説明

医療用穿刺針

【課題】外針から突出させた挿入物を引き戻しても、挿入物が外針の開口縁で傷付いたり開口縁に引掛かることのない医療用穿刺針を提供する。
【解決手段】外針1よりも軟質の材料からなる保護部材3を外針1の開口部1aの内側を覆うように設けたので、外針1の先端から突出させた挿入物Aを引き戻した場合でも、挿入物Aは保護部材3に接触して外針1の開口部1aの刃1bに接触することがなく、挿入物Aが外針1の刃1bで傷付いたり刃1bに引掛かるという不具合を効果的に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば硬膜外腔や血管内等にカテーテルを導入するために用いられる医療用穿刺針に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の医療用穿刺針としては、先端の開口縁に刃が形成された中空状の外針を備え、体内に穿刺した外針の基端側からカテーテル、ガイドワイヤ等の挿入物を挿入し、挿入物を外針の先端から突出させて体内に導入するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この医療用穿刺針では、例えば硬膜外麻酔に用いる場合、外針内に中実状の内針を挿入した状態で硬膜外腔まで穿刺した後、外針から内針を抜き取り、外針の基端側からカテーテルを挿入して外針の先端から硬膜外腔に突出させ、外針を抜き取ってカテーテルを留置するようにしている。また、静脈や動脈等の血管内にカテーテルを留置する場合は、血管内に穿刺した外針の基端側からガイドワイヤを挿入し、ガイドワイヤを外針の先端から突出させて目的位置まで挿入した後、外針を抜き取り、カテーテルをガイドワイヤに沿って血管内に導入し、ガイドワイヤを抜き取ってカテーテルを留置するようにしている。
【特許文献1】特開2006−320526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カテーテルやガイドワイヤ等の挿入物を外針の先端から突出させた後に引き戻すと、挿入物が外針の刃に接触して傷付いたり、或いは刃に引掛かって容易に引き戻せないという問題点があった。
【0005】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、外針から突出させた挿入物を引き戻しても、挿入物が外針の開口縁で傷付いたり開口縁に引掛かることのない医療用穿刺針を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成するために、内部にカテーテル、ガイドワイヤ等の挿入物を挿通可能な中空状の外針を備え、体内に穿刺した外針の基端側から挿入物を挿入し、挿入物を外針の開口部から突出させて体内に導入する医療用穿刺針において、前記外針よりも軟質の材料からなる保護部材を外針の開口部の内側を覆うように設けている。
【0007】
これにより、外針よりも軟質の材料からなる保護部材によって外針の開口部の内側が覆われていることから、外針の先端から突出させた挿入物を引き戻した場合でも、挿入物は保護部材に接触し、外針の開口部の縁部に接触することはない。
【発明の効果】
【0008】
本発明の医療用穿刺針によれば、外針の先端から突出させた挿入物を引き戻した場合でも、挿入物が外針の開口部の縁部に接触することがないので、挿入物が外針の開口縁で傷付いたり開口縁に引掛かるという不具合を効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1乃至図6は本発明の第1の実施形態を示すもので、図1は医療用穿刺針の側面図、図2及び図3はその要部斜視図、図4乃至図6はその要部側面断面図である。
【0010】
この医療用穿刺針は、内部にカテーテル、ガイドワイヤ等の挿入物Aを挿通可能な中空状の外針1と、外針1内に挿入された中実状の内針2とを備え、外針1内には円筒状の保護部材3が設けられている。
【0011】
外針1はステンレス等の金属製の管状部材からなり、その先端側が一側方に向かって湾曲するとともに、先端の開口部1aの縁部には刃1bが形成されている。外針1の基端側はハブ4に固定され、ハブ4には幅方向両側に延びる把持部4aが設けられている。
【0012】
内針2はステンレス等の金属製の棒状部材からなり、その先端側が外針1に沿って湾曲するとともに、その先端面は外針1の先端と面一になるように形成されている。内針2の基端側はハブ5に固定され、ハブ5には軸方向に延びる把持部5aが設けられている。
【0013】
保護部材3は、例えば合成樹脂等、外針1よりも軟質の材料からなり、その先端側が外針1に沿って湾曲するとともに、その先端開口縁は外針1の先端と面一になるように形成されている。保護部材3は外針1の内径とほぼ同等の外径を有し、外針1の内周面を覆うように形成されている。この場合、保護部材3は、外針1に対して位置ずれを生じないように固定されていれば、必ずしも外針1の内周面に固着されていなくてもよい。また、予め円筒状に形成された保護部材3を外針1内に挿入するようにしてもよいが、外針1の内周面に合成樹脂のコーティングを施すことにより保護部材3を形成するようにしてもよい。
【0014】
以上のように構成された医療用穿刺針を用いて、体内にカテーテルやガイドワイヤ等の挿入物Aを挿入する場合には、まず、図2及び図4に示すように内針2が挿入された外針1を体内に穿刺した後、内針2をハブ5と共に外針1から抜き取る。その際、内針2は細径であるため、先端側の湾曲形状が直線状に弾性変形しながら抜き取られる。この後、図3及び図5に示すように挿入物Aを外針1の基端側から先端側に向かって挿入し、外針1の開口部1aから所望の長さだけ突出させる。その際、例えば挿入物Aを突出させすぎたり、或いは突出方向を変えたい場合など、挿入物Aを外針1の基端側に向かって引き戻すと、図6に示すように挿入物Aが先端の開口縁に接触するが、挿入物Aは外針1の開口部1aの内側に設けた保護部材3に接触するため、外針1の開口部1aの刃1bに接触することはない。
【0015】
このように、本実施形態の医療用穿刺針によれば、外針1よりも軟質の材料からなる保護部材3を外針1の開口部1aの内側を覆うように設けたので、外針1の先端から突出させた挿入物Aを引き戻した場合でも、挿入物Aは保護部材3に接触して外針1の開口部1aの刃1bに接触することがなく、挿入物Aが外針1の刃1bで傷付いたり刃1bに引掛かるという不具合を効果的に防止することができる。
【0016】
この場合、保護部材3を合成樹脂によって形成するようにしたので、保護部材3の加工が容易であるとともに、金属よりも軟質な合成樹脂によって挿入物Aの傷付きや引掛かりを確実に防止することができる。
【0017】
また、外針1を先端側が一側方に向かって湾曲するように形成し、その湾曲した先端に開口部1aを設けるとともに、開口部1aの縁部に刃1bを形成したので、先端側の湾曲形状により、例えば硬膜外腔へのカテーテルの挿入を容易に行うことができ、硬膜外麻酔に用いる場合に極めて有利である。
【0018】
尚、前記実施形態では外針1の先端側が湾曲したものを示したが、湾曲せずに直管状に形成されているものにも本発明を適用することができる。
【0019】
図7及び図8は本発明の第2の実施形態を示す医療用穿刺針の要部側面断面図であり、他の部分については前記実施形態と同等であるため図示を省略する。
【0020】
同図に示す医療用穿刺針は、内部にカテーテル、ガイドワイヤ等の挿入物Aを挿通可能な中空状の外針10を備え、外針10内には円筒状の保護部材11が設けられている。
【0021】
外針10はステンレス等の金属製の部材からなり、その先端部を鋭利に形成されるとともに、先端部以外の部分は管状をなすように形成されている。外針10の先端からやや基端側の外周面には側方に向かって開口する開口部10aが設けられ、開口部10aは外針10の内部空間の先端側に連通している。この場合、内部空間の軸方向先端は、開口部10aに向かって下り傾斜をなすように斜めに形成されている。
【0022】
保護部材11は、前記実施形態と同様、合成樹脂等の軟質材料からなり、その先端側が外針10の内部空間の先端に沿って湾曲するとともに、その先端は外針10の開口部10aの周縁と面一になるように形成されている。保護部材11は外針10の内径とほぼ同等の外径を有し、外針10の開口部10aの内側を全周に亘って覆うように形成されている。
【0023】
本実施形態の医療用穿刺針を用いて体内にカテーテルやガイドワイヤ等の挿入物Aを挿入する場合には、まず、外針10を体内に穿刺した後、図7に示すように挿入物Aを外針10の基端側から先端側に向かって挿入し、外針10の開口部10aから所望の長さだけ突出させる。その際、挿入物Aを外針10の基端側に向かって引き戻すと、図8に示すように挿入物Aが外針10の開口縁に接触するが、挿入物Aは外針10の開口部10aの内側に配置された保護部材11に接触するため、外針10の開口部10aの縁部に接触することはない。
【0024】
このように、本実施形態の医療用穿刺針によれば、外針10の外周面に一側方に向かって開口するように設けた開口部10aの内側を覆う軟質の保護部材11を備えているので、開口部10aから側方に挿入物Aを突出させる構成においても、前記実施形態と同様、挿入物Aが開口縁で傷付いたり開口縁に引掛かるという不具合を効果的に防止することができる。
【0025】
また、外針10を先端部以外の部分が管状をなすように形成し、その外周面に開口部10aを設けるとともに、外針10の先端部を鋭利に形成したので、鋭利な先端部により、例えば静脈や動脈等の血管に容易に穿刺することができ、血管内にガイドワイヤを挿入する場合に極めて有利である。
【0026】
尚、前記実施形態では、保護部材11が外針10の開口部10aの内側を全周に亘って覆うように形成されたものを示したが、図9に示すように先端側まで直管状に形成された保護部材12によって開口部10aの周方向一部(外針10の基端側)のみを覆うようにしたものであってもよい。この場合、保護部材12の先端面は斜めに形成され、その先端が外針10の内部空間の先端に当接することにより、保護部材12がその周方向一部によって開口部10aの周方向一部を覆うように位置決めされる。
【0027】
即ち、外針10の開口部10aから突出させた挿入物Aを引き戻すと、通常は開口部10aにおける外針10の基端側に挿入物Aが接触するため、保護部材12のように構造を簡素化することができる。尚、開口部10aにおける外針10の先端側に挿入物Aが接触する場合もあるが、開口部10aに通ずる外針10の内部空間の先端は開口部10aの縁部で鈍角をなすように斜めに形成されているため、開口部10aにおける外針10の先端側に挿入物Aが接触して傷付いたり、挿入物Aが開口縁に引掛かることは少ない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す医療用穿刺針の側面図
【図2】医療用穿刺針の要部斜視図
【図3】医療用穿刺針の要部斜視図
【図4】医療用穿刺針の要部側面断面図
【図5】医療用穿刺針の要部側面断面図
【図6】医療用穿刺針の要部側面断面図
【図7】本発明の第2の実施形態を示す医療用穿刺針の要部側面断面図
【図8】医療用穿刺針の要部側面断面図
【図9】第2の実施形態の変形例を示す医療用穿刺針の要部側面断面図
【符号の説明】
【0029】
1…外針、1a…開口部、3…保護部材、10…外針、10a…開口部、11,12…保護部材、A…挿入物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にカテーテル、ガイドワイヤ等の挿入物を挿通可能な中空状の外針を備え、体内に穿刺した外針の基端側から挿入物を挿入し、挿入物を外針の開口部から突出させて体内に導入する医療用穿刺針において、
前記外針よりも軟質の材料からなる保護部材を外針の開口部の内側を覆うように設けた
ことを特徴とする医療用穿刺針。
【請求項2】
前記外針を先端側が一側方に向かって湾曲するように形成し、その湾曲した先端に前記開口部を設けるとともに、開口部の縁部に刃を形成した
ことを特徴とする請求項1記載の医療用穿刺針。
【請求項3】
前記外針を先端部以外の部分が管状をなすように形成し、その外周面に前記開口部を設けるとともに、外針の先端部を鋭利に形成した
ことを特徴とする請求項1記載の医療用穿刺針。
【請求項4】
前記保護部材を合成樹脂によって形成した
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の医療用穿刺針。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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