説明

医療用超音波イメージングにおいて剪断波情報を求めるための方法およびシステム

【課題】医療用超音波イメージングにおいて、より高精度の剪断波推定を実現すること。
【解決手段】前記課題は、第1のスキャンライン上の第1の音波に応答して第1の剪断波によって生じた第1の変位を第4のスキャンライン上で検出し、第3のスキャンライン上の第2の音波に応答して第2の剪断波によって生じた第2の変位を前記第4のスキャンライン上で検出し、前記第1のスキャンライン上の第3の音波に応答して第3の剪断波によって生じた第3の変位を第2のスキャンライン上で検出し、複数の各ラテラル位置ごとに、前記第1の変位と前記第2の変位との最大相関に相当する遅延と、該第1の変位と前記第3の変位との最大相関に相当する遅延と、該第2の変位と該第3の変位との最大相関に相当する遅延とを計算し、前記各遅延の関数として、前記複数の各ラテラル位置ごとの剪断波速度を計算することによって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波イメージングに関し、とりわけ、超音波イメージングのための剪断波情報を求めることに関する。
【0002】
剪断波速度検出は、たとえば肝臓疾患の評価等である種々の診断用途で使用される。剪断波速度によって組織の特性を知ることができ、腫瘍や他の領域の検出を行うことができる。しかしこの検出精度は、他の用途で快適に使用するには不十分である。
剪断波検出では、超音波プッシュパルスをスキャンラインに沿って送信し、このプッシュパルスが剪断波を発生させ、組織を変位させる。このようにして発生した組織の変位を検出する。剪断波速度を検出するためには、1つのスキャンラインにおいて複数のプッシュパルスを使用することができる。1つのスキャンラインにおいて複数のプッシュパルスを送信しなくても、複数のプッシュパルスを複数の隣接するスキャンラインに沿って順次送信する。同一位置または複数の隣接する位置において組織が多重に押されることにより、剪断波と組織共振との加算が引き起こされると、幾つかの用途では、アーティファクトが生じるかまたは十分な精度が得られないことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、上記従来技術の欠点を解消し、より高精度の剪断波推定を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
まず最初に述べておきたいのは、以下に説明する好適な実施形態には、医療用超音波イメージングにおける剪断波情報を求めるための方法、命令およびシステムが含まれていることである。剪断波の発生源からの距離と各位置においてピーク変位に達するまでの時間とに基づいて各位置ごとに剪断波情報を求めるのではなく、発生源の位置と検出位置との複数の異なる組み合わせから得られる変位プロファイルの相関を求める。送信位置と検出位置との種々の空間的な組み合わせによって得られる変位を使用して、剪断波情報を検出する。複数のラテラル位置の遅延を同時に求めるために、1つの同じ関数において、この相関の組み合わせを使用する。空間的な多様性と、階層的な相関とにより、より高精度の剪断波推定を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0005】
第1の態様においては、不揮発性のコンピュータ読み出し可能記憶媒体が、医療用超音波イメージングにおける剪断波情報を求めるためにプログラミングされたプロセッサによって実行可能な命令を表すデータを記憶している。前記記憶媒体は、
第1のスキャンライン上で送信された第1の音波に応答して第1の剪断波によって引き起こされた、時間に依存する組織の第1の変位を検出し、ただし該第1の変位は、該第1のスキャンラインから少なくとも第2のスキャンラインおよび第3のスキャンラインの分だけ離隔している第4のスキャンライン上に位置し、
前記第3のスキャンライン上で送信された第2の音波に応答して第2の剪断波によって引き起こされた、時間に依存する組織の第2の変位を検出し、ただし、該第2の変位は前記第4のスキャンライン上に位置し、
前記第1のスキャンライン上で送信された第3の音波に応答して第3の剪断波によって引き起こされた、時間に依存する組織の第3の変位を検出し、ただし、前記第2の変位は前記第2のスキャンライン上に位置し、
複数の各ラテラル位置ごとに、
・前記第1の変位と前記第2の変位との最大相関に相当する遅延と、
・該第1の変位と前記第3の変位との最大相関に相当する遅延と、
・該第2の変位と該第3の変位との最大相関に相当する遅延と
を計算し、
前記各遅延の関数として、前記複数の各ラテラル位置ごとの組織中の剪断波速度を計算する
ための命令を含む。
【0006】
第2の側面では、医療用超音波イメージングで剪断波情報を求めるための方法が提供される。複数の異なる位置において送信することによって組織内に発生した第1の剪断波は、1つの同じ位置で検出する。1つの同じ位置において複数送信を行うことによって組織内に発生した第2の剪断波が、複数の異なる位置で検出される。第1の剪断波および第2の剪断波の双方の関数として剪断波速度を計算する。画像は、前記剪断波速度に依存して組織を表現する。
【0007】
第3の側面では、医療用超音波イメージングで剪断波情報を求めるためのシステムが提供される。受信ビームフォーマが、受信した音波信号に依存して空間的位置を表すデータを出力するように設けられている。前記受信ビームフォーマから出力されたデータに依存して組織変位を推定するためにプロセッサが設けられており、該プロセッサは、前記空間的位置のうち複数の異なる空間的位置から組織変位の少なくとも1対の相関係数を計算し、該相関係数に基づいて伝播時間を求め、該伝播時間に依存して画像を生成する。前記画像を表示するためにディスプレイが設けられている。
【0008】
本発明は特許請求の範囲によって規定されたものであり、明細書の記載によって、特許請求の範囲に記載の発明が限定されることはない。以下、有利な実施形態を参酌して本発明の別の実施形態および利点を説明する。以下で説明される実施形態は、特許請求の範囲において独立して記載されているか、またはこれらの実施形態の組合せが記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】医療用超音波イメージングにおいて剪断波情報を求めるための方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【図2】送信および変位検出のシーケンスを示す図である。
【図3】A〜Cは、異なる送信シーケンスを示し、Dは、A〜Cの異なる送信シーケンスが温度に影響したときの作用の一例を示す図である。
【図4】アキシャル方向、ラテラル方向および時間的な変位サンプリングの一例を示す図である。
【図5】到達範囲と遅延との関係の一例を示す図である。
【図6】医療用超音波イメージングにおいて剪断波情報を求めるためのシステムの一実施形態を示す。
【実施例】
【0010】
本発明は特許請求の範囲によって規定されたものであり、明細書の記載によって、特許請求の範囲に記載の発明が限定されることはない。以下、有利な実施形態を参酌して本発明の別の実施形態および利点を説明する。以下で説明される実施形態は、特許請求の範囲において独立して記載されているか、またはこれらの実施形態の組合せが記載されている。
【0011】
送信位置と検出位置との種々の空間的な組み合わせによって得られる変位を使用して、剪断波情報を検出する。同一の空間位置において加振(励振)(プッシュパルス)を繰り返すことによって生じる剪断波波形の多義性(不明瞭)を回避するため、インタリーブシーケンスを使用する。このインタリーブにより、このシーケンスがビームの重なりを低減することもでき、温度上昇量を低減することもできる。このようなシーケンスの剪断波信号強度は、同一のスキャンライン上に複数送信するのと比較すると優れている。この剪断波信号強度により、より高信頼性かつロバストな検出を実現することができる。
【0012】
剪断波のピーク到達時間を検出する代わりに、ビームシーケンスが行われた場所からの剪断波応答の相関を使用して、伝播時間を求める。伝播時間推定問題を、相関係数空間内における最適化問題と見なすことにより、ピーク到達時間の探索やヘルムホルツの式を解くのと比較して最適な解が得られる。
【0013】
1つの実施形態では、所与の種類の組織とイメージングシステム装置との間の少なくとも1つの距離値を求める。組織の熱作用を低減するため、加振パルスの空間インタリーブ方式を使用する。剪断波検出パルスの空間的位置の分布は分散しており、これらの分散された位置を使用してインターリーブ方式の送信によってデータが取得され、これにより、剪断波の遅延時間または伝播時間の相関による検出が可能になる。
【0014】
別の実施形態では、剪断波変位の時間的な特性経過の少なくとも1対の相関係数を計算する。各所与の距離間における剪断波の伝播時間は、この相関係数から推定される。伝播時間の逆数を求め、その結果に距離を乗算して剪断波速度を求める。別の実施形態も考えられる。
【0015】
図1は、医療用超音波イメージングにおいて剪断波を求めるための方法を示す。この方法は、図6のシステムまたは別のシステムによって実現される。付加的なステップ、別のステップを設けるか、またはステップを少なくすることも可能であり、たとえば、ステップ35を実施せずに、その代わりに別の剪断波特性を求める。別の例として、ステップ36を実施しない。別の実施形態では、ステップ35からステップ30に繋がる矢印によって示された繰り返しを行わない場合がある。またこれらのステップは、記載または図示された順序で実行されるが、別の順序で実行することも可能である。
【0016】
ステップ30において、剪断波を生成するために音波パルスを送信する。加振エネルギーが超音波トランスデューサから送信される。この加振は音響エネルギーであり、この音響エネルギーが集束されることにより、各送信ごとに1つまたは複数のビームが得られる。上記の加振は、フェーズドアレイおよび/または機械的な集束部を使用して集束される。この加振を1つの次元において非集束状態とし、例えば高さ方向において非集束状態とすることも可能である。加振エネルギーは、患者の組織内に送信される。この加振が1つの場所で集束されることにより、この加振によって生じた剪断波を検出することができ、たとえば、腫瘍である可能性のある場所を含む周辺の組織位置を検出することができる。
【0017】
前記複数の送信は、複数の異なる場所において集束される。患者の領域上をスキャンして剪断波を発生させるためには、1つまたは複数の送信を同一位置に集束させる。別の送信は、別の場所において集束される。剪断波は集束領域において発生し、該集束領域からラテラル方向に伝播していく。いかなる送信であっても、剪断波は、集束領域に隣接する場所および/または該集束領域から離隔した場所で検出される。剪断波が組織中を伝播していくにつれて、該剪断波の振幅は低減していく。関心領域において、剪断波に対する組織応答を検出するためには、別の集束領域へ送信を行い、該別の集束領域の辺りで検出を行う。複数の異なる送信集束領域に由来する複数の検出領域は、相互に重なり合う。図2に一例として、10個のスキャンラインn〜n+10を示している。設けられるスキャンラインの数を増減することもできる。ここでは、各スキャンラインごとに2つ以上の送信を行って剪断波を発生させる。このことは、40および42に示されたプッシュパルスを表す矢印によって示されている。プッシュパルスを送信するためのスキャンラインは、検出用のスキャンラインと同じである。別の実施形態では上記実施形態と異なり、1つ以上のプッシュパルススキャンラインが、受信スキャンラインまたは検出スキャンラインと異なる。
【0018】
剪断波を発生させるためには、高振幅または高パワーの加振が望ましい。たとえば、各加振の機械的指標は1.9に近く、かつ1.9を超えない。慎重に、かつ探触子のばらつきを考慮して機械的指標を選択するならば、1.7を機械的指標の上限とする場合もある。使用されるパワーを増大させたり(たとえば、1.9を超える機械的指標MI)、減少させたりすることもできる。同一のスキャンライン上または隣接するスキャンライン上において連続的に送信を行うと、組織の温度が時間とともに上昇してしまう。生物学的な作用には、約41〜45℃の高い組織温度、45℃を上回る温度で生じるプロテイン変質、および50℃を上回る温度で生じる組織壊死が含まる。組織のスティフネスは、45℃以下の温度であっても影響を受けることがある。45℃以上の温度では、粘度および/またはスティフネスが増大することがある。50℃以上の温度では、組織のスティフネスが高くなり、および/または減衰が大きくなることがある。超音波の送信によって、生理学的な作用が発生することがある。その代わり、2℃を上回る温度上昇を阻止することにより、生理学的な作用が抑えられる。
【0019】
図3A〜3Cに、複数の異なる場所において剪断波を発生させるための3つの異なる送信シーケンスを示す。図3Aは、複数の隣接するスキャンライン上で順次行われる送信を示す。これらのスキャンラインは、下方向を指す矢印として示されている。送信順序を番号1〜5によって示している。使用されるスキャンラインは増減することもできる。
【0020】
図3Bおよび3Cに、時間とともに上昇する温度を下げるための送信シーケンスを示す。図示のように順次行われる送信は、すぐ隣のスキャンライン上で順次送信を行うのを回避するために、スキャンライン全体において空間インタリーブで送信することによって行われる。図3Bに、5つのスキャンライン上において加振が発信されるのを示す。この発信は、左から右への順に行われる。この観察面は2つに分かれており、右半分と左半分とに分かれている。最初の第1の送信は、図3Bの左半分のうち左側のスキャンライン上で行われ、次の第2の送信は、図3Bの右半分のうち左側のスキャンライン上で行われる。この送信パターンは、図3Bの右半分のうち右側において最後の送信が行われ、その次に、左半分のうち右側において最後の送信が行われるまで続けられる。この送信シーケンス全体において、時間的に連続する送信の相互間の間隔は、剪断波の検出のための観察面(たとえば関心領域)の半分になっている。
【0021】
図3Cに、別の可能なシーケンスを示す。この実施例では、観察面は4等分されており、各4等分ごとに、インタリーブ周期中に順次スキャンが行われる。異なる分割形態の別のスキャン順序、スキャン順序の無作為化、時間的/空間的パターンが異なる別のスキャン順序を使用することもできる。
【0022】
図3Dに、図3A〜3Cの3つの異なるシーケンスで発生した温度上昇を示す。組織温度上昇は、ビームの音場が相互に著しく重なり合う近接した場で見られる。図3Aのシーケンス1(破線)では、時間とともに大きな温度上昇が生じている。図3Bのシーケンス2(一点鎖線)および図3Cのシーケンス3(実線)では、温度上昇が小さくなっている。
【0023】
上述の実施形態の代わりに、または付加的に、剪断波推定において付加的な相関を求めて剪断波速度を求めることにより、温度を制御することができる。この付加的な相関を求めて、複数のラテラル位置における遅延を同時に求めることができるようにするためには、1つの同じ場所に対して限られた数のプッシュパルスを有する取得シーケンスを段階的に行い、たとえば2つ、3つまたは4つのプッシュパルスを有する取得シーケンスを段階的に行う。図2には、符号40および42によって、剪断波を発生させるためのプッシュパルスまたは送信の2つの段階を示す。短時間のパルス繰り返し周期(PRI)で1つの同じ位置において複数のプッシュ時間(たとえば5個または10個以上)を使用する代わりに、2つ以上の取得段階が使用される。各段階40,42がスキャンライン全体を任意のパターンでスキャンし、たとえば図3A〜3Cに示されたパターンでスキャンする。2つの段階を使用するだけで、1つの空間的場所における加振PRIは非常に小さくなる(100msのオーダ)。
【0024】
別の送信も行われるが、この別の送信は、剪断波を生じさせるのではなく剪断波を検出するためのものである。検出のための送信のパワーをより低くし、かつ/または検出用の送信のパルス時間を短時間にすることができ、検出用の送信では、剪断波を発生させるためのプッシュパルスと同じスキャンラインを使用するか、または異なるスキャンラインを使用することができる。複数のスキャンライン上で受信サンプルを形成するために、検出用の送信ビームの少なくとも一方向における形状、たとえばラテラル方向の形状を、より広幅にすることができる。
【0025】
ステップ32において、上記の組織の変位が検出される。剪断波によって組織が動く。図2に、剪断波をモニタリングするために使用される変位を示す。これは、符号44の矢印によって示されている。これらの矢印は1方向であるが、剪断波は複数の方向に伝播する。1方向、2方向またはそれ以上の数の方向において、剪断波をモニタリングすることができる。
【0026】
剪断波によって引き起こされた組織の変位は、ある程度の時間にわたって検出される。剪断波が発生した場合、この剪断波の応力が伝播するまで、隣接する組織は動かない。剪断波が或る場所を通ると、組織はある程度の量または距離だけ変位する。この変位量または変位距離は、ピーク変位量に達するまで増大し、組織が静止状態に戻っていくにつれて変位量または変位距離は減少していく。このピーク変位量は、集束点における剪断波の発生時点から該剪断波のピークが別の場所を通るまでの遅延時間または伝播時間に相当する。ある程度の時間にわたる変位経過は、ある程度の時間にわたって組織の動きの大きさをトラッキングすることによって求められる。
【0027】
組織の変位は、超音波スキャンによって検出される。この変位を検出するためには、変位中の組織に超音波エネルギーが送信され、このエネルギーの反射が受信される。図2にこの検出が46で示されている。検出用の送信および受信は複数回行われ、変位に起因する変化が求められる。送信および受信には任意のシーケンスを使用することができる。変位の検出は別のスキャンによってインタリーブすることができ、たとえば、異なる変位領域を別個にスキャンすることができる。
【0028】
関心領域をモニタリングしてこの剪断波を検出する。この関心領域のサイズは、例えばラテラル方向に6mm,アキシャル方向に10mmなど任意である。この検出領域は超音波によってモニタリングされ、例えば、Bモードスキャンを実行して、上記の剪断波によって引き起こされた組織の変位を検出する。ドップラモード、カラーフローモード、または別の超音波モードを使用して上記の剪断波をモニタリングすることができる。
【0029】
このモニタリングは、任意の数のスキャンラインで実行され、例えば、各送信ごとに4つの受信ビームが応答して形成される。加振エネルギーを送信して剪断波を発生させた後、1つのスキャンライン上でBモード送信が繰り返し行われ、また、4つの隣接するスキャンライン上で受信が行われる。別の実施形態では、各送信ごとに1つの受信ビームだけが応答して形成されるか、または別の個数の受信ビームが形成される。任意の回数の繰り返し、例えば、約10〜120回の繰り返しを使用することができる。上記超音波データの中には、例えば、上記の繰り返しの開始時または終了時において生じる超音波データの中には、上記剪断波に応答して生じたものではない超音波データがある。
【0030】
上記剪断波はスキャンラインを通って伝播するため、Bモード強度は変化することがある。上記モニタリングされるスキャンラインでは、剪断波によって発生した組織の動きの時間特性を表すデータ系列が得られ、例えば、複数の空間位置から得られたデータ(例えば、複数のスキャンライン上で得られたデータ)は時間の関数として、データまたは画像の参照フレームに相関付けされる。任意の弾性検出を使用することができる。複数の奥行位置または空間位置にわたって、各奥行位置または空間位置毎に相関が行われる(例えば、プロファイル計算が行われる対象であるポイントである奥行の中心を有する64個の奥行のカーネル)。空間における2次元または3次元の変位を使用することができ、また、スキャンラインまたはビームと異なる方向の1次元の変位も使用することができる。
【0031】
特定の時点における最大の相関または十分な相関を有する空間的なずれが、変位の量を示す。1つの位置において複数の異なる時点の変位が求められ、各位置ごとの時間特性により、剪断波の検出結果が分かる。この時間特性にノイズが無いか否か、または、この時間特性の変化は単独のものであるか否かが検査される。時間的なローパスフィルタリングの有無にかかわらず、時間特性におけるピークによって、剪断波の波面が通り過ぎたことが分かる。最大変位が選択されるが、平均または別の変位統計結果を使用することができる。図2に、48において検出される変位の時間的応答を示す。
【0032】
より大きな領域をモニタリングするためには、1つの同じプッシュパルスに応じて形成される受信ビームを追加する。その代わりに、さらに別の剪断波を発生させ、送信ビームが送信される場所からこの剪断波の発生地点までの距離と、受信ビームが送信される場所からこの剪断波発生地点までの距離とが異なるようにする。上記の実施形態を使用すると、スキャンラインあたり2つ以上のプッシュパルスを使用するだけで、複数のラテラル位置の変位が得られる。受信ビーム位置毎に、超音波データによって表される動き情報の時間特性が得られる。時間特性を形成する間、より高い時間分解能を実現するためには、1つの同じ剪断波をモニタリングするために複数の異なるスキャンライン上で送信を行うのを避け、スキャン位置をインタリーブまたはシフトすることができる。
【0033】
上記の説明は、奥行が1つである場合についての説明である。上記の関心領域のアキシャル方向の拡がりをすべてカバーする1つのゲートが得られるように、上記のサンプリングを配置することができる。別の1実施形態では、各受信ビーム毎に複数の奥行においてサンプルが取得される。アキシャル方向の奥行でも、ラテラル位置でも、各位置ごとに別個の時間特性が得られる。任意の数の奥行を使用することができ、たとえば5mmで約200個の奥行を使用し、10mmで約400個の奥行を使用することができる。
【0034】
上記の関心領域において、異なる位置を表す超音波データが得られる。この超音波データは、スキャンによってリアルタイムで得られるか、またはメモリから得られる。各位置ごとに、動き情報は複数の異なる時点における応答を表す。別のスキャン手法、別のモニタリング手法、または別の技術を使用して、超音波データを得て、剪断波の大きさを推定することができる。
【0035】
時系列でラテラル位置に配列した複数の変位を使用することにより、スキャンラインごとに発信される2つの少ないプッシュパルスで、剪断波速度を推定することができる。たとえば、複数の異なる位置からの送信によって、組織中の剪断波が1つの同じ位置で引き起こされて検出され、1つの同じ位置で複数の送信が行われることにより、複数の異なる位置において組織中の剪断波が引き起こされて検出され、別の複数の位置において送信が行われることにより、組織中の剪断波が複数の異なる位置において引き起こされて検出される。このように空間的および時間的に多様であることにより、多義性を小さくして剪断波を求めることができる。
【0036】
図2に、このような種々の位置を示す。このパルスパターンでは、剪断波を発生させるために各指数の位置ごと(たとえば各スキャンラインごと)に加振力が2回印加され、検出パルス列もまた、別の位置で剪断波を検出するために2回印加される。しかし、各検出パルス列は複数の位置に対応するので、解を検出する剪断波の3つの可能なセットを有するシステムが得られる。そのうち1つのセットは、同じ1つの位置で検出されるが2つの異なる位置で加振されるシーケンスであり、次の第2のセットは、複数の異なる位置で検出されるが1つの同じ位置で加振されるシーケンスであり、最後の第3のセットでは、検出も加振も複数の異なる位置で行われる。図2にこの基本的構成が、46における指数オフセットパラメータpおよびqと、2つの管形を結ぶ接続部分とによって示されている。時間的および空間的な多様性を加減することができ、たとえば、位置および/または時点を追加し、これらの組み合わせを追加することができる。
【0037】
図2中、48において検出された変位応答に描かれた楕円によって、別の成分を含む領域を示している。この変位の時間的応答は、この別の成分を含む領域の内部の位置と外部の位置とで異なる。媒質が異種を含むことにより、上記の解法のどのセットも完璧でなくなる。
【0038】
図4に、変位の時間的応答の空間的位置および時間的位置と、この変位に相当する加振の一例を示す。A,BおよびCは剪断波であり、これらの剪断波は、それぞれに対応する加振位置(破線)で発生したものである。A′,B′およびC′は、検出位置で検出された剪断波である。これらの検出位置は、相互に等間隔で離隔されたスキャンライン上にあるが、これらの検出位置を別の分布にすることもできる。上記の例では、剪断波A,BおよびCを発生させるための3つのプッシュパルス、および、各剪断波に対応して検出され時間に依存する組織変位(A′,B′およびC′)である。図4に、1つの奥行におけるプロセスを示す。横軸はラテラル方向の間隔を示しており、ここでは、剪断波AおよびCを発生させるためのプッシュパルスが第1のスキャンライン上で送信され、剪断波Bを発生させるためのプッシュパルスが第3のスキャンライン上で送信される。別の横軸が時間を表しており、複数の異なる時点で第1のスキャンライン上で送信され剪断波AおよびCを発生させるためのプッシュパルスを示している。たとえば、剪断波AおよびCを発生させるためのプッシュパルスは、図2中の1つの同じスキャンラインn+3上のプッシュパルス40,42に相当する。剪断波Bを発生させるためのプッシュパルスが同時点で送信されるのが示されているが、このことは比較的そうなっているということであり、実際の送信は、第3のスキャンライン上(たとえば、図2中のスキャンラインn+6)で順次行われる。同じ第4のスキャンライン上で検出される変位A′およびB′の関係をより良好に示すため、プッシュパルスAおよびBに応答して行われる変位検出のタイミングが同時点で行われるように示している。
【0039】
図2および4の例では、スキャンラインn+3上の音波送信に応答して剪断波Aが発生することによって生じた変位A′が検出される。変位A′はスキャンラインn+6上に位置し、図2ではこの変位A′を、第2のプッシュパルスからの矢印によって示す。この検出は、スキャンラインを2つ介在させて行われる。他に介在するスキャンラインは無い。他の実施形態では、上記実施形態の代わりに、介在するスキャンラインを1つとするか、または2つより多くする。スキャンラインn+5上の音波送信に応答して剪断波Bが発生することによって引き起こされた変位B′が検出される。変位B′はスキャンラインn+6上で発生する。このスキャンラインn+6は、剪断波Bを発生させるためのプッシュパルスで使用されたスキャンラインn+5の直ぐ隣である。介在するスキャンラインを追加することができる。剪断波Aを発生させるためのプッシュパルスと同じスキャンラインn+3上で送信された音波に応答して剪断波Cが発生することによって引き起こされた変位C′が検出される。この変位C′は、直ぐ隣のスキャンラインn+4上で検出されるが、介在するスキャンラインを1つとするか、またはより多くすることができる。図2中、CおよびC′を表すために、スキャンラインn+3上のプッシュパルス40からスキャンラインn+4上の検出パルス46の方向を指す矢印が示されている。
【0040】
別の空間的関係および時間的関係を設けることもできる。図2および4は一例であり、スキャンラインn+3および/またはn+5上においてさらに別のプッシュパルスを使用することもできる。1つの同じスキャンラインまたは異なるスキャンライン上で、プッシュパルス送信を追加するかまたは追加せずに、さらなる変位を検出することもできる(たとえば、同じプッシュパルスCに応答してn+4上でC′の他に発生する別のC″も検出する)。図2および4には、送信の右側から離れたスキャンライン上で検出が行われるのが示されているが、どのような距離に配置してもよい(たとえば、2次元における左側から離れたスキャンライン、または、3次元における前面/背面から離れたスキャンライン)。
【0041】
図4では、AA′およびBB′が、範囲_1における伝播時間パラメータを検出するための対を成し、AA′およびCC′がそれぞれ、範囲_2における伝播時間パラメータを検出するための別の一対を成す。BB′およびCC′は、解を限定するための別の一対を成す。前記範囲パラメータは、スキャンライン相互間の既知の距離を表す。範囲_1および範囲_2を伝播したときの伝播時間を、前記空間的/時間的な対から遅延1および遅延2として求めることができる。剪断波の速度または伝播時間を求めるために、この遅延情報を使用することができる。
【0042】
ステップ34において、空間的な相違を利用して遅延を計算する。変位を相関づけて、遅延を計算する。発生する可能性のある様々な遅延の範囲を考慮することにより、変位のプロファイルを使用して、同じ計算で複数の異なる位置に関連する遅延を求めることができる。1つの位置については、空間的に異なる複数の変位の最大相関に対応する遅延が計算される。1つの相関を行うというよりも、この最大相関は複数の相関に依存し、たとえば複数の異なる変位対の相関に依存する。剪断波速度または別の剪断波情報は、相関関係を利用して、検出された剪断波との関係に基づいて計算される。たとえばスペックルトラッキングを行うために、相関関係を利用して変位を求める場合、さらなる相関または相関関係の階層化を使用して、変位から剪断波情報を求める。
【0043】
通常の波伝播時間は、以下の関数によって求められる:
【数1】

【0044】
上記式では、τは遅延であり、cは相関性であり、tは時点であり、dは変位であり、m,n,uおよびvは、2次元における空間的座標である。たとえば、これら2つの変位関数は変位曲線または変位プロファイルA′およびB′である。この最大相関は、十分な大きさの信号雑音比を実現し、信号波形の歪みを小さくするのに十分であるが、別の状況では十分でない場合もある。
【0045】
図2において示された異質混合状態の組織領域のような、移行区域で生じる問題を解消するために、空間的な相違が使用される。複数の相関対を使用して遅延を求める。空間的相違および時間的相違を使用して、複数の各ラテラル位置ごとに、剪断波の空間的分布と、剪断波の持続時間とを求めることができる。最大相関を見つけるために、相互相関の群の挙動を使用する。各ラテラル位置yごとに、可能な遅延範囲を使用して、最大相関に関連づけられる遅延を求める。同じ奥行におけるラテラル方向の拡がり全体の相関関数を、2次元行列c(y,τ)として得ることができる。複数の各ラテラル位置における遅延が同時に求められる。複数のスキャンラインにおける同時点の剪断波速度に相当する遅延を、同じ関数の一部として求めることができる。剪断波変位時間特性の少なくとも1つの対で、複数の異なる位置の変位の相関が計算される。対応する位置の遅延の行列を出力するために1つの関数が使用される。
【0046】
変位の時間的応答はd(i,j,t)で表され、指数iは加振位置指数(たとえばスキャンライン)を表し、jはトラッキング位置指数(たとえばスキャンライン)を表す。変位曲線の2対間のパルス遅延d(i,j,t)を検出するために相関を使用する。すなわち、{d(i,i+p,t),d(i,i+q),t)}、{d(i,i+p,t),d(i+p−q,i+p,t)}である。異質混在区域を特定するためには、別の対{d(i,i+q),t),d(i+p−q,i+p,t)}が使用される。図4の例では、一対はA′B′であり、別の一対はA′C′であり、異質混在区域を特定するために使用される対はB′C′である。
【0047】
たとえば、行われるプッシュパルス送信および/または検出を追加する場合には、別の対を使用することができる。空間的に相違する変位対であるか、または時間的に相違する変位対であるか、または空間的および時間的に相違する変位対であれば、どのような変位対でも使用することができる。この計算は、スキャンライン相互間の距離との関係に基づいて行われ、この距離はたとえば、1つの同じスキャンライン上のプッシュパルスに対して複数の異なるスキャンラインにおいて生じた変位を検出することによって得られる。この到達範囲を決定するために、スキャンライン間の範囲が使用される。この到達範囲と遅延とを使用して、剪断波の速度が求められる。
【0048】
一例の関数は、3つの異なる変位対の相関度の和を計算する。1つの同じスキャンライン上の複数の送信によって発生して検出されかつ/または複数の異なる検出スキャンラインで検出された剪断波の相互間の相関が求められる。同じ奥行においてτが連続的に変化し続けると仮定すると、同じ奥行におけるラテラル方向の拡がり全体で得られるτ値は境界線または境界曲線Гτと称され、以下のように定義された費用関数を解くことによって得られる:
【数2】

【0049】
上記式では、
【数3】

【0050】
この曲線は遅延τおよびラテラル位置yの行列として表され、τ(y)は、yにおけるτの1階微分であるか、または2階微分であるか、または3階微分であるか、または別の微分である。α、β、γは重み付けパラメータである。これらの重み付けパラメータは、実数の1.0とするか、または別の数にするか、またはτに依存することができる。任意の範囲の遅延値および任意の数の遅延値を使用することができ、たとえば、考察されている0〜100の単位範囲における可能なτ値は32個である。使用可能な剪断波伝播から得られたすべての情報を組み合わせることにより、各奥行ごとに最大相関係数の曲線が求められる。上記実施形態の代わりの別の実施形態では、使用される対の項または相関を追加することができる。異なる多様性の組み合わせを使用することができる。
【0051】
数式(2)を使用するか、または、複数の相違対の項を含む別の相関関数を使用することにより、弾性率が異なる2つの位置における加振に起因するばらつきを低減することができ、相関項cを導入して(たとえばB′C′の相関)媒質の異質混合状態に適応的に対応することができ、隣接の制約を適用することによって誤差を低減することができる。
【0052】
図4に示されているように、遅延τの推定は、相関関数を計算するのに使用されるデータ対では異なる。対データ{d(i,i+p,t),d(i,i+q),t)}(A′B′相関)が範囲_1における平均遅延時間を推定し、対{d(i,i+p,t),d(i+p−q,i+p,t)}(A′C′相関)が範囲_2における平均遅延時間を推定する。これら2つの推定結果には、共有される範囲がある。複数の隣接するラインの各群の間の高精度の推定結果(τ)は、両端の値が既知である場合、ラテラル方向の拡がり全体においてΓτをアンラッピングすることによって得られる。このラテラル方向全体の拡がりは関心領域全体(たとえば10個のスキャンライン)に及ぶものとすることができ、また、関心領域のサブセットに及ぶものとすることもできる。前記既知の値は、両端に対して僅かに異なる、加振パルスおよび検出パルスのシーケンスによって得られる。撮像視野の両端では、検出C′はCと同じ位置にあり、加振BはトラッキングパルスB′と同じ位置にある。このことにより、推定伝播時間はAからA′までの平均値となる。各ビーム群間の間隔のτ値を解くために、以下の数式が使用される:
【数4】

【0053】
両端におけるシーケンスにより、τおよびτN−1の推定結果が得られる。
【0054】
図5に、数式(4)の中間部分を示す。両端の時点τおよびτN−1において値が既知である場合の遅延τ値をアンラップするための方法は、再帰的解法方程式と称される。与えられたτの低い方から高い方へ順に、以下の式が適用される:
【数5】

【0055】
【数6】

【0056】
a(n)もb(n)もすべて計算することができるので、数式(4)は2つの未知の変数にまで縮小される。この方程式系と、τN−1が既知であるということとから、指数の高い方から低い方へ順に数式(5)を解いて、複数の隣接するビームの各群ごとにτを得ることができる。平行なビームを受け取る場合、同じ方法を使用して個々のτに分解する。たとえば、指数0〜4が付された4つの平行なビームをトラッキングパルスに使用する場合、数式(4)ないし(6)によって、この指数を有する各ビームを求めることができる。指数が付された各ビーム間の距離が異なることを考慮して、数式(4)において重み付けされる係数1/2を変化させている。
【0057】
ステップ34において、遅延およびラテラル位置の関数として剪断波速度を計算する。組織の複数の異なる空間的位置の剪断波速度が求められる。複数の各ラテラル位置ごとの組織中の剪断波速度は、各遅延の関数として計算される。
【0058】
剪断波速度は、伝播時間または遅延(τ)と、スキャンライン間の既知の距離(たとえば範囲)とから求められる。位置までの時間および距離が速度を決定する。この距離はスキャンライン間隔(すなわち、剪断波を発生させるための送信ビーム位置と、該剪断波を検出するための受信ビーム位置との間隔)から分かる。
【0059】
剪断波速度の代わりに、または剪断波速度の他に付加的に、弾性率または剪断波に関する任意の値を推定することができる。組織弾性率値は、その位置における硬さまたはスティフネスを表す。例えば、組織の剪断弾性率が推定される。その代わりに、他の実施形態では、ヤング弾性率が推定される。別の実施形態では、剪断波に関する別の定量的または定性的な値が推定される。
【0060】
上記の剪断弾性率は、g=ρvs2によって得られ、ここでρは密度、vsは剪断波速度の推定値である。1実施形態では、上記の組織弾性率または剪断波情報、例えば剪断弾性率は、ひずみまたは変位と、上記の弾性率または剪断波情報との関数として求められる。例えば、各サンプル位置の剪断弾性率が、拡散方程式を繰り返して解くことによって求められる。0.5のポワソン比を仮定するかまたは既知のポワソン比を使用することにより、特定の剪断弾性率の場合に複数の異なる時点で発生した歪み場の関数として、または、特定の剪断弾性率の場合に複数の異なる位置において異なる応力がかかった場合の歪み場の関数として、複数の異なる位置における剪断弾性率が繰り返して計算される。
【0061】
別のスキャンラインおよび/または別の奥行において上記のステップを繰り返す。たとえば、1つまたは複数の各奥行において、ステップ30,32,34および35を再び行う。これらのステップは、ラテラル方向に離隔された複数の別の位置に対して繰り返すことができる。図4は一例として、シーケンス全体のうち一部を示す。数式(3)を解く際に、複数の異なるラテラル位置ごとに異なる複数の相関が準備される。その代わりに、別の各ラテラル部分を別個に扱い、たとえば4つのスキャンラインの一意の群で扱う。その代わりに、関心領域の別の解法または別の部分に、プッシュパルスと、検出された変位対または変位情報を使用することができる。たとえば1つの解法では、BおよびB′をCおよびC′の対として使用することができる。
【0062】
ステップ36において、画像が形成される。この画像は、前記剪断波速度または別の剪断波情報に依存して組織を表現する。剪断波情報を求める対象である領域は、患者の比較的大きな面積または体積を表す画像中のサブセットまたは関心領域とすることができる。たとえば剪断波速度は、一領域内の画素の色を変調して濃淡Bモード画像を生成する。この画像は、複数の異なる位置における剪断波または弾性率(例えば剪断弾性率)などの変位情報を表現することができる。ディスプレイグリッドは、スキャングリッドおよび/または変位が計算されるグリッドとは異なるものとすることも可能である。色、明るさ、輝度、色相または別の特性を、剪断波情報に依存して変調する。
【0063】
図6に、医療用超音波イメージングにおいて剪断波情報を求めるためのシステム10の一実施形態を示す。システム10により、図1,図2,図4の方法または別の方法が実現される。システム10には、送信ビームフォーマ12と、トランスデューサ14と、受信ビームフォーマ16と、画像処理プロセッサ18と、ディスプレイ20と、記憶装置22とが含まれている。別の構成要素を付け加えてもよいし、上記の構成要素と異なる構成要素を設けることができ、また設けられる構成要素の数を低減してもよい。たとえば、剪断波情報を得る対象である関心領域を手動で指定するか、または該関心領域の指定を支援するために、ユーザ入力部が設けられる。別の例として、組織を治療するために付加的にHIFUトランスデューサ24を設ける。システム10は、医療用超音波診断画像システムである。別の実施形態ではその代わりに、システム10は、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、PACSステーションであるか、または、リアルタイム画像構築または取得後画像構築を行うために同じ場所に配置されるかまたはネットワーク上で分散されて配置される別の構成の装置である。
【0064】
送信ビームフォーマ12は、超音波送信器、記憶装置、パルス発生器、アナログ回路、デジタル回路またはこれらの組み合わせである。送信ビームフォーマ12は複数のチャネルに対して、異なる振幅または相対的な振幅、遅延および/または位相調整で波形を形成する。生成された音波に応答してトランスデューサ14から音波が送信されると、1つまたは複数のビームが形成される。複数の送信ビームが順次形成されて2次元または3次元領域がスキャンされる。セクタ、Vector(登録商標)、線形スキャンフォーマット、または別のスキャンフォーマットを使用することができる。1つの領域が複数回スキャンされる。フローイメージングまたはドップラーイメージングにおいて、また歪みイメージングにおいて、複数のスキャンを順次行う。ドップラーイメージングでは、上述の順次行われる複数のスキャンには、隣のスキャンラインをスキャンする前に同じスキャンラインに沿って生成される複数のビームを含むことができる。剪断波イメージングには任意のスキャンシーケンスを使用することができ、たとえば図3A〜3Cに示されたようなスキャンシーケンスを使用することができる。別のスキャンラインを走査する前に形成される、剪断波発生用の送信ビームを、1つまたは2つまたはそれ以上とすることができ、また、送信ビームをインタリーブすることもできる。たとえば取得の順序は、相関の計算と別個である。記憶装置が、相関を行うために変位情報を得るためのデータを記憶する。別の実施形態ではその代わりに、より高速のスキャンを実現するために送信ビームフォーマ12が平面波または発散波を生成する。
【0065】
トランスデューサ14は、圧電ダイアフラム素子または容量性ダイアフラム素子の1次元、1.25次元、1.5次元、1.75次元または2次元のアレイである。トランスデューサ14には、音響エネルギーを電気エネルギーに変換し電気エネルギーを音響エネルギーに変換するための複数の素子が含まれている。たとえばトランスデューサ14は、PZT素子の2次元アレイである(たとえば3,000個のPZT素子)。受信信号は、トランスデューサ14の素子に衝突する超音波エネルギー(エコー)に応答して生成される。これらの素子は、送信ビームフォーマ12および受信ビームフォーマ16のチャネルに接続される。
【0066】
受信ビームフォーマ16には、増幅器、遅延要素および/または位相回転器および1つまたは複数の加算器を有する複数のチャネルが含まれている。各チャネルは、1つまたは複数のトランスデューサ素子に接続される。受信ビームフォーマ16は、相対遅延量、位相および/またはアポダイゼーション量に基づき、検出のための各送信ごとに応じて1つまたは複数の受信ビームを形成する。受信ビームフォーマ16は、上記の受信音響信号を使用して空間位置を表すデータを出力する。複数の異なる素子からの信号の相対的な遅延および/または位相調整および加算により、ビーム成形が行われる。別の実施形態ではその代わりに、受信ビームフォーマ16は、フーリエ変換または別の変換を用いてサンプルを形成するプロセッサである。
【0067】
受信ビームフォーマ16は、フィルタを含むことができ、送信周波数帯域に対する2次高調波または別の周波数帯域における情報を分離するフィルタなどを含むことができる。このような周波数の情報の方が、所望の組織情報、造影剤情報および/または流れ情報を含んでいる確率が高い。別の実施形態では受信ビームフォーマ16にメモリまたはバッファと、フィルタまたは加算器とが含まれる。所望の周波数帯域の情報を分離するためには、たとえば2次高調波、3次基本波または別の帯域を分離するためには、2つ以上の受信ビームを組み合わせる。
【0068】
受信ビームフォーマ16は、複数の空間位置を表すビームを加算したデータを出力する。1つの位置、線に沿った複数の位置、面積における複数の位置または体積における複数の位置に対応するデータが出力される。動的な集束を行うことも可能である。これらのデータの目的は異なっていてもよい。例えば、Bモードデータや組織データを得るためには、剪断波検出を行う場合と異なるスキャンが行われる。択一的には上記のBモードデータは、剪断波によって引き起こされた変位を求めるためにも使用される。
【0069】
プロセッサ18は、Bモード検出器、ドップラ検出器、パルス波ドップラ検出器、相関プロセッサ、フーリエ変換プロセッサ、特定用途向け集積回路、汎用プロセッサ、制御プロセッサ、画像処理プロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ、デジタル信号処理プロセッサ、アナログ回路、デジタル回路またはこれらの組み合わせ、あるいはビーム成形された超音波サンプルからディスプレイ用の情報を検出および処理して表示する現在公知の別の装置または将来開発される装置である。
【0070】
1実施形態では、プロセッサ18には1つまたは複数の検出器と、別体のプロセッサとが含まれている。この別体のプロセッサは、制御プロセッサ、汎用プロセッサ、デジタル信号処理プロセッサ、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ、ネットワーク、サーバ、プロセッサ群、データパス、それらの組み合わせ、または変位を検出して組織特性を計算するための現在公知の別の装置または将来開発される装置である。例えば、上記の別体のプロセッサにより、図1に示したステップのうちの1つまたは複数の任意の組み合わせが実行される。プロセッサ18は、上記ステップを実施するためのソフトウェアおよび/またはハードウェアによって構築される。
【0071】
1つの実施形態ではプロセッサ18は、受信ビームフォーマ16からの出力データの関数として組織変位を推定する。この組織変位は、時間に依存する変位の大きさのプロファイルとして推定されるか、または、時間に依存する変位の大きさの曲線を表すデータとして推定される。前記変位プロファイルは、参照データと、剪断波が通過する間に得られたデータとの相関によって得られるか、または両データの類似度を別の手法で求めることによって得られる。プロセッサ18は、複数の位置から得られた変位情報を使用し、前記空間的位置のうち複数の異なる空間的位置の組織変位の少なくとも一対の相関係数が求められる。伝播時間を求めるためには、複数の異なる対から求められた相関係数が使用される。複数の異なる空間的位置の伝播時間、たとえば、同じ入力によって方程式から得られた出力である、複数の異なる空間的位置の伝播時間が、同時に求められる。複数の異なる空間的位置の伝播時間は、前記空間的位置のうち複数の異なる空間的位置から得られたデータを使用して関数から求められた出力セットの形で得られる。前記出力セットの各値は、複数の空間的位置の組織変位に依存する。この複数の空間的位置には、伝播時間の計算が行われる対象である距離に含まれない空間的位置も含まれる。前記空間的位置のうち複数の異なる空間的位置の変位が、所与の伝播時間を求めるのに使用することができる。たとえば、複数の異なる位置で送信が行われることによって1つの同じ位置で引き起こされた組織変位の一対の相関係数と、1つの同じ位置で送信が行われることによって複数の異なる位置において引き起こされた組織変位の一対の相関係数と、別の複数の異なる位置において送信が行われることによって複数の異なる位置で引き起こされた組織変位の一対の相関係数の、合計3対の相関係数を計算する。
【0072】
プロセッサ18は、前記伝播時間から剪断波速度を計算する。別の剪断波情報を求めることもできる。特定のスキャンラインの遅延が求められ、該遅延と、該当の距離または範囲とから、剪断波速度が計算される。
【0073】
プロセッサ18は、上記の組織特性から、ディスプレイ20にマッピングされた画像または表示値を生成して出力する。例えば各位置ごとに、剪断波速度、剪断弾性率または別の値が求められる。上記の値の大きさにより、色、色相、輝度および/または別の表示特性が変調される。プロセッサ18は画素値(たとえばRGB)を決定するか、または画素値に変換されるスカラ値を決定する。画像はスカラ値または画素値として生成される。画像をビデオプロセッサ、ルックアップテーブル、カラーマップへ出力するか、またはディスプレイ20へ直接出力することができる。
【0074】
プロセッサ18は、記憶装置22または別の記憶装置に記憶されている命令にしたがって動作する。プロセッサ18は、医療用超音波イメージングにおいて剪断波情報を求めるためにプログラミングされている。記憶装置22は、不揮発性のコンピュータ読み出し可能記憶媒体である。本明細書において説明した処理、方法および/または技術を実現するための命令は、コンピュータ読み出し可能記憶媒体または記憶装置、例えば、キャッシュ、バッファ、RAM、リムーバル媒体、ハードディスクドライブまたは別のコンピュータ読み出し可能記憶媒体に記憶される。コンピュータで読み出し可能な記憶媒体には、種々のタイプの揮発性および非揮発性記憶媒体が含まれる。図面または本明細書において説明した機能、動作またはタスクは、コンピュータ読み出し可能記憶媒体に記憶されている1つまたは複数の命令セットに応答して実行される。この機能、ステップまたはタスクは、命令セット、記憶媒体、プロセッサまたは処理ストラテジなどの特定のタイプに依存することがなく、ソフトウェア、ハードウェア、集積回路、ファームウェア、マイクロコードその他などを単独または組み合わせて用いて実行される。同様に処理ストラテジーは、マルチプロセシング、マルチタスク処理、並列処理などを含んでいてもよい。1つの実施形態において、命令はローカルシステムまたはリモートシステムによって読み出せるように、リムーバブル記憶媒体装置に記憶されている。別の実施形態では、命令はコンピュータネットワークまたは電話回線を介して転送するために、遠隔地に記憶されている。さらに別の実施形態では、命令は所定のコンピュータ、CPU、GPUまたはシステム内に記憶されている。
【0075】
ディスプレイ20は、2次元画像または3次元表現を表示するCRT,LCD,プロジェクタ、プラズマディスプレイまたは別のディスプレイである。ディスプレイ20は、剪断波速度等の剪断波情報を表現する1つまたは複数の画像を表示する。
【0076】
これまで本発明を複数の実施形態に基づいて説明してきたが、本発明の趣旨から逸脱することなく種々の変更を加えることが可能であるものと理解されたい。したがって上記における詳細な説明は制限を意図しているもののではなく説明を意図しているものであり、本発明の精神および範囲を定めるのは、全ての同等のものを含む添付の特許請求の範囲であると解される。
【符号の説明】
【0077】
Seq1,Seq2,Seq3 加振信号の送信シーケンス
10 本発明のシステム
12 送信ビームフォーマ
14 トランスデューサ
16 受信ビームフォーマ
18 画像処理プロセッサ
20 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用超音波イメージングにおいて剪断波情報を求めるために、プログラミングされたプロセッサ(18)によって実行可能な命令を表すデータを記憶した、不揮発性のコンピュータ読出し可能な記憶媒体(22)であって、
前記記憶媒体(22)は、
・第1のスキャンライン上で送信された第1の音波に応答して第1の剪断波によって引き起こされた、時間に依存する組織の第1の変位を検出し(32)、ただし該第1の変位は、該第1のスキャンラインから少なくとも第2のスキャンラインおよび第3のスキャンラインの分だけ離隔している第4のスキャンライン上に位置し、
・前記第3のスキャンライン上で送信された第2の音波に応答して第2の剪断波によって引き起こされた、時間に依存する組織の第2の変位を検出し(32)、ただし、該第2の変位は前記第4のスキャンライン上に位置し、
・前記第1のスキャンライン上で送信された第3の音波に応答して第3の剪断波によって引き起こされた、時間に依存する組織の第3の変位を検出し(32)、ただし、前記第2の変位は前記第2のスキャンライン上に位置し、
・複数の各ラテラル位置ごとに、
前記第1の変位と前記第2の変位との最大相関に相当する遅延と、
該第1の変位と前記第3の変位との最大相関に相当する遅延と、
該第2の変位と該第3の変位との最大相関に相当する遅延と
を計算し(34)、
・前記各遅延の関数として、前記複数の各ラテラル位置ごとの組織中の剪断波速度を計算する(35)
ための命令を含むことを特徴とする、記憶媒体。
【請求項2】
時間に依存する前記第1の変位、前記第2の変位、および前記第3の変位を求める際に(32)、所定の時間にわたって組織の動きの大きさをトラッキングする、請求項1記載の記憶媒体。
【請求項3】
前記第1のスキャンライン、前記第2のスキャンライン、前記第3のスキャンライン、および前記第4のスキャンラインは、相互に隣接するスキャンラインである、請求項1記載の記憶媒体。
【請求項4】
前記最大相関に相当する遅延を計算する際に(34)、前記複数のラテラル位置と複数の可能性のある遅延とに依存して該遅延を計算する、請求項1記載の1記載の記憶媒体。
【請求項5】
前記最大相関に相当する遅延を計算する際に(34)、前記第1の変位と前記第2の変位との相関と、該第1の変位と前記第3の変位との相関と、該第2の変位と該第3の変位との相関との和を計算する(34)、請求項1記載の記憶媒体。
【請求項6】
前記剪断波速度を計算する際に(35)、前記遅延および前記ラテラル位置の関数として該剪断波速度を計算する(35)、請求項1記載の記憶媒体。
【請求項7】
前記遅延を計算する際に(34)、前記スキャンラインのうち複数のスキャンラインを同時に求める、請求項1記載の記憶媒体。
【請求項8】
別のスキャンラインおよび別の奥行において、前記変位の検出(32)と前記遅延の計算(34)とを繰り返す、請求項1記載の記憶媒体。
【請求項9】
直ぐ隣のスキャンライン上で連続して送信を行うのを回避するように、前記第1の音波と前記第2の音波と前記第3の音波とを送信する(30)、請求項1記載の記憶媒体。
【請求項10】
医療用超音波イメージングにおいて剪断波情報を求めるための方法であって、
前記方法は、
・複数の異なる位置において行われた送信によって組織の同一位置において引き起こされた第1の剪断波を検出するステップ(32)と、
・同一の位置において行われた複数の送信によって組織の複数の異なる位置において引き起こされた第2の剪断波を検出するステップ(32)と、
・前記第1の剪断波および前記第2の剪断波の関数として剪断波速度を計算するステップ(35)と、
・前記剪断波速度に依存して前記組織を表現する画像を生成するステップ(36)と
を有することを特徴とする方法。
【請求項11】
前記第1の剪断波および前記第2の剪断波を検出するステップ(32)は、前記送信によって引き起こされた変位の検出を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記剪断波速度を計算するステップ(35)では、前記複数の異なる位置の変位の相関を求めることにより、複数の各ラテラル位置の剪断波速度を計算する(35)、請求項11記載の方法。
【請求項13】
スキャンライン全体において前記送信を空間的にインターリーブし、
前記計算(34)は、前記剪断波の空間的分布と、複数の各ラテラル位置ごとの該剪断波の持続時間とを含む、請求項10記載の方法。
【請求項14】
スキャンライン全体において前記送信を空間的にインターリーブし、
前記計算(34)は、前記剪断波の空間的分布と、複数の各ラテラル位置ごとの該剪断波の持続時間とを含む、請求項10記載の方法。
【請求項15】
スキャンライン全体において前記送信を空間的にインターリーブし、
前記計算(34)は、前記剪断波の空間的分布と、複数の各ラテラル位置ごとの該剪断波の持続時間とを含む、請求項10記載の方法。
【請求項16】
医療用超音波イメージングにおいて剪断波情報を求めるためのシステムであって、
前記システムは、
・受信された音響信号に依存して空間的位置を表すデータを出力するように構成された受信ビームフォーマ(16)と、
・前記受信ビームフォーマ(16)によって出力されたデータの関数として組織変位を推定し、前記空間的位置のうち複数の異なる空間的位置の組織変位の少なくとも一対の相関係数を計算し、該相関係数に基づいて伝播時間を求め、該伝播時間の関数として画像を生成するように構成された、プロセッサ(18)と、
・前記画像を表示するように構成されたディスプレイ(20)と
を有することを特徴とする、システム。
【請求項17】
前記プロセッサ(18)は、前記空間的位置のうち複数の異なる空間的位置を同時に求めるように構成されている、請求項16記載のシステム。
【請求項18】
前記プロセッサ(18)は、前記空間的位置のうち複数の異なる空間的位置からのデータを使用して関数から求められた出力セットを使用して、該複数の異なる空間的位置を求めるように構成されており、
前記出力セットの各値は、前記複数の異なる空間的位置の組織変位に依存する、請求項17記載のシステム。
【請求項19】
前記プロセッサ(18)は、複数の異なる位置で送信が行われることによって組織の1つの同じ位置で引き起こされた変位の一対の相関係数と、1つの同じ位置で送信が行われることによって組織の複数の異なる位置において引き起こされた変位の一対の相関係数と、別の複数の異なる位置において送信が行われることによって組織の複数の異なる位置で引き起こされた変位の一対の相関係数とである、3対の変位の相関係数を計算するように構成されている、請求項16記載のシステム。
【請求項20】
前記プロセッサ(18)は、前記伝播時間から剪断波速度を計算し、該剪断波速度を表すように前記画像を生成するように構成されている、請求項16記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−81269(P2012−81269A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−221803(P2011−221803)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(593063105)シーメンス メディカル ソリューションズ ユーエスエー インコーポレイテッド (156)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Medical Solutions USA,Inc.
【住所又は居所原語表記】51 Valley Stream Parkway,Malvern,PA 19355−1406,U.S.A.
【Fターム(参考)】