説明

医療用針、挿入治具及び医療用針の製造方法

【課題】シャッタとして機能する弾性部材の組込を容易に行うことができる医療用針、医療用針の製造に用いる挿入治具及び医療用針の製造方法を提供する。
【解決手段】医療用針10は、針体12と、プロテクタ20とを備える。プロテクタ20は、針体12が挿通可能なプロテクタ本体29と、プロテクタ本体29の側孔32内に配置された弾性部材64と、側孔32を覆うカバー部材62とを有する。プロテクタ本体29に対してカバー部材62を所定位置に位置決めした状態で弾性部材64を側孔32に挿入し、その後カバー部材62を基端方向にスライドさせることにより、カバー部材62がプロテクタ本体29に装着されるとともに、弾性部材64が側孔32内に組み込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採血、輸血、輸液等に用いられる医療用針、医療用針の製造に用いる挿入治具及び医療用針の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
採血、輸血、輸液等において、血液バッグ、血液処理回路(成分採血回路、血液透析回路等)の採血器具、輸血セット、輸液セット等に接続して使用する医療用針が知られている。このような医療用針は、一般に、先端に鋭利な針先を有する針体と、この針体の基端に設けられたハブとから構成される。使用後の医療用針を廃棄する場合には、廃棄作業者が不用意に針体に触れることを防止するために、針体を覆う必要がある。そのため、従来では、使用後の針体を覆うことができるプロテクタを備えた医療用針が提案されている(例えば、下記特許文献1、2参照)。
【0003】
また、使用後の針体を覆うプロテクタを備えた医療用針において、プロテクタが、側孔を有する筒状のプロテクタ本体と、このプロテクタ本体の側孔内に配置された弾性部材とを備え、針体に対してプロテクタ本体を先端方向に所定位置まで移動させたときに、弾性部材が伸長して、針体がプロテクタ本体から再び突出することを阻止するように構成されたものがある(例えば、下記特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3245843号公報
【特許文献2】特開平3−191965号公報
【特許文献1】特許第3148238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した用途に用いられる医療用針は、通常、小さいものであり、プロテクタ本体に配置される弾性部材は相当に小さい部品である。このため、医療用針の製造工程において、プロテクタ本体に弾性部材を組み込むことが容易ではなく、また、そのような工程を自動化することも難しい。
【0006】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、シャッタとして機能する弾性部材の組込を容易に行うことができる医療用針、医療用針の製造に用いる挿入治具及び医療用針の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明に係る医療用針は、先端に針先を有する針体と、針体に対して相対的に先端方向に移動して少なくとも前記針先を覆うことが可能なプロテクタと、を備え、前記プロテクタは、前記針体を挿通可能な針体通路と、前記針体通路に臨む側孔とが設けられ、筒状体で構成されたプロテクタ本体と、前記プロテクタ本体に装着されたカバー部材と、前記針体と前記カバー部材との間で前記側孔内に収縮状態で収納された第1の状態と、前記針体通路の一部を塞ぎ前記針体の前記プロテクタ本体からの突出を阻止可能な第2の状態とに変形可能な弾性部材と、を有し、前記カバー部材は、前記プロテクタ本体に対して、前記側孔を露出させる第1の位置から、前記側孔を覆う第2の位置に移動させられることにより前記プロテクタ本体に装着されたものであることを特徴とする。
【0008】
上記のように構成された医療用針によれば、プロテクタ本体に対してカバー部材を第1の位置に位置決めした状態で弾性部材を側孔に挿入し、その後カバー部材を第2の位置に移動させることにより、カバー部材がプロテクタ本体に装着されるとともに、弾性部材が側孔内に組み込まれる。よって、弾性部材を側孔に組み込む工程を容易に実施することができる。また、このような工程は、自動組立装置による医療用針の組立に適しており、自動組立装置による量産化を図ることが可能となる。
【0009】
上記の医療用針において、前記カバー部材の胴部には、前記第1の位置で前記側孔を露出させる開口部が設けられるとよい。弾性部材を挿入する際に用いる挿入治具をカバー部材の開口部に嵌合させることにより、当該挿入治具を精度よく且つ容易に位置決めすることができ、組立作業を効率化できる。
【0010】
上記の医療用針において、前記医療用針は、前記プロテクタ本体として構成されたウイング軸部と、前記ウイング軸部から互いに反対方向に突出した一対のウイングと、を有する翼状針として構成され、前記ウイングの各々には、前記ウイングが畳まれた際に前記開口部に嵌合可能な突起が設けられるとよい。この構成により、ウイングを柔軟に構成した場合でも、ウイングを畳んだ際にウイングをウイング軸部に対して安定的に位置決めし、穿刺時における針先の安定性を高めることができる。
【0011】
また、本発明は、針体を有する医療用針の製造に用いる挿入治具であって、前記医療用針は、先端に針先を有する針体と、針体に対して先端方向に移動して少なくとも前記針先を覆うことが可能なプロテクタと、を備え、前記プロテクタは、前記針体を挿通可能な針体通路と、前記針体通路に臨む側孔とが設けられ、筒状体で構成されたプロテクタ本体と、前記プロテクタ本体に装着されたカバー部材と、前記針体と前記カバー部材との間で前記側孔内に収縮状態で収納された第1の状態と、前記針体通路の一部を塞ぎ前記針体の前記プロテクタ本体からの突出を阻止可能な第2の状態とに変形可能な弾性部材と、を有し、前記カバー部材は、前記プロテクタ本体に対して、前記側孔を露出させる第1の位置から、前記側孔を覆う第2の位置に移動させられることにより前記プロテクタ本体に装着されたものであり、前記挿入治具は、前記弾性部材が挿通可能であり両端が開口した保持孔を有する治具本体と、前記保持孔に挿入可能であり、前記弾性部材を押圧して前記保持孔から放出させるプッシャと、を備えることを特徴とする。
【0012】
上記のように構成された挿入治具を用い、カバー部材がプロテクタ本体に対して第1の位置にある状態で、保持孔に弾性部材を保持させた挿入治具を所定位置に位置決めし、プッシャの押圧作用下に、弾性部材を側孔側に押し出して側孔内で圧縮し、その後、カバー部材を第2の位置に変位させることにより、弾性部材の側孔への挿入、弾性部材の圧縮、側孔の閉塞を迅速且つ確実に行うことができる。
【0013】
上記の挿入治具において、前記カバー部材の胴部には、前記第1の位置で前記側孔を露出させる開口部が設けられ、前記治具本体は、前記開口部に嵌合可能であり且つ前記保持孔の一端が開口する嵌合部を有するとよい。開口部に治具本体の嵌合部を嵌合させることで、挿入治具を、精度よく且つ容易に位置決めすることができ、組立作業を効率化できる。
【0014】
また、本発明は、先端に針先を有する前記針体と、針体に対して先端方向に移動して少なくとも前記針先を覆うことが可能なプロテクタとを備えた医療用針の製造方法であって、前記針体を挿通可能な針体通路と前記針体通路に臨む側孔とを有するプロテクタ本体に対して、カバー部材を第1の位置に位置決めする工程と、前記第1の位置に位置決めされた前記カバー部材及び前記プロテクタ本体に対して、治具本体とプッシャとを有する挿入治具を位置決めし、前記治具本体に設けられた保持孔を、前記プロテクタ本体に設けられた前記側孔に臨ませる治具配置工程と、前記プッシャの押圧作用下に、前記保持孔に収納された弾性部材を前記側孔に押し出して前記側孔内で圧縮させる圧縮工程と、前記プロテクタ本体に対して前記カバー部材及び前記挿入治具を前記第1の位置から第2の位置へと相対的に変位させることにより、前記カバー部材で前記側孔を覆う変位工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
このような製造方法により、プロテクタ本体に設けられた側孔に弾性部材を組み込む工程を容易に実施することができる。また、このような工程は、自動組立装置による医療用針の組立に適しており、自動組立装置による量産化の促進を図ることが可能となる。
【0016】
上記の医療用針の製造方法において、前記治具配置工程では、前記カバー部材に設けられた開口部に、前記治具本体に設けられた嵌合部を嵌合させることにより、前記カバー部材及び前記プロテクタ本体に対して前記挿入治具を位置決めするとよい。開口部に治具本体の嵌合部を嵌合させることで、挿入治具を、精度よく且つ容易に位置決めすることができ、組立作業を効率化できる。
【0017】
上記の医療用針の製造方法において、前記変位工程では、前記プロテクタ本体に対して、前記カバー部材及び前記挿入治具を前記プロテクタ本体の軸線方向に相対的に変位させるとよい。カバー部材をプロテクタ本体に対して軸線方向に移動させる際に、プロテクタ本体をガイドとしてスムーズ且つ安定して移動させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、医療用針の製造工程において、弾性部材をプロテクタ本体の側孔に挿入し保持させる工程を容易に実施することができる。また、自動組立装置による医療用針の量産化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る医療用針の全体斜視図である。
【図2】図1に示した医療用針の分解斜視図である。
【図3】図3Aは、初期状態における医療用針の軸線方向に沿った一部省略縦断面図であり、図3Bは、針体をプロテクタで覆った状態における医療用針の軸線方向に沿った一部省略縦断面図である。
【図4】図4Aは、カバー部材の上面側からの斜視図であり、図4Bは、カバー部材の下面側からの斜視図である。
【図5】図5Aは、挿入治具の斜視図であり、図5Bは、図5AにおけるVB−VB線に沿った断面図であり、図5Cは、図5AにおけるVC−VC線に沿った断面図である。
【図6】図6Aは、弾性部材の組込方法を説明する第1の図であり、図6Bは、弾性部材の組込方法を説明する第2の図であり、図6Cは、弾性部材の組込方法を説明する第3の図であり、図6Dは、弾性部材の組込方法を説明する第4の図である。
【図7】図7Aは、弾性部材の組込方法を説明する第5の図であり、図7Bは、弾性部材の組込方法を説明する第6の図であり、図7Cは、弾性部材の組込方法を説明する第7の図である。
【図8】変形例に係る医療用針の全体斜視図である。
【図9】図8に示した医療用針の翼を畳んだ状態を示す一部省略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る医療用針について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る医療用針10の構成を示す全体斜視図である。図2は、当該医療用針10の分解斜視図である。図3Aは、初期状態における医療用針10の軸線方向に沿った一部省略縦断面図であり、図3Bは、針体12をプロテクタ20で覆った状態における医療用針10の軸線方向に沿った一部省略縦断面図である。
【0022】
本実施形態において、医療用針10は、採血、輸血、輸液等に際し、患者の皮膚に穿刺した状態で固定して使用される翼状針として構成されている。なお、本発明は、翼状針に限らず、他の種類の医療用針、例えば、持続的な点滴静注を行う際に用いられる留置針等にも適用可能である。
【0023】
翼状針として構成された医療用針10は、針体12と、翼部材14と、伸縮部材16と、ハブ18と、プロテクタ20とを備える。
【0024】
針体12は、採血、輸血、輸液等の処置を受ける患者の皮膚に穿刺される部分であり、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金、チタン又はチタン合金のような金属材料で構成され、その先端部には、鋭利な針先12aが形成されている。この針体12は、血液等の体液或いは輸液等の流路となる中空部を有する円管状に構成されている。針体12の先端部には、液体の出入口として機能する開口12bが形成されている。
【0025】
医療用針10の使用前において、医療用針10にはキャップ22が装着されている。このキャップ22は、その内部に針体12を収納可能な中空筒状に構成され、基端側において翼部材14の先端側と嵌合することで、針体12を覆った状態で医療用針10に装着可能に構成されている。医療用針10を使用する際は、キャップ22を先端方向に引っ張ることで、翼部材14から離脱し、針体12を露出させることができる。
【0026】
図2に示すように、翼部材14は、中空状のウイング軸部28と、このウイング軸部28から左右にそれぞれ突出する一対のウイング26a、26bとを有する。図3Aに示すように、ウイング軸部28は、針体12を挿通可能な針体通路30と、この針体通路30に臨む側孔32、34とが設けられ、筒状体で構成されている。このウイング軸部28は、針体12に対して相対的に先端方向に移動した際に少なくとも針体12の針先12aを覆うプロテクタ本体29として構成されている。
【0027】
針体通路30は、ウイング軸部28の軸線に沿って貫通形成されている。側孔32、34は、ウイング軸部28の先端寄りの箇所に配設され、ウイング軸部28の内外面間を当該ウイング軸部28の半径方向に貫通している。2つの側孔32、34は、針体通路30を挟んで対向して配設されている。
【0028】
また、ウイング軸部28は、その先端部を構成する先端縮径部36と、その基端部を構成する基端拡径部38と、先端縮径部36と基端拡径部38との間を構成する中間部40とを有する。中間部40の外径は、先端縮径部36のそれよりも大きい。基端拡径部38の外径は、中間部40のそれよりも大きい。基端拡径部38の内径は、中間部40の内径よりも大きく、基端拡径部38の内周部には、内方に突出する複数(図示例では2つ)の突起41が周方向に間隔をおいて設けられている。なお、突起41は1つでもよい。
【0029】
図2に示すように、ウイング26a、26bは、根元部においてウイング軸部28と結合し、根元部から外端に向かって幅広になる板状に形成されている。ウイング26a、26bは、可撓性を有し、根元部付近が屈曲又は湾曲することにより、開閉可能に構成されている。ウイング26a、26bの根元部付近には、開閉を容易にするため、ウイング軸部28の軸線方向に沿った薄肉部46a、46bが形成されている。
【0030】
一方のウイング26aの上面には、複数(図示例では2つ)の凸部42が設けられ、他方のウイング26bの上面には、凸部42と同数の複数(図示例で2つ)の凹部44が設けられており、一対のウイング26a、26bが閉じられた(畳まれた)際に、凸部42と凹部44とが嵌合するようになっている。凸部42と凹部44は、それぞれ1つずつ設けられてもよい。
【0031】
図示例のウイング軸部28とウイング26a、26bとは、一体的に形成されているが、ウイング軸部28とウイング26a、26bとを別々に形成し、それらを結合して翼部材14としてもよい。ウイング軸部28とウイング26a、26bの構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)等が挙げられる。
【0032】
上述したように、ウイング26a、26bは、根元部が屈曲して開閉可能な構成とすべく、適度の可撓性を有することが好ましい。一方、ウイング軸部28は、ウイング26a、26bを支持するハブとして機能する部分であるため、使用時に撓まない程度の適度の剛性を有することが望ましい。このため、ウイング軸部28は剛性の高い材料で構成し、ウイング26a、26bは適度の可撓性を有する材料で構成するとよい。ウイング軸部28とウイング26a、26bとが一体的に形成された翼部材14は、例えば、比較的剛性の高い樹脂材料と、比較的剛性の低い樹脂材料を用いた二色成型により製作できる。
【0033】
針体12を生体に対し穿刺する際には、ウイング26a、26bを指で摘んで閉じた(畳んだ)状態とし、穿刺の操作を行う。また、針体12を留置する際には、ウイング26a、26bを開いた状態とし、ウイング26a、26bを粘着テープ等により皮膚に固定する。
【0034】
伸縮部材16は、ウイング軸部28とハブ18との間で伸縮自在な部材であり、図示例では蛇腹部材により構成されている。伸縮部材16は、先端側でウイング軸部28に固定され、基端側でハブ18に固定されている。具体的には、伸縮部材16は、蛇腹部48と、当該蛇腹部48の先端側に設けられた先端筒部50と、当該蛇腹部48の基端側に設けられた基端筒部52とを有している。先端筒部50は、ウイング軸部28の基端拡径部38に外嵌して固定されている。基端筒部52は、ハブ18の、後述するハブ軸部54に外嵌して固定されている。伸縮部材16の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、上述した翼部材14の構成材料として例示したものから選択した一種以上の材料を採用し得る。
【0035】
ハブ18は、医療用針10の基端部を構成する部分であり、当該ハブ18は、ハブ軸部54と、ハブ軸部54の少なくとも一部を覆うハブカバー56とを有する。ハブ軸部54は、中空状であり、針体12の基端が挿入され固定されている。ハブ軸部54の中空部は、針体12の中空部と連通している。ハブ軸部54の基端部は、輸液バッグ、血液バッグ等に連結された図示しないチューブを接続できるように構成されている。ハブカバー56は、ハブ軸部54及び伸縮部材16の軸方向の一部について、両側方及び上方を覆うように構成されている。
【0036】
図2及び図3Aに示すように、ハブ軸部54の先端寄りの外周部には、ウイング軸部28の基端拡径部38の内周部に形成された突起41と係合可能な複数の凹部60が設けられている。図3Aに示す初期状態(翼部材14が針体12に対して後退位置にあり、針体12がウイング軸部28から突出した状態)において、突起41と凹部60とは係合しており、翼部材14を針体12に対して先端方向に移動させようとする力が所定未満の場合には、翼部材14が針体12に対して先端方向に移動することが阻止される。一方、翼部材14を針体12に対して先端方向に移動させようとする力が所定以上となった場合、突起41と凹部60との係合が解除され、翼部材14が針体12に対して先端方向に変位可能となる。ハブ18の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、上述した翼部材14の構成材料として例示したものから選択した一種以上の材料を採用し得る。
【0037】
プロテクタ20は、針体12に対して相対的に先端方向に移動して少なくとも針体12の針先12aを覆うことが可能であるように構成されている。図2、図3A及び図3Bに示すように、本実施形態において、プロテクタ20は、上述したウイング軸部28として構成されたプロテクタ本体29と、プロテクタ本体29に装着されたカバー部材62と、プロテクタ本体29の側孔32に収納された弾性部材64とを有する。
【0038】
図4Aは、カバー部材62の上面側からの斜視図であり、図4Bは、カバー部材62の下面側からの斜視図である。図4A及び図4Bに示すように、カバー部材62は、筒状(円筒状)の先端筒部66と、先端筒部66の基端側に連設された胴部68と、胴部68の基端側に連設された基端構成部70とを有する。胴部68は、全体として横断面円弧形状(C字形状)に形成されるとともに、その上部には、開口部72が設けられ、その下部には、軸線に沿って延在する第1切欠部74aが設けられている。
【0039】
図示例では、開口部72は、カバー部材62の先端寄りの箇所(胴部68の先端部)に設けられている。図3Aに示すように、プロテクタ本体29にカバー部材62が装着された状態(組立状態)において、カバー部材62の開口部72は、プロテクタ本体29に設けられた側孔32に対して軸線方向にずれた位置、具体的には、側孔32よりもプロテクタ本体29の基端側の位置にあり、カバー部材62の先端筒部66により側孔32、34が閉じられている。
【0040】
基端構成部70は、軸線方向の長さが胴部68よりも短く、横断面円弧形状(C字形状)に形成されるとともに、その下部には、軸線に沿って延在し且つ第1切欠部74aに連なる第2切欠部74bが設けられている。第2切欠部74bの開口幅W2は、第1切欠部74aの開口幅W1よりも狭い。
【0041】
弾性部材64は、プロテクタ本体29が針体12に対して先端方向に移動して収納位置(図3Bに示す位置)にきたときに、針体12のプロテクタ本体29からの突出を阻止するためのシャッタとして機能する部材であり、図示例では、コイルバネにより構成されている。図3Aに示すように、医療用針10の初期状態において、弾性部材64は、針体12とカバー部材62との間に、プロテクタ本体29に形成された側孔32内に収縮状態で収納(配置)されている。すなわち、図3Aに示す初期状態では、弾性部材64は、カバー部材62と針体12とによって挟まれて、弾性圧縮変形した状態で側孔32内に配置されている。以下、図3Aに示す弾性部材64の状態を「第1の状態」と呼ぶ。
【0042】
自然状態における弾性部材64の全長は、プロテクタ本体29の弾性部材64が配置された部分の外径と略同じか、それよりも大きい。なお、弾性部材64について「自然状態」とは、弾性部材64に対して何らの外力も付与されておらず、弾性変形していない状態をいう。
【0043】
プロテクタ本体29が針体12に対して先端方向に移動させられ、図3Bに示す収納位置に来ると、弾性部材64は、針体通路30に進出して針体通路30の一部を塞ぐ。具体的には、弾性部材64は、針体12の外周面による係止から開放されることにより、自らの弾発力により伸張し、針体12に当接していた端部が、反対側の側孔34に挿入される。これにより、弾性部材64は、一方の側孔32と他方の側孔34との間に架橋された状態で、針体通路30の一部を塞ぐ。以下、図3Bに示す弾性部材64の状態を「第2の状態」と呼ぶ。
【0044】
このように、弾性部材64は、針体12とカバー部材62との間で側孔32内に収縮状態で収納された第1の状態と、針体通路30の一部を塞ぎ針体12のプロテクタ本体29からの突出を阻止可能な第2の状態とに変形し得るように構成されている。
【0045】
弾性部材64がコイルバネにより構成される場合、当該コイルバネを構成する線材の線径を、針体12と針体通路30との間のクリアランスよりも大きく設定すると、針体12が先端側へ移動しようとしても、針体12がコイルバネに引っ掛かるため、針の先端側への移動を確実に阻止することができる。或いは、針体12の外径よりもコイルバネの外径を小さくしても、針体12の先端側への移動を確実に阻止することができる。
【0046】
弾性部材64がコイルバネにより構成される場合、その構成材料としては、上記の機能を達成できるものであれば特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、銅、銅系合金、タンタル、コバルト合金等が挙げられる。
【0047】
再び、図1を参照する。上記のように構成された医療用針10を用いて採血、輸血、輸液等を行うには、先ず、医療用針10からキャップ22を取り外し、針体12を露出させる。次に、一対のウイング26a、26bを指で摘んで閉じた(畳んだ)状態とする。具体的には、両ウイング26a、26bの根元部を屈曲させて一方のウイング26a、26bと他方のウイング26a、26bを重ね合わせるようにして閉じる。このとき、一方のウイング26a、26bに設けられた凸部42と他方のウイング26a、26bに設けられた凹部44とが嵌合し、互いのずれが防止される。
【0048】
ウイング26a、26bを閉じた状態としたら、次に、閉じられたウイング26a、26bを指で摘んで保持しつつ、針体12を生体に対して穿刺する。針体12を生体に対して穿刺した状態で留置する際には、ウイング26a、26bを開いた状態に戻し、ウイング26a、26bを粘着テープ等により皮膚に固定する。
【0049】
採血、輸血、輸液等が終了したら、粘着テープ等による皮膚に対するウイング26a、26bの固定を解除し、針体12を生体から抜き取る。このようにして、医療用針10の使用が終わったら、当該医療用針10を廃棄する者等の医療従事者が針体12に不用意に触れることを防止するために、プロテクタ20により針体12を覆って収納する「収納操作」を行う。
【0050】
この収納操作では、針体12に対してプロテクタ本体29を先端方向に移動させるべく、翼部材14を針体12に対して先端方向に引っ張る。そうすると、ウイング軸部28の基端拡径部38の内周部に形成された突起41と、ハブ軸部54の外周部に形成された凹部60との係合(図3A参照)が解除され、プロテクタ本体29が針体12に対して先端方向に移動可能となる。
【0051】
そして、図3Bに示すように、プロテクタ本体29内における針体12の針先12aが、プロテクタ本体29に設けられた側孔32よりも基端側の位置に来たとき、弾性部材64が針体12による係止から開放され、自らの弾発力により伸張することより、一方の側孔32と他方の側孔34との間に架橋された状態で、針体通路30の一部を塞ぐ。これにより、針体通路30の一部が弾性部材64により塞がれ、針体12のプロテクタ本体29からの突出が阻止された状態となる。
【0052】
プロテクタ本体29(ウイング軸部28)とハブ18とは、伸縮部材16を介して連結されているため、翼部材14を針体12本体に対して先端方向に移動させることに伴って、その移動距離の分だけ、伸縮部材16の蛇腹部48も伸張する。この伸縮部材16は、針体12に対するプロテクタ本体29の先端方向への移動を所定位置までに規制する規制部材としても機能する。このため、プロテクタ本体29が針体12に対して所定位置まで進出すると、それ以上のプロテクタ本体29の移動が阻止され、針体12がプロテクタ本体29の基端から抜き取られることが有効に防止される。
【0053】
図5Aは、図1等に示した医療用針10の製造に用いられる挿入治具80の斜視図である。図5Bは、図5AにおけるVB−VB線に沿った断面図である。図5Cは、図5AにおけるVC−VC線に沿った断面図である。この挿入治具80は、プロテクタ本体29に弾性部材64を組み込む際に使用される治具であり、ブロック状の治具本体82と、治具本体82に挿入可能なプッシャ84とを備える。
【0054】
治具本体82は、弾性部材64が挿通可能であり両端が開口した保持孔83を有する。保持孔83は、治具本体82を上下方向に貫通した直線状の孔であり、弾性部材64の外径よりも大きい内径を有する。治具本体82の下部には、両端が治具本体82の前後の端面(図5Bで左右方向の端面)で開口した略半円弧状の溝部85が形成されている。当該溝部85の底部には、下方に若干だけ突出し、プロテクタ本体29に形成された開口部72に嵌合可能な嵌合部86が設けられている。この嵌合部86の、溝部85の底部からの突出高さは、溝部85の深さよりも相当に小さく、具体的には、プロテクタ本体29に形成された開口部72に嵌合できる程度であればよい。保持孔83の下部開口83aは、嵌合部86にて開口している。また、治具本体82の下部において、溝部85の左右両側には、下方に突出し且つ直線状に延在する突条88a、88bが設けられている。この突条88a、88bの機能については、後述する。
【0055】
プッシャ84は、棒状のプッシャロッド90と、プッシャロッド90の基端に設けられたプッシャ基部92とを有する。プッシャロッド90は、治具本体82の保持孔83に挿入可能であり、その外径は、保持孔83の内径よりも僅かに小さい。プッシャロッド90のプッシャ基部92からの突出長さは、保持孔83の長さと略同じに設定されている。このため、プッシャロッド90を保持孔83に最大まで挿入したとき、嵌合部86の下面と、プッシャロッド90の先端面90aとが略一致するようになっている。
【0056】
図5Cは、プッシャロッド90の先端部の断面形状を示している。図5Cに示すように、プッシャロッド90の先端面90aは、円弧形状に形成されている。この円弧形状は、プロテクタ本体29の外周部の曲面に沿った形状である。また、プッシャロッド90の外径は、保持孔83の内径よりも大きく設定されており、このため、プッシャロッド90は保持孔83に挿入されないようになっている。
【0057】
次に、医療用針10の製造方法について、特に、プロテクタ本体29に弾性部材64を組み込む方法を説明する。ここでは、図6Aに示す状態からの組立工程を説明する。図6Aにおいて、プロテクタ本体29(翼部材14)に針体12が挿通され、プロテクタ本体29の基端拡径部38には、ハブ18のハブ軸部54が挿入して嵌合固定されているとともに、伸縮部材16の先端筒部50が外嵌状態で固定されている。
【0058】
そして、図6Aに示すように、カバー部材62に針体12を挿通させるように、プロテクタ本体29の先端側にカバー部材62を配置する。次に、図6Bに示すように、カバー部材62の先端筒部66に針体12が挿通された状態で、カバー部材62の基端側を持ち上げて、プロテクタ本体29の軸線に対して傾斜させた状態にするとともに、カバー部材62をプロテクタ本体29に対して基端方向に移動させる。この状態では、プロテクタ本体29は、その先端側の一部において、第1切欠部74aを介してカバー部材62内に挿入された状態となっている。
【0059】
次に、図6Cに示すように、カバー部材62を下ろして、プロテクタ本体29の先端縮径部36が、カバー部材62の先端筒部66内の途中まで挿入され、且つ、側孔32がカバー部材62の開口部72から露出した状態とする。この状態では、カバー部材62とプロテクタ本体29とは、軸線が一致している。また、この状態では、カバー部材62の基端構成部70に形成された第2切欠部74b(図4B参照)にプロテクタ本体29の中間部40が嵌合し、カバー部材62の基端構成部70が弾性変形して僅かに拡張されている。以下、図6Cに示すカバー部材62のプロテクタ本体29に対する位置を「第1の位置」と呼ぶ。
【0060】
次に、図6Dに示すように、挿入治具80をカバー部材62及びプロテクタ本体29に対して位置決めする。具体的には、嵌合部86と開口部72とが嵌合するように、治具本体82をカバー部材62上に配置する。このとき、予め、治具本体82の保持孔83内に弾性部材64を供給しておく。なお、図6Dに示す状態では、翼部材14の根元部(薄肉部46a、46b。図1参照)に、治具本体82の下部に設けられた突条88a、88b(図5A参照)が嵌合することにより、治具本体82が翼部材14上に安定して配置される。
【0061】
次に、図7Aに示すように、プッシャ84を下降させ、側孔32内で弾性部材64を圧縮させる。すなわち、プッシャ84を下降させると、プッシャロッド90の先端と、針体12との間に挟まれた弾性部材64が圧縮弾性変形して、側孔32内に押し込まれる。この場合、プッシャロッド90の外径は、側孔32の内径よりも大きく設定されているため、プッシャロッド90は、側孔32を囲む壁によって係止され、側孔32内に挿入されることがない。従って、プッシャロッド90の先端の位置は、治具本体82に設けられた嵌合部86の下面の位置と略一致している。
【0062】
次に、図7Bに示すように、カバー部材62を挿入治具80ごとプロテクタ本体29に対して基端方向にスライドさせ、カバー部材62をプロテクタ本体29に完全に嵌合させる。カバー部材62をプロテクタ本体29に完全に嵌合させた状態では、カバー部材62の先端筒部66とプロテクタ本体29の先端縮径部36が嵌合し、カバー部材62の基端構成部70と、プロテクタ本体29の中間部40の基端側とが嵌合し、側孔32がカバー部材62により閉じられている。これにより、弾性部材64が側孔32内で針体12とカバー部材62により挟まれた状態で収納されるに至る。以下、図7Bに示すカバー部材62のプロテクタ本体29に対する位置を「第2の位置」と呼ぶ。カバー部材62が第2の位置にある状態では、基端構成部70のC字形状の端部が、ウイング26a、26bの根元部に引っ掛かることで、カバー部材62がプロテクタ本体29に対して先端方向に移動することが阻止される。
【0063】
次に、治具本体82を上昇させ、カバー部材62及びプロテクタ本体29から離間させる。以上の工程により、プロテクタ本体29に弾性部材64を組み込むことができる。
【0064】
以上説明したように、本発明の医療用針10によれば、プロテクタ本体29に対してカバー部材62を第1の位置に位置決めした状態で弾性部材64を側孔32に挿入し、その後カバー部材62を第2の位置に移動させることにより、カバー部材62がプロテクタ本体29に装着されるとともに、弾性部材64が所定位置に収納及び保持される。よって、弾性部材64を側孔32に組み込む工程を容易に実施することができる。また、このような工程は、自動組立装置による医療用針10の組立に適しており、自動組立装置による量産化を図ることが可能となる。
【0065】
本実施形態の場合、カバー部材62の側部には開口部72が設けられ、カバー部材62が第1の位置にあるとき、開口部72を介して側孔32が露出されるので、開口部72を利用して、弾性部材64を挿入する際に用いる挿入治具80を、精度よく且つ容易に位置決めすることができ、組立作業を効率化できる。
【0066】
また、本実施形態の場合、カバー部材62の第2の位置は、第1の位置からプロテクタ本体29の軸線方向にずれた位置である。このため、カバー部材62を第1の位置から第2の位置へと移動させるときの移動方向は、プロテクタ本体29の軸線方向である。よって、カバー部材62をプロテクタ本体29に対して軸線方向に移動させる際に、プロテクタ本体29をガイドとしてスムーズ且つ安定して移動させることができる。
【0067】
上述したように、弾性部材64の側孔32への組込方法(医療用針10の製造方法)は、上記構成を備えた挿入治具80を用い、カバー部材62がプロテクタ本体29に対して第1の位置にある状態で、保持孔83に弾性部材64を保持させた挿入治具80を所定位置に位置決めし、プッシャ84の押圧作用下に、弾性部材64を側孔側に押し出して側孔32内で圧縮し、その後、カバー部材62を第2の位置に変位させることにより、弾性部材64の側孔32への挿入、弾性部材64の圧縮、側孔32の閉塞を迅速且つ確実に行うことができる。
【0068】
図8は、変形例に係る医療用針10aの斜視図である。この医療用針10aは、一対のウイング26a、26bの各々の上面(カバー部材62の開口部72が設けられた側)の根元部の近傍に、突起96a、96bを設けた点で、図1等に示した医療用針10と異なる。これらの突起96a、96bは、図9に示すようにウイング26a、26bを閉じた(畳んだ)際にカバー部材62の開口部72に両側から嵌合するように、位置、形状、大きさが設定されている。
【0069】
一般に、翼状針では、ウイングが柔軟であるほど穿刺の際に屈曲させる操作が容易となり、扱い易いが、柔軟性が高いほどウイングに対してシャフト軸の位置が定まりにくく、針先が不安定となる傾向がある。針先が不安定であると、硬い血管や細い血管を正確に穿刺することが困難となることがある。
【0070】
そこで、変形例に係る医療用針10aでは、ウイング26a、26bを畳んだ際にカバー部材62に嵌合する突起をウイング26a、26bに設け、これにより、穿刺時における針先12aの安定性を高めている。すなわち、ウイング26a、26bを畳むと、突起96a、96bがカバー部材62の開口部72に嵌合し、ウイング26a、26bがウイング軸部28及びカバー部材62に対して位置決めされる。従って、ウイング26a、26bの扱い易さを考慮してウイング26a、26bを柔軟に構成した場合でも、ウイング26a、26bを畳んだ際に、ウイング26a、26bをウイング軸部28に対して安定的に位置決めし、穿刺時における針先12aの安定性を高めることができ、硬い血管や細い血管を正確に穿刺することができる。
【0071】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0072】
10、10a…医療用針 12…針体
14…翼部材 20…プロテクタ
29…プロテクタ本体 32、34…側孔
62…カバー部材 64…弾性部材
72…開口部 80…挿入治具
82…治具本体 84…プッシャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に針先を有する針体と、
針体に対して相対的に先端方向に移動して少なくとも前記針先を覆うことが可能なプロテクタと、を備え、
前記プロテクタは、
前記針体を挿通可能な針体通路と、前記針体通路に臨む側孔とが設けられ、筒状体で構成されたプロテクタ本体と、
前記プロテクタ本体に装着されたカバー部材と、
前記針体と前記カバー部材との間で前記側孔内に収縮状態で収納された第1の状態と、前記針体通路の一部を塞ぎ前記針体の前記プロテクタ本体からの突出を阻止可能な第2の状態とに変形可能な弾性部材と、を有し、
前記カバー部材は、前記プロテクタ本体に対して、前記側孔を露出させる第1の位置から、前記側孔を覆う第2の位置に移動させられることにより前記プロテクタ本体に装着されたものである、
ことを特徴とする医療用針。
【請求項2】
請求項1記載の医療用針において、
前記カバー部材の胴部には、前記第1の位置で前記側孔を露出させる開口部が設けられる、
ことを特徴とする医療用針。
【請求項3】
請求項1又は2記載の医療用針において、
前記医療用針は、前記プロテクタ本体として構成されたウイング軸部と、前記ウイング軸部から互いに反対方向に突出した一対のウイングと、を有する翼状針として構成され、
前記ウイングの各々には、前記ウイングが畳まれた際に前記開口部に嵌合可能な突起が設けられる、
ことを特徴とする医療用針。
【請求項4】
針体を有する医療用針の製造に用いる挿入治具であって、
前記医療用針は、
先端に針先を有する前記針体と、
針体に対して先端方向に移動して少なくとも前記針先を覆うことが可能なプロテクタと、を備え、
前記プロテクタは、
前記針体を挿通可能な針体通路と、前記針体通路に臨む側孔とが設けられ、筒状体で構成されたプロテクタ本体と、
前記プロテクタ本体に装着されたカバー部材と、
前記針体と前記カバー部材との間で前記側孔内に収縮状態で収納された第1の状態と、前記針体通路の一部を塞ぎ前記針体の前記プロテクタ本体からの突出を阻止可能な第2の状態とに変形可能な弾性部材と、を有し、
前記カバー部材は、前記プロテクタ本体に対して、前記側孔を露出させる第1の位置から、前記側孔を覆う第2の位置に移動させられることにより前記プロテクタ本体に装着されたものであり、
前記挿入治具は、
前記弾性部材が挿通可能であり両端が開口した保持孔を有する治具本体と、
前記保持孔に挿入可能であり、前記弾性部材を押圧して前記保持孔から放出させるプッシャと、を備える、
ことを特徴とする挿入治具。
【請求項5】
請求項4記載の挿入治具において、
前記カバー部材の胴部には、前記第1の位置で前記側孔を露出させる開口部が設けられ、
前記治具本体は、前記開口部に嵌合可能であり且つ前記保持孔の一端が開口する嵌合部を有する、
ことを特徴とする挿入治具。
【請求項6】
先端に針先を有する針体と、針体に対して先端方向に移動して少なくとも前記針先を覆うことが可能なプロテクタとを備えた医療用針の製造方法であって、
前記針体を挿通可能な針体通路と前記針体通路に臨む側孔とを有するプロテクタ本体に対して、カバー部材を第1の位置に位置決めする工程と、
前記第1の位置に位置決めされた前記カバー部材及び前記プロテクタ本体に対して、治具本体とプッシャとを有する挿入治具を位置決めし、前記治具本体に設けられた保持孔を、前記プロテクタ本体に設けられた前記側孔に臨ませる治具配置工程と、
前記プッシャの押圧作用下に、前記保持孔に収納された弾性部材を前記側孔に押し出して前記側孔内で圧縮させる圧縮工程と、
前記プロテクタ本体に対して前記カバー部材及び前記挿入治具を前記第1の位置から第2の位置へと相対的に変位させることにより、前記カバー部材で前記側孔を覆う変位工程と、を含む、
ことを特徴とする医療用針の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の医療用針の製造方法において、
前記治具配置工程では、前記カバー部材に設けられた開口部に、前記治具本体に設けられた嵌合部を嵌合させることにより、前記カバー部材及び前記プロテクタ本体に対して前記挿入治具を位置決めする、
ことを特徴とする医療用針の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7記載の医療用針の製造方法において、
前記変位工程では、前記プロテクタ本体に対して、前記カバー部材及び前記挿入治具を前記プロテクタ本体の軸線方向に相対的に変位させる、
ことを特徴とする医療用針の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−70741(P2013−70741A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210445(P2011−210445)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】