説明

医療用流体注射装置のための液圧遠隔操作手段

【課題】医療用流体注射装置の使用者に触覚的フィードバックを与えながら医療用流体注射装置を使用する患者への流体注入または患者からの流体吸引を遠隔で制御するための簡単で便利な手段を提供。
【解決手段】医療用流体注射装置10のための手保持遠隔操作部12は、注射装置10の制御回路に設けた圧力変換器に接続される注射器50およびコンジット52を含む。注射器50の注射器本体64内でのプランジャ62の移動は圧力変換器によって検知される圧力をつくり出し、制御回路は、注射送致10に取り付けられた注射器24から流体を放出するか又は注射器24内に流体を吸引することによって、前記検知された圧力に応答する。遠隔操作部12によって発生した圧力は、注射についての改良された制御のためにオペレータに触覚フィードバックを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物に流体を注射するための注射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの医療環境において、医療用液体が診断や治療の際に患者に注射されている。一例として、電動自動注射装置を用いて、CT、血管造影、磁気共鳴超音波撮影などを向上させるために患者に造影剤が注射される場合がある。
【0003】
これらの用途に一般的に適した注射装置は、比較的大容量の注射器を使用しなければならず、比較的大きな流量および注入圧力を生じさせる得るものである必要がある。この理由から、このような用途の注射装置は、一般的に電動化されており、大きくて大容量のモータと駆動列(drive train)を含む。各使用のために、モータおよび駆動列は、一般に、床、壁または天井に取り付けられたアームで支持された注射ヘッド(injection head)に収容されている。
【0004】
前記注射ヘッドは、一般に、アームに旋回可能に取り付けられている。そのため、ヘッドは、注射器に流体を充填するのを容易にするために(注射器の先端を他の部分よりも上にして)上方に傾けることができる一方、注射するために(注射器の先端を他の部分よりも下にして)下方に傾けることができる。このようにヘッドを傾けることで、充填の際に注射器から空気を抜くのが容易になるとともに、注入の際に空気が患者に注射されてしまう可能性が低減される。しかしながら、患者に空気が偶然にも注射されてしまう可能性は、未だに重大な安全への関心事である。
【0005】
上述した注射ヘッドの他に、多くの注射装置は、注射装置を制御するための離れたコンソールを含む。コンソールは、一般に、注射装置の自動プログラム制御に使用できるプログラム可能な回路構成を有し、これにより注射装置の操作が思い通りになるとともにスキャナや撮影装置などの他の装置と同調させることが可能になる。
【0006】
このように注射手順の少なくとも一部は一般に自動制御されている。しかしながら、充填手順と、注入手順の幾つかの部分は、通常、注射ヘッド上での手動操作による動作制御手段を用いてオペレータによって行われる。一般に、手動操作による動作制御手段は、注射器を充填したり空にしたりするために、注射装置の駆動ラムの進退動作用のボタンを含む。ラムの動作を開始したりラム動作速度を制御したりするために、複数のボタンが組み合わせて使用される場合がある。また、注射ヘッドは、一般に、注射ヘッドを制御する際にオペレータの使用に供するために、注射器容量残量のような注射パラメータを示すゲージまたは表示部を有する。
【0007】
多くの心臓病の手順では、心臓学者は、患者に造影剤を投与するのに手保持注射器を使用することをしばしば好み、これにより心臓学者は注入を「感じる」ことができ、かつ、必要に応じて注入速度を注意深く制御することができる。カテーテルを通して造影剤を押し入れるには高い圧力が要求されるので、オペレータが造影剤を手操作で投与することを望むのであれば、小さい手持ち注射器を使用しなければならない。しかしながら、これらの小さい注射器は、造影剤注入手順の間に何回か再充填しなければならず、これにより注射器またはカテーテルに空気を導入する危険性が増すことになる。
【0008】
ダコン(Duchon)等の米国特許第6,221,045号は、電動注射装置による造影剤の注入を制御するために使用できる手保持遠隔操作手段(hand−held remote)を開示する。オペレータが従来からの制御手段を有する電動注射装置を使用することを選択したならば、オペレータは、注入を最適化するのに制御手段をどのように操作するかを決定するために、注射装置の視覚的な指示器を頼みにしなければならない。現在の注射装置の一般的な視覚的な指示器は、オペレータに対して彼らが望むような注入の肉体的感覚を提供しない。したがって、ダコン等の手保持制御装置を含む現在の注射装置の1つの欠点は、それらの装置がオペレータに注入を肉体的に感じさせることができず、これより注入の速度および量を制御できないことにある。
【0009】
医療環境における滅菌要求のために、手保持制御手段は一般に使い捨て物品として提供される。したがって、注入を制御するのに電子的またはデジタルな信号を利用する従来の手保持制御手段のもう1つの欠点は、高い出費を伴わずに使い捨てできないことにある。
【0010】
触覚のフィードバックを与えながら造影剤注入を制御するために電動医療注射装置と共に使用でき、上述したような従来技術の種々の問題を解決する手保持遠隔操作手段に対する要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,221,045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、医療用流体注射装置の使用者に触覚的フィードバックを与えながら医療用流体注射装置を使用する患者への流体注入または患者からの流体吸引を遠隔で制御するための簡単で便利な手段を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
例示としての実施形態では、医療用流体注射装置と共に使用するための液圧遠隔操作手段は、注射器本体内に滑動可能に配置されたプランジャを有する注射器と、医療用流体注射装置の制御回路に接続される圧力変換器と、前記圧力変換器に前記注射器を接続するコンジットとを含む。前記遠隔操作手段を説明するためにここで使用されるものとして、用語「液圧」は、液体または気体である流体の使用を意味する。したがって、液圧遠隔操作手段は、気圧遠隔操作手段として説明されてもよい。注射器本体内への、または、注射器本体から外へのプランジャの動作は、注射器本体内で圧力変化を生じさせる。圧力変換器はコンジットを介してこの圧力変化を検知し、医療用流体注射装置の制御回路は患者に流体を注入するかまたは患者から流体を吸引するかによって前記圧力変化に応答する。また、注射器内の圧力は、遠隔操作手段が注入または吸引の速度および量を示す触覚フィードバックを使用者に与えることで、手保持遠隔操作手段の使用者によって感じ取られる。注射器およびコンジットは、安価で、いつでもすぐ買えるものでよく(off−the−shelf)、これにより使い捨ておよび交換のコストを最小限にできる。
【0014】
別の例示としての実施形態では、医療用流体注射装置は、上述した液圧遠隔操作手段を含むとともに、プランジャ駆動ラム、前記駆動ラムを動かすためのモータ、および、前記注射装置に取り付けられる第2注射器をさらに含む。前記プランジャ駆動ラムは、患者に対して流体を注入または吸引するために前記第2注射器の中または外へプランジャを移動させる。前記医療用注射装置はさらに、前記第2注射器内でのプランジャの動作を制御するとともに、前記第2注射器の中または外へプランジャ駆動ラムを移動させるように前記圧力変換器で検知された圧力に応答する制御回路を含む。医療用注射装置は、液圧遠隔操作手段からの検知圧力の変化に応じた速度でプランジャ駆動ラムを移動させることで、前記圧力変換器で検知された圧力増加に応答する。
【0015】
別の例示としての実施形態では、医療用流体注射装置は、前記注射装置に取り付けられる手動操作制御手段を含む。前記注射装置の制御回路は、前記手動操作制御手段の動作に応じた速度で医療用注射装置に取り付けられた第2注射器の中または外へプランジャ駆動ラムを移動させるように、手動操作制御手段の動作に応答する。さらに、医療用注射装置は、液圧遠隔操作手段を含み、前記制御回路は、前記第2注射器の中または外へ前記プランジャ駆動ラムを移動させることで前記液圧遠隔操作手段または前記手動操作制御手段の駆動に応答するように構成される。
【0016】
また別の例示としての実施形態では、医療用注射装置はさらに、前記制御回路と前記液圧遠隔操作手段とに接続された第2圧力変換器を含む。前記制御回路は、前記第2注射器の中または外への前記プランジャ駆動ラムの動作を制御するために、前記第1圧力変換器で検知された圧力に応答する。また、前記制御回路は、前記圧力変換器が現在のしきい値より高い圧力を検知したとき、前記医療用流体注射装置の操作を可能にするように、前記第2圧力変換器で検知された圧力に応答する。好ましくは、前記しきい値圧力は、使用者が前記液圧遠隔操作手段のプランジャを解放したしたときに流体の注入または吸引が止まるようなレベルに設定される。
【0017】
本発明のもう1つの例示の実施形態では、回路基板は、注射装置を変更するように現存する医療用注射装置に接続可能であり、これにより現存する医療用注射装置は上述した液圧遠隔操作手段と共に使用可能になる。
【0018】
さらに別の例示の実施形態では、前記注射装置に接続された液圧遠隔操作手段を有する医療用注射装置を用いての流体の注入または吸引を制御する方法は、プランジャを移動させて圧力を発生させる、前記液圧遠隔手段により発生した圧力を検知する、および、前記検知圧力に応じて前記注射装置でプランジャ駆動ラムを移動させる、の各ステップを含む。
【0019】
本発明の特徴および目的は、添付図面に関連した下記の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【0020】
なお、添付図面は、本明細書に組み込まれてその一部を構成し、上述した本発明の概説および下記詳細な説明と共に、本発明の説明に寄与するものである。
【0021】
本発明は、例えば以下を提供する。
(項目1)
医療用流体注射装置と共に使用する液圧遠隔操作手段であって、
注射器本体と該注射器本体内に滑動可能に配置されたプランジャとを有する第1注射器と、
前記医療用流体注射装置の制御回路に接続された少なくとも1つの圧力変換器と、
前記第1注射器に連結された第1端部と前記圧力変換器に連結可能な第2端部とを有するコンジットと、を備え、
前記注射器本体内での前記プランジャの移動が、前記圧力変換器によって検知される圧力を創出して、前記制御回路に、前記検知圧力に応じて流体を注入するように前記医療用注射装置を作動させることを特徴とする液圧遠隔操作手段。
(項目2)
前記注射器本体内での前記プランジャの移動が、前記圧力変換器によって検知される圧力を創出して、前記制御回路に、前記検知圧力に応じて流体を吸引するように前記医療用注射装置を作動させることを特徴とする項目1に記載の液圧遠隔操作手段。
(項目3)
項目1の遠隔操作手段を組み込んだ医療用注射装置は、さらに、
プランジャ駆動ラムと、
前記プランジャ駆動ラムを移動させるモータと、
第2注射器に取り付けられ、前記プランジャ駆動ラムが前記第2注射器の中へ又は外へプランジャを移動させることができるように前記注射装置に対して前記第2注射器を位置決めする注射器取付部と、
前記第2注射器から流体を注入するために前記ラムおよび前記プランジャを移動させるように前記モータを制御する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記圧力変換器で検知された圧力に対応する速度で前記プランジャ駆動ラムを移動させることによって前記検知圧力に応答することを特徴とする医療用注射装置。
(項目4)
前記制御回路は、前記圧力変換器による検知圧力の正の変化に対応する速度で前記第2注射器から流体を放出するように前記第2注射器内へ前記プランジャ駆動ラムを移動させることによって前記増加した検知圧力に応答することを特徴とする項目3に記載の医療用注射装置。
(項目5)
前記制御回路は、前記圧力変換器による検知圧力の負の変換に対応する速度で前記第2注射器に流体を吸引するように前記第2注射器の外へ前記プランジャ駆動ラムを移動させることによって前記減少した検知圧力に応答することを特徴とする項目3に記載の医療用注射装置。
(項目6)
項目3に記載の医療用注射装置は、さらに、
ホーム位置と前後位置との間で移動可能なレバーを有する手動操作移動制御部を備え、
前記制御回路は、前記ホーム位置からの前記レバーの前方移動の量に対応した速度で前記第2注射器から流体を放出するように前記第2注射器内へ前記プランジャ駆動ラムを移動させることによって前記レバーの前方移動に応答し、
前記制御回路は、前記ホーム位置からの前記レバーの後方移動の量に対応した速度で前記第2注射器に流体を吸引するように前記第2注射器の外へ前記プランジャ駆動ラムを移動させることによって前記レバーの後方移動に応答することを特徴とする医療用注射装置。
(項目7)
前記制御回路に接続可能な2つの圧力変換器をさらに備えていることを特徴とする項目3に記載の医療用注射装置。
(項目8)
前記制御回路は、前記圧力変換器の1つで検知された圧力に応答して、前記第2注射器内への前記プランジャ駆動ラムの動作を制御し、
前記制御回路は、前記もう1つの圧力変換器で検知された圧力に応答して、前記圧力がしきい値圧力よりも高いときに前記注射装置の作動を可能にすることを特徴とする項目7に記載の医療用注射装置。
(項目9)
前記制御回路は、前記圧力変換器の1つで検知された圧力に応答して、前記第2注射器の外への前記プランジャ駆動ラムの動作を制御し、
前記制御回路は、前記もう1つの圧力変換器で検知された圧力に応答して、前記圧力がしきい値圧力よりも高いときに前記注射装置の作動を可能にすることを特徴とする項目7に記載の医療用注射装置。
(項目10)
前記しきい値圧力は、前記プランジャが解放されたときに前記注射装置の作動を不能にするのに十分であることを特徴とする項目8に記載の医療用注射装置。
(項目11)
前記しきい値圧力は、前記プランジャが解放されたときに前記注射装置の作動を不能にするのに十分であることを特徴とする項目9に記載の医療用注射装置。
(項目12)
前記制御回路は、前記圧力変換器で検知された圧力に応答して、圧力変化量に比例した速度で前記プランジャ駆動ラムを移動させることを特徴とする項目3に記載の医療用注射装置。
(項目13)
前記制御回路は、毎秒約6ミリリットルの最大速度で前記プランジャ駆動ラムを移動させることができることを特徴とする項目12に記載の医療用注射装置。
(項目14)
遠隔操作手段と共に使用可能なように医療用注射装置を改良するために前記注射装置に接続可能な回路基板であって、
前記遠隔操作手段に接続可能で、かつ、前記遠隔操作手段から検知された圧力に応じて前記注射装置による流体の注入を制御するために前記注射装置の制御回路に信号を送るようになっている少なくとも1つの圧力変換器を備えていることを特徴とする回路基板。
(項目15)
医療用流体注射装置に接続される遠隔操作手段を用いた前記注射装置の制御方法であって、
圧力を発生させるように前記遠隔操作手段のプランジャを移動させ、
前記遠隔操作手段によって発生した圧力を検知し、
前記検知圧力に応じて前記注射装置のプランジャ駆動ラムを移動させることを特徴とする医療用注射装置の制御方法。
(項目16)
前記遠隔操作手段の前記プランジャが第1方向に移動されるとき、前記検知圧力に応じて前記プランジャ駆動ラムを前記注射装置の注射器内に移動させることを特徴とする項目15に記載の医療用注射装置の制御方法。
(項目17)
前記遠隔操作手段の前記プランジャが第2方向に移動されるとき、前記検知圧力に応じて前記プランジャ駆動ラムを前記注射装置の注射器の外へ移動させることを特徴とする項目16に記載の医療用注射装置の制御方法。
(項目18)
制御回路を有する医療用流体注射装置を遠隔操作手段に対応するように改良する方法であって、
前記遠隔操作手段からの圧力を検知するようにした少なくとも1つの圧力変換器を有する回路基板を、前記注射装置による流体の注入を制御するために前記注射装置の前記制御回路に接続することを特徴とする方法。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の例示の液圧遠隔操作手段を有する例示の医療用流体注射装置の斜視図。
【図2】図1の注射装置の分解斜視図。
【図3】図1の注射装置の液圧遠隔操作手段および手動制御手段の回路構成を示す電気ブロック図。
【図4A】図3の回路構成および図1の注射装置の他の外部センサに接続されるインターフェース回路構成の電気ブロック図。
【図4B】図1の注射装置のプロセッサおよび周辺回路構成の電気ブロック図。
【図4C】図1の注射装置の監視装置の電気ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、注射装置のオペレータに触覚フィードバックを与えながら患者への流体注入を制御するために医療用注射装置と共に使用可能な手保持遠隔制御部を提供する。また、前記遠隔制御部の使い捨て可能な部品はいつでもすぐ買えるものとして入手可能であるので、使い捨て可能な部品のコストが現在使用されている装置に比べて大きく減少する。
【0024】
図1を参照すると、本発明の例示の保持遠隔操作部を含む例示の医療用注射装置10が示されている。このような医療用流体注射装置の1つとして、オハイオ州シンシナティのリーベル−フラーシャイム社(Liebel−Flarsheim Company)製の管腔型注射装置(lllumena model injector)がある。注射装置10は、内部駆動モータを収容する電動ヘッド14、手動操作式移動制御レバー16、注射装置10の現在状態および操作パラメータをオペレータに示す表示部18を有する。電動ヘッド14は、一般に、バッチアト(Battiato)等の米国特許第5,925,022号(これは、本発明の譲受人によって保持され、その全体が参照によってここに組み込まれている。)において十分に説明されるように、取付部20および関節連結型支持アーム22によって、キャリッジ(図示せず)上で支持されてもよい。注射器胴部26およびプランジャ28を含む注射器24は、注射装置10の内部駆動モータ(図示せず)と連結されるようにして電動ヘッド14に取り付けられてもよい。プランジャ28は、前記モータのプランジャ駆動ラム(図示せず)に連結されている。これにより前記モータは、放出先端部30を介して、注射器24の内容物を注入したり胴部26内に流体を吸引したりするために、注射器胴部26に沿ってプランジャ28を移動させることができる。注射器24は、注射器胴部26の外壁を支持する圧力ジャケット32で囲まれていてもよい。注射器24の内容物を温めて体温近傍の温度に維持するために、電動ヘッド14から延びて圧力ジャケット32の外部壁に当接する柱部36にヒータブランケット34が取り付けられてもよい。
【0025】
図2を参照すると、電動ヘッド14は、内部駆動モータとこのモータを制御するための制御回路42とを封じ込める第1ハウジング部40aおよび第2ハウジング部40bからなるハウジングを備えている。手動操作移動制御レバー16の操作は、バッチアト等の米国特許出願第5,925,022号に完全に説明されるように、プランジャ駆動ラムで注射器24での流体の注入または吸引を生じさせるために、制御回路42dによって検知される。あるいは、注射装置10は、液圧遠隔操作部12を用いて操作されてもよい。
【0026】
図1,2を参照すると、遠隔操作部12は、手で保持するのに都合が良い大きさの第2注射器50と、注射器50の出口を注射装置10に接続するコンジット52とを含む。1つの実施例では、コンジット52はフレキシブルチューブである。コンジット52は、注射装置10の制御回路42に接続された少なくとも1つの圧力変換器54に連結されている。また、1つの実施例では、コンジット52は、ハウジング40の穴57を通って延びるコネクタ55によって圧力変換器54に連結されている。第2コンジット59は、前記コネクタから1つ以上の圧力変換器54に延びている。圧力変換器54は、制御回路42上に直接設けられてもよいし、または、注射装置10の制御回路42に接続された回路基板56上に設けられてもよい。例えば、圧力変換器54を含む回路基板56は、制御レバー16からの入力を受け取るためのインターフェース58で注射装置10の制御回路42に接続されるように構成されてもよい。また、回路基板56は、制御レバー16からの入力を受け取るためのコネクタ60を有してもよく、例えば電気導線61によって制御レバー16に接続されるようにしてもよい。このような構成は、医療用注射装置10が制御レバー16または遠隔操作部12のいずれかで操作されるのを好都合に可能にするものである。
【0027】
図3を参照すると、本発明にかかる電動注射装置の回路詳細を説明することができる。圧力変換器54a,54bは、動きを生じさせる(active)電気機械的な変換器であり、電気的に平衡ブリッジを形成する。そのブリッジ両端の電位は、センサ54a,54bによって検出される圧力を反映するものである。センサ54a,54bはそれぞれ、センサによって生成される差動電圧(differential voltage)にゲインを与えるように差動増幅器(differential amplifiers)に接続されている。差動増幅器78aは、センサ54aに接続され、センサ54aで検出された圧力の大きさに比例して、グラウンドを基準とした電圧を生成する(増幅器78aの出力は、増幅器78aのREF入力が接地されていることによって、グラウンドを基準とする。)。また、差動増幅器78bは、センサ54bに接続され、センサ54bで検出された圧力の大きさに比例した電圧を生成する。しかしながら、増幅器78bによって生成される電圧は、後述する理由で、電位差計98から得られるアナログ電圧を基準とする。
【0028】
差動増幅器78aの出力は、抵抗Rを介して、比較器80の反転入力(inverting input)に接続されている。比較器80の出力は抵抗10Rを介して非反転入力(noninverting input)にフィードバックされ、これにより比較器80の応答にヒステリシスが導入されている。NANDゲート82の出力が論理「ロー」であるとき、比較器80の非反転入力は約2.5ボルトの電圧値を有し、この状態では、差動増幅器78aからの入力が約2.5ボルトを上回るときには常に、比較器80は論理「ハイ」信号を生成することになる。差動増幅器78aのゲインは、圧力センサ54aによる検出圧力が、注射装置を手動制御すするために手保持注射器50の使用を指示する最小しきい値より上であるときには常に、2.5ボルトの出力が達成されるように設定される。このしきい値は、注射装置に最初に装着されるときに、注射装置の意図しない手動操作で手保持注射器50内が制限された液体圧力になるのを防止するものである。
【0029】
センサ54aによって検知された圧力が所望の最小しきい値を越え、かつ、NANDゲート82が論理「ロー」であるとき、比較器80は、手動注入制御のための手保持注射器50の操作を可能にする論理「ハイ」を生成する。比較器80の出力は、インバータ86として配線されたNANDゲートに接続されている。比較器80およびNANDインバータ86の出力は、アナログマルチプレクサ88の制御入力に接続されている。これらの接続の結果として、比較器80が論理「ハイ」出力を生成するとき、マルチプレクサ88は、差動増幅器78bの出力から電線154にアナログ信号を伝送する。比較器80が論理「ロー」出力を生成するとき、マルチプレクサ88は電位差計99のワイパから電線154にアナログ信号を伝送する。
【0030】
前記バッチアト等の米国特許に詳細に説明されているように、電動ヘッド14の手動操作制御部16の回転もまた、プランジャの前後の移動を制御する。手動操作制御部の回転は、回転電位差計98によって検出される。手動操作制御部は、リターンスプリング102a,102bによって中立位置に戻される。図3には、基準電圧とグラウンドの間に接続されて、手動操作制御部16の回転を示す電線99に電圧を与える電位差計98が図示されている。手動操作制御部のリターンスプリング102a,102b、および、手動操作制御部に接続されて一緒に回転するフラグ/接点(flag/contact)もまた、図3の回路要素をなす。リターンスプリング102a,102bは、デジタル+5ボルト電源とグラウンドの間に直列に接続された抵抗110に接続されている。抵抗110とスプリング102aの間から延びる信号電線115は、スプリング102a,102bとフラグ/接点104の間で電流を通す電気的接触が終わっているかどうかを示す論理電圧信号を伝送する。通常状態では、この経路からグラウンドに通じる電気的経路があって、適正操作を示すローレベルに電線115の電圧が保持される。しかしながら、スプリング102a,102bの一方が通電しない(fails)と、フラグ/接点104とは接触せずに、この電気的接触が絶たれることになり、電線115の電圧はリターンスプリングの不通電(failure)を示すハイレベルに上昇することになる。レバー16がホーム位置から故意にではなしに傾く前に両方のリターンスプリングが通電しなくならなければならないが、一方だけのスプリングの不通電は電線115の電圧を監視することによって検出できる。このような不通電が最初に検出されると、オペレータに警告が与えられるか、または、手動操作による移動制御を不能にする。
【0031】
さらに、手動制御部16は、回り止めスプリング106を含む。回り止めスプリング106も同様に抵抗111に直列接続された電気的接点を形成し、回り止め信号電線116が抵抗111と回り止めスプリング106の間から延びている。制御レバー16が回り止めスプリング106まで回転されなければ、電線116は制御レバー16が回り止め位置にないことを示すハイレベルになることになる。しかしながら、フラグ105が回り止めスプリング106に接触するように制御レバー16が回転されると、電線116は、制御レバー16が回り止め位置まで回転したことを示すローレベルになることになる。電線116の信号は、いくつかの方法で使用される。例えば、その信号は、回り止め位置に対応するレバー回転角度が理想充填速度に等しくなるように手動操作制御レバーを度盛りするのに使用されてもよい。あるいは、その信号は、理想充填速度よりも速い速度でのラムの逆移動を防止するのに使用されてもよい。さらに、その信号は、動作の「死角領域」(dead zone)を確立するために使用されてもよい。この死角領域では、ラムが、より速い逆速度をつくるために「死角領域」を越えて回転されるレベルを許容しながら、理想充填速度で移動することになる。
【0032】
図3はまた、フラグ検出器108の回路詳細を図示する。発光ダイオードには抵抗113を介してバイアス電流が流れる。光が検出器108のギャップを通って検出器108のフォトトランジスタのベースに受光されるとき、フォトトランジスタは抵抗112を通して電流を引いて、制御レバー16がホーム位置にないことを示す低い値でホーム信号を電線117に送る。一方、光が検出器108のフォトトランジスタのベースに到達することができないとき、抵抗112から電流は流れず、電線117のホーム信号は、制御レバー16がホーム位置にあることを示すハイレベルになる。このように図3の回路構成は、手動操作制御部がホーム位置にあるかどうかを決定するために、電線117のホーム信号を使用できる。
【0033】
具体的には、ホーム信号は、インバータ82として接続されるNANDゲートを介して、等価抵抗84を備える分圧器に接続されることが示されている。抵抗84の中間点は、比較器80の変換入力に接続されている。比較器80の非変換入力は、上述したように、差動増幅器78aの出力に接続されている。これらの接続の結果として、電線117のホーム信号が(手動制御部16が使用状態にあることを示す)ローであるとき、NANDゲート82の出力と抵抗84の中間点は論理「ハイ」値をもつことになる。これにより、比較器80の出力は、差動増幅器78aの出力での信号にかかわらず論理「ロー」値を有する。上述したように、これらの状態においては、電位差計98のワイパからの電線99のアナログ電圧は、アナログマルチプレクサ88を介して電線154に送られる。一方、手動制御部がホーム位置にあるとき、手保持注射器50の圧力が確立された最小しきい値より上であれば、比較器80の出力は論理「ハイ」値を有することになり、差動増幅器78bからのアナログ電圧はアナログマルチプレクサ88を介して電線154に送られる。
【0034】
前記背景技術から分かるように、電線154のアナログ電圧は、手動制御部16の回転、または、手保持注射器50の圧力によって示される所望の手操作移動を反映する。上述したように、差動増幅器78bで生成された電圧は、電位差計98のワイパからの電線99のアナログ電圧を基準とする。手保持注射器50は手動制御部16がホーム位置にあるときだけ使用可能になるので、この接続によって、差動増幅器78bによる出力電圧は、ホーム位置にあるときにワイパー端子99に電位差計98によって生成される同じ電圧を基準とする。したがって、差動増幅器78bで生成されるアナログ電圧は、電位差計98で生成されるアナログ電圧と同じ基準電圧からはずれることになる。
【0035】
なお、電線115,116の回り止め信号および安全信号は、後述する図4Bのマイクロプロセッサに送られる。第3「ホーム」信号もまた、前記マイクロプロセッサに送られる。この信号は、インバータとして接続された第2NANDゲート92を介して、第1NANDゲート90によって生成される。その結果、手動制御部16がホーム位置にあって、センサ54aで検知される圧力が(比較器80に「ロー」出力信号を生成させる)確立したしきい値より下のときは常に、マイクロプロセッサに送られる前記「ホーム」信号は「ハイ」値を有することになる。したがって、NANDゲート92によって出力される「ホーム」信号は、手動制御部16または手保持注射器50による手操作移動が求められていない状態を特定する。
【0036】
図4Aを参照すると、空気検出モジュールと他のアナログ電気システムの電気回路の詳細について説明することができる。具体的には、空気検出モジュールは、その内部に、商業的に入手可能な同期検出回路140が組み込まれている。同期検出回路140は、電線141にトリガーパルスを生成する内部発振器を含み、各トリガーパルスと同時発生的に、光センサ127で光が受光されたことを示す電線142の電気信号を検出する。各トリガーパルスと同時発生的に光が検出されている限り、ハイレベル信号が電線143に生成される。本発明による回路140が適用されることにより、電線143の信号は注射器24のネック部に空気が検出されたかどうかを示す。
【0037】
電動ヘッド14の制御回路は、検出器の感度を制御するために、気泡検出器に適用される光強度を制御してもよい。そのために、制御回路は、パルス幅調整(PWM)デジタル信号を電線145に生成する。このPWM信号はローパスフィルタ回路146を通されてアナログ制御電圧が生成され、このアナログ制御電圧が調節可能な調整器147を制御して回路140のために電線148に電力信号を生成する。
【0038】
電線141のトリガー信号に応じて、PNPオプトトランジスタ149が「オン」され、電線148の電力信号が光源126を発光させる。これにより、電線148の電力信号の電圧が光源126によって発生する光の強度に直接的に影響する。
【0039】
制御回路が空気検出回路の不通電を監視するために、電線141のトリガー信号は、オプトアイソレータ150内の発光ダイオードを介してPNPオプトトランジスタ149のベースに接続されている。したがって、オプトアイソレータ150内のオプトトランジスタはトリガー信号が発生するときは常に「オン」になって、電線151にローレベル信号が発生する。これにより、同期式空気検出回路140が適正に作動して周期的なトリガー信号を生成し、電線151にパルスが発生する。このパルスが制御回路によって検出されることで、回路140内の発振器が適正に作動しているかを確認することができる。
【0040】
また、図4Aは、種々の電気的構成要素によって生成されるアナログ信号を量子化するために電動ヘッド制御回路内に組み込まれたアナログ/デジタル(A/D)変換器152を図示する。このような信号の1つに、図3の回路構成によって電線154に生成される電圧がある。この電圧は、充填/放出用手動制御部16の回転位置、または、手保持注射器50の圧力を表す。A/D変換器152は、CPU(図4B参照)からの要求に応じて、電線154のアナログ電圧を「SPI」シリアルインターフェースバス156のデジタル信号に変換し、その結果、CPUは、手動制御部16の位置または手保持注射器50の圧力とそれに基づく反応を決定することができる。
【0041】
他のアナログ電圧もA/D変換器152に入力される。具体的には、シングルチップ(single−chip)加速時計がチルトセンサ158として構成され、センサ158の傾き角度を示すアナログ電圧を電線159に生成する(この目的に適したシングルチップ加速度計は、マサチューセッツ州ノーウッドのアナログデバイス社から型番ADXL05AHとして入手可能である。)。センサ158は回路基板55に取り付けられて、地球重力方向に対する電動ヘッド14の傾きを示す出力電圧を生成する。このアナログ傾斜信号は、変換された後、後述するように表示部や電動ヘッド14の他の操作部で使用するためにCPUに入力される。
【0042】
第3のアナログ信号が線形電位差計160で生成される。線形電位差計160のワイパは、プランジャ駆動ラムに機械的に接続され、プランジャ駆動ラムの動作に応じて移動する。これにより、電線161のワイパからの電圧は、最後端位置と最前端位置との間でのラムの位置を示すアナログ信号になる。この信号は、変換された後、ラムの位置や注射器容積残量を決定するためにCPUで使用される。
【0043】
さらに2つのアナログ信号がサーミスタ163a,163bによって生成される。サーミスタ163a,163bは、バイアス抵抗に直列接続されて、サーミスタの温度を反映する電圧を電線164a,164bに生成する。これらのサーミスタから得られる温度測定値は、注射器24内の流体を温めるのにヒータブランケット34に印加される電力を制御するために使用される。具体的には、注射器に適用される熱量(heat power)は、例えば摂氏30度の目標温度に流体を維持するために、サーミスタ163a,163bで測定されるように周囲温度に応じて変更される。
【0044】
サーミスタ163a,163bは二重になっており、両方で同じ温度を測定して、近い一致を確実にするために、これらの測定値を比較する。その結果、サーミスタから得られた温度読み取り値間の不一致からサーミスタの失敗を検出することができ、これにより温度制御のロスを防止することができる。
【0045】
サーミスタ163a,163bは、電動ヘッド14内部の回路基板42上に取り付けられてもよいし、より正確な温度測定を確実にするためにハウジングの外部にあってもよいが、代わりの外部取付サーミスタが電動ヘッド14に接続されたら不能にされ得る内部取付サーミスタを設けることによって両方の選択が可能になる。
【0046】
上述したように、サーミスタ163a,163bを用いることで、電動ヘッド14は、ヒータブランケット34を通じて注射器24に与える熱量を制御する。この機能を実行するために、CPU(図4B参照)は、ヒータブランケットフィラメント120に印加される熱電力を制御するのに使用されるパルス幅調整(PWM)制御信号を電線166に生成する。具体的には、電線166のPWM信号はフィルタ167によってローパスフィルタがかけられ、調整可能な調整器168を制御するアナログ制御信号が生成される。電線169への調整器168の出力は、ヒータブランケットフィラメント120に印加される変化する電圧であり、これによりヒータフィラメント120に熱を発生させることができる。
【0047】
増幅器170は、フィラメント120に印加される電圧を濾過および調節して、ヒータブランケットフィラメント120に印加される電圧に比例したアナログ出力信号を電線171に生成する。
【0048】
検知抵抗173はヒータフィラメント120に直列接続されている。これにより、ヒータフィラメント120の電流は検知抵抗173を通って流れることで、ヒータフィラメント120を通って流れる電流に比例した電圧が検知抵抗に生成される。検知抵抗はヒータフィラメント120の抵抗値よりも小さい抵抗値を有し、その結果、検知抵抗173による電圧降下はヒータフィラメント120における電圧降下の実質的な割合ではない。
【0049】
検知抵抗173における電圧降下は増幅された後、ゲイン/フィルタ回路172で濾過されて、ヒータフィラメント120を通って流れる電流に比例したアナログ電圧を電線174に生成する。
【0050】
電線171,174はA/D変換器152に接続されており、これにより電線171,174の電圧はCPUで読み取れるデジタル信号に変換される。したがって、CPUは、ヒータフィラメント120における電流および電圧降下を決定することができるとともに、ヒータフィラメント120の熱出力を決定するのにこれらの値を使用できる。これにより、CPUは、米国特許第5,925,022号に十分に説明されているように、ヒータブランケット熱出力の閉環制御(closed−loop control)を実行することができる。
【0051】
図4Bを参照すると、電動ヘッド14のCPUの接続を理解することができる。モトローラ社製68332マイクロプロセッサであってもよいCPU175は、ランダムアクセスメモリ(RAM)178およびフラッシュメモリ177にCPU175を接続するデータ・アドレスバス176を制御する。CPU175はまた、A/D変換器152、表示部30およびモニターマイクロコントローラ192と通信するためのSPIシリアルインターフェースバス156を制御する。CPU175はさらに、パワーパック(図4C参照)のCPUにCPU175を接続するRS−422シリアルインターフェース179を含む。
【0052】
CPU175は、電動ヘッド14の操作を監視するための幾つかのデジタルデータ入力線を有する。具体的には、CPU175は電線116の回り止め信号、電線115の安全信号、および、電線117のホーム信号を受け取り、これによりCPU175は上述した手動操作制御部(レバーおよび注射器)の操作状態に関する入力を受け取ることができる。CPU175はまた、電線143の気泡信号を受け取り、この信号からCPU175は注射器ネック部の空気を検出して適当な対応をとることができる。また、CPU175
は、電線151で気泡検出発振器信号を受け取り、この信号は上述したように空気検出モジュール122内の発振器の適当な操作を確認するために使用される。さらに、CPU175は、フラグセンサ63の出力を受け取り、この出力からCPU175はフェースプレートが電動ヘッド14のハウジングにしっかりと固定されているかどうかを確認できる。さらにまた、CPU175は、幾つかの可能なフェースプレートのうちどれが電動ヘッド14に取り付けられているかを示す3つの磁気検出器57a,57b,57cからの信号を受け取り、これによりCPUはその作動を調整することができる。
【0053】
CPU175はまた、平行ロータリエンコーダ182からデジタル入力信号を受け取る。平行ロータリエンコーダ182は、プランジャ駆動列の回転を示すパルス信号を電線183a,183bに生成する。これらのパルスは、プランジャ駆動ラムの移動を確認するためにCPU175によって用いられる。電線183a,183bはまたパワーパック(図4C参照)に接続されている。これによりパワーパックのCPUは、エンコーダパルスをカウントしてエンコーダパルスの受信速度を所望の速度と比較することによりプランジャ移動の閉環ループ制御を実行することができる。閉環ループ制御は、全体が参照によりここに組み込まれている米国特許第4,812,724号に開示されている。
【0054】
CPU175はまた、上述した複数のデジタル制御信号、すなわち電線145の気泡検出器電力PWM信号や電線166のヒータブランケット電力PWM信号(この両方の信号は所望の電力レベルを生成するためにCPU175によってパルス幅調整される。)を生成する。CPU175はさらに、注射装置の操作状態を示すランプ45(図2参照)内の発光ダイオードを光らせるための出力信号を電線187に生成する。電線156の別の出力信号は表示部30を制御する。
【0055】
CPU175は、上述した入力および出力を用いて、CPU175内に有るか又はRAM178から読み出されたソフトウェアの制御の下で、電動ヘッド14の主な制御を実行する。上述したように、CPU175は、SPIシリアルバス156を介して、マイクロコントローラ192に接続されている。マイクロコントローラ192は、ソフトウェアの欠如やハードウェアの不良を保証するために、CPU175の作動を監視するためのモニタとして機能する(マイクロコントローラには、マイクロチップテクノロジー社の型番PIC16C63のシングルチップマイクロコントローラが使用できる)。モニターマイクロコントローラ192は、バス156を介して、CPU175の現在の作動状態の指示を受け取ることで、この機能を実行する。
【0056】
具体的には、CPU175は、バス156を介して、CPU175がプランジャの移動を要求しているかどうか、および、手動操作または自動(プログラム)制御に応じて動作が要求されているかどうかなどのCPU175の作動状態や、要求されている移動速度などの他の特定の情報を指示する。モニターマイクロコントローラ192は、電線156からこの状態情報を読み込み、この情報を電動ヘッド14からの重要なデジタル入力信号と比較して両者間の整合性を保証する。
【0057】
例えば、マイクロコントローラ192は、電線115の安全信号および電線117のホーム信号を受け取る。これらの信号が手動操作制御部が使用されていないことを示す場合には、CPU175は手動操作制御のための動作を発生させなくてもよい。一方、(電線115の信号によって示されるように)スプリングが不通電状態になれば、このことはCPU175の状態に反映されるべきである。したがって、これらの状態では、マイクロコントローラ192は、バス156から状態情報を読み込んで、CPU175が手動操作制御部からの信号と相反して作動しないように保証する。
【0058】
第2の例として、マイクロコントローラ192は、ロータリエンコーダ182からの電線183a,183bの出力信号を受け取る。マイクロコントローラ192はこれらの信号をチェックして、CPU175の状態が駆動ラムが作動すべきことを示すときだけ駆動ラムが移動することを保証するためにプランジャ駆動ラムが移動しているかどうかを確認する。さらに、この関連において、マイクロコントローラ192はドアフラグセンサ63からドアフラグ信号を受け取ることに留意すべきである。この信号が電動ヘッド14のドアがロック位置以外にあることを示す場合には、CPU175はプランジャ駆動ラムの移動を要求すべきではなく、マイクロコントローラ192はエンコーダ182からのパルスの欠如をチェックすることによってこのことを確認する。
【0059】
図4Cを参照すると、電動ヘッド14,パワーパック47およびコンソール25の相互作用をさらに理解することができる。具体的には、電動ヘッド14,パワーパック47およびコンソール25はそれぞれ、CPU175,192,194を有する。これらのCPUは、外部インターフェースを通じて相互に作用して、注射装置の制御を行う。例えば、プランジャ駆動ラムは、(上述したように)電動ヘッド14のレバー16によって制御可能であるし、または、オペレータが(CPU194を用いて)コンソール25のタッチスクリーン33で注入用プログラムを入力してプログラム注入を可能にすることによって自動制御可能である。そして、モータ速度や注入量などの注入パラメータは、コンソールCPU194によって生成されることになり、コンソールCPU194はこれらのプログラム動作を行わせるようにパワーパックCPU192と通信する。また、自動注入はタッチスクリーン33を用いて可能にされてもよいし、あるいは、パワーパック47に接続された手動スイッチまたはOEMリモートトリガを用いて注入が開始されてもよい。いずれも場合も、CPU192,194のうち適当な1つが自動注入を開始するための許可信号を生成する。
【0060】
上述したように、電動ヘッドCPU175は、CPU175の状態を監視するモニターマイクロコントローラ192と通信して、その動作が電動ヘッド14からの入力信号と一致することを保証する。同様に、CPU192,194もまた、モニターマイクロコントローラ196,198とそれぞれ通信し、関連するCPU196,198の作動を監視することで、矛盾やエラーのない動作を保証する。
【0061】
モニターマイクロコントローラ192,196,198は、CPU175,192,194の通信と並行して、互いに通信し合う。具体的には、3つのモニターマイクロコントローラは、関連するCPUから受け取る状態情報を交換することで、CPUが例えば手動操作動作、自動動作、動作なしなどと同じ作動状態になることを保証する。また、マイクロコントローラはそれぞれ、外部入力信号を受け取って、起きるべき状態移行が実際に起きることを保証する。このようにマイクロコントローラ196は、手動スイッチまたはOEMトリガーの信号を受け取ることで、自動注入をいつ開始すべきかを決定することができる。マイクロコントローラ198は、タッチスクリーン33からの入力信号を受け取ることで、自動注入をいつ開始すべきかを決定することができる。他の監視機能は、CPU175,192,194の正確で矛盾のない作動を保証することを要求されるのに応じて実行される。
【0062】
上述したように、電動ヘッドCPU175は、パワーパック47に制御信号を送って、ラム動作を要求する。パワーパック47は、駆動モータMに対する適当な電力信号を電線200に生成するためのモータサーボ制御回路を有しており、電線183のエンコーダパルスに応じてモータ動作の閉環ループ制御を実行する。
【0063】
エラー状態の場合、モニターマイクロコントローラは、電力線200と直列のスイッチ202によって表されるハードウェア不能(hardware disable)によってモータMへの電力供給を停止することができ、これによりプランジャ駆動部のどのような動きも起こさせることができる。このハードウェア不能は、モニターマイクロコントローラがエラー状態での誤った流体注入を防止できることを保証するものである。
【0064】
図1ないし3を参照すると、液圧遠隔操作部の動作について概観することができる。液圧遠隔操作部12は、遠隔操作部12のプランジャ62が遠隔操作部12の注射器本体64内へ移動するときに、医療用注射装置10による流体注入を制御するために使用されてもよい。注射器50およびコンジット52が空気で満たされていると、プランジャ62の動作は圧力変換器54で検知される圧力をつくり出す。プランジャ62が注射器本体64内へさらに移動するとき、圧力変換器54は遠隔操作部12から圧力の正の変化を検知する。この検知された圧力に応じて、注射装置10の制御回路42は、注射器24から流体を放出するために電動ヘッド14の注射器24内へプランジャ駆動ラムを移動させるように駆動モータを作動させる。実施例では、制御回路42は、圧力変換器54で検知された圧力変化量に関連した速度で注射器24から流体を放出するように駆動ラムを作動させる。他の実施例では、プランジャ駆動ラムは、圧力変化量に比例した速度で移動する。
【0065】
図示される実施例では、遠隔操作部12からの圧力を検知するために、2つの圧力変換器54a,54bが注射装置の制御回路42に接続されている。制御回路42は、上述したように、第1の圧力変換器54bで検知された圧力に応答して、注射器24内へのプランジャ駆動ラムの動作を制御する。第2の圧力変換器54aで検知された圧力は、制御回路42によって、それより上になると注射装置10が作動可能になってそれより下になると注射装置10が作動不能になるしきい値圧力と比較される。この構成は、オペレータが液圧遠隔操作部12のプランジャを解放したときに注入が停止されるのを可能にする。
【0066】
液圧遠隔操作部12は、遠隔操作部12の注射器本体64内からプランジャ62を引き出すのを可能にする特徴を有してもよい。例えば、プランジャ62は、オペレータがプランジャ62を押すと同様に引くこともできるような親指リングを備えていてもよい。ここに説明されている注射器50およびコンジット52はいつでも買えるものであって容易に入手可能であるので、遠隔操作部12のこれらの構成部品は比較的安価であり、使い捨て物品として使用されるときに最小限のコストで済むものである。
【0067】
現在使用されている医療用注射装置は、上述したような少なくとも1つの圧力変換器54を有する回路基板56を組み込むことによって、本発明の液圧遠隔操作部12を使用できるように改良されてもよい。回路基板56は、既存のソフトウェアに対する影響を最小または皆無にしながら注射装置10を液圧遠隔操作部12と共に使用可能にするために、既存の装置の制御回路42に追加されてもよい。図2は、少なくとも1つの圧力変換器54を有する例示の電子回路基板を示すが、上述したように、注射装置10を液圧遠隔操作部12と共に使用可能にするために前記圧力変換器54が医療用注射装置10の既存の制御回路42に追加されてもよい。
【0068】
上述したような液圧遠隔操作部12を用いた医療用流体注射装置10の制御方法は、圧力をつくり出すように液圧遠隔操作部12のプランジャ62を移動させるステップ、液圧遠隔操作部12によって発生した圧力を検知するステップ、および、前記検知圧力に応じて注射装置10のプランジャ駆動ラムを移動させるステップを含み、これにより医療用流体注射装置10は注射装置10に連結された注射器24から流体を放出する。実施例では、制御回路42は、圧力変換器54で検知された圧力に応じて毎秒約6mlの最大速度で注射装置10の注射器26から流体を放出するようにプランジャ駆動ラムを移動させる。
【0069】
本発明は種々の実施形態の記述により説明され、かつ、各実施形態はかなり詳細に説明されたが、添付の特許請求の範囲をそのような詳細に限定することを意図するものではない。例えば、医療用注射装置10は注射器本体64内へのプランジャ62の移動に応じて患者に流体が注入されるものとしてここでは説明されているが、医療用注射装置10は注射器本体64の外へのプランジャ62の移動に応じて患者から流体が吸引されるように構成されてもよいことが考えられる。注射装置10は、所望の操作によってこれらの機能のいずれかを単独または選択的に行うように構成されてもよい。例えば、血管空間が入ったことを確認するために最初のカテーテルで患者から少量の血液を吸引するのに用いられてもよい。
【0070】
さらなる利点および改良は、当業者にとっては容易に明らかになるであろう。したがって、より広い態様での本発明は、具多的な詳細、代表的な装置および方法、あるいは、上述または図示した例に限定されない。したがって、出願人の総体的な発明概念の範囲または精神から逸脱することなく、そのような詳細から種々の改良がなされてもよい。
【符号の説明】
【0071】
10…医療用注射装置
12…遠隔操作部(遠隔操作手段)
14…電動ヘッド
16…手動操作式移動制御レバー
24…注射器
26…注射器胴部
28…プランジャ
42…制御回路
50…注射器(第2注射器)
52…コンジット
54…圧力変換器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔操作手段と共に使用可能なように医療用注射装置を改良するために前記注射装置に接続可能な回路基板であって、
前記遠隔操作手段に接続可能で、かつ、前記遠隔操作手段から検知された圧力に応じて前記注射装置による流体の注入を制御するために前記注射装置の制御回路に信号を送るようになっている少なくとも1つの圧力変換器を備えていることを特徴とする回路基板。
【請求項2】
制御圧力を用いた医療用流体注射装置の制御方法であって、
流体媒体中に圧力を発生させるように前記遠隔操作手段のプランジャを移動させ、
該流体媒体中に発生した圧力を検知し、
前記検知圧力に応じて前記注射装置のプランジャ駆動ラムを移動させることを特徴とする医療用注射装置の制御方法。
【請求項3】
前記遠隔操作手段の前記プランジャが第1方向に移動されるとき、前記検知圧力に応じて前記プランジャ駆動ラムを前記注射装置の注射器の放出先端部へ移動させることを特徴とする請求項2に記載の医療用注射装置の制御方法。
【請求項4】
前記遠隔操作手段の前記プランジャが第2方向に移動されるとき、前記検知圧力に応じて前記プランジャ駆動ラムを前記注射装置の注射器の放出先端部から移動させることを特徴とする請求項3に記載の医療用注射装置の制御方法。
【請求項5】
制御回路を有する医療用流体注射装置を遠隔操作手段に対応するように改良する方法で
あって、
前記遠隔操作手段からの圧力を検知するようにした少なくとも1つの圧力変換器を有す
る回路基板を、前記注射装置による流体の注入を制御するために前記注射装置の前記制御
回路に接続することを特徴とする方法。
【請求項6】
医療用流体注射装置であって、
プランジャを含む注射器であって、該注射器が、動力を供給される注入を実施するため、または患者から流体を回収するために適合され、そして
注射器の作動装置が、該注射器を注入または患者から流体を回収するように操作可能に作動させ、
該注射器の作動装置が、使用者により適用される制御圧力に反応する、注射器を含む注射装置。
【請求項7】
請求項6に記載の医療用流体注射装置であって、前記制御圧力が、使用者により直接制御される流体媒体中で発生される注射装置。
【請求項8】
請求項6に記載の医療用流体注射装置であって、前記注射器の作動装置が、前記制御圧力が参照圧力より大きい場合、流体を注入するように前記注射器を作動させる注射装置。
【請求項9】
請求項6に記載の医療用流体注射装置であって、前記注射器の作動装置が、前記制御圧力が参照圧力より小さい場合、流体を回収するように前記注射器を作動させる注射装置。
【請求項10】
医療用装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公開番号】特開2009−183744(P2009−183744A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100407(P2009−100407)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【分割の表示】特願2004−505123(P2004−505123)の分割
【原出願日】平成15年5月13日(2003.5.13)
【出願人】(591178621)リーベル−フラーシャイム カンパニー (16)
【Fターム(参考)】