2アームの少なくとも一方が長手方向でスライド自在なため、医療用器具を近い位置に保持する場合はスライドさせて、第1アームの基端部からジョイント部を経由して第2アームの先端部に至る実質的長さを短くすることができ、医療用器具の保持剛性を向上させることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、第1アーム及び第2アームがそれぞれ水平な長板状であるため、第1アームと第2アームとの間にジョイント部を介在する構造でありながら、第1アームと第2アームによる合計上下寸法を比較的小さくすることができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、ジョイント部が上下中間位置にボールジョイントを備えているため、ボールジョイントを中心にして第2アームを第1アームに対してあらゆる方向へ角度変化させることができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、第2アームと保持部との間にボールジョイントを備えているため、ボールジョイントを中心にして医療用器具を保持している保持部を第2アームに対してあらゆる方向へ角度変化させることができる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、ボールジョイントのスイッチが保持部に設けられているため、医療用器具を手でもった状態のまま、ボールジョイントのロック・フリー操作を行うことができ便利である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る伸縮式保持アーム装置を示す斜視図。
【図2】伸縮式保持アーム装置を示す平面図。
【図3】伸縮式保持アーム装置を示す側面図。
【図4】医療用器具を取付ける状態を示す保持部の断面図。
【図5】医療用器具の取付け後の状態を示す図4相当の断面図。
【図6】図5中矢示SA−SA線に沿う保持部の断面図。
【図7】医療用器具を外した状態を示す図6相当の保持部の断面図。
【図8】直線状に伸ばして最大長さにした伸縮式保持アーム装置を示す平面図。
【図9】最大長さのまま屈曲させた状態を示す伸縮式保持アーム装置の平面図。
【図10】直線状に短くした状態の伸縮式保持アーム装置を示す平面図。
【図11】直線状に短くした他の状態の伸縮式保持アーム装置を示す平面図。
【図12】実質長さが短い状態のまま屈曲させた状態を示す伸縮式保持アーム装置の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好適な実施形態を図1〜図12を用いて説明する。
【0019】
この実施形態に係る医療用器具の伸縮式保持アーム装置は、ストレッチャー、ICUベッド、病棟ベッド等のベッドに取付けられて使用されるものである。ベッドの頭部側の一辺にはレール1が固定され、そこにスライダー2が移動自在に係合されている。スライダー2はノブ3を回すことにより任意位置で固定することができる。
【0020】
スライダー2の上面には、アリ溝状の凹部が形成された固定部4が設けられ、そこに支柱部5が脱着自在に取付けられている。支柱部5の上部には円柱状のセンター部6が設けられている。
【0021】
センター部6の内部にはエアークラッチが内蔵されており、センター部6は支柱部5を中心に水平方向で回転自在で且つ任意回転位置でロック自在になっている。このセンター部6に第1アーム7の基端部8が一体的に結合されている。従って、第1アーム7もセンター部6と一緒に水平方向で回転する。第1アーム7の長手方向に垂直な断面の形状は長手方向に沿って一定で、典型的には水平方向に延びる長板状を成し、長さは30cmである。第1アーム7の先端には抜け落ち防止用のストッパ9が設けられている。
【0022】
第1アーム7の基端部8には、圧縮エアーを供給するエアーホース10が連結されている。センター部6は、図示せぬ内蔵されたバネ機構により回転が常時ロック状態となっており、後述するエアースイッチ11を押した場合のみエアーが供給されて、回転フリーになる。
【0023】
第1アーム7の途中位置には、基本的に円柱形状のジョイント部12が挿通されている。第1アーム7はジョイント部12の上部を貫通し、ジョイント部12は第1アーム7の長手方向に沿ってスライド自在になっている。ジョイント部12の上端にはストッパリング13が設けられ、これを右方向に回転させることにより、ストッパリング13の一部がジョイント部12内において第1アーム7と当接してスライドがロックされ、左側へ回すことにより当接が解除されてスライド自在となる。ジョイント部12を第1アーム7に対してロックする機構は何でも良く、一般的なネジでロックするようにしても良い。
【0024】
第2アーム14はジョイント部12の下部を貫通し、ジョイント部12は第2アーム14の長手方向に沿ってスライド自在である。第2アーム14も第1アーム7と同様に水平な板形状をしており、長さは22cmである。ジョイント部12の下端にもストッパリング15が設けられ、これを回転させることにより、第2アーム14をジョイント部12に対してスライド自在且つロック自在にできる。第2アーム14の他端には抜け落ち防止用のストッパ16が設けられている。
【0025】
ジョイント部12の上下中間部にはボールジョイント17が設けられている。このボールジョイント17により、ジョイント部12の下部は第2アーム14ごと、水平方向で360度回転可能になると共に上下方向であらゆる方向へ傾くことができる。このボールジョイント17はエアークラッチ方式で、前記センター部6に内蔵されたエアークラッチと同時にエアーが供給される。このボールジョイント17も常時ロックで、エアー供給時のみフリーとなる。
【0026】
第2アーム14の先端には、別のボールジョイント18を介して保持部19が設けられている。このボールジョイント18もジョイント部12に設けられた前記ボールジョイント17と同様の機能を有する。
【0027】
保持部19は回転軸20を中心に回動自在なホルダー21を有している。ホルダー21の回転位置は回転軸20における摩擦力により維持されている。ホルダー21には、医療用器具としてのプローブ22が取付けられている。プローブ22は先端から任意出力の超音波を発生させることができる。
【0028】
このプローブ22を取付けるホルダー21の本体部には内部にエアースイッチ11が内蔵されている。ホルダー21の本体以外の部分は板状になっていて、基端にはU字形の差込部23、中間にはスイッチレバー(スイッチ)24を有する開口部25、先端には固定ネジ26を有するアリ溝27が設けられている。
【0029】
プローブ22の先端付近にはリング状の固定金具28が設けられ、その固定金具28にはアリ形の突起29が形成されている。従って、図4及び図5に示すように、プローブ22の基端をホルダー21の差込部23に差し込みながら、固定金具28の突起29をアリ溝27に差し込み、固定ネジ26を回して突起29をアリ溝27内で固定することにより、プローブ22をホルダー21に対して取付けることができる。
【0030】
ホルダー21の開口部25に設けられたスイッチレバー24は回転軸30を中心に回転するバラフライ型で、一端はホルダー21から外側へ突出しており、他端はエアースイッチ11のプッシュボタン31により持ち上げられた状態になっている。
【0031】
エアースイッチ11には、前述したエアーホース10から供給されたエアーがエアーチューブ(図示省略)を介して供給される。供給されたエアーはエアースイッチ11を通過した後、更にエアーチューブ(図示省略)を介して前述のセンター部6、ボールジョイント17、18の3カ所のエアークラッチ部分へ同時に供給されるようになっている。
【0032】
エアーの供給は、スイッチレバー24の一端を押すことにより、スイッチレバー24が回転して、その他端がエアースッチ11のプッシュボタン31を押すことにより開始され、スイッチレバー24から指を離してプッシュボタン31が内蔵スプリングにより復帰することにより停止する。
【0033】
従って、操作者は、保持部19に保持されているプローブ22を手で持って、そのままスイッチレバー24の一端を押すことにより、エアーをセンター部6、ボールジョイント17、18の3カ所に同時供給して、第1アーム7、第2アーム14、保持部19の全てをフリー状態にすることができる。そのため、保持部19で保持されたプローブ22を希望する任意の位置に位置決めすることができる。位置決めした後、スイッチレバー24から手を離せば、エアーの供給が停止され、センター部6、ボールジョイント17、18のそれぞれがロック状態となり、プローブ22の位置決め状態はそのまま保持される。
【0034】
第1アーム7と第2アーム14はそれぞれジョイント部12に対してスライドすることができるため、第1アーム7と第2アーム14の全長を調整して、プローブ22が届く範囲を設定することができる。
【0035】
患者におけるプローブ22を位置決めする位置が遠い場合は、図8に示すように、ジョイント部12を第1アーム7の先端付近に位置させ、そのジョイント部12から第2アーム14を最大限に引き出して直線状に伸ばした状態にする。このようにすることにより、第1アーム7と第2アーム14による最大の長さL1(a1+b1)を得ることができる。この状態では、第1アーム7及び第2アーム14が伸びきっているため、第2アーム14の先端の保持部19の支持剛性は十分とは言えず、プローブ22の保持剛性も従来と同程度のものである。
【0036】
しかしながら、第1アーム7及び第2アーム14を最大長さL1よりも短くして近い位置にプローブ22を位置決めする場合は、第1アーム7及び第2アーム14がジョイント部12に対してスライド自在であるため、実質長さを短くして支持剛性を向上させることができる。
【0037】
例えば、長さがL2の近い位置にプローブ22を位置決めする場合、従来のようにスライドできない構造だと、図9のように第1アーム7及び第2アーム14をくの字状に屈曲させなければならない。このように屈曲させた場合、近い位置にプローブ22を位置決めする場合でも、第1アーム7と第2アーム14による実質的長さ(a1+b1)は図8の場合と変わらないため、プローブ22の支持剛性が向上するものではない。
【0038】
これに対して、図10及び図11のように、ジョイント部12で第1アーム7及び/又は第2アーム14をスライドさせることにより、第1アーム7及び第2アーム14の直線状を保ったまま長さL2を短くすれば、その実質的長さ〔(a2+b2)又は(a3+b3)〕も短くなる。従って、プローブ22の保持に関連する支持構造の実質的長さが短くなるので、プローブ22を保持している保持部19の支持剛性が向上しプローブ22の保持剛性が向上するため、プローブ22の位置が変動せず本来の性能を発揮することができる。
【0039】
また、第1アーム7及び第2アーム14が直線状のため、くの字状に屈曲させる場合のように屈曲部(ジョイント部12)が周囲に突出することなく、周辺スペースの有効利用を図ることもできる。
【0040】
尚、図12に示すように、近い位置にプローブ22を位置する場合に、第1アーム7と第2アーム14を意図的に屈曲させて、その部分に作業スペースSを生じさせたい場合がある。そのような場合も、第1アーム7の基端部8からジョイント部12を経て第2アーム14の先端に至る実質長さ(a4+b4)が短いため、プローブ22の保持剛性は依然として高い。
【0041】
また、この実施形態によれば、第1アーム7及び第2アーム14がそれぞれ水平な長板状であるため、図3に示すように、第1アーム7と第2アーム14との間にジョイント部12を介在する構造でも、第1アーム7と第2アーム14による合計上下寸法Hを比較的小さくすることができる。
【0042】
更に、ジョイント部12が上下中間位置にボールジョイント17を備えているため、ボールジョイント17を中心にして第2アーム14を第1アーム7に対してあらゆる方向へ角度変化させることができる。
【0043】
更に、第2アーム14と保持部19との間にもボールジョイント18を備えているため、ボールジョイント18を中心にしてプローブ22を保持している保持部19を第2アーム14に対してあらゆる方向へ角度変化させることができる。
【0044】
更に、前述のように、センター部6、ボールジョイント17、18をフリーにするスイッチレバー24が保持部19に設けられているため、プローブ22を手でもった状態のまま、ボールジョイント17、18等のロック・フリー操作を行うことができ便利である。
【0045】
以上の実施形態では、ジョイント部12に対して第1アーム7及び第2アーム14の両方をスライドさせる構造を示したが、どちらか一方でも良い。第2アーム14を第1アーム7の下側に位置させた例を示したが、逆にしても良い。センター部6やボールジョイント17、18にエアークラッチ方式を採用したが、オイルクラッチ方式や電磁クラッチでも良い。
【符号の説明】
【0046】
7 第1アーム
8 基端部
12 ジョイント部
14 第2アーム
17、18 ボールジョイント
19 保持部
22 プローブ(医療用器具)
24 スイッチレバー(スイッチ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部が水平方向で回転自在に支持された第1アームと、
第1アームと高さ位置が相違する第2アームと、
第2アームを第1アームに対して少なくとも水平方向で回転自在に連結するジョイント部と、
第2アームの先端に設けられた医療用器具を保持するための保持部とを備え、
前記ジョイント部に対して第1アーム及び第2アームの少なくとも一方がその長手方向でスライド自在で且つ任意位置でロック自在であること
を特徴とする医療用器具の伸縮式保持アーム装置。
【請求項2】
第1アーム及び第2アームがそれぞれ長板状であることを特徴とする請求項1記載の医療用器具の伸縮式保持アーム装置。
【請求項3】
ジョイント部が上下中間位置にクラッチ式のボールジョイントを備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の医療用器具の伸縮式保持アーム装置。
【請求項4】
第2アームと保持部との間にクラッチ式のボールジョイントを備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療用器具の伸縮式保持アーム装置。
【請求項5】
ボールジョイントのスイッチが保持部に設けられていることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の医療用器具の伸縮式保持アーム装置。
【請求項1】
基端部が水平方向で回転自在に支持された第1アームと、
第1アームと高さ位置が相違する第2アームと、
第2アームを第1アームに対して少なくとも水平方向で回転自在に連結するジョイント部と、
第2アームの先端に設けられた医療用器具を保持するための保持部とを備え、
前記ジョイント部に対して第1アーム及び第2アームの少なくとも一方がその長手方向でスライド自在で且つ任意位置でロック自在であること
を特徴とする医療用器具の伸縮式保持アーム装置。
【請求項2】
第1アーム及び第2アームがそれぞれ長板状であることを特徴とする請求項1記載の医療用器具の伸縮式保持アーム装置。
【請求項3】
ジョイント部が上下中間位置にクラッチ式のボールジョイントを備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の医療用器具の伸縮式保持アーム装置。
【請求項4】
第2アームと保持部との間にクラッチ式のボールジョイントを備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療用器具の伸縮式保持アーム装置。
【請求項5】
ボールジョイントのスイッチが保持部に設けられていることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の医療用器具の伸縮式保持アーム装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−95679(P2012−95679A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15199(P2009−15199)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(390013033)三鷹光器株式会社 (114)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(390013033)三鷹光器株式会社 (114)
【Fターム(参考)】
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