説明

医療用針

【課題】板状部材を備える医療用針において、患者の皮膚と板状部材との間における蒸れの影響に起因した不快感の発生を抑制することができるとともに、菌の繁殖を抑制することが可能な医療用針を提供する。
【解決手段】湾曲針10と、基部20と、z方向に伸縮可能に構成された伸縮部30と、伸縮部30における基部20とは反対側に接続配置され、湾曲針10を通過させる通過部162を有する板状部材160とを備える医療用針2。伸縮部30は、伸縮部30を最も伸ばしたときのz方向に沿った長さが、湾曲針10の先端部から湾曲部までの長さ以上となるように構成されている。板状部材160は、z方向に直交する方向に向けて複数の歯166が伸びたクシ歯部164をさらに有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用針に関する。
【背景技術】
【0002】
皮下埋込式カテーテルアクセスポートに穿刺するための針として、従来、所定角度(例えば90度)に湾曲した湾曲部を有する湾曲針と、パンタグラフのように伸縮する伸縮部と、湾曲針を通過させる通過部を有する板状部材とを備える医療用針が知られている(例えば、特許文献1及び2参照。)。伸縮部の一端は、湾曲針の基端部側に設けられた基部と接続されており、伸縮部の他端は、板状部材と接続されている。
【0003】
従来の医療用針によれば、上記した伸縮部を備えているため、患者の皮膚(アクセスポート)から湾曲針を抜いたときに、湾曲針(の先端部)を伸縮部によってカバーすることができる。このため、医療用針を使用する者(医療従事者及び患者本人を含む。以下、使用者という。)が誤って使用後の医療用針を自分に刺してしまう事故(いわゆる誤刺)の発生を防止することができる。
また、従来の医療用針によれば、上記した板状部材を備えているため、患者の皮膚から湾曲針を抜く際、板状部材の上面(患者の皮膚に接しない方の面)を上から押さえることにより、比較的スムーズに湾曲針を抜くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−369884号公報
【特許文献2】特開2006−61379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の医療用針においては、患者の皮膚に湾曲針を穿刺するときに板状部材と皮膚とが密着するため、患者の皮膚と板状部材との間における蒸れの影響が大きくなってしまい、患者が不快に感じる場合があるという問題がある。また、そのような蒸れの影響によって菌の繁殖が活発になりやすいという問題がある。特に、アクセスポート穿刺用の医療用針は長時間輸液する際に用いられることが多いことから、このような蒸れの影響に起因する問題は、非常に重要な問題である。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、板状部材を備える医療用針において、患者の皮膚と板状部材との間における蒸れの影響に起因した不快感の発生を抑制することができるとともに、菌の繁殖を抑制することが可能な医療用針を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明の医療用針(1)は、所定角度に湾曲した湾曲部(14)を有する湾曲針(10)と、前記湾曲針(10)の一部が植設された基部(20)と、前記基部(20)に設けられ、前記湾曲部(14)から前記湾曲針の先端部(16)に沿った第1(z)方向に伸縮可能に構成された伸縮部(30)と、前記伸縮部(30)における前記基部(20)とは反対側に接続配置され、前記湾曲針(10)を通過させる通過部(62)を有する板状部材(60)とを備え、前記伸縮部(30)は、前記伸縮部(30)を最も伸ばしたときの前記第1(z)方向に沿った長さが、前記湾曲針の先端部(16)から前記湾曲部(14)までの長さ以上となるように構成されており、前記板状部材(60)における前記基部(20)とは反対側の面(60s)には、複数の突起(64)が形成されていることを特徴とする。
【0008】
このため、本発明の医療用針によれば、板状部材における基部とは反対側の面に複数の突起が形成されているため、患者の皮膚と板状部材との間の通気性を確保することができる。その結果、患者の皮膚と板状部材との間における蒸れの影響を低減することができるため、このような蒸れの影響に起因した不快感の発生を抑制することが可能となる。また、患者の皮膚と板状部材との間における蒸れの影響を低減することができることから、患者の皮膚と板状部材との間における菌の繁殖を抑制することが可能となる。
【0009】
したがって、本発明の医療用針は、患者の皮膚と板状部材との間における蒸れの影響に起因した不快感の発生を抑制することができるとともに、菌の繁殖を抑制することが可能な医療用針となる。
【0010】
また、本発明の医療用針によれば、板状部材に上記した複数の突起が形成されているため、患者の皮膚に医療用針を穿刺するにあたって医療用針を配置する際、複数の突起が滑り止めの役目も果たすことから、医療用針を配置しやすく、皮膚に穿刺しやすいという効果もある。
【0011】
また、本発明の医療用針によれば、伸縮部を最も伸ばしたときの第1方向に沿った長さが、湾曲針の先端部から湾曲部までの長さ以上となるように構成されているため、患者の皮膚(アクセスポート)から湾曲針を抜いたときに、湾曲針(の先端部)を伸縮部によってカバーすることができる。このため、使用者による誤刺の発生を防止することができる。
【0012】
[2]上記[1]に記載の医療用針(1)においては、前記板状部材(60)における前記基部(20)とは反対側の面(60s)上で互いに交差する2方向のうち、前記湾曲針における基端部(12)側の部分から前記湾曲部(14)に沿った方向と同一方向を第2(y)方向とし、他方を第3(x)方向としたとき、前記伸縮部(30)は、前記第3(x)方向に沿って広がるように構成されたパンタグラフ状の伸縮部材であって、前記板状部材(60)は、前記第3(x)方向に長辺方向を有する略長方形状であることが好ましい。
【0013】
伸縮部を折り畳んだときに伸縮部の広がる方向と板状部材の長辺方向とを同じ方向に揃えることによって、両者が互いに異なる方向とした場合に比べて、コンパクトな医療用針を実現することができる。
また、板状部材が略長方形状であることにより、テープ等を用いて患者の皮膚に医療用針を固定する際に、固定しやすい(テープ止めがしやすい)という効果もある。
【0014】
なお、この明細書において「略長方形状」とは、長方形状だけではなく、長方形の四隅の角のうち少なくとも1つが丸くなっている形状や、四辺のうち少なくとも一辺の一部が内側に凹んだ形状なども含む。
【0015】
[3]上記[2]に記載の医療用針(1)においては、前記複数の突起(64)のそれぞれは、前記板状部材(60)における短辺方向に沿って伸びる直線状の突起であって、前記板状部材(60)における長辺方向に沿って複数配列されていることが好ましい。
【0016】
このように構成することにより、直線状の突起が板状部材の長辺方向に沿って伸びる場合と比較して、突起の長さ(突起における長手方向に沿った距離)を短くすることができる。これにより、突起間を空気が比較的通過しやすくなるため、患者の皮膚と板状部材との間における蒸れの影響をさらに低減することが可能となる。
【0017】
[4]上記[3]に記載の医療用針(1)においては、前記複数の突起(64)のうち前記通過部(62)から前記板状部材(60)の短辺に向けて配置される前記突起(64)のそれぞれは、隣り合う突起との配置間隔(T)が略同一となるように設定されていることが好ましい。
【0018】
このように構成することにより、板状部材を成形加工する場合に加工が容易となる。また、複数の突起が配置されている側から医療用針を見たときの見た目(デザイン性)に優れるという効果もある。
【0019】
[5]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の医療用針(1)においては、前記複数の突起(64)の突出高さ(h)は、0.1mm〜2.0mmの範囲に設定されていることが好ましい。
【0020】
複数の突起の突出高さが0.1mmより小さいと、上述した蒸れ抑制効果及び滑り止め効果を得ることが容易ではなくなる。一方、複数の突起の突出高さが2.0mmより大きいと、患者の皮膚から湾曲針を抜くにあたって板状部材を上から押さえたときに、突起の皮膚に食い込む度合いが比較的大きくなってしまい、患者が痛みを訴えかねない。
これに対し、本発明の医療用針によれば、複数の突起の突出高さが上記範囲に設定されているため、所定の蒸れ抑制効果及び滑り止め効果を得ることができるとともに、突起が皮膚に食い込むことに起因する影響を極力抑えることが可能となる。
【0021】
このような観点から言えば、前記複数の突起の突出高さは、0.5mm〜1.0mmの範囲に設定されていることがより好ましい。
【0022】
[6]本発明の医療用針(2)は、所定角度に湾曲した湾曲部(14)を有する湾曲針(10)と、前記湾曲針(10)の一部が植設された基部(20)と、前記基部(20)に設けられ、前記湾曲部(14)から前記湾曲針の先端部(16)に沿った第1(z)方向に伸縮可能に構成された伸縮部(30)と、前記伸縮部(30)における前記基部(20)とは反対側に接続配置され、前記湾曲針(10)を通過させる通過部(162)を有する板状部材(160)とを備え、前記伸縮部(30)は、前記伸縮部(30)を最も伸ばしたときの前記第1(z)方向に沿った長さが、前記湾曲針の先端部(16)から前記湾曲部(14)までの長さ以上となるように構成されており、前記板状部材(160)は、前記第1(z)方向に直交する方向に向けて複数の歯(166)が伸びたクシ歯部(164)をさらに有することを特徴とする。
【0023】
このため、本発明の医療用針によれば、上記したクシ歯部を有する板状部材を備えるため、クシ歯部の部分において、患者の皮膚と板状部材との間の通気性を確保することができる。その結果、患者の皮膚と板状部材との間における蒸れの影響を低減することができるため、このような蒸れの影響に起因した不快感の発生を抑制することが可能となる。また、患者の皮膚と板状部材との間における蒸れの影響を低減することができることから、患者の皮膚と板状部材との間における菌の繁殖を抑制することが可能となる。
【0024】
したがって、本発明の医療用針は、患者の皮膚と板状部材との間における蒸れの影響に起因した不快感の発生を抑制することができるとともに、菌の繁殖を抑制することが可能な医療用針となる。
【0025】
また、本発明の医療用針によれば、上記した板状部材におけるクシ歯部が滑り止めの役目も果たすことから、医療用針を配置及び穿刺しやすいという効果もある。
なお、クシ歯部が滑り止めの役目を果たす理由としては、患者の皮膚に医療用針を穿刺するにあたって板状部材を患者の皮膚に接触させると、複数の歯の隙間部分において僅かではあるが患者の皮膚が盛り上がり、その結果、クシ歯部の部分と患者の皮膚との間で滑り抵抗が発生するからであると推測される。
【0026】
本発明の医療用針によれば、伸縮部を最も伸ばしたときの第1方向に沿った長さが、湾曲針の先端部から湾曲部までの長さ以上となるように構成されているため、患者の皮膚(アクセスポート)から湾曲針を抜いたときに、湾曲針(の先端部)を伸縮部によってカバーすることができる。このため、使用者による誤刺の発生を防止することができる。
【0027】
[7]上記[6]に記載の医療用針(2)においては、前記板状部材(160)における前記基部(20)とは反対側の面(160s)上で互いに交差する2方向のうち、前記湾曲針における基端部(12)側の部分から前記湾曲部(14)に沿った方向と同一方向を第2(y)方向とし、他方を第3(x)方向としたとき、前記伸縮部(30)は、前記第3(x)方向に沿って広がるように構成されたパンタグラフ状の伸縮部材であって、前記板状部材(160)は、前記第3(x)方向に長辺方向を有する略長方形状であり、前記クシ歯部(164)における前記複数の歯(166)は、前記第2(y)方向に沿って伸びていることが好ましい。
【0028】
伸縮部を折り畳んだときに広がる方向と板状部材の長辺方向とを同じ方向に揃えることによって、両者が互いに異なる方向とした場合に比べて、コンパクトな医療用針を実現することができる。
また、板状部材が略長方形状であることにより、テープ等を用いて患者の皮膚に医療用針を固定する際に、固定しやすい(テープ止めがしやすい)という効果もある。
さらにまた、クシ歯部における複数の歯が第2方向、すなわち板状部材における短辺方向に沿って伸びる構成であることから、例えば、複数の歯が長辺方向に沿って伸びる場合と比較して、複数の歯の破損が起こり難く、製造加工が容易であるという効果もある。
【0029】
なお、特許請求の範囲及び本欄(課題を解決するための手段の欄)に記載した各手段の文言下に括弧をもって付加された符号は、特許請求の範囲及び本欄に記載された内容の理解を容易にするために用いられたものであって、特許請求の範囲及び本欄に記載された内容を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】医療用針1の斜視図。
【図2】図1とは異なる方向から見たときの医療用針1の斜視図。
【図3】医療用針1の正面図。
【図4】医療用針1の側面図。
【図5】第1及び第2伸縮部材32,36が伸縮する様子を説明するために示す図。
【図6】z方向に沿って見たときの板状部材60の平面図。
【図7】針カバー部材80を説明するために示す図。
【図8】針カバー部材80を説明するために示す図。
【図9】医療用針1を説明するために示す図。
【図10】医療用針1を説明するために示す図。
【図11】板状部材160側から見たときの医療用針2の斜視図。
【図12】z方向に沿って見たときの板状部材160の平面図。
【図13】変形例1〜4の板状部材60A〜60Dを示す図。
【図14】変形例5及び6の板状部材160A,160Bを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の医療用針について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0032】
[実施形態1]
まず、実施形態1に係る医療用針1の構成について、図1〜図7を用いて詳細に説明する。
【0033】
図1は、医療用針1の斜視図である。図2は、図1とは異なる方向から見たときの医療用針1の斜視図である。図3は、医療用針1の正面図である。図4は、医療用針1の側面図である。なお、図1〜図4においては、針カバー部材80の図示を省略している。
【0034】
図5は、第1及び第2伸縮部材32,36が伸縮する様子を説明するために示す図である。図5(a)は第1及び第2伸縮部材32,36を最も折り畳んだ状態のときの医療用針1の正面図であり、図5(e)は第1及び第2伸縮部材32,36を最も伸長させた状態のときの医療用針1の正面図であり、図5(b)〜図5(d)は図5(a)に示す状態から図5(e)に示す状態になるまでの途中経過を示す医療用針1の正面図である。
【0035】
図6は、z方向に沿って見たときの板状部材60の平面図である。図7及び図8は、針カバー部材80を説明するために示す図である。図7(a)は針カバー部材80の正面図であり、図7(b)は針カバー部材80の側面図であり、図7(c)は針カバー部材80の上面図であり、図7(d)は針カバー部材80の底面図である。図8(a)は針カバー部材80の斜視図であり、図8(b)は針カバー部材80を装着したときの医療用針1の斜視図である。
【0036】
なお、以下の説明においては、互いに直交する3つの方向をそれぞれx方向、y方向、z方向とする。x方向とは「第3方向」のことであり、y方向とは「第2方向」のことであり、z方向とは「第1方向」のことである。x方向は、板状部材60の長辺方向と同一の方向であり、y方向は、板状部材60の短辺方向と同一の方向(または、基部20の長手方向と同一の方向)であり、z方向は、湾曲針10の湾曲部14から先端部16に沿った方向(または、板状部材60における基部20側の面に垂直な方向)である。
【0037】
実施形態1に係る医療用針1は、図1〜図4に示すように、所定角度(例えば90度)に湾曲した湾曲部14を有する湾曲針10と、湾曲針10の一部が植設された基部20と、基部20に設けられ、パンタグラフ状に伸縮可能に構成された伸縮部30と、伸縮部30における基部20とは反対側に接続配置された板状部材60と、基部20に設けられた翼部70と、針カバー部材80(図7及び図8参照。)とを備える。
【0038】
湾曲針10は、図4に示すように、基端部12と、例えば90度に湾曲した湾曲部14と、患者の皮下に埋め込まれたアクセスポート(後述する図10(a)参照。)に穿刺される先端部16とを有する。基端部12から湾曲部14までは、y方向に平行な直管状であり、湾曲部14から先端部16の手前までは、z方向に平行な直管状である。先端部16は、コアリング(アクセスポートにおけるセプタムの穴あきや削りカスの発生)防止のために若干屈曲した構成となっている。
【0039】
基部20は、湾曲針10の基端部12及び湾曲部14を覆うように構成されている。また、基部20は、管状のチューブ接続部22を有し、チューブ接続部22の部分で図示しないチューブに接続可能に構成されている。
【0040】
伸縮部30は、湾曲針10を間にして対向配置された第1伸縮部材32及び第2伸縮部材36を有する。第1及び第2伸縮部材32,36のそれぞれは、端部が基部20及び板状部材60(板状部材60における基部20側の面60w)に接続されており、屈曲部34,38の部分で略「くの字」状に屈曲可能に構成されている(図3参照。)。また、第1及び第2伸縮部材32,36のそれぞれは、第1及び第2伸縮部材32,36の各端部と基部20及び板状部材60との接続部分においても、屈曲可能に構成されている。このように構成された第1及び第2伸縮部材32,36が湾曲針10を間にして対向配置されているため、図5(a)〜図5(e)に示すように、x方向に沿って広がるように又は狭まるように、パンタグラフ状に伸縮することができる。
また、伸縮部30は、第1及び第2伸縮部材32,36が広がる方向が、後述する板状部材60の長辺方向と同じ方向となるように配置されている。
【0041】
伸縮部30は、図5(e)から分かるように、伸縮部30(第1及び第2伸縮部材32,36)を最も伸ばしたときのz方向に沿った長さが、湾曲針10の先端部16から湾曲部14までの長さ以上となるように構成されている。
【0042】
板状部材60は、図1〜図3及び図6に示すように、略長方形状の板状部材であり、長方形の四隅の角は丸め処理が施されている。板状部材60は、その長辺がx方向に沿い、短辺がy方向に沿うように配置されている。板状部材60は、略中央部に形成され、湾曲針10を通過させる通過部62と、板状部材60における基部20とは反対側(患者の皮膚と接する側)の面60sに形成された複数の突起64とを有する。通過部62は、スリット状(切れ込み状)の通過部である。
【0043】
複数の突起64のそれぞれは、図2及び図6に示すように、板状部材60の短辺方向(y方向)に沿って伸びる直線状の突起であって、板状部材60の長辺方向(x方向)に沿って複数(例えば10個)配列されている。なお、複数の突起64の数は、適宜変更可能である。
【0044】
複数の突起64の突出高さh(図3参照。)は、例えば0.7mmに設定されている。突起64の長さL及び幅Wは、所定の値に設定されている。なお、突起64の長さL及び幅W並びに突出高さhは、例えば板状部材の厚みによって適宜変更可能である。
【0045】
通過部62から板状部材60の短辺側端部に配置される複数の突起64のそれぞれは、図6に示すように、隣り合う突起64との配置間隔Tが略同一となるように設定されている。また、隣り合う突起64との配置間隔Tは、突起64の幅Wよりも大きくなるように設定されている。
【0046】
翼部70は、図1〜図3に示すように、基部20の側方に接続配置された一対の翼部材であって、略矩形状の把持部72,74と、基部20と各把持部72,74との間に配置され、把持部72,74の厚みよりも薄く形成された薄肉部77,78とを有する。把持部72,74は、基部20と薄肉部77,78との接続部分を軸として所定角度回動可能に構成されている(後述する図9(a1)〜図9(c1)及び図9(a2)〜図9(c2)参照。)。薄肉部77,78の厚みが把持部72,74の厚みよりも薄いことから、翼部70を把持する際に、基部20と薄肉部77,78とが干渉してしまうのを抑制することができ、結果として、翼部70を把持しやすくなる。また、薄肉部77,78の厚みが把持部72,74の厚みよりも薄いことから、把持部72,74を回動させやすいという効果もある。
【0047】
基部20、伸縮部30、板状部材60及び翼部70は、同一のプラスチック材料(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど。)からなり、射出成形することによって形成されている。
【0048】
針カバー部材80は、図7及び図8に示すように、所定の厚みを残して中身がくり抜かれた、正面視略T字状の部材である。針カバー部材80は、伸縮部30を折り畳んだ状態で翼部70、伸縮部30及び板状部材60を格納可能な第1格納部82と、伸縮部30を折り畳んだ状態で湾曲針10(の先端部16)を格納可能な第2格納部84とを有する。第1格納部82の上面には、基部20の位置に対応して切り欠き83が設けられている。伸縮部30を折り畳んだ状態とすると、図8(b)から分かるように、翼部70、伸縮部30及び板状部材60が第1格納部82に格納され、湾曲針10(の先端部16)が第2格納部84に格納される。
【0049】
実施形態1に係る医療用針1について、図9及び図10を用いてさらに詳細に説明する。
図9及び図10は、医療用針1を説明するために示す図である。図9(a1)〜図9(e1)は医療用針1を使用したときの各状態を示す正面図であり、図9(a2)〜図9(e2)は図9(a1)〜図9(e1)に示す状態のときの斜視図である。図10(a)は医療用針1を患者の皮膚Sに穿刺したときの様子を模式的に示す図であり、図10(b)は図10(a)の符号Aで示す部分の拡大図である。なお、図10(a)においては、アクセスポートAPに対する医療用針1の大きさや、患者の皮膚SからアクセスポートAPまでの深さ(距離)などは誇張して図示している。
【0050】
医療用針1を使用する際には、まず、針カバー部材80が装着された状態の医療用針1(図8(b)参照。)から、針カバー部材80を取り外す。
次に、翼部70の把持部72,74を把持し、把持部72,74が接触するまで翼部70を回動させる(図9(a1)〜図9(c1)及び図9(a2)〜図9(c2)参照。)。
そして、把持部72,74を把持した状態で、患者の皮膚Sの下に埋め込まれたアクセスポートAPの所定部位に湾曲針10を穿刺する(図10(a)参照。)。穿刺後は、必要に応じて、把持部72,74を広げて把持部72,74の上からテープ止めを行う。
【0051】
実施形態1に係る医療用針1によれば、板状部材60の面60sに複数の突起64が形成されているため、患者の皮膚S上に板状部材60を配置したときに、患者の皮膚Sと板状部材60との間に空隙gが生じることとなる(図10(b)参照。)。この空隙gによって、患者の皮膚Sと板状部材60との間の通気性を確保することができる。その結果、患者の皮膚Sと板状部材60との間における蒸れの影響を低減することができるため、このような蒸れの影響に起因した不快感の発生を抑制することが可能となる。また、患者の皮膚Sと板状部材60との間における蒸れの影響を低減することができることから、患者の皮膚Sと板状部材60との間における菌の繁殖を抑制することが可能となる。
【0052】
したがって、実施形態1に係る医療用針1は、患者の皮膚と板状部材との間における蒸れの影響に起因した不快感の発生を抑制することができるとともに、菌の繁殖を抑制することが可能な医療用針となる。
【0053】
また、実施形態1に係る医療用針1によれば、板状部材60に複数の突起64が形成されているため、患者の皮膚Sに医療用針1を穿刺するにあたって医療用針1を配置する際、複数の突起64が滑り止めの役目も果たすことから、医療用針1を配置しやすく、皮膚に穿刺しやすいという効果もある。
【0054】
患者の皮膚S(アクセスポートAP)から湾曲針10を抜くときは、テープ止めを行った場合はテープを剥がして、板状部材60を押さえながら把持部72,74を摘まみ上げ、患者の皮膚Sから湾曲針10を引き抜く(図9(d1)及び図9(e1)並びに図9(d2)及び図9(e2)参照。)。
なお、患者の皮膚S(アクセスポートAP)から湾曲針10を抜く方法としては、上述の方法に限定されない。図示による説明は省略するが、各把持部72,74を第1及び第2伸縮部材32,36に沿わせる(板状部材60側に垂らす)ようにして、第1及び第2伸縮部材32,36と把持部72,74とを一緒に摘まみ上げてもよい。
【0055】
実施形態1に係る医療用針1によれば、伸縮部30を最も伸ばしたときのz方向に沿った長さが、湾曲針10の先端部16から湾曲部14までの長さ以上となるように構成されているため、患者の皮膚S(アクセスポートAP)から湾曲針10を抜いたときに、湾曲針10(の先端部16)を伸縮部30によってカバーすることができる。このため、使用者による誤刺の発生を防止することができる。
【0056】
実施形態1に係る医療用針1においては、伸縮部30を折り畳んだときに第1及び第2伸縮部材32,36の広がる方向と、板状部材60の長辺方向とが同じ方向となるように揃えられているため、両者が互いに異なる方向となっている場合に比べて、コンパクトな医療用針を実現することができる。
また、板状部材60が略長方形状であることにより、テープ等を用いて患者の皮膚に医療用針1を固定する際に、固定しやすい(テープ止めがしやすい)という効果もある。
【0057】
実施形態1に係る医療用針1においては、直線状の突起64は、板状部材60の短辺方向に沿って伸びるものであるため、直線状の突起が板状部材の長辺方向に沿って伸びる場合と比較して、突起64の長さL(図6参照。)を短くすることができる。これにより、突起64の間の部分(図10(b)に示す空隙g)を空気が比較的通過しやすくなるため、患者の皮膚Sと板状部材60との間における蒸れの影響をさらに低減することが可能となる。
【0058】
実施形態1に係る医療用針1においては、通過部62から板状部材60の短辺側端部に向けて配置される突起64のそれぞれは、隣り合う突起との配置間隔Tが略同一となるように設定されているため、板状部材60を成形加工する場合に加工が容易となる。また、複数の突起64が配置されている側から医療用針1を見たときの見た目(デザイン性)に優れるという効果もある。
【0059】
実施形態1に係る医療用針1においては、複数の突起64の突出高さhは、0.1mm〜2.0mmの範囲に設定されているため、所定の蒸れ抑制効果及び滑り止め効果を得ることができるとともに、突起64が皮膚に食い込むことに起因する影響を極力抑えることが可能となる。
【0060】
実施形態1に係る医療用針1においては、上記した翼部70をさらに備えるため、翼部70を把持して湾曲針10の抜き差しを容易に行うことが可能となる。
【0061】
実施形態1に係る医療用針1においては、上記した針カバー部材80をさらに備えるため、医療用針1を使用する前は、伸縮部30を折り畳んだ状態で針カバー部材80内に湾曲針10、伸縮部30及び板状部材60などを格納することができる。このため、伸縮部30を折り畳んだ状態のままで安全性を確保することができる。つまり、実施形態1に係る医療用針1は、安全性を確保しつつ、コンパクトな医療用針となる。
【0062】
[実施形態2]
図11は、板状部材160側から見たときの医療用針2の斜視図である。図12は、z方向に沿って見たときの板状部材160の平面図である。なお、図11においては、針カバー部材80の図示を省略している。また、図11において、図2と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0063】
実施形態2に係る医療用針2は、基本的には実施形態1に係る医療用針1と良く似た構成を有するが、板状部材の構成が実施形態1に係る医療用針1とは異なる。
【0064】
すなわち、実施形態2に係る医療用針2においては、図11及び図12に示すように、実施形態1で説明した板状部材60に代えて、クシ歯部164を有する板状部材160を備えている。
【0065】
板状部材160は、全体的に見て略長方形状の板状部材である。板状部材160は、その長辺がx方向に沿い、短辺がy方向に沿うように配置されている。板状部材160は、略中央部に形成され、湾曲針10を通過させる通過部162と、y方向に沿って(チューブ90に向けて)複数の歯166が伸びたクシ歯部164とを有する。通過部162は、スリット状(切れ込み状)の通過部である。
【0066】
複数の歯166は、例えば通過部162の両側に5個ずつ、計10個配置されている。複数の歯166の端部は丸め処理が施されている。
歯166の長さCL及び幅CW並びに隣り合う歯との配置間隔CTは、所定の値に設定されている。なお、これらの値及び歯の数は、適宜変更可能である。
【0067】
基部20、伸縮部30、板状部材160及び翼部70は、同一のプラスチック材料(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど。)からなり、射出成形することによって形成されている。
【0068】
このように、実施形態2に係る医療用針2は、実施形態1に係る医療用針1とは板状部材の構成が異なるが、上記したクシ歯部164を有する板状部材160を備えるため、クシ歯部164の部分において、患者の皮膚と板状部材160との間の通気性を確保することができる。その結果、実施形態1に係る医療用針1の場合と同様に、患者の皮膚と板状部材160との間における蒸れの影響を低減することができるため、このような蒸れの影響に起因した不快感の発生を抑制することが可能となる。また、患者の皮膚と板状部材160との間における蒸れの影響を低減することができることから、患者の皮膚と板状部材と160の間における菌の繁殖を抑制することが可能となる。
【0069】
したがって、実施形態2に係る医療用針2は、患者の皮膚と板状部材との間における蒸れの影響に起因した不快感の発生を抑制することができるとともに、菌の繁殖を抑制することが可能な医療用針となる。
【0070】
また、実施形態2に係る医療用針2によれば、上記したクシ歯部164を有する板状部材160を備えており、患者の皮膚に医療用針2を穿刺するにあたって医療用針2を配置する際、上述した理由により、クシ歯部164が滑り止めの役目も成すことから、医療用針2を配置及び穿刺しやすいという効果もある。
【0071】
実施形態2に係る医療用針2においては、伸縮部30を折り畳んだときに第1及び第2伸縮部材32,36の広がる方向と板状部材160の長辺方向とが同じ方向に揃えられているため、両者が互いに異なる方向とした場合に比べて、コンパクトな医療用針を実現することができる。
また、板状部材160の全体的な形状が略長方形状であるため、テープ等を用いて患者の皮膚に医療用針2を固定する際に、固定しやすい(テープ止めがしやすい)という効果もある。
さらにまた、クシ歯部164における複数の歯166がy方向、すなわち板状部材160における短辺方向に沿って伸びる構成であることから、例えば、複数の歯が長辺方向に沿って伸びる場合と比較して、複数の歯166の破損が起こり難く、製造加工が容易であるという効果もある。
【0072】
実施形態2に係る医療用針2は、板状部材の構成が異なる点以外では、実施形態1に係る医療用針1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る医療用針1が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0073】
以上、本発明の医療用針を上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0074】
(1)上記実施形態1においては、複数の突起64が、板状部材60の短辺方向(y方向)に沿って伸びる直線状の突起である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
図13は、変形例1〜4の板状部材60A〜60Dを示す図である。図13(a)は変形例1の板状部材60Aをz方向に沿って見た平面図であり、図13(b)は変形例2の板状部材60Bをz方向に沿って見た平面図であり、図13(c)は変形例3の板状部材60Cをz方向に沿って見た平面図であり、図13(d)は変形例4の板状部材60Dをz方向に沿って見た平面図である。なお、図13(a)〜図13(d)において、図面を分かりやすくするために突起に斜線を付して図示している。
板状部材としては、例えば、図13(a)に示すように、板状部材の長辺方向(x方向)に沿って伸びる直線状の突起64Aが複数配列された板状部材60Aであってもよいし、図13(b)に示すように、所定角度傾斜した直線状の突起64Bが複数配列された板状部材60Bであってもよいし、図13(c)に示すように、曲線状の突起64Cが複数配列された板状部材60Cであってもよいし、図13(d)に示すように、微小な突起64Dが複数配置された板状部材60Dであってもよい。また、図示による説明は省略するが、波線状の突起が複数配列された板状部材であってもよい。さらには、これらの形状が組み合わされた突起を有する板状部材であってもよい。
【0075】
(2)上記実施形態1においては、隣り合う突起64との配置間隔Tが略同一となるように設定されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、板状部材の端部から略中央部(通過部62近傍)に向かうに従って隣り合う突起64との配置間隔が狭くなるように設定された板状部材であってもよいし、反対に当該配置間隔が広くなるように設定された板状部材であってもよい。
また、上記実施形態1においては、隣り合う突起64との配置間隔Tが突起64の幅Wよりも大きく設定されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上記配置間隔Tと突起の幅Wとを同じ値に設定してもよいし、上記配置間隔Tを突起の幅Wよりも小さく設定してもよい。
【0076】
(3)上記実施形態2においては、板状部材160の長辺側端部の一方(通過部62が形成される側の長辺)に、y方向に沿って伸びる複数の歯166が配置された場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
図14は、変形例5及び6の板状部材160A,160Bを示す図である。図14(a)は変形例5の板状部材160Aをz方向に沿って見た平面図であり、図14(b)は変形例6の板状部材160Bをz方向に沿って見た平面図である。
板状部材としては、例えば、図14(a)及び図14(b)に示すように、2つの長辺の両方にクシ歯部164A,165A,164B,165Bが配置された板状部材160A,160Bであってもよい。この場合、図14(a)に示すように、クシ歯部164A,165Aのそれぞれの歯166A,167Aのx方向に沿った位置が、揃ったものであってもよいし、図14(b)に示すように、クシ歯部164B,165Bのそれぞれの歯166B,167Bのx方向に沿った位置が、互い違いにずれたものであってもよい。また、図示による説明は省略するが、板状部材の短辺側端部の一方又は両方に、x方向に沿って伸びる複数の歯が配置されていてもよい。さらには、上記した歯の配置方向が適宜組み合わされたものであってもよい。
【0077】
(4)上記実施形態2においては、図11及び図12に示したように、クシ歯部164における複数の歯166の付け根部分から先端部分までが、y方向に沿って略平行に伸びるように構成されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではい。例えば、複数の歯の先端部分を基部20側に曲げた構成であってもよい。これにより、例えば、患者の皮膚から湾曲針を抜くにあたって板状部材を上から押さえたときに、複数の歯による患者の皮膚への食い込みを抑制することが可能となる。
【0078】
(5)上記各実施形態においては、板状部材が略長方形状である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、楕円形状や丸形状の板状部材であってもよいし、三角形状や正方形状の板状部材であってもよいし、5角形以上の多角形状の板状部材であってもよい。
【0079】
(6)上記各実施形態においては、板状部材に形成される通過部が、スリット状(切れ込み状)のものである場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。通過部としては、例えば、湾曲針10が通過する位置(板状部材の略中央部)に形成された穴(丸穴や角穴)であってもよい。また、上記実施形態2においては、クシ歯部164における複数の歯166の隙間(歯と歯の隙間)を通過部として利用してもよい。
【0080】
(7)上記各実施形態においては、基部20、伸縮部30、板状部材60,160及び翼部70が一体成形されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、これら各部材を個別に作成した後、各部材を接合してもよい。
【0081】
(8)上記各実施形態においては、基部20、伸縮部30、板状部材60,160及び翼部70が同一のプラスチック材料(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど。)からなる場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、部材ごとで異なるプラスチック材料を用いてもよいし、プラスチック材料以外の材料でこれら部材を形成してもよい。
【0082】
(9)上記各実施形態においては、湾曲針10の湾曲部14が90度湾曲している場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。90度未満又は90度を超える角度で湾曲した湾曲針を備える医療用針についても本発明を適用可能である。
【0083】
(10)上記各実施形態においては、翼部70が、基部20の側方に接続配置された一対の翼部材である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、基部20の上方に1つの翼部材がz方向に沿って伸びるように配置されていてもよい。また、上記各実施形態においては、略矩形状の把持部72,74を有する翼部70を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、略矩形状とは異なる形状(例えば丸形状など)の把持部を有する翼部であってもよい。
【0084】
(11)上記各実施形態においては、伸縮部30を折り畳んだときに第1及び第2伸縮部材32,36の広がる方向と板状部材60,160の長辺方向とが同じx方向で揃えられ、翼部70の把持部72,74がx方向に伸びる場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1及び第2伸縮部材の広がる方向と板状部材の長辺方向とが同じx方向で揃えられ、翼部の把持部がy方向に伸びるように構成されていてもよい。または、第1及び第2伸縮部材の広がる方向と板状部材の長辺方向とが同じy方向で揃えられ、翼部の把持部がy方向に伸びるように構成されていてもよい。
なお、後者の場合、すなわち、第1及び第2伸縮部材の広がる方向と、板状部材の長辺方向と、翼部の把持部が伸びる方向とが、基部20の長手方向であるy方向と同じ向きに揃えられているときには、医療用針全体のx方向の幅を比較的小さくすることができるため、例えば、医療用針を2つ以上並べて配置したいときに、各医療用針と繋がる各チューブの導出方向を一方向に揃えた状態で医療用針を配置することが可能となる。
【0085】
(12)上記各実施形態においては、基部として、チューブ接続部22を有する基部20を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、チューブ接続部が省略された基部(チューブ接続部を有しない基部)を備えていてもよい。この場合は、例えば、湾曲針10の基端部12を基部から露出させ、基端部12とチューブとを直接接続すればよい。
【0086】
(13)上記実施形態1においては、複数の突起64が形成された板状部材60を備える医療用針1について説明し、上記実施形態2においては、複数の歯166が形成された板状部材160を備える医療用針2について説明したが、複数の突起と複数の歯の両方が形成された板状部材を備える医療用針も、本発明に含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0087】
1,2 医療用針
10 湾曲針
12 湾曲針の基端部
14 湾曲部
16 湾曲針の先端部
20 基部
22 チューブ接続部
30 伸縮部
32 第1伸縮部材
34,38 屈曲部
36 第2伸縮部材
60,60A〜60D,160,160A,160B 板状部材
60s,160s 板状部材における基部20とは反対側の面(患者の皮膚側の面)
60w 板状部材における基部20側の面
62,162,162A,162B 通過部
64,64A〜64D 突起
70 翼部
72,74 把持部
77,78 薄肉部
80 針カバー部材
82 第1格納部
83 切り欠き
84 第2格納部
164,164A,164B,165A,165B クシ歯部
166,166A,166B,167A,167B 歯
AP アクセスポート
CL 歯の長さ
CT 隣り合う歯との配置間隔
CW 歯の幅
g (患者の皮膚と板状部材との間に生じる)空隙
h 突起の突出高さ
L 突起の長さ
S 患者の皮膚
T 隣り合う突起との配置間隔
W 突起の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定角度に湾曲した湾曲部(14)を有する湾曲針(10)と、
前記湾曲針(10)の一部が植設された基部(20)と、
前記基部(20)に設けられ、前記湾曲部(14)から前記湾曲針の先端部(16)に沿った第1(z)方向に伸縮可能に構成された伸縮部(30)と、
前記伸縮部(30)における前記基部(20)とは反対側に接続配置され、前記湾曲針(10)を通過させる通過部(162)を有する板状部材(160)とを備え、
前記伸縮部(30)は、前記伸縮部(30)を最も伸ばしたときの前記第1(z)方向に沿った長さが、前記湾曲針の先端部(16)から前記湾曲部(14)までの長さ以上となるように構成されており、
前記板状部材(160)は、前記第1(z)方向に直交する方向に向けて複数の歯(166)が伸びたクシ歯部(164)をさらに有することを特徴とする医療用針(2)。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用針において、
前記板状部材(160)における前記基部(20)とは反対側の面(160s)上で互いに交差する2方向のうち、前記湾曲針における基端部(12)側の部分から前記湾曲部(14)に沿った方向と同一方向を第2(y)方向とし、他方を第3(x)方向としたとき、
前記伸縮部(30)は、前記第3(x)方向に沿って広がるように構成されたパンタグラフ状の伸縮部材であって、
前記板状部材(160)は、前記第3(x)方向に長辺方向を有する略長方形状であり、
前記クシ歯部(164)における前記複数の歯(166)は、前記第2(y)方向に沿って伸びていることを特徴とする医療用針。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の医療用針において、
前記通過部(162)は、スリット状であることを特徴とする医療用針(2)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−52278(P2013−52278A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−275476(P2012−275476)
【出願日】平成24年12月18日(2012.12.18)
【分割の表示】特願2008−304842(P2008−304842)の分割
【原出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000200035)川澄化学工業株式会社 (103)
【Fターム(参考)】