説明

医療用移植片の表面のパルス通電焼結法及びその医療用移植片

【課題】本発明は、医療用移植片の多孔性焼結表面の製造に関する。多孔性医療用移植片及びそれを製造する方法が記述される。
【解決手段】医療用移植片は、移植片の一部を備える材料の表面において局部加熱が行われるような方式で、パルス化電気エネルギーを印加することによって形成された多孔性表面を備える。本方法は、パルス電流焼結技法を含む。好ましい実施形態では、医療用移植片は、固体基材及び多孔性焼結表面からなる。固体基材及び多孔性表面は、ほぼ同じ材料からなることが可能である。たとえば、チタン金属又はチタン金属合金が、チタン又はチタン合金の表面上に焼結されることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の参照]
本出願は、2004年7月19日に出願された米国仮出願番号60/589,143号明細書に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、医療用移植片の多孔性焼結表面の製造に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な理由のために、以前に移植された医療用移植片(最も一般的には人工器官接合部)を外科的に訂正すること、又はそれを完全に新しい医療用移植片と交換することが必要なことがある。通常、これは、移植箇所において移植片がゆるくなる、又は剥離などの力のために移植片が劣化することに起因する。理想的には、医療用移植片は、それが遭遇する可能性がある様々な負荷条件に対応することができるだけでなく、身体にとって無害でもある、及びそうでない場合は人の身体と生体適合性でもある高強度材料からしばしば形成される。また、長期にわたって固定を向上させるような方式でデバイスを移植することも好ましい。
【0004】
剥離などの力に対する耐性を増強させることによって、医療用移植片のサービス寿命を延ばすために、いくつかの進展が行われた。特許文献1においてDavidsonによって最初に記載された酸化ジルコニウムの出現は、脆性破壊、かじり、フレッティング、及び体液による攻撃に対しても耐性である優れた硬度を有する表面を提供した。固定安定性の領域における同様の進展は、移植片障害の他の主要源に対処し、移植片のサービス寿命について著しい進展を示す。
【0005】
しばしば人工股関節の場合のように極度な負荷条件の場合、人工器官接合部は、チタン、ジルコニウム、又はコバルトクロムの合金など、金属合金から製造することが可能である。これらの金属合金は、比較的極度な負荷条件に耐えるように十分な強度であるだけでなく、その金属の性質のために、通常はチタン又はコバルトクロムの金属多孔性コーティングは、金属結合によって金属合金に固着することが可能である。そのような金属多孔性コーティングは、手術後直後に移植片の当初の固定を提供するのに有用であるが、骨の内部成長(ingrowth)及び外部成長(ongrowth)を向上させることによって長期安定性を容易にするようにも作用する。
【0006】
生体適合性金属合金から製造された医療用移植片デバイスは有効であるが、ある望ましい特性が欠如している可能性がある。たとえば、金属合金は、不十分な柔軟性を有し、したがって、所望されるようには負荷を均一に分散させない傾向がある。不均一な負荷により、移植片が徐々にゆるくなる傾向がある。そのようなゆるみがより深刻になると、修正又は交換が必要になる。この理由のために、一般的には医療用移植片、及び具体的には人工器官接合部のインビボ固定安定性を向上させるように、それらを設計することが望ましい。
【0007】
この問題が過去において歴史的に対処されてきた1つの方式は、表面接触面積を増大させ、骨の内部成長及び外部成長を促進する修正表面を医療用移植片について使用することによる。他のより最近の技法は、移植片の表面上に材料を付着させることを使用することを含み、材料は、プラズマ噴霧源の放出である。これは、とりわけ、本明細書において完全に開示されているかのように参照によって組み込まれている、特許文献2及び特許文献3及び特許文献4において議論されている。
【0008】
多孔性製品を形成する有望な方式は、多孔性最終材料をもたらすような方式で材料を溶融させることを含む。そのような手法は、過去の作業の主題であった。電気放電は、特許文献5、特許文献6、及び特許文献7のように、これが実施される1つの機構である。焼結材料は、組織の内部成長及び外部成長を見込む多孔性材料を使用することによる固定安定性向上の問題に対する潜在的な解決法としての研究の主題でもあった。たとえば、Chowdharyは、特許文献8において、金属基材及び複数焼結層を有する人工器官を記載している。焼結層は、10−5〜10−6トールにおいて1時間にわたり1100℃の温度を使用する従来の焼結方法によって形成された。そのような焼結表面は、望ましい多孔性を付与するが、そのような極度条件の温度及び時間における焼結は、望ましくない方式で基材の性質を本質的に変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,037,438号明細書
【特許文献2】米国特許第5,807,407号明細書
【特許文献3】米国特許第6,087,553号明細書
【特許文献4】米国特許第6,582,470号明細書
【特許文献5】米国特許第5,294,769号明細書
【特許文献6】米国特許第5,352,385号明細書
【特許文献7】米国特許第5,421,943号明細書
【特許文献8】米国特許第5,104,410号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2003/0,232,124明細書
【特許文献10】米国特許第6,063,442号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
多孔性医療用移植片及びそれを製造する方法が記述される。医療用移植片は、移植片の一部を備える材料の表面において局部加熱を行うような方式でパルス化電気エネルギーを印加することによって形成された多孔性表面を備える。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様において、多孔性表面及び固体基材を有する医療用移植片を製造する方法が存在し、有限数の個々の本体を互いに連続的に接触して配置し、有限数の個々の本体が第1材料を備えるステップと、個々の本体の集合体の少なくとも一部にわたってパルス化電気エネルギーを印加することによって第1材料を焼結し、それにより凝集多孔性構造を創出し、第1材料を第2材料に添付し、第2材料が固体基材を備えるステップとを特徴とする。いくつかの実施形態では、前記第1材料を第2材料に添付するステップは、第1材料と第2材料が互いに物理的に接触している間、第1材料及び第2材料の集合体の少なくとも一部にわたってパルス化電気エネルギーを印加することによって、前記第1材料を第2材料に焼結することを備える。いくつかの実施形態では、焼結するステップ及び添付するステップは、第1材料と第2材料が互いに物理的に接触している間、第1材料及び第2材料の集合体の少なくとも一部にわたってパルス化電気エネルギーを印加することによって同時に実施される。いくつかの実施形態では、焼結するステップ及び添付するステップは、第1材料と第2材料が互いに物理的に接触している間、まず、第1材料の集合体の少なくとも一部にわたってパルス化電気エネルギーを印加し、その後、第1材料及び第2材料の集合体の少なくとも一部にわたってパルス化電気エネルギーを印加することによって、順次実施される。いくつかの実施形態では、前記第1材料を第2材料に添付するステップは、接着材料、又はグラウト材料、もしくは両方、及びその任意の組合わせを使用して、溶接、はんだ付け、拡散接合、ろう付け、接着からなる群から選択されたステップを含む。いくつかの実施形態では、有限数の個々の本体を互いに連続的に接触して配置するステップは、少なくとも2つの材料の有限数の個々の本体を互いに連続的に接触して配置することを含む。方法は、焼結する前記ステップ中、又はその後、前記少なくとも2つの材料の少なくとも1つの少なくとも一部を除去し、それにより、前記材料が除去された凝集多孔性構造を創出するステップをさらに含むことが可能である。方法は、前記第1材料の少なくとも一部、又は前記第2材料の少なくとも一部、あるいは前記第1材料及び前記第2材料の両方の少なくとも一部に機械的負荷を印加するステップをさらに含むことが好ましい。機械的負荷が印加される場合、焼結する前記ステップ中に印加されることが好ましい。いくつかの実施形態は、焼結するステップは、高温において実施される。いくつかの実施形態では、焼結するステップは、高周波数においてパルス化電気エネルギーを印加することを含む。いくつかの実施形態では、第1材料及び前記第2材料は、金属、セラミック、ポリマー、複合材料、及びその任意の組合わせからなる群から選択される。第1材料及び第2材料は、異なる、又は異ならないことが可能である。第1材料及び第2材料は、耐熱性材料であることが好ましい。代替として、第1材料及び第2材料の一方又は両方は、非耐熱性材料とすることが可能である。いくつかの実施形態では、第1材料の個々の本体の一部は、第1材料の個々の本体の他の部分とは組成が異なる。したがっていくつかの実施形態では、第1材料の個々の本体の一部は、耐熱性材料を備え、第1材料の個々の本体の他の部分は、非耐熱性材料を備える。いくつかの実施形態では、第1材料及び第2材料の一方は耐熱性であり、他方は非耐熱性である。いくつかの実施形態では、第1材料は、対称粒子、非対称粒子、単一ファイバ、複数ファイバ、平坦多孔性シート、変形多孔性シート、網状開細胞構造、及びその任意の組合わせからなる群から選択された形態を有する。いくつかの実施形態では、第1材料は、対称粒子形態を有し、球状粒子である。いくつかの実施形態では、焼結するステップは、制御環境において実施される。制御環境は、大気圧より小さい圧力を有する環境とすることが可能である。制御環境は、不活性気体の大気を備える環境とすることが可能である。制御環境は、反応気体の大気を備える環境とすることが可能である。方法のいくつかの実施形態では、制御環境は、焼結するステップ中に変化する。方法のいくつかの実施形態では、配置するステップは、結合剤を使用することを備える。いくつかの実施形態では、方法は、多孔性領域の少なくとも一部に材料で注入するステップをさらに含む。注入するステップが使用されるいくつかの実施形態では、注入するステップは、直接圧縮成形、射出、溶液付着、蒸着、及びその任意の組合わせからなる群から選択された方法で注入することを備える。注入するステップが使用されるいくつかの実施形態では、注入される材料は、ポリマーである。注入するステップが使用されるいくつかの実施形態では、注入される材料は、成長因子又は抗生物質を含む。注入するステップが使用されるいくつかの実施形態では、注入される材料は、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、クロロアパタイト、ブロモアパタイト、ヨウ素アパタイト、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、酒石酸カルシウム、生理活性ガラス、及びその任意の組合わせからなる群から選択される。
【0012】
本発明の他の態様において、多孔性表面を有する医療用移植片を製造する方法が存在し、有限数の非球状の個々の本体を互いに連続的に接触して配置するステップと、前記個々の本体の集合体の少なくとも一部にわたってパルス化電気エネルギーを印加することによって前記個々の本体を焼結し、それにより凝集多孔性構造を創出するステップとを特徴とする。いくつかの実施形態では、有限数の非球状の個々の本体を互いに連続的に接触して配置するステップは、前記個々の本体を少なくとも1つの他の材料と接触して配置することをさらに備える。いくつかの実施形態では、方法は、焼結する前記ステップ中、又はその後、前記少なくとも1つの他の材料の少なくとも一部を除去し、それにより、前記材料が除去された凝集多孔性構造を創出するステップをさらに含む。方法は、前記個々の本体の少なくとも一部に機械的負荷を印加するステップをさらに含むことが可能である。いくつかの実施形態では、機械的負荷を印加するステップは、焼結する前記ステップ中に実施される。いくつかの実施形態では、焼結するステップは、高温において実施される。いくつかの実施形態では、焼結するステップは、高周波数においてパルス化電気エネルギーを印加することを備える。いくつかの実施形態では、個々の本体は、金属、セラミック、ポリマー、複合材料、及びその任意の組合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、個々の本体の一部の組成は、個々の本体の他の部分の組成とは異なる。いくつかの実施形態では、前記個々の本体の少なくとも一部は、耐熱性材料を備える。いくつかの実施形態では、個々の本体は、対称粒子、非対称粒子、単一ファイバ、複数ファイバ、平坦多孔性シート、変形多孔性シート、網状開細胞構造、及びその任意の組合わせからなる群から選択された形態を有する。いくつかの実施形態では、焼結するステップは、制御環境において実施される。制御環境は、大気圧より小さい圧力を有する環境とすることが可能である。制御環境は、不活性気体の大気を備える環境とすることが可能である。制御環境は、反応気体の大気を備える環境とすることが可能である。方法のいくつかの実施形態では、制御環境は、焼結するステップ中に変化する。実施形態では、配置するステップは、結合剤を使用することを備える。いくつかの実施形態では、方法は、多孔性領域の少なくとも一部に材料で注入するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、注入するステップは、直接圧縮成形、射出、溶液付着、蒸着、及びその任意の組合わせからなる群から選択された方法で注入することを備える。注入するステップが使用されるいくつかの実施形態では、注入される材料は、ポリマーである。注入するステップが使用されるいくつかの実施形態では、注入される材料は、成長因子又は抗生物質を含む。注入するステップが使用されるいくつかの実施形態では、注入される材料は、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、クロロアパタイト、ブロモアパタイト、ヨウ素アパタイト、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、酒石酸カルシウム、生理活性ガラス、及びその任意の組合わせからなる群から選択される。
【0013】
本発明は、固体基材及び多孔性焼結表面を有する医療用移植片をも含み、固体基材は、焼結後、焼結前に存在していたのとほぼ同じバルクな機械的特性及びトライボロジー特性を有する。材料は、焼結後、焼結前に存在していたのとほぼ同じ微細構造を有することが好ましい。
【0014】
有限数の非球状の個々の本体を互いに連続的に接触して配置するステップと、個々の本体の集合体の少なくとも一部にわたってパルス化電気エネルギーを印加することによって個々の本体を焼結し、それにより、凝集多孔性構造を創出するステップとを含むプロセスによって製造される多孔性表面を有する医療用移植片も存在する。
【0015】
有限数の個々の本体を互いに連続的に接触して配置し、前記有限数の個々の本体が第1材料を備えるステップと、個々の本体の集合体の少なくとも一部にわたってパルス化電気エネルギーを印加することによって第1材料を焼結し、それにより、凝集多孔性構造を創出するステップと、第1材料を第2材料に添付し、第2材料が前記固体基材を含むステップとを特徴とするプロセスによって製造される多孔性表面を有する医療用移植片も存在する。
【0016】
以上は、以下の本発明の詳細な記述がより良好に理解されることが可能であるように、本発明の特徴及び技術上の利点をかなり広範に概述した。本発明の主張の主題を形成する本発明の追加の特徴及び利点が、以下において記述される。開示される概念及び特有の実施形態は、本発明の同じ目的を実施する他の構造を修正又は設計する基盤として容易に使用することが可能であることを理解されたい。また、そのような等価な構造は、添付の請求項において述べられるように、本発明から逸脱しないことも理解されたい。組織化及び動作方法の両方に関して、本発明の特徴であると見なされる新規な特徴は、他の目的及び利点と共に、付随する図と関連して考慮されるとき、以下の記述からより良好に理解されるであろう。しかし、図のそれぞれは、例示及び記述のためにのみ提供され、本発明の限定の確定を意図するものではないことも明確に理解されたい。
【0017】
本発明をより完全に理解するために、ここで、添付の図面と関連して取り入れられる以下の記述を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】医療用移植片に対して従来の焼結を使用する結果を示す図である。
【図2】医療用移植片に対してパルス通電焼結法を使用する結果を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、組織の内部成長及び外部成長のための多孔性表面を備える医療用移植片、及びその製造方法を説明するものである。具体的には、焼結された医療用移植片製品を説明するものである。焼結製品は、バルクの微細構造(bulk microstructure)の変化、及び該変化に対応する、高温焼結が多孔性組織の内部成長及び外部成長の表面を創出し、且つ、それらを移植可能な医療デバイスに結合するために必要とされる場合に生じる固体基材の機械的特性及びトライボロジー特性を回避する。
【0020】
本明細書では、「a」又は「an」は、「1つ以上」として本明細書で使用される際に規定される。特に文脈によって指摘されるか、又は明らかにされない限り、本明細書では、単数形は複数形を含み、複数形は単数形を含む。
【0021】
本明細書では、「金属(metal)」は、任意の金属材料であり、金属及び金属合金を含むが、これらに限定される訳ではない。
【0022】
本明細書では、「非耐熱性(non-refractory)」は、比較的低温(一般に、鉄、コバルト、及びニッケルの融点によって規定される温度よりも低い温度)で溶融する材料を意味する。
【0023】
本明細書では、「耐熱性(refractory)」は、高温(一般に、鉄、コバルト、及びニッケルの融点によって規定される温度よりも高い温度)で溶融する材料を意味する。
【0024】
本明細書では、「多孔性(porous)」は、平均的な孔(pore)の大きさが約10ミクロンから約1000ミクロンの範囲とされる状態で、少なくとも20%の表面接続多孔率(surface-connected porosity)を有する材料又はその一部を意味する。「多孔性」という用語は、材料内部の領域を含んでいる場合がある。すなわち、材料は、多孔性領域を有する一方で、他部分に非多孔性領域を有する場合がある。
【0025】
本明細書では、「固体(solid)」は、5%未満の多孔性を有する材料を意味する。
【0026】
本明細書では、「組織(tissue)」は、骨及び軟組織を含む身体組織のうち任意組織及びすべての組織を意味する。
【0027】
焼結は、粉末形態の特定の材料が融点より低い高温に加熱され、それにより粒子が互いに結合して、(微小規模における)多孔性材料を生成する単純なプロセスである。これらの材料は、金属、金属合金、及びセラミックを含むが、これらに限定される訳ではない。焼結は、セラミック粉末から強固なセラミック体を製造する方法である。プロセスは、スラリーを形成するために、一般に混合水、結合剤、凝集防止剤、及びセラミック粉末を含んでいる。スラリーは、噴霧乾燥され、型に入れられ、未焼結体(green body)(焼結されていないセラミック材料)を形成するように圧縮される。未焼結体は、結合剤を焼き去るために低温において加熱される。材料は、セラミック粒子を共に溶融させるために、高温(しかし融点より低い)で加熱される。焼結の類似するプロセスが、金属体を形成するために使用されることがある。焼結された青銅は、特にベアリング材料として使用される場合がある。この焼結された青銅は多孔性であり、これにより孔を通じて潤滑剤を流すことができるためである。その結果として、極めて低密度な材料が得られる。この低密度材料は、極めて容易に切断及び成形可能であり、圧縮時に小さな荷重を保持可能であり、良好な断熱性を備えるが、伸張時に大きな応力に耐えることができず、脆性である。焼結によって、部品の製造は、溶融及び注型(liquid casting)のプロセスを必要とせず、粉末又は細砂のみを扱えば良いようになる。焼結は、粉末を固体化(consolidate)する最も一般的な技法である。
【0028】
焼結の技法は、医療用移植片の多孔性表面を製造するために使用されている。そのような移植片の多孔性表面は、優れた組織の内部成長及び外部成長の特性を示す。しかしながら、従来の焼結技法は、機械的特性及びトライボロジー特性の低下をもたらす。従来技術におけるこの問題に対処しようとする試みは、代替的で望ましくない多孔性表面を使用することに集中している。そして、焼結の利用が補助的に焼結温度を低下させ、材料のバルクの微細構造に対する変化を低減する。本明細書で使用される文脈では、移植片材料の表面は、約1ミクロンまでの第1近似に及ぶ。バルクは、より深いレベルにおいて存在する。
【0029】
構成部材を焼結する多くの方法が存在する。最も重要な方法としては、気相焼結法、固相焼結法、液相焼結法、液相反応焼結法が挙げられる。過圧焼結法は、圧力を利用し高密化を加速させる。この方法の最大の問題点は、クラック及び歪みの原因となる収縮である。焼結が基材上に多孔性表面を創出するために使用される場合、焼結に必要ないくらか過酷な条件によって、一定の応用分野における基材材料について望ましくない変化を生じさせることも重要である。
【0030】
本発明者は、パルス電流を利用し、焼結される材料の部分間の境界面を略局部的に加熱する焼結方法によって、医療用移植片の応用分野のための優れた焼結デバイスが得られることを認識した。加熱は、これらの境界面に完全に限定されない可能性があるが、他の領域では少なくとも最小限に維持される。パルス電流法を使用して製造された移植片は、強く結合した多孔性表面を製造することができ、一方、移植片の他の材料領域の微細構造を維持する、又は最小限にのみ変化させる。パルス化電気エネルギーの印加を使用する焼結技法は、スパークプラズマ焼結法(SPS)、パルス通電焼結法(PECS)、及びフィールド活性焼結法(field activated sintering technique :FAST)を含めて、様々な名称で知られている。この一般的な技法では、電気エネルギーで粉末粒子(又は他の材料形態)間の間隔を帯電させ、及びいくつかの場合では焼結される材料間の高い機械的負荷によって、短期間で高品質の焼結材料を製造することが可能である。
【0031】
パルス通電焼結法では、アーク放電が、境界面にわたって、具体的には焼結される材料の部分間の空間にわたって生じるように、十分な電流が供給される。境界面の抵抗により、局部加熱が生じる。そのような加熱は、材料部分の部分と表面との間の空間に限定される。この技法を使用して、材料のバルクにおいて生じるより一般的な抵抗加熱(ジュール加熱)を最小限に抑えることが可能である。後者の加熱形態が、材料のバルクにおける結晶粒の成長を非限定的に含めて、材料のバルクを望ましくない方式で修正する。この技法では、小さい粒子又はビードが好ましい。有限数のそのような本体が、互いに連続的に接触して配置され、電気エネルギーのパルスが、本体の集合体の少なくとも一部にわたって印加される。局部加熱が、本体間の接触領域において行われ、接触点における一体化をもたらす。結果として得られる構造は、多孔性である。本体は、互いに及び/又は固体基材材料に焼結することができる。
【0032】
本発明では、材料にそのように伝達される熱エネルギーは、材料を結合させるようにちょうど十分であることが理想的である。あらゆる過剰なエネルギーが最小限に抑えられるべきであるが、その理由は、そのようなエネルギーは、バルクのさらなる加熱に寄与し、バルクの微細構造に潜在的に影響を与えるからである。パルス化電気エネルギーでの焼結により、焼結が適切な条件下において実施される場合、エネルギー伝達のこの条件を達成する、又は近似することが可能になる。電気パルスの周波数は、この結果を達成するように操作することが可能である1つのパラメータである。パルスの周波数を増大させることによって、電流を表面に駆動することになる。これらの条件下の電流は、表面をすくい取り、多孔性表面を形成するように望ましい結合を実施する。したがって、高周波数が好ましい。1秒あたり少なくとも1パルスのパルス率が好ましいが、より低い周波数が特定の応用分野について許容可能である可能性がある。より好ましくは、10パルス/秒(10Hz)から1パルス/マイクロ秒(1MHz)及びこれ以上の大きさのはるかにより高いパルス率が望ましい。10パルス/秒以上の周波数が、本明細書では高周波数であると考慮される。パルス間の時間は、個々のパルスの持続時間に等しいことが可能であるが、必要ではない。非対称性は、「オン」時間又は「オフ」時間を支持する可能性がある。これらのパラメータは、医療用移植片のパルス通電焼結法におけるすべての他のパラメータと同様に、移植片を製作するために使用されている材料に最適に適合するように変更することが可能である。
【0033】
表面及びバルクの全体的な加熱とは対照的に、表面のより局部的な加熱を実施するように制御することができる他のパラメータは、結合プロセスを加速することである。移植片への熱エネルギーの印加の持続時間が短くなると、材料のバルクの微細構造における変化が小さくなる。これは、たとえば、移植片に対し機械的負荷を印加する、及び/又は移植片に対する機械的負荷を増大させることによって達成することが可能である。これにより、粒子は、共により密接に結合するように強制される。これにより、結合は促進され、プロセスは、最小限の電気(及びしたがって熱)エネルギーを追加することで達成されることが可能になる。
【0034】
本発明の一実施形態では、材料は、管の両端部に2つのグラファイトプラグを有するグラファイト管ハウジング(「外部ダイ」)に配置される。外部ダイ、又はここで述べられた「管ハウジング」は、他の材料から製造することもできる。たとえば、セラミックなどの非導電性材料で製造することができる。グラファイトダイを有することにより、電流のいくらかがダイを加熱するために使用されることが可能になる(抵抗又はジュール加熱により)。非導電性ダイでは、電流のより多くが、サンプル自体を通過する。しかし、グラファイトは、より高い伝熱性をも有し、セラミックより迅速にサンプルから熱を除去することができる。パルス電流を印加するために使用される電極は、常に導電性でなければならない。固体基材上の焼結表面の場合、表面材料は、結合材料を使用して、又は使用せずに、基材と接触して配置される。グラファイトプラグ又は他の導電性材料は、焼結される材料と接触することが重要である。電極は、パルス電流が印加されることが可能であるように材料と接触する。電流パルスは、材料を経て進行し、材料のギャップにわたってアークを作る。これらのギャップは、最もしばしば、焼結される材料間の空間である。電流は、これらの境界面において抵抗に遭遇する。この境界面の抵抗により、局部加熱が生じる場合、局部加熱が行われる。
【0035】
基本的な方法では、第1材料が、パルス化電気エネルギーで第1材料を電気的に帯電させることによって焼結される。電気エネルギーは、1秒あたり1パルスを超えることが好ましい高周波数においてパルス化され、材料は、機械的負荷の下にあることが好ましい。機械的負荷が使用されるとき、少なくとも1Nの圧縮負荷であることが好ましい。パルスの大きさは、結果を最適化するように変更することができる。条件は、焼結が行われ、材料の表面下バルクの微細構造が、パルス化電気エネルギーを印加する前に存在したものから変化しない、又は実質的には変化しないとき、最適化される。微細構造の変化の欠如は、結晶粒の成長がないことによって、又は結晶粒の成長が実質的にないことによって、あるいは、パルス化電気エネルギーを印加する前に存在したものと比較して、パルス化電気エネルギーの印加後に材料の表面下バルクにおける構成部材相の分布について変化がないとき、又は実質的に変化がないとき、実証されることが最も好ましい。電気エネルギーでそのようにパルス化されるとき、材料の部分間の空間は加熱され、加熱は、前記空間及び前記部分の表面に実質的に限定される。
【0036】
固体基材及び多孔性表面を有する医療用移植片が望ましい場合、第2材料が使用される。第2材料は、第1材料と同じ、又は異なることが可能である。いくつかの場合、第2材料は、パルス化電気エネルギーで電気的に帯電させることが可能である。
【0037】
高温においてプロセスを実施することが好ましい可能性がある。このようにして、焼結される材料は、結合エネルギーに達するのにより少ない電気エネルギーを必要とした。高温が使用されるとき、基材微細構造の実質的な変化(又は、独立型多孔性移植片の場合は表面下バルクの微細構造の変化)を生じる温度より低くあるべきである。
【0038】
上記で議論されたように、多孔性表面を加えることによって医療用移植片を改良する試行は、限定的に成功であることが判明したが、改良が必要である。従来の焼結技法が使用されてきたが、従来の焼結技法に必要な条件は、移植片のバルクを形成する基材材料に対して望ましくない影響を有する。電気焼結を使用し、適切な条件を維持することによって、これらの望ましくない影響は、低減又は排除することが可能であり、優れた多孔性医療用移植片が得られる。
【0039】
本発明者は、この技術を多孔性表面を有する医療用移植片の製作に適用し、そのようにして優れた医療用移植片を製造することができることを認識した。ほとんどの多孔性組織の内部成長コーティングを結合するために必要な高温焼結サイクルを回避することによって、結合は、精製された基材微細構造を維持し、基材の元の機械的特性、トライボロジー特性、及び酸化特性をより良好に維持しながら、達成することができる。基材の微細構造及び結晶粒のサイズは、変化しない、又は実質的には変化しない。これは、図1及び2に概略的に示されている。図1は、従来の焼結の結果を示し、一方、図2は、パルス通電焼結法の結果を示す。いくつかの場合、結合は、1mmより小さい平均最終基材結晶粒サイズを維持しながら、達成される。また、このプロセスは、融点の相違に対する依存性がより小さいので、結合を向上させる、又は可能にするために、中間層を使用せずに、耐熱性材料と非耐熱性材料を接合することが可能である。図1及び2は、パルス電気焼結前後の基材の機械的特性及びトライボロジー特性の維持を示すが、焼結体(図1及び2において球として示される)のバルク(すなわち、非表面領域)についても同じことを述べることができる。また、焼結体のバルク領域の機械的特性及びトライボロジー特性を維持することが可能である。使用条件に応じて、焼結体の表面積(具体的には、他の表面と物理的に接触している面積)は、機械的特性及びトライボロジー特性の著しい変化を経験する可能性がある。機械的特性及びトライボロジー特性の変化は、通常、結晶粒サイズの変化及び結晶相の分布変化、ならびに/あるいは他の特性など、微細構造の変化によって表される。そのような変化は、医療用移植片の性能に対してしばしば有害である。したがって、これらの変化を回避することにより、移植片は改良される。
【0040】
パルス化電気焼結方法の他の利点は、非球状粒子を使用して、同程度に強いが、より多孔性の構造を製造することができることである。一様なサイズの実装球状粒子は、通常、わずかに25〜35%の多孔性を生成する。一様なサイズの非球状粒子の実装密度は、はるかにより大きい多孔性を製造することができ、これは、独立型多孔性移植片には望ましい。しかし、従来の焼結では、たとえば、不規則な粒子が、通常、より少なくより小さいくびれ領域、又は粒子が共に焼結する領域を有し、球状粒子多孔性コーティングより弱い添付強度を不規則粒子多孔性コーティングに与える。焼結中に焼結温度を上げる、又は圧力を加えることにより、不規則粉末多孔性コーティングの結合強度を増大させることができるが、両方法とも、有害な結果を有する可能性が高い。たとえば、どちらの方法も、追求されている多孔性構造が崩壊する可能性が増大する。さらに、固体基材に結合される場合、焼結温度を上げることにより、基材の微細構造が悪影響を受ける可能性が増大する。球状の本体が通常好ましいが、その理由は、本質的に自助的で、多孔性構造が崩壊する可能性を低減し、特にこの方法によって好まれる機械的な負荷の下において、非球状本体より一様に繰り返して実装され、結果として得られる焼結製品について優れた多孔性及び多孔性のより規則的で一様な分布をもたらすからである。本発明者は、非球状粒子の焼結性能が、従来の焼結と比較して、パルス化電気焼結において大きく改善されることを認識した。結果として、医療用移植片は、パルス化電気焼結を使用して、非球状本体により容易に製造することができる。
【0041】
医療デバイスは、パルス化電気焼結を使用して、金属、セラミック、ポリマー、又は複合多孔性構造を固体金属、セラミック、ポリマー、又は複合基材に結合し、又は同時に創出及び結合することによって製造される。デバイスにおける結合は、材料/環境の反応性を阻止するために、又は熱流行為を修正するために、真空又は不活性気体の環境においてパルス化電気焼結を使用して達成される。結合は、圧力及び/又は追加の熱と組み合わせてパルス化電気焼結を使用して達成することが可能である。デバイスの製作において、多孔性表面は、医療用移植片に使用される従来の焼結又は拡散接合方法より低い温度及び/又は圧力で創出することができる。
【0042】
好ましい実施形態では、医療用移植片は、固体基材及び多孔性焼結表面からなる。固体基材及び多孔性表面は、ほぼ同じ材料からなることが可能である。たとえば、チタン金属又はチタン金属合金が、チタン又はチタン合金の表面上に焼結されることが可能である。代替として、固体基材及び多孔性表面は、実質的に異なる材料からなることが可能である。たとえば、チタンが、コバルト−クロム表面上に焼結されることが可能であり、又は、金属もしくは金属合金が、セラミック表面上に焼結されることが可能である。代替として、医療用移植片は、純粋に多孔性の構成部材を備えることが可能である。どちらの場合でも、医療用移植片は、非限定的に、金属、セラミック、ポリマー、複合材料、及びその任意の組合わせを含めて、様々な材料からなることが可能である。本発明は、すべての従来の移植片材料に適用可能である。材料及びその先駆物質は、非限定的に、粒子、ファイバ、平坦多孔性シート、変形多孔性シート、網状開細胞構造、及びその任意の組合わせを含めて、様々な形態を有することが可能である。医療用移植片が2つ以上の材料からなる場合、材料は、同じ又は異なることが可能である(たとえば、両方とも、チタン又はチタン合金であることが可能である)。さらに、医療用移植片が2つ以上の材料からなる場合、材料は、同じ又は異なる形態を有することが可能である(たとえば、粒子、ファイバなど)。いくつかの応用分野では、最終的な医療用移植片は、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、クロロアパタイト、ブロモアパタイト、ヨウ素アパタイト、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、酒石酸カルシウム、生理活性ガラス、及びその組合わせなど、生理活性セラミック材料を備えることが可能である。
【0043】
移植片を製作するために、第1材料が、第1材料の部分間の空間が加熱される条件下において、パルス化電気エネルギーで第1材料を電気的に帯電させることによって焼結される。結果として、加熱は、前記空間及び前記部分の表面に実質的に限定される。次いで、第1材料は、第2材料に添付される。第2材料は、固体基材であることが好ましい。添付は、いくつかの場合、焼結するステップの結果として行われることが可能であることに留意されたい。そのような場合、第1材料及び第2材料の焼結は、第1材料の本体の焼結と同時に行うことが可能である(たとえば、パルス化電気エネルギーは、第1材料の本体を互いに及び第2材料に焼結する)。代替として、順次焼結ステップが使用されることが可能である。他の場合、焼結された材料は、いくつかの他の手段によって基材に添付することが可能である。これは、非限定的に、拡散接合、溶接、はんだ付け、ろう付け、接着材料又はグラウティング材料での接着、あるいはその任意の組合わせなどを含めて、当業者には既知の様々な方式のいずれかによって達成することが可能である。第1材料及び第2材料は、組成及び特性の両方について、同じ又は異なるとすることが可能である。各材料は、それが第1材料、第2材料、又はあらゆる他の材料であるかに関係なく、純粋な材料とすることが可能であり、又は、混合物を備えることが可能である。すなわち、各材料は、その用語が本明細書において使用される際、1つ又は2つ以上の材料を備えることが可能である。「材料」という用語は、単数及び複数の両方を含む。これは、本発明のすべての実施形態に当てはまる。
【0044】
移植片は、耐熱性材料から製造された多孔性構造、及び非耐熱性材料から製造された基材を有することが可能である。移植片は、非耐熱性材料から製造された多孔性構造、及び耐熱性材料から製造された基材を有することが可能である。医療用移植片が純粋に多孔性の構成部材(たとえば、固体基材のない独立型多孔性構造)を備える場合、耐熱性材料、非耐熱性材料、又は両方で製造されることが可能である。
【0045】
多孔性表面の創出は、先駆物質材料を焼結することによって達成される。多孔性構造先駆物質の形態は、本発明では変化することが可能である。多孔性構造先駆物質は、いくつかの異なる形態のいずれかとすることが可能である。これらには、非限定的に、ビード、粒子、単数又は複数のファイバ、平坦又は変形多孔性シート、網状開細胞構造、及びその他がある。ビード及び粒子は、球又は非球、対称又は非対称など、任意の形状及び形態とすることが可能である。これらの形態のいずれかの組合わせも可能である。多孔性構造先駆物質は、非限定的に、金属、セラミック、ポリマー、及び複合材料を含めて、様々な材料からなることが可能である。これらの材料のいずれかの組合わせも可能である。
【0046】
いくつかの実施形態では、多孔性構造先駆物質は、結合剤を使用して基材に一時的に添付される、又は配置される。結合剤は、セルロース、又は焼結の分野において一般的に使用されるその他の結合剤とすることができる。いくつかの場合、ワックスが使用できる。いくつかの場合、多孔性構造は、結合プロセス中、又はその後、相互接続されたポア創出2次材料を除去することによって創出される。
【0047】
本発明の使用は、多孔性表面に直接結合された基材材料の製造を見込むが、本明細書において記述されたパルス電流技法で独立型多孔性構造を製造し、中間結合層を使用してその構造を基材に結合することも、本発明の範囲内にある。本発明における結合は、結合を向上させる、又は可能にすることを主な目的とする中間層を使用せずに、達成することが可能である。それらを製造するそのような構造及び方法が、当技術分野において既知であり、たとえば、Medlinらの特許文献9、Cohenらの特許文献10を参照されたい。ホウ素包含化合物も、ニッケルベース金属を有する中間層とすることが可能である。結合基材を有さない独立型多孔性構造も、製造することが可能である。これらは、医療用移植片として特定の応用分野において有用である。
【0048】
基本的な方法は、ポア創出材料の使用を含むように修正することも可能である。ポア創出材料は、移植材料と混合する、又はそうでない場合は組み合わせることが可能である。ポア創出材料は、任意の揮発性、溶解性、及び/又は分解可性の材料とすることができる。ポア創出材料は、移植材料とマトリックスを形成し、その後、分解、揮発、溶解、その任意の組合わせなどによって除去される。例には、水素化水素を失うことにより分解するチタン水素化物、昇華により除去されるナフタリン、及びマトリックスで洗い流すことが可能である様々な塩があった。
【0049】
望ましい場合、この方法は、同じ又は異なる形態がデバイスの異なる領域に結合される医療デバイスを製造するために使用することができる。異なる表面形態を使用することにより、あるタイプの組織と相互作用するように表面を最適化することが可能になる。医療デバイスは、その異なる部分が特定の内部成長結果について最適化されるように製造することが可能である。たとえば、デバイスは、少なくとも1つの領域が柔軟/繊維状組織の内部成長を意図し、一方、少なくとも1つの領域は、骨組織の内部成長を意図するように製作することができる。他の実施形態では、医療用移植片は、超高分子量ポリエチレン又は他の負荷担持移植可能ポリマーで注入される。通常、これは、直接圧縮成型プロセスにより実施され、少なくとも1つの領域は、骨又は柔軟/繊維状組織の内部成長を意図する。注入する他の可能な方法には、非限定的に、溶解、付着、蒸着、又は射出成型もしくは硬化可能ポリマーの射出などの様々な射出技法がある。医療用移植片は、成長因子などの他の活性生体分子又は抗生物質などの医薬品で注入することも可能である。これらの材料は、上記で議論されたように、又は他の手段によって注入することが可能であるポリマーマトリックスにおいて医療用移植片に注入することが可能である。
【0050】
多孔性表面を創出するプロセスは、パルス化電気焼結である。上記で議論されたように、この技法は、基材相を著しく不安定にせずに、焼結をもたらす局部加熱を創出するために、パルス化周波数電流を使用する。プロセスは、複数の基材表面を同時に結合することを備えることが可能である。プロセスは、脱臼シェル又は股関節ステムなど、非平面である結合表面を備えることが可能である。プロセスは、たとえば、膝大腿部構成部材の2つ以上の固定表面など、2つ以上の非共面基材表面を同時に備えることが可能である。
【0051】
本発明は、パルス通電焼結法を使用して、金属、セラミック、ポリマー、又は複合非球状粒子、ファイバ、あるいは平坦又は変形多孔性シートを共に結合することによって製造された医療用移植片をも含む。いくつかの場合、デバイスの粒子、ファイバ、又はシートは、ほぼ同じ材料からなる。代替として、デバイスの粒子、ファイバ、又はシートは、2つ以上の実質的に異なる材料からなる。異なる材料の場合、材料の組合わせは、少なくとも1つの材料が向上した機械的特性を提供し、少なくとも1つの材料が、向上した組織の内部成長特性を提供するように選択することが可能である。本発明の医療用移植片は、粒子、ファイバ、又はシートのみ、あるいは粒子、ファイバ、又はシートの任意の組合わせを統合するものを含む。代替として、医療用デバイスは、球状ビードを粒子、ファイバ、及びシートの任意の組合わせと統合する。
【0052】
多孔性及び非多孔性の領域を有する移植片も可能である。異なる領域が、異なる特性を有することも可能である。たとえば、医療用移植片は、焼結チタンを有する多孔性領域、及び焼結ジルコニウムを有する他の多孔性領域を有するチタン合金基材を有する備えることが可能である。他の最終構造を有する医療用移植片が可能である。たとえば、本発明は、固体基材間にはさまれた多孔性領域及びその反対を有する移植片を含む。
【0053】
さらに、固体基材上に多孔性表面を有する移植片の代わりに、多孔性を随所に有する移植片が、本発明の範囲内にある。パルス通電焼結法によって形成された純粋な多孔性移植片が、より精製された表面下バルクの利点を有する。
【0054】
本発明は、すべての医療用移植片に適用可能である。しかし、最も重要な応用分野は、接合部人工器官及び他の整形外科用移植片の領域にあることが予期される。たとえば、固定安定性は、股関節及び膝の人工器官について共通の問題である。他の応用分野には、非限定的に、肩、ひじ、足首、指、腕、つま先の人工器官がある。バルクの一体性を維持しながら、組織の内部成長及び外部成長のための安定で多孔性の表面を製造する能力は、優れた人工器官をもたらす。本発明は、非限定的に、肩及びひじの人工器官を含めて、他の接合人工器官にも同様に適用可能である。本発明を使用することにより改良することができる他の医療用移植片には、椎骨移植片及び歯科用移植片がある。また、本発明は、顎顔面及び側頭下顎の移植片に適用することもできる。非限定的に、爪、ねじ、ロッド、ピン、プレート、スペーサ、ウエッジ、間隙充填剤、及びその任意の組合わせを含めて、骨移植片ハードウエアに適用することもできる。
【0055】
本発明及びその利点が詳細に記述されたが、添付の請求項によって確定される本発明から逸脱せずに、様々な修正、代用、及び変更を本発明において実施することができることを理解されたい。さらに、本出願の範囲は、本明細書において記述されたプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、及びステップの特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。開示から容易に理解されるように、本明細書において記述された対応する実施形態とほぼ同じ機能を実施する、又はほぼ同じ結果を達成する、現在存在する、又は後に開発されるプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、又はステップが使用されることが可能である。したがって、添付の請求項は、そのようなプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、及びステップの範囲内に含まれることを意図する。本発明において引用されたすべての特許及び特許出願は、本明細書において完全に述べられるかのように参照によって組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性表面を有する医療用移植片を製造する方法であって、
有限数の非球状の個々の本体を互いに連続的に接触して配置するステップと、
前記個々の本体の集合体の少なくとも一部にわたってパルス化電気エネルギーを印加することによって前記個々の本体を焼結し、それにより凝集多孔性構造を創出するステップとを特徴とする、方法。
【請求項2】
有限数の非球状の個々の本体を互いに連続的に接触して配置するステップと、
前記個々の本体の集合体の少なくとも一部にわたってパルス化電気エネルギーを印加することによって前記個々の本体を焼結し、それにより凝集多孔性構造を創出するステップとを特徴とするプロセスによって製造された多孔性表面を有する医療用移植片。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−152443(P2011−152443A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97942(P2011−97942)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【分割の表示】特願2007−522595(P2007−522595)の分割
【原出願日】平成17年7月18日(2005.7.18)
【出願人】(397071355)スミス アンド ネフュー インコーポレーテッド (186)
【Fターム(参考)】