医療用容器
【課題】本発明の目的は、排出ポートの破断可能部な未破断のまま薬剤が投与されることがなく、かつ、破断可能部が未破断の状態にて、薬剤排出用針管が穿刺されても、その先端部に損傷を与えることがない医療用容器を提供する。
【解決手段】医療用容器1は、容器本体2とそれに固定された排出ポート3とを備える。排出ポート3は、薬剤収納部34と、薬剤収納部の一端側を閉塞し、かつ、破断により容器本体内と連通とする破断可能部31cおよびその操作部31bを備える。薬剤収納部34内には、破断可能部の未破断時に薬剤収納部34内に侵入した薬剤排出用針管50の先端部51を受け入れ可能、かつ、受け入れた針管50からの薬剤の流出を阻害する薬剤流出阻害部材4が収納されている。
【解決手段】医療用容器1は、容器本体2とそれに固定された排出ポート3とを備える。排出ポート3は、薬剤収納部34と、薬剤収納部の一端側を閉塞し、かつ、破断により容器本体内と連通とする破断可能部31cおよびその操作部31bを備える。薬剤収納部34内には、破断可能部の未破断時に薬剤収納部34内に侵入した薬剤排出用針管50の先端部51を受け入れ可能、かつ、受け入れた針管50からの薬剤の流出を阻害する薬剤流出阻害部材4が収納されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部において、輸液などの薬液に薬剤の調整や配合を行うことができる医療用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
輸液に際し、2種以上の液体(薬液)を混合して使用する場合がある。この場合、従来では、別途準備した2つの薬液を使用時に混合することにより準備していた。最近では、薬液の投与を速やかなものとすること、ならびに混合忘れなどを防止することより、1つの医療用容器の薬剤室を剥離可能な仕切部により2つの薬剤室に区分することにより複室としたもの、また、破断可能部にて破断することにより容器本体内と連通可能な薬剤容器を取り付けることにより複室としたものがある。そして、このような複室容器では、それぞれに、あらかじめ混合すると、経時的に変質、劣化する薬剤を分離して収納される。しかし、このような複室の医療用容器の場合、仕切部の開通もしくは破断可能部の破断を行うことなく、医療用容器に、輸液セットの薬剤排出用針管を穿刺すると薬剤が流出してしまう。
【0003】
特許文献1(特開2005−95604号公報)に示されるものを本件出願人は提案している。この輸液用容器では、薬液が収納された軟質バッグと、該軟質バッグに取り付けられた薬剤容器を有する輸液用容器であって、該薬剤容器は、薬剤が収納された薬剤収納部と、該薬剤収納部と独立して設けられ前記軟質バッグ内部の内容物を排出するための排出ポートと、前記薬剤収納部及び前記排出ポートの一端部に設けられかつ前記軟質バッグ内部に配置され、前記薬剤収納部及び前記排出ポートと前記軟質バッグ内部との連通を規制するとともに、前記薬剤収納部と前記排出ポートの両方を前記軟質バッグ内部と連通可能とする連通規制部を有している。そして、連通規制部は、指による破損により前記薬剤収納部及び前記排出ポートの一端部を開封するための脆弱部と、該脆弱部の破損操作を行うための操作部を有している。
【0004】
さらに、本件特許出願人は、特許文献2(特開2007−50085号公報)に示されるものを提案している。
特許文献2の実施例の医療用容器1は、可撓性材料により形成され、薬液が収納された容器本体2と、排出口33を備える排出ポート3とを備える。排出ポート3は、薬剤収納部34を備えかつ薬剤8が収納された筒状部31aと、筒状部31aの一端側を閉塞し、かつ、破断により容器本体2内との連通を可能とする破断可能部(解除可能な区画部を構成する)31cおよび破断可能部31cの破断操作を行うための操作部31操作部31を備える流通規制部とを備えるポート本体部31と、ポート本体部31(言い換えれば、筒状部31a)の他端側を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管の接続が可能な封止部32を有する排出口33と、筒状部31a内に設けられ流通規制部の破断可能部31cの未破断時における筒状部31a内への薬剤排出用針管の侵入を阻害する針管侵入阻害部4とを備えている。
【0005】
そして、針管侵入阻害部4は、操作部31b(操作部の底部下面)と当接可能な先端部41と、薬剤排出用針管の先端が当接可能な基端部42と、先端部41と基端部42を連結する接続部43を有するものである。流通規制部の破断可能部が未破断の状態において、封止部32に薬剤排出用針管を穿刺した場合、この針の先端は針管侵入阻害部4の基端部42に当接し、さらに押しても、針管侵入阻害部4が上方に移動し、先端部41が操作部31bに当接した後は、それ以上移動不能となる。
さらに、本件特許出願人は、特許文献3(特開2008−200367号公報)に示されるものを提案している。
特許文献3の医療用容器1は、容器本体2と排出ポート3とを備える。排出ポート3は、薬剤9が収納された薬剤収納部8を有する排出ポート本体部31と、容器本体2内と薬剤収納部8との連通を開放可能に閉塞する閉塞部41と、排出口33と、排出口33に刺入される薬剤排出用針管により押圧され、閉塞部41を排出ポート本体部31より離脱させるための閉塞部押圧部43と、閉塞部41と一体に設けられた延出部44とを備える。医療用容器1は、延出部44の先端部に近接する位置に設けられた剥離可能な離脱抑制用弱シール部7を備える。離脱抑制用弱シール部7の未剥離時では、排出口33内への薬剤排出用針管の侵入を阻害する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−95604号公報
【特許文献2】特開2007−50085号公報
【特許文献3】特開2008−200367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1および特許文献2のものは、連通規制部の破損操作を行うことなく、輸液セットの薬剤排出用針管を穿刺しても薬剤が流出することはなく、安全なものとなっている。同様に、特許文献3のものでは、離脱抑制用弱シール部7が未剥離状態では、排出口33内への薬剤排出用針管の侵入ができず、輸液セットの薬剤排出用針管を穿刺しても薬剤が流出することはなく、安全なものとなっている。しかし、特許文献1のものでは、排出ポート内が、軸方向に2室に区分されており、薬剤排出用針管は、その1室のみに穿刺可能なものとなっている。このため、排出ポートにおける薬剤排出用針管の穿刺可能部位が小さく、穿刺作業時における位置決めなどの穿刺作業が難しいものとなっていた。また、特許文献2および3のものでは、特許文献1のものに比べて、排出ポートにおける薬剤排出用針管の穿刺可能部位は通常の大きさのものとでき、穿刺作業時における位置決めなどの困難性はないが、破断可能部を未破断の状態にて、薬剤排出用針管を排出ポートに穿刺すると、その先端は、薬剤室内に侵入し、針管侵入阻害部の底面に当接し、それ以上の侵入が阻害されている。薬剤排出用針管の排出ポートへの穿刺時の力にもよるが、薬剤排出用針管の先端部が、針管侵入阻害部との当接により破損する可能がある。
そこで、本発明の目的は、上記問題点を解決するものであり、薬剤が収納され、かつ、開通可能部を備える排出ポートを有する医療用容器において、排出ポートの開通可能部な未開通のまま薬剤が投与されることがなく、かつ、開通可能部が未開通の状態にて、薬剤排出用針管が穿刺されても、薬剤排出用針管の先端部に損傷を与えることがなく、また、針管を穿刺しても薬液が排出されないことにより、作業者に開通可能部が未開通であること教示することができる医療用容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 可撓性材料により形成され、薬液が収納された容器本体と、前記容器本体に固定された排出ポートとを備える医療用容器であって、
前記排出ポートは、薬剤が収納された薬剤収納部と、該薬剤収納部の一端側を閉塞し、かつ、開通操作により前記容器本体内と前記薬剤収納部の連通を可能とする開通可能部および前記開通可能部の開通操作を行うための操作部とを備えるポート本体部と、前記ポート本体部の前記薬剤収納部の他端側を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管の接続が可能な封止部を有する排出口と、前記薬剤収納部内に収納され、前記開通可能部の未開通時に前記薬剤収納部内に侵入した前記薬剤排出用針管の先端部を受け入れ可能、かつ、受け入れた前記針管からの前記薬剤の流出を阻害する薬剤流出阻害部材とを備える医療用容器。
【0009】
(2) 前記薬剤流出阻害部材は、前記排出口側より侵入した前記薬剤排出用針管の先端部を受け入れるための中空状もしくは中実状の針管受入部を備えている上記(1)に記載の医療用容器。
(3) 前記薬剤流出阻害部材の前記針管受入部は、中空であり、かつ侵入した前記薬剤排出用針管の側口より下方の外面と環状に接触可能なシール形成可能部を備えている上記(2)に記載の医療用容器。
(4) 前記薬剤流出阻害部材の前記針管受入部は、中空であり、下端が開口した中空部と、前記中空部の下端開口を封止しかつ前記薬剤排出用針管による刺通が可能なシール部材を備えている上記(2)に記載の医療用容器。
(5) 前記薬剤流出阻害部材の前記針管受入部は、中実であり、かつ、前記薬剤排出用針管が刺入可能かつ刺入した前記薬剤排出用針管の側口を閉塞可能な弾性部材を備えている上記(2)に記載の医療用容器。
(6) 前記薬剤流出阻害部材は、前記薬剤収納部の前記一端側の閉塞部に当接可能な先端部を備えている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の医療用容器。
(7) 前記薬剤流出阻害部材は、前記開通可能部の開通操作後、前記ポート本体部より流出可能である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の医療用容器。
(8) 前記開通可能部は、破断可能部である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の医療用容器。
【0010】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(9) 可撓性材料により形成され、薬液が収納された容器本体と、前記容器本体に固定された排出ポートとを備える医療用容器であって、
前記医療用容器は、前記排出ポートの上方に設けられ、かつ、前記容器本体を押圧することにより剥離可能な移動規制弱シール部を備え、
前記排出ポートは、薬剤が収納された薬剤収納部を備えるポート本体部と、前記ポート本体部の端部を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管の接続が可能な封止部を有する排出口と、前記ポート本体部内に収納され、前記移動規制弱シール部の未剥離時に前記ポート本体部内に侵入した前記薬剤排出用針管の先端部を受け入れ可能、かつ、受け入れた前記針管からの前記薬剤の流出を阻害する薬剤流出阻害部材とを備え、前記移動規制弱シール部は、前記薬剤流出阻害部材の先端部に近接もしくは当接する位置に設けられ、前記移動規制弱シール部の未剥離時の前記薬剤流出阻害部材の移動を規制しており、前記薬剤流出阻害部材は、前記移動規制弱シール部の剥離完了もしくは前記移動規制弱シール部の剥離完了と受け入れた前記針管による先端方向への押圧により、前記ポート本体部より流出する医療用容器。
【0011】
(10) 前記薬剤流出阻害部材は、前記容器本体内と前記ポート本体部内との連通を開放可能に閉塞する閉塞部と、前記閉塞部より突出する前記先端部と、前記排出口側より侵入した前記薬剤排出用針管の先端部を受け入れ、かつ、受け入れた針管により押圧される針管受入部とを備え、前記薬剤は、前記薬剤流出阻害部材の前記閉塞部により閉塞された前記ポート本体部内に収納されており、さらに、前記閉塞部は、前記ポート本体部の内面と液密状態にて摺動するシール部を備えている上記(9)に記載の医療用容器。
(11) 前記薬剤流出阻害部材は、前記容器本体内と前記ポート本体部内との連通を開放可能に閉塞するとともに、前記ポート本体部の内面と液密状態にて摺動するシール部と、前記先端部とを備える閉塞部材と、前記閉塞部材を押圧するための押圧部材とからなり、前記押圧部材は、前記閉塞部材を押圧するための押圧用先端部と、前記排出口側より侵入した前記薬剤排出用針管の先端部を受け入れ、かつ、受け入れた針管により押圧される針管受入部とを備え、前記薬剤は、前記閉塞部材により閉塞された前記ポート本体部内に収納されている上記(9)に記載の医療用容器。
(12) 前記医療用容器は、前記移動規制弱シール部により区画され、かつ、前記ポート本体部内と連通する薬剤室を備え、前記薬剤は、前記ポート本体部材および前記薬剤室に収納されている上記(9)に記載の医療用容器。
(13) 前記薬剤流出阻害部材は、侵入した前記薬剤排出用針管の側口より下方の外面と環状に接触可能なシール形成可能部を備えている上記(9)ないし(12)のいずれかに記載の医療用容器。
(14) 前記薬剤流出阻害部材は、下端が開口した中空部と、前記中空部の下端開口を封止しかつ前記薬剤排出用針管による刺通が可能なシール部材を備えている上記(9)ないし(13)のいずれかに記載の医療用容器。
(15) 前記薬剤流出阻害部材は、中実であり、かつ、前記薬剤排出用針管が刺入可能かつ刺入した前記薬剤排出用針管の側口を閉塞可能な弾性部材を備えている上記(9)ないし(12)のいずれかに記載の医療用容器。
【発明の効果】
【0012】
本発明の医療用容器は、可撓性材料により形成され、薬液が収納された容器本体と、容器本体に固定された排出ポートとを備える。排出ポートは、薬剤が収納された薬剤収納部と、薬剤収納部の一端側を閉塞し、かつ、開通操作により容器本体内と薬剤収納部の連通を可能とする開通可能部および開通可能部の開通操作を行うための操作部とを備えるポート本体部と、ポート本体部の薬剤収納部の他端側を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管の接続が可能な封止部を有する排出口と、薬剤収納部内に収納され、開通可能部の未開通時に薬剤収納部内に侵入した薬剤排出用針管の先端部を受け入れ可能、かつ、受け入れた針管からの薬剤の流出を阻害する薬剤流出阻害部材とを備える。
このため、排出ポートにおける薬剤排出用針管の穿刺可能部位は、通常の大きさのものとすることができ、穿刺作業時における位置決めが容易である。また、開通可能部が未開通の状態において、薬剤排出用針管を排出口に穿刺しても、薬剤排出用針管は、排出ポート内に侵入するものの薬剤流出阻害部材に阻害されて、薬剤は流出しない。よって、排出ポートの開通可能部な未開通のまま薬剤が投与されることがない。さらに、開通可能部が未開通の状態にて、排出口に薬剤流出阻害部材を穿刺しても、薬剤排出用針管の先端部に損傷を与えることもない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の医療用容器の一実施例の正面図である。
【図2】図2は、図1に示す医療用容器に使用される排出ポートの正面図である。
【図3】図3は、図2のA−A線断面図である。
【図4】図4は、図2のB−B線断面図である。
【図5】図5は、図1ないし図4に示した本発明の医療用容器の作用を説明するための説明図である。
【図6】図6は、本発明の他の実施例の医療用容器に用いられる排出ポートの正面図である。
【図7】図7は、図6のC−C線断面図である。
【図8】図8は、図6および図7に示した排出ポートを用いた本発明の医療用容器の作用を説明するための説明図である。
【図9】図9は、本発明の他の実施例の医療用容器に用いられる排出ポートの正面図である。
【図10】図10は、図9のD−D線断面図である。
【図11】図11は、図9および図10に示した排出ポートを用いた本発明の医療用容器の作用を説明するための説明図である。
【図12】図12は、本発明の他の実施例の医療用容器に用いられる排出ポートの正面図である。
【図13】図13は、図12のE−E線断面図である。
【図14】図14は、図12のF−F線断面図である。
【図15】図15は、本発明の他の実施例の医療用容器に用いられる排出ポートの縦断面図である。
【図16】図16は、本発明の医療用容器の他の実施例の正面図である。
【図17】図17は、本発明の医療用容器の他の実施例の正面図である。
【図18】図18は、本発明の医療用容器の他の実施例の正面図である。
【図19】図19は、本発明の医療用容器の他の実施例の正面図である。
【図20】図20は、図19に示す医療用容器に使用される排出ポートの縦断面図である。
【図21】図21は、本発明の他の実施例の医療用容器に用いられる排出ポートの縦断面図である。
【図22】図22は、本発明の他の実施例の医療用容器に用いられる排出ポートの縦断面図である。
【図23】図23は、本発明の医療用容器の他の実施例の正面図である。
【図24】図24は、図23に示す医療用容器に使用される排出ポートの縦断面図である。
【図25】図25は、本発明の他の実施例の医療用容器に用いられる排出ポートの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の医療用容器を図面に示す実施例を用いて説明する。
本発明の医療用容器1は、可撓性材料により形成され、薬液が収納された容器本体2と、容器本体2に固定された排出ポート3とを備える。
排出ポート3は、薬剤が収納された薬剤収納部34と、薬剤収納部34の一端側を閉塞し、かつ、開通操作により容器本体2内と薬剤収納部34の連通を可能とする開通可能部(具体的には、破断可能部)31cおよび開通可能部(破断可能部)31cの開通操作(破断操作)を行うための操作部31bとを備えるポート本体部31と、ポート本体部31の薬剤収納部34の他端側を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管の接続が可能な封止部32を有する排出口33と、薬剤収納部34内に収納され、開通可能部(破断可能部)31cの未開通時(未破断時)に薬剤収納部34内に侵入した薬剤排出用針管50の先端部51を受け入れ可能、かつ、受け入れた針管50からの薬剤の流出を阻害する薬剤流出阻害部材4とを備える。
本発明の医療用容器1は、可撓性材料により形成され、薬液が収納された容器本体2と、容器本体2に固定された排出ポート3とを備える。
【0015】
この実施例の医療用容器1は、内部に薬液室11とその薬液室内に収納された薬液とを有する容器本体2と、容器本体2に固定された排出ポート3とを備える。
この実施例では、排出ポート3は、非連通排出ポートである。排出ポート3は、図3に示すように、破断されない状態では、薬液室11内と連通しないものとなっている。
また、図1に示すように、容器本体2は、内部に薬液室11を備え、一端側及び他端側には、シール部5,6が設けられている。
医療用容器1の容器本体2は、軟質合成樹脂により形成されている。容器本体2は、インフレーション成形法により筒状に成形されたものが好ましい。なお、容器本体2は、例えば、ブロー成形法、共押出インフレーション法などの種々の方法により製造されたものでもよい。
容器本体2は、水蒸気バリヤー性を有することが好ましい。水蒸気バリヤー性の程度としては、水蒸気透過度が、50g/m2・24hrs・40℃・90%RH以下であることが好ましく、より好ましくは10g/m2・24hrs・40℃・90%RH以下であり、さらに好ましくは1g/m2・24hrs・40℃・90%RH以下である。この水蒸気透過度は、JISK7129(A法)に記載の方法により測定される。
このように容器本体2が水蒸気バリヤー性を有することにより、医療用容器1の内部からの水分の蒸散が防止できる。その結果、充填される薬剤(具体的には、薬液)の減少、濃縮を防止することができる。また、医療用容器1の外部からの水蒸気の侵入も防止することができる。
【0016】
このような容器本体2の形成材料としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の各種熱可塑性エラストマーあるいはこれらを任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)が挙げられる。そして、使用する樹脂材料は、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ滅菌)に耐えられる耐熱性、耐水性を有していることが好ましい。
また、容器本体の形成材料として、ポリオレフィンが含有されるとき、本発明の有用性が大きいものとなる。したがって、本発明においては、容器本体2の形成材料として、ポリオレフィンを含むものであるのが好ましい。容器本体2の形成材料として、特に好ましいものとして、ポリエチレンまたはポリプロピレンに、スチレン−ブタジエン共重合体やスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマーあるいはエチレン−プロピレン共重合体やエチレン−ブテン共重合体,プロピレン−αオレフィン共重合体等のオレフィン系熱可塑性エラストマーをブレンドし柔軟化した軟質樹脂を挙げることができる。この材料は、高強度で柔軟性に富み、耐熱性(特に滅菌時の耐熱性)、耐水性が高い他、加工性が特に優れ、製造コストの低減を図ることができる点で好ましい。
【0017】
また、容器本体は、前述したような材料よりなる単層構造のもの(単層体)であってもよいし、また種々の目的で、複数の層(特に異種材料の層)を重ねた多層積層体であってもよい。多層積層体の場合、複数の樹脂層を重ねたものであってもよいし、少なくとも1層の樹脂層に金属層を積層したものであってもよい。複数の樹脂層を重ねたものの場合、それぞれの樹脂の利点を併有することができ、例えば、容器本体2の耐衝撃性を向上させたり、対ブロッキング性を付与したりすることができる。また、金属層を有するものの場合、容器本体2のガスバリヤー性等を向上させることができる。例えば、アルミ箔等のフィルムが積層された場合、ガスバリヤー性の向上とともに、遮光性を付与したりすることができる。また、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等の酸化物からなる層を形成した場合、ガスバリヤー性の向上とともに、容器本体2の透明性を維持することができ、内部の視認性を確保することができる。なお、容器本体2が多層積層体である場合、その内表面部分を形成する材料が、前述した材料であるのが好ましい。
容器本体2を構成するシート材の厚さは、その層構成や用いる素材の特性(柔軟性、強度、水蒸気透過性、耐熱性等)等に応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、100〜500μm程度であるのが好ましく、200〜360μm程度であるのがより好ましい。
また、医療用容器1の容積は、内部に収納する薬剤の種類等によって異なるが、通常は、薬液室の容積が、50〜5000ml程度であることが好ましい。
【0018】
薬剤排出ポート3は、容器本体2内に充填された薬剤(薬液)を排出するためのものである。
この実施例では、排出ポート3内には、図3に示すように、適量の薬剤8が収容されている。また、排出ポート3の薬剤収納部34の形成部は、内部の薬剤が目視可能に透明に形成されていることが好ましい。収納される薬剤としては、粉末、顆粒状などの固体状、液体状等いかなるものでもよい。薬剤としては、輸液剤に配合・溶解させるものであって、例えば抗生物質、ビタミン剤(総合ビタミン剤)、各種アミノ酸、ヘパリン等の抗血栓剤、インシュリン、抗腫瘍剤、鎮痛剤、強心剤、静注麻酔剤、抗パーキンソン剤、潰瘍治療剤、副腎皮質ホルモン剤、不整脈用剤、補正電解質、抗ウィルス薬、免疫賦活剤等が挙げられる。また、排出ポート3の筒状部31a内(薬剤収納部34)は、常圧でもよいが、減圧または真空状態としてもよい。このように、薬剤収納部が減圧または真空状態であると、薬剤の変質分解・劣化等の防止効果が向上するとともに、破断可能部31cの破断時に、輸液剤を吸引し、より迅速に筒状部31a内へ導入することができる。
【0019】
排出ポート3は、図1ないし図3に示すように、薬液室11に固定されるとともに、開通操作により開通する開通可能部(言い換えれば、流通規制部)を備えるポート本体部31と、ポート本体部31の他端側を閉塞する薬剤排出用針管の接続が可能な封止部32を有する排出口33と、ポート本体部31内に設けられた薬剤流出阻害部材4とを備える。この実施例では、ポート本体部31は、開通可能部として、破断可能部を備えている。
ポート本体部31は、筒状部31aと、この筒状部31aの一端側を閉塞する一端側閉塞部(隔壁部)31eと、一端側閉塞部(隔壁部)31eより筒状部31aの他端側に位置し、破断により容器本体2の薬液室11と筒状部31a内とを連通可能とする破断可能部31cと、破断可能部31cの破断操作を行うための操作部31bとを備える。破断可能部31cは、クサビ状の環状凹部が形成された部分であり、他の部分に比べて肉薄となっている。このため、破断可能部31cは、他の部分に比べて脆弱であり、操作部31bをバッグの外方より押すことにより、この破断可能部31c部分にて破断し、操作部31bは、筒状部31aより分離する。そして、分離する操作部31bが、図示するように中空であることが好ましい。このようにすることにより、破断可能部31cは偏肉のない状態のものとなる。筒状部31aの内側上面と破断可能部31cとの距離は、1〜2mmであることが好ましい。
【0020】
さらに、この操作部31bを薬剤混合後の薬液に対して識別可能な色に形成してもよい。薬液と容易に識別できるとともに、薬液面に浮上するため薬液残量の確認も容易となる。薬剤混合後の薬液に対して識別可能な色とは、使用される薬液および薬剤により相違し一義的なものではなく、例えば、薬剤混合後の薬液の色が黄色であれば黄色以外(例えば、赤色、青色、緑色、黒色)のものが、赤色であれば赤色以外(例えば、黄色、青色、緑色、黒色)のものとされる。なお、薬剤混合後の薬液の色が無色の場合には、有色であればどのような色でもよい。
封止部32は、ポート本体部の後端開口を封止するとともに薬剤排出用針管の刺通が可能な弾性部材により形成されており、この実施例では、キャップ部33aにより、ポート本体部31の後端に固定されることにより、排出口33を構成している。
【0021】
この実施例の医療用容器1では、排出ポート3の薬剤収納部34内に薬剤流出阻害部材4が収納されている。この実施例における薬剤流出阻害部材4は、図2ないし図4に示すように、排出口32側より侵入した薬剤排出用針管50の先端部51を受け入れるための中空状の針管受入部41を備えている。また、薬剤流出阻害部材4は、薬剤収納部34の一端側閉塞部(隔壁部)31eに当接可能な先端部43を備えている。さらに、薬剤流出阻害部材4は、針管受入部41と先端部43とを連結するシャフト部42を備えている。シャフト部42は、ほぼ直線状に延びる細径の中実のものとなっている。さらに、この実施例の薬剤流出阻害部材4の針管受入部41には、侵入した薬剤排出用針管50の側口52より下方の外面と環状に接触可能なシール形成可能部46が設けられている。
【0022】
具体的には、図5に示すように、薬剤流出阻害部材4は、排出ポート3内に形成された薬剤収納部34の全長とほぼ同じもしくは若干短い長さを有している。そして、薬剤流出阻害部材4は、後端より先端方向に延びる内腔部44を備えており、この内腔部44が、薬剤排出用針管50の先端部を収納する。また、この薬剤流出阻害部材4では、下端における内腔部44が最も広く、薬剤排出用針管50の誘導部を形成している。そして、薬剤流出阻害部材4の下端部は、先端に向かって縮径するテーパー部を備え、テーパー部45の上端に、薬剤排出用針管50の側口52より下方の外面と環状に接触可能なシール形成可能部46が形成されている。言い換えれば、薬剤排出用針管50は、側口52が、シール形成可能部46より上方となる位置まで、針管受入部41の内腔部44内に侵入可能であり、側口52より若干下方となる部分の外面とシール形成可能部46が環状に接触することにより、側口52からの薬剤の流出を阻害している。
【0023】
そして、内腔部44は、薬剤排出用針管50の先端が、針管受入部41の上端内面に到達不能なものとなっている。このため、侵入した薬剤排出用針管50の先端は、針管受入部の内面に強く当接することがなく、作業時に損傷を受けることがない。そして、作業者は、薬剤排出用針管を排出ポートに穿刺しても、薬剤が流出しないこと、また、薬剤排出用針管50が、薬剤流出阻害部材4内に侵入し、その外面が薬剤排出用針管50の内腔部の内面と接触するため、通常の穿刺操作時の感触と異なることにより、排出ポートの破断可能部が未破断であることを認識する。
そして、流通規制部の破断可能部が未破断の状態(図3の状態)における薬剤排出用針管の排出ポートへの穿刺可能長さは、通常行われる穿刺長より、短いものであることが好ましい。これにより、薬剤排出用針管が、排出ポートに通常の長さ分刺入できないものとなるので、作業者は、排出ポートの破断可能部が未破断状態であった場合、そのことをより容易に認識する。
【0024】
また、この実施例の薬剤流出阻害部材4では、先端部43は、半球状となっている。このようにすることにより、破断可能部の破断後の内側エッジ部に引っかかりにくい形状となっている。そして、薬剤流出阻害部材4は、破断可能部31cの破断後、ポート本体部31より流出可能なものとなっている。特に、薬剤流出阻害部材4は、ポート本体部より流出し、容器本体2内の薬液面付近に浮上するものであることが好ましい。
また、薬剤流出阻害部材は、上記のタイプのものに限定されるものではなく、例えば、図6ないし図8に示す排出ポート3aが備えている薬剤流出阻害部材4aのようなタイプのものであってもよい。
この実施例の薬剤流出阻害部材4aでは、針管受入部41aは、下端が開口した中空部44aと、中空部44aの下端開口を封止しかつ薬剤排出用針管50による刺通が可能なシール部材47を備えている。先端部43およびシャフト部42については、上述したものと同じである。
【0025】
針管受入部41a内に形成される内腔部(中空部)44aは、ほぼ同一内径にて所定長延びる内腔部下部と、先端方向に向かって縮径する内腔部上部を備えている。なお、内腔部は、その全体が、下端より先端方向に向かって縮径するものであってもよい。そして、針管受入部41aの下端開口は、シール部材47によりシールされており、内腔部44aは、空隙となっている。そして、シール部材47は、図8に示すように、薬剤排出用針管50により刺通可能であり、かつ、少なくとも、薬剤排出用針管50の側口52の全体が、内腔部44a内となる位置まで、針管受入部41の内腔部44a内に侵入可能なものとなっている。さらに、この実施例のものでは、シール部材47は、刺通された薬剤排出用針管50の側面と環状に接触し、ほぼ液密状態を形成できるものであることが好ましい。さらに、シール部材47は、刺通された薬剤排出用針管50の抜去後において、刺通部(穿刺孔)より薬剤が、内腔部44a内への流入を阻害できる程度の再シール性を有することが好ましい。また、シール部材47は、薬剤排出用針管50による刺通抵抗もあまり高くないものであることが好ましい。
【0026】
シール部材47としては、穿刺孔を密封し、液密状態を保持する機能を有するものであることが好ましく、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム等のゴム材質、またはスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロック共重合体等の熱可塑性エラストマーなどの弾性材料、さらには、樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル)の薄膜シートの下面もしくは上面に、上述した弾性材料の被膜を設けたものなどが使用できる。
また、薬剤流出阻害部材としては、図9ないし図11に示す排出ポート3bが備えている薬剤流出阻害部材4bのようなタイプのものであってもよい。
この実施例の薬剤流出阻害部材4bでは、針管受入部41bは、下端が開口した内腔部を有するとともに、内腔部に充填された薬剤排出用針管50が刺入可能な弾性部材44bを備えている。先端部43およびシャフト部42については、上述したものと同じである。この薬剤流出阻害部材4bでは、針管受入部41bは中実であり、かつ、内部は、薬剤排出用針管50が刺入可能かつ刺入した薬剤排出用針管50の側口52を閉塞可能な弾性材料により形成されている。
【0027】
この実施例の薬剤流出阻害部材4bにおいても内腔部は、ほぼ同一内径にて所定長延びる内腔部下部と、先端方向に向かって縮径する内腔部上部を備えている。なお、内腔部は、その全体が、下端より先端方向に向かって縮径するものであってもよい。そして、針管受入部41b内には、弾性部材44bが充填されており、その下端開口をシールするとともに、針管受入部41b内を実質的に空隙のない中実なものとしている。そして、弾性部材44bは、図11に示すように、薬剤排出用針管50が刺入可能であり、かつ、少なくとも、薬剤排出用針管50の側口52の全体が、弾性部材44b内となる位置まで、侵入可能なものとなっている。さらに、弾性部材44bは、刺入した薬剤排出用針管50の側面と接触し、ほぼ液密状態を形成できるものであることが好ましい。
弾性部材44bとしては、薬剤排出用針管50の刺入抵抗が低く、かつ、シール性を有するものであることが好ましく、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム等のゴム材質、またはスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロック共重合体等の熱可塑性エラストマーなどでありかつ低粘弾性のものが好適に使用される。
【0028】
また、排出ポートとしては、図12ないし図14に示すようなタイプの排出ポート3cであってもよい。
この実施例の排出ポート3cでは、ポート本体部16は、先端側より基端方向に延びる破断可能部15と、破断可能部15を挟むようにそれぞれ設けられるとともに容器本体2の一方の内面に固着された第1の応力付与部21および容器本体2の他方の内面に固着された第2の応力付与部22とを備え、第1の応力付与部21および第2の応力付与部22が、操作部を構成している。そして、薬液室11の押圧時の容器本体2と固定された第1の応力付与部21および第2の応力付与部22の広がりにより破断可能部15は、破断し、ポート本体部16内を容器本体2内と連通させるものとなっている。この実施例の排出ポート3cと上述した排出ポート3との相違は、ポート本体部の形態の相違のみである。そして、この実施例の排出ポート3cにおいても、内部に薬剤流出阻害部材4が収納されている。なお、薬剤流出阻害部材としては、上述したいずれのタイプのものを用いてもよい。
排出ポート3cは、図12ないし図14に示すように、中空部を有するポート本体部16と、ポート本体部16に設けられた破断可能部15(解除可能な区画部を形成する)と、第1の応力付与部21と、第2の応力付与部22とを備えている。また、ポート本体部16の基端部には、封止部19を備える排出口17が取り付けられる取付部が形成されている。また、ポート本体部16の基端部は、容器本体2に取り付け可能なように破断可能部より基端側にある程度の長さを有している。
【0029】
排出ポート3cは、ポート本体部16とポート本体部16の先端部付近を基端として延びる第1の応力付与部21(言い換えれば、破断力付与部)及び第2の応力付与部22(言い換えれば、破断力付与部)とを有するポート本体部16と、第1および第2の応力付与部21,22が広げられたときに破断し、ポート本体部16を薬液室と連通させる破断可能部15と、第1の応力付与部21を容器本体2の薬液室を形成する一方のシートの内面に固定した第1の固定部と、第2の応力付与部22を薬液室を形成する他方のシートの内面に固定した第2の固定部と、薬剤排出用針管を穿刺可能な針管封止部を備えている。破断可能部15は、薬液室の押圧時の容器本体2との第1の固定部と第2の固定部間の広がりにより破断するものとなっている。
【0030】
ポート本体部16は、先端部が閉塞され基端部が開口した筒状部分であり、この実施例において、基端側から順に、フランジ部と、第1の円筒部と、第1の円筒部と連続し先端側に向かってテーパー状に縮径するテーパー部と、テーパー部と連続する第2の円筒部と、第2の円筒部と連続する閉塞部(先端部)とからなる。先端部の形状は、ドーム形状、円錐形状、円錐台形状であることが好ましく、特に、ドーム形状、円錐台形状であることが好ましい。この実施例では、閉塞部は、ドーム形状となっている。
ポート本体部の容積は、1〜30mlであることが好ましい。ポート本体部の長さは、20〜100mmであることが好ましい。また、フランジ部の基端側は、封止部19を取り付けるキャップ部17aを固定する固定部が形成されている。封止部19としては、上述した封止部32が好適に使用できる。キャップ部17aは、ポート本体部の固定部に対して、超音波融着、高周波融着、熱融着等により固定される。
【0031】
そして、この実施例では、第1の応力付与部21および第2の応力付与部22は、図12ないし図14に示すように、ポート本体部16の破断可能部付近を基端として延出するとともに、先端は、自由端となっている。第1の応力付与部21および第2の応力付与部22は、両者間を開く力が付与されたときに、その力を破断可能部を破断するための応力に変換する機能を備えている。また、第1の応力付与部21と第2の応力付与部22とは向かい合うように形成されていることが好ましい。また、第1の応力付与部21と第2の応力付与部22の本体部は縦長の矩形状に形成されていることが好ましい。
【0032】
具体的には、この実施例の排出ポート3cでは、第1の応力付与部21、第2の応力付与部22は、図12ないし図14に示すように、縦長の平板部21a,22aと、平板部の両側に形成された側壁部21c、22cとを備えている。さらに、第1の応力付与部21と第2の応力付与部22は、ポート本体部16の軸方向に延びるように設けられている。そして、第1の応力付与部21と第2の応力付与部22とは、側壁部分が対向するものとなっている。そして、第1の応力付与部21と第2の応力付与部22は、向かい合いかつ若干離間するように設けられている。また、第1の応力付与部21および第2の応力付与部22の先端(他端)は、自由端となっていることが好ましい。
【0033】
さらに、第1の応力付与部21および第2の応力付与部22は、図12および図13に示すように、向かい合うそれぞれの面に設けられ、相互に当接しない位置に配置されたリブ21d,22dを備えていることが好ましい。具体的には、第1の応力付与部21と第2の応力付与部22には、それらの基端部から先端側に向かって延びるリブ21d,22dが設けられていることが好ましい。
また、平板部21a,22aの外面には、容器本体2の内面に接合される平面部21b,22bが形成されていることが好ましい。平面部21b,22bは、矩形状に形成され接合面が平坦に形成されている。平面部21b,22bは、第1の応力付与部21と第2の応力付与部22の基端部付近から先端まで形成されている。そして、容器本体2の内面に接合される平面部21b,22bは、その少なくとも一部が、容器本体2の内面に固着可能な材料により形成されている。具体的には、容器本体2の内面に接合される平面部21b,22bは、その一部若しくは全体が、容器本体2の形成材料(特に、容器本体2の内面側を形成する形成材料)と相溶性のある樹脂により形成されていることが好ましい。
【0034】
このような構成により、第1の応力付与部21と第2の応力付与部22を容器本体2の内面に確実に接合することができる。容器本体2と相溶性のある樹脂としては、上述したものであることが好ましい。相溶性のある樹脂は、軟質バッグの構成材料と同一もしくは近似した材料であることが好ましい。相溶性のある樹脂層は、本発明の実施例では、2色成形により作製されていることが好ましい。なお、第1の応力付与部もしくは第2の応力付与部のすべてを薬剤容器の軟質バッグと相溶性のある樹脂により作製してもよい。相溶性のある樹脂層は軟質バッグの内面と接合し易いように平坦に作製されていることが好ましい。また、第1の応力付与部21と第2の応力付与部22とは、第1の応力付与部21と第2の応力付与部22の間において若干離間して形成されている。
【0035】
そして、この実施例の排出ポート3cを備える医療用容器には、第1の応力付与部21の平面部21bの全体もしくは一部が、容器本体2のシートの内面と接合されることにより第1の固定部が形成され、同様に、第2の応力付与部22の平面部22bの全体もしくは一部が、容器本体2のシートの内面と接合されることにより第2の固定部が形成される。このため、第1の応力付与部及び第2の応力付与部が、薬液室の押圧時の容器本体の第1の応力付与部および第2の応力付与部の固定部間の広がりに追従して広がり、後述する破断可能部を、一方のシート側及び他方のシート側に開き破断する。
【0036】
第1の応力付与部21の平面部21b及び第2の応力付与部22の平面部22bと容器本体2の各シートの内面との接合は、超音波融着、高周波融着、熱融着等により行われることが好ましい。具体的に、排出ポート3cを図11に示すような位置に配置した後、容器本体2の一方のシート及び他方のシート面の両面側からシール金型により挟持しヒートシールすることにより行われることが好ましい。
この実施例の排出ポート3cを備える医療用容器では、医療用容器の薬液室を押圧することにより薬液室を膨らませると、この膨らみ(第1の固定部と第2の固定部の開き)に連動して、第1の応力付与部21と第2の応力付与部22とが一方のシート及び他方のシート方向に開き、まず、破断可能部15の先端側部分が破断され、次いで、第1の応力付与部側部分および第2の応力付与部側部分が破断される。これにより、ポート本体部16は開封され、ポート本体部16は薬液室と連通し、薬剤流出阻害部材4はポート本体より流出し、排出ポート内の薬剤は、容器本体2の薬液室の薬剤と混合される。
【0037】
また、排出ポートとしては、上述したような開通可能部が破断可能部により形成されているものに限定されるものではない。例えば、図15に示す排出ポート3dのように、ポート本体部31と別部材により形成された操作部38を備え、操作部38が、操作部を側面から押すことにより離脱可能に、ポート本体部31の上端開口部に固定されたものであってもよい。そして、この実施例の排出ポート3dでは、操作部38とポート本体部31間には、リング状シール部材39が配置されており、両者間を液密状態としている。また、シール部材39は、操作部38またはポート本体部31に固定されていることが好ましい。
【0038】
上述した全ての実施例におけるポート本体部、薬剤流出阻害部材、キャップ部の形成材料としては、硬質または半硬質樹脂が好適である。ポート本体部の形成材料としては、超音波融着、ヒートシールなどにより容器本体に融着可能なものが好ましい。また、排出口33のキャップ部33aの形成材料としては、硬質または半硬質樹脂が好適である。さらに、キャップ部33aの形成材料としては、超音波融着、高周波融着などによりポート本体部31に融着可能なものが好ましい。また、ポート本体部31は、図3に示すように、後端にキャップ部の先端部を収納する環状凹部を有するフランジ部31dを備えることが好ましい。また、キャップ部33aは、上記フランジ部31dと当接するフランジ部33b、上記ポート本体部の環状凹部に収納される先端部33cを備えている。そして、ポート本体部31とキャップ部33aは両者のフランジ部の当接面において、液密に固着されている。
【0039】
ポート本体部、薬剤流出阻害部材、キャップ部の形成材料としては、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマーなど、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど、スチレン系樹脂、例えば、ポリスチレン、MS樹脂(メタクリレート−スチレン共重合体)、MBS樹脂(メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体)など、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、例えば、6ナイロン,66ナイロンなどが使用される。
封止部(弾性部材)32、シール部材39の形成材料としては、合成ゴム、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴムなど、天然ゴム、例えば、ラテックスゴム、スチレン系エラストマー、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー、スチレン−エチレンブチレン−スチレンコポリマーなど、ウレタン系エラストマー、例えば、熱可塑性ポリエーテルポリウレタン、熱可塑性ポリエステルポリウレタンなどが使用できる。
また、図示する実施例の医療用容器では、薬液室と連通する混注ポート7を備えているが、混注ポートを備えないものであってもよい。混注ポート7としては、公知のものが使用できる。
【0040】
次に、図16に示す本発明の他の実施例の医療用容器20について説明する。
この実施例の医療用容器20は、解除可能な区画部9により区分された2つの薬液室11,12と、それぞれの薬液室に収納された薬剤と、第1の薬液室11と連通し、薬剤排出用針管の刺入が可能な排出ポート3を備えている。そして、上述した医療用容器1と同様に、排出ポート3内には、排出ポート3の破断可能部の未破断時における薬剤流出を阻害するための薬剤流出阻害部材4が収納されている。排出ポートおよび薬剤流出阻害部材としては、上述したすべてのタイプのものが使用できる。
この実施例の医療用容器20では、シート状筒状体により形成された容器本体102を備え、この容器本体102には、内部収納部を区画し、解除可能な区画部を構成する仕切部9が形成されており、第1の薬液室11と第2の薬液室12に区画されている。また、この医療用容器20は、容器本体102の第1の薬液室11に、薬剤排出ポート3が取り付けられている。そして、第1の薬液室11には第1の薬液が収納され、第2の薬液室12には第2の薬液が、収納されている。
【0041】
医療用容器1の容器本体102としては、上述した容器本体2にて説明したものが好適に使用できる。
そして、容器本体102は、仕切部9を備えており、これにより、内部が2室に区分されている。仕切部9は、容器本体102を横方向全体に横切る剥離可能な仕切用弱シール部9aと、弱シール部9aの両端部の分岐部内に設けられた実質的に剥離不能な強シール部9bを備えている。そして、弱シール部は、加熱プレスにより行うことが好ましく、金型の温度は、容器本体102の形成材料の溶融温度より10℃以上低い温度で行うことにより形成することができる。
また、医療用容器20の容積は、内部に収納する薬剤の種類等によって異なるが、通常は、第1の薬液室の容積が、50〜5000ml程度であることが好ましく、第2の薬液室の容積が、50〜5000ml程度であることが好ましい。
それぞれの薬液室に収納される薬剤としては、薬液、散剤などが考えられる。特に、本発明の医療用容器では、第1の薬液は、薬液であることが好ましい。第2の薬液は、薬液もしくは散剤いずれであってもよい。好ましくは、薬液である。第1の薬液および第2の薬液の組合せとしては、例えば、アミノ酸電解質液とブドウ糖液、ブドウ糖液と重曹液等の組み合わせが挙げられる。
【0042】
そして、この実施例の医療用容器20では、排出ポート3の操作部31bの移動を抑制するとともに剥離可能な操作部移動抑制用弱シール部26を備えている。操作部移動抑制用弱シール部26は、排出ポート3の上方を取り囲むように形成されている。この操作部移動抑制用弱シール部26により、第1の薬液室11から隔離された第3室25が形成されている。この第3室25は、空室となっている。しかし、第3室には、所定の液体(例えば、生理食塩水)が入れられていてもよい。また、第3室は、乾燥状態でもよいが、滅菌のための微量の液体が充填されていてもよい。さらに、操作部移動抑制用弱シール部26に若干の水蒸気や薬剤が通る通路を形成し、第1の薬液室11と上記のようなレベルで連通するものであってもよい。操作部移動抑制用弱シール部26は、シート材を帯状に熱シール(熱融着、高周波融着、超音波融着等)することにより形成することができる。
【0043】
操作部移動抑制用弱シール部26は、図16に示す実施例では、反転したU字形状に形成されている。また、操作部移動抑制用弱シール部は、短辺が上側となる台形状、排出ポートが頂点となる三角形状、排出ポートが底辺となる三角形状、四角形状等の多角形状、略半円形状、略半楕円形状であってもよい。
また、操作部移動抑制用弱シール部26のシール強度は、仕切用弱シール部9aのシール強度と同等、若干大きいもしくは若干小さいものであることが好ましい。このようなものであれば、仕切用弱シール部9aが剥離されない状態にて薬液が投与されることがなく、かつ、容易な操作で投与準備を行うことができる。
【0044】
また、操作部移動抑制用弱シール部26は、第1の薬液室11を押圧することにより、仕切用弱シール部9aの剥離とほぼ同時もしくは続いて操作部移動抑制用弱シール部26が剥離するものであることが好ましい。このようにすることにより、容器本体102の第1の薬液室11を圧迫したとき、操作部移動抑制用弱シール部26が仕切用弱シール部9aより先に剥離することがない。
また、医療用容器20は、第2の薬液室12を押圧することにより、仕切用弱シール部9aの剥離に続いて操作部移動抑制用弱シール部26が剥離するものであってもよい。このようなものであれば、容器本体102の第2の薬液室12を圧迫し、仕切用弱シール部9aの剥離時の流体の力により、操作部移動抑制用弱シール部26を剥離させることができる。
【0045】
そして、この医療用容器20では、排出ポート3の操作部31bの先端部は、操作部移動抑制用弱シール部26に近接もしくは当接している。このため、もし、仕切用弱シール部9aの剥離および操作部移動抑制用弱シール部26が剥離される前に、操作部31bの破断作業が行われたとしても、操作部31bは、操作部移動抑制用弱シール部26により移動が規制され、これにより、排出ポート3内の薬剤流出阻害部材4も実質的に移動できないため、薬剤排出用針管の接続ができないものとなっている。この医療用容器20における通常操作としては、第1の薬液室11もしくは第2の薬液室12を押圧することにより、仕切用弱シール部9aの剥離および操作部移動抑制用弱シール部26の剥離を行い、第1の薬液と第2の薬液が混合された後、排出ポート3の操作部を操作して破断することにより、排出ポート内の薬剤が、容器本体内の薬剤と混合されるとともに、薬剤流出阻害部材4が上方に移動することにより、針管の排出口への接続が可能となる。
【0046】
また、操作部移動抑制用弱シール部26は、上記のタイプのものに限定されるものではなく、例えば、図17に示すに示す医療用容器30のように、操作部移動抑制用弱シール部26aは、排出ポート3の操作部31bの先端部の上部近傍に位置する部分に形成され、破断後の操作部の移動を抑制するものの、容器本体102に第3室を形成しないものであってもよい。この場合、操作部移動抑制用弱シール部26aは、図17に示すように、排出ポート3の操作部31bの先端部の上部を取り囲む形態であることが好ましい。また、操作部移動抑制用弱シール部は、図18に示す医療用容器40のように、小さな弱シールが点在することにより、操作部移動抑制用弱シール部26bを形成するものであってもよい。
【0047】
次に、図19に示す本発明の他の実施例の医療用容器60について説明する。
図19は、本発明の医療用容器の他の実施例の正面図である。図20は、図19に示す医療用容器に使用される排出ポートの縦断面図である。
この実施例の医療用容器60は、上述した医療用容器1と同様に、可撓性材料により形成され、薬液が収納された容器本体2と、容器本体2に固定された排出ポート3eとを備える医療用容器である。
医療用容器60は、排出ポート3eの上方に設けられ、かつ、容器本体2を押圧することにより剥離可能な移動規制弱シール部27を備える。排出ポート3eは、薬剤8が収納された薬剤収納部を備えるポート本体部61と、ポート本体部61の端部を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管50(図5参照)の接続が可能な封止部32を有する排出口33と、ポート本体部61内に収納され、移動規制弱シール部の未剥離時にポート本体部61内に侵入した薬剤排出用針管50の先端部51(図5参照)を受け入れ可能、かつ、受け入れた針管50からの薬剤8の流出を阻害する薬剤流出阻害部材4cとを備える。移動規制弱シール部27は、薬剤流出阻害部材4cの先端部に近接もしくは当接する位置に設けられ、移動規制弱シール部27の未剥離時の薬剤流出阻害部材4cの移動を規制している。薬剤流出阻害部材4cは、移動規制弱シール部27の剥離完了もしくは移動規制弱シール部27の剥離完了と受け入れた針管50による先端方向への押圧により、ポート本体部61より流出するものとなっている。
【0048】
特に、この実施例における薬剤流出阻害部材4cは、容器本体2内とポート本体部61内との連通を開放可能に閉塞する閉塞部48と、閉塞部48より突出する先端部43と、排出口33側より侵入した薬剤排出用針管50の先端部51を受け入れ、かつ、受け入れた針管50により押圧される針管受入部41とを備える。また、薬剤8は、薬剤流出阻害部材4cの閉塞部48により閉塞されたポート本体部61内に収納されている。さらに、閉塞部48は、ポート本体部61の内面と液密状態にて摺動するシール部49を備えている。
この実施例の医療用容器60と上述した医療用容器1との相違点は、移動規制弱シール部27を備える点および排出ポートの構成であり、容器本体2等の基本構成は同じである。
【0049】
この実施例の医療用容器1では、排出ポート3eは、図20に示すように、ポート本体部61と、封止部32を有する排出口33と、ポート本体部61内を摺動可能に閉塞する閉塞部48を有する薬剤流出阻害部材4cを備えている。そして、薬剤収納部は、ポート本体部61内面と閉塞部48と封止部32により区画される空間により形成されており、この薬剤収納部に薬剤8が収納されている。
ポート本体部61は、先端から後端まで貫通した筒状部61aと、この筒状部61aの後端部に形成された拡径部61bを備える。ポート本体部61は、先端にて、開口したものとなっている。
【0050】
薬剤流出阻害部材4cの閉塞部48は、図20に示すように、ポート本体部61の開口端部を液密状態にシールするとともにポート本体部61内面を摺動するシール部49を備えている。具体的には、閉塞部48は、略円盤状に形成されるとともに、側面に環状シール部材(シール部)49が設けられている。図20に示すものでは、環状シール部材49は、閉塞部48の側面に形成された環状溝内にその内周側部分が収納されるとともに、外周側部分は露出し、ポート本体部61内面に液密状態にて密着し、かつ摺動可能である。また、薬剤流出阻害部材4cは、閉塞部48より先端方向に突出する先端部43を備えており、その肉厚は、先端方向に向かって薄くなっている。また、先端部43の先端は、図19に示すように、移動規制弱シール部27の内縁に到達もしくは内縁付近に位置し、移動規制弱シール部27により、薬剤流出阻害部材4cの先端方向(移動規制弱シール部27方向、閉塞部48がポート本体部61より離出する方向)への移動が規制されている。
【0051】
さらに、薬剤流出阻害部材4cは、図2ないし図5に示し上述した薬剤流出阻害部材4と同様に、排出口33側より侵入した薬剤排出用針管50の先端部51を受け入れる針管受入部41と、閉塞部48(先端部43)と針管受入部41とを連結するシャフト部42とを備えている。シャフト部42は、ほぼ直線状に延びる細径の中実のものとなっている。さらに、この実施例の薬剤流出阻害部材4の針管受入部41には、図5に示すものと同様に、侵入した薬剤排出用針管50の側口52より下方の外面と環状に接触可能なシール形成可能部46が設けられている。
【0052】
具体的には、図20(図5参照)に示すように、薬剤流出阻害部材4cの、先端部43を除く部分は、排出ポート3内に形成された薬剤収納部の全長とほぼ同じもしくは若干短い長さを有している。そして、薬剤流出阻害部材4cは、後端より先端方向に延びる内腔部44を備えており、この内腔部44が、これが薬剤排出用針管50の先端部を収納する。また、この薬剤流出阻害部材4cでは、下端における内腔部44が最も広く、薬剤排出用針管50の誘導部を形成している。そして、薬剤流出阻害部材4cの下端部は、先端に向かって縮径するテーパー部45を備え、テーパー部45の上端に、薬剤排出用針管50の側口52より下方の外面と環状に接触可能なシール形成可能部46が形成されている。言い換えれば、薬剤排出用針管50は、図5に示すものと同様に、側口52が、シール形成可能部46より上方となる位置まで、針管受入部41の内腔部44内に侵入可能であり、側口52より若干下方となる部分の外面とシール形成可能部46が環状に接触することにより、側口52からの薬剤の流出を阻害している。そして、薬剤流出阻害部材4cは、針管50がシール形成可能部46に当接することにより、針管50により、先端方向に押圧されるものとなっている。
【0053】
そして、内腔部44は、薬剤排出用針管50の先端が、針管受入部41の上端内面に到達不能なものとなっている。このため、侵入した薬剤排出用針管50の先端は、針管受入部の内面に強く当接することがなく、作業時に損傷を受けることがない。そして、作業者は、薬剤排出用針管を排出ポートに穿刺しても、薬剤が流出しないこと、また、薬剤排出用針管50が、薬剤流出阻害部材4c内に侵入し、その外面が薬剤排出用針管50の内腔部の内面と接触するため、通常の穿刺操作時の感触と異なることにより、移動規制弱シール部27が未剥離であることを認識する。
そして、この医療用容器60では、薬剤流出阻害部材4cは、移動規制弱シール部27が剥離された状態にて、刺入され、受け入れた針管50により、先端方向に押圧されることにより、閉塞部48は、先端方向に移動し、ポート本体部61と離脱する。これにより、ポート本体部61内と容器本体2内は、連通し、薬剤8は、容器本体2内の薬液と混合される。
【0054】
また、上述したような容器本体2が移動規制弱シール部27を備えるタイプの医療用容器において、薬剤流出阻害部材は、上記のタイプのものに限定されるものではなく、例えば、図21に示す排出ポート3fが備えている薬剤流出阻害部材4dのようなタイプのものであってもよい。
この実施例の薬剤流出阻害部材4dでは、図9ないし図11に示し上述した薬剤流出阻害部材4bと同様に、針管受入部41bは、下端が開口した内腔部を有するとともに、内腔部に充填された薬剤排出用針管50が刺入可能な弾性部材44bを備えている。閉塞部48,先端部43およびシャフト部42については、上述したものと同じである。
【0055】
この薬剤流出阻害部材4dでは、針管受入部41bは、中実であり、かつ、内部は、薬剤排出用針管50が刺入可能かつ刺入した薬剤排出用針管50の側口52を閉塞可能な弾性材料により形成されている。そして、針管受入部41bは、下端より先端方向に向かって縮径するものとなっている。針管受入部41b内には、弾性部材44bが充填されており、その下端開口をシールするとともに、針管受入部41b内を実質的に空隙のない中実なものとしている。そして、弾性部材44bは、図11に示したものと同様に、薬剤排出用針管50が刺入可能であり、かつ、少なくとも、薬剤排出用針管50の側口52の全体が、弾性部材44b内となる位置まで、侵入可能なものとなっている。さらに、弾性部材44bは、刺入した薬剤排出用針管50の側面と接触し、ほぼ液密状態を形成できるものであることが好ましい。
弾性部材44bとしては、薬剤流出阻害部材4bにおいて説明したものが、好適に使用できる。
そして、この排出ポート3fを有する医療用容器においても、薬剤流出阻害部材4dは、移動規制弱シール部27が剥離された状態にて、刺入され、受け入れた針管50により、先端方向に押圧されることにより、閉塞部48は、先端方向に移動し、ポート本体部61と離脱する。これにより、ポート本体部61内と容器本体2内は、連通し、薬剤8は、容器本体2内の薬液と混合される。
【0056】
また、上述したような容器本体2が移動規制弱シール部27を備えるタイプの医療用容器において、薬剤流出阻害部材は、例えば、図22に示す排出ポート3gが備えている薬剤流出阻害部材4eのようなタイプのものであってもよい。
この排出ポート3gでは、薬剤流出阻害部材4eは、容器本体2内とポート本体部61内との連通を開放可能に閉塞するとともに、ポート本体部61の内面と液密状態にて摺動するシール部73と、先端部72とを備える閉塞部材71と、閉塞部材71を押圧するための押圧部材81とからなり、押圧部材81は、閉塞部材71を押圧するための押圧用先端部43と、排出口側より侵入した薬剤排出用針管50の先端部51を受け入れ、かつ、受け入れた針管50により押圧される針管受入部41とを備える。薬剤8は、閉塞部材71により閉塞されたポート本体部61内に収納されている。
この実施例の薬剤流出阻害部材4eは、閉塞部材71と、閉塞部材71と別部材である押圧部材81とにより構成されている。
【0057】
薬剤流出阻害部材4eの閉塞部材71は、図22に示すように、ポート本体部61の開口端部を液密状態にシールするとともにポート本体部61内面を摺動するシール部73を備えている。具体的には、閉塞部材71の基端部は、略円盤状に形成されるとともに、側面に環状シール部材(シール部)73が設けられている。図22に示すものでは、環状シール部材73は、閉塞部71の基端部の側面に形成された環状溝内にその内周側部分が収納されるとともに、外周側部分は露出し、ポート本体部61内面に液密状態にて密着し、かつ摺動可能である。また、閉塞部材71は、先端方向に突出する先端部72を備えており、その肉厚は、先端方向に向かって薄くなっている。また、先端部72の先端は、移動規制弱シール部27の内縁に到達もしくは内縁付近に位置し、移動規制弱シール部27により、薬剤流出阻害部材4eの閉塞部材71の先端方向(移動規制弱シール部27方向、閉塞部材71がポート本体部61より離出する方向)への移動が規制されている。
【0058】
押圧部材81は、図22に示すように、また、図2ないし図5に示し上述した薬剤流出阻害部材4と同様に、排出口33側より侵入した薬剤排出用針管50の先端部51を受け入れる針管受入部41と、先端部43と針管受入部41とを連結するシャフト部42とを備えている。シャフト部42は、ほぼ直線状に延びる細径の中実のものとなっている。さらに、押圧部材81の針管受入部41には、図5に示すものと同様に、侵入した薬剤排出用針管50の側口52より下方の外面と環状に接触可能なシール形成可能部46が設けられている。
【0059】
具体的には、図22(図5参照)に示すように、押圧部材81は、排出ポート3g内に形成された薬剤収納部の全長とほぼ同じもしくは若干短い長さを有している。そして、押圧部材81は、後端より先端方向に延びる内腔部44を備えており、この内腔部44が、これが薬剤排出用針管50の先端部を収納する。また、この押圧部材81では、下端における内腔部44が最も広く、薬剤排出用針管50の誘導部を形成している。そして、押圧部材81の下端部は、先端に向かって縮径するテーパー部45を備え、テーパー部45の上端に、薬剤排出用針管50の側口52より下方の外面と環状に接触可能なシール形成可能部46が形成されている。言い換えれば、薬剤排出用針管50は、図5に示すものと同様に、側口52が、シール形成可能部46より上方となる位置まで、針管受入部41の内腔部44内に侵入可能であり、側口52より若干下方となる部分の外面とシール形成可能部46が環状に接触することにより、側口52からの薬剤の流出を阻害している。そして、押圧部材81は、針管50がシール形成可能部46に当接することにより、針管50により、先端方向に押圧されるものとなっている。
【0060】
そして、内腔部44は、薬剤排出用針管50の先端が、針管受入部41の上端内面に到達不能なものとなっている。このため、侵入した薬剤排出用針管50の先端は、針管受入部の内面に強く当接することがなく、作業時に損傷を受けることがない。そして、作業者は、薬剤排出用針管を排出ポートに穿刺しても、薬剤が流出しないこと、また、薬剤排出用針管50が、薬剤流出阻害部材4e内に侵入し、その外面が薬剤排出用針管50の内腔部の内面と接触するため、通常の穿刺操作時の感触と異なることにより、移動規制弱シール部27が未剥離であることを認識する。
そして、排出ポート3gを備える医療用容器では、押圧部材81は、移動規制弱シール部27が剥離された状態にて、刺入され、受け入れた針管50により、先端方向に押圧され、さらに、閉塞部材71が、この押圧部材81により押され、先端方向に移動し、ポート本体部61より離脱する。これにより、ポート本体部61内と容器本体2内は、連通し、薬剤8は、容器本体2内の薬液と混合される。
【0061】
そして、この実施例の医療用容器60では、移動抑制用弱シール部27は、排出ポート3eの上方を取り囲むように形成されている。この移動抑制用弱シール部27により、容器本体2内の薬液室11から隔離された薬剤室25が形成されている。この薬剤室25は、空室となっている。しかし、薬剤室25には、所定の液体(例えば、生理食塩水)が入れられていてもよい。また、薬剤室25は、乾燥状態でもよいが、滅菌のための微量の液体が充填されていてもよい。さらに、移動抑制用弱シール部27に若干の水蒸気や薬剤が通る通路を形成し、第1の薬液室11と上記のようなレベルで連通するものであってもよい。移動抑制用弱シール部27は、シート材を帯状に熱シール(熱融着、高周波融着、超音波融着等)することにより形成することができる。
【0062】
移動抑制用弱シール部27は、図19に示す実施例では、反転したU字形状に形成されている。また、操作部移動抑制用弱シール部は、短辺が上側となる台形状、排出ポートが頂点となる三角形状、排出ポートが底辺となる三角形状、四角形状等の多角形状、略半円形状、略半楕円形状であってもよい。また、移動抑制用弱シール部27は、容器本体2の薬液室11を押圧することにより、剥離するものとなっている。
また、移動抑制用弱シール部27は、上記のタイプのものに限定されるものではなく、例えば、図17に示すに示す医療用容器30のように、移動抑制用弱シール部は、薬剤流出阻害部の先端部上部近傍に位置する部分に形成され、薬剤流出阻害部の移動を抑制するものの、容器本体内に区画された薬剤室を形成しないものであってもよい。この場合、移動抑制用弱シール部は、図17に示すように、排出ポート3の薬剤流出阻害部の先端部の上部を取り囲む形態であることが好ましい。また、操作部移動抑制用弱シール部は、図18に示す医療用容器40のように、小さな弱シールが点在することにより、移動抑制用弱シール部を形成するものであってもよい。
【0063】
次に、図23に示す本発明の他の実施例の医療用容器70について説明する。
図23は、本発明の医療用容器の他の実施例の正面図である。図24は、図23に示す医療用容器に使用される排出ポートの縦断面図である。
この実施例の医療用容器70は、上述した医療用容器1と同様に、可撓性材料により形成され、薬液が収納された容器本体2と、容器本体2に固定された排出ポート3hとを備える医療用容器である。
医療用容器70は、排出ポート3hの上方に設けられ、かつ、容器本体2を押圧することにより剥離可能な移動規制弱シール部27を備える。排出ポート3hは、薬剤8が収納された薬剤収納部を備えるポート本体部61と、ポート本体部61の他端側を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管50(図5参照)の接続が可能な封止部32を有する排出口33と、ポート本体部61内に収納され、移動規制弱シール部の未剥離時にポート本体部61内に侵入した薬剤排出用針管50の先端部51(図5参照)を受け入れ可能、かつ、受け入れた針管50からの薬剤8の流出を阻害する薬剤流出阻害部材4fとを備える。移動規制弱シール部27は、薬剤流出阻害部材4fの先端部に近接もしくは当接する位置に設けられ、移動規制弱シール部27の未剥離時の薬剤流出阻害部材4fの移動を規制している。薬剤流出阻害部材4fは、移動規制弱シール部27の剥離完了により、ポート本体部61より流出するものとなっている。すなわち、移動抑制用弱シール部27は、剥離操作が行われるまでに薬液室11と排出ポート3が連通することを阻害する連通阻害用弱シール部としても機能するものとなっている。
【0064】
この実施例の医療用容器70と上述した医療用容器1との相違点は、移動規制用弱シール部27を備える点および排出ポートの構成であり、容器本体2等の基本構成は同じである。
そして、この実施例の医療用容器70では、上述した医療用容器60と同様に、移動抑制用弱シール部27は、排出ポート3hの上方を取り囲むように形成されている。この移動抑制用弱シール部27により、容器本体2内の薬液室11から隔離された薬剤室25が形成されている。この薬剤室25はポート本体部61と連通し、ポート本体部61内と連通する薬剤室となっており、そこに、薬剤8が収納されている。つまり、薬剤8は、その一部がポート本体部61内に収納され、残りは、移動抑制用弱シール部27に区画された薬剤室25に収納されている。また、薬剤8は、ポート本体部61内および薬剤室25内を移動可能となっている。
移動抑制用弱シール部27は、シート材を帯状に熱シール(熱融着、高周波融着、超音波融着等)することにより形成することができる。移動抑制用弱シール部27は、図23に示す実施例では、反転したU字形状に形成されている。また、移動規制用弱シール部は、短辺が上側となる台形状、排出ポートが頂点となる三角形状、排出ポートが底辺となる三角形状、四角形状等の多角形状、略半円形状、略半楕円形状であってもよい。また、移動抑制用弱シール部27は、容器本体2の薬液室11を押圧することにより、剥離するものとなっている。
また、排出ポート3hは、ポート本体部61とポート本体部61に収納され、かつ、先端部がポート本体部61より突出した薬剤流出阻害部材4fとを備える。ポート本体部61は、先端から後端まで貫通した筒状部61aと、この筒状部61aの後端部に形成された拡径部61bを備える。ポート本体部61は、先端にて、開口したものとなっている。
【0065】
図24に示すように、薬剤流出阻害部材4fは、排出ポート3e内の内腔部の全長より長く、その先端側部分が、ポート本体部61の先端開口より、突出している。そして、薬剤流出阻害部材4fの突出する先端側部分の先端部43は、移動規制弱シール部27の内縁に近接もしくは当接するように配置されている。
薬剤流出阻害部材4fは、針管受入部41と先端部43を連結するシャフト部42とを備えている。そして、薬剤流出阻害部材4fの針管受入部41は、後端より先端方向に延びる内腔部44を備えており、この内腔部44が、これが薬剤排出用針管50の先端部を収納する。内腔部44は、上述した薬剤流出阻害部材4にて説明したものと同じである。
【0066】
なお、上述した実施例の医療用容器において、薬剤流出阻害部材は、図25に示す排出ポート3iが備えている薬剤流出阻害部材4gのようなタイプのものであってもよい。
薬剤流出阻害部材4gは、針管受入部41aと先端部43を連結するシャフト部42とを備えている。この実施例の薬剤流出阻害部材4gでは、針管受入部41aは、下端が開口した中空部44aと、中空部44aの下端開口を封止しかつ薬剤排出用針管50による刺通が可能なシール部材47を備えている。
針管受入部41a内に形成される内腔部44aは、下端より先端方向に向かって縮径するものとなっている。そして、針管受入部41aの下端開口は、シール部材47によりシールされており、中空部44aは、空隙となっている。そして、シール部材47は、図8に示したものと同様に、薬剤排出用針管50により刺通可能であり、かつ、少なくとも、薬剤排出用針管50の側口52の全体が、内腔部44a内となる位置まで、針管受入部41の内腔部44a内に侵入可能なものとなっている。さらに、この実施例のものでは、シール部材47は、刺通された薬剤排出用針管50の側面と環状に接触し、ほぼ液密状態を形成できるものであることが好ましい。さらに、シール部材47は、刺通された薬剤排出用針管50の抜去後において、刺通部(穿刺孔)より薬剤が、内腔部44a内への流入を阻害できる程度の再シール性を有することが好ましい。また、シール部材47は、薬剤排出用針管50による刺通抵抗もあまり高くないものであることが好ましい。シール部材47としては、薬剤流出阻害部材4aにて説明したものが好適に使用できる。
また、ポート本体部61の先端部が閉塞されないこの実施例のタイプの排出ポートにおいても、薬剤流出阻害部材の針管受入部としては、図9ないし図11に示し上述した薬剤流出阻害部材4bと同様に、針管受入部41bは、下端が開口した内腔部を有するとともに、内腔部に充填された薬剤排出用針管50が刺入可能な弾性部材44bを備えているものであってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 医療用容器
2 容器本体
3 排出ポート
4 薬剤流出阻害部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部において、輸液などの薬液に薬剤の調整や配合を行うことができる医療用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
輸液に際し、2種以上の液体(薬液)を混合して使用する場合がある。この場合、従来では、別途準備した2つの薬液を使用時に混合することにより準備していた。最近では、薬液の投与を速やかなものとすること、ならびに混合忘れなどを防止することより、1つの医療用容器の薬剤室を剥離可能な仕切部により2つの薬剤室に区分することにより複室としたもの、また、破断可能部にて破断することにより容器本体内と連通可能な薬剤容器を取り付けることにより複室としたものがある。そして、このような複室容器では、それぞれに、あらかじめ混合すると、経時的に変質、劣化する薬剤を分離して収納される。しかし、このような複室の医療用容器の場合、仕切部の開通もしくは破断可能部の破断を行うことなく、医療用容器に、輸液セットの薬剤排出用針管を穿刺すると薬剤が流出してしまう。
【0003】
特許文献1(特開2005−95604号公報)に示されるものを本件出願人は提案している。この輸液用容器では、薬液が収納された軟質バッグと、該軟質バッグに取り付けられた薬剤容器を有する輸液用容器であって、該薬剤容器は、薬剤が収納された薬剤収納部と、該薬剤収納部と独立して設けられ前記軟質バッグ内部の内容物を排出するための排出ポートと、前記薬剤収納部及び前記排出ポートの一端部に設けられかつ前記軟質バッグ内部に配置され、前記薬剤収納部及び前記排出ポートと前記軟質バッグ内部との連通を規制するとともに、前記薬剤収納部と前記排出ポートの両方を前記軟質バッグ内部と連通可能とする連通規制部を有している。そして、連通規制部は、指による破損により前記薬剤収納部及び前記排出ポートの一端部を開封するための脆弱部と、該脆弱部の破損操作を行うための操作部を有している。
【0004】
さらに、本件特許出願人は、特許文献2(特開2007−50085号公報)に示されるものを提案している。
特許文献2の実施例の医療用容器1は、可撓性材料により形成され、薬液が収納された容器本体2と、排出口33を備える排出ポート3とを備える。排出ポート3は、薬剤収納部34を備えかつ薬剤8が収納された筒状部31aと、筒状部31aの一端側を閉塞し、かつ、破断により容器本体2内との連通を可能とする破断可能部(解除可能な区画部を構成する)31cおよび破断可能部31cの破断操作を行うための操作部31操作部31を備える流通規制部とを備えるポート本体部31と、ポート本体部31(言い換えれば、筒状部31a)の他端側を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管の接続が可能な封止部32を有する排出口33と、筒状部31a内に設けられ流通規制部の破断可能部31cの未破断時における筒状部31a内への薬剤排出用針管の侵入を阻害する針管侵入阻害部4とを備えている。
【0005】
そして、針管侵入阻害部4は、操作部31b(操作部の底部下面)と当接可能な先端部41と、薬剤排出用針管の先端が当接可能な基端部42と、先端部41と基端部42を連結する接続部43を有するものである。流通規制部の破断可能部が未破断の状態において、封止部32に薬剤排出用針管を穿刺した場合、この針の先端は針管侵入阻害部4の基端部42に当接し、さらに押しても、針管侵入阻害部4が上方に移動し、先端部41が操作部31bに当接した後は、それ以上移動不能となる。
さらに、本件特許出願人は、特許文献3(特開2008−200367号公報)に示されるものを提案している。
特許文献3の医療用容器1は、容器本体2と排出ポート3とを備える。排出ポート3は、薬剤9が収納された薬剤収納部8を有する排出ポート本体部31と、容器本体2内と薬剤収納部8との連通を開放可能に閉塞する閉塞部41と、排出口33と、排出口33に刺入される薬剤排出用針管により押圧され、閉塞部41を排出ポート本体部31より離脱させるための閉塞部押圧部43と、閉塞部41と一体に設けられた延出部44とを備える。医療用容器1は、延出部44の先端部に近接する位置に設けられた剥離可能な離脱抑制用弱シール部7を備える。離脱抑制用弱シール部7の未剥離時では、排出口33内への薬剤排出用針管の侵入を阻害する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−95604号公報
【特許文献2】特開2007−50085号公報
【特許文献3】特開2008−200367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1および特許文献2のものは、連通規制部の破損操作を行うことなく、輸液セットの薬剤排出用針管を穿刺しても薬剤が流出することはなく、安全なものとなっている。同様に、特許文献3のものでは、離脱抑制用弱シール部7が未剥離状態では、排出口33内への薬剤排出用針管の侵入ができず、輸液セットの薬剤排出用針管を穿刺しても薬剤が流出することはなく、安全なものとなっている。しかし、特許文献1のものでは、排出ポート内が、軸方向に2室に区分されており、薬剤排出用針管は、その1室のみに穿刺可能なものとなっている。このため、排出ポートにおける薬剤排出用針管の穿刺可能部位が小さく、穿刺作業時における位置決めなどの穿刺作業が難しいものとなっていた。また、特許文献2および3のものでは、特許文献1のものに比べて、排出ポートにおける薬剤排出用針管の穿刺可能部位は通常の大きさのものとでき、穿刺作業時における位置決めなどの困難性はないが、破断可能部を未破断の状態にて、薬剤排出用針管を排出ポートに穿刺すると、その先端は、薬剤室内に侵入し、針管侵入阻害部の底面に当接し、それ以上の侵入が阻害されている。薬剤排出用針管の排出ポートへの穿刺時の力にもよるが、薬剤排出用針管の先端部が、針管侵入阻害部との当接により破損する可能がある。
そこで、本発明の目的は、上記問題点を解決するものであり、薬剤が収納され、かつ、開通可能部を備える排出ポートを有する医療用容器において、排出ポートの開通可能部な未開通のまま薬剤が投与されることがなく、かつ、開通可能部が未開通の状態にて、薬剤排出用針管が穿刺されても、薬剤排出用針管の先端部に損傷を与えることがなく、また、針管を穿刺しても薬液が排出されないことにより、作業者に開通可能部が未開通であること教示することができる医療用容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 可撓性材料により形成され、薬液が収納された容器本体と、前記容器本体に固定された排出ポートとを備える医療用容器であって、
前記排出ポートは、薬剤が収納された薬剤収納部と、該薬剤収納部の一端側を閉塞し、かつ、開通操作により前記容器本体内と前記薬剤収納部の連通を可能とする開通可能部および前記開通可能部の開通操作を行うための操作部とを備えるポート本体部と、前記ポート本体部の前記薬剤収納部の他端側を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管の接続が可能な封止部を有する排出口と、前記薬剤収納部内に収納され、前記開通可能部の未開通時に前記薬剤収納部内に侵入した前記薬剤排出用針管の先端部を受け入れ可能、かつ、受け入れた前記針管からの前記薬剤の流出を阻害する薬剤流出阻害部材とを備える医療用容器。
【0009】
(2) 前記薬剤流出阻害部材は、前記排出口側より侵入した前記薬剤排出用針管の先端部を受け入れるための中空状もしくは中実状の針管受入部を備えている上記(1)に記載の医療用容器。
(3) 前記薬剤流出阻害部材の前記針管受入部は、中空であり、かつ侵入した前記薬剤排出用針管の側口より下方の外面と環状に接触可能なシール形成可能部を備えている上記(2)に記載の医療用容器。
(4) 前記薬剤流出阻害部材の前記針管受入部は、中空であり、下端が開口した中空部と、前記中空部の下端開口を封止しかつ前記薬剤排出用針管による刺通が可能なシール部材を備えている上記(2)に記載の医療用容器。
(5) 前記薬剤流出阻害部材の前記針管受入部は、中実であり、かつ、前記薬剤排出用針管が刺入可能かつ刺入した前記薬剤排出用針管の側口を閉塞可能な弾性部材を備えている上記(2)に記載の医療用容器。
(6) 前記薬剤流出阻害部材は、前記薬剤収納部の前記一端側の閉塞部に当接可能な先端部を備えている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の医療用容器。
(7) 前記薬剤流出阻害部材は、前記開通可能部の開通操作後、前記ポート本体部より流出可能である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の医療用容器。
(8) 前記開通可能部は、破断可能部である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の医療用容器。
【0010】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(9) 可撓性材料により形成され、薬液が収納された容器本体と、前記容器本体に固定された排出ポートとを備える医療用容器であって、
前記医療用容器は、前記排出ポートの上方に設けられ、かつ、前記容器本体を押圧することにより剥離可能な移動規制弱シール部を備え、
前記排出ポートは、薬剤が収納された薬剤収納部を備えるポート本体部と、前記ポート本体部の端部を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管の接続が可能な封止部を有する排出口と、前記ポート本体部内に収納され、前記移動規制弱シール部の未剥離時に前記ポート本体部内に侵入した前記薬剤排出用針管の先端部を受け入れ可能、かつ、受け入れた前記針管からの前記薬剤の流出を阻害する薬剤流出阻害部材とを備え、前記移動規制弱シール部は、前記薬剤流出阻害部材の先端部に近接もしくは当接する位置に設けられ、前記移動規制弱シール部の未剥離時の前記薬剤流出阻害部材の移動を規制しており、前記薬剤流出阻害部材は、前記移動規制弱シール部の剥離完了もしくは前記移動規制弱シール部の剥離完了と受け入れた前記針管による先端方向への押圧により、前記ポート本体部より流出する医療用容器。
【0011】
(10) 前記薬剤流出阻害部材は、前記容器本体内と前記ポート本体部内との連通を開放可能に閉塞する閉塞部と、前記閉塞部より突出する前記先端部と、前記排出口側より侵入した前記薬剤排出用針管の先端部を受け入れ、かつ、受け入れた針管により押圧される針管受入部とを備え、前記薬剤は、前記薬剤流出阻害部材の前記閉塞部により閉塞された前記ポート本体部内に収納されており、さらに、前記閉塞部は、前記ポート本体部の内面と液密状態にて摺動するシール部を備えている上記(9)に記載の医療用容器。
(11) 前記薬剤流出阻害部材は、前記容器本体内と前記ポート本体部内との連通を開放可能に閉塞するとともに、前記ポート本体部の内面と液密状態にて摺動するシール部と、前記先端部とを備える閉塞部材と、前記閉塞部材を押圧するための押圧部材とからなり、前記押圧部材は、前記閉塞部材を押圧するための押圧用先端部と、前記排出口側より侵入した前記薬剤排出用針管の先端部を受け入れ、かつ、受け入れた針管により押圧される針管受入部とを備え、前記薬剤は、前記閉塞部材により閉塞された前記ポート本体部内に収納されている上記(9)に記載の医療用容器。
(12) 前記医療用容器は、前記移動規制弱シール部により区画され、かつ、前記ポート本体部内と連通する薬剤室を備え、前記薬剤は、前記ポート本体部材および前記薬剤室に収納されている上記(9)に記載の医療用容器。
(13) 前記薬剤流出阻害部材は、侵入した前記薬剤排出用針管の側口より下方の外面と環状に接触可能なシール形成可能部を備えている上記(9)ないし(12)のいずれかに記載の医療用容器。
(14) 前記薬剤流出阻害部材は、下端が開口した中空部と、前記中空部の下端開口を封止しかつ前記薬剤排出用針管による刺通が可能なシール部材を備えている上記(9)ないし(13)のいずれかに記載の医療用容器。
(15) 前記薬剤流出阻害部材は、中実であり、かつ、前記薬剤排出用針管が刺入可能かつ刺入した前記薬剤排出用針管の側口を閉塞可能な弾性部材を備えている上記(9)ないし(12)のいずれかに記載の医療用容器。
【発明の効果】
【0012】
本発明の医療用容器は、可撓性材料により形成され、薬液が収納された容器本体と、容器本体に固定された排出ポートとを備える。排出ポートは、薬剤が収納された薬剤収納部と、薬剤収納部の一端側を閉塞し、かつ、開通操作により容器本体内と薬剤収納部の連通を可能とする開通可能部および開通可能部の開通操作を行うための操作部とを備えるポート本体部と、ポート本体部の薬剤収納部の他端側を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管の接続が可能な封止部を有する排出口と、薬剤収納部内に収納され、開通可能部の未開通時に薬剤収納部内に侵入した薬剤排出用針管の先端部を受け入れ可能、かつ、受け入れた針管からの薬剤の流出を阻害する薬剤流出阻害部材とを備える。
このため、排出ポートにおける薬剤排出用針管の穿刺可能部位は、通常の大きさのものとすることができ、穿刺作業時における位置決めが容易である。また、開通可能部が未開通の状態において、薬剤排出用針管を排出口に穿刺しても、薬剤排出用針管は、排出ポート内に侵入するものの薬剤流出阻害部材に阻害されて、薬剤は流出しない。よって、排出ポートの開通可能部な未開通のまま薬剤が投与されることがない。さらに、開通可能部が未開通の状態にて、排出口に薬剤流出阻害部材を穿刺しても、薬剤排出用針管の先端部に損傷を与えることもない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の医療用容器の一実施例の正面図である。
【図2】図2は、図1に示す医療用容器に使用される排出ポートの正面図である。
【図3】図3は、図2のA−A線断面図である。
【図4】図4は、図2のB−B線断面図である。
【図5】図5は、図1ないし図4に示した本発明の医療用容器の作用を説明するための説明図である。
【図6】図6は、本発明の他の実施例の医療用容器に用いられる排出ポートの正面図である。
【図7】図7は、図6のC−C線断面図である。
【図8】図8は、図6および図7に示した排出ポートを用いた本発明の医療用容器の作用を説明するための説明図である。
【図9】図9は、本発明の他の実施例の医療用容器に用いられる排出ポートの正面図である。
【図10】図10は、図9のD−D線断面図である。
【図11】図11は、図9および図10に示した排出ポートを用いた本発明の医療用容器の作用を説明するための説明図である。
【図12】図12は、本発明の他の実施例の医療用容器に用いられる排出ポートの正面図である。
【図13】図13は、図12のE−E線断面図である。
【図14】図14は、図12のF−F線断面図である。
【図15】図15は、本発明の他の実施例の医療用容器に用いられる排出ポートの縦断面図である。
【図16】図16は、本発明の医療用容器の他の実施例の正面図である。
【図17】図17は、本発明の医療用容器の他の実施例の正面図である。
【図18】図18は、本発明の医療用容器の他の実施例の正面図である。
【図19】図19は、本発明の医療用容器の他の実施例の正面図である。
【図20】図20は、図19に示す医療用容器に使用される排出ポートの縦断面図である。
【図21】図21は、本発明の他の実施例の医療用容器に用いられる排出ポートの縦断面図である。
【図22】図22は、本発明の他の実施例の医療用容器に用いられる排出ポートの縦断面図である。
【図23】図23は、本発明の医療用容器の他の実施例の正面図である。
【図24】図24は、図23に示す医療用容器に使用される排出ポートの縦断面図である。
【図25】図25は、本発明の他の実施例の医療用容器に用いられる排出ポートの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の医療用容器を図面に示す実施例を用いて説明する。
本発明の医療用容器1は、可撓性材料により形成され、薬液が収納された容器本体2と、容器本体2に固定された排出ポート3とを備える。
排出ポート3は、薬剤が収納された薬剤収納部34と、薬剤収納部34の一端側を閉塞し、かつ、開通操作により容器本体2内と薬剤収納部34の連通を可能とする開通可能部(具体的には、破断可能部)31cおよび開通可能部(破断可能部)31cの開通操作(破断操作)を行うための操作部31bとを備えるポート本体部31と、ポート本体部31の薬剤収納部34の他端側を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管の接続が可能な封止部32を有する排出口33と、薬剤収納部34内に収納され、開通可能部(破断可能部)31cの未開通時(未破断時)に薬剤収納部34内に侵入した薬剤排出用針管50の先端部51を受け入れ可能、かつ、受け入れた針管50からの薬剤の流出を阻害する薬剤流出阻害部材4とを備える。
本発明の医療用容器1は、可撓性材料により形成され、薬液が収納された容器本体2と、容器本体2に固定された排出ポート3とを備える。
【0015】
この実施例の医療用容器1は、内部に薬液室11とその薬液室内に収納された薬液とを有する容器本体2と、容器本体2に固定された排出ポート3とを備える。
この実施例では、排出ポート3は、非連通排出ポートである。排出ポート3は、図3に示すように、破断されない状態では、薬液室11内と連通しないものとなっている。
また、図1に示すように、容器本体2は、内部に薬液室11を備え、一端側及び他端側には、シール部5,6が設けられている。
医療用容器1の容器本体2は、軟質合成樹脂により形成されている。容器本体2は、インフレーション成形法により筒状に成形されたものが好ましい。なお、容器本体2は、例えば、ブロー成形法、共押出インフレーション法などの種々の方法により製造されたものでもよい。
容器本体2は、水蒸気バリヤー性を有することが好ましい。水蒸気バリヤー性の程度としては、水蒸気透過度が、50g/m2・24hrs・40℃・90%RH以下であることが好ましく、より好ましくは10g/m2・24hrs・40℃・90%RH以下であり、さらに好ましくは1g/m2・24hrs・40℃・90%RH以下である。この水蒸気透過度は、JISK7129(A法)に記載の方法により測定される。
このように容器本体2が水蒸気バリヤー性を有することにより、医療用容器1の内部からの水分の蒸散が防止できる。その結果、充填される薬剤(具体的には、薬液)の減少、濃縮を防止することができる。また、医療用容器1の外部からの水蒸気の侵入も防止することができる。
【0016】
このような容器本体2の形成材料としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の各種熱可塑性エラストマーあるいはこれらを任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)が挙げられる。そして、使用する樹脂材料は、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ滅菌)に耐えられる耐熱性、耐水性を有していることが好ましい。
また、容器本体の形成材料として、ポリオレフィンが含有されるとき、本発明の有用性が大きいものとなる。したがって、本発明においては、容器本体2の形成材料として、ポリオレフィンを含むものであるのが好ましい。容器本体2の形成材料として、特に好ましいものとして、ポリエチレンまたはポリプロピレンに、スチレン−ブタジエン共重合体やスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマーあるいはエチレン−プロピレン共重合体やエチレン−ブテン共重合体,プロピレン−αオレフィン共重合体等のオレフィン系熱可塑性エラストマーをブレンドし柔軟化した軟質樹脂を挙げることができる。この材料は、高強度で柔軟性に富み、耐熱性(特に滅菌時の耐熱性)、耐水性が高い他、加工性が特に優れ、製造コストの低減を図ることができる点で好ましい。
【0017】
また、容器本体は、前述したような材料よりなる単層構造のもの(単層体)であってもよいし、また種々の目的で、複数の層(特に異種材料の層)を重ねた多層積層体であってもよい。多層積層体の場合、複数の樹脂層を重ねたものであってもよいし、少なくとも1層の樹脂層に金属層を積層したものであってもよい。複数の樹脂層を重ねたものの場合、それぞれの樹脂の利点を併有することができ、例えば、容器本体2の耐衝撃性を向上させたり、対ブロッキング性を付与したりすることができる。また、金属層を有するものの場合、容器本体2のガスバリヤー性等を向上させることができる。例えば、アルミ箔等のフィルムが積層された場合、ガスバリヤー性の向上とともに、遮光性を付与したりすることができる。また、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等の酸化物からなる層を形成した場合、ガスバリヤー性の向上とともに、容器本体2の透明性を維持することができ、内部の視認性を確保することができる。なお、容器本体2が多層積層体である場合、その内表面部分を形成する材料が、前述した材料であるのが好ましい。
容器本体2を構成するシート材の厚さは、その層構成や用いる素材の特性(柔軟性、強度、水蒸気透過性、耐熱性等)等に応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、100〜500μm程度であるのが好ましく、200〜360μm程度であるのがより好ましい。
また、医療用容器1の容積は、内部に収納する薬剤の種類等によって異なるが、通常は、薬液室の容積が、50〜5000ml程度であることが好ましい。
【0018】
薬剤排出ポート3は、容器本体2内に充填された薬剤(薬液)を排出するためのものである。
この実施例では、排出ポート3内には、図3に示すように、適量の薬剤8が収容されている。また、排出ポート3の薬剤収納部34の形成部は、内部の薬剤が目視可能に透明に形成されていることが好ましい。収納される薬剤としては、粉末、顆粒状などの固体状、液体状等いかなるものでもよい。薬剤としては、輸液剤に配合・溶解させるものであって、例えば抗生物質、ビタミン剤(総合ビタミン剤)、各種アミノ酸、ヘパリン等の抗血栓剤、インシュリン、抗腫瘍剤、鎮痛剤、強心剤、静注麻酔剤、抗パーキンソン剤、潰瘍治療剤、副腎皮質ホルモン剤、不整脈用剤、補正電解質、抗ウィルス薬、免疫賦活剤等が挙げられる。また、排出ポート3の筒状部31a内(薬剤収納部34)は、常圧でもよいが、減圧または真空状態としてもよい。このように、薬剤収納部が減圧または真空状態であると、薬剤の変質分解・劣化等の防止効果が向上するとともに、破断可能部31cの破断時に、輸液剤を吸引し、より迅速に筒状部31a内へ導入することができる。
【0019】
排出ポート3は、図1ないし図3に示すように、薬液室11に固定されるとともに、開通操作により開通する開通可能部(言い換えれば、流通規制部)を備えるポート本体部31と、ポート本体部31の他端側を閉塞する薬剤排出用針管の接続が可能な封止部32を有する排出口33と、ポート本体部31内に設けられた薬剤流出阻害部材4とを備える。この実施例では、ポート本体部31は、開通可能部として、破断可能部を備えている。
ポート本体部31は、筒状部31aと、この筒状部31aの一端側を閉塞する一端側閉塞部(隔壁部)31eと、一端側閉塞部(隔壁部)31eより筒状部31aの他端側に位置し、破断により容器本体2の薬液室11と筒状部31a内とを連通可能とする破断可能部31cと、破断可能部31cの破断操作を行うための操作部31bとを備える。破断可能部31cは、クサビ状の環状凹部が形成された部分であり、他の部分に比べて肉薄となっている。このため、破断可能部31cは、他の部分に比べて脆弱であり、操作部31bをバッグの外方より押すことにより、この破断可能部31c部分にて破断し、操作部31bは、筒状部31aより分離する。そして、分離する操作部31bが、図示するように中空であることが好ましい。このようにすることにより、破断可能部31cは偏肉のない状態のものとなる。筒状部31aの内側上面と破断可能部31cとの距離は、1〜2mmであることが好ましい。
【0020】
さらに、この操作部31bを薬剤混合後の薬液に対して識別可能な色に形成してもよい。薬液と容易に識別できるとともに、薬液面に浮上するため薬液残量の確認も容易となる。薬剤混合後の薬液に対して識別可能な色とは、使用される薬液および薬剤により相違し一義的なものではなく、例えば、薬剤混合後の薬液の色が黄色であれば黄色以外(例えば、赤色、青色、緑色、黒色)のものが、赤色であれば赤色以外(例えば、黄色、青色、緑色、黒色)のものとされる。なお、薬剤混合後の薬液の色が無色の場合には、有色であればどのような色でもよい。
封止部32は、ポート本体部の後端開口を封止するとともに薬剤排出用針管の刺通が可能な弾性部材により形成されており、この実施例では、キャップ部33aにより、ポート本体部31の後端に固定されることにより、排出口33を構成している。
【0021】
この実施例の医療用容器1では、排出ポート3の薬剤収納部34内に薬剤流出阻害部材4が収納されている。この実施例における薬剤流出阻害部材4は、図2ないし図4に示すように、排出口32側より侵入した薬剤排出用針管50の先端部51を受け入れるための中空状の針管受入部41を備えている。また、薬剤流出阻害部材4は、薬剤収納部34の一端側閉塞部(隔壁部)31eに当接可能な先端部43を備えている。さらに、薬剤流出阻害部材4は、針管受入部41と先端部43とを連結するシャフト部42を備えている。シャフト部42は、ほぼ直線状に延びる細径の中実のものとなっている。さらに、この実施例の薬剤流出阻害部材4の針管受入部41には、侵入した薬剤排出用針管50の側口52より下方の外面と環状に接触可能なシール形成可能部46が設けられている。
【0022】
具体的には、図5に示すように、薬剤流出阻害部材4は、排出ポート3内に形成された薬剤収納部34の全長とほぼ同じもしくは若干短い長さを有している。そして、薬剤流出阻害部材4は、後端より先端方向に延びる内腔部44を備えており、この内腔部44が、薬剤排出用針管50の先端部を収納する。また、この薬剤流出阻害部材4では、下端における内腔部44が最も広く、薬剤排出用針管50の誘導部を形成している。そして、薬剤流出阻害部材4の下端部は、先端に向かって縮径するテーパー部を備え、テーパー部45の上端に、薬剤排出用針管50の側口52より下方の外面と環状に接触可能なシール形成可能部46が形成されている。言い換えれば、薬剤排出用針管50は、側口52が、シール形成可能部46より上方となる位置まで、針管受入部41の内腔部44内に侵入可能であり、側口52より若干下方となる部分の外面とシール形成可能部46が環状に接触することにより、側口52からの薬剤の流出を阻害している。
【0023】
そして、内腔部44は、薬剤排出用針管50の先端が、針管受入部41の上端内面に到達不能なものとなっている。このため、侵入した薬剤排出用針管50の先端は、針管受入部の内面に強く当接することがなく、作業時に損傷を受けることがない。そして、作業者は、薬剤排出用針管を排出ポートに穿刺しても、薬剤が流出しないこと、また、薬剤排出用針管50が、薬剤流出阻害部材4内に侵入し、その外面が薬剤排出用針管50の内腔部の内面と接触するため、通常の穿刺操作時の感触と異なることにより、排出ポートの破断可能部が未破断であることを認識する。
そして、流通規制部の破断可能部が未破断の状態(図3の状態)における薬剤排出用針管の排出ポートへの穿刺可能長さは、通常行われる穿刺長より、短いものであることが好ましい。これにより、薬剤排出用針管が、排出ポートに通常の長さ分刺入できないものとなるので、作業者は、排出ポートの破断可能部が未破断状態であった場合、そのことをより容易に認識する。
【0024】
また、この実施例の薬剤流出阻害部材4では、先端部43は、半球状となっている。このようにすることにより、破断可能部の破断後の内側エッジ部に引っかかりにくい形状となっている。そして、薬剤流出阻害部材4は、破断可能部31cの破断後、ポート本体部31より流出可能なものとなっている。特に、薬剤流出阻害部材4は、ポート本体部より流出し、容器本体2内の薬液面付近に浮上するものであることが好ましい。
また、薬剤流出阻害部材は、上記のタイプのものに限定されるものではなく、例えば、図6ないし図8に示す排出ポート3aが備えている薬剤流出阻害部材4aのようなタイプのものであってもよい。
この実施例の薬剤流出阻害部材4aでは、針管受入部41aは、下端が開口した中空部44aと、中空部44aの下端開口を封止しかつ薬剤排出用針管50による刺通が可能なシール部材47を備えている。先端部43およびシャフト部42については、上述したものと同じである。
【0025】
針管受入部41a内に形成される内腔部(中空部)44aは、ほぼ同一内径にて所定長延びる内腔部下部と、先端方向に向かって縮径する内腔部上部を備えている。なお、内腔部は、その全体が、下端より先端方向に向かって縮径するものであってもよい。そして、針管受入部41aの下端開口は、シール部材47によりシールされており、内腔部44aは、空隙となっている。そして、シール部材47は、図8に示すように、薬剤排出用針管50により刺通可能であり、かつ、少なくとも、薬剤排出用針管50の側口52の全体が、内腔部44a内となる位置まで、針管受入部41の内腔部44a内に侵入可能なものとなっている。さらに、この実施例のものでは、シール部材47は、刺通された薬剤排出用針管50の側面と環状に接触し、ほぼ液密状態を形成できるものであることが好ましい。さらに、シール部材47は、刺通された薬剤排出用針管50の抜去後において、刺通部(穿刺孔)より薬剤が、内腔部44a内への流入を阻害できる程度の再シール性を有することが好ましい。また、シール部材47は、薬剤排出用針管50による刺通抵抗もあまり高くないものであることが好ましい。
【0026】
シール部材47としては、穿刺孔を密封し、液密状態を保持する機能を有するものであることが好ましく、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム等のゴム材質、またはスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロック共重合体等の熱可塑性エラストマーなどの弾性材料、さらには、樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル)の薄膜シートの下面もしくは上面に、上述した弾性材料の被膜を設けたものなどが使用できる。
また、薬剤流出阻害部材としては、図9ないし図11に示す排出ポート3bが備えている薬剤流出阻害部材4bのようなタイプのものであってもよい。
この実施例の薬剤流出阻害部材4bでは、針管受入部41bは、下端が開口した内腔部を有するとともに、内腔部に充填された薬剤排出用針管50が刺入可能な弾性部材44bを備えている。先端部43およびシャフト部42については、上述したものと同じである。この薬剤流出阻害部材4bでは、針管受入部41bは中実であり、かつ、内部は、薬剤排出用針管50が刺入可能かつ刺入した薬剤排出用針管50の側口52を閉塞可能な弾性材料により形成されている。
【0027】
この実施例の薬剤流出阻害部材4bにおいても内腔部は、ほぼ同一内径にて所定長延びる内腔部下部と、先端方向に向かって縮径する内腔部上部を備えている。なお、内腔部は、その全体が、下端より先端方向に向かって縮径するものであってもよい。そして、針管受入部41b内には、弾性部材44bが充填されており、その下端開口をシールするとともに、針管受入部41b内を実質的に空隙のない中実なものとしている。そして、弾性部材44bは、図11に示すように、薬剤排出用針管50が刺入可能であり、かつ、少なくとも、薬剤排出用針管50の側口52の全体が、弾性部材44b内となる位置まで、侵入可能なものとなっている。さらに、弾性部材44bは、刺入した薬剤排出用針管50の側面と接触し、ほぼ液密状態を形成できるものであることが好ましい。
弾性部材44bとしては、薬剤排出用針管50の刺入抵抗が低く、かつ、シール性を有するものであることが好ましく、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム等のゴム材質、またはスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロック共重合体等の熱可塑性エラストマーなどでありかつ低粘弾性のものが好適に使用される。
【0028】
また、排出ポートとしては、図12ないし図14に示すようなタイプの排出ポート3cであってもよい。
この実施例の排出ポート3cでは、ポート本体部16は、先端側より基端方向に延びる破断可能部15と、破断可能部15を挟むようにそれぞれ設けられるとともに容器本体2の一方の内面に固着された第1の応力付与部21および容器本体2の他方の内面に固着された第2の応力付与部22とを備え、第1の応力付与部21および第2の応力付与部22が、操作部を構成している。そして、薬液室11の押圧時の容器本体2と固定された第1の応力付与部21および第2の応力付与部22の広がりにより破断可能部15は、破断し、ポート本体部16内を容器本体2内と連通させるものとなっている。この実施例の排出ポート3cと上述した排出ポート3との相違は、ポート本体部の形態の相違のみである。そして、この実施例の排出ポート3cにおいても、内部に薬剤流出阻害部材4が収納されている。なお、薬剤流出阻害部材としては、上述したいずれのタイプのものを用いてもよい。
排出ポート3cは、図12ないし図14に示すように、中空部を有するポート本体部16と、ポート本体部16に設けられた破断可能部15(解除可能な区画部を形成する)と、第1の応力付与部21と、第2の応力付与部22とを備えている。また、ポート本体部16の基端部には、封止部19を備える排出口17が取り付けられる取付部が形成されている。また、ポート本体部16の基端部は、容器本体2に取り付け可能なように破断可能部より基端側にある程度の長さを有している。
【0029】
排出ポート3cは、ポート本体部16とポート本体部16の先端部付近を基端として延びる第1の応力付与部21(言い換えれば、破断力付与部)及び第2の応力付与部22(言い換えれば、破断力付与部)とを有するポート本体部16と、第1および第2の応力付与部21,22が広げられたときに破断し、ポート本体部16を薬液室と連通させる破断可能部15と、第1の応力付与部21を容器本体2の薬液室を形成する一方のシートの内面に固定した第1の固定部と、第2の応力付与部22を薬液室を形成する他方のシートの内面に固定した第2の固定部と、薬剤排出用針管を穿刺可能な針管封止部を備えている。破断可能部15は、薬液室の押圧時の容器本体2との第1の固定部と第2の固定部間の広がりにより破断するものとなっている。
【0030】
ポート本体部16は、先端部が閉塞され基端部が開口した筒状部分であり、この実施例において、基端側から順に、フランジ部と、第1の円筒部と、第1の円筒部と連続し先端側に向かってテーパー状に縮径するテーパー部と、テーパー部と連続する第2の円筒部と、第2の円筒部と連続する閉塞部(先端部)とからなる。先端部の形状は、ドーム形状、円錐形状、円錐台形状であることが好ましく、特に、ドーム形状、円錐台形状であることが好ましい。この実施例では、閉塞部は、ドーム形状となっている。
ポート本体部の容積は、1〜30mlであることが好ましい。ポート本体部の長さは、20〜100mmであることが好ましい。また、フランジ部の基端側は、封止部19を取り付けるキャップ部17aを固定する固定部が形成されている。封止部19としては、上述した封止部32が好適に使用できる。キャップ部17aは、ポート本体部の固定部に対して、超音波融着、高周波融着、熱融着等により固定される。
【0031】
そして、この実施例では、第1の応力付与部21および第2の応力付与部22は、図12ないし図14に示すように、ポート本体部16の破断可能部付近を基端として延出するとともに、先端は、自由端となっている。第1の応力付与部21および第2の応力付与部22は、両者間を開く力が付与されたときに、その力を破断可能部を破断するための応力に変換する機能を備えている。また、第1の応力付与部21と第2の応力付与部22とは向かい合うように形成されていることが好ましい。また、第1の応力付与部21と第2の応力付与部22の本体部は縦長の矩形状に形成されていることが好ましい。
【0032】
具体的には、この実施例の排出ポート3cでは、第1の応力付与部21、第2の応力付与部22は、図12ないし図14に示すように、縦長の平板部21a,22aと、平板部の両側に形成された側壁部21c、22cとを備えている。さらに、第1の応力付与部21と第2の応力付与部22は、ポート本体部16の軸方向に延びるように設けられている。そして、第1の応力付与部21と第2の応力付与部22とは、側壁部分が対向するものとなっている。そして、第1の応力付与部21と第2の応力付与部22は、向かい合いかつ若干離間するように設けられている。また、第1の応力付与部21および第2の応力付与部22の先端(他端)は、自由端となっていることが好ましい。
【0033】
さらに、第1の応力付与部21および第2の応力付与部22は、図12および図13に示すように、向かい合うそれぞれの面に設けられ、相互に当接しない位置に配置されたリブ21d,22dを備えていることが好ましい。具体的には、第1の応力付与部21と第2の応力付与部22には、それらの基端部から先端側に向かって延びるリブ21d,22dが設けられていることが好ましい。
また、平板部21a,22aの外面には、容器本体2の内面に接合される平面部21b,22bが形成されていることが好ましい。平面部21b,22bは、矩形状に形成され接合面が平坦に形成されている。平面部21b,22bは、第1の応力付与部21と第2の応力付与部22の基端部付近から先端まで形成されている。そして、容器本体2の内面に接合される平面部21b,22bは、その少なくとも一部が、容器本体2の内面に固着可能な材料により形成されている。具体的には、容器本体2の内面に接合される平面部21b,22bは、その一部若しくは全体が、容器本体2の形成材料(特に、容器本体2の内面側を形成する形成材料)と相溶性のある樹脂により形成されていることが好ましい。
【0034】
このような構成により、第1の応力付与部21と第2の応力付与部22を容器本体2の内面に確実に接合することができる。容器本体2と相溶性のある樹脂としては、上述したものであることが好ましい。相溶性のある樹脂は、軟質バッグの構成材料と同一もしくは近似した材料であることが好ましい。相溶性のある樹脂層は、本発明の実施例では、2色成形により作製されていることが好ましい。なお、第1の応力付与部もしくは第2の応力付与部のすべてを薬剤容器の軟質バッグと相溶性のある樹脂により作製してもよい。相溶性のある樹脂層は軟質バッグの内面と接合し易いように平坦に作製されていることが好ましい。また、第1の応力付与部21と第2の応力付与部22とは、第1の応力付与部21と第2の応力付与部22の間において若干離間して形成されている。
【0035】
そして、この実施例の排出ポート3cを備える医療用容器には、第1の応力付与部21の平面部21bの全体もしくは一部が、容器本体2のシートの内面と接合されることにより第1の固定部が形成され、同様に、第2の応力付与部22の平面部22bの全体もしくは一部が、容器本体2のシートの内面と接合されることにより第2の固定部が形成される。このため、第1の応力付与部及び第2の応力付与部が、薬液室の押圧時の容器本体の第1の応力付与部および第2の応力付与部の固定部間の広がりに追従して広がり、後述する破断可能部を、一方のシート側及び他方のシート側に開き破断する。
【0036】
第1の応力付与部21の平面部21b及び第2の応力付与部22の平面部22bと容器本体2の各シートの内面との接合は、超音波融着、高周波融着、熱融着等により行われることが好ましい。具体的に、排出ポート3cを図11に示すような位置に配置した後、容器本体2の一方のシート及び他方のシート面の両面側からシール金型により挟持しヒートシールすることにより行われることが好ましい。
この実施例の排出ポート3cを備える医療用容器では、医療用容器の薬液室を押圧することにより薬液室を膨らませると、この膨らみ(第1の固定部と第2の固定部の開き)に連動して、第1の応力付与部21と第2の応力付与部22とが一方のシート及び他方のシート方向に開き、まず、破断可能部15の先端側部分が破断され、次いで、第1の応力付与部側部分および第2の応力付与部側部分が破断される。これにより、ポート本体部16は開封され、ポート本体部16は薬液室と連通し、薬剤流出阻害部材4はポート本体より流出し、排出ポート内の薬剤は、容器本体2の薬液室の薬剤と混合される。
【0037】
また、排出ポートとしては、上述したような開通可能部が破断可能部により形成されているものに限定されるものではない。例えば、図15に示す排出ポート3dのように、ポート本体部31と別部材により形成された操作部38を備え、操作部38が、操作部を側面から押すことにより離脱可能に、ポート本体部31の上端開口部に固定されたものであってもよい。そして、この実施例の排出ポート3dでは、操作部38とポート本体部31間には、リング状シール部材39が配置されており、両者間を液密状態としている。また、シール部材39は、操作部38またはポート本体部31に固定されていることが好ましい。
【0038】
上述した全ての実施例におけるポート本体部、薬剤流出阻害部材、キャップ部の形成材料としては、硬質または半硬質樹脂が好適である。ポート本体部の形成材料としては、超音波融着、ヒートシールなどにより容器本体に融着可能なものが好ましい。また、排出口33のキャップ部33aの形成材料としては、硬質または半硬質樹脂が好適である。さらに、キャップ部33aの形成材料としては、超音波融着、高周波融着などによりポート本体部31に融着可能なものが好ましい。また、ポート本体部31は、図3に示すように、後端にキャップ部の先端部を収納する環状凹部を有するフランジ部31dを備えることが好ましい。また、キャップ部33aは、上記フランジ部31dと当接するフランジ部33b、上記ポート本体部の環状凹部に収納される先端部33cを備えている。そして、ポート本体部31とキャップ部33aは両者のフランジ部の当接面において、液密に固着されている。
【0039】
ポート本体部、薬剤流出阻害部材、キャップ部の形成材料としては、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマーなど、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど、スチレン系樹脂、例えば、ポリスチレン、MS樹脂(メタクリレート−スチレン共重合体)、MBS樹脂(メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体)など、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、例えば、6ナイロン,66ナイロンなどが使用される。
封止部(弾性部材)32、シール部材39の形成材料としては、合成ゴム、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴムなど、天然ゴム、例えば、ラテックスゴム、スチレン系エラストマー、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー、スチレン−エチレンブチレン−スチレンコポリマーなど、ウレタン系エラストマー、例えば、熱可塑性ポリエーテルポリウレタン、熱可塑性ポリエステルポリウレタンなどが使用できる。
また、図示する実施例の医療用容器では、薬液室と連通する混注ポート7を備えているが、混注ポートを備えないものであってもよい。混注ポート7としては、公知のものが使用できる。
【0040】
次に、図16に示す本発明の他の実施例の医療用容器20について説明する。
この実施例の医療用容器20は、解除可能な区画部9により区分された2つの薬液室11,12と、それぞれの薬液室に収納された薬剤と、第1の薬液室11と連通し、薬剤排出用針管の刺入が可能な排出ポート3を備えている。そして、上述した医療用容器1と同様に、排出ポート3内には、排出ポート3の破断可能部の未破断時における薬剤流出を阻害するための薬剤流出阻害部材4が収納されている。排出ポートおよび薬剤流出阻害部材としては、上述したすべてのタイプのものが使用できる。
この実施例の医療用容器20では、シート状筒状体により形成された容器本体102を備え、この容器本体102には、内部収納部を区画し、解除可能な区画部を構成する仕切部9が形成されており、第1の薬液室11と第2の薬液室12に区画されている。また、この医療用容器20は、容器本体102の第1の薬液室11に、薬剤排出ポート3が取り付けられている。そして、第1の薬液室11には第1の薬液が収納され、第2の薬液室12には第2の薬液が、収納されている。
【0041】
医療用容器1の容器本体102としては、上述した容器本体2にて説明したものが好適に使用できる。
そして、容器本体102は、仕切部9を備えており、これにより、内部が2室に区分されている。仕切部9は、容器本体102を横方向全体に横切る剥離可能な仕切用弱シール部9aと、弱シール部9aの両端部の分岐部内に設けられた実質的に剥離不能な強シール部9bを備えている。そして、弱シール部は、加熱プレスにより行うことが好ましく、金型の温度は、容器本体102の形成材料の溶融温度より10℃以上低い温度で行うことにより形成することができる。
また、医療用容器20の容積は、内部に収納する薬剤の種類等によって異なるが、通常は、第1の薬液室の容積が、50〜5000ml程度であることが好ましく、第2の薬液室の容積が、50〜5000ml程度であることが好ましい。
それぞれの薬液室に収納される薬剤としては、薬液、散剤などが考えられる。特に、本発明の医療用容器では、第1の薬液は、薬液であることが好ましい。第2の薬液は、薬液もしくは散剤いずれであってもよい。好ましくは、薬液である。第1の薬液および第2の薬液の組合せとしては、例えば、アミノ酸電解質液とブドウ糖液、ブドウ糖液と重曹液等の組み合わせが挙げられる。
【0042】
そして、この実施例の医療用容器20では、排出ポート3の操作部31bの移動を抑制するとともに剥離可能な操作部移動抑制用弱シール部26を備えている。操作部移動抑制用弱シール部26は、排出ポート3の上方を取り囲むように形成されている。この操作部移動抑制用弱シール部26により、第1の薬液室11から隔離された第3室25が形成されている。この第3室25は、空室となっている。しかし、第3室には、所定の液体(例えば、生理食塩水)が入れられていてもよい。また、第3室は、乾燥状態でもよいが、滅菌のための微量の液体が充填されていてもよい。さらに、操作部移動抑制用弱シール部26に若干の水蒸気や薬剤が通る通路を形成し、第1の薬液室11と上記のようなレベルで連通するものであってもよい。操作部移動抑制用弱シール部26は、シート材を帯状に熱シール(熱融着、高周波融着、超音波融着等)することにより形成することができる。
【0043】
操作部移動抑制用弱シール部26は、図16に示す実施例では、反転したU字形状に形成されている。また、操作部移動抑制用弱シール部は、短辺が上側となる台形状、排出ポートが頂点となる三角形状、排出ポートが底辺となる三角形状、四角形状等の多角形状、略半円形状、略半楕円形状であってもよい。
また、操作部移動抑制用弱シール部26のシール強度は、仕切用弱シール部9aのシール強度と同等、若干大きいもしくは若干小さいものであることが好ましい。このようなものであれば、仕切用弱シール部9aが剥離されない状態にて薬液が投与されることがなく、かつ、容易な操作で投与準備を行うことができる。
【0044】
また、操作部移動抑制用弱シール部26は、第1の薬液室11を押圧することにより、仕切用弱シール部9aの剥離とほぼ同時もしくは続いて操作部移動抑制用弱シール部26が剥離するものであることが好ましい。このようにすることにより、容器本体102の第1の薬液室11を圧迫したとき、操作部移動抑制用弱シール部26が仕切用弱シール部9aより先に剥離することがない。
また、医療用容器20は、第2の薬液室12を押圧することにより、仕切用弱シール部9aの剥離に続いて操作部移動抑制用弱シール部26が剥離するものであってもよい。このようなものであれば、容器本体102の第2の薬液室12を圧迫し、仕切用弱シール部9aの剥離時の流体の力により、操作部移動抑制用弱シール部26を剥離させることができる。
【0045】
そして、この医療用容器20では、排出ポート3の操作部31bの先端部は、操作部移動抑制用弱シール部26に近接もしくは当接している。このため、もし、仕切用弱シール部9aの剥離および操作部移動抑制用弱シール部26が剥離される前に、操作部31bの破断作業が行われたとしても、操作部31bは、操作部移動抑制用弱シール部26により移動が規制され、これにより、排出ポート3内の薬剤流出阻害部材4も実質的に移動できないため、薬剤排出用針管の接続ができないものとなっている。この医療用容器20における通常操作としては、第1の薬液室11もしくは第2の薬液室12を押圧することにより、仕切用弱シール部9aの剥離および操作部移動抑制用弱シール部26の剥離を行い、第1の薬液と第2の薬液が混合された後、排出ポート3の操作部を操作して破断することにより、排出ポート内の薬剤が、容器本体内の薬剤と混合されるとともに、薬剤流出阻害部材4が上方に移動することにより、針管の排出口への接続が可能となる。
【0046】
また、操作部移動抑制用弱シール部26は、上記のタイプのものに限定されるものではなく、例えば、図17に示すに示す医療用容器30のように、操作部移動抑制用弱シール部26aは、排出ポート3の操作部31bの先端部の上部近傍に位置する部分に形成され、破断後の操作部の移動を抑制するものの、容器本体102に第3室を形成しないものであってもよい。この場合、操作部移動抑制用弱シール部26aは、図17に示すように、排出ポート3の操作部31bの先端部の上部を取り囲む形態であることが好ましい。また、操作部移動抑制用弱シール部は、図18に示す医療用容器40のように、小さな弱シールが点在することにより、操作部移動抑制用弱シール部26bを形成するものであってもよい。
【0047】
次に、図19に示す本発明の他の実施例の医療用容器60について説明する。
図19は、本発明の医療用容器の他の実施例の正面図である。図20は、図19に示す医療用容器に使用される排出ポートの縦断面図である。
この実施例の医療用容器60は、上述した医療用容器1と同様に、可撓性材料により形成され、薬液が収納された容器本体2と、容器本体2に固定された排出ポート3eとを備える医療用容器である。
医療用容器60は、排出ポート3eの上方に設けられ、かつ、容器本体2を押圧することにより剥離可能な移動規制弱シール部27を備える。排出ポート3eは、薬剤8が収納された薬剤収納部を備えるポート本体部61と、ポート本体部61の端部を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管50(図5参照)の接続が可能な封止部32を有する排出口33と、ポート本体部61内に収納され、移動規制弱シール部の未剥離時にポート本体部61内に侵入した薬剤排出用針管50の先端部51(図5参照)を受け入れ可能、かつ、受け入れた針管50からの薬剤8の流出を阻害する薬剤流出阻害部材4cとを備える。移動規制弱シール部27は、薬剤流出阻害部材4cの先端部に近接もしくは当接する位置に設けられ、移動規制弱シール部27の未剥離時の薬剤流出阻害部材4cの移動を規制している。薬剤流出阻害部材4cは、移動規制弱シール部27の剥離完了もしくは移動規制弱シール部27の剥離完了と受け入れた針管50による先端方向への押圧により、ポート本体部61より流出するものとなっている。
【0048】
特に、この実施例における薬剤流出阻害部材4cは、容器本体2内とポート本体部61内との連通を開放可能に閉塞する閉塞部48と、閉塞部48より突出する先端部43と、排出口33側より侵入した薬剤排出用針管50の先端部51を受け入れ、かつ、受け入れた針管50により押圧される針管受入部41とを備える。また、薬剤8は、薬剤流出阻害部材4cの閉塞部48により閉塞されたポート本体部61内に収納されている。さらに、閉塞部48は、ポート本体部61の内面と液密状態にて摺動するシール部49を備えている。
この実施例の医療用容器60と上述した医療用容器1との相違点は、移動規制弱シール部27を備える点および排出ポートの構成であり、容器本体2等の基本構成は同じである。
【0049】
この実施例の医療用容器1では、排出ポート3eは、図20に示すように、ポート本体部61と、封止部32を有する排出口33と、ポート本体部61内を摺動可能に閉塞する閉塞部48を有する薬剤流出阻害部材4cを備えている。そして、薬剤収納部は、ポート本体部61内面と閉塞部48と封止部32により区画される空間により形成されており、この薬剤収納部に薬剤8が収納されている。
ポート本体部61は、先端から後端まで貫通した筒状部61aと、この筒状部61aの後端部に形成された拡径部61bを備える。ポート本体部61は、先端にて、開口したものとなっている。
【0050】
薬剤流出阻害部材4cの閉塞部48は、図20に示すように、ポート本体部61の開口端部を液密状態にシールするとともにポート本体部61内面を摺動するシール部49を備えている。具体的には、閉塞部48は、略円盤状に形成されるとともに、側面に環状シール部材(シール部)49が設けられている。図20に示すものでは、環状シール部材49は、閉塞部48の側面に形成された環状溝内にその内周側部分が収納されるとともに、外周側部分は露出し、ポート本体部61内面に液密状態にて密着し、かつ摺動可能である。また、薬剤流出阻害部材4cは、閉塞部48より先端方向に突出する先端部43を備えており、その肉厚は、先端方向に向かって薄くなっている。また、先端部43の先端は、図19に示すように、移動規制弱シール部27の内縁に到達もしくは内縁付近に位置し、移動規制弱シール部27により、薬剤流出阻害部材4cの先端方向(移動規制弱シール部27方向、閉塞部48がポート本体部61より離出する方向)への移動が規制されている。
【0051】
さらに、薬剤流出阻害部材4cは、図2ないし図5に示し上述した薬剤流出阻害部材4と同様に、排出口33側より侵入した薬剤排出用針管50の先端部51を受け入れる針管受入部41と、閉塞部48(先端部43)と針管受入部41とを連結するシャフト部42とを備えている。シャフト部42は、ほぼ直線状に延びる細径の中実のものとなっている。さらに、この実施例の薬剤流出阻害部材4の針管受入部41には、図5に示すものと同様に、侵入した薬剤排出用針管50の側口52より下方の外面と環状に接触可能なシール形成可能部46が設けられている。
【0052】
具体的には、図20(図5参照)に示すように、薬剤流出阻害部材4cの、先端部43を除く部分は、排出ポート3内に形成された薬剤収納部の全長とほぼ同じもしくは若干短い長さを有している。そして、薬剤流出阻害部材4cは、後端より先端方向に延びる内腔部44を備えており、この内腔部44が、これが薬剤排出用針管50の先端部を収納する。また、この薬剤流出阻害部材4cでは、下端における内腔部44が最も広く、薬剤排出用針管50の誘導部を形成している。そして、薬剤流出阻害部材4cの下端部は、先端に向かって縮径するテーパー部45を備え、テーパー部45の上端に、薬剤排出用針管50の側口52より下方の外面と環状に接触可能なシール形成可能部46が形成されている。言い換えれば、薬剤排出用針管50は、図5に示すものと同様に、側口52が、シール形成可能部46より上方となる位置まで、針管受入部41の内腔部44内に侵入可能であり、側口52より若干下方となる部分の外面とシール形成可能部46が環状に接触することにより、側口52からの薬剤の流出を阻害している。そして、薬剤流出阻害部材4cは、針管50がシール形成可能部46に当接することにより、針管50により、先端方向に押圧されるものとなっている。
【0053】
そして、内腔部44は、薬剤排出用針管50の先端が、針管受入部41の上端内面に到達不能なものとなっている。このため、侵入した薬剤排出用針管50の先端は、針管受入部の内面に強く当接することがなく、作業時に損傷を受けることがない。そして、作業者は、薬剤排出用針管を排出ポートに穿刺しても、薬剤が流出しないこと、また、薬剤排出用針管50が、薬剤流出阻害部材4c内に侵入し、その外面が薬剤排出用針管50の内腔部の内面と接触するため、通常の穿刺操作時の感触と異なることにより、移動規制弱シール部27が未剥離であることを認識する。
そして、この医療用容器60では、薬剤流出阻害部材4cは、移動規制弱シール部27が剥離された状態にて、刺入され、受け入れた針管50により、先端方向に押圧されることにより、閉塞部48は、先端方向に移動し、ポート本体部61と離脱する。これにより、ポート本体部61内と容器本体2内は、連通し、薬剤8は、容器本体2内の薬液と混合される。
【0054】
また、上述したような容器本体2が移動規制弱シール部27を備えるタイプの医療用容器において、薬剤流出阻害部材は、上記のタイプのものに限定されるものではなく、例えば、図21に示す排出ポート3fが備えている薬剤流出阻害部材4dのようなタイプのものであってもよい。
この実施例の薬剤流出阻害部材4dでは、図9ないし図11に示し上述した薬剤流出阻害部材4bと同様に、針管受入部41bは、下端が開口した内腔部を有するとともに、内腔部に充填された薬剤排出用針管50が刺入可能な弾性部材44bを備えている。閉塞部48,先端部43およびシャフト部42については、上述したものと同じである。
【0055】
この薬剤流出阻害部材4dでは、針管受入部41bは、中実であり、かつ、内部は、薬剤排出用針管50が刺入可能かつ刺入した薬剤排出用針管50の側口52を閉塞可能な弾性材料により形成されている。そして、針管受入部41bは、下端より先端方向に向かって縮径するものとなっている。針管受入部41b内には、弾性部材44bが充填されており、その下端開口をシールするとともに、針管受入部41b内を実質的に空隙のない中実なものとしている。そして、弾性部材44bは、図11に示したものと同様に、薬剤排出用針管50が刺入可能であり、かつ、少なくとも、薬剤排出用針管50の側口52の全体が、弾性部材44b内となる位置まで、侵入可能なものとなっている。さらに、弾性部材44bは、刺入した薬剤排出用針管50の側面と接触し、ほぼ液密状態を形成できるものであることが好ましい。
弾性部材44bとしては、薬剤流出阻害部材4bにおいて説明したものが、好適に使用できる。
そして、この排出ポート3fを有する医療用容器においても、薬剤流出阻害部材4dは、移動規制弱シール部27が剥離された状態にて、刺入され、受け入れた針管50により、先端方向に押圧されることにより、閉塞部48は、先端方向に移動し、ポート本体部61と離脱する。これにより、ポート本体部61内と容器本体2内は、連通し、薬剤8は、容器本体2内の薬液と混合される。
【0056】
また、上述したような容器本体2が移動規制弱シール部27を備えるタイプの医療用容器において、薬剤流出阻害部材は、例えば、図22に示す排出ポート3gが備えている薬剤流出阻害部材4eのようなタイプのものであってもよい。
この排出ポート3gでは、薬剤流出阻害部材4eは、容器本体2内とポート本体部61内との連通を開放可能に閉塞するとともに、ポート本体部61の内面と液密状態にて摺動するシール部73と、先端部72とを備える閉塞部材71と、閉塞部材71を押圧するための押圧部材81とからなり、押圧部材81は、閉塞部材71を押圧するための押圧用先端部43と、排出口側より侵入した薬剤排出用針管50の先端部51を受け入れ、かつ、受け入れた針管50により押圧される針管受入部41とを備える。薬剤8は、閉塞部材71により閉塞されたポート本体部61内に収納されている。
この実施例の薬剤流出阻害部材4eは、閉塞部材71と、閉塞部材71と別部材である押圧部材81とにより構成されている。
【0057】
薬剤流出阻害部材4eの閉塞部材71は、図22に示すように、ポート本体部61の開口端部を液密状態にシールするとともにポート本体部61内面を摺動するシール部73を備えている。具体的には、閉塞部材71の基端部は、略円盤状に形成されるとともに、側面に環状シール部材(シール部)73が設けられている。図22に示すものでは、環状シール部材73は、閉塞部71の基端部の側面に形成された環状溝内にその内周側部分が収納されるとともに、外周側部分は露出し、ポート本体部61内面に液密状態にて密着し、かつ摺動可能である。また、閉塞部材71は、先端方向に突出する先端部72を備えており、その肉厚は、先端方向に向かって薄くなっている。また、先端部72の先端は、移動規制弱シール部27の内縁に到達もしくは内縁付近に位置し、移動規制弱シール部27により、薬剤流出阻害部材4eの閉塞部材71の先端方向(移動規制弱シール部27方向、閉塞部材71がポート本体部61より離出する方向)への移動が規制されている。
【0058】
押圧部材81は、図22に示すように、また、図2ないし図5に示し上述した薬剤流出阻害部材4と同様に、排出口33側より侵入した薬剤排出用針管50の先端部51を受け入れる針管受入部41と、先端部43と針管受入部41とを連結するシャフト部42とを備えている。シャフト部42は、ほぼ直線状に延びる細径の中実のものとなっている。さらに、押圧部材81の針管受入部41には、図5に示すものと同様に、侵入した薬剤排出用針管50の側口52より下方の外面と環状に接触可能なシール形成可能部46が設けられている。
【0059】
具体的には、図22(図5参照)に示すように、押圧部材81は、排出ポート3g内に形成された薬剤収納部の全長とほぼ同じもしくは若干短い長さを有している。そして、押圧部材81は、後端より先端方向に延びる内腔部44を備えており、この内腔部44が、これが薬剤排出用針管50の先端部を収納する。また、この押圧部材81では、下端における内腔部44が最も広く、薬剤排出用針管50の誘導部を形成している。そして、押圧部材81の下端部は、先端に向かって縮径するテーパー部45を備え、テーパー部45の上端に、薬剤排出用針管50の側口52より下方の外面と環状に接触可能なシール形成可能部46が形成されている。言い換えれば、薬剤排出用針管50は、図5に示すものと同様に、側口52が、シール形成可能部46より上方となる位置まで、針管受入部41の内腔部44内に侵入可能であり、側口52より若干下方となる部分の外面とシール形成可能部46が環状に接触することにより、側口52からの薬剤の流出を阻害している。そして、押圧部材81は、針管50がシール形成可能部46に当接することにより、針管50により、先端方向に押圧されるものとなっている。
【0060】
そして、内腔部44は、薬剤排出用針管50の先端が、針管受入部41の上端内面に到達不能なものとなっている。このため、侵入した薬剤排出用針管50の先端は、針管受入部の内面に強く当接することがなく、作業時に損傷を受けることがない。そして、作業者は、薬剤排出用針管を排出ポートに穿刺しても、薬剤が流出しないこと、また、薬剤排出用針管50が、薬剤流出阻害部材4e内に侵入し、その外面が薬剤排出用針管50の内腔部の内面と接触するため、通常の穿刺操作時の感触と異なることにより、移動規制弱シール部27が未剥離であることを認識する。
そして、排出ポート3gを備える医療用容器では、押圧部材81は、移動規制弱シール部27が剥離された状態にて、刺入され、受け入れた針管50により、先端方向に押圧され、さらに、閉塞部材71が、この押圧部材81により押され、先端方向に移動し、ポート本体部61より離脱する。これにより、ポート本体部61内と容器本体2内は、連通し、薬剤8は、容器本体2内の薬液と混合される。
【0061】
そして、この実施例の医療用容器60では、移動抑制用弱シール部27は、排出ポート3eの上方を取り囲むように形成されている。この移動抑制用弱シール部27により、容器本体2内の薬液室11から隔離された薬剤室25が形成されている。この薬剤室25は、空室となっている。しかし、薬剤室25には、所定の液体(例えば、生理食塩水)が入れられていてもよい。また、薬剤室25は、乾燥状態でもよいが、滅菌のための微量の液体が充填されていてもよい。さらに、移動抑制用弱シール部27に若干の水蒸気や薬剤が通る通路を形成し、第1の薬液室11と上記のようなレベルで連通するものであってもよい。移動抑制用弱シール部27は、シート材を帯状に熱シール(熱融着、高周波融着、超音波融着等)することにより形成することができる。
【0062】
移動抑制用弱シール部27は、図19に示す実施例では、反転したU字形状に形成されている。また、操作部移動抑制用弱シール部は、短辺が上側となる台形状、排出ポートが頂点となる三角形状、排出ポートが底辺となる三角形状、四角形状等の多角形状、略半円形状、略半楕円形状であってもよい。また、移動抑制用弱シール部27は、容器本体2の薬液室11を押圧することにより、剥離するものとなっている。
また、移動抑制用弱シール部27は、上記のタイプのものに限定されるものではなく、例えば、図17に示すに示す医療用容器30のように、移動抑制用弱シール部は、薬剤流出阻害部の先端部上部近傍に位置する部分に形成され、薬剤流出阻害部の移動を抑制するものの、容器本体内に区画された薬剤室を形成しないものであってもよい。この場合、移動抑制用弱シール部は、図17に示すように、排出ポート3の薬剤流出阻害部の先端部の上部を取り囲む形態であることが好ましい。また、操作部移動抑制用弱シール部は、図18に示す医療用容器40のように、小さな弱シールが点在することにより、移動抑制用弱シール部を形成するものであってもよい。
【0063】
次に、図23に示す本発明の他の実施例の医療用容器70について説明する。
図23は、本発明の医療用容器の他の実施例の正面図である。図24は、図23に示す医療用容器に使用される排出ポートの縦断面図である。
この実施例の医療用容器70は、上述した医療用容器1と同様に、可撓性材料により形成され、薬液が収納された容器本体2と、容器本体2に固定された排出ポート3hとを備える医療用容器である。
医療用容器70は、排出ポート3hの上方に設けられ、かつ、容器本体2を押圧することにより剥離可能な移動規制弱シール部27を備える。排出ポート3hは、薬剤8が収納された薬剤収納部を備えるポート本体部61と、ポート本体部61の他端側を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管50(図5参照)の接続が可能な封止部32を有する排出口33と、ポート本体部61内に収納され、移動規制弱シール部の未剥離時にポート本体部61内に侵入した薬剤排出用針管50の先端部51(図5参照)を受け入れ可能、かつ、受け入れた針管50からの薬剤8の流出を阻害する薬剤流出阻害部材4fとを備える。移動規制弱シール部27は、薬剤流出阻害部材4fの先端部に近接もしくは当接する位置に設けられ、移動規制弱シール部27の未剥離時の薬剤流出阻害部材4fの移動を規制している。薬剤流出阻害部材4fは、移動規制弱シール部27の剥離完了により、ポート本体部61より流出するものとなっている。すなわち、移動抑制用弱シール部27は、剥離操作が行われるまでに薬液室11と排出ポート3が連通することを阻害する連通阻害用弱シール部としても機能するものとなっている。
【0064】
この実施例の医療用容器70と上述した医療用容器1との相違点は、移動規制用弱シール部27を備える点および排出ポートの構成であり、容器本体2等の基本構成は同じである。
そして、この実施例の医療用容器70では、上述した医療用容器60と同様に、移動抑制用弱シール部27は、排出ポート3hの上方を取り囲むように形成されている。この移動抑制用弱シール部27により、容器本体2内の薬液室11から隔離された薬剤室25が形成されている。この薬剤室25はポート本体部61と連通し、ポート本体部61内と連通する薬剤室となっており、そこに、薬剤8が収納されている。つまり、薬剤8は、その一部がポート本体部61内に収納され、残りは、移動抑制用弱シール部27に区画された薬剤室25に収納されている。また、薬剤8は、ポート本体部61内および薬剤室25内を移動可能となっている。
移動抑制用弱シール部27は、シート材を帯状に熱シール(熱融着、高周波融着、超音波融着等)することにより形成することができる。移動抑制用弱シール部27は、図23に示す実施例では、反転したU字形状に形成されている。また、移動規制用弱シール部は、短辺が上側となる台形状、排出ポートが頂点となる三角形状、排出ポートが底辺となる三角形状、四角形状等の多角形状、略半円形状、略半楕円形状であってもよい。また、移動抑制用弱シール部27は、容器本体2の薬液室11を押圧することにより、剥離するものとなっている。
また、排出ポート3hは、ポート本体部61とポート本体部61に収納され、かつ、先端部がポート本体部61より突出した薬剤流出阻害部材4fとを備える。ポート本体部61は、先端から後端まで貫通した筒状部61aと、この筒状部61aの後端部に形成された拡径部61bを備える。ポート本体部61は、先端にて、開口したものとなっている。
【0065】
図24に示すように、薬剤流出阻害部材4fは、排出ポート3e内の内腔部の全長より長く、その先端側部分が、ポート本体部61の先端開口より、突出している。そして、薬剤流出阻害部材4fの突出する先端側部分の先端部43は、移動規制弱シール部27の内縁に近接もしくは当接するように配置されている。
薬剤流出阻害部材4fは、針管受入部41と先端部43を連結するシャフト部42とを備えている。そして、薬剤流出阻害部材4fの針管受入部41は、後端より先端方向に延びる内腔部44を備えており、この内腔部44が、これが薬剤排出用針管50の先端部を収納する。内腔部44は、上述した薬剤流出阻害部材4にて説明したものと同じである。
【0066】
なお、上述した実施例の医療用容器において、薬剤流出阻害部材は、図25に示す排出ポート3iが備えている薬剤流出阻害部材4gのようなタイプのものであってもよい。
薬剤流出阻害部材4gは、針管受入部41aと先端部43を連結するシャフト部42とを備えている。この実施例の薬剤流出阻害部材4gでは、針管受入部41aは、下端が開口した中空部44aと、中空部44aの下端開口を封止しかつ薬剤排出用針管50による刺通が可能なシール部材47を備えている。
針管受入部41a内に形成される内腔部44aは、下端より先端方向に向かって縮径するものとなっている。そして、針管受入部41aの下端開口は、シール部材47によりシールされており、中空部44aは、空隙となっている。そして、シール部材47は、図8に示したものと同様に、薬剤排出用針管50により刺通可能であり、かつ、少なくとも、薬剤排出用針管50の側口52の全体が、内腔部44a内となる位置まで、針管受入部41の内腔部44a内に侵入可能なものとなっている。さらに、この実施例のものでは、シール部材47は、刺通された薬剤排出用針管50の側面と環状に接触し、ほぼ液密状態を形成できるものであることが好ましい。さらに、シール部材47は、刺通された薬剤排出用針管50の抜去後において、刺通部(穿刺孔)より薬剤が、内腔部44a内への流入を阻害できる程度の再シール性を有することが好ましい。また、シール部材47は、薬剤排出用針管50による刺通抵抗もあまり高くないものであることが好ましい。シール部材47としては、薬剤流出阻害部材4aにて説明したものが好適に使用できる。
また、ポート本体部61の先端部が閉塞されないこの実施例のタイプの排出ポートにおいても、薬剤流出阻害部材の針管受入部としては、図9ないし図11に示し上述した薬剤流出阻害部材4bと同様に、針管受入部41bは、下端が開口した内腔部を有するとともに、内腔部に充填された薬剤排出用針管50が刺入可能な弾性部材44bを備えているものであってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 医療用容器
2 容器本体
3 排出ポート
4 薬剤流出阻害部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性材料により形成され、薬液が収納された容器本体と、前記容器本体に固定された排出ポートとを備える医療用容器であって、
前記排出ポートは、薬剤が収納された薬剤収納部と、該薬剤収納部の一端側を閉塞し、かつ、開通操作により前記容器本体内と前記薬剤収納部の連通を可能とする開通可能部および前記開通可能部の開通操作を行うための操作部とを備えるポート本体部と、前記ポート本体部の前記薬剤収納部の他端側を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管の接続が可能な封止部を有する排出口と、前記薬剤収納部内に収納され、前記開通可能部の未開通時に前記薬剤収納部内に侵入した前記薬剤排出用針管の先端部を受け入れ可能、かつ、受け入れた前記針管からの前記薬剤の流出を阻害する薬剤流出阻害部材とを備えることを特徴とする医療用容器。
【請求項2】
前記薬剤流出阻害部材は、前記排出口側より侵入した前記薬剤排出用針管の先端部を受け入れるための中空状もしくは中実状の針管受入部を備えている請求項1に記載の医療用容器。
【請求項3】
前記薬剤流出阻害部材の前記針管受入部は、中空であり、かつ侵入した前記薬剤排出用針管の側口より下方の外面と環状に接触可能なシール形成可能部を備えている請求項2に記載の医療用容器。
【請求項4】
前記薬剤流出阻害部材の前記針管受入部は、中空であり、下端が開口した中空部と、前記中空部の下端開口を封止しかつ前記薬剤排出用針管による刺通が可能なシール部材を備えている請求項2に記載の医療用容器。
【請求項5】
前記薬剤流出阻害部材の前記針管受入部は、中実であり、かつ、前記薬剤排出用針管が刺入可能かつ刺入した前記薬剤排出用針管の側口を閉塞可能な弾性部材を備えている請求項2に記載の医療用容器。
【請求項6】
前記薬剤流出阻害部材は、前記薬剤収納部の前記一端側の閉塞部に当接可能な先端部を備えている請求項1ないし5のいずれかに記載の医療用容器。
【請求項7】
前記薬剤流出阻害部材は、前記開通可能部の開通操作後、前記ポート本体部より流出可能である請求項1ないし6のいずれかに記載の医療用容器。
【請求項8】
前記開通可能部は、破断可能部である請求項1ないし7のいずれかに記載の医療用容器。
【請求項9】
可撓性材料により形成され、薬液が収納された容器本体と、前記容器本体に固定された排出ポートとを備える医療用容器であって、
前記医療用容器は、前記排出ポートの上方に設けられ、かつ、前記容器本体を押圧することにより剥離可能な移動規制弱シール部を備え、
前記排出ポートは、薬剤が収納された薬剤収納部を備えるポート本体部と、前記ポート本体部の端部を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管の接続が可能な封止部を有する排出口と、前記ポート本体部内に収納され、前記移動規制弱シール部の未剥離時に前記ポート本体部内に侵入した前記薬剤排出用針管の先端部を受け入れ可能、かつ、受け入れた前記針管からの前記薬剤の流出を阻害する薬剤流出阻害部材とを備え、前記移動規制弱シール部は、前記薬剤流出阻害部材の先端部に近接もしくは当接する位置に設けられ、前記移動規制弱シール部の未剥離時の前記薬剤流出阻害部材の移動を規制しており、前記薬剤流出阻害部材は、前記移動規制弱シール部の剥離完了もしくは前記移動規制弱シール部の剥離完了と受け入れた前記針管による先端方向への押圧により、前記ポート本体部より流出することを特徴とする医療用容器。
【請求項10】
前記薬剤流出阻害部材は、前記容器本体内と前記ポート本体部内との連通を開放可能に閉塞する閉塞部と、前記閉塞部より突出する前記先端部と、前記排出口側より侵入した前記薬剤排出用針管の先端部を受け入れ、かつ、受け入れた針管により押圧される針管受入部とを備え、前記薬剤は、前記薬剤流出阻害部材の前記閉塞部により閉塞された前記ポート本体部内に収納されており、さらに、前記閉塞部は、前記ポート本体部の内面と液密状態にて摺動するシール部を備えている請求項9に記載の医療用容器。
【請求項11】
前記薬剤流出阻害部材は、前記容器本体内と前記ポート本体部内との連通を開放可能に閉塞するとともに、前記ポート本体部の内面と液密状態にて摺動するシール部と、前記先端部とを備える閉塞部材と、前記閉塞部材を押圧するための押圧部材とからなり、前記押圧部材は、前記閉塞部材を押圧するための押圧用先端部と、前記排出口側より侵入した前記薬剤排出用針管の先端部を受け入れ、かつ、受け入れた針管により押圧される針管受入部とを備え、前記薬剤は、前記閉塞部材により閉塞された前記ポート本体部内に収納されている請求項9に記載の医療用容器。
【請求項12】
前記医療用容器は、前記移動規制弱シール部により区画され、かつ、前記ポート本体部内と連通する薬剤室を備え、前記薬剤は、前記ポート本体部材および前記薬剤室に収納されている請求項9に記載の医療用容器。
【請求項13】
前記薬剤流出阻害部材は、侵入した前記薬剤排出用針管の側口より下方の外面と環状に接触可能なシール形成可能部を備えている請求項9ないし12のいずれかに記載の医療用容器。
【請求項14】
前記薬剤流出阻害部材は、下端が開口した中空部と、前記中空部の下端開口を封止しかつ前記薬剤排出用針管による刺通が可能なシール部材を備えている請求項9ないし13のいずれかに記載の医療用容器。
【請求項15】
前記薬剤流出阻害部材は、中実であり、かつ、前記薬剤排出用針管が刺入可能かつ刺入した前記薬剤排出用針管の側口を閉塞可能な弾性部材を備えている請求項9ないし12のいずれかに記載の医療用容器。
【請求項1】
可撓性材料により形成され、薬液が収納された容器本体と、前記容器本体に固定された排出ポートとを備える医療用容器であって、
前記排出ポートは、薬剤が収納された薬剤収納部と、該薬剤収納部の一端側を閉塞し、かつ、開通操作により前記容器本体内と前記薬剤収納部の連通を可能とする開通可能部および前記開通可能部の開通操作を行うための操作部とを備えるポート本体部と、前記ポート本体部の前記薬剤収納部の他端側を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管の接続が可能な封止部を有する排出口と、前記薬剤収納部内に収納され、前記開通可能部の未開通時に前記薬剤収納部内に侵入した前記薬剤排出用針管の先端部を受け入れ可能、かつ、受け入れた前記針管からの前記薬剤の流出を阻害する薬剤流出阻害部材とを備えることを特徴とする医療用容器。
【請求項2】
前記薬剤流出阻害部材は、前記排出口側より侵入した前記薬剤排出用針管の先端部を受け入れるための中空状もしくは中実状の針管受入部を備えている請求項1に記載の医療用容器。
【請求項3】
前記薬剤流出阻害部材の前記針管受入部は、中空であり、かつ侵入した前記薬剤排出用針管の側口より下方の外面と環状に接触可能なシール形成可能部を備えている請求項2に記載の医療用容器。
【請求項4】
前記薬剤流出阻害部材の前記針管受入部は、中空であり、下端が開口した中空部と、前記中空部の下端開口を封止しかつ前記薬剤排出用針管による刺通が可能なシール部材を備えている請求項2に記載の医療用容器。
【請求項5】
前記薬剤流出阻害部材の前記針管受入部は、中実であり、かつ、前記薬剤排出用針管が刺入可能かつ刺入した前記薬剤排出用針管の側口を閉塞可能な弾性部材を備えている請求項2に記載の医療用容器。
【請求項6】
前記薬剤流出阻害部材は、前記薬剤収納部の前記一端側の閉塞部に当接可能な先端部を備えている請求項1ないし5のいずれかに記載の医療用容器。
【請求項7】
前記薬剤流出阻害部材は、前記開通可能部の開通操作後、前記ポート本体部より流出可能である請求項1ないし6のいずれかに記載の医療用容器。
【請求項8】
前記開通可能部は、破断可能部である請求項1ないし7のいずれかに記載の医療用容器。
【請求項9】
可撓性材料により形成され、薬液が収納された容器本体と、前記容器本体に固定された排出ポートとを備える医療用容器であって、
前記医療用容器は、前記排出ポートの上方に設けられ、かつ、前記容器本体を押圧することにより剥離可能な移動規制弱シール部を備え、
前記排出ポートは、薬剤が収納された薬剤収納部を備えるポート本体部と、前記ポート本体部の端部を閉塞し、かつ、薬剤排出用針管の接続が可能な封止部を有する排出口と、前記ポート本体部内に収納され、前記移動規制弱シール部の未剥離時に前記ポート本体部内に侵入した前記薬剤排出用針管の先端部を受け入れ可能、かつ、受け入れた前記針管からの前記薬剤の流出を阻害する薬剤流出阻害部材とを備え、前記移動規制弱シール部は、前記薬剤流出阻害部材の先端部に近接もしくは当接する位置に設けられ、前記移動規制弱シール部の未剥離時の前記薬剤流出阻害部材の移動を規制しており、前記薬剤流出阻害部材は、前記移動規制弱シール部の剥離完了もしくは前記移動規制弱シール部の剥離完了と受け入れた前記針管による先端方向への押圧により、前記ポート本体部より流出することを特徴とする医療用容器。
【請求項10】
前記薬剤流出阻害部材は、前記容器本体内と前記ポート本体部内との連通を開放可能に閉塞する閉塞部と、前記閉塞部より突出する前記先端部と、前記排出口側より侵入した前記薬剤排出用針管の先端部を受け入れ、かつ、受け入れた針管により押圧される針管受入部とを備え、前記薬剤は、前記薬剤流出阻害部材の前記閉塞部により閉塞された前記ポート本体部内に収納されており、さらに、前記閉塞部は、前記ポート本体部の内面と液密状態にて摺動するシール部を備えている請求項9に記載の医療用容器。
【請求項11】
前記薬剤流出阻害部材は、前記容器本体内と前記ポート本体部内との連通を開放可能に閉塞するとともに、前記ポート本体部の内面と液密状態にて摺動するシール部と、前記先端部とを備える閉塞部材と、前記閉塞部材を押圧するための押圧部材とからなり、前記押圧部材は、前記閉塞部材を押圧するための押圧用先端部と、前記排出口側より侵入した前記薬剤排出用針管の先端部を受け入れ、かつ、受け入れた針管により押圧される針管受入部とを備え、前記薬剤は、前記閉塞部材により閉塞された前記ポート本体部内に収納されている請求項9に記載の医療用容器。
【請求項12】
前記医療用容器は、前記移動規制弱シール部により区画され、かつ、前記ポート本体部内と連通する薬剤室を備え、前記薬剤は、前記ポート本体部材および前記薬剤室に収納されている請求項9に記載の医療用容器。
【請求項13】
前記薬剤流出阻害部材は、侵入した前記薬剤排出用針管の側口より下方の外面と環状に接触可能なシール形成可能部を備えている請求項9ないし12のいずれかに記載の医療用容器。
【請求項14】
前記薬剤流出阻害部材は、下端が開口した中空部と、前記中空部の下端開口を封止しかつ前記薬剤排出用針管による刺通が可能なシール部材を備えている請求項9ないし13のいずれかに記載の医療用容器。
【請求項15】
前記薬剤流出阻害部材は、中実であり、かつ、前記薬剤排出用針管が刺入可能かつ刺入した前記薬剤排出用針管の側口を閉塞可能な弾性部材を備えている請求項9ないし12のいずれかに記載の医療用容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2013−70955(P2013−70955A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214476(P2011−214476)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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