説明

医療用設備ユニット

【課題】被災地や僻地等、医療設備が常設されていない地域においても緊急的な医療行為を効率良く実施すること。
【解決手段】医療処置を実施可能に画成した処置部10と、処置部10を殺菌洗浄するための洗浄水を供給する浄化処理手段21と、処置部10を殺菌洗浄した後の廃水を処理するための廃水処理手段と、浄化処理手段21から供給された洗浄水を処置部10に対して噴霧する洗浄手段14とを備え、かつこれら処置部10、浄化処理手段21、廃水処理手段22及び洗浄手段14をコンテナ1の内部に収容配置して医療用設備ユニットを構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被災地や僻地等、医療設備が常設されていない地域においても緊急的な医療行為を実施することが可能な医療用設備ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の医療用設備ユニットとしては、空気処理手段、発電手段、熱源手段、衛生手段を備えた機械室と、治療手段を備えた処置室とを収容手段の内部に設置することにより構成されたものが提供されている。空気処理手段は、処置室に対して空気浄化及び空気調和を行うものである。発電手段は、各所に対して電源を供給するためのものである。熱源手段は、冷暖房や給湯を行うためのものである。衛生手段は、給水や排水処理を行うものである。収容手段は、例えば可搬性を有した箱状を成すコンテナである。
【0003】
この医療用設備ユニットによれば、収容手段を適宜の搬送手段で移送することにより、被災地や僻地等の移送先においても緊急的な医療行為を実施することが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平4−84964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、伝染性の疾患をもつものに対して医療行為を行った場合には、処置に用いた器具ばかりでなく、処置を行った処置室そのものの殺菌・洗浄処理が必要となる。しかも、殺菌・洗浄した後の廃水は、そのまま廃棄することができない。このため、従来の医療用設備ユニットにおいては、伝染性疾患をもつものに対して医療行為を行った場合、一旦設備の整った場所まで搬出し、殺菌・洗浄を行った後に再び被災地や僻地に移送しなければならないことになり、効率的に医療行為を行うことが困難である。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、被災地や僻地等、医療設備が常設されていない地域においても緊急的な医療行為を効率良く実施することが可能な医療用設備ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る医療用設備ユニットは、医療処置を実施可能に画成した処置部と、前記処置部を殺菌洗浄するための洗浄水を供給する洗浄水供給手段と、前記処置部を殺菌洗浄した後の廃水を処理するための廃水処理手段と、前記洗浄水供給手段から供給された洗浄水を前記処置部に対して噴霧する洗浄手段と、これら処置部、洗浄水供給手段、廃水処理手段及び洗浄手段を内部に収容配置するための収容手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る医療用設備ユニットは、上述した請求項1において、前記収容手段は、予め箱状に構成したコンテナであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に係る医療用設備ユニットは、上述した請求項1において、前記処置部は、医療処置を施すための処置室と、この処置室に至るまでの間に構成した前室とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に係る医療用設備ユニットは、上述した請求項1において、少なくとも前記処置室の内壁面に撥水加工を施すことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項5に係る医療用設備ユニットは、上述した請求項3において、前記洗浄水供給手段は、食塩水を電気分解することにより生成した次亜塩素酸を含む洗浄水を前記洗浄手段に供給するものであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項6に係る医療用設備ユニットは、上述した請求項1において、前記廃水処理手段は、廃水に対して殺菌処理を施す廃水殺菌部と、殺菌処理された廃水を凝集させる廃水凝集部とを有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項7に係る医療用設備ユニットは、上述した請求項6において、前記廃水凝集部は、電極から溶解した金属コロイドによる凝集反応を利用して廃水を凝集させるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、移送先において洗浄手段から噴霧する洗浄水により処置部の殺菌・洗浄を行うことができ、さらに洗浄後の廃水を処理することも可能であるため、伝染性疾患をもつものに対して医療行為を行った場合に都度搬出、移送を行う必要が無くなり、被災地や僻地等、医療設備が常設されていない地域においても緊急的な医療行為を効率良く実施することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る医療用設備ユニットの好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態である医療用設備ユニットを概念的に示したものである。ここで例示する医療用設備ユニットは、車両、列車、船舶、航空機あるいはヘリコプターによって搬送可能なISO(International Organization for Standardization)国際貨物コンテナ(収容手段)1、例えば1AA型式コンテナ(高さ2591×幅2438×全長12192)や1CC型式コンテナ(高さ2591×幅2438×全長6058)の内部に構成したもので、処置部10及び浄化廃水処理部20を備えている。
【0017】
処置部10は、看者に対して医療行為を行う処置室11と、出入口12から処置室11に至るまでの間に構成した前室13とを備えたもので、防水性を有した1つのユニットとして構成してある。処置室11及び前室13の内部壁面は、いずれもフッ素樹脂材で被覆し、撥水性を有するように構成してある。尚、図には明示していないが、処置部10には、医療行為に必要となる各種設備が整えてある。より詳細には、診断設備、治療設備、消毒設備、麻酔設備、手術設備、照明設備、空調設備が処置室11の内部に用意してある。これらの設備は、処置室11の内部、あるいは別個に用意した図示せぬ機械室の内部に収容してあり、さらに、不用意に移動することのないようにコンテナ1に対して固定設置してある。
【0018】
また、処置部10には、洗浄手段14が設けてある。洗浄手段14は、後述の浄化処理手段21から供給された洗浄水を処置室11及び前室13の内部に噴霧することにより、これら処置室11及び前室13の殺菌・洗浄を行うためのものである。
【0019】
浄化廃水処理部20は、処置部10に対する給排水処理を行うためのもので、浄化処理手段(洗浄水供給手段)21及び廃水処理手段22を備えた1つのユニットとして構成してある。尚、以下に説明する浄化廃水処理部20の各構成要素に関しても、不用意に移動することのないようにコンテナ1に対して固定設置してある。
【0020】
浄化処理手段21は、吸水通路210を通じて外部から取得した水を処理するためのもので、図2に示すように、フィルタ211、取水タンク212、電解タンク213、注入タンク214及び保管タンク215を備えている。フィルタ211は、吸水通路210を通過する間に水を濾過するものである。取水タンク212は、フィルタ211を通過した後の濾過水を貯留するものである。電解タンク213は、食塩水を電気分解することによって次亜塩素酸ナトリウム水を生成するためのものである。電解タンク213の食塩水は、取水タンク212の濾過水と予め用意した食塩とによって生成するようにしている。電解タンク213で生成された次亜塩素酸ナトリウム水は、注入タンク214に殺菌剤として供給される一方、第1洗浄水供給通路216を通じて処置部10の洗浄手段14に洗浄水として供給されることになる。注入タンク214は、取水タンク212の濾過水に電解タンク213からの次亜塩素酸ナトリウム水を注入することにより、濾過水の殺菌を行うためのものである。保管タンク215は、注入タンク214で殺菌した後の殺菌水を貯留するものである。この保管タンク215に貯留された殺菌水は、上水供給通路217を通じて処置部10に上水として供給される一方、第2洗浄水供給通路218を通じて処置部10の洗浄手段14に濯ぎ水として供給され、さらに廃水処理手段22の電解タンク213にも供給される。尚、保管タンク215には、有効塩素濃度を一定に保持するための電解手段を設けておくことが好ましい。
【0021】
廃水処理手段22は、処置部10から排出された廃水を処理するためのもので、図3に示すように、回収タンク220、電解タンク221、注入タンク222及び凝集タンク223を備えている。回収タンク220は、処置部10から排出された廃水を一旦貯留するものである。電解タンク221は、食塩水を電気分解することによって次亜塩素酸ナトリウム水を生成するためのものである。電解タンク221の食塩水は、保管タンク215からの上水、もしくは取水タンク212からの濾過水と、予め用意した食塩とによって生成するようにしている。電解タンク221で生成された次亜塩素酸ナトリウム水は、注入タンク222に殺菌剤として供給される。尚、廃水処理手段22の電解タンク221と浄化処理手段21の電解タンク213とは、いずれか一方に設け、双方で共用するようにしても良い。注入タンク222は、回収タンク220の廃水に電解タンク221からの次亜塩素酸ナトリウム水を注入することにより、廃水の殺菌を行うためのものである。凝集タンク223は、注入タンク222で殺菌した後の廃水を凝集処理し、凝集物を除去した後の廃水を廃水通路224を通じて外部に排出するためのものである。図には明示していないが、本実施の形態では、電気化学反応を利用した凝集方法、例えば電極から溶解した金属コロイドによる凝集反応を利用して凝集処理を行うようにしている。
【0022】
上述した処置部10及び浄化廃水処理部20で必要となる電源に関しては、コンテナ1の内部に専用の電源設備を設けても良いし、外部電源設備から電源供給できるように構成しても良い。図1に示した本実施の形態の場合には、外部電源設備30から電源を供給するようにしている。外部電源設備30としては、例えば、軽油を燃料としたディーゼルエンジン型発電機、あるいは灯油で発電可能なマイクロガスタービン型発電機等の可搬式のものを適用しても良いし、設置場所が既存の病院、医院、保健所等、一般の商用電源を利用できる場所であれば商用電源を適用しても構わない。
【0023】
上記のように構成した医療用設備ユニットによれば、浄化処理手段21を備えているため、予めコンテナ1の内部に上水を貯留しておく必要が無く、外部水源から取得した水を濾過・殺菌した後の上水として処置部10に供給することができる。従って、被災地や僻地等、医療設備が常設されていない地域においても、河川や湖沼等、外部水源を確保できれば、緊急的な医療行為を長期に亘って実施することが可能となる。
【0024】
しかも、浄化処理手段21から洗浄手段14に供給した洗浄水及び濯ぎ水によって処置部10の殺菌・洗浄・濯ぎを行うことができる。さらに、廃水処理手段22においては、処置部10からの廃水を殺菌・凝集処理するようにしているため、洗浄後の廃水を河川や湖沼に排出することが可能である。この結果、伝染性の疾患をもつものに対して医療行為を行った場合にも、一旦設備の整った場所まで搬出し、殺菌・洗浄を行った後に再び被災地や僻地に移送する、といった非効率的な作業を行う必要が無くなり、効率的に医療行為を実施・継続することが可能となる。
【0025】
尚、上述した実施の形態では、収容手段として予め箱状に構成したコンテナを例示しているため、医療用設備ユニットの搬送がきわめて容易になるものの、本発明は必ずしもこれに限定されない。例えば、複数のパネルによって収容手段を構成し、搬送先で箱体として組み立てるようにしても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態である医療用設備ユニットを示した概念図である。
【図2】図1に示した浄化処理手段の詳細構成を示す概念図である。
【図3】図1に示した廃水処理手段の詳細構成を示す概念図である。
【符号の説明】
【0027】
1 コンテナ(収容手段)
10 処置部
11 処置室
12 出入口
13 前室
14 洗浄手段
20 浄化廃水処理部
21 浄化処理手段(洗浄水供給手段)
22 廃水処理手段
30 外部電源設備
210 吸水通路
211 フィルタ
212 取水タンク
213 電解タンク
214 注入タンク
215 保管タンク
216 第1洗浄水供給通路
217 上水供給通路
218 第2洗浄水供給通路
220 回収タンク
221 電解タンク
222 注入タンク
223 凝集タンク
224 廃水通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療処置を実施可能に画成した処置部と、
前記処置部を殺菌洗浄するための洗浄水を供給する洗浄水供給手段と、
前記処置部を殺菌洗浄した後の廃水を処理するための廃水処理手段と、
前記洗浄水供給手段から供給された洗浄水を前記処置部に対して噴霧する洗浄手段と、
これら処置部、洗浄水供給手段、廃水処理手段及び洗浄手段を内部に収容配置するための収容手段と
を備えたことを特徴とする医療用設備ユニット。
【請求項2】
前記収容手段は、予め箱状に構成したコンテナであることを特徴とする請求項1に記載の医療用設備ユニット。
【請求項3】
前記処置部は、医療処置を施すための処置室と、この処置室に至るまでの間に構成した前室とを備えることを特徴とする請求項1に記載の医療用設備ユニット。
【請求項4】
少なくとも前記処置室の内壁面に撥水加工を施すことを特徴とする請求項1に記載の医療用設備ユニット。
【請求項5】
前記洗浄水供給手段は、食塩水を電気分解することにより生成した次亜塩素酸を含む洗浄水を前記洗浄手段に供給するものであることを特徴とする請求項3に記載の医療用設備ユニット。
【請求項6】
前記廃水処理手段は、廃水に対して殺菌処理を施す廃水殺菌部と、殺菌処理された廃水を凝集させる廃水凝集部とを有することを特徴とする請求項1に記載の医療用設備ユニット。
【請求項7】
前記廃水凝集部は、電極から溶解した金属コロイドによる凝集反応を利用して廃水を凝集させるものであることを特徴とする請求項6に記載の医療用設備ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−239027(P2006−239027A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−56431(P2005−56431)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【出願人】(304026696)国立大学法人三重大学 (270)
【Fターム(参考)】