説明

医療用瓶針

【課題】ポートに取り付けられた栓に針管を突き刺して液を流通させる医療用瓶針において、操作者に手間がかかることなく、穿刺した瓶針に強い力が加わっても、瓶針がゴム栓から抜け落ちないようにする。
【解決手段】瓶針10は、ゴム栓22に穿刺される針管部11と、鍔部12と、チューブ接続部13とから構成されている。針管部11の基端部には、外周にネジ山(ネジ部15a)が形成されている。ネジ部の有効長Lはゴム栓22の厚みDよりも短く設定されている。ネジ部において、針管先端部側から基端側(鍔部12側)にかけてネジ径がだんだん大きくなる拡径部分を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液が収納される容器などのポートに取り付けられた栓に針管を突き刺して液を流通させる医療用瓶針に関する。
【背景技術】
【0002】
点滴用輸液セットにおいて、輸液パックに薬液が収納されており、そのポートに取り付けられたゴム栓に瓶針を穿刺することによって、中の薬液を取り出すようになっている。
すなわち、薬液が収納された輸液バッグのポートにはゴム栓が取り付けられている。一方、瓶針にはチューブの一端が接続されている。そして、この瓶針をゴム栓に突き刺すと、薬液はその瓶針を通ってチューブに流れ、生体内に導入される。
【0003】
この医療用瓶針は通常、ゴム栓に穿刺されてこれを貫通する針管部と、その基端に形成された鍔部と、チューブの先端を嵌め込む接続部とから構成されており、針管部を含む全体がプラスチックで形成されているものの他に、金属製の針管をブラスチック製の鍔部と接合したものもある。
瓶針をゴム栓に穿刺するときは、操作者は鍔部を把持して穿刺することで、容易に穿刺することができる。
【0004】
瓶針はゴム栓の厚みと比べて長めに設定されており、一旦ゴム栓に穿刺された瓶針は、針管がゴム栓で締付けられて保持されるので、その摩擦力により通常は抜け落ちることはない。
【特許文献1】特開平8−117344号公報
【特許文献2】特開2002−11097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、輸液ライン自体の重みによって、あるいは輸液を導入している患者が動くことによってチューブが引っ張られたり、チューブに人や物が引っ掛かかってチューブが引っ張られたりして、瓶針が強く引っ張られると、摩擦力だけでは耐えられずに瓶針がゴム栓から抜け落ちる可能性がある。
輸液セットの瓶針が脱落した場合、治療に差し支えたり、汚染したり、生体から血液がチューブを通して体外に流出する可能性がある。
【0006】
現在、この脱落を防止するために、例えば、ゴム栓と瓶針とを、紐やテープで固定する方法がとられているが、十分な脱落防止効果が得られるとはいえず、またこの方法で固定するには操作者に手間がかかる。
また、特許文献1に記載されているように、専用の固定具を用いてゴム栓と瓶針とを固定する方法もとられているが、やはり固定するのに手間がかかるし、固定具の分だけコストがかかる。
【0007】
さらに、瓶針を別のポートに付け替えて使用するなど、ゴム栓に穿刺して使用した瓶針を抜いて、もう一度ゴム栓に穿刺して繰り返し使用する場合もある。その場合、当該瓶針をゴム栓に対して2度目に穿刺する深さが1回目の穿刺時より深くなると、1回目の穿刺時にはゴム栓の外側にあった部分が2回目の穿刺ではより内側に入り込んでポート内に汚れが入り込む原因となる。従って、操作者が瓶針を一定の深さで穿刺できるようにすることが好ましい。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、ポートに取り付けられた栓に針管を突き刺して液を流通させる医療用瓶針において、操作者に手間がかかることなく、穿刺した瓶針に強い力が加わっても、瓶針がゴム栓から抜け落ちないようにすること、並びに操作者が容易に一定の深さで栓に穿刺できるようにすること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる医療用瓶針では、針管の基端部外周にネジ山を形成した。
上記瓶針において、ネジ山が形成されている部分のネジ有効長を、穿刺する栓の厚みよりも短くすることが好ましい。一般的にこの有効長は3〜7mmの範囲に設定することが好ましい。
【0010】
上記基端部外周におけるネジ山が形成されている領域に、針管先端側より基端側の方がネジ径が大きくなっている部分を設けることが好ましい。ここで、ネジ山が形成されている領域全体にわたってネジ径を変化させてもよいし、基端側だけネジ径を変化させてもよい。
基端部のネジ山が形成されている領域に隣接して、鍔部を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明の医療用瓶針によれば、針管の基端部外周にネジ山が形成されているので、瓶針を栓に穿刺してねじ込むことによって、栓にねじ止めされた状態となる。従って、瓶針に対して栓から引き抜く方向に力が加えられても、瓶針が抜けることはない。
一方、瓶針を栓から外すときは、逆方法に回転させながら引き抜くことによって容易に取り外すことができる。
【0012】
また、瓶針をねじ込む操作だけで、しっかり固定できるので、固定に手間がかからない。
また、別個の固定具を使う必要もないので、コストもかからない。
また、締め付けトルクが一定値のところまで締め付ければ、穿刺される深さもほぼ一定となるので、瓶針を繰り返し使用する場合にも一定の深さで栓に穿刺することが容易である。
【0013】
このように一定の深さで穿刺できることは、瓶針を繰り返し使用する場合に汚染防止効果を奏する。
ここで、ネジ山を栓にねじ込んだときに、ネジ山が栓を貫通してしまうと、ネジで削られた栓のくずがポートの内部に混入する可能性があるが、ネジ山が形成されている部分のネジ有効長を、栓の厚みよりも短く設定しておけば、それを防止することができる。
【0014】
基端部外周におけるネジ山が形成されている領域で、針管先端側より基端側の方がネジ径が大きい拡径部分を形成しておけば、栓にネジ山が入り込みやすいので、操作者がねじ込みを開始しやすい。また、この拡径部分が栓にねじ込まれると締め付けトルクが急増するので、栓の種類にかかわらず確実に締め付けがなされる。
基端部のネジ山が形成されている領域に隣接して、鍔部を設ければ、瓶針を穿刺するときに必要以上に深く穿刺されるのを確実に防ぐことができる。
【0015】
また操作者が鍔部を把持することで、穿刺などの操作を容易に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
〔実施の形態1〕
図1は本発明の一実施形態にかかる瓶針10の外観及び使用状態を示す斜視図で、図2はこの瓶針10の使用状態を示す断面図(輸液バッグのポートに針管を穿刺した状態)である。
輸液バッグ20は、その内部に薬液が収納されており、輸液を取り出すためのポート部21が設けられている。ポート部21は管状の部材であって、輸液バッグ20の内部と外部を連通するように取り付けられ、ポート部21はその内部にゴム栓22がはめ込まれて封止されている。
【0017】
瓶針10は、上記ゴム栓22に穿刺される針管部11と、操作者が把持しやすいような形状に形成された鍔部12と、チューブ30の先端を嵌め込んで接続するチューブ接続部13とから構成されている。
そして、この瓶針10にチューブ30を接続した状態で、ゴム栓22に瓶針10の先端を穿刺することによって、輸液バッグ20内の輸液23をチューブ30に流出させるようになっている。
【0018】
(瓶針10の詳細構成)
鍔部12は、操作者が把持しやすいような大きさに形成され、針管部11は、この鍔部12から前方に突出して設けられ、チューブ接続部13は鍔部12から後方に突出して設けられている。
そして、瓶針10には、針管部11の先端部11aからチューブ接続部13の後端13aまで貫通する貫通孔14が形成されている。
【0019】
図1に示す瓶針10では、鍔部12は円板状であって、全体が針管部11の管軸を回転軸とする回転体形状である。これによって、操作者は、鍔部12を把持して針管部11を容易に回転させることができるが、鍔部12の形状は、例えば多角形板状、楕円板形状、長尺板状、棒状などでもよい。
瓶針10において、鍔部12が設けられていることによって、操作者の穿刺操作が容易になるとともに、瓶針10を穿刺するときに必要以上に深く穿刺されるのを防ぐストッパ−としての機能も果たす。
【0020】
針管部11の基端部11b(針管部11における鍔部12の近傍領域)には、外周にネジ山(ネジ部15)が形成されている。
本実施形態の瓶針10は、針管部11を含めて全体がプラスチックで形成されており、その具体例としては、ポリカーボネート、ABS、ポリプロピレンなどが挙げられる。
(装着操作及びネジ部15による効果)
チューブ30が接続された瓶針10をポート部21に装着するときには、操作者は、瓶針10をゴム栓22に穿刺してねじ込めばよい。ゴム栓22が弾性を有しているので、針管部11をゴム栓22に穿刺して更に基端部11bをねじ込んで締め付けることができる。
【0021】
この操作は、鍔部12をつかんで、図1の矢印Eの方向に瓶針10を押し付けすることによってゴム栓22に穿刺し、さらに押し付けながら矢印Fの方向に回転させることによって、容易にねじ込むことができる。
なお、ゴム栓22が鍔部12に接するまで、ネジ部15を完全にゴム栓22にねじ込んでもよいが、ネジ部15をゴム栓22にねじ込むときには、締め付けに要するトルクが次第に大きくなるので、締め付けトルクがある程度の大きさになるところまで締め付ければよい。
【0022】
ゴム栓22に針管部11が基端部11bまで穿刺されて且つゴム栓22にねじ締めされた状態で、針管部11はゴム栓22によって締め付けられ、図2に示されるように、ネジ山15aがゴム栓22に食込んだ状態となる。
従って、瓶針10に対してゴム栓22から引き抜く方向に力を加えても、瓶針10が抜けることはない。
【0023】
一方、瓶針10をポート部21から取り外すときは、操作者は、瓶針10を矢印Fと逆方法に回転させながら引き抜くことによって、容易に取り外すことができる。
また、穿刺時において、上記のように締め付けトルクがある一定の大きさになるところまで締め付ければ、ゴム栓22に対する穿刺深さはほぼ一定となるので汚染防止効果を奏する。
【0024】
例えば瓶針10をゴム栓22から抜いて別のポートのゴム栓に穿刺するなど、繰り返し使用する場合に、瓶針10を別のゴム栓に対して穿刺する深さが、もとのゴム栓22に穿刺した時の深さより深くなると、最初のゴム栓22に穿刺時にはゴム栓22の外側にあった部分が別のゴム栓に穿刺したときにはもっと内側に入り込んでポート内に汚れが入り込む可能性もある。
【0025】
これに対して、本実施形態の瓶針10では、上記のように繰り返し使用時に、ゴム栓22に対する穿刺深さがほぼ一定になるので、汚染を防ぐ効果を奏する。
ネジ部15の有効長Lは、穿刺する対象であるゴム栓22の厚みDよりも短く設定することが好ましい。
その理由は、針管部11をゴム栓22に穿刺してネジ部15をねじ込むと、ネジ部15と接触する部分でゴム栓22が削れることがあるので、針管部11をゴム栓22に穿刺してネジ部15をねじ込んだときに、ネジ部15がゴム栓22を貫通してゴム栓22の内面22aから飛び出した場合には、ネジ部15で削られたゴムくずが輸液バッグ20の内部に混入する可能性があるが、上記のように有効長Lを厚みDより短くすれば、ネジ部15をゴム栓22にねじ込んだときにネジ部15がゴム栓22の内面22aから輸液バッグ20内に露出するのが防止できるからである。
【0026】
同じ理由で、鍔部12からネジ部15の先端までの距離をゴム栓22の厚みDよりも短く設定することが好ましいということもいえる。
なお、瓶針10を穿刺する対象となるゴム栓の種類が決まっている場合には、栓厚みDも決まっているが、瓶針10を穿刺する対象となるゴム栓の種類がいろいろある場合は栓厚みDが変動するので、輸液バッグに通常使用されるゴム栓の最低厚さより短く設定することが好ましく、一般にネジ部15の有効長Lを3〜7mm程度の範囲に設定することが好ましい。
【0027】
また、ネジ部15においては、針管先端部11a側から基端側(鍔部12側)にかけてネジ径がだんだん大きくなる拡径部分を設けることが好ましい。この拡径部分については、ネジ部15全体わたって徐々に径を変化させてもよいが、鍔部12に近い基端部分だけ拡径部分を設けてもよい。
このようにネジ部15に拡径部分を設けると、ゴム栓22にねじ込まれるときに、拡径部分で締め付けトルクが急増するため、ゴム栓22の材質にかかわらず確実に締め付けがなされる。すなわち、ゴム栓の材質が柔らかくて小径ねじ部分では十分な締め付けトルクが得られない場合でも、拡径部分では締め付けトルクが大きくなるので確実に締め付けられる。
【0028】
(実施の形態2)
上記瓶針10は、針管部11を含めて全体がプラスチックで形成されていたが、本実施形態の瓶針40は、図3に示すように、針管部41に金属製の針管材41aが用いられ、針管材41aが鍔部42に固定支持された構成となっている。
鍔部42には、チューブを接続するためのチューブ接続部43が設けられているとともに、針管材41aを鍔部42に固定支持するためにのハブ部42aが設けられており、当該ハブ部42aに針管材41aの基端部分が差し込まれて固定されている。
【0029】
そして、ネジ部45はハブ部42aの外周に形成されている。
本実施形態では、このハブ部42aが、針管部11の基端部41bに相当し、ゴム栓22にねじ込まれる。
瓶針40の使用方法や効果については、上記瓶針10と同様である。
以上の説明では、瓶針を輸液バッグのポートに穿刺する場合を説明したが、本発明の瓶針は、輸液バッグに限らず、輸液瓶など、一般に薬液が収納されポートにゴム栓を備えた容器に対して、同様に穿刺して使用することができる。
【0030】
また、必ずしも容器のポートに限らず、液を流通させるポートの栓に穿刺する瓶針に対して広く適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明にかかる瓶針によれば、取り付け操作が簡単で、ポートから脱落するのを防止することができる。また、特に新たな固定具を使う必要もないので、コストもかからない。
そのため、輸液セットに適しており、輸液セットのスタンダードデザインに採用することができると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態にかかる瓶針の外観及び使用状態を示す斜視図である。
【図2】上記瓶針の使用状態を示す断面図である。
【図3】実施の形態2にかかる瓶針の外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
10 瓶針
11 針管部
11b 針管基端部
12 鍔部
13 チューブ接続部
15 ネジ部
15a ネジ山
20 輸液バッグ
21 ポート部
22 ゴム栓
23 輸液
30 チューブ
40 瓶針
41 針管部
41a 針管材
41b 基端部
42 鍔部
42a ハブ部
43 チューブ接続部
45 ネジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポートに取り付けられた栓に針管を突き刺して液を流通させる医療用瓶針であって、
前記針管の基端部外周にネジ山が形成されていることを特徴とする医療用瓶針。
【請求項2】
前記ネジ山が形成されている部分のネジ有効長が、前記栓の厚みよりも短いことを特徴とする請求項1記載の医療用瓶針。
【請求項3】
前記基端部外周におけるネジ山が形成されている領域では、針管先端側より基端側の方がネジ径が大きくなっていることを特徴とする請求項1または2記載の医療用瓶針。
【請求項4】
前記基端部のネジ山が形成されている領域に隣接して、鍔部が設けられていることを特徴とする請求項2または3記載の医療用瓶針。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−236438(P2007−236438A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59097(P2006−59097)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】