説明

医療用精製水の製造方法

【課題】 高品質の人工透析用水を安定供給できる医療用精製水の製造方法の提供。
【解決手段】 RO処理水を第1ライン12から貯水タンク2に送って貯水する第1工程と、貯水タンク2のRO処理水を第2ライン13からEDI装置3に送ってEDI処理水を得る第2工程を有しており、EDI処理水の全部を第3ライン14から貯水タンク2に返送して、RO処理水とEDI処理水の混合水を得る第3工程と、前記混合水を第2ライン13から再度EDI装置に送って処理する第4工程を繰り返す循環工程を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用精製水の製造方法と、前記製造方法の実施に適した医薬品の製造用水及び人工透析用水等の医療用精製水を製造するための製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人工透析液は、精製水(人工透析用水)と透析液原液を混合して製造される。前記精製水は、微生物やエンドトキシンで汚染されていないものを用いる必要があるため(非特許文献1)、製造方法が重要となる。
【0003】
人工透析は医療機関で行われるが、患者の治療スケジュールや症状により、人工透析を受ける患者数は1日の中の午前、午後、夜間の各シフト間、あるいは曜日間で増減することが多く、急患への対応が求められる場合もある。そして、どのような場合でも、常に高品質の精製水を必要量だけ速やかに供給することが求められる。また、通常、深夜には人工透析は行われないため、精製水の製造装置の運転は停止され、翌朝に運転が再開されることになるが、このような運転再開時においても高い品質のものを安定供給できることが重要となる。
【0004】
特許文献1、2には、RO処理装置とEDI装置を組み合わせて、人工透析用水を製造するための装置と製造方法が記載されている。特許文献1には、EDI処理水を逆浸透膜装置の入口に返送して循環させることが記載されているが(段落0039と図1参照)、いずれの特許文献にも、貯水タンクを用いた循環ラインについての記載はない。
非特許文献2には、貯水タンク装置以降のラインに薬剤注入器を設けて循環・洗浄させることが記載されている。この方法では従来から指摘されてきた殺菌薬剤の残留問題が解決されず、また精製水製造を停止させて行う洗浄法であるため、洗浄と同時に精製水製造を行うことができない。
【0005】
【特許文献1】特開2007−252396号公報
【特許文献2】特開2007−237062号公報
【非特許文献1】腎と透析別冊2006,p33−36,「透析施設での細菌検査の実際」
【非特許文献2】腎と透析別冊2006,p111−116,「RO水タンクからRO水供給ラインの過酢酸系洗浄剤ヘモクリーンによる洗浄効果」
【非特許文献3】第53回(社)日本透析医学会学術集会(2008年6月22日)の予稿集(電気再生純水装置による透析用水の評価)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者の一部は、第53回(社)日本透析医学会学術集会において、RO処理装置とEDI装置を組み合わせた精製水の製造装置と製造方法について発表している(非特許文献3)。
【0007】
本発明は、前記発表時において未発表の発明を加えると共に、更に改良を加えて、常に高品質の精製水を、使用量の変動があった場合でも安定して安価に供給することができる医療用精製水の製造方法と、その実施に適した医療用精製水の製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、課題の解決手段として、
逆浸透膜処理装置(以下「RO処理装置」という)、貯水タンク、電気再生式脱イオン装置(以下「EDI装置」という)を有する医療用精製水の製造装置を用いた医療用精製水の製造方法であって、
前記製造装置が、前記RO処理装置による処理水(以下「RO処理水」という)を前記貯水タンクに溜めることができ、前記貯水タンクに溜めた処理水を前記EDI装置に供給し、処理水(以下「EDI処理水」という)を得ることができ、
RO処理装置から貯水タンクにRO処理水を送る第1ラインと、貯水タンク内の水をEDI装置に送る第2ラインと、EDI装置からRO処理水が貯水された貯水タンクにEDI処理水を返送する第3ラインを有し、EDI装置から第3ラインを用いた貯水タンクへの送水と、貯水タンクから第2ラインを用いたEDI装置への送水を組み合わせた循環ラインが形成されたものであり、
RO処理装置にて得られたRO処理水を第1ラインから貯水タンクに送って貯水する第1工程と、
貯水タンクに貯水されたRO処理水を第2ラインからEDI装置に送って処理し、EDI処理水を得る第2工程を有しており、
更にEDI処理水の一部又は全部を第3ラインから貯水タンクに返送して、RO処理水とEDI処理水の混合水を得る第3工程と、前記混合水を第2ラインから再度EDI装置に送って処理する第4工程を繰り返す循環工程を有している、医療用精製水の製造方法を提供する。
【0009】
本発明は、他の課題の解決手段として、逆浸透膜処理装置(以下「RO処理装置」という)、貯水タンク、電気再生式脱イオン装置(以下「EDI装置」という)を有しており、
前記RO処理装置による処理水(以下「RO処理水」という)を前記貯水タンクに溜めることができ、前記貯水タンクに溜めた処理水を前記EDI装置に供給し、処理水(以下「EDI処理水」という)を得ることができる医療用精製水の製造装置であって、
RO処理装置から貯水タンクにRO処理水を送る第1ラインと、貯水タンク内の水をEDI装置に送る第2ラインと、EDI装置からRO処理水が貯水された貯水タンクにEDI処理水を返送する第3ラインを有し、EDI装置から第3ラインを用いた貯水タンクへの送水と、貯水タンクから第2ラインを用いたEDI装置への送水を組み合わせた循環ラインが形成されており、EDI装置による1時間当たりのEDI処理水の量(V1)(L)と、貯水タンクの容量(V3)(L)の比率(V1/V3)が1.5〜10である、医療用精製水の製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造装置を用いて医療用精製水を製造することにより、使用量の変動があった場合でも、人体に対して安全な高品質の精製水を安価に安定供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1により、本発明の医療用精製水の製造方法と、前記製造方法を実施するために適した医療用精製水の製造装置を説明する。図1は、製造フローを示す図である。なお、図示していないが、必要に応じて、各ライン間には送水を停止及び開始するための開閉バルブ(電磁弁等)を設けることができる。
【0012】
<第1工程>
ROポンプ4を作動させ、原水供給ライン11から水道水をRO処理装置1に送って処理して、RO処理水を得る。その後、得られたRO処理水を第1ライン12から貯水タンク2に送って貯水する。なお、原水となる水道水は、必要に応じて、軟水装置、活性炭、ミクロフィルター等で前処理することもできる。
【0013】
RO処理装置1は、公知のものを用いることができ、例えば、ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社より販売されている、装置型式VCR40シリーズ、VCR80シリーズ、NER40シリーズ、NER80シリーズ、SHRシリーズのほか、実施例で使用したもの等を用いることができる。
【0014】
RO処理装置1は、処理能力(処理水の製造能力)が30〜5000L/hrのものを用いることができるが、前記範囲に限定されるものではなく、精製水の供給量に応じて、適宜選択することができる。
【0015】
貯水タンク2の貯水容量は100〜2000Lが好ましい。貯水タンク2は、ステンレス等の金属製、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂製等にすることができる。
【0016】
貯水タンク2の形状は特に制限されるものではないが、タンク内部への液の残留を防止して液の流れを円滑にする観点から、図示するように底部が円錐あるいは四角錐の錐状構造ものが好ましく、前記錐状の頂点部分にライン13が接続されているものが特に好ましい。
【0017】
貯水タンク2は、外部雰囲気からの雑菌等の混入を防ぐためのエアフィルター付きの通気孔を有しており、必要に応じて、内部には、殺菌を目的として紫外線ランプを取り付けることもできる。
【0018】
貯水タンク2内部には水位計を取り付けておき、水位に応じてRO処理装置1の運転を開始又は停止できるようにすることが好ましい。例えば、予め貯水タンク2内の水位の上限値と下限値を決めておき、上限値に達したときにRO処理装置1の運転を停止させ、逆に下限値に達したときにRO処理装置1の運転を開始させるようにする。
【0019】
貯水タンクの容量(V3)は、後述するEDI装置による1時間当たりのEDI処理水の量(V1)(L)と、貯水タンクの平均水量の関係を満たすように、V1/V3が1.5〜10の比率関係にするのが好ましい。
【0020】
<第2工程>
次に、EDI供給ポンプ5を作動させて、貯水タンク2に貯水されたRO処理水を第2ライン13からEDI装置3に送って処理し、EDI処理水を得る。
【0021】
EDI装置3は、イオン交換室(脱塩室)、濃縮室、電極室(正及び負の電極室)を有する公知の装置であり、イオン交換室で脱イオン処理して脱塩水(EDI処理水)を取り出すことができるものである。EDI装置としては、例えば、特許文献1、2に記載のもの、特開平11−244853号公報、特開2001−239270号公報、特開2001−353498号公報、特開2004−74109号公報に記載のもののほか、市販のEDI装置である、EDIシステムシリーズ,商品名MOLSEP(登録商標)(ダイセン・メンブレン・システムズ(株)販売)、実施例で使用したもの等を用いることができる。
【0022】
EDI装置3の運転条件は、
供給液量が、好ましくは50〜4500L/hrであり、
EDI水量(脱塩水量)が、好ましくは30〜4000L/hrであり、
濃縮水流量が、好ましくは供給液量の5%〜20%の流量であり、
印加電圧は30〜1000Vが好ましく、印加電流は0.5〜6Aが好ましい。
【0023】
以上の第1工程と第2工程により、RO処理水をEDI処理したEDI処理水を得ることができるが、本発明の製造方法では、以下において説明するとおり、更に第3工程と第4工程を組み合わせた循環ラインを有していることが特徴である。
【0024】
<第3工程(循環工程)>
次に、EDI処理水を第3ライン14から貯水タンク2に返送して、RO処理水とEDI処理水の混合水を得る。このとき、EDI処理水は、全量を貯水タンク2に返送してもよいし(全量循環)、一部量を返送してもよい(一部量循環)。一部量を返送するときは、全量中の10%以上、好ましくは10〜80%量、更に好ましくは15〜60%量を返送することが望ましい。返送量が10%量未満では、循環による洗浄効果が小さすぎ、80%量を超えると、循環流量が過大になり精製水の製造に供する量が少なくなって精製水製造のコストアップを招く。
【0025】
第3工程の処理の開始は、第3ライン14の洗浄のため第2工程の処理の開始と同時に行うのが好ましい。精製水製造・取水を始める前に精製水の取水ポイントまでの設備、配管を洗浄する場合は、一時的に第3工程を省略してEDI処理水の全量を取水ポイントまでの設備、配管に送水してもよい。
【0026】
<第3工程(全量循環工程と一部量循環工程)>
第3工程は、運転開始後、最初にEDI処理水を貯水タンク2に返送したときから、返送した合計量が少なくとも貯水タンク2の平均水量(V2)と同量になるまではEDI処理水の全量を返送する全量循環工程と、その後は、EDI処理水の10〜80%量を返送して循環させる一部量循環工程の組み合わせにすることができる。
【0027】
貯水タンク2の水量は、循環運転中に変化するものであり、前記平均水量(V2)は、循環運転の開始から全量循環運転および/または一部量循環運転による所定時間経過時までの間の平均値とする。具体的には、5分ごとに貯水タンク2の水量を計測し、その平均値から求める。
【0028】
全量循環工程は、運転開始後、最初にEDI処理水を貯水タンク2に返送したときから、返送した合計量が貯水タンク2の平均水量と同量〜5倍量になるまでEDI処理水の全量を返送することが好ましく、より好ましくは同量〜3倍量である。返送した合計量が貯水タンク2の平均水量と同量未満では、循環によるラインや貯水タンク以降の設備の洗浄効果が小さく、5倍量を超えると洗浄に要する時間が長時間となり不経済となる。
【0029】
全量循環工程において前記の返送した合計量と貯水タンク2の平均水量との関係を満たすように循環運転することにより、人体に対して安全な高品質の精製水を必要時に速やかにかつ安価に供給することができる。
【0030】
一部量循環工程は、好ましくはEDI処理水の10〜60%量を返送して循環させ、より好ましくは15〜40%量を循環させる。
【0031】
<第4工程(循環工程)>
次に、貯水タンク2内の混合水を第2ライン13から再度EDI装置3に送って処理する。このときのEDI装置3における処理条件は、第2工程と同じである。
【0032】
本発明では、循環工程において、EDI装置による1時間当たりのEDI処理水の量(V1)(L)と、貯水タンクの平均水量(V2)(L)の比率(V1/V2)が2〜12の関係を満たすように循環運転することが好ましく、より好ましくはV1/V2が3〜10の関係を満たすように循環運転する。V1/V2が2未満では洗浄に要する時間が長時間となり必要時に速やかな精製水製造が行えないことに加えて、貯水タンク容量が大きくなり装置の小型化ができないデメリットが生じる。V1/V2が12を超えると、EDI処理量に対して貯水タンクが小さすぎて装置の安定運転に支障が生じる。
【0033】
前記V1/V2の関係を満たすように循環運転することにより、患者数の増減等により使用量の変動があった場合でも、人体に対して安全な高品質の精製水を安定供給する観点から好ましく、特に第3工程において、全量循環工程と一部量循環工程を組み合わせた製造方法を適用したときに好ましい。
【0034】
本発明の製造方法では、第3工程と第4工程の間で処理水が循環されるが、例えば、人工透析用水として取水するときは、一部量循環によって貯水タンク2に返送される処理水を除く処理水をEDI装置3に接続したライン15から取水することができる。
【0035】
本発明の製造方法によって、人体に対して安全の高品質の精製水を得ることができるが、更に安全性を高めるために、ライン15の途中にイオン交換樹脂片の捕集、エンドトキシンや微生物の除去の役目をするUF装置を設置することもできる。
【0036】
本発明の製造方法は、下記の各方法を実施できるが、これらの実施方法に限定されるものではない。
【0037】
(実施方法1)
(1)EDI装置3と貯水タンク2間の循環工程(一部量循環工程)の開始/RO処理水の貯水タンク2への送水停止(RO処理装置1の運転停止)。
(2)医療用精製水の取水・使用開始/一部量循環工程の継続。
(3)貯水タンク2の水量低下に伴い、RO処理水の貯水タンク2への送水開始(RO処理装置1の運転開始)/EDI装置3と貯水タンク2間の循環工程の停止。
(4)上記(1)〜(3)の繰り返し。
【0038】
(実施方法2)
(1)EDI装置3と貯水タンク2間の循環工程(一部量循環工程)の開始。
(2)循環工程と並行して、RO処理水の貯水タンク2への送水量の調整(貯水タンク2の水量に応じて、RO処理装置1の運転を適宜停止乃至開始)。
(3)医療用精製水の取水・使用開始/一部量循環工程の継続。
(4)RO処理水の貯水タンク2への送水量の調整(貯水タンク2の水量に応じて、RO処理装置1の運転を適宜停止乃至開始)/一部量循環工程の継続。
【0039】
(実施方法3)
(1)EDI装置3と貯水タンク2間の循環工程(全量循環工程)の開始/RO処理水の貯水タンク2への送水停止(RO処理装置1の運転停止)
(2)EDI装置3と貯水タンク2間の循環工程を、全量循環工程から一部量循環工程に移行/RO処理水の貯水タンク2への送水停止(RO処理装置1の運転停止)の継続。
(3)医療用精製水の取水・使用開始/一部量循環工程の継続。
(4)貯水タンク2の水量低下に伴い、RO処理水の貯水タンク2への送水開始(RO処理装置1の運転開始)/EDI装置3と貯水タンク2間の一部量循環工程の停止。
(5)上記(1)〜(4)の繰り返し。
【0040】
(実施方法4)
(1)EDI装置3と貯水タンク2間の循環工程(全量循環工程)の開始/RO処理水の貯水タンク2への送水停止(RO処理装置1の運転停止)
(2)EDI装置3と貯水タンク2間の循環工程を、全量循環工程から一部量循環工程に移行。
(3)循環工程と並行して、RO処理水の貯水タンク2への送水量の調整(貯水タンク2の水量に応じて、RO処理装置1の運転を適宜停止乃至開始)。
(4)医療用精製水の取水・使用開始/一部量循環工程の継続。
(5)RO処理水の貯水タンク2への送水量の調整(貯水タンク2の水量に応じて、RO処理装置1の運転を適宜停止乃至開始)/一部量循環工程の継続。
【0041】
本発明の製造方法によれば、第3工程と第4工程を組み合わせた循環工程を有していることから、貯水タンク2内部やEDI装置3内部を繰り返し洗浄することができ、前記洗浄水も複数回に亘って循環殺菌されるため、装置内における精製水は高い品質を維持できる。
【0042】
また、本発明の製造方法においては、第3工程にて全量循環工程を設けることにより、短い時間で、貯水タンク2内をより清浄な状態(エンドトキシンや細菌汚染が極めて少ない状態)に維持できるようになり、更に全量循環工程と組み合わせて一部量循環工程を設けることにより、前記清浄な状態を維持したまま、高品質の医療用精製水を安定して供給することができる。
【0043】
また、本発明の製造方法を適用することにより、貯水タンク2には、常時、人体に安全な高品質の精製水を貯水できるため、使用量の変動への対応も容易にできる。
【実施例】
【0044】
(医療用精製水の製造装置)
RO処理装置1:VCR−20P(ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)
RO膜:SV022GV−DRA98
RO処理水量(透過水量):60L/hr
運転圧力:0.56MPa
貯水タンク2:容量200L、材質:ポリエチレン
EDI装置3:装置型番OS−100,(株)オスモ製
EDI電極面積:4.2dm2
エンドトキシン測定装置:トキシノメータミニ(和光純薬(株)製)。
【0045】
実施例1(全量循環)
図1に示すフローにて、医療用精製水の製造を行った。EDI運転条件を表1に示す。
<第1工程>
予め水道水を活性炭・プレフィルタで前処理したものをRO処理装置1に供給して、RO処理水を得た。RO処理水は第1ライン12から貯水タンク2に送って貯水した。
【0046】
<第2工程>
貯水タンク2に貯水されたRO処理水を第2ライン13からEDI装置3に送って処理し、EDI処理水を得た。このとき、RO処理水が流入することによる水質変化の影響をなくすため、RO処理装置1は停止させた。
【0047】
<第3工程>
貯水タンク2内の水量が41Lになった時点で、EDI処理水の全量を第3ライン14から貯水タンク2に送って、RO処理水とEDI処理水の混合水を得た。
【0048】
<第4工程>
貯水タンク2内の混合水を第2ライン13から再度EDI装置3に送って、EDI処理した。第3工程と第4工程の間は全量循環工程の処理のみを行い、66分間の継続運転をした。66分経過時の貯水タンク2の水量は31Lであり貯水タンクの平均水量は36Lであった。運転開始時、運転開始から66分経過後の各測定結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

表1から明らかなとおり、全量循環処理により、貯水タンク2中のエンドトキシン濃度は急減し、水質は大きく向上した。EDI処理水中のエンドトキシン濃度も、透析用水基準の0.05EU/mlを大きく下回り十分満足できる水準であった。
【0050】
実施例2(全量循環)
図1に示すフローにて、医療用精製水の製造を行った。EDI運転条件を表2に示す。
<第1工程>
実施例1と同様にして、RO処理水を貯水タンク2に送って貯水した。
【0051】
<第2工程>
貯水タンク2に貯水されたRO処理水を第2ライン13からEDI装置3に送って処理し、EDI処理水を得た。なお、濃縮水と電極室水はそのまま排水した。このとき、RO処理水が流入することによる水質変化の影響をなくすため、RO処理装置1は停止させた。
【0052】
<第3工程>
貯水タンク2内の水量が55Lになった時点で、EDI処理水の全量を第3ライン14から貯水タンク2に送って、RO処理水とEDI処理水の混合水を得た。
【0053】
<第4工程>
貯水タンク2内の混合水を第2ライン13から再度EDI装置3に送って、EDI処理した。第3工程と第4工程の間は全量循環工程の処理のみを行い、60分間の継続運転をした。60分経過時の貯水タンク2の水量は37Lであり貯水タンクの平均水量は46Lであった。運転開始時、運転開始から60分経過後の各測定結果を表2に示す。
【表2】

表2から明らかなとおり、全量循環処理により、貯水タンク2中のエンドトキシン濃度は急減し、電気電導度も下がり、水質は大きく向上した。EDI処理水中のエンドトキシン濃度も、十分満足できる水準であった。
【0054】
比較例1(EDI処理水の全量循環において、返送量の合計量が貯水タンク平均水量と同量未満の例)
表3に示す運転条件にて、実施例1と同様に処理した。運転開始時、運転開始から13分経過後の各測定結果を表3に示す。
【表3】

全量循環させた場合でも、13分間の循環運転では、返送量の合計量が貯水タンク平均水量と同量に至らず、かつV1/V2を満たすことができないので、洗浄効果が不十分でありEDI処理水の水質も不満足なレベルであった。
【0055】
実施例3(全量循環と一部量循環の組み合わせ)
【0056】
<第1工程>
実施例1と同様にして、RO処理水を貯水タンク2に送って貯水した。
【0057】
<第2工程>
貯水タンク2に貯水されたRO処理水を第2ライン13からEDI装置3に送って処理し、EDI処理水を得た。なお、濃縮水と電極室水はそのまま排水した。貯水タンクの水量は上限を50L、下限を45Lとしてこの範囲内に水量を保持するようにRO処理装置を作動、停止させた。
【0058】
<第3工程−1、全量循環>
貯水タンク2内の混合水量が50Lになった時点で、EDI処理水の全量を第3ライン14から貯水タンク2に送って、RO処理水とEDI処理水の混合水を得た。
【0059】
<第4工程−1、全量循環>
貯水タンク2内の混合水を第2ライン13から再度EDI装置3に送って、EDI処理した。第3工程と第4工程の間は全量循環の処理のみを行い、70分間の継続運転をした。水質検査は、30分経過後と70分経過後の2回実施した。30分経過後、70分経過後のいずれの場合も貯水タンクの平均水量は47.5Lであった。
<第3工程−2、一部量循環>
第4工程−1で70分間の全量循環を終えた後、引き続き、EDI処理水を第3ライン14から貯水タンク2に送って、RO処理水とEDI処理水の混合水を得た。EDI処理水の貯水タンク2への返送量は、一部量(EDI処理水量100L/hr中の49.2L/hr)とした。
【0060】
<第4工程−2、一部量循環>
貯水タンク2内の混合水を第2ライン13から再度EDI装置3に送って、EDI処理した。第3工程と第4工程の間は一部量循環工程の処理のみを行い、60分間の継続運転をした。水質検査は、30分経過後と60分経過後の2回実施した。30分経過後、60分経過後のいずれの場合も貯水タンクの平均水量は47.5Lであった。
【0061】
【表4−1】

【0062】
【表4−2】

【0063】
【表4−3】

【0064】
表4−1にEDI運転条件、表4−2に水質分析結果、表4−3に全量循環時の返送量の合計と貯水タンクの平均水量との関係を示した。これらの表から明らかなように全量循環と一部量循環によって、貯水タンク2中のエンドトキシンは減少し、EDI処理水中のエンドトキシン濃度は、透析用水基準の0.05EU/mlを大きく下回る結果が得られた。従って、全量循環と一部量循環をこの順序で組み合わせることによって、より高品質の精製水を安定して供給することができるようになる。
【0065】
比較例2(循環なし)
実施例3の第1工程と第2工程のみを行い、EDI処理水を得た。各測定結果を表5に示す。
表5から明らかなとおり、比較例2では第3工程と第4工程の循環工程を行っていないために、EDI処理水のエンドトキシンレベルは高く不満足な水質のものしか得られなかった。
【0066】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の製造方法を説明するための製造フローを示す図。
【符号の説明】
【0068】
1 RO処理装置
2 貯水タンク
3 EDI装置
4 ROポンプ
5 EDI供給ポンプ
11 原水(水道水)供給ライン
12 第1ライン
13 第2ライン
14 第3ライン
15 精製水の取水ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜処理装置(以下「RO処理装置」という)、貯水タンク、電気再生式脱イオン装置(以下「EDI装置」という)を有する医療用精製水の製造装置を用いた医療用精製水の製造方法であって、
前記製造装置が、前記RO処理装置による処理水(以下「RO処理水」という)を前記貯水タンクに溜めることができ、前記貯水タンクに溜めた処理水を前記EDI装置に供給し、処理水(以下「EDI処理水」という)を得ることができ、
RO処理装置から貯水タンクにRO処理水を送る第1ラインと、貯水タンク内の水をEDI装置に送る第2ラインと、EDI装置からRO処理水が貯水された貯水タンクにEDI処理水を返送する第3ラインを有し、EDI装置から第3ラインを用いた貯水タンクへの送水と、貯水タンクから第2ラインを用いたEDI装置への送水を組み合わせた循環ラインが形成されたものであり、
RO処理装置にて得られたRO処理水を第1ラインから貯水タンクに送って貯水する第1工程と、
貯水タンクに貯水されたRO処理水を第2ラインからEDI装置に送って処理し、EDI処理水を得る第2工程を有しており、
更にEDI処理水の一部又は全部を第3ラインから貯水タンクに返送して、RO処理水とEDI処理水の混合水を得る第3工程と、前記混合水を第2ラインから再度EDI装置に送って処理する第4工程を繰り返す循環工程を有している、医療用精製水の製造方法。
【請求項2】
循環工程中、EDI処理水を貯水タンクに返送する第3工程が、
運転開始後、最初にEDI処理水を貯水タンクに返送したときから、返送した合計量が少なくとも貯水タンクの平均水量と同量になるまではEDI処理水の全量を返送する全量循環工程と、
その後は、EDI処理水の10〜80%量を返送して循環させる一部量循環工程を有している、請求項1記載の医療用精製水の製造方法。
【請求項3】
EDI装置による1時間当たりのEDI処理水の量(V1)(L)と、貯水タンクの平均水量(V2)(L)の比率(V1/V2)が2〜12になるように運転する、請求項1又は2記載の医療用精製水の製造方法。
【請求項4】
全量循環工程が、運転開始後、最初にEDI処理水を貯水タンクに返送したときから、返送した合計量が貯水タンクの平均水量と同量〜4倍量になるまでEDI処理水の全量を返還する工程である、請求項1〜3のいずれか1項記載の医療用精製水の製造方法。
【請求項5】
一部量循環工程が、EDI処理水の10〜60%量を返送して循環させる工程である、請求項1〜4のいずれか1項記載の医療用精製水の製造方法。
【請求項6】
医療用精製水として供給しながら、医療用精製水の製造を連続的に行う、請求項1〜5のいずれか1項記載の医療用精製水の製造方法。
【請求項7】
逆浸透膜処理装置(以下「RO処理装置」という)、貯水タンク、電気再生式脱イオン装置(以下「EDI装置」という)を有しており、
前記RO処理装置による処理水(以下「RO処理水」という)を前記貯水タンクに溜めることができ、前記貯水タンクに溜めた処理水を前記EDI装置に供給し、処理水(以下「EDI処理水」という)を得ることができる医療用精製水の製造装置であって、
RO処理装置から貯水タンクにRO処理水を送る第1ラインと、貯水タンク内の水をEDI装置に送る第2ラインと、EDI装置からRO処理水が貯水された貯水タンクにEDI処理水を返送する第3ラインを有し、EDI装置から第3ラインを用いた貯水タンクへの送水と、貯水タンクから第2ラインを用いたEDI装置への送水を組み合わせた循環ラインが形成されており、EDI装置による1時間当たりのEDI処理水の量(V1)(L)と、貯水タンクの容量(V3)(L)の比率(V1/V3)が1.5〜10である、医療用精製水の製造装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−131495(P2010−131495A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308531(P2008−308531)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(594199407)株式会社オスモ (10)
【Fターム(参考)】