説明

医療用製品のための多層化ポリマー構造体

【課題】医療用製品を製作するための多層構造体(10)を提供すること。
【解決手段】層構造体(10)は、約25〜45モル%のエチレン含有量を有するエチレンビニルアルコールコポリマーのコア層(14)、コア層の第1面に配置されたポリオレフィンの溶液接触層、溶液接触層(16)の反対側のコア層の第2面に配置された外層(12)(外層(12)はポリアミド、ポリエステルおよびポリオレフィンからなる群から選択される);2個の結合層(18)(各々の内1個が、コア層(14)の第1および第2面に接着され、溶液接触層(16)とコア層(14)との間、および外層(12)とコア層(14)との間に配置される)を有し、ここで構造体(10)はキャスト共押し出し成形加工で生産される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、一般に医療等級の製品を製造するための多層化ポリマー性構造体、さらに特に医療用溶液容器および医療用チューブを製造するための5層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
背景従来技術
有益な薬剤が収集され、処理され、そして容器に保存され、輸送され、そして最終的にはチューブを介した患者への注入によって送達され、治療的効果を達成する医療の分野において、容器を製造するのに使用される物質は、特性の単一の組合せを持たなくてはならない。例えば、溶液を粒子状の混入物について視覚的に検査するために、容器は光学的に透明でなくてはならない。容器壁を押しつぶすことによって、容器への空気導入なしに、容器から溶液を浸出するために、壁を形成する物質は、排出時に押しつぶすのに十分に柔軟でなければならない。この物質は、広範囲な温度にわたって、機能的でなくてはならない。この物質はその物理的特性を低下することなしに、放射性滅菌に耐え得なければならない。この物質は、その柔軟さおよびいくつかの医療用溶液としての強度を維持することによって、低温においても機能しなければならず、血液生成物は、−25〜−30℃のような温度で、容器中で保存され、輸送される。
【0003】
さらなる必要性は、その意図された使用後の物質から作り出される物品の廃棄に対する環境的な影響を最小化することである。埋め立て地に廃棄されるこれらの物品にとって、できる限り少量の物質を使用し、低分子量浸出性成分の組込を避け、物品を構築することが望ましい。さらなる利点は、消費後の物品を他の有用な物品に熱可塑性再加工により再利用し得る物質を使用することによって認識される。
【0004】
焼却を介して廃棄されるこれらの容器について、環境的に有害で、刺激性で、浸食性である無機酸、または有害で、刺激性で、もしくはそうでなければ焼却に反対すべき他の生成物の形成全体を、最小化もしくは排除する物質を使用することが必要である。
【0005】
有用な物品に製造する簡便さのため、一般に約27.12MHzの高周波(「RF」)封着技術を用いて、封着可能な物質であることが望ましい。それゆえ、この物質は、RFエネルギーを熱エネルギーに変換するのに十分な誘電損失特性を有すべきである。
【0006】
この物質が、医薬品または生物学的体液もしくは組織へ放出され、この様な装置で保存もしくは加工されるこの様な物質を汚染し得る可塑剤、滑剤、安定剤などの低分子量添加剤を、有さないかもしくは低含量を有することもまた望ましい。
【0007】
多くの医療製品用途において、酸素、二酸化炭素、および水の通路の遮断を提供する多層化構造体の提供が望ましい。所望の濃度の薬物または溶質を有する包装された医療用溶液にとって、水の遮断は、水が容器から漏出することを妨害することによって、この濃度を維持するのを補助する。一般に用いられる重炭酸ナトリウム緩衝液のような、pH変化を妨害する緩衝剤を有する溶液において、二酸化炭素の遮断は、二酸化炭素が容器から漏出することを妨害することによって、緩衝液を維持することを補助する。反応活性種を含有する医療溶液にとって、酸素の遮断は、タンパク質もしくはアミノ酸を酸化し、溶液を意図する目的に対して無効にし得る酸素の侵入を妨害することを補助する。
【0008】
エチレンビニルアルコール(EVOH)は、多層フィルムにおいて、酸素遮断としての使用が公知である。1つの市販のEVOH層構造体は、Barrier Film Corporationによって、食品包装へ熱形成するための製品設計BF−405で販売されている。BF−405フィルムはナイロンの外層、EVOHのコア層、およびメタロセン触媒超低密度ポリエチレンの内層を有すると考えられる。これらの層は、吹き付けフィルム加工によって、層構造体もしくはフィルムに形成される。このフィルムは、フィルム2.6ミルの厚さに対して、0.05cc/100sq.in./24時間の酸素透過速度を有する。
【0009】
BF−405フィルムは、フィルムの加工の間に滑剤が使用されなければならないので、医療用適用に容認し得ない。この滑剤は、水に可溶で、接触する医療用溶液へ浸出し得る低分子量成分を含有する。従って、このフィルムが医療用容器に構築され、医療用溶液で満たされた場合、含有医療用溶液における受容可能でない高い溶出可能量を生じ得る。
【0010】
EVOHバリアフィルムを開示する数多くの米国特許が存在する。例えば、特許文献1(米国特許第4,254,169号)は、EVOHおよびポリオレフィンの層を有するバリアフィルムを提供する。’169特許は未修飾のポリオレフィンと混合した無水縮合環カルボン酸でグラフトした高密度ポリエチレンを含有するポリオレフィンにEVOHを結合するための接着剤を開示する。(第2欄、第65行〜第3欄、第21行)。多くの実施例において、’169特許は、フィルムの外表面をより平滑にするための滑剤の添加を開示する。(表IおよびIIならびに第5欄、第35行〜第37行を参照のこと)。
【0011】
特許文献2(米国特許第4,397,916号)は、多層化EVOH構造体を開示し、この層中で、EVOHはカルボン酸またはそれらの官能性誘導体でグラフトされたグラフト修飾エチレン樹脂の層によって、ポリオレフィンのような他の層に接着されている。’916特許はまた、ナイロンのような窒素含有ポリマーをポリオレフィンに、グラフト修飾エチレン樹脂で接着することを提供する。’916特許は、低分子量添加剤を限定して、浸出可能量を減少させることを議論していない。実際、’916は、浸出可能量およびポリマー混合物の光学的透明度に有害な影響を与え得る滑剤、潤滑剤、顔料、染料、および賦形剤の使用を奨励している(第6欄、第38行〜第42行)。
【0012】
特許文献3(米国特許第5,164,258号)は、EVOHをポリオレフィンの2層の間に挟まれたバリア層として含有する多層化構造体を開示している。ポリオレフィン層は、水蒸気殺菌過程の間にバリア層で吸収される、水分の回避を容易にすることを意図される。ポリオレフィン層は、例えば無水マレイン酸グラフト修飾ポリエチレン接着剤で、EVOH層に結合される。’258特許は、有機および無機賦形剤を層に添加することによる、ポリオレフィン層の1つのWVTRを増加することを開示する(第4欄、第22行〜第59行)。これらの賦形剤は、多層化構造体に光学的不透明性を与え得る。
【0013】
本発明を、これらのおよび他の問題を解決するために提供する。
【特許文献1】米国特許第4,254,169号明細書
【特許文献2】米国特許第4,397,916号明細書
【特許文献3】米国特許第5,164,258号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要旨
本発明は、医療用製品を形成するのに好適な、多層化、可撓性、バリア構造体を提供する。多層構造体は、以下を包含する:
(I)エチレンビニルアルコール(EVOH)のような、25〜45モル%のエチレン含有量を有する、ビニルアルコールコポリマーのコア層;
(II)コア層の第1面に配置されるポリオレフィンの溶液接触層;
(III)溶液接触層の反対のコア層の第2面に配置される外層、外層はポリアミド、ポリエステルおよびポリオレフィンからなる群から選択される;
(IV)コア層の各第1面および第2面に接着され、溶液接触層とコア層との間および外層とコア層との間に配置される結合層;そして
ここで、この構造体は1.0ppt未満の組成の低分子量水溶性画分を有する。
【0015】
多層化構造体は、以下の物理的特性を有することもまた好ましい:50,000psi未満の、より好ましくは40,000psi未満の、そして最も好ましくは35,000〜40,000の、またはこれらの範囲の任意の範囲もしくは組合せのASTM D 638によって測定されるような機械係数。容器に組み立てられ、医療用溶液を保存するために使用された場合、層化構造体から溶液へ浸出する全有機炭素は、1.0ppt未満、より好ましくは100ppm未満、そして最も好ましくは10ppm未満である。好ましくは、層化構造体は、0.2cc/100 sq.in/24時間未満の酸素透過性を有する。
【0016】
好ましくは、層化構造体は、滑剤および他の低分子量添加剤の必要性を取り除くキャスト共押し出し加工を用いて形成される。
【0017】
従って、本発明は、以下を提供する:
1.医療用製品を製作するための多層構造体であって:
約25〜45モル%のエチレン含有量を有する、エチレンビニルアルコールコポリマーのコア層;
該コア層の第1面に配置されるポリオレフィンの溶液接触層;
該溶液接触層の反対側の該コア層の第2面に配置される外層であって、ポリアミド、ポリエステルおよびポリオレフィンからなる群から選択される外層;
2個の結合層であって、それぞれの内1個が、該コア層の該第1および第2面に接着され、該溶液接触層と該コア層との間および該外層と該コア層との間に配置される、結合層;を含み、そして
ここで、該構造体がキャスト共押し出し成形加工で生産される、多層構造体。
【0018】
2.前記ポリアミドが、2〜13個の範囲の炭素数を有するジアミンの縮合反応から生ずる脂肪族ポリアミド、2〜13個の範囲の炭素数を有する二酸の縮合反応から生ずる脂肪族ポリアミド、ダイマー脂肪酸の縮合反応から生ずるポリアミド、およびアミド含有コポリマーから選択される、項目1に記載の構造体。
【0019】
3.前記ポリアミドが、4〜12個の炭素を有するラクタムの開環反応で生成されるポリアミドの群から選択される、項目1に記載の構造体。
【0020】
4.前記ポリアミドがナイロン12である、項目3に記載の構造体。
【0021】
5.前記溶液接触層の前記ポリオレフィンが、2〜約20個の炭素原子を有するアルファオレフィンのホモポリマーおよびコポリマーからなる群から選択される、項目1に記載の構造体。
【0022】
6.前記溶液接触層の前記ポリオレフィンが、2〜約10個の炭素を有するアルファオレフィンのホモポリマーまたはコポリマーである、項目5に記載の構造体。
【0023】
7.前記ポリオレフィンが、エチレンコポリマー、およびブテン−1コポリマーからなる群から選択される、項目6に記載の構造体。
【0024】
8.前記溶液接触層の前記エチレンコポリマーがエチレン−ブテン−1コポリマーである、項目7に記載の構造体。
【0025】
9.前記溶液接触層の前記エチレンコポリマーがメタロセン触媒を用いて生成される、項目8に記載の構造体。
【0026】
10.前記結合層が、無水カルボン酸またはカルボン酸でグラフトされたポリエチレンコポリマーと混合された、ポリオレフィンポリマーまたはコポリマーである、項目1に記載の構造体。
【0027】
11.前記無水カルボン酸が不飽和縮合環無水カルボン酸である、項目10に記載の構造体。
【0028】
12.前記無水カルボン酸が無水マレイン酸である、項目11に記載の構造体。
【0029】
13.前記構造体の低分子量水溶性画分が、450cmの表面積を有しおよび250mlの生理食塩水を含有する容器についての測定において、1.0ppt未満である、項目1に記載の構造体。
【0030】
14.前記構造体の低分子量水溶性画分が、450cmの表面積を有しおよび250mlの生理食塩水を含有する容器についての測定において、100ppm未満である、項目1に記載の構造体。
【0031】
15.前記構造体の低分子量水溶性画分が、450cmの表面積を有しおよび250mlの生理食塩水を含有する容器についての測定において、10ppm未満である、項目1に記載の構造体。
【0032】
16.前記コア層に関して非対称構造体を定義付けるように、前記溶液接触層が約3〜8ミルの厚さであり、該コア層が約0.2〜2.5ミルの厚さであり、前記外層が約0.2〜2.0ミルの厚さであり、そして前記結合層が0.2〜1.2ミルの厚さである、項目1に記載の構造体。
【0033】
17.前記キャスト共押し出し成形加工が実質的に滑剤なしで行われる、項目13に記載の構造体。
【0034】
18.医療用製品を製作するための多層構造体であって:
約25〜45モル%のエチレン含有量を有し、約0.2〜2.5ミルの厚さを有する、エチレンビニルアルコールコポリマーのコア層;
該コア層の第1面に配置されるエチレンおよびα−オレフィンコポリマーの溶液接触層であって、該溶液接触層は約3〜8ミルの厚さを有する;
該溶液接触層の反対側の該コア層の第2面に配置される外層であって、該外層は0.2〜2.0ミルの厚さを有するポリアミドである;
2個の結合層であって、それぞれの内1つが、該コア層の該第1および第2面に接着され、該溶液接触層と該コア層との間および該外層と該コア層との間に配置される、結合層;を含み、そして
ここで、該構造体がキャスト共押し出し成形加工で生産される、多層構造体。
【0035】
19.前記ポリアミドが、2〜13個の範囲の炭素数を有するジアミンの縮合反応から生ずる脂肪族ポリアミド、2〜13個の範囲の炭素数を有する二酸の縮合反応から生ずる脂肪族ポリアミド、ダイマー脂肪酸の縮合反応から生ずるポリアミド、およびコポリマーを含有するアミドから選択される、項目18に記載の構造体。
【0036】
20.前記ポリアミドが、4〜12個の炭素を有するラクタムの開環反応で生成されるポリアミドの群から選択される、項目18に記載の構造体。
【0037】
21.前記ポリアミドがナイロン12である、項目20に記載の構造体。
【0038】
22.前記溶液接触層の前記アルファオレフィンが、2〜約20個の炭素原子を有する、項目18に記載の構造体。
【0039】
23.前記溶液接触層の前記アルファオレフィンが、2〜約10個の炭素を有する、項目18に記載の構造体。
【0040】
24.前記アルファオレフィンがブテン−1である、項目23に記載の構造体。
【0041】
25.前記溶液接触層の前記エチレンおよびアルファオレフィンコポリマーがメタロセン触媒を用いて生成される、項目18に記載の構造体。
【0042】
26.前記結合層が、無水カルボン酸またはカルボン酸でグラフトされたポリエチレンコポリマーと混合された、ポリオレフィンポリマーまたはコポリマーである、項目18に記載の構造体。
【0043】
27.前記無水カルボン酸が不飽和縮合環無水カルボン酸である、項目26に記載の構造体。
【0044】
28.前記無水カルボン酸が無水マレイン酸である、項目27に記載の構造体。
【0045】
29.前記構造体の低分子量水溶性画分が、450cmの表面積を有しおよび250mlの生理食塩水を含有する容器についての測定において、1.0ppt未満である、項目18に記載の構造体。
【0046】
30.前記構造体の低分子量水溶性画分が、450cmの表面積を有しおよび250mlの生理食塩水を含有する容器についての測定において、100ppm未満である、項目18に記載の構造体。
【0047】
31.前記構造体の低分子量水溶性画分が、450cmの表面積を有しおよび250mlの生理食塩水を含有する容器についての測定において、10ppm未満である、項目18に記載の構造体。
【0048】
32.多層化構造体を製作する方法であって:
約25〜45モル%のエチレン含有量を有するエチレンビニルアルコールコポリマーのコア層を提供する工程;
該コア層の第1面に配置されるポリオレフィンの溶液接触層を提供する工程;
該溶液接触層の反対側の該コア層の第2面に配置される外層を提供する工程であって、該外層がポリアミド、ポリエステルおよびポリオレフィンからなる群から選択される工程;
該外層、該コア層および該溶液接触層をキャスト共押し出し成形し、多層化構造体を定義する工程;を包含し、そして
ここで、該キャスト共押し出し成形工程が実質的に滑剤なしで行われる、方法。
【0049】
33.前記多層化構造体をキャスト共押し出し成形する工程がさらに、第1結合層および第2結合層を提供する工程、該第1結合層を該外層と該コア層との間に配置する工程、および該第2結合層を該内層と該コア層との間に配置する工程を包含する、項目32に記載の方法。
【0050】
34.前記ポリアミドが、2〜13個の範囲の炭素数を有するジアミンの縮合反応から生ずる脂肪族ポリアミド、2〜13個の範囲の炭素数を有する二酸の縮合反応から生ずる脂肪族ポリアミド、ダイマー脂肪酸の縮合反応から生ずるポリアミド、およびアミド含有コポリマーから選択される、項目32に記載の方法。
【0051】
35.前記ポリアミドが、4〜12個の炭素を有するラクタムの開環反応で生成されるポリアミドの群から選択される、項目32に記載の方法。
【0052】
36.前記ポリアミドがナイロン12である、項目35に記載の方法。
【0053】
37.前記溶液接触層の前記ポリオレフィンが、2〜約20個の炭素原子を含有するアルファオレフィンのホモポリマーおよびコポリマーからなる群から選択される、項目32に記載の方法。
【0054】
38.前記溶液接触層の前記ポリオレフィンが、2〜約10個の炭素を有するアルファオレフィンのホモポリマーまたはコポリマーである、項目37に記載の方法。
【0055】
39.前記ポリオレフィンが、エチレンコポリマー、およびブテン−1コポリマーからなる群から選択される、項目38に記載の方法。
【0056】
40.前記溶液接触層の前記エチレンコポリマーがエチレン−ブテン−1コポリマーである、項目39に記載の方法。
【0057】
41.前記溶液接触層の前記エチレンコポリマーがメタロセン触媒を用いて生成される、項目40に記載の方法。
【0058】
42.前記結合層が、無水カルボン酸またはカルボン酸でグラフトされたポリエチレンコポリマーと混合された、ポリオレフィンポリマーまたはコポリマーである、項目33に記載の方法。
【0059】
43.前記無水カルボン酸が不飽和縮合環無水カルボン酸である、項目42に記載の方法。
【0060】
44.前記無水カルボン酸が無水マレイン酸である、項目43に記載の方法。
【0061】
45.前記構造体の低分子量水溶性画分が、450cmの表面積を有しおよび250mlの生理食塩水を含有する容器についての測定において、100ppm未満である、項目32に記載の方法。
【0062】
46.前記構造体の低分子量水溶性画分が、450cmの表面積を有しおよび250mlの生理食塩水を含有する容器についての測定において、10ppm未満である、項目32に記載の方法。
【0063】
47.前記コア層に関して非対称構造体を定義付けるように、前記溶液接触層が約3〜8ミルの厚さであり、該コア層が約0.2〜2.5ミルの厚さであり、前記外層が約0.2〜2.0ミルの厚さであり、そして前記結合層が0.2〜1.2ミルの厚さである、項目32に記載の方法。
【0064】
48.医療用製品を製作するための多層構造体であって:
各々が約25〜45モル%のエチレン含有量を有するエチレンビニルアルコールコポリマーの、多数のコア副層を有するコア層;
隣接するコア副層の各セットの間に挿入された多数の結合副層;
該コア層の第1面に配置されるポリオレフィンの溶液接触層;
該溶液接触層の反対側の該コア層の第2面に配置される外層であって、該外層はポリアミド、ポリエステルおよびポリオレフィンからなる群から選択される;を含み、そして
ここで、該構造体がキャスト共押し出し成形加工で生産される、多層構造体。
【0065】
49.約2〜10個のコア副層が存在する、項目48に記載の多層化構造体。
【0066】
50.医療用製品を製作するための多層構造体であって:
約25〜45モル%のエチレン含有量を有する、エチレンビニルアルコールコポリマーのコア層;
各々がポリオレフィンの3個の副層を有する溶液接触層であって、該溶液接触層は該コア層の第1面に配置される;
該溶液接触層の反対側の該コア層の第2面に配置される外層であって、該外層はポリアミド、ポリエステルおよびポリオレフィンからなる群から選択される;を含み、そして
ここで、該構造体がキャスト共押し出し成形加工で生産される、多層構造体。
【0067】
51.前記溶液接触層が中心に配置された副層および2個の隣接副層を有し、該中心に配置された副層が該溶液接触層の隣接副層の水蒸気透過率よりも低い水蒸気透過率を有する、項目50に記載の多層化構造体。
【0068】
52.前記隣接溶液接触副層が超低密度ポリエチレンから成り、前記中心に配置された溶液接触副層が低密度ポリエチレンから成る、項目50に記載の多層化構造体。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
詳細な説明
本発明は、多くの異なった形状の実施態様に影響を受けやすく、本明細書中で詳細に記述されるが、本発明の好ましい実施様態は、本発明の開示が本発明の原理の例示として見なされるべきであるとの理解とともに開示され、本発明の広範な局面を、例証した実施態様に限定することを意図されない。
【0070】
本発明により、上記の必要性を達成する多層化フィルム構造体を提供する。
【0071】
図1は、以下を有する5層化フィルム構造体10を示す:外層12、コア層14、内層または溶液接触層16および2つの結合層18。各結合層18の1つは、コア層14と外層12との間、および内層16とコア層14との間に配置される。
【0072】
コア層14は、約25〜45モル%のエチレン含有量を有するエチレンビニルアルコールコポリマーである(EVALCA製品の文献に詳述されたようにエチレンを組み込んだ)。Kuraray Company, Ltd.は、商品名EVAL(登録商標)で、EVOHコポリマーを生産し、これは、約25〜45モル%のエチレンを有し、約150〜195℃の融点を有する。最も好ましくは、EVOHは32モル%のエチレン含有量を有する。
【0073】
外層は好ましくは、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、またはコア層からの水の排出を補助する他の物質である。受容可能なポリアミドには、4〜12個の炭素を有するラクタムの開環反応によって生じるポリアミドが挙げられる。それ故、このポリアミド群には、ナイロン6、ナイロン10、およびナイロン12が挙げられる。最も好ましくは、外層はナイロン12である。
【0074】
受容可能なポリアミドにはまた以下のものが挙げられる:2〜13個の範囲の炭素数を有するジアミンの縮合反応から生じる脂肪族ポリアミド、2〜13個の範囲の炭素数を有する二酸の縮合反応から生じる脂肪族ポリアミド、ダイマー脂肪酸の縮合反応から生じるポリアミド、およびアミド含有コポリマー。従って、好適な脂肪族ポリアミドには、例えば、ナイロン66、ナイロン6,10およびダイマー脂肪酸ポリアミドが挙げられる。
【0075】
外層に好適なポリエステルには、ジもしくはポリカルボン酸およびジもしくはポリヒドロキシアルコール、またはアルキレンオキシドの重縮合生成物が挙げられる。好ましくは、ポリエステルは、エチレングリコールと飽和カルボン酸(例えば、オルトまたはイソフタル酸およびアジピン酸)との縮合生成物である。より好ましくは、このポリエステルは以下を包含する:エチレングリコールとテレフタル酸との縮合によって生成されるポリエチレンテレフタレート;1,4−ブタンジオールとテレフタル酸との縮合によって生成されるポリブチレンテレフタレート;および、フタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、グルタル酸、コハク酸、シュウ酸などのような酸成分である第3の成分を有する、ポリエチレンテレフタレートコポリマーおよびポリブチレンテレフタレートコポリマー;ならびに、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどのようなジオール成分、およびそれらのブレンドされた混合物。
【0076】
外層に好適なポリオレフィンは、下記の内層について詳述したものと同様である。好ましくは、ポリプロピレンが使用される。
【0077】
EVOHの酸素遮断特性が、水への曝露に対して悪影響を受けることは周知である。従って、コア層を乾燥した状態に維持することが重要である。このために、外層は、内層を介したコア層への通路を作る水を除去すること、またはさもなければ、コア層の酸素遮断特性を維持することを補助すべきである。
【0078】
内層は好ましくは、ポリオレフィンのホモポリマーおよびコポリマーから選択される。好適なポリオレフィンは、2〜約20個の炭素原子、より好ましくは2〜約10個の炭素原子を含有する、アルファオレフィンのホモポリマーおよびコポリマーからなる群から選択される。それ故、好適なコポリマーには、プロピレン、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、およびデセン−1のポリマーおよびコポリマーが挙げられる。好適なポリオレフィンにはさらに、低級アルキルおよび低級アルケンアクリレートおよびアセテート、ならびにこれらのイオノマーが挙げられる。用語「低級アルキル」は、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基(例えば、エチル、メチル、ブチル、およびペンチル)を意味する。用語「イオノマー」は、亜鉛またはナトリウムのような1価または2価の陽イオンと結合する垂れ下がり(pendent)カルボキシレート基を有するアクリル酸コポリマーの金属塩を示すために、本明細書中で用いる。
【0079】
最も好ましくは、内層は、一般的に超低密度ポリエチレン(ULDPE)として参照されるエチレンαオレフィンコポリマー、特にエチレン−ブテン−1コポリマーから選択される。好ましくは、エチレンαオレフィンコポリマーは、メタロセン触媒系を用いて生成される。この触媒は、「単一部位の」触媒と呼ばれる。なぜなら、これらは、触媒部位の混合物を有するとして既知のZiegler−Natta型触媒に対立する、単一の、立体的におよび電子的に等価な触媒部位を有するからである。このメタロセン触媒化エチレンαオレフィンは、商品名AFFINITYでDowによって、そして商品名EXACTでExxonによって販売されている。エチレンαオレフィンは好ましくは、0.880〜0.910g/ccの密度を有する。
【0080】
好適な結合層は、未修飾ポリオレフィンと混合された修飾ポリオレフィンを包含する。修飾ポリオレフィンは、典型的には、ポリエチレンまたはポリエチレンコポリマーである。このポリエチレンは、ULDPE、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)であり得る。修飾ポリエチレンは、0.850〜0.95g/ccの密度を有し得る。
【0081】
ポリエチレンは、カルボン酸および無水カルボン酸でのグラフト化により修飾され得る。好適なグラフト化モノマーには、例えば、以下のものが挙げられる:マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アリルコハク酸、シクロヘキシ−4−エン−1,2−ジカルボン酸、4−メチルシクロヘキシ−4−エン−1,2−ジカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸、x−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水アリルコハク酸、無水シトラコン酸、無水アリルコハク酸、無水シクロヘキシ−4−エン−1,2−ジカルボン酸、無水4−メチルシクロヘキシ−4−エン−1,2−ジカルボン酸、無水ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸、および無水x−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸。
【0082】
他のグラフト化モノマーの例としては、以下の物質が挙げられる:C〜Cアルキルエステルまたは不飽和カルボン酸のグリシジルエステル誘導体(例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシダル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸ジメチル、イタコン酸モノメチル、およびイタコン酸ジエチル);不飽和カルボン酸のアミド誘導体(例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸N−モノエチルアミド、マレイン酸N,N−ジエチルアミド、マレイン酸N−モノブチルアミド、マレイン酸N,Nジブチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジアミド、フマル酸N−モノエチルアミド、フマル酸N,N−ジエチルアミド、フマル酸N−モノブチルアミド、およびフマル酸N,N−ジブチルアミド);飽和カルボン酸のイミド誘導体(例えば、マレイミド、N−ブチルマレイミド(butymaleimide)、およびフェニルマレイミド);ならびに不飽和カルボン酸の金属塩(例えば、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、およびメタクリル酸カリウム)。より好ましくは、ポリオレフィンは縮合環無水カルボン酸によって修飾され、そして最も好ましくは、無水マレイン酸によって修飾される。
【0083】
未修飾ポリオレフィンは、ULDPE、LLDPE、MDPE、HDPEおよび酢酸ビニルおよびアクリル酸を有するポリエチレンコポリマーからなる群から選択され得る。好適な修飾ポリオレフィン混合物は、例えば、DuPontによる商品名BYNEL(登録商標)、Chemplex Companyによる商品名PLEXAR(登録商標)、およびQuantum Chemical Co.による商品名PREXARにより販売されている。
【0084】
図1に示され得るように、好ましい多層化構造体は、コア層14に関して非対称である。つまり、溶液接触層16は、外層12よりも厚い。EVOHが吸湿性であることは周知である。EVOHが水分を吸収するにつれ、その酸素遮断特性は顕著に減少する。好ましい構造体10は、コア層14からの水分の逸脱を補助するポリアミドの比較的薄い外層を提供する。溶液接触層16は、良好な水分揮発遮断特性を有し、水分の侵入からコア層14を保護するよう振る舞うポリオレフィンの比較的厚い層である。
【0085】
構造体10の層の相対厚さは以下の通りである:コア層は0.2〜2.5ミル、より好ましくは0.7〜1.3ミル、またはこれらの任意の範囲もしくは範囲の組合せの厚さを有すべきである。外層12は、好ましくは0.2〜2.0ミル、より好ましくは0.4〜0.8ミル、またはこれらの任意の範囲もしくは範囲の組合せの厚みを有する。内層16は、3〜8ミル、より好ましくは5〜7ミル、またはこれらの任意の範囲もしくは範囲の組合せの厚さを有する。結合層18は、好ましくは0.2〜1.2ミル、より好ましくは0.6〜0.8ミルの厚さを有する。従って、層化構造体の全体の厚さは、3.8ミル〜14.9ミルである。
【0086】
図2は、7個の層を有する代替の実施態様を示す。この実施態様は、溶液接触層16が、3個の副層16a,b,およびcに分割されている以外は、図1のものと同様である。好ましくは、溶液接触層16の中心に配置された副層16bは、隣接する副層16aおよび16cよりも低いWVTRを有する。最も好ましい副層16aおよび16cはメタロセン触媒化ULDPEであり、中心副層16bはメタロセン触媒化低密度ポリエチレンである。好ましい隣接溶液接触副層16aおよび16cは、中心副層16bよりも、約1〜7倍、より好ましくは2〜6倍、最も好ましくは5倍厚い、厚さを有する。好ましくは隣接溶液接触副層16aおよび16cは、約1〜5ミル、最も好ましくは2.5ミルの厚さを有し、中心溶液接触層16bは、約0.2〜1ミル、最も好ましくは0.5ミルの厚さを有する。
【0087】
図3は、コア層14が複数の薄いコア副層を含む以外は、全ての点において図1の多層化構造体と同様である、別の代替的実施態様を示す。好ましくは概して2〜10個のコア副層である。各コア副層の間に、結合副層を組み入れることもまた所望であり得る。結合副層は、内層および外層のコア層への結合について上記したものから選択され得る。
【0088】
本発明の層化構造体は、容器に製作し、層化構造体から容器に入れられた溶液への、大量の低分子量成分の移動なしに、長期間、医療用溶液を保存し得るので、医療用容器を製作するのによく適している。250mlの生理食塩水を7日間入れた450cmの表面積の容器に対して、好ましくは、全有機炭素(TOC)による測定による低分子量添加物の量は、1.0ppt未満、より好ましくは100ppm未満、最も好ましくは10ppm未満である。
【0089】
上記した層は、当業者に周知の、およびキャスト共押し出し成形、共押し出し成形コーティング、または他の受容可能な加工を含む、標準的技術によって層化構造体に加工され得る。
【0090】
有用な物品に簡単に製造するため、層化構造体は、一般に約27.12MHzでの高周波(「RF」)溶接技術を用いて溶接され得るのが望ましい。それ故、材料は、RFエネルギーを熱エネルギーに変換するのに十分な誘電損失特性を有すべきである。好ましくは、層化構造体の外層12は、室温〜250℃の温度範囲において、1〜60MHzの範囲の周波数で、0.05より大きな誘電損失を有する。
【0091】
好ましくは、層化構造体は、キャスト共押し出し成形加工を用いてフィルムに製作される。この加工は、滑剤および受容不可能なレベルまで抽出可能物を増加させ得る他の低分子量添加剤を基本的に含まないべきである。
【0092】
本発明の層化構造体の例示の、非限定の実施例を、以下に述べる。多数の他の実施例が、本明細書に包含される原理および教示を導く観点から容易に想像され得る。本明細書中で述べる実施例は、本発明の例示を意図するものであり、どんな意味でも、本発明が実施され得る様式を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0093】
5層化構造体を、本発明の教示に従って共押し出し成形した。5層化構造体は、0.6ミルの厚さを有するナイロン12(EMS America Grilon−Grilamid L20)の外層、0.7ミルの厚さを有する結合層(BYNEL(登録商標) 4206(DuPont))、1.0ミルの厚さを有するEVOH(EVAL(登録商標) EVOH LC−F101AZ)のコア層、および6.0ミルの厚さを有するULDPE(Dow AFFINITY(登録商標) PL1880)を有した。この構造体を、コバルト源を用いて、40〜45kGysの用量で、放射性殺菌した。
【0094】
以下の表は、構造体の酸素透過性が温度にどれだけ依存するかを示している。酸素透過性を、MoCon試験器(Modern Controls、Minneapolis、MN)を用いて測定した。試験チャンバは、O側で75%の相対湿度を、N側で90%の相対湿度を有し、高湿度環境で溶液を充填した容器を模写した。
【0095】
【表1】

【0096】
また、水蒸気透過率を、23℃で、0.035g HO/100 in/日のWVTRを生ずる90%の湿度勾配で測定した。
【0097】
本発明が、これらの精神および中心的特徴から逸脱することなく、他の特定の形式で具体化され得ることは理解される。それ故、本発明の実施例および実施態様は、すべての局面において、例示として考えられるべきであり、限定的に考えられるものではなく、本発明は本明細書中で述べた詳述に限定されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、本発明の5層化フィルム構造体の断面図を示す;
【図2】図2は、本発明の別の実施態様を示す;そして
【図3】図3は、本発明のさらに別の実施態様を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−22753(P2009−22753A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179630(P2008−179630)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【分割の表示】特願平11−519194の分割
【原出願日】平成10年9月18日(1998.9.18)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【Fターム(参考)】