医療用液体および/または栄養剤を患者体内に送り込むために使用する容器
【課題】小さな力の蓋体への付与で蓋体を容器本体に被せることができ、蓋体が容器本体から非人為的な外力によっては外れ難いが、人為的な外力によっては容易に外れ、かつ蓋体を容器本体に被せる時に大きなカチッという感触が生じる容器を提供する。
【解決手段】側壁7の外面にその周方向に立設して設けられたリブ81、82、底面13に流出口10、及び流出口に接続された管状のカテーテル接続部9を底面に有する有底の円筒状容器本体1、有底の円筒状容器の上部開口部に外挿される側壁5の内面に周方向に立設して設けられたリブを有する円筒状蓋体3及び円筒状容器本体と円筒状蓋体を接続する可撓性の接続部を有して構成され医療用液体および/または栄養剤を患者内に送り込むために使用する容器において、内壁リブが分断リブ62、63、64として設けられ、かつ分断リブが接続部材が接続する側の側壁と対向側の側壁に集中的に形成されている構成とする。
【解決手段】側壁7の外面にその周方向に立設して設けられたリブ81、82、底面13に流出口10、及び流出口に接続された管状のカテーテル接続部9を底面に有する有底の円筒状容器本体1、有底の円筒状容器の上部開口部に外挿される側壁5の内面に周方向に立設して設けられたリブを有する円筒状蓋体3及び円筒状容器本体と円筒状蓋体を接続する可撓性の接続部を有して構成され医療用液体および/または栄養剤を患者内に送り込むために使用する容器において、内壁リブが分断リブ62、63、64として設けられ、かつ分断リブが接続部材が接続する側の側壁と対向側の側壁に集中的に形成されている構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用液体および/または栄養剤を貯留し、患者体内に送り込むために使用する容器、特に鼻孔および/または腹腔に設けた開口部を経由して、患者の体内に栄養剤や医薬を送り込むために使用する容器に関する。
【背景技術】
【0002】
なんらかの医学的理由、例えば食道の強度や制御性に制限又は障害があり、医療用液体および/または栄養剤等を経口的に採取できない患者に対しては、患者の体内に栄養剤や医薬を送り込む方法、例えば医療用液体および/または栄養剤が収納された容器に連結されたカテーテルを通して患者の胃および/または小腸に直接栄養を供給する方法(以下、経腸栄養法という)が採用されている。そして、前記容器としては、通常、大別するとハード容器とソフト容器と呼ばれる2種類のものが存在する。後者のソフト容器は人手によって容易に変形が可能であるので、人手によって全量を該容器内から押しだすことができるという利点はあるが、収納物として例えば粘調な流動食を該容器内に充填することが困難で、さらには該容器を再使用する際に洗浄、乾燥がしにくい等の問題がある。また、逆に前者のハード容器は、通常、人手によって変形が困難で該容器内の収納物を人手によって全量を該容器内から押しだすことができない。
【0003】
従来、経腸栄養法で使用される容器としては、例えば図1に示す形状のものが知られている。すなわち、底面13に形成された開口部10に接続するカテーテル接続部9と上部開口部11の近傍の側壁7の外面に円周方向に形成された連続リブ8を有する有底の円筒状容器本体1と該円筒状容器本体1に接続する接続部(ヒンジ)2を有するとともに、側壁5の内面に円周方向に形成されたリブ6を有する円筒状蓋体3で構成され、かつ前記リブ6と8は、前記円筒状蓋体3の開口部を前記円筒状容器本体1の開口部11に外挿して前記蓋体3を前記円筒状容器本体1に被せた場合に前記リブ6は前記リブ8を乗り越えて係止あるいは係着する構造の容器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−114055
【特許文献2】意匠登録第1373828
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記0003段落に記載の公知の容器には以下のような問題があった。すなわち、円筒状蓋体3の開口部を前記円筒状容器本体1の開口部11に外挿して前記円筒状蓋体3を円筒状容器本体1に被せる場合に、取扱者は前記リブ6を前記リブ8の上を乗り越えさせるためには大きな力を必要とし、かつ円筒状蓋体3を円筒状容器本体1に被せる際に一回の被せる操作ではリブ6がリブ8上を完全に乗り越えることは難しく、しかも取扱者は前記リブ6が前記リブ8を完全に乗り越えたかどうかの判断も難しかった。したがって、該容器の取扱者は往々にして前記リブ6が前記リブ8を完全に乗り越えない状態で使用してしまうことが生じ、そしてこのような状態で前記容器を使用した場合、例えば該容器は輸送中、あるいは使用中に前記円筒状蓋体3は前記円筒状容器本体1から外れて、該円筒状容器本体1の内容物がこぼれてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、側壁の外面にその周方向に立設して設けられたリブ(以下、外壁リブ)、底面に医療用液体および/または栄養剤の流出口、及び該流出口に接続された管状のカテーテル接続部を底面外面に有する有底の円筒状容器本体、該有底の円筒状容器の上部開口部に外挿される側壁の内面に周方向に延長して設けられたリブ(以下、内壁リブ)を有する円筒状蓋体及び前記円筒状容器本体と前記円筒状蓋体を接続する可撓性の接続部(ヒンジ)を有して構成された医療用液体および/または栄養剤を患者内に送り込むために使用する容器において、以下の(1)〜(4)の要件を満足するものであることを特徴とする容器を提供することにより、前記課題を解決することができた。
(1)前記円筒状蓋体の内壁リブが側壁内面の周方向に円弧状の分断リブとして設けられたものであること。
(2)前記(1)の円弧状分断リブは、前記接続部(ヒンジ)が接続する箇所の側壁の内面に存在する円弧状リブ(以下、リブ1)、前記リブ1が接続する側壁と対向する側の側壁内面に存在する円弧状リブ(以下、リブ2)および前記リブ2の存在する側の半円周内の側壁内面に存在する前記リブ2とは別のリブ(以下、リブ3)で構成されること。
(3)前記リブ3の数は1個以上であること。
(4)前記リブ1〜3の周方向長さ(以下、リブ長という)の全体が前記円弧状リブ2の存在する側の半円周内の側壁内面に存在すること。
【発明の効果】
【0007】
本発明の容器は、上述のような構造のものであることにより、前記0003段落に記載のような公知の容器の有する問題点を解決し、該容器の取扱者は前記円筒状蓋体3を円筒状容器本体1に被せる場合に小さな力を前記円筒状蓋体3に付与、例えば円筒状蓋体3の天面4に一回付与するだけで前記内壁リブと前記外壁リブを係止あるいは係着状態とすることが出来、かつ該係止あるいは係着状態を形成した後には非人為的な外力によっては円筒状蓋体3が円筒状容器本体1から外れる場合が少ないという効果を奏することができるものである。さらに本発明の容器は前記係止あるいは係着状態が生じる際には大きなカチッという感触が生じて前記係止あるいは係着状態が生じたことを取扱者が容易に判断できる効果も併せ奏することもできる。前記本発明の効果は前記リブ2及び3が円筒状蓋体3の側壁内面の周方向に分断した分断リブとして設けられ、かつ該リブ2及び3が前記リブ1の存在する側とは反対側の半円周内にそのリブ長全体が存在するように集中的に設けられていることに起因する、と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】蓋体を開放した状態の公知の円筒状容器(正面図)である。
【図2】蓋体を開放した状態の本願発明の1実施態様の円筒状容器(正面図)である。
【図3】図2の円筒状容器の蓋体をX−X′線で切断した断面図である。
【図4】図2の円筒状容器の蓋体をX−X′線で切断し、蓋体の分断リブの配置角度を占めす図である。
【図5】図2の別の実施態様の円筒状容器の蓋体をX−X′線で切断した断面図である。
【図6】比較品の蓋体をX−X′線で切断し、蓋体の分断リブの配置角度を占めす図である。
【図7】本発明で採用する分断リブの立設方向の断面図である。
【図8】分断リブ1と2の配置状態を示す一例である。
【図9】円筒状容器本体と一体的に形成された環状バンドを脱着可能に装着した本発明の1実施態様の円筒状容器(正面図)である。
【図10】比較品の嵌合強度を示す図である。
【図11】本発明の容器の嵌合強度を示す図である。
【図12】本発明の容器、比較品の容器、及び市販の容器の開封強度を示す図である。
【符号の説明】
【0009】
1 円筒状容器本体
2 円筒状容器本体1と円筒状蓋体3を接続する接続部(ヒンジ)
3 円筒状蓋体
4 円筒状蓋体3の底面(天面)
5 円筒状蓋体3の側壁
6 円筒状蓋体3の側壁5の内面に周方向に設けられた連続リブ
61 円筒状蓋体3の側壁5の内面に周方向に設けられた円弧状分断リブ
62 円筒状蓋体3の側壁5の内面に周方向に設けられた円弧状分断リブ
63 円筒状蓋体3の側壁5の内面に周方向に設けられた円弧状分断リブ
64 円筒状蓋体3の側壁5の内面に周方向に設けられた円弧状分断リブ
7 円筒状容器本体1の側壁
71 分断リブ
72 分断リブ
73 分断リブ
74 分断リブ
8 連続リブ
81 分断リブ
82 分断リブ
9 開口部10に接続する円筒状のカテーテル接続部
10 円筒状容器本体1の底面に形成された開口部
11 円筒状容器本体1の上部開口部
12 バンド部
13 円筒状容器本体1の底面
14 円筒状蓋体3の鍔部
15 円筒状容器本体1の上部開口部の縁端部
A 円筒状蓋体3の天面4の中心点
n ラインn
m ラインm
p ラインp
m′分断リブ62(リブ3)のリブ長の中心点
n′接続部(ヒンジ)2の周方向中心点q′と対向する側壁5の対向点
p′分断リブ64(リブ3)のリブ長の中心点
q′接続部材(ヒンジ部)の周方向中心点
n′′ 分断リブ72の周方向中心点
m′′ 分断リブ73の周方向中心点
p′′ 分断リブ74の周方向中心点
α 分断リブの配置角度
β 分断リブの配置角度
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の容器の実施の態様を説明する。
図2に示すように、本実施態様の容器は、側壁7の外面にその周方向に立設して設けられた円弧状分断リブである外壁リブ81と82、底面13に医療用液体および/または栄養剤の流出口10、及び該流出口10に接続された管状のカテーテル接続部9を底面13の外面に有する有底の円筒状容器本体1、該円筒状容器本体1の上部開口部に外挿される側壁5の内面に周方向に延長して設けられた円弧状の分断リブ61(リブ1)、62(リブ3)、63(リブ2)及び64(リブ3)を有する円筒状蓋体3及び前記円筒状容器本体1と前記円筒状蓋体3を接続する可撓性の接続部(ヒンジ)2を少なくとも有して構成される。
【0011】
前記円弧状の分断リブ61(リブ1),62(リブ3),63(リブ2)及び64(リブ3)は、例えば図3と4に示されるような構成のものが挙げられる。
分断リブ61(リブ1)は接続部(ヒンジ)2が接続する接続部の側壁5の内面に該内面の周方向に延長した分断リブとして設けられたものである。また、分断リブ63(リブ2)は前記分断リブ61(リブ1)が接続する側壁5の接続箇所と対向する側の側壁5の内面に該内面の周方向に延長した分断リブとして設けられたものである。また、分断リブ62(リブ3)と64(リブ3)は、前記分断リブ63(リブ2)の存在する側の半円周内の側壁内面に、該内面の周方向に延長した分断リブとして設けられたものである。すなわち、本実施態様の特徴の一つは、前記のように円弧状の分断リブ63(リブ2)の存在する側の半円周内の側壁5内面に、前記分断リブ62(リブ3),63(リブ2)及び64(リブ3)が集中的に設けられている点にある。
【0012】
さらに前記分断リブ3は以下のような配置で構成されるのが好ましい。すなわち、図4に示すように分断リブ62(リブ3)と64(リブ3)が分断リブ63(リブ2)の存在する側壁の時計回りと反時計回りの側壁の内面に存在し、かつ円筒状蓋体3の天面4(図2参照)の中心点Aを起点として、側壁5に接続する接続部材(ヒンジ部)の周方向中心点q′と対向する側壁5の対向点n′を結んだライン(ラインn)の角度を0度した場合に、前記ラインnと前記中心点Aと一方の分断リブ62(リブ3)のリブ長の中心点m′を結んだライン(ラインm)とのなす角度をα、及び前記ラインnと前記中心点Aと分断リブ64(リブ3)のリブ長の中心点p′を結んだライン(ラインp)とのなす角度をβとした場合に、前記αとβは好ましくは55〜75度、さらに好ましくは60〜70度である。
【0013】
また、前記内壁リブ6を構成する前記分断リブ1〜3のリブ長は前記本発明の目的を達成することができる範囲で適宜決定することができるが、その全体が、前記円弧状の分断リブ63(リブ2)の存在する側の半円周内の側壁5内面に存在することが必要である。また前記円筒状容器本体1の外壁リブ8は、内壁リブとは異なり周方向に延長して形成された連続リブとして形成されても良いし円弧状の分断リブとして形成されたものであっても良い。
【0014】
また、本実施態様におけるリブ2と3は、リブ62(リブ3)、63(リブ2)および64(リブ3)の3個の構成のものであるが、図5に示すようにリブ2と3はリブ62(リブ3)と63(リブ2)の2個の構成のものであっても良い。
【0015】
前記内壁リブ6と外壁リブ8の立設方向の断面形状は任意の形状のものであって良く、例えば図7に示すような三角形状(a)四角形状(b)、先端部の角部にアールを形成した四角形状(c)、先端部の形状が半楕円形状および略半楕円形状(d)、先端部の形状が三角形状を形成した四角形状(e)と(f)、台形状(g)のもの等が挙げられる。そして、本発明の効果を達成する上で、前記内壁リブ6と外壁リブ8の一方の断面形状が三角形状(a)で他方の断面形状が四角形状(b)のものが好ましく、さらに好ましくは前記内壁リブ6の形状が三角形状(a)で外壁リブ8の形状が四角形状(b)の組合せたものである。
【0016】
前記分断リブ61、62、63および64の断面形状が三角形状(a)で、該リブ61の頂点から天面迄の距離が、他の分断リブ62、63および64の頂点から天面迄の距離に比べて小さい場合(例えば図8のh1<h2)、前記円筒状蓋体3を円筒状容器本体1に被せる場合、小さな被せる力で、かつカチッという感触を伴って一回の被せる操作で前記円筒状蓋体3を円筒状容器本体1に確実に被せることができる。この効果は円筒状蓋体3の天面に加えられた力は円筒状蓋体3の分断リブ61と外壁リブ8の接触点を支点として、前記分断リブ62、63および64に加えられるので、これら分断リブ62、63および64は小さな力で外壁リブ8を完全に乗り越えることができることに起因すると推測される。特に内壁リブ6の立設方向の断面形状が三角形状(a)の場合、さらには内壁リブ6の立設方向の断面形状が三角形状(a)で外壁リブ8の断面形状が四角形状(b)の組合せの場合には前記効果をより一層効果的に奏することができる。同様な効果は、リブ全体の断面形状三角形状でなくてもその先端部が三角錘形状、例えば図7の(e)及び(f)形状のものであっても同様な効果を奏することができる。
【0017】
前記接続部(ヒンジ)2は円筒状容器本体1と直接に接続したものであっても良いが、容器を再使用する際に行う洗浄操作のし易さ等を考慮すると円筒状容器本体1と分離可能に構成されたものが好ましい。このような構成の接続部(ヒンジ)2としては、例えば図9に示すような円筒状容器本体1と分離可能、かつ円筒状容器本体1の側壁7の面上を回転可能に装着される環状バンド12と円筒状蓋体3と一体的に形成されたものが挙げられる。
【0018】
前記円筒状容器本体1と円筒状蓋体3を構成する合成樹脂は、同一種類の合成樹脂で構成されても良いし、また異なる樹脂で構成されても良く、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂が挙げられ、またこれら合成樹脂は硬質あるいは軟質であっても良く、これら合成樹脂を適宜、組合せて前記円筒状容器本体1と円筒状蓋体3は構成することができる。
【0019】
実施例1
本発明の容器と比較品の容器について、円筒状蓋体3と円筒状容器本体1を嵌合させる際に必要な最大挿入力と円筒状蓋体3を嵌合させた円筒状容器本体1から円筒状蓋体3を開封させる際に必要な最大開封力を測定試験した。
測定試験に用いた本発明と比較品の容器は、図9に示すような形状で、上部開口部11の内径が79.8mm及び外径が82.8mmで、リブ径が84.8mmの容量600mlの円筒状容器本体1、該円筒状容器本体1の上部開口部11に外挿される円筒状蓋体3及び前記円筒状容器本体1と円筒状蓋体3を連結する弾力性を有する接続部(ヒンジ)2を有して構成されたものである。
【0020】
本発明の容器と比較品の容器の円筒状容器本体1はポリプロピレン樹脂で構成され、また円筒状蓋体3も同様にポリプロピレン樹脂で構成され、両者の壁部の厚さはそれぞれ1.5mmである。また、接続部(ヒンジ)2は前記円筒状蓋体3及び円筒状容器本体1にそれと回転可能に装着されたバンド部12と一体的に形成されたものである。また、本発明の容器と比較品の容器の円筒状容器本体1には、容量を示す目盛が形成されている。
【0021】
また、本発明の容器を構成する円筒状容器本体1には、その側壁7の外面に図3及び4に示すような配置で矩形状の分断リブ81と82の2個が設けられている(図9参照)。前記矩形状の分断リブ81と82は、その高さが2mmでその高さ方向の中心点が開口部縁端部から3.4mmの位置にあり、かつその円周方向の長さがそれぞれ123mm、及び123mmである。また、比較品の容器を構成する円筒状容器本体1にも、前記本発明の容器を構成する円筒状容器本体1に設けられたリブと同様の構造と配置を有するリブが設けられている。なお、前記分断リブ81と82は連続リブであっても良い。
【0022】
本発明の容器を構成する円筒状蓋体3には、図3と4示すようにヒンジ部2の接続する側の側壁4の内面に分断リブ61、前記分断リブ61と対向する側の側壁5の内面に分断リブ63、及び図4において示される角度α及びβが45度である分断リブ62と64がそれぞれ設けられている。前記分断リブ61,62、63及び64の形状は円筒状蓋体3の円周方向の断面形状が三角形状で、その円周方向の長さがそれぞれ18.6mm、10mm、27.5mm及び10mmである。また、前記三角形状の各リブの底辺部分は3.5mm、底辺部分から頂点迄の高さが1.0mmである。また、三角形状の頂点は天面から、分断リブ61は5.9mmの位置にあり、他の分断リブ62,63、及び64の頂点は天面から7.1mmの位置で同じ位置にあるが、これらの位置は異なっていても良い。前記円筒状蓋体3には円筒状容器本体1からの開封を容易にするために、ヒンジ部が接続する側とは反対側の円筒状蓋体3から外方向に延出した庇形状で指により把持する鍔部14が形成されている。
【0023】
比較品の容器を構成する円筒状蓋体3には、図6に示すようにヒンジ部2の接続する側の側壁5の内面に分断リブ71、前記分断リブ71と対向する側の側壁4の内面には分断リブ73が設けられ、かつ該分断リブ73の中心点n′′と円筒状蓋体3の天面の中心点Aを結ぶ角度を0度とした場合に、反時計回りに90度の角度でその中心点をm′′とするリブ72及び時計回りに90度の角度でその中心点をP``とするリブ74がそれぞれ設けられている。前記分断リブ71,72、73及び74の形状は、円周方向の断面形状が三角形状で、その円周方向の長さがそれぞれ30mm、10mm、20mm及び10mmである。また、前記各リブはその台形の底辺部分は2.2mm、高さが0.5mmである。さらに円筒状蓋体3には円筒状容器本体1からの開封を容易にするために指で把持する鍔部14が、ヒンジ部が接続する側とは反対側に庇形状で形成されている。
【0024】
嵌合強度の測定
測定機器として、型番AG−IS(引張試験機:島津製作所製)を利用して、嵌合強度を測定した。なお、嵌合強度とは前記円筒状蓋体3と円筒状容器本体1を嵌合させる際の最大挿入力を言う。
前記本発明と比較品の円筒状容器本体1の底面部に連結された円筒状のカテーテル接続部9を切り落とした円筒状容器本体1の下部を出願人が作製した治具と治具抑え板を使用してAG−ISに固定した。該固定した円筒状容器本体1の上部開口部と前記AG−ISのチャックの間に円筒状蓋体3を置いた。前記チャックを円筒状容器本体1の方向に作動させて嵌合強度を測定した。その測定結果を図10と図11に示す。
【0025】
前記図10と図11に示す測定結果から本発明の容器は、比較品の容器に比較して以下の効果を奏することが理解できる。
図10は比較品に対する前記AG−ISのチャックの移動距離(ストローク)と嵌合強度との関係、また図11は本発明品に対する前記AG−ISのチャックの移動距離(ストローク)と嵌合強度との関係を示すものであるが、図10においては2個のピークAとBが見られるのに対して、図11においては1個のピークCが見られるに過ぎない。この結果は、前記ピークA、B及びCは前記円筒状蓋体3のリブが円筒状容器本体1のリブを乗り越えて前記円筒状蓋体3と円筒状容器本体1が嵌合するに必要な嵌合強度ピ−クを示すものであるから、本発明品は一回の嵌合操作で前記円筒状蓋体3と円筒状容器本体1に嵌合することが容易であるのに対して、比較品は前記円筒状蓋体3と円筒状容器本体1を一回の嵌合操作では前記前記円筒状蓋体3と円筒状容器本体1を完全に嵌合させることが困難であることを示している。また、前記の試験結果は、前記ピークAとBの嵌合強度がそれぞれ略27(N)と23(N)であるのに対して、前記ピークCの嵌合強度が略16(N)であるから、比較品は本発明品に比べて前記円筒状蓋体3と円筒状容器本体1を嵌合する際に大きな嵌合強度を必要とすることを示している。
【0026】
さらに、本発明の容器において、本発明の容器で採用する構成要件、特に円筒状蓋体3のリブの構成要件を採用すれば、15〜20(N)程度の嵌合強度の容器を容易に得ることができるが、前記範囲の嵌合強度を有する本発明の容器は、20〜60歳女性の指1本の押す力の平均が約20(N)であるというデータがあることからみて、円筒状蓋体3を看護師がスムーズに指1本で開封できるという観点からみて、看護師にとって非常に使用し易いものである。
【0027】
開封強度についての開封試験
開封強度とは円筒状蓋体が外挿された円筒状容器本体から円筒状蓋体を開封する際に必要な最大開封力を言う。
前記嵌合強度の測定試験に使用した本発明と比較品の容器(ただし、円筒状容器本体1のカテーテル接続部9を切り落としていないもの)について、下記の開封試験を行った。
円筒状容器本体1の対向目盛の位置に円筒状蓋体3の鍔部14の中心がくるようにセットし円筒状容器本体1と円筒状蓋体3を確実に嵌合させた。次にプッシュプルスケール(社製:)のプル(PULL)側に図13に示す又鉤を取り付け、又鉤の鉤部の先端を円筒状蓋体3の鍔部14に引っ掛け、該円筒状蓋体3を開封方向に引き上げ、開封の際の最大開封強度を測定した。
【0028】
前記開封試験を本発明と比較品の容器の他に市販の栄養容器についても実施し、その試験結果を図12に示す。図12に示す試験結果から比較品の容器を開封する場合の開封強度は略25(N)というような大きな開封強度を必要とするのに対して、本発明の容器を開封する場合の開封強度は略15(N)というような小さな開封強度である。したがって、本発明の容器は比較品の容器に比べて円筒状蓋体の開封を無理なく行うことができる。
【0029】
さらに、前記図12に示す本発明の容器の開封強度は略15(N)であるが、本発明の容器においては本発明の容器で採用する構成要件、特に円筒状蓋体3のリブの配置構成を採用すれば、14〜17(N)程度の開封強度の容器を容易に得ることができる。そして前記範囲の開封強度を有する容器は、女性が指で水平ボタンを押す力は平均が約14.73(N)であるというデータがあることからみて、開封強度として非常に好適なものであり、かつ市販品のように開封強度が略5(N)程度というように非常に低くないので、例えば該容器に付与される非意図的な外力による開封操作、例えば他物との接触あるいは衝突等によって円筒状蓋体3が円筒状容器本体1から開封される危険性が少ないものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用液体および/または栄養剤を貯留し、患者体内に送り込むために使用する容器、特に鼻孔および/または腹腔に設けた開口部を経由して、患者の体内に栄養剤や医薬を送り込むために使用する容器に関する。
【背景技術】
【0002】
なんらかの医学的理由、例えば食道の強度や制御性に制限又は障害があり、医療用液体および/または栄養剤等を経口的に採取できない患者に対しては、患者の体内に栄養剤や医薬を送り込む方法、例えば医療用液体および/または栄養剤が収納された容器に連結されたカテーテルを通して患者の胃および/または小腸に直接栄養を供給する方法(以下、経腸栄養法という)が採用されている。そして、前記容器としては、通常、大別するとハード容器とソフト容器と呼ばれる2種類のものが存在する。後者のソフト容器は人手によって容易に変形が可能であるので、人手によって全量を該容器内から押しだすことができるという利点はあるが、収納物として例えば粘調な流動食を該容器内に充填することが困難で、さらには該容器を再使用する際に洗浄、乾燥がしにくい等の問題がある。また、逆に前者のハード容器は、通常、人手によって変形が困難で該容器内の収納物を人手によって全量を該容器内から押しだすことができない。
【0003】
従来、経腸栄養法で使用される容器としては、例えば図1に示す形状のものが知られている。すなわち、底面13に形成された開口部10に接続するカテーテル接続部9と上部開口部11の近傍の側壁7の外面に円周方向に形成された連続リブ8を有する有底の円筒状容器本体1と該円筒状容器本体1に接続する接続部(ヒンジ)2を有するとともに、側壁5の内面に円周方向に形成されたリブ6を有する円筒状蓋体3で構成され、かつ前記リブ6と8は、前記円筒状蓋体3の開口部を前記円筒状容器本体1の開口部11に外挿して前記蓋体3を前記円筒状容器本体1に被せた場合に前記リブ6は前記リブ8を乗り越えて係止あるいは係着する構造の容器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−114055
【特許文献2】意匠登録第1373828
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記0003段落に記載の公知の容器には以下のような問題があった。すなわち、円筒状蓋体3の開口部を前記円筒状容器本体1の開口部11に外挿して前記円筒状蓋体3を円筒状容器本体1に被せる場合に、取扱者は前記リブ6を前記リブ8の上を乗り越えさせるためには大きな力を必要とし、かつ円筒状蓋体3を円筒状容器本体1に被せる際に一回の被せる操作ではリブ6がリブ8上を完全に乗り越えることは難しく、しかも取扱者は前記リブ6が前記リブ8を完全に乗り越えたかどうかの判断も難しかった。したがって、該容器の取扱者は往々にして前記リブ6が前記リブ8を完全に乗り越えない状態で使用してしまうことが生じ、そしてこのような状態で前記容器を使用した場合、例えば該容器は輸送中、あるいは使用中に前記円筒状蓋体3は前記円筒状容器本体1から外れて、該円筒状容器本体1の内容物がこぼれてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、側壁の外面にその周方向に立設して設けられたリブ(以下、外壁リブ)、底面に医療用液体および/または栄養剤の流出口、及び該流出口に接続された管状のカテーテル接続部を底面外面に有する有底の円筒状容器本体、該有底の円筒状容器の上部開口部に外挿される側壁の内面に周方向に延長して設けられたリブ(以下、内壁リブ)を有する円筒状蓋体及び前記円筒状容器本体と前記円筒状蓋体を接続する可撓性の接続部(ヒンジ)を有して構成された医療用液体および/または栄養剤を患者内に送り込むために使用する容器において、以下の(1)〜(4)の要件を満足するものであることを特徴とする容器を提供することにより、前記課題を解決することができた。
(1)前記円筒状蓋体の内壁リブが側壁内面の周方向に円弧状の分断リブとして設けられたものであること。
(2)前記(1)の円弧状分断リブは、前記接続部(ヒンジ)が接続する箇所の側壁の内面に存在する円弧状リブ(以下、リブ1)、前記リブ1が接続する側壁と対向する側の側壁内面に存在する円弧状リブ(以下、リブ2)および前記リブ2の存在する側の半円周内の側壁内面に存在する前記リブ2とは別のリブ(以下、リブ3)で構成されること。
(3)前記リブ3の数は1個以上であること。
(4)前記リブ1〜3の周方向長さ(以下、リブ長という)の全体が前記円弧状リブ2の存在する側の半円周内の側壁内面に存在すること。
【発明の効果】
【0007】
本発明の容器は、上述のような構造のものであることにより、前記0003段落に記載のような公知の容器の有する問題点を解決し、該容器の取扱者は前記円筒状蓋体3を円筒状容器本体1に被せる場合に小さな力を前記円筒状蓋体3に付与、例えば円筒状蓋体3の天面4に一回付与するだけで前記内壁リブと前記外壁リブを係止あるいは係着状態とすることが出来、かつ該係止あるいは係着状態を形成した後には非人為的な外力によっては円筒状蓋体3が円筒状容器本体1から外れる場合が少ないという効果を奏することができるものである。さらに本発明の容器は前記係止あるいは係着状態が生じる際には大きなカチッという感触が生じて前記係止あるいは係着状態が生じたことを取扱者が容易に判断できる効果も併せ奏することもできる。前記本発明の効果は前記リブ2及び3が円筒状蓋体3の側壁内面の周方向に分断した分断リブとして設けられ、かつ該リブ2及び3が前記リブ1の存在する側とは反対側の半円周内にそのリブ長全体が存在するように集中的に設けられていることに起因する、と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】蓋体を開放した状態の公知の円筒状容器(正面図)である。
【図2】蓋体を開放した状態の本願発明の1実施態様の円筒状容器(正面図)である。
【図3】図2の円筒状容器の蓋体をX−X′線で切断した断面図である。
【図4】図2の円筒状容器の蓋体をX−X′線で切断し、蓋体の分断リブの配置角度を占めす図である。
【図5】図2の別の実施態様の円筒状容器の蓋体をX−X′線で切断した断面図である。
【図6】比較品の蓋体をX−X′線で切断し、蓋体の分断リブの配置角度を占めす図である。
【図7】本発明で採用する分断リブの立設方向の断面図である。
【図8】分断リブ1と2の配置状態を示す一例である。
【図9】円筒状容器本体と一体的に形成された環状バンドを脱着可能に装着した本発明の1実施態様の円筒状容器(正面図)である。
【図10】比較品の嵌合強度を示す図である。
【図11】本発明の容器の嵌合強度を示す図である。
【図12】本発明の容器、比較品の容器、及び市販の容器の開封強度を示す図である。
【符号の説明】
【0009】
1 円筒状容器本体
2 円筒状容器本体1と円筒状蓋体3を接続する接続部(ヒンジ)
3 円筒状蓋体
4 円筒状蓋体3の底面(天面)
5 円筒状蓋体3の側壁
6 円筒状蓋体3の側壁5の内面に周方向に設けられた連続リブ
61 円筒状蓋体3の側壁5の内面に周方向に設けられた円弧状分断リブ
62 円筒状蓋体3の側壁5の内面に周方向に設けられた円弧状分断リブ
63 円筒状蓋体3の側壁5の内面に周方向に設けられた円弧状分断リブ
64 円筒状蓋体3の側壁5の内面に周方向に設けられた円弧状分断リブ
7 円筒状容器本体1の側壁
71 分断リブ
72 分断リブ
73 分断リブ
74 分断リブ
8 連続リブ
81 分断リブ
82 分断リブ
9 開口部10に接続する円筒状のカテーテル接続部
10 円筒状容器本体1の底面に形成された開口部
11 円筒状容器本体1の上部開口部
12 バンド部
13 円筒状容器本体1の底面
14 円筒状蓋体3の鍔部
15 円筒状容器本体1の上部開口部の縁端部
A 円筒状蓋体3の天面4の中心点
n ラインn
m ラインm
p ラインp
m′分断リブ62(リブ3)のリブ長の中心点
n′接続部(ヒンジ)2の周方向中心点q′と対向する側壁5の対向点
p′分断リブ64(リブ3)のリブ長の中心点
q′接続部材(ヒンジ部)の周方向中心点
n′′ 分断リブ72の周方向中心点
m′′ 分断リブ73の周方向中心点
p′′ 分断リブ74の周方向中心点
α 分断リブの配置角度
β 分断リブの配置角度
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の容器の実施の態様を説明する。
図2に示すように、本実施態様の容器は、側壁7の外面にその周方向に立設して設けられた円弧状分断リブである外壁リブ81と82、底面13に医療用液体および/または栄養剤の流出口10、及び該流出口10に接続された管状のカテーテル接続部9を底面13の外面に有する有底の円筒状容器本体1、該円筒状容器本体1の上部開口部に外挿される側壁5の内面に周方向に延長して設けられた円弧状の分断リブ61(リブ1)、62(リブ3)、63(リブ2)及び64(リブ3)を有する円筒状蓋体3及び前記円筒状容器本体1と前記円筒状蓋体3を接続する可撓性の接続部(ヒンジ)2を少なくとも有して構成される。
【0011】
前記円弧状の分断リブ61(リブ1),62(リブ3),63(リブ2)及び64(リブ3)は、例えば図3と4に示されるような構成のものが挙げられる。
分断リブ61(リブ1)は接続部(ヒンジ)2が接続する接続部の側壁5の内面に該内面の周方向に延長した分断リブとして設けられたものである。また、分断リブ63(リブ2)は前記分断リブ61(リブ1)が接続する側壁5の接続箇所と対向する側の側壁5の内面に該内面の周方向に延長した分断リブとして設けられたものである。また、分断リブ62(リブ3)と64(リブ3)は、前記分断リブ63(リブ2)の存在する側の半円周内の側壁内面に、該内面の周方向に延長した分断リブとして設けられたものである。すなわち、本実施態様の特徴の一つは、前記のように円弧状の分断リブ63(リブ2)の存在する側の半円周内の側壁5内面に、前記分断リブ62(リブ3),63(リブ2)及び64(リブ3)が集中的に設けられている点にある。
【0012】
さらに前記分断リブ3は以下のような配置で構成されるのが好ましい。すなわち、図4に示すように分断リブ62(リブ3)と64(リブ3)が分断リブ63(リブ2)の存在する側壁の時計回りと反時計回りの側壁の内面に存在し、かつ円筒状蓋体3の天面4(図2参照)の中心点Aを起点として、側壁5に接続する接続部材(ヒンジ部)の周方向中心点q′と対向する側壁5の対向点n′を結んだライン(ラインn)の角度を0度した場合に、前記ラインnと前記中心点Aと一方の分断リブ62(リブ3)のリブ長の中心点m′を結んだライン(ラインm)とのなす角度をα、及び前記ラインnと前記中心点Aと分断リブ64(リブ3)のリブ長の中心点p′を結んだライン(ラインp)とのなす角度をβとした場合に、前記αとβは好ましくは55〜75度、さらに好ましくは60〜70度である。
【0013】
また、前記内壁リブ6を構成する前記分断リブ1〜3のリブ長は前記本発明の目的を達成することができる範囲で適宜決定することができるが、その全体が、前記円弧状の分断リブ63(リブ2)の存在する側の半円周内の側壁5内面に存在することが必要である。また前記円筒状容器本体1の外壁リブ8は、内壁リブとは異なり周方向に延長して形成された連続リブとして形成されても良いし円弧状の分断リブとして形成されたものであっても良い。
【0014】
また、本実施態様におけるリブ2と3は、リブ62(リブ3)、63(リブ2)および64(リブ3)の3個の構成のものであるが、図5に示すようにリブ2と3はリブ62(リブ3)と63(リブ2)の2個の構成のものであっても良い。
【0015】
前記内壁リブ6と外壁リブ8の立設方向の断面形状は任意の形状のものであって良く、例えば図7に示すような三角形状(a)四角形状(b)、先端部の角部にアールを形成した四角形状(c)、先端部の形状が半楕円形状および略半楕円形状(d)、先端部の形状が三角形状を形成した四角形状(e)と(f)、台形状(g)のもの等が挙げられる。そして、本発明の効果を達成する上で、前記内壁リブ6と外壁リブ8の一方の断面形状が三角形状(a)で他方の断面形状が四角形状(b)のものが好ましく、さらに好ましくは前記内壁リブ6の形状が三角形状(a)で外壁リブ8の形状が四角形状(b)の組合せたものである。
【0016】
前記分断リブ61、62、63および64の断面形状が三角形状(a)で、該リブ61の頂点から天面迄の距離が、他の分断リブ62、63および64の頂点から天面迄の距離に比べて小さい場合(例えば図8のh1<h2)、前記円筒状蓋体3を円筒状容器本体1に被せる場合、小さな被せる力で、かつカチッという感触を伴って一回の被せる操作で前記円筒状蓋体3を円筒状容器本体1に確実に被せることができる。この効果は円筒状蓋体3の天面に加えられた力は円筒状蓋体3の分断リブ61と外壁リブ8の接触点を支点として、前記分断リブ62、63および64に加えられるので、これら分断リブ62、63および64は小さな力で外壁リブ8を完全に乗り越えることができることに起因すると推測される。特に内壁リブ6の立設方向の断面形状が三角形状(a)の場合、さらには内壁リブ6の立設方向の断面形状が三角形状(a)で外壁リブ8の断面形状が四角形状(b)の組合せの場合には前記効果をより一層効果的に奏することができる。同様な効果は、リブ全体の断面形状三角形状でなくてもその先端部が三角錘形状、例えば図7の(e)及び(f)形状のものであっても同様な効果を奏することができる。
【0017】
前記接続部(ヒンジ)2は円筒状容器本体1と直接に接続したものであっても良いが、容器を再使用する際に行う洗浄操作のし易さ等を考慮すると円筒状容器本体1と分離可能に構成されたものが好ましい。このような構成の接続部(ヒンジ)2としては、例えば図9に示すような円筒状容器本体1と分離可能、かつ円筒状容器本体1の側壁7の面上を回転可能に装着される環状バンド12と円筒状蓋体3と一体的に形成されたものが挙げられる。
【0018】
前記円筒状容器本体1と円筒状蓋体3を構成する合成樹脂は、同一種類の合成樹脂で構成されても良いし、また異なる樹脂で構成されても良く、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂が挙げられ、またこれら合成樹脂は硬質あるいは軟質であっても良く、これら合成樹脂を適宜、組合せて前記円筒状容器本体1と円筒状蓋体3は構成することができる。
【0019】
実施例1
本発明の容器と比較品の容器について、円筒状蓋体3と円筒状容器本体1を嵌合させる際に必要な最大挿入力と円筒状蓋体3を嵌合させた円筒状容器本体1から円筒状蓋体3を開封させる際に必要な最大開封力を測定試験した。
測定試験に用いた本発明と比較品の容器は、図9に示すような形状で、上部開口部11の内径が79.8mm及び外径が82.8mmで、リブ径が84.8mmの容量600mlの円筒状容器本体1、該円筒状容器本体1の上部開口部11に外挿される円筒状蓋体3及び前記円筒状容器本体1と円筒状蓋体3を連結する弾力性を有する接続部(ヒンジ)2を有して構成されたものである。
【0020】
本発明の容器と比較品の容器の円筒状容器本体1はポリプロピレン樹脂で構成され、また円筒状蓋体3も同様にポリプロピレン樹脂で構成され、両者の壁部の厚さはそれぞれ1.5mmである。また、接続部(ヒンジ)2は前記円筒状蓋体3及び円筒状容器本体1にそれと回転可能に装着されたバンド部12と一体的に形成されたものである。また、本発明の容器と比較品の容器の円筒状容器本体1には、容量を示す目盛が形成されている。
【0021】
また、本発明の容器を構成する円筒状容器本体1には、その側壁7の外面に図3及び4に示すような配置で矩形状の分断リブ81と82の2個が設けられている(図9参照)。前記矩形状の分断リブ81と82は、その高さが2mmでその高さ方向の中心点が開口部縁端部から3.4mmの位置にあり、かつその円周方向の長さがそれぞれ123mm、及び123mmである。また、比較品の容器を構成する円筒状容器本体1にも、前記本発明の容器を構成する円筒状容器本体1に設けられたリブと同様の構造と配置を有するリブが設けられている。なお、前記分断リブ81と82は連続リブであっても良い。
【0022】
本発明の容器を構成する円筒状蓋体3には、図3と4示すようにヒンジ部2の接続する側の側壁4の内面に分断リブ61、前記分断リブ61と対向する側の側壁5の内面に分断リブ63、及び図4において示される角度α及びβが45度である分断リブ62と64がそれぞれ設けられている。前記分断リブ61,62、63及び64の形状は円筒状蓋体3の円周方向の断面形状が三角形状で、その円周方向の長さがそれぞれ18.6mm、10mm、27.5mm及び10mmである。また、前記三角形状の各リブの底辺部分は3.5mm、底辺部分から頂点迄の高さが1.0mmである。また、三角形状の頂点は天面から、分断リブ61は5.9mmの位置にあり、他の分断リブ62,63、及び64の頂点は天面から7.1mmの位置で同じ位置にあるが、これらの位置は異なっていても良い。前記円筒状蓋体3には円筒状容器本体1からの開封を容易にするために、ヒンジ部が接続する側とは反対側の円筒状蓋体3から外方向に延出した庇形状で指により把持する鍔部14が形成されている。
【0023】
比較品の容器を構成する円筒状蓋体3には、図6に示すようにヒンジ部2の接続する側の側壁5の内面に分断リブ71、前記分断リブ71と対向する側の側壁4の内面には分断リブ73が設けられ、かつ該分断リブ73の中心点n′′と円筒状蓋体3の天面の中心点Aを結ぶ角度を0度とした場合に、反時計回りに90度の角度でその中心点をm′′とするリブ72及び時計回りに90度の角度でその中心点をP``とするリブ74がそれぞれ設けられている。前記分断リブ71,72、73及び74の形状は、円周方向の断面形状が三角形状で、その円周方向の長さがそれぞれ30mm、10mm、20mm及び10mmである。また、前記各リブはその台形の底辺部分は2.2mm、高さが0.5mmである。さらに円筒状蓋体3には円筒状容器本体1からの開封を容易にするために指で把持する鍔部14が、ヒンジ部が接続する側とは反対側に庇形状で形成されている。
【0024】
嵌合強度の測定
測定機器として、型番AG−IS(引張試験機:島津製作所製)を利用して、嵌合強度を測定した。なお、嵌合強度とは前記円筒状蓋体3と円筒状容器本体1を嵌合させる際の最大挿入力を言う。
前記本発明と比較品の円筒状容器本体1の底面部に連結された円筒状のカテーテル接続部9を切り落とした円筒状容器本体1の下部を出願人が作製した治具と治具抑え板を使用してAG−ISに固定した。該固定した円筒状容器本体1の上部開口部と前記AG−ISのチャックの間に円筒状蓋体3を置いた。前記チャックを円筒状容器本体1の方向に作動させて嵌合強度を測定した。その測定結果を図10と図11に示す。
【0025】
前記図10と図11に示す測定結果から本発明の容器は、比較品の容器に比較して以下の効果を奏することが理解できる。
図10は比較品に対する前記AG−ISのチャックの移動距離(ストローク)と嵌合強度との関係、また図11は本発明品に対する前記AG−ISのチャックの移動距離(ストローク)と嵌合強度との関係を示すものであるが、図10においては2個のピークAとBが見られるのに対して、図11においては1個のピークCが見られるに過ぎない。この結果は、前記ピークA、B及びCは前記円筒状蓋体3のリブが円筒状容器本体1のリブを乗り越えて前記円筒状蓋体3と円筒状容器本体1が嵌合するに必要な嵌合強度ピ−クを示すものであるから、本発明品は一回の嵌合操作で前記円筒状蓋体3と円筒状容器本体1に嵌合することが容易であるのに対して、比較品は前記円筒状蓋体3と円筒状容器本体1を一回の嵌合操作では前記前記円筒状蓋体3と円筒状容器本体1を完全に嵌合させることが困難であることを示している。また、前記の試験結果は、前記ピークAとBの嵌合強度がそれぞれ略27(N)と23(N)であるのに対して、前記ピークCの嵌合強度が略16(N)であるから、比較品は本発明品に比べて前記円筒状蓋体3と円筒状容器本体1を嵌合する際に大きな嵌合強度を必要とすることを示している。
【0026】
さらに、本発明の容器において、本発明の容器で採用する構成要件、特に円筒状蓋体3のリブの構成要件を採用すれば、15〜20(N)程度の嵌合強度の容器を容易に得ることができるが、前記範囲の嵌合強度を有する本発明の容器は、20〜60歳女性の指1本の押す力の平均が約20(N)であるというデータがあることからみて、円筒状蓋体3を看護師がスムーズに指1本で開封できるという観点からみて、看護師にとって非常に使用し易いものである。
【0027】
開封強度についての開封試験
開封強度とは円筒状蓋体が外挿された円筒状容器本体から円筒状蓋体を開封する際に必要な最大開封力を言う。
前記嵌合強度の測定試験に使用した本発明と比較品の容器(ただし、円筒状容器本体1のカテーテル接続部9を切り落としていないもの)について、下記の開封試験を行った。
円筒状容器本体1の対向目盛の位置に円筒状蓋体3の鍔部14の中心がくるようにセットし円筒状容器本体1と円筒状蓋体3を確実に嵌合させた。次にプッシュプルスケール(社製:)のプル(PULL)側に図13に示す又鉤を取り付け、又鉤の鉤部の先端を円筒状蓋体3の鍔部14に引っ掛け、該円筒状蓋体3を開封方向に引き上げ、開封の際の最大開封強度を測定した。
【0028】
前記開封試験を本発明と比較品の容器の他に市販の栄養容器についても実施し、その試験結果を図12に示す。図12に示す試験結果から比較品の容器を開封する場合の開封強度は略25(N)というような大きな開封強度を必要とするのに対して、本発明の容器を開封する場合の開封強度は略15(N)というような小さな開封強度である。したがって、本発明の容器は比較品の容器に比べて円筒状蓋体の開封を無理なく行うことができる。
【0029】
さらに、前記図12に示す本発明の容器の開封強度は略15(N)であるが、本発明の容器においては本発明の容器で採用する構成要件、特に円筒状蓋体3のリブの配置構成を採用すれば、14〜17(N)程度の開封強度の容器を容易に得ることができる。そして前記範囲の開封強度を有する容器は、女性が指で水平ボタンを押す力は平均が約14.73(N)であるというデータがあることからみて、開封強度として非常に好適なものであり、かつ市販品のように開封強度が略5(N)程度というように非常に低くないので、例えば該容器に付与される非意図的な外力による開封操作、例えば他物との接触あるいは衝突等によって円筒状蓋体3が円筒状容器本体1から開封される危険性が少ないものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁の外面にその周方向に立設して設けられたリブ(外壁リブ)、底面に医療用液体および/または栄養剤の流出口、及び該流出口に接続された管状のカテーテル接続部を底面外面に有する有底の円筒状容器本体、側壁の内面に周方向に延長して設けられたリブ(内壁リブ)を有する前記有底の円筒状容器の上部開口部に外挿される円筒状蓋体及び前記円筒状容器本体と前記円筒状蓋体を接続する可撓性の接続部(ヒンジ)を有して構成された医療用液体および/または栄養剤を患者内に送り込むために使用する容器において、以下の(1)〜(4)の要件を満足するものであることを特徴とする容器。
(1)前記円筒状蓋体の内壁リブが側壁内面の周方向に円弧状の分断リブとして設けられたものであること。
(2)前記(1)の円弧状分断リブは、前記接続部(ヒンジ)が接続する箇所の側壁の内面に存在する円弧状リブ(以下、リブ1)、前記リブ1が接続する側壁と対向する側の側壁内面に存在する円弧状リブ(以下、リブ2)および前記円弧状リブ2の存在する側の半円周内の側壁内面に存在する前記リブ2とは別のリブ(以下、リブ3)で構成されること。
(3)前記円弧状リブ3の数は1個以上であること。
(4)前記円弧状リブ1〜3の周方向長さの全体が前記円弧状リブ2の存在する側の半円周内の側壁内面に存在すること
【請求項2】
2個のリブ3がリブ2の存在する側壁内面の時計回りと反時計回りの側壁内面に存在する請求項1に記載の容器。
【請求項3】
2個のリブ3が、円筒状蓋体の天面の中心点を起点として、円筒状蓋体の側壁に接続する接続部材(ヒンジ部)の周方向中心点と対向する側壁5の対向点を結んだラインの角度を0度した場合に、前記ラインと前記天面の中心点と一方の円弧状の分断リブ3のリブ長の中心点を結んだラインとのなす角度をα、及び前記ラインと前記天面の中心点Aと他方の円弧状の分断リブ3のリブ長の中心点とを結んだラインとのなす角度をβとした場合に、前記αとβが55〜75度である請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記αとβが60〜70度である請求項2または3に記載の容器。
【請求項5】
内壁リブと前記外壁リブは、その一方の断面形状が三角形状(a)で他方の断面形状が四角形状(b)である請求項1〜4のいずれかに記載の容器。
【請求項6】
内壁リブの形状が三角形状(a)の断面形状で、外壁リブの形状が四角形状(b)の断面形状のものである請求項5に記載の容器。
【請求項7】
リブ1がリブ2および3に比べて円筒状蓋体の天面に近い位置の側壁内面に形成された請求項1〜6のいずれかに記載の容器。
【請求項8】
15〜20(N)の嵌合強度と14〜17(N)程度の開封強度を有する請求項1〜7のいずれかに記載の容器。
【請求項1】
側壁の外面にその周方向に立設して設けられたリブ(外壁リブ)、底面に医療用液体および/または栄養剤の流出口、及び該流出口に接続された管状のカテーテル接続部を底面外面に有する有底の円筒状容器本体、側壁の内面に周方向に延長して設けられたリブ(内壁リブ)を有する前記有底の円筒状容器の上部開口部に外挿される円筒状蓋体及び前記円筒状容器本体と前記円筒状蓋体を接続する可撓性の接続部(ヒンジ)を有して構成された医療用液体および/または栄養剤を患者内に送り込むために使用する容器において、以下の(1)〜(4)の要件を満足するものであることを特徴とする容器。
(1)前記円筒状蓋体の内壁リブが側壁内面の周方向に円弧状の分断リブとして設けられたものであること。
(2)前記(1)の円弧状分断リブは、前記接続部(ヒンジ)が接続する箇所の側壁の内面に存在する円弧状リブ(以下、リブ1)、前記リブ1が接続する側壁と対向する側の側壁内面に存在する円弧状リブ(以下、リブ2)および前記円弧状リブ2の存在する側の半円周内の側壁内面に存在する前記リブ2とは別のリブ(以下、リブ3)で構成されること。
(3)前記円弧状リブ3の数は1個以上であること。
(4)前記円弧状リブ1〜3の周方向長さの全体が前記円弧状リブ2の存在する側の半円周内の側壁内面に存在すること
【請求項2】
2個のリブ3がリブ2の存在する側壁内面の時計回りと反時計回りの側壁内面に存在する請求項1に記載の容器。
【請求項3】
2個のリブ3が、円筒状蓋体の天面の中心点を起点として、円筒状蓋体の側壁に接続する接続部材(ヒンジ部)の周方向中心点と対向する側壁5の対向点を結んだラインの角度を0度した場合に、前記ラインと前記天面の中心点と一方の円弧状の分断リブ3のリブ長の中心点を結んだラインとのなす角度をα、及び前記ラインと前記天面の中心点Aと他方の円弧状の分断リブ3のリブ長の中心点とを結んだラインとのなす角度をβとした場合に、前記αとβが55〜75度である請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記αとβが60〜70度である請求項2または3に記載の容器。
【請求項5】
内壁リブと前記外壁リブは、その一方の断面形状が三角形状(a)で他方の断面形状が四角形状(b)である請求項1〜4のいずれかに記載の容器。
【請求項6】
内壁リブの形状が三角形状(a)の断面形状で、外壁リブの形状が四角形状(b)の断面形状のものである請求項5に記載の容器。
【請求項7】
リブ1がリブ2および3に比べて円筒状蓋体の天面に近い位置の側壁内面に形成された請求項1〜6のいずれかに記載の容器。
【請求項8】
15〜20(N)の嵌合強度と14〜17(N)程度の開封強度を有する請求項1〜7のいずれかに記載の容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−152342(P2012−152342A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13280(P2011−13280)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】
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