説明

医療用膨張・収縮駆動装置

【課題】 駆動装置の応答性の低下要因を検知し、駆動装置の応答性を良好に保つことができる医療用膨張・収縮駆動装置を提供する。
【解決手段】
駆動流体の流動によって被駆動機器が膨張および収縮を繰り返すように、当該被駆動機器に連通する配管系(28)に、陽圧と陰圧とを交互に印加する圧力発生手段(12,13,21,22)と、第1制御弁(82)を介して前記配管系に接続されるガスタンク(18)と、前記ガスタンクにガスを補充するガス補充手段(60)と、前記ガスタンクの排気を行う排気手段(83,84)と、前記配管系の前記駆動流体における前記ガスの濃度を検出するガス濃度検出手段(72)と、前記圧力発生手段、前記第1制御弁、前記ガス濃度検出手段及び前記排気手段を制御する制御手段(20,79)と、を有する医療用膨張・収縮駆動装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IABP(大動脈バルーンポンピング)等において被駆動機器を駆動するために用いられる医療用膨張・収縮駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IABPなどにおいてバルーンカテーテルを駆動するために用いられる駆動装置では、駆動流体としてヘリウムガス等を用いるものが提案されている。また、バルーンの応答性向上や破損時における体内へのガス流出抑制の観点から、バルーンカテーテルとの間で直接流体を流動させる二次配管系と、二次配管系に対して圧力変動のみを伝える一次配管系とを有する駆動装置も提案されている。
【0003】
ここで、バルーンカテーテル及び二次配管系等に充填されるガスは、たとえピンホール等の損傷が生じていない正常駆動時においても、バルーン膜や配管系を構成するチューブの壁を透過して拡散する。特に、質量が小さく応答性に優れていることなどから、バルーンカテーテルの駆動に好適に用いられるヘリウムガスは、その分子量が小さいために、バルーン膜や配管等から外部へ拡散しやすいという性質を有している。
【0004】
そのため、バルーンカテーテル及び二次配管系の内部圧力が低下した場合に、これらにヘリウムガスを補充する手段を有する駆動装置が提案されている。また、駆動装置によるガス補充量を監視することにより、正常駆動時におけるガス補充動作と、ピンホール等が生じている異常駆動時におけるガス補充動作とを判別可能な駆動装置も提案されている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−173443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、バルーンカテーテル及びこれを駆動する駆動装置では、正常駆動時において、内部の駆動流体が外部に拡散するだけでなく、バルーンカテーテル及び二次配管系の内部へ、外部の空気や水蒸気等が流入する現象が発生する。バルーンカテーテル及び二次配管系の内部の駆動流体に、外部からの空気や水蒸気が混ざると、駆動装置の応答性が低下するなどの問題が発生する。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、駆動装置の応答性の低下要因を検知し、駆動装置の応答性を良好に保つことができる医療用膨張・収縮駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る医療用膨張・収縮駆動装置は、
駆動流体の流動によって被駆動機器が膨張および収縮を繰り返すように、当該被駆動機器に連通する配管系に、陽圧と陰圧とを交互に印加する圧力発生手段と、
第1制御弁を介して前記配管系に接続されるガスタンクと、
前記ガスタンクにガスを補充するガス補充手段と、
前記ガスタンクの排気を行う排気手段と、
前記配管系の前記駆動流体における前記ガスの濃度を検出するガス濃度検出手段と、
前記圧力発生手段、前記第1制御弁、前記ガス濃度検出手段及び前記排気手段を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記圧力発生手段が前記陰圧の印加から前記陽圧の印加へ切り換わった後に前記第1制御弁を開き、次の切り換えの前に前記第1制御弁を閉じ、前記配管系から前記ガスタンクへ、前記駆動流体の少なくとも一部が流入するように前記第1制御弁を制御し、
前記制御手段は、前記第1制御弁を閉じている状態において、前記ガスタンクに流入した前記駆動流体の少なくとも一部を前記ガスタンクから排出するように前記排気手段を制御した後に、前記ガスタンクに前記ガスを補充するように前記ガス補充手段を制御するタンク置換制御を行うことができ、
前記制御手段は、前記圧力発生手段が前記陽圧の印加から前記陰圧の印加へ切り換わった後に前記第1制御弁を開き、次の切り換えの前に前記第1制御弁を閉じ、前記ガスタンクから前記配管系へ、前記ガスタンクの流体の少なくとも一部が流入するように前記第1制御弁を制御し、
前記制御手段は、前記ガス濃度検出手段による検出結果に応じて、前記タンク置換制御を実施することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る医療用膨張・収縮駆動装置は、配管系に存在する駆動流体におけるガスの濃度を検出することができる。駆動流体におけるガスの濃度低下は、駆動装置の応答性の低下要因となるため、本発明に係る医療用膨張・収縮駆動装置は、配管系の駆動流体におけるガスの濃度を検出することにより、駆動装置の応答性の低下要因を検知できる。
【0010】
さらに、本発明に係る医療用膨張・収縮駆動装置は、第1制御弁によって配管系に対する連通及び遮断を切り換え可能なガスタンクを有する。制御手段は、第1制御弁の開閉を制御し、配管系の圧力変化に応じて、配管系とガスタンクの間で、流体の移動を発生させる。また、制御手段は、第1制御弁を閉じた状態でガス補充手段と排気手段を制御し、ガスタンクに流入した流体を、ガスに置換するタンク置換制御を行うことができる。したがって、本発明に係る医療用膨張・収縮駆動装置は、ガスの濃度低下を検出したような場合には、第1制御弁の開閉動作の間にタンク置換制御を行うことにより、被駆動機器の膨張・収縮動作を継続しながら、配管系のガス濃度を上昇させることが可能である。また、このような医療用膨張・収縮駆動装置は、ガスの消費を抑制できるとともに、駆動流体の置換に伴う装置の停止時間を抑制することが可能である。
【0011】
また、例えば、前記制御手段は、前記駆動流体における前記ガスの前記濃度が第1の範囲である場合、前記タンク置換制御を所定の回数実施しても良い。
【0012】
制御手段は、ガスの濃度に応じて、タンク置換制御を所定の回数実施することにより、配管系のガス濃度を適切なレベルまで引き上げ、駆動装置の応答性を良好に維持することが可能である。また、ガス濃度の範囲と、タンク置換制御の回数を対応づけることにより、このような医療用膨張・収縮装置は、ガスの濃度を維持するために要するガスの量を抑制することができる。
【0013】
また、例えば、本発明に係る医療用膨張・収縮駆動装置は、前記制御手段からの制御を受けて前記配管系から前記駆動流体を排出する配管排出手段と、
前記制御手段からの制御を受けて前記配管系へ前記ガスを補充する配管補充手段と、を有しても良く、
前記制御手段は、前記駆動流体における前記ガスの前記濃度が前記第1の範囲より低い場合、前記配管系から前記駆動流体を排出するように前記配管排出手段を制御した後、前記配管系に前記ガスを補充するように前記配管補充手段を制御しても良い。
【0014】
このような制御手段は、ガスの濃度が第1の範囲である場合は、ガスタンクを介したタンク置換制御を行うが、ガスの濃度が第1の範囲より低い場合には、配管排出手段と配管補充手段とを制御して、より直接的に配管系の駆動流体をガスに置換する。このような制御手段を有する医療用膨張・収縮駆動装置は、ガス濃度の低下幅が小さい場合には被駆動機器の膨張・収縮動作を継続しながら徐々に配管系のガス濃度を上昇させることができ、他方、ガス濃度の低下幅が大きい場合には素早く大幅に駆動流体のガス濃度を回復させることができる。また、所定の時間で駆動流体の置換を行うような技術に比べて、被駆動機器の膨張・収縮動作を停止して行う置換の実施頻度を、抑制することが可能である。
【0015】
また、例えば、本発明に係る医療用膨張・収縮駆動装置は、内部の圧力を調整する圧力調整手段を有し、前記配管系に第2制御弁を介して接続されるチャンバーをさらに有しても良く、
前記ガス濃度検出手段は、前記チャンバー内に流入した前記駆動流体における前記ガスの前記濃度を検出しても良い。
【0016】
圧力調整手段による圧力調整が可能なチャンバー内において、駆動流体のガス濃度を検出する医療用膨張・収縮駆動装置は、容易かつ正確な濃度の検出が可能である。
【0017】
また、例えば、前記圧力調整手段は、前記チャンバーの容積を変えるように移動する可動壁を有しても良く、
前記圧力発生手段は、前記陽圧を発生する陽圧発生部と、前記陰圧を発生する陰圧発生部とを有しても良く、
前記チャンバーは、第3制御弁を介して前記陰圧発生部と接続されても良く、
前記可動壁は、前記チャンバーが前記陰圧発生部と連通した際に、前記チャンバーの前記容積が減少するように移動しても良い。
【0018】
このようなチャンバーを有する医療用膨張・収縮駆動装置は、シンプルな構造でありながら、高い精度で駆動流体のガス濃度を検出することが可能である。また、圧力調整手段が有する可動壁は、チャンバー内の圧力を調整する際に移動するだけでなく、チャンバーから駆動流体を排出する際にも移動するため、チャンバーの効率的な排出にも貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る医療用膨張・収縮駆動装置の概略構成図である。
【図2】図2は、図1に示す医療用膨張・収縮装置に接続されるバルーンカテーテルの一例を表す断面図である。
【図3】図3は、図2に示すバルーンカテーテルの使用例を表す概念図である。
【図4】図4は、図1に示す医療用膨張・収縮駆動装置において行われる圧力検出及び電磁弁の開閉のタイミングを示すチャート図である。
【図5】図5は、二次配管系から三次ヘリウムガスタンクへの流体の移動を説明した模式図である。
【図6】図6は、三次ヘリウムガスタンクから二次配管系への流体の移動を説明した模式図である。
【図7】図7は、図1に示す電磁弁82を閉状態に維持した場合における二次配管系の圧力変化を示すグラフである。
【図8】図8は、図1に示す電磁弁82を、二次配管系の圧力印加状態に対応させて開閉させた場合における二次配管系の圧力変化を示すグラフである。
【図9】図9は、図1に示す医療用膨張・収縮駆動装置において行われる半パージにおける処理の一例を表すフローチャートである。
【図10】図10は、図1に示す医療用膨張・収縮駆動装置において行われる全パージにおける処理の一例を表すフローチャートである。
【図11】図11は、図1に示す医療用膨張・収縮駆動装置において行われるガス濃度検出の第1の段階を表す概念図である。
【図12】図12は、図1に示す医療用膨張・収縮駆動装置において行われるガス濃度検出の第2の段階を表す概念図である。
【図13】図13は、図1に示す医療用膨張・収縮駆動装置において行われるガス濃度検出の第3の段階を表す概念図である。
【図14】図14は、図1に示す医療用膨張・収縮駆動装置において行われるガス濃度管理動作を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る医療用膨張・収縮駆動装置を、図面に示す実施形態に基づき、詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る医療用膨張・収縮駆動装置の概略構成図である。本実施形態では、IABP用バルーンカテーテル30のバルーン32を膨張及び収縮させるために用いられる駆動装置を例に挙げて説明を行うが、本発明に係る駆動装置によって膨張及び収縮させられる医療用器具はこれに限定されない。
【0022】
図2に示すように、IABP用バルーンカテーテル30は、心臓の拍動に合わせて拡張及び収縮するバルーン32を有する。バルーン32は、膜厚約100〜150μm程度の筒状のバルーン膜で構成される。図2に示すバルーンカテーテル30において、拡張状態のバルーン膜の形状は円筒形状であるが、これに限定されず、多角筒形状であっても良い。
【0023】
IABP用バルーン32は耐屈曲疲労特性に優れた材質で構成される。バルーン32の外径および長さは、心機能の補助効果に大きく影響するバルーン32の内容積と、動脈血管の内径などに応じて決定される。バルーン32は、通常、その内容積が30〜50ccであり、外径が拡張時14〜16mmであり、長さが210〜270mmである。
【0024】
このバルーン32の遠位端は、短チューブ35を介してまたは直接に内管40の遠位端外周に熱融着または接着などの手段で取り付けてある。バルーン32の近位端には、金属チューブ37などの造影マーカーを介してまたは直接に、カテーテル管34の遠位端に接合してある。このカテーテル管34の内部に形成された第1のルーメンを通じて、バルーン32内に、駆動流体が導入または導出され、バルーン32が拡張または収縮するようになっている。バルーン32とカテーテル管34との接合は、熱融着あるいは紫外線硬化樹脂などの接着剤による接着により行われる。
【0025】
内管40の遠位端はカテーテル管34の遠位端より遠方へ突き出ている。内管40は、バルーン32およびカテーテル管34の内部を軸方向に挿通されている。内管40の近位端は、分岐部36の第2ポート42に連通するようになっている。内管40の内部には、第2ルーメンが形成してある。第2ルーメンは、バルーン32の内部に形成される膨張・収縮空間や、カテーテル管34内に形成された第1のルーメンとは連通しない。内管40は、遠位端の開口端43で取り入れた血圧を分岐部36の第2ポート42へ送り、そこから血圧変動の測定を行うようになっている。
【0026】
バルーン32内に位置する内管40の第2ルーメンは、バルーンカテーテル30を動脈内に挿入する際に、バルーン32を都合良く動脈内に差し込むためのガイドワイヤ挿通管腔としても用いられる。バルーンカテーテル30を血管などの体腔内に差し込む際には、バルーン32は、内管40の外周に折り畳んで巻回される。図2に示す内管40は、たとえばカテーテル管34と同様な材質で構成される。内管40の内径は、ガイドワイヤを挿通できる径であれば特に限定されず、たとえば0.15〜1.5mm、好ましくは0.5〜1mmである。この内管40の肉厚は、0.1〜0.4mmが好ましい。内管40の全長は、血管内に挿入されるバルーンカテーテル30の軸方向長さなどに応じて決定され、特に限定されないが、たとえば500〜1200mm、好ましくは700〜1000mm程度である。
【0027】
カテーテル管34は、ある程度の可撓性を有する材質で構成されることが好ましい。カテーテル管34の内径は、好ましくは1.5〜4.0mmであり、カテーテル管34の肉厚は、好ましくは0.05〜0.4mmである。カテーテル管34の長さは、好ましくは300〜800mm程度である。
【0028】
カテーテル管34の近位端には患者の体外に設置される分岐部36が連結してある。分岐部36はカテーテル管34と別体に成形され、熱融着あるいは接着などにより、カテーテル管34と固着される。分岐部36にはカテーテル管34内の第1のルーメンおよびバルーン32内に駆動流体を導入または導出するための第1ポート38と、内管40の第2ルーメン内に連通する第2ポート42とが形成してある。
【0029】
第1ポート38は、たとえば図3に示す駆動装置29に接続され、この駆動装置29により流体圧がバルーン32内に導入または導出されるようになっている。バルーン32への充填に使用する補充ガスは特に限定されないが、駆動装置29の駆動に応じて素早くバルーン32が拡張または収縮するように、質量の小さいヘリウムガスなどを主成分とする流体が用いられる。
【0030】
図3に示すように、第2ポート42は、血圧変動測定装置49に接続される。血圧変動測定装置49は、バルーン32の遠位端に位置する内管40の開口端43及び第2ルーメンを介して、動脈内の血圧の変動を測定することができる。血圧変動測定装置49は、測定した血圧の変動等を駆動装置29に出力する。駆動装置29は、血圧の変動等から心臓の拍動を認識し、これに合わせてバルーン32を膨張及び収縮させる。駆動装置29は、通常0.4〜1秒程度の短周期でバルーン32を拡張および収縮させる。
【0031】
IABP用バルーンカテーテル30では、前述したように、バルーン32を駆動するためにバルーン32内に導入される補充ガスとして、応答性が良好であるなどの観点から、質量の小さいヘリウムガスなどを用いる。しかし、ヘリウムガスの陽圧および陰圧を、直接ポンプやコンプレッサなどで作り出すことは、ガス消費量が大きく経済性に難があり又、容量の制御が困難である。したがって、本実施形態に係る駆動装置29では、図1に示すような構造を採用している。すなわち、バルーン32内に連通する二次配管系28と、圧力発生手段としての第1ポンプ14a及び第2ポンプ14bに連通する一次配管系27とを、圧力伝達隔壁装置50により分離している。圧力伝達隔壁装置50は、ダイヤフラムおよびプレートを有する隔壁55により気密に仕切られた第1室56と第2室58とを有する。なお、隔壁55は、ダイヤフラムのみで構成されていても良い。
【0032】
圧力伝達隔壁装置50の第1室56は、入力ポート52を通じて図1に示す一次配管系27に連通している。第2室58は、出力ポート54を通じて二次配管系28に連通している。
【0033】
第1室56と第2室58とは、流体の連通は遮断されているが、第1室56の圧力変化(容積変化)が、隔壁55の変位により、第2室58の圧力変化(容積変化)として伝達するようになっている。このような構造を採用することにより、一次配管系27と二次配管系28とを連通させることなく、一次配管系27の圧力変動を二次配管系28に伝達することができる。また、駆動装置29は、二次配管系28に封入される駆動流体の容量(化学当量)を一定に制御し易い。さらに、駆動装置29は、仮にバルーン32に異常が生じて駆動流体が漏れたとしても、その漏れ量が過大になることを防止することができる。
【0034】
本実施形態では、一次配管系27の内部流体を空気とし、二次配管系28にヘリウムガスを充填及び補充する。二次配管系28へ供給する流体をヘリウムガスとしたのは、質量(分子量)が小さいガスを用いることで、バルーン32の膨張・収縮の応答性を高めるためである。
【0035】
図1に示すように、一次配管系27には、圧力発生手段として、二つのポンプ14a,14bが配置してある。一方の第1ポンプ14aは、陽圧発生用ポンプ(コンプレッサとも言う;以下同様)であり、他方の第2ポンプ14bは、陰圧発生用ポンプである。第1ポンプ14aの陽圧出力口には、減圧弁17を介して、陽圧タンクとしての第1圧力タンク12が接続してある。また、第2ポンプ14bの陰圧出力口には、逆止弁18を介して陰圧タンクとしての第2圧力タンク13が接続してある。
【0036】
第1圧力タンク12および第2圧力タンク13には、それぞれの内部圧力を検出する圧力検出手段としての圧力センサ15,16が装着してある。各圧力タンク12,13には、それぞれ電磁弁21および電磁弁22が接続してある。これら電磁弁21,22の開閉は、図示省略してある中央制御手段により制御され、たとえば患者の心臓の拍動に対応して制御される。これら電磁弁21,22の出力端は、二次圧力発生手段としての圧力伝達隔壁装置50の入力ポート52に接続してある。
【0037】
圧力伝達隔壁装置50の出力ポート54は、二次配管系28に接続してある。二次配管系28は、バルーン32の内部に連通しており、ヘリウムガスを主成分とする駆動流体が封入された密閉系となっている。この二次配管系28は、ホースまたはチューブなどで構成される。この二次配管系28には、その内部圧力を検出する圧力検出手段としての圧力センサ25が装着してある。この圧力センサ25の出力は、補充制御手段20へ入力するようになっている。
【0038】
また、この二次配管系28には、主ライン28aから分岐して、排気ライン28bが接続してある。この排気ライン28bには、電磁弁19を介して、図示省力してある排気用ポンプが接続してある。排気ライン28bに設けられた電磁弁19および排気用ポンプは、二次配管系28の内部を真空引きするためのものである。例えば、使用前において、二次配管系28及びこれに繋がる第1ルーメン及びバルーン32内は、排気ライン28bを介して排気された後、後述の補充ライン28cからヘリウムガスを供給されることによって、ヘリウムガスへの置換が実施される。
【0039】
また、排気ライン28bは、二次配管系28内に存在する駆動流体のヘリウムガス濃度が大きく低下し、二次配管系28内の駆動流体全体を、置換用の電磁弁69を介して供給されるヘリウムガスに置換(全パージ)する際にも使用される。この場合も、使用前と同様に、電磁弁19を開いて排気ライン28bから二次配管系28を排気したのち電磁弁19を閉じ、さらに電磁弁69を開くことによって新たなヘリウムガスを二次配管系28に充填する。この際、電磁弁19及び排気用ポンプは、中央制御手段または補充制御手段20からの制御を受けて二次配管系28から駆動流体を排出する排出手段として機能する。また、電磁弁69及び補充装置60は、中央制御手段または補充制御手段20からの制御を受けて二次配管系28へ直接ヘリウムガスを補充する配管補充手段として機能する。
【0040】
バルーン32を短周期で膨張及び収縮させる通常駆動状態においては、電磁弁19は閉じられている。なお、排気用ポンプは、第2ポンプ14bを兼ねても良い。
【0041】
この二次配管系28には、補充ライン28cを介して補充装置60、補助装置80及び電磁弁69が接続してある。補充装置60と電磁弁69は、先述したように、排気後に二次配管系28へヘリウムガスを充填する場合に用いる。
【0042】
これに対して、補充装置60と補助装置80は、補充制御手段20からの制御を受けて、バルーン32を短周期で膨張及び収縮させる通常駆動状態において、二次配管系28にヘリウムガスを補充する。補充装置60及び補助装置80は、二次配管系28(第1ルーメン及びバルーン32の内部を含む)内部に存在する駆動流体の化学当量又は二次配管系28の圧力が一定に保たれるように、二次配管系28に対してヘリウムガスを補充する。さらに、補充装置60及び補助装置80は、二次配管系28の圧力を維持しつつ、三次ヘリウムガスタンク81を用いて駆動流体の一部をヘリウムガスに置換し、駆動流体のヘリウムガス濃度を上昇させる動作(半パージ)を実施することができる。
【0043】
補充装置60は、電磁弁69を介して二次配管系28に直接ヘリウムガスを補充できるとともに、補助装置80の三次ヘリウムガスタンク81にヘリウムガスを補充することができる。補充装置60は、一次ガスタンクとしての一次ヘリウムガスタンク61を有する。一次ヘリウムガスタンク61の出力側には、減圧弁62を介して、電磁弁63が接続してある。この電磁弁63の開閉は、補充制御手段20により制御される。この電磁弁63の出力側には、二次ヘリウムガスタンク64が接続してあり、電磁弁63の開閉により、一次ヘリウムガスタンク61と二次ヘリウムガスタンク64が連通するようになっている。
【0044】
二次ヘリウムガスタンク64には、圧力センサ65が装着してあり、圧力センサ65は、二次ヘリウムガスタンク64内の圧力を検出し、補充制御手段20へ検出結果を出力する。補充制御手段20は、電磁弁63の開閉を制御することにより、二次ヘリウムガスタンク64内の圧力を略一定に保つ。たとえば二次ヘリウムガスタンク64内の圧力は、100mmHg程度に制御される。
【0045】
二次ヘリウムガスタンク64には、電磁弁68が接続してある。電磁弁68は、補充制御手段20により制御される。補充制御手段20は、圧力センサ25を介して二次配管系28内部の圧力を検知し、バルーン32などからの透過により二次配管系28内部の圧力が低下した場合には、電磁弁68を開いて一定容量のヘリウムガスを三次ヘリウムガスタンク81へ補充する。後述するように、三次ヘリウムガスタンク81と二次配管系28の間にある電磁弁82は、バルーン32の駆動に併せて開閉するため、三次ヘリウムガスタンク81へ補充されたヘリウムガスは、二次配管系28の圧力を上昇させる作用を奏する。
【0046】
補充制御手段20は、バルーン32の膨張及び収縮における所定のタイミングで二次配管系28の圧力を検知し、電磁弁68の開閉を行う。これにより、駆動装置29は、バルーン32を膨張及び収縮させる動作を続けながら、バルーン32の膨張及び収縮動作を阻害することなく、ヘリウムガスの補充を行うことができる。なお、補充制御手段20は、二次ヘリウムガスタンク64の圧力変化を圧力センサ65から読み取り、これを記憶しておくことができる。これによって、補充制御手段20は、補充装置60から二次配管系28へ補充されたヘリウムガスの量及びその時間変化を認識することができる。
【0047】
補助装置80は、三次ヘリウムガスタンク81と、第1制御弁としての電磁弁82と、電磁弁83と、負圧タンク84とを有する。三次ヘリウムガスタンク81は、電磁弁82を介して二次配管系28に接続されている。電磁弁82は、三次ヘリウムガスタンク81と二次配管系28との間の連通を選択的に開閉する電磁弁である。補充制御手段20は、二次配管系28に対する陽圧の印加と陰圧の印加に対応させて電磁弁82を開閉する。これにより、三次ヘリウムガスタンク81は、二次配管系28との圧力差に応じて、二次配管系28内の駆動流体の一部を吸入し、または二次配管系28にその内部のヘリウムガスの少なくとも一部を排出する。
【0048】
三次ヘリウムガスタンク81には、補充装置60の電磁弁68を介して二次ヘリウムタンク64が接続されているとともに、電磁弁83を介して負圧タンク84が接続されている。電磁弁83及び負圧タンク84は、三次ヘリウムガスタンク81の排気を行う排気手段として機能する。補充制御手段20は、三次ヘリウムガスタンク81へ駆動流体を流入させた後に、電磁弁83を開き、三次ヘリウムガスタンク81内の流体の少なくとも一部を負圧タンク84へ排出する。さらに、補充制御手段20は、電磁弁83を閉じた後に電磁弁68を開き、二次ヘリウムガスタンク64から三次ヘリウムガスタンク81へ、ヘリウムガスを流入させる(タンク置換制御)。この場合、タンク置換制御前後における三次ヘリウムガスタンク81の圧力は、略同等となるように制御される。三次ヘリウムガスタンク81へ流入したヘリウムガスの少なくとも一部は、電磁弁82が開いた際に二次配管系28へ流入する。
【0049】
これにより、駆動装置29は、バルーン32を膨張及び収縮させる動作を続けながら、バルーン32の膨張及び収縮動作を阻害することなく、駆動流体におけるヘリウムガスの濃度を上昇させることができる。なお、補助装置80の構成としては図1に示す例に限定されず、例えば負圧タンク84を設けずに、電磁弁83を第2圧力タンク13に接続するようにしてもよい。
【0050】
補充制御手段20が、タンク置換制御を含む半パージを行うタイミングは、特に限定されず、所定の時間間隔で半パージが実施されても良い。また例えば、補充制御手段20は、後述する測定子72等によるヘリウムガス濃度の測定結果に応じて、半パージの実施の有無又は半パージの実施回数等を決定することができる。なお、本実施形態において、補充制御手段20は、中央制御手段と相互に通信可能であるが、これに限定されず、補充制御手段20は、中央制御手段の一部であっても良い。
【0051】
二次配管系28には、排気ライン28b及び補充ライン28cの他に、主ライン28aから分岐した測定ライン28dが接続してある。測定ライン28dには、第2制御弁としての電磁弁73を介して、測定チャンバー74が接続してある。測定チャンバー74の内部には、電磁弁73を介して、二次配管系28に存在する駆動流体の一部が導入される。測定チャンバー74には測定子72が取り付けられており、測定子72は、測定チャンバー内に流入した駆動流体におけるヘリウムガスの濃度を検出する。
【0052】
測定チャンバー74は、第3制御弁としての電磁弁75を介して、第2ポンプ14b及び第2圧力タンク13に接続されている。第2ポンプ14bは陰圧発生用ポンプであり、第2圧力タンク13は負圧に保たれている。そのため、測定チャンバー74の内部に導入された駆動流体は、電磁弁75を介して排出される。電磁弁73及び電磁弁75の開閉は、中央制御手段によって制御される。
【0053】
測定チャンバー74は、測定チャンバー74の圧力を調整する圧力調整手段を有する。圧力調整手段は、ピストン76、アクチュエータ77、圧力センサ78及び測定制御手段79によって構成される。ピストン76は、アクチュエータ77により駆動され、測定チャンバー74の容積を変更するように移動する。
【0054】
圧力センサ78は、測定チャンバー74内部の圧力を測定し、測定結果を測定制御手段79に出力する。測定制御手段79は、圧力センサ78による測定結果に基づき、アクチュエータ77を制御してピストン76を移動させる。これにより、測定制御手段79は、測定チャンバー74内部の圧力を、所定の圧力になるように調整することができる。本実施形態において、測定制御手段79は、中央制御手段と相互に通信可能であるが、これに限定されず、測定制御手段79は、中央制御手段から独立していても良いし、あるいは中央制御手段の一部であっても良い。
【0055】
ピストン76等によって構成される圧力調整手段は、測定子72による濃度測定時における測定チャンバー74内部の圧力を、所定の値に調整することができる。圧力調整手段は、例えば測定チャンバー74の圧力を大気圧とすることができるが、測定チャンバー74内の圧力は、測定子72等に応じて決定される。しかし、圧力調整手段は、測定子72による濃度測定が実施されていない間は、測定チャンバー74の圧力調整を停止しても良い。例えば、測定制御手段79は、電磁弁75を開いて測定チャンバー74から駆動流体を排気する際には、ピストン76が外力に従って移動できるように、アクチュエータ77を制御しても良い。
【0056】
測定チャンバー74には、測定子72が取り付けられている。測定子72は、測定チャンバー74内に流入した駆動流体に含まれるヘリウムガスの濃度を測定し、不図示の中央制御手段に出力する。測定子72は、補充装置60によって補充されるガス(本実施形態においてはヘリウムガス)が、測定チャンバー74内に導入された駆動流体中に、どの程度の割合で存在するのかを検出できるものであれば、特に限定されない。例えば、補充装置60によって補充されるガスがヘリウムガスである場合には、測定子72としてピラニーゲージを好適に用いることができる。測定子72としてピラニーゲージを使用し、圧力調整手段を有する測定チャンバー74を用いることにより、駆動装置29は、駆動流体に含まれるヘリウムガスの濃度を、容易かつ高精度に検出することができる。
【0057】
測定子72によるガス濃度の検出結果を用いて、駆動装置29は、様々な動作を行うことが可能である。例えば、駆動装置29は、測定子72によるガス濃度の検出結果を、表示装置等を用いて表示しても良い。また、駆動流体に含まれるヘリウムガスの濃度が所定の値以下になったことが検出された場合、駆動装置29は、警告音の発生や警告灯の点灯などの警告動作を行っても良い。なお、駆動装置29が警告動作を行うヘリウムガス濃度の所定値は、特に限定されないが、例えば70%以上〜100%未満とすることにより、ガスの濃度低下による応答性の低下を効果的に防止できる。
【0058】
さらに、駆動装置29の中央制御手段は、駆動流体に含まれるヘリウムガスの濃度が所定の値以下になった場合、二次配管系28、第1ルーメン及びバルーン32内の駆動流体を、補充装置60から新たに補充されるヘリウムガスに置換しても良い。この場合、中央制御手段は、補充制御手段20に指示信号を送信し、二次配管系28内の駆動流体全体を置換する全パージを行っても良く、三次ヘリウムガスタンク81のタンク置換制御を介して駆動流体を部分的に置換する半パージを行っても良い。
【0059】
なお、駆動装置29が半パージや全パージを行うヘリウムガス濃度の所定値は、特に限定されないが、例えばヘリウムガス濃度が50%超〜70%以下で半パージを行い、ヘリウムガス濃度が50%以下になった場合に全パージを行うことができる。これにより、駆動装置29は、ガス濃度の低下幅が小さい場合には、バルーン32の膨張・収縮動作を継続しながら徐々に二次配管系28のガス濃度を上昇させる半パージを行うことができる。また、駆動装置29は、ヘリウムガス濃度の低下幅が大きい場合には、素早く大幅に駆動流体のヘリウムガス濃度を回復させる全パージを行うことができる。
【0060】
(基本動作)
次に、本実施形態に係る医療機器用駆動装置の動作例について説明する。本実施形態では、図1に示す第1ポンプ14aを駆動することにより、第1圧力タンク12内の圧力が約300mmHg(ゲージ圧)に設定され、第2ポンプ14bを駆動することにより、第2圧力タンク13内の圧力が約−150mmHg(ゲージ圧)に設定される。そして、図1に示す圧力伝達隔壁装置50の入力端に加わる圧力を、電磁弁21,22を交互に駆動することで、第1圧力タンク12および第2圧力タンク13の圧力に切り換える。この切り替えのタイミングは、患者の心臓の拍動に合わせて行われるように、中央制御手段が制御する。
【0061】
図4は、二次配管系28内部の圧力変動と、電磁弁21,22,68,82,83の開閉タイミングを表したグラフである。図4のライン(A)は、図1に示す二次配管系28内で起こる圧力変動を示すものであり、圧力センサ25の検出出力を、電磁弁の開閉タイミングと合わせて表示したものである。また、図4のライン(B)は、バルーン32の状態が、膨張状態にあるか、収縮状態にあるかを示したものである。
【0062】
ライン(A)に示される二次配管系28の圧力変動及びライン(B)で示されるバルーン32の膨張・収縮は、主として電磁弁21,22の開閉を切り換えることにより発生する。図4のライン(C)は、電磁弁21の開閉状態を表しており、ライン(D)は電磁弁22の開閉状態を表している。ライン(A),(C),(D)の比較から認められるように、電磁弁21を所定の時間開くことにより、隔壁55を介して二次配管系28には陽圧が印加され、二次配管系28の圧力が上昇する。ライン(A)に示されるように、二次配管系28の圧力は、オーバーシュートした後、プラトー圧P4となる。プラトー圧P4は、バルーン32が膨張した状態における圧力を示している。
【0063】
これに対して、ライン(D)で示される電磁弁21を所定時間開くと、隔壁55を介して二次配管系28に陰圧が印加され、二次配管系28の圧力が低下する。この場合、ライン(A)で示されるように、二次配管系28の圧力は、アンダーシュートした後、検出圧力P3となる。検出圧力P3は、バルーン32が縮んだ状態における圧力を示している。
【0064】
ライン(A)で示される二次配管系28の圧力変動の最大値は、例えば289mmHg(ゲージ圧)であり、最小値は、例えば−114mmHg(ゲージ圧)である。図4に示すように、電磁弁21と電磁弁22を交互に開き、二次配管系28に陰圧と陽圧を交互に印加することにより、バルーン32は、圧力変動に応じた膨張及び収縮を繰り返す。これにより駆動装置29及びこれによって駆動されるバルーンカテーテル30は、心臓の補助治療を行うことができる。
【0065】
本実施形態に係る駆動装置29では、圧力伝達隔壁装置50を介した二次配管系28への陽圧及び陰圧の印加にあわせて、補助装置80の電磁弁82が開閉する。図4のライン(E)は、電磁弁82の開閉状態を表したものである。例えば、補充制御手段20は、中央制御手段から電磁弁21,22の開閉タイミングを受信し、電磁弁82の開閉タイミングを制御する。補充制御手段20は、電磁弁21を開いて二次配管系28内に陽圧の印加を開始した時点(陰圧から陽圧に切り換えた時点)から、所定時間経過後に、電磁弁82を開き、次の切り換え(電磁弁22を開いて陽圧から陰圧に切り換える時点)の前に、電磁弁82を閉じる。
【0066】
図5は、二次配管系28に印加される圧力が、陰圧から陽圧に切り換わった後であって次の切り換えの前に、電磁弁82を開いた場合における駆動流体の流れを表したものである。図5に示すように、陽圧が印加され、二次配管系28の圧力が上昇した状態で電磁弁82が開かれると、二次配管系28内の駆動流体の一部が、二次配管系28と三次ヘリウムガスタンク81との圧力差に応じて、図中に矢印で示すように、三次ヘリウムガスタンク81に流入する。この場合、電磁弁82の開放は、二次配管系28内の圧力を低下させるように作用する。
【0067】
また、図4に示すように、補充制御手段20は、電磁弁22を開いて二次配管系28内に陰圧の印加を開始した時点(陽圧から陰圧に切り換えた時点)から、所定時間経過後に、電磁弁82を開き、次の切り換え(電磁弁21を開いて陰圧から陽圧に切り換える時点)の前に、電磁弁82を閉じる。
【0068】
図6は、二次配管系28に印加される圧力が、陽圧から陰圧に切り換わった後であって次の切り換えの前に、電磁弁82を開いた場合における駆動流体の流れを表したものである。図6に示すように、陰圧が印加され、二次配管系28の圧力が低下した状態で電磁弁82が開かれると、三次ヘリウムガスタンク81内の流体の一部が、二次配管系28と三次ヘリウムガスタンク81との圧力差に応じて、図中に矢印で示すように、二次配管系28に流入する。この場合、電磁弁82の開放は、二次配管系28内の圧力を上昇させるように作用する。
【0069】
図7及び図8は、電磁弁82の開閉動作の有無により、二次配管系28の圧力変動状態がどのように異なるかを表したグラフである。図7は、電磁弁82を常に閉じて駆動した場合における二次配管系28内の圧力変化を示すグラフである。これに対して、図8は、電磁弁82を図4のライン(E)に示すように動作させて駆動した場合における二次配管系28内の圧力変化を示すグラフである。図7および図8において、横軸は時間、縦軸は圧力または容積を示し、符号(A)で示す線は二次配管系28内の圧力変化を、符号(B)で示す線はバルーン32の容積変化を示している。
【0070】
図7に示すように、二次配管系28の圧力は、二次配管系28に対する圧力の印加が切り換わった時点(電磁弁21又は22を開いた時点)から、オーバーシュートやアンダーシュートを経て、プラトー圧P4や検出圧力P3に到達する。ここで、圧力センサ25によって検出されるプラトー圧P4や検出圧力P3は、中央制御手段や補充制御手段20による電磁弁の制御に用いられる。したがって、二次配管系28に対する圧力の印加が切り換わった時点からプラトー圧P4や検出圧力P3に到達するまでの時間が短い方が、高い周期での駆動や、正確な制御を実現する観点から好ましい。しかし、電磁弁82を常に閉じて駆動する場合は、プラトー圧P4や検出圧力P3に到達するまでの時間をコントロールすることは難しい。
【0071】
図7において、二次配管系28の圧力がオーバーシュートしている期間の最後の方は、バルーン32はほぼ膨らみきっていることが解る。そこで、このようなタイミングに合わせて電磁弁82を開くことにより、図8に示すように、オーバーシュートした状態からプラトー圧P4まで圧力が低下する作用を、アシストすることができる。
【0072】
また、図7において、二次配管系28の圧力がアンダーシュートしている期間の最後の方は、バルーン32はほぼ萎みきっていることが解る。そこで、このようなタイミングに合わせて電磁弁82を開くことにより、図8に示すように、アンダーシュートした状態から検出圧力P3まで圧力が上昇する作用を、アシストすることができる。このように、図4のライン(E)で示すように電磁弁82を開閉させることにより、陽圧・陰圧が切り換わった時点から、プラトー圧P4や検出圧力P3に到達するまでの時間を短縮することができる。
【0073】
(補充動作)
図1に示す補充制御手段20は、電磁弁82の開閉に加えて、電磁弁68の開閉を制御することによって、バルーン32を膨張及び収縮させる動作を続けながら、二次配管系28に対するヘリウムガスの補充を行うことができる。具体的には、まず補充制御手段20が、バルーン32などからの透過による駆動流体の低減を、バルーン32が萎んだ状態における検出圧力P3(図4参照)を用いて監視する。そして、検出圧力P3の低下が検出されると、補充制御手段20は、電磁弁68を所定時間開き、二次ヘリウムガスタンク64から三次ヘリウムガスタンク81に一定容量(一定モル数:化学当量比)のヘリウムガスを入れる。電磁弁68の開放は、三次ヘリウムガスタンク81と二次配管系28の間にある電磁弁82が閉じている状態で実施される。
【0074】
二次ヘリウムガスタンク64からのヘリウムガスの流入により、三次ヘリウムガスタンク81の圧力は一時的に上昇する。しかし、図4のライン(E)に示すように、三次ヘリウムガスタンク81と二次配管系28との間にある電磁弁82は、断続的に開かれる。特に、図6に示すように、二次配管系28の圧力が低下した状態で電磁弁82が開かれた際には、三次ヘリウムガスタンク81に補充されたヘリウムガスが、二次配管系28に流入する。したがって、二次ヘリウムガスタンク64からの三次ヘリウムガスタンク81へのヘリウムガスの補充は、電磁弁82の開閉動作を経て、二次配管系28へのヘリウムガスの補充に繋がる。
【0075】
なお、補充制御手段20が監視する圧力は、プラトー圧P4より検出圧力P3の方が好ましい。検出圧力P3を用いてヘリウムガスの補充の要否を判断することにより、駆動装置29は、外力により変形し得るバルーン32部分の検出圧力への影響を低減することが可能である。したがって、駆動装置29は、任意の駆動(二次)配管系28(チューブやホースを含む)とバルーン32の容量に応じて調整される駆動流体の化学当量を、駆動中において一定に保つことが可能となる。
【0076】
また、検出圧力P3を一定にするように制御すれば、図4に示すプラトー圧P4(バルーンが膨らんだ状態での圧力)をも観測することにより、バルーン32が曲折されるなどの不測の事態によりバルーン32の容積が変化したことを検出することができる。たとえば、プラトー圧力P4が、通常よりも高くなった場合には、バルーン32が曲折されているなどの判断ができる。また、プラトー圧力P4が、通常よりも小さくなった場合には、駆動流体が透過以外の不測の事態で漏れていると判断することができる。
【0077】
(半パージ)
図1に示す補充制御手段20は、電磁弁82の開閉に加えて、電磁弁68及び電磁弁83の開閉を制御することによって、バルーン32を膨張及び収縮させる動作を続けながら、二次配管系28の駆動流体を部分的にヘリウムガスに置換する半パージを行うことができる。図9は、中央制御手段およびこれと通信する補充制御手段20が、半パージにおいて実施する電磁弁の開閉動作を表すフローチャートである。
【0078】
バルーン32の一回の膨張及び収縮を駆動の1サイクルとした場合、半パージにおける電磁弁の制御は、電磁弁83及び電磁弁68の開閉動作(図9におけるステップS006及びステップS007)が挿入されることを除き、通常の駆動における1サイクルの制御と同様である。すなわち、図4においてライン(C)〜(E)で表される電磁弁21,22,82の動作は、上述の(基本動作)で説明した通常の動作と同様である。これに対して、ライン(F)で表される電磁弁83及びライン(G)で表される電磁弁68は、バルーン32を開閉させるのみの通常の動作では閉じられたままであるのに対して、半パージの際には、所定のタイミングで開放される。
【0079】
図9のステップS001では、中央制御手段及び補充制御手段20が半パージを開始する。半パージは、例えば後述するガス濃度検出動作によって、駆動流体におけるヘリウムガス濃度の低下が検出されたタイミングで開始される。この際、補充制御手段20は、駆動流体におけるヘリウムガス濃度に応じて、ステップS006及びステップS007の制御に相当する置換制御の実施回数Nを決定する。なお、図9の左側のフローチャートは、中央制御手段による電磁弁21及び電磁弁22の制御を表しており、図9の右側のフローチャートは、補充制御手段20による制御を表している。
【0080】
ステップS002では、補充制御手段20が、実施回数Nを管理するための変数nを「0」にセットする。さらに、ステップS003では、変数nをインクリメントする。ステップS004では、中央制御手段が、電磁弁21を開き、所定時間経過後に閉じる。図4のライン(A)とライン(C)の比較から解るように、電磁弁21の開閉により、圧力伝達隔壁装置50が陰圧の印加から陽圧の印加へ切り換わり、二次配管系28の圧力が上昇する。
【0081】
図9におけるステップS005では、補充制御手段20が、ステップS004が開始された旨の通信を中央制御手段より受けた後に電磁弁82を開き、所定時間経過後に電磁弁82を閉じる。図4のライン(A)とライン(E)の比較から解るように、このタイミングで、二次配管系28の圧力がプラトー圧P4と略等しくなる。また、図5に示すように、ステップS005において電磁弁82を開いた際に、二次配管系28から三次ヘリウムガスタンク81へ、駆動流体の一部が流入する。
【0082】
図9におけるステップS006では、補充制御手段20が、電磁弁83を開き、所定時間経過後に電磁弁83を閉じる。ステップS006では、電磁弁82を閉じている状態において、三次ヘリウムガスタンク81と負圧タンク84の間にある電磁弁83が開かれる(図4のライン(F)参照)。これにより、三次ヘリウムガスタンク81に流入した駆動流体の少なくとも一部が、三次ヘリウムガスタンクから負圧タンク84へ排出される。
【0083】
図9におけるステップS007では、補充制御手段20が、電磁弁68を開き、所定時間経過後に電磁弁68を閉じる。ステップS007では、電磁弁82を閉じている状態において、二次ヘリウムガスタンク64と三次ヘリウムガスタンク81の間にある電磁弁68が開かれる(図4のライン(G)参照)。これにより、二次ヘリウムガスタンク64から三次ヘリウムガスタンク81へヘリウムガスが補充される。すなわち、ステップS006及びステップS007で行われる処理は、三次ヘリウムガスタンク81内の流体を、駆動流体からヘリウムガスに置換するガス置換処理に相当する。
【0084】
なお、補充制御手段20は、ステップS006で排出される駆動流体の化学当量と、ステップS007で補充されるヘリウムガスの化学当量が略等しくなるように、三次ヘリウムガスタンク81へのヘリウムガスの補充量を調整することが好ましい。なお、ステップS006で排出される駆動流体の化学当量を認識する方法は、圧力センサ25の値から算出する方法や、三次ヘリウムガスタンク81に圧力センサを設けてその検出値から算出する方法等が挙げられるが、特に限定されない。
【0085】
図9におけるステップS008は、少なくともステップS009の前に開始され、例えばステップS006及びステップS007と並行して実施される。ステップS008では、中央制御手段が、電磁弁22を開き、所定時間経過後に閉じる。図4のライン(A)とライン(D)の比較から解るように、電磁弁22の開閉により、圧力伝達隔壁装置50が陽圧を印加する状態から陰圧を印加する状態へ切り換わり、二次配管系28の圧力が低下する。また、ライン(D)とライン(F)及びライン(G)との比較から、電磁弁22の開閉(ステップS008)と並行して、電磁弁83及び電磁弁68の開閉(ステップS006及びステップS007)が実施されることが解る。
【0086】
図9におけるステップS009では、補充制御手段20が、ステップS008が開始された旨の通信を中央制御手段より受けた後に電磁弁82を開き、所定時間経過後に電磁弁82を閉じる。図4のライン(A)とライン(E)の比較から解るように、このタイミングで、二次配管系28の圧力が検出圧力P3と略等しくなる。また、図6に示すように、ステップS009において電磁弁82を開いた際に、三次ヘリウムガスタンク81から二次配管系28へ、補充されたヘリウムガスの少なくとも一部が流入する。
【0087】
ステップS010では、変数nと実施回数Nを比較し、変数nが実施回数より小さい場合は、ステップS003へ戻り、再度ガス置換処理を実施する。また、変数nと実施回数Nが実施回数より小さくない場合には、ステップS011へ進み半パージを終了する。
【0088】
このように、駆動装置29は、半パージを行うことにより、バルーン32を膨張及び収縮させる動作を続けながら、バルーン32の膨張及び収縮動作を阻害することなく、駆動流体におけるヘリウムガスの濃度を上昇させることができる。なお、半パージにおけるガス置換処理(ステップS006及びステップS007)は、図9に示すように毎サイクル連続して実施してもよく、数サイクルおきに実施しても良い。
【0089】
(全パージ)
図10は、駆動装置29の全パージで行われる処理の一例を表すフローチャートである。図10に示すステップS101では、中央制御手段及び補充制御手段20が、全パージを開始する。全パージは、例えば後述するガス濃度検出動作によって、駆動流体中におけるヘリウムガス濃度の大幅な低下が検出されたタイミングで開始される。
【0090】
ステップS102では、中央制御手段が、電磁弁21、22の開閉動作を停止する。これにより、圧力伝達隔壁装置50によって二次配管系28に陽圧と陰圧を交互に印加する動作が止まり、バルーン32の膨張・収縮動作が停止する。この際、中央制御手段は、電磁弁82の開閉による補助動作及びヘリウムガスの補充動作についても、一次的に停止するように、補充制御手段20へ指示信号を送る。
【0091】
ステップS103では、補充制御手段20が電磁弁19を開き、排気ライン28bから二次配管系28を排気したのち、電磁弁19を閉じる。ステップS104では、補充制御手段20が電磁弁69を開き、新たなヘリウムガスを二次配管系28に充填した後、電磁弁69を閉じる。ステップS105では、全パージを終了する。
【0092】
なお、ステップS103及びステップS104で行われる排気及び充填処理の際には、電磁弁82を開いておいても良い。これにより、三次ヘリウムガスタンク81も、二次配管系28と同時に、補充装置60からの新たなヘリウムガスに置換される。
【0093】
(ヘリウムガス濃度検出)
駆動装置29は、図4に示すようなバルーン32の膨張及び収縮動作と並行して、二次配管系28に導入されている駆動流体におけるヘリウムガスの濃度を検出することができる。図11〜図13は、駆動流体におけるヘリウムガスの検出工程を表す概念図である。
【0094】
図11は、駆動装置29において行われるヘリウムガス濃度検出の第1の段階を表す概念図である。図11(a)は、ヘリウムガス濃度検出の第1の段階における測定チャンバー74周辺の概略図であり、図11(b)は、第1の段階における電磁弁21,22,68,73,75の開閉状態と、アクチュエータ77によるピストン76の移動状態を表している。
【0095】
図11に示す第1の段階では、駆動装置29は、測定チャンバー74内の流体(例えば直前にヘリウムガス濃度を測定した駆動流体)を排出する。図11(a)及び(b)に示すように、第1の段階では、中央制御手段が第3制御弁としての電磁弁75を開き、測定チャンバー74と第2圧力タンク13及び第2ポンプ14bとを連結する(図1参照)。第2ポンプ14bは陰圧発生用ポンプであり、第2圧力タンク13は負圧になるように制御されているため、これと接続された測定チャンバー74の圧力も減少する。
【0096】
図11(b)に示すように、第1の段階において、アクチュエータ77は、測定チャンバー74の容積を減少させるように、ピストン76を移動させる。測定制御手段79(図1参照)は、測定チャンバー74内が大気圧になるようにアクチュエータ77を制御しようとする。しかし、第1の段階では、測定チャンバー74は負圧に調整される第2圧力タンク13と連結されるため、測定チャンバー74内の流体は、時間の経過とともに排出される。そのため、アクチュエータ77によって制御されるピストン76は、図11(a)に示すように、測定チャンバー74の容積を最小にする位置まで移動し、そこで停止する。第1の段階により、測定チャンバー74内に存在していた流体はほぼ完全に排出することが可能であり、測定チャンバー74内に残存する流体が、第2の段階で導入される駆動流体に混入することを防止できる。
【0097】
また、第1の段階においては、第2制御弁としての電磁弁73は閉じられており、測定チャンバー74と二次配管系28は遮断されている。なお、中央制御手段は、ヘリウムガス濃度検出における第1の段階においても、電磁弁21と電磁弁22とを交互に開き、圧力伝達隔壁装置50を介してバルーン32に圧力変化を伝える。すなわち、中央制御手段は、ヘリウムガス濃度検出の第1の段階と並行して、バルーン32を膨張及び収縮させる通常の制御を続けている。
【0098】
図12は、駆動装置29において行われるヘリウムガス濃度検出の第2の段階を表す概念図である。図12(a)は、第2の段階における測定チャンバー74周辺の概略図であり、図12(b)は、第2の段階における電磁弁21,22,68,73,75の開閉状態と、アクチュエータ77によるピストン76の移動状態を表している。
【0099】
図12に示す第2の段階では、駆動装置29は、二次配管系28の駆動流体を測定チャンバー74の内部に導入する。図12(a)及び(b)に示すように、第2の段階では、中央制御手段は、電磁弁75を閉じた状態に保ちつつ、電磁弁73を断続的に開き、測定チャンバー74と二次配管系28とを連結する。ここで、中央制御手段は、二次配管系28を加圧するように電磁弁21を開いている時に、電磁弁73を開く。また、中央制御手段は、二次配管系28の圧力を検出する圧力センサ25の出力に基づき、電磁弁73を開くタイミングを調整しても良い。例えば、中央制御手段は、圧力センサ25によりプラトー圧P4(図4参照)が検出されるタイミングで、電磁弁73を開くことが好ましい。
【0100】
一回当たりの電磁弁73の開放時間は、例えば10〜100msとすることができる。第2の段階における電磁弁73の開放回数は、濃度測定のために測定チャンバー74内に導入すべき駆動流体の所定量によって決定される。測定チャンバー74に導入する駆動流体の所定量は、特に限定されないが、例えば測定子72がピラニーゲージの場合、3〜50mL程度とすることができる。
【0101】
図12(b)に示すように、第2の段階において、アクチュエータ77は、測定チャンバー74の容積を増加させるように、ピストン76を移動させる。測定制御手段79(図1参照)は、第1の段階と同様に、測定チャンバー74内が大気圧になるようにアクチュエータ77を制御しようとする。第2の段階では、中央制御手段は、二次配管系28が大気圧以上に加圧されているタイミング(例えば図4におけるプラトー圧P4のタイミング)で電磁弁73を開くため、電磁弁73が開かれている間、測定チャンバー74内に二次配管系28の駆動流体が流入する。そのため、アクチュエータ77によって制御されるピストン76は、図12(a)及び(b)に示すように、流入した駆動流体の量に応じて移動し、測定チャンバー74内の圧力増加を解消する。これにより、測定チャンバー74内の圧力は大気圧に保たれる。
【0102】
また、第2の段階においては、二次配管系28から測定チャンバー74へ駆動流体が流出するため、電磁弁73の開閉動作直後においては、二次配管系28及びバルーン32内に存在する駆動流体の量が不足する。しかし、図1に示す補充制御手段20は、圧力センサ25の出力値から駆動流体の減少を検知し、図12(b)に示すように、電磁弁68を開くことによって、三次ヘリウムガスタンク81を介して二次配管系28へヘリウムガスを補充する。このように、二次配管系28には、補充装置60及び補助装置80から適宜ヘリウムガスが補充されるため、第2の段階においても、二次配管系28に存在する駆動流体の量はほぼ一定に維持される。なお、中央制御手段は、第2の段階においても、第1の段階と同様に、電磁弁21と電磁弁22とを交互に開き、ヘリウムガス濃度検出と並行して、バルーン32を膨張及び収縮させる通常の制御を続けている。
【0103】
図13は、駆動装置29において行われるヘリウムガス濃度検出の第3の段階を表す概念図である。図13(a)は、第3の段階における測定チャンバー74周辺の概略図であり、図13(b)は、第3の段階における電磁弁21,22,68,73,75の開閉状態と、アクチュエータ77によるピストン76の移動状態を表している。
【0104】
図13に示す第3の段階では、駆動装置29は、測定チャンバー74を密閉した状態とし、測定チャンバー74に導入された駆動流体におけるヘリウムガスの濃度を、測定子72によって検出する。図13(a)及び(b)に示すように、第3の段階では、中央制御手段は、電磁弁73と電磁弁75の両方を閉じた状態に保ち、測定チャンバー74を密閉状態とする。
【0105】
図13(b)に示すように、第3の段階において、アクチュエータ77は、ピストン76を静止した状態に保つ。第3の段階では、測定チャンバー74内に対する流体の流入及び流出が無いため、ピストン76を静止させることにより、測定チャンバー74内が大気圧に保たれる。
【0106】
第3の段階において、中央制御手段は、測定子72であるピラニーゲージの検出値を読み出すことにより、駆動流体におけるヘリウムガスの濃度を認識することができる。なお、中央制御手段は、第3の段階においても、第1及び第2の段階と同様に、電磁弁21と電磁弁22とを交互に開き、ヘリウムガス濃度検出と並行して、バルーン32を膨張及び収縮させる通常の制御を続けている。
【0107】
駆動装置29は、第3の段階において検出されたヘリウムガス濃度が所定の値を上回る場合は、第1の段階の制御へ戻り、次回の測定の準備を行う。それに対して、第3の段階において検出されたヘリウムガス濃度が所定の値以下である場合には、駆動装置29は、二次配管系28及びバルーン32内の駆動流体を、補充装置60から新たに補充されるヘリウムガスに置換する。駆動装置29は、二次配管系28の駆動流体をヘリウムガスに置換し、駆動流体のヘリウムガス濃度を上昇させる方法として、全パージと半パージの2通りの方法を実施することが可能である。
【0108】
(ヘリウムガス濃度維持動作)
駆動装置29は、上述した半パージ、全パージ及びヘリウムガス濃度検出を組み合わせることによって、駆動流体のヘリウムガス濃度を所定の高いレベルに維持するヘリウムガス濃度維持動作を行うことができる。図14は、駆動装置29の中央制御手段及び補充制御手段20が、ヘリウムガス濃度維持動作として実施する処理を表したフローチャートである。
【0109】
図14のステップS201では、中央制御手段が、図1に示す電磁弁21,22の開閉によってバルーン32を膨張・収縮させる通常駆動を開始する。バルーン32の駆動については、上述の(基本動作)で説明したとおりである。
【0110】
図14のステップS202では、中央制御手段及び測定制御手段(図1参照)が、駆動流体中のヘリウムガス濃度の測定を実施する。ヘリウムガス濃度の測定方法については、上述の(ヘリウムガス濃度検出)で説明したとおりである。ステップS202におけるヘリウムガス濃度の測定処理は、例えば、駆動が開始(ステップS201)されてから所定時間が経過した後、または、前回のヘリウムガス濃度測定(前回のステップS202)から所定時間が経過した後に、行うことができる。
【0111】
図14のステップS203では、補充制御手段20が、ステップS202で検出されたヘリウムガス濃度の検出値Sが50%より大きいか否かを判断する。検出値Sが50%より大きくない(50%以下である)場合は、ステップS204へ進み全パージを実施する。このように、検出値が50%以下である場合、駆動流体のヘリウムガス濃度が、半パージで回復させる範囲(50%より大きく70%以下)を下回っており、全パージが必要であると判断する。全パージの実施方向については、上述の(全パージ)で説明したとおりである。全パージを実施した後は、ステップS202へ戻り、ヘリウムガス濃度の測定を実施する。
【0112】
ステップS203で検出値Sが50%より大きいと認められた場合、ステップS205へ進む。ステップS205では、補充制御手段20が、ステップS202で検出されたヘリウムガス濃度の検出値Sが70%より大きいか否かを判断する。検出値Sが70%より大きくない(70%以下である)場合は、ステップS206へ進み半パージを実施する。このように、検出値が50%より大きく70%以下である場合、バルーン32を膨張及び収縮させる動作を続けながら、半パージを行うことが有効であると判断する。半パージの実施方向については、上述の(半パージ)で説明したとおりである。なお、ステップS206で実施される半パージにおける実施回数N(図9参照)は、ステップS202で検出されたヘリウムガス濃度の検出値Sに応じて決定される。全パージを実施した後は、ステップS202へ戻り、ヘリウムガス濃度の測定を実施する。
【0113】
ステップS205で検出値Sが70%より大きいと認められた場合、ステップS207へ進む。ステップS207では、中央制御手段や補充制御手段20が、バルーン32を膨張・収縮させる通常駆動の停止が指示されているか否かを判断する。駆動の停止が指示されていない場合は、ステップS202へ戻り、ヘリウムガス濃度の測定を実施する。また、駆動の停止が指示されている場合は、ステップS208へ進み、バルーン32の駆動を終了する。
【0114】
このように、本実施形態に係る駆動装置29は、二次配管系28に存在しておりバルーン32を膨張・収縮させる駆動流体におけるヘリウムガスの濃度を検出することができる。ヘリウムガスの濃度低下は、駆動装置29の応答性の低下要因となるため、駆動装置29は、駆動流体のヘリウムガス濃度を検出することにより、駆動装置29の応答性の低下要因を早期に発見することができる。なお、ピンホールの発生等の異常発生時にも、駆動流体におけるヘリウムガスの濃度低下が起こるため、駆動装置29は、ヘリウムガスの濃度を測定することにより、バルーン32に発生した異常を検知することもできる。
【0115】
また、駆動装置29は、第1制御弁としての電磁弁82を介して二次配管系28に接続される三次ヘリウムガスタンク81を有する。中央制御手段及び補充制御手段20は、電磁弁82の開閉を、圧力伝達隔壁装置50による陽圧及び陰圧の印加にあわせて制御し、二次配管系28と三次ヘリウムガスタンク81の間で、流体の移動を発生させる。また、三次ヘリウムガスタンク81は、電磁弁68を介して二次ヘリウムガスタンク64からヘリウムガスの補充を受けることが可能であり、また、電磁弁83を開くことにより、内部の流体を排出させることも可能である。
【0116】
さらに、補充制御手段20は、駆動流体のヘリウムガス濃度が低下した場合に、三次ヘリウムガスタンク81を排気したのちヘリウムガスを補充するタンク置換制御を、電磁弁82が閉じているタイミングで行うことができる。三次ヘリウムガスタンク81と二次配管系28の間では流体の移動が起こるため、このようなタンク置換制御は、二次配管系28における駆動流体のヘリウムガス濃度を上昇させる。したがって、このような三次ヘリウムガスタンク81を有する駆動装置29は、駆動流体のヘリウムガス濃度を上昇させる処理(半パージ)を、バルーン32の駆動を継続しながら実施することが可能である。
【0117】
補充制御手段20が図9に示すような半パージを行う場合、タンク置換制御の実施回数(図9の実施回数N)は、検出された駆動流体のヘリウムガス濃度に応じて決定することができる。これにより、駆動装置29は、所定の時間でガスの置換を行うような技術に比べて、ヘリウムガスの消費量を抑制しつつ、駆動流体のヘリウムガス濃度を高いレベルに維持することができる。また、図14に示すように、半パージと全パージを、検出された駆動流体のヘリウムガス濃度に応じて選択することにより、駆動装置29は、ヘリウムガス濃度低下に伴うバルーンの応答性低下などの問題を、より効果的に抑制することができる。
【0118】
また、駆動装置29は、ヘリウムガス濃度の検出動作において、圧力調整手段によって圧力調整が可能な測定チャンバー74内の内部に駆動流体を導入し、圧力が一定に保たれた測定チャンバー74の内部で濃度の検出を行うことができる。このため、駆動装置29は、バルーン32を膨張・収縮させる通常の駆動を停止することなく、高精度に、駆動流体のヘリウムガス濃度を検出することができる。
【0119】
さらに、駆動装置29は、圧力調整手段がピストン76を有し、ピストン76が、測定チャンバー74から流体を排出する際に測定チャンバー74の容積を減少させるように移動するため、測定前に測定チャンバー74内の流体を効率的に排出できる。そのため、駆動装置29は、測定チャンバー74内に、測定対象である駆動流体以外の流体が混入することを防止し、高い精度でガスの濃度を検出することが可能である。また、測定チャンバー74が電磁弁75を介して第2圧力タンク13に接続されていることにより、測定チャンバー74は、シンプルな構造で効果的な排気が可能である。
【0120】
その他の実施形態
上述の駆動装置29では、測定子72は、測定チャンバー74に取り付けられるが、測定子72の配置はこれに限定されない。例えば、駆動流体におけるガス(補充装置60から供給されるガス)の濃度を測定する測定子は、図1に示す圧力伝達隔壁装置50の第2室58に取り付けられても良い。
【0121】
また、補充装置60から補充され、測定子72によって駆動流体における濃度を測定されるガスとしては、ヘリウムガスに限定されず、窒素ガス、二酸化炭素ガス、水素ガス等、その他のガスであっても良い。圧力調整装置は、本実施形態のように、圧力センサ78及びアクチュエータ77を有していても良いが、これに限定されない。例えば、圧力調整装置は、圧力センサ78等を用いず、測定チャンバー74内の圧力と大気圧などの外力とのバランスにより、ピストン76を移動させるものであっても良い。
【0122】
また、上述の実施形態では、三次ヘリウムガスタンク81と二次配管系28の間にある電磁弁82は、二次配管系28への圧力印加の切り換えに応じて常に開閉動作が行われるものとして説明したが(図4参照)、電磁弁82の制御はこれに限定されない。たとえば、電磁弁82は、上述の(補充動作)の間や、図9に示す半パージ動作の間だけ、図4のライン(E)で示すような開閉動作が実施され、その他の期間は閉状態であっても良い。
【符号の説明】
【0123】
12…第1圧力タンク
13…第2圧力タンク
14a…第1ポンプ
14b…第2ポンプ
18…逆止弁
20…補充制御手段
27…一次配管系
28…二次配管系
28a…主ライン
28b…排気ライン
28c…補充ライン
28d…測定ライン
29…駆動装置
32…バルーン
30…バルーンカテーテル
34…カテーテル管
35…短チューブ
36…分岐部
37…金属チューブ
40…内管
43…開口端
49…血圧変動測定装置
50…圧力伝達隔壁装置
55…隔壁
56…第1室
58…第2室
60…補充装置
61…一次ヘリウムガスタンク
64…二次ヘリウムガスタンク
72…測定子
74…測定チャンバー
76…ピストン
77…アクチュエータ
79…測定制御手段
80…補助装置
81…三次ヘリウムガスタンク
84…負圧タンク
15,16,25,65,78…圧力センサ
19,21,22,63,68,69,73,75,82,83…電磁弁
17,62…減圧弁
38,42,52,54…ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動流体の流動によって被駆動機器が膨張および収縮を繰り返すように、当該被駆動機器に連通する配管系に、陽圧と陰圧とを交互に印加する圧力発生手段と、
第1制御弁を介して前記配管系に接続されるガスタンクと、
前記ガスタンクにガスを補充するガス補充手段と、
前記ガスタンクの排気を行う排気手段と、
前記配管系の前記駆動流体における前記ガスの濃度を検出するガス濃度検出手段と、
前記圧力発生手段、前記第1制御弁、前記ガス濃度検出手段及び前記排気手段を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記圧力発生手段が前記陰圧の印加から前記陽圧の印加へ切り換わった後に前記第1制御弁を開き、次の切り換えの前に前記第1制御弁を閉じ、前記配管系から前記ガスタンクへ、前記駆動流体の少なくとも一部が流入するように前記第1制御弁を制御し、
前記制御手段は、前記第1制御弁を閉じている状態において、前記ガスタンクに流入した前記駆動流体の少なくとも一部を前記ガスタンクから排出するように前記排気手段を制御した後に、前記ガスタンクに前記ガスを補充するように前記ガス補充手段を制御するタンク置換制御を行うことができ、
前記制御手段は、前記圧力発生手段が前記陽圧の印加から前記陰圧の印加へ切り換わった後に前記第1制御弁を開き、次の切り換えの前に前記第1制御弁を閉じ、前記ガスタンクから前記配管系へ、前記ガスタンクの流体の少なくとも一部が流入するように前記第1制御弁を制御し、
前記制御手段は、前記ガス濃度検出手段による検出結果に応じて、前記タンク置換制御を実施することを特徴とする医療用膨張・収縮駆動装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記駆動流体における前記ガスの前記濃度が第1の範囲である場合、前記タンク置換制御を所定の回数実施することを特徴とする請求項1に記載の医療用膨張・収縮駆動装置。
【請求項3】
前記制御手段からの制御を受けて前記配管系から前記駆動流体を排出する配管排出手段と、
前記制御手段からの制御を受けて前記配管系へ前記ガスを補充する配管補充手段と、を有し、
前記制御手段は、前記駆動流体における前記ガスの前記濃度が前記第1の範囲より低い場合、前記配管系から前記駆動流体を排出するように前記配管排出手段を制御した後、前記配管系に前記ガスを補充するように前記配管補充手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の医療用膨張・収縮駆動装置。
【請求項4】
内部の圧力を調整する圧力調整手段を備えており、前記配管系に第2制御弁を介して接続されるチャンバーを有し、
前記ガス濃度検出手段は、前記チャンバーに流入した前記駆動流体における前記ガスの前記濃度を検出することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の医療用膨張・収縮駆動装置。
【請求項5】
前記圧力調整手段は、前記チャンバーの容積を変えるように移動する可動壁を有し、
前記圧力発生手段は、前記陽圧を発生する陽圧発生部と、前記陰圧を発生する陰圧発生部とを有し、
前記チャンバーは、第3制御弁を介して前記陰圧発生部と接続されており、
前記可動壁は、前記チャンバーが前記陰圧発生部と連通した際に、前記チャンバーの前記容積が減少するように移動することを特徴とする請求項4に記載の医療用膨張・収縮駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−42912(P2013−42912A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182454(P2011−182454)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】