説明

医療装置の較正中に滅菌環境を維持するための方法およびキット

【課題】正確な温度で使用の直前に医療装置を較正できる方法を提供する。
【解決手段】較正ステップ中に所望の温度の滅菌雰囲気中に医療装置を保つ方法が提供される。この方法は、医療装置および温度表示器を滅菌容器の中に、使用者に表示器が見えるように包装することを含む。次に、容器の温度が(容器に入れた温度表示器の表示で)室温で安定するように、熱を容器に加えることができる。室温になったら、滅菌雰囲気中に保ちながら装置を較正することができる。このような容器を含むキットおよび取り扱い説明書一式も提供される。上記のように、キットの容器には、滅菌された医療装置および温度表示器が、較正および/または0点調整中にその装置を滅菌環境の中に維持できるように、入っていてもよい。この場合、この方法およびキットは、医療処置をより高い精度および安全性をともなって行うことを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、医療装置の較正中に、特に、埋め込み型センサーの特定温度での較正中に、滅菌された環境を維持することができる方法およびキットに関するものである。
【0002】
〔発明の背景〕
医療処置では、通常、滅菌された医療装置を使用することが求められる。このような装置の一部は、使用する前に特定温度で較正を行う必要がある。しかしながら、装置を所望温度にする、および/または、装置を較正することで、その装置が汚染されることがあり、これにより、使用する前にさらに滅菌ステップが必要になることで、処置が複雑になる可能性がある。
【0003】
さまざまな医療用センサーが、一般にこのような困難に直面している。使用する前に、これらのセンサーは、所望の温度で較正および/またはゼロ点調整を行わなければならない。較正を行う一般的な方法の一つとしては、滅菌された環境を維持しつつ、体の状態を模倣するために、滅菌された水または生理食塩水を所望の温度まで温めることがある。このような方法では、滅菌してあるセンサーをパッケージから取り出し、滅菌した水または生理食塩水に入れることがある。つぎに、望み通りの較正を行うために、滅菌されていない較正用装置をセンサーとつなげることもある。このような処置には、多くの点で欠点がある。第一に、滅菌されていない較正用装置があるので、センサーが汚染される危険がある。つぎに、このような危険があるために、この処置では、較正用装置を滅菌されたセンサーに近づけることが制限されることもあり、この結果、較正が不正確になる可能性がある。このため、上述した較正方法は非効率であり、かつ、誤差を生じる傾向がある。
【0004】
センサーを利用した一部の装置の場合、装置は、正確な温度で使用直前に較正することが最良である。たとえば、特定の埋め込み型頭蓋内圧センサーは、埋め込む直前にちょうど体温で0点調整を行うことが必要である。このような侵襲的処置では、殺菌状態を維持しながら較正を正確に行うステップが、患者の安全性を向上させ、処置の成功率を上げるために必要である。
【0005】
〔発明の概要〕
ここで開示する実施形態は、較正および/または0点調整(zeroing)の処置中に医療装置を滅菌雰囲気に維持するための方法およびキットを提供する。より具体的には、ここで開示する実施形態は、使用者が医療装置を極めて厳密な所望温度(例えば体温)まで正確に持っていき、求められている較正および/または0点調整ステップを、その装置を滅菌環境から取り出すことなく行うことを可能にする。後述するように、ここで開示する実施形態は、装置を較正ステップ中に容器内に残すこと、したがって、まさに使用する時点(例えば埋め込む時点)まで容器内に残すことを可能にする。したがって、ここで開示された方法およびキットは、医療処置をより正確かつ安全に行うことを可能にする。本発明のさまざまな態様を以下にまとめた。
【0006】
一態様において、本発明は、医療装置の滅菌を保ちながら、その装置を極めて厳密な温度で較正するための方法を提供する。この方法は、温度表示器を滅菌容器内の医療装置の近傍に、温度表示器が医療装置の現在の温度を測定、表示できるように包装することを含む。さらに、温度表示器は、滅菌容器内に、使用者から見える状態(つまり、容器の透明部分を通して)を維持するように配置することができる。さらに、温度表示器は、滅菌容器内の所望の位置に表示器を固定できる接着層を含むことができる。
【0007】
次に、この方法は、医療装置を所望の温度にするように、容器に熱を加える、および/または、取り除くことを含むことができる。温度表示器は、温度の変化を表示でき、より具体的には、(例えば、目に見える色の変化で)いつ医療装置が所望温度で安定したかを使用者に示すことができる。例示的な実施形態では、温度表示器は、マイクロカプセル化液晶技術(microencapsulated liquid crystal technology)を利用でき、これにより、約0.5℃から約2.0℃の範囲における温度変化を示す目に見える色変化を可能にする。
【0008】
(目に見える温度表示器の示す)医療装置の温度が所望温度で安定したら、使用者は、その医療装置の較正および/または0点調整を行うことができる。較正の後、この方法は、滅菌された医療装置を容器から取り出すことと、この医療装置で所望の処置(例えば、医療装置の患者への埋め込み)を行うことをさらに含むこともできる。
【0009】
医療装置は、使用前に滅菌環境に維持すべきあらゆる種類の装置、より具体的には、所望の温度で行われる較正ステップの間、滅菌状態に維持すべきあらゆる種類の装置であってもよい。装置は、たとえば埋め込み型圧力センサー、温度センサー、酸素センサー、pHセンサー等のセンサーであってもよい。より具体的には、装置は、脳室内圧を測定できる埋め込み型圧力センサーであってもよい。この場合、センサーは、使用する(つまり、患者の頭蓋上または頭蓋内に埋め込む)直前に体温で較正される。
【0010】
本発明の別の態様では、キットが提供され、このキットは、医療装置および温度表示器を収容する滅菌容器(たとえば、ブリスター包装)を含んでいてもよい。前述したように、この容器は、医療装置および温度表示器を滅菌状態で維持することができる。さらに、温度表示器は、医療装置の近傍に、医療装置の現在の温度を正確に示すことができるように配置してもよい。さらに、温度表示器は、滅菌容器の透明部分を通して使用者に見えるように容器に対して配置してもよい。上記のように、温度表示器は、いつ温度表示器が所望の温度であるかを示すことができ、これにより、いつ医療装置が所望の温度であり、したがって較正の準備ができているかを正確に示すことができる。医療装置および温度表示器に加え、キットは、使い方(たとえば、その特定の医療装置を較正するときに従うべきステップ)についての取り扱い説明書を含んでいてもよい。
【0011】
ここに開示する実施形態の上記および他の態様は、以下により詳細に述べる。
【0012】
本発明は、以下の詳細な説明を添付図面とともに参照することにより、よりよく理解できるであろう。
【0013】
〔詳細な説明〕
本明細書に開示する装置および方法の構造、機能、製造方法、および、使用方法の原理を総合的に理解するために、特定の例示的な実施形態を以下に記載する。添付図面には、これらの実施形態の一つまたは複数の例が図示されている。当業者には分かるであろうが、本明細書に具体的に記載し、添付図面に図示した装置および方法は、非限定的な例示的実施形態であり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ定義される。ある例示的な実施形態との関連で図示または記載した特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。このような変更例および変形例は、本発明の範囲に含まれることが意図されている。
【0014】
ここで開示する実施形態は、医療装置を較正ステップ中に滅菌環境に維持することができる方法およびキットを提供するものである。より具体的には、この方法は、装置を容器に入れたままで装置を所望の温度(たとえば体温)で較正できるように、医療装置が滅菌容器内に配置されたままで、その医療装置の温度を正確に求めることができる。装置の温度は、滅菌された容器内に一緒に配置され、かつその医療装置の温度を正確に求めることができるように装置の近傍(たとえば、上、近く、または下)に配置された温度表示器によって正確に求めることができる。さらに、温度表示器は、容器の透明な部分を介して使用者に温度表示器が見えるように容器に対して配置することができる。
【0015】
図1は、ここに開示する方法に含まれるステップの例示的な実施形態の全体の概要である。示されているように、この方法は、概して、三つのステップで表すことができる。最初に、この方法は、医療装置と温度表示器とを滅菌された容器に入れることを含んでもよい(ステップ50)。つぎに、容器の中身(つまり、医療装置および温度表示器)を所望の較正温度(体温「B.T.」など)にするために、熱を加える(または、必要であれば取り除く)ことができる(ステップ100)。所望の温度になったら、装置を滅菌された環境に残したままで装置の較正および/または0点調整を行うことができる(ステップ150)。ステップ50、100および150を以下に詳細に説明する。
【0016】
前述したように、最初のステップ(ステップ50)は、医療装置および温度表示器を滅菌された容器に入れることを含む。この例示的な実施形態において、医療装置には感温センサーが含まれる。通常、このような医療装置は、使用直前に特定温度で較正することが求められる。さらに、このような装置の滅菌状態は、このような較正ステップまで、および、このような較正ステップの間、維持しなければならない。このようなセンサーは、圧力センサー、温度センサー、pHセンサー、酸素センサー、または、あらゆる他の種類のセンサーを含んでもよい。
【0017】
例示的な実施形態において、この装置は、譲受人の同時係属米国特許出願第10/907,665号に開示されているような圧力センサーを有する埋め込み型分路装置の実施形態の一つであってもよい。米国特許出願第10/907,665号は、2005年4月11日に出願されており、発明の名称が「圧力検出装置」であり、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。図2に示されているように、このような装置16は、患者の脳室とつなげて、脳室内圧力を測定することができる。このような装置の侵襲性のため、埋め込む時点まで装置16を滅菌状態に維持することは重要である。さらに、装置16を精度よく利用するためには、埋め込み型圧力装置16、特にその圧力センサーは、埋め込む直前に体温で0点調整を行う必要がある。
【0018】
図3Aおよび図3Bは、このような埋め込み型装置であって、ここで開示するキットまたは方法とで利用することができる装置の典型的な実施形態を示す。このため、圧力センサー組立体206が示されており、この圧力センサー組立体206は、流体の流れを調整するのに使用できる埋め込み型シャント、すなわち、バルブ200のバルブハウジング内に配置することができる。この例示的なバルブ200は、単体で使用することもできるし、脳室カテーテルの遠位端に配置された圧力センサー組立体、および/または、バルブ200の上流または下流に配置された他の圧力センサー組立体と組み合わせて使用することもできる。
【0019】
埋め込み型バルブ200は事実上どのような構成をしていてもよく、また、当該技術において公知のさまざまな埋め込み型バルブまたは容器を使用することもできるが、図3Aは、注入口202aおよび排出口202bを備えたバルブハウジング202を有する埋め込み型バルブ200を図示している。バルブハウジング202は、図3Bについてより詳細に説明するように、注入口202aから排出口202bへの流体の流れを制御するためのバルブ機構204と、バルブ200を通って流れる流体の圧力を測定するための圧力センサー組立体206とを有する。バルブ200のバルブ機構204および圧力センサー組立体206は、互いに、かつ、注入口202aおよび排出口202bと、直列に並んだ状態で示されており、また、圧力センサー組立体206はバルブ200の上流に配置されているが、バルブ200はさまざまな他の構成をしていてもよく、バルブ機構204、圧力センサー組立体206、注入口202aおよび排出口202bは、互いに対してさまざまな場所に配置されてもよい。たとえば、注入口202aがバルブ200の長手方向軸に対して実質的に横向きに伸びるように、注入口202aは、圧力センサー組立体206に対して直角に伸びてもよい。バルブ機構204もまた、さまざまな構成を有することができる。非限定的な例であるが、バルブの例は、米国特許第3,886,948号、第4,332,255号、第4,387,715号、第4,551,128号、第4,595,390号、第4,615,691号、第4,772,257号、および、第5,928,182号に記載されており、これらの米国特許は参照によりここに組み込まれる。
【0020】
例示的な圧力センサー組立体206が図3Bに、より詳細に示されている。圧力センサー組立体206は、ハウジングまたは容器208と、センサー212と、裏板216とを含むことができる。図示の圧力センサー組立体206は、より詳細に後述するように、針受け210と、ワッシャー214とをさらに含む。
【0021】
センサーハウジング208は、さまざまな形状および大きさであってもよいが、図示の例示的な実施形態では、センサーハウジング208は、ほぼ半球形状またはドーム状の部分208aを有し、このドーム状部分208aは、中にポンピング用容器を画定している。センサーハウジング208は、バルブ200の注入口202aとつながっている注入チューブ208cと、バルブ200の排出口202bとつながっている排出チューブ208dとをさらに含んでいてもよい。センサーハウジング208を裏板216に接合させると、ハウジング202によって画定される容器チャンバーが密閉され、これにより、流体がバルブ200の注入口202aから、センサーハウジング208を通り、バルブ機構204を通って、そして、バルブ200の排出口202bから流れ出ることが可能となる。センサーハウジング208は、フランジ208bをさらに含んでいてもよく、このフランジ208bは、ドーム状部分208aの基部のまわりに形成され、装置を組織に固定できるようにしている。たとえば、フランジ208bは、一つまたは複数の縫合用穴部を含んでいてもよく、この縫合用穴部は、縫合糸を中に通してフランジ208bを組織に取り付けるために、フランジ208bの中に形成されている。
【0022】
前述したように、センサーハウジング206は、中にセンサー212が配置されていてもよい。センサー212は、マイクロチップに形成されていてもよく、このマイクロチップは、検出した圧力を外部装置に伝えるためのアンテナに連結されていてもよい。アンテナは実質的に円形の形状をしていてもよく、マイクロチップセンサーはそのアンテナに連結されていてもよい。アンテナはさまざまな形態をとることができ、たとえば、金のマイクロコイルなどであってもよい。センサー212は、前述したように、センサーハウジング208を通って流れる流体からセンサーを保護するために、周りに流体不浸透性コーティングが施されていてもよい。大きさは、バルブ200によっていろいろであろうが、ある例示的な実施形態では、マイクロチップセンサー212の大きさが約1mmから3mmの範囲であり、より好ましくは約2.5mmである。前述したように、圧力センサーおよびアンテナの例示的な実施形態は、米国特許第5,321,989号、米国特許第5,431,057号、および、欧州特許第1 312 302号に詳細に記載されている。
【0023】
使用時には、センサーハウジング208の内部に配置されたセンサー212が、センサーハウジング208を通って流れる流体の圧力を測定するように構成される。具体的には、バルブ200の注入口202aは、脳室からの流体の流入を受けるよう脳室カテーテルに連結でき、排出口202bは、排液カテーテルに連結できる。流体がセンサーハウジング208に入ると、流体の圧力がセンサー212に形成された能動センサー薄膜に力を加え、これにより、流体の圧力を測定可能にする。検出された圧力は、アンテナを介して外部読み取り装置まで伝えることができる。
【0024】
前述したように、かつ、図3Bにさらに示すように、センサー組立体206は、ワッシャー214をさらに含むことができる。ワッシャー214は、センサー212を固定させ、これによりワッシャー214およびセンサー212が裏板216に押し付けられた状態に配置されるように設けることができる。ワッシャー214はまた、センサー212の面がワッシャー214の面よりも若干低くなるように構成されてもよい。このような構成は、ハウジング208に流体をポンプ式に流すため、または、他の方法でバルブの試験を行うため、もしくは、バルブから壊死組織片を取り除くためにハウジング208のドーム状部分208aを押し下げた場合に、損傷を受ける可能性からセンサー212を保護する。
【0025】
図3Bにさらに示されているように、センサー組立体206は、センサー212を保護するための針受け210をさらに含んでいてもよい。具体的には、針受け210は、ドーム状部分208aを押し下げたときに、センサー212がハウジング208のドーム状部分208aと接触することを防ぐことができる。これは、針受け210をセンサー212とドーム状部分208aとの間に位置させることができるからである。針受け210はまた、センサーハウジング208のドーム状部分208aを通して挿入された針からセンサーを保護し、これにより、センサー212が損傷を受ける可能性を防止するために設けることもできる。針は、センサーハウジング208に流体を送る、またはセンサーハウジング208から流体を抜くために使用され得る。針受け210の形状はセンサー組立体206の形状によってさまざまであるが、例示的な実施形態では、示されているように、針受け210は実質的に平坦で、円形形状をしており、また、針受け210は、ハウジング208のドーム状部分208aとセンサー212との間に配置されるように構成されている。もっとも、針受け210は、そこに形成された開口部であって、流体がセンサーハウジング208の中を流れて、センサー212と接触することができるように、マイクロチップセンサー212の近傍に配置された開口部を含んでもよい。例示的な実施形態では、使用者が誤ってその開口部に針を挿入することを防止するために、フランジ、すなわち、保護部材がその開口部の上に、流体の流れに対してその開口部を塞ぐことがないように配置される。当業者には分かるであろうが、センサー212を保護するのにさまざまな他の方法を用いることもできる。
【0026】
このような埋め込み型圧力センサーの補足的な説明および他の実施形態は、組み込まれている譲受人の出願である米国特許出願第10/907,665号にみられる。
【0027】
ここで開示する方法は、図4に図式的に示されているように、温度表示器18および医療装置16が滅菌雰囲気に維持されるように、温度表示器18を容器12の中に入れることをさらに含む。さらに、温度表示器18は、温度表示器18の読み取り値が医療装置16の温度に関する正確な読み取り値を与えることができるように医療装置16に対して配置してもよい。この場合、温度表示器18は、医療装置16の温度に関して正確な読み取り値を与えるように、医療装置の上、隣り、近く、下等に配置してもよい。医療装置16のセンサーを温度で較正をする場合、温度表示器18は、装置16のその部分の温度の正確な読み取り値を与えるように配置しなければからない。
【0028】
さらに、部品(たとえば、温度表示器18および医療装置16)は、医療装置16を滅菌環境から取り出す前に温度表示器18が使用者に見えるように、包装することができる。後述するように、このように包装すると、使用者は、温度表示器18の色変化を見ることができる。この色変化は温度変化を示すものであり、そして結局は、温度表示器18の温度、そしてそれゆえに医療装置16の温度がいつ所望の温度(つまり、較正温度)で安定したかを示すものである。
【0029】
図4の実施形態において、容器14の長さ14aおよび幅14bは、温度表示器18を滅菌環境の中に残したままで、使用者が温度表示器18を見ることができるように、透明部材(たとえばポリマーまたはポリマー混合物)を含む。示されているように、温度表示器18が医療装置の温度を正確に測定し、示すことができるように、(点線で示した)医療装置16は、温度表示器18の下に配置することができる。例示的な実施形態では、容器14はブリスター包装であってもよい。さらに、滅菌容器14は、キット10の輸送および/または保管中に、装置16への損傷を防止することができる(図5に示されている)外側容器12の中に入れてもよい。当業者には分かるであろうが、さまざまな構成の容器12、14が本発明の趣旨および範囲内にある。
【0030】
図5の分解図に図示のように、医療装置を最大限滅菌するとともに、温度表示器18の精度を最大限にするように、さまざまな部品を外側容器12に入れることができる。図示のように、医療装置16は、多層のブリスター包装21、23、29、31の中に収められるように配置することができる。さらに、温度表示器18は、発泡プラスチック製(foam)(または同様の種類の材料からなる)保持体19の一方の面に、(たとえば、接着剤によって)接着してもよく、その保持体19を装置16のすぐ上に配置し、これにより温度表示器18が医療装置16の温度を正確に測定することができるようにしてもよい。さらに、さまざまな識別要素(たとえばエックス線不透過性チューブ27および/またはセンサー識別情報25)を滅菌容器14の中に収めることができる。
【0031】
さまざまな他の部品も外側容器12に入れることができる。たとえば、さまざまな患者/使用者の情報、使用説明書等を容器12の中に入れることができる。示されているように、このような使用説明書が入ったCD/DVD33を容器12に入れてもよい。輸送および/または保管の前に、適当なラベル37を容器12に貼ってもよい。当業者には分かるであろうが、本発明の趣旨および範囲内にとどまりつつも、さまざまな部品を上述した実施形態に加えたり、取り除いたりすることができる。
【0032】
次に温度表示器18に言及すると、温度表示器18は、温度変化を正確に測定でき、目に見えるように表示できるどのような装置であってもよい。たとえば、温度表示器18は、温度の変化に応じて色を変化させてもよいし、数値を変化させてもよい。ある実施形態において、温度表示器18は、温度における変化を(たとえば色を変えることによって)約0.5℃から約2.0℃の範囲で検出し、示すことができる。ある例示的な実施形態では、温度表示器18は、約0.5℃の温度変化を検出し、示すことができる。
【0033】
図6は、ここで開示している方法で利用することができる温度表示器18の例示的な実施形態を示している。示されているように、温度表示器18は、いくつかのセグメント20、22、24を含み、各セグメントは、特定の温度に反応する(つまり、発光する)ことができる。ある例示的な実施形態では、セグメント20、22、24はそれぞれ三つの異なる温度に反応することができる。ここで、温度1は温度2とは約0.5℃から約1.5℃異なり、温度2は温度3とは約0.5℃から約1.5℃異なる。ある例示的な実施形態では、第一のセグメント20が約37℃の温度を示すために色を(たとえば緑に)変え、その間、他のセグメント22、24は黒のままでいる。つぎに、第二のセグメント22は、約38℃の温度を示すために色を変え(これは緑であってもよいし、異なる色であってもよい)、その間、他のセグメント20、24は黒のままでいる(または黒に戻る)。最後に、第三のセグメント24は、約39℃の温度を示すために色を変える(緑または他の色)ように構成され、その間、残りのセグメント20、22は黒のままでいる(または黒に戻る)ように構成されることができる。このように、この例では、温度表示器18は、37℃、38℃、および、39℃を識別することができ、これにより、医療装置16を所望の温度(たとえば、38℃ではなく37℃)で正確に較正する、および/または0点調整をすることができる。当業者には分かるであろうが、温度表示器18は、本発明の趣旨および範囲内で、任意の数および任意の形状のセグメントを含むことができる。さらに、当然のことながら、これらのセグメントは、任意の温度範囲を示すように構成することができる(たとえば、37℃、38℃、39℃ではなく20℃、21℃、22℃)。ある例示的な実施形態では、温度表示器18は、オハイオ州ビバークリークのアメリカン・サーマル・インスツルメンツ社から入手できるマイクロカプセル化された液晶温度表示器である。
【0034】
液晶という用語は、従来の結晶性固体と等方性液体との間の中間の物質の状態に与えられた名前の一つである。他の名前としては中間相(mesophase)や中間状態(mesomorphic state)がある。液晶は、液体の機械的特性(つまり流れる)および固体の光学的特性(つまり非等方性である)を有する。液晶は、それ自体に固有の特性をいくつかさらに有しており、これが液晶の実用的な応用例の基礎となっている。
【0035】
数多くの異なる種類の液晶がある。特に有用なある種類の液晶は、歴史的にコレステリック液晶として知られている。これらの材料は選択的に光を反射する能力があり、反射光の色は温度が変化したときに変えることができる。温度が変化する通常の順序は、液晶の色反射温度範囲内で温度が上がるにつれ赤から緑、そして青(可視スペクトルの端から端まで)というものである。液晶に固有の感温特性から、この材料はサーモクロミック液晶(TLC)とも呼ばれている。ある反射光から別の反射光へ変化する速度や、所定の色変化が生じる具体的な温度は、正確に調整することができる。
【0036】
このような装置を製造する一般的な方法は、好ましくはマイクロカプセル化されたサーモクロミック液晶(TLC)混合物を含む被覆材(インク)を作り、これを支持基盤に塗布するのに印刷法を用いることである。つぎに黒色インクを乾燥したTLC被覆材の上に塗布し、色変化の効果は、シートの反対側(被覆されていない側)から見る。液晶温度計/温度表示器は、普通、一連の液晶「イベント」からなり、このイベントが、温度が変化するに従い順に色を変える。TLC温度計の各番号(温度)の背後または近傍には、「能動(active)」領域がある。この能動領域は、問題となっている温度で色が変わるように設計された、正確に較正されたTLC混合物で被覆されている。
【0037】
当業者には分かるであろうが、医療装置16および温度表示器18は、一般に認められている包装手順であって、容器12内の滅菌状態を最適化し、保証するように用意された包装手順に従って、製造者により容器12内に包装することができる。あらゆるこの種の包装処理は、明らかに、本発明の趣旨および範囲内にある。
【0038】
図1に戻って参照すると、最初のステップ(ステップ50)に続いて、この方法は、温度表示器18を所望の温度にするため、そしてそれゆえに医療装置16を所望の温度にするために熱を加える(または必要であれば熱を除去する)ことを含む(ステップ100)。前述したように、温度表示器18は、その温度が医療装置16の温度を示すように医療装置16に対して配置することができる。例示的な実施形態では、(透明な容器14を通して見た)温度表示器18が、温度が較正温度で安定したことを示すまで、滅菌状態の内側容器14に熱が(必要に応じて)加えられる、および/または取り除かれる。例示的な実施形態では、較正温度は体温である。
【0039】
当業者には分かるであろうが、容器14に熱を加える、および/または取り除くことができるあらゆる装置および/または方法を、ここで開示した方法で利用することができる。より具体的には、容器14の中身(つまり、医療装置16および温度表示器18)を所望の時間、一定の温度に維持できるように容器14に所定量の熱を送ることができるあらゆる加熱装置が本発明の趣旨および範囲内にある。
【0040】
温度表示器18が、医療装置16の温度が較正温度で安定したことを示すと、装置16を使用できるように較正し、および/または、0点調整することができる(ステップ150)。さまざまな医療処置は、正確で信頼性のある表示値を得るために、医療装置16を使用前に所望の温度で較正し、および/または、0点調整すること求めている。このため、例示的な実施形態では、(前述した埋め込み型圧力センサーの場合のように)医療装置16の温度が体温にあることを温度表示器18が示している間に、装置16を較正する。較正をしたら、この方法は、さらに、滅菌されている医療装置16を滅菌容器14から取り出すこと、および、その医療装置16を所望の処置で利用することを含むことができる。
【0041】
当業者には分かるであろうが、本方法は、さまざまなステップを加えたり、抜いたり、および/または、変更したりすることができる。このような方法も明らかに本発明の趣旨および範囲内にある。
【0042】
上述の方法に加え、キット10(図4参照)も提供される。キット10は容器12を含み、容器12には、医療装置16および温度表示器18を滅菌状態で収めることができる。さらに、キット10は、どのようにして、温度表示器18の助けを借りて、医療装置16を所定温度において較正し、および/または、0点調整するかについての使用説明書を含んでいてもよい。上述した方法と同様に、キット10は、医療装置16を常に滅菌された環境に保ちつつ所望の温度で較正することを可能にする。
【0043】
例として図3Aおよび3Bの装置200と図5の包装とを用いると、この装置は、発泡プラスチック製(foam)中敷19とともに包装することができる。中敷19は、温度表示器18を装置に押しつけるように、特に、圧力センサー212の近傍に押しつけるように押し上げる。装置といっしょに包装された識別体25は、較正係数および/またはデータを製造時から入手することができる、固有の圧力センサー212を示してもよい。包装は、装置が体温に達したことを温度表示器が示すまで加熱されることができ、そして、携帯型プログラマー/通信装置(図4)が、装置から圧力を示す信号を読むために使用されることができる。センサーが体温にあり、かつ、周囲圧力にあるとすると、この読み取り値は、埋め込まれた後に患者の脳脊髄液の頭蓋内絶対圧を計算するために用いられるであろう装置からのその後の信号と比較するために、この一つのセンサーが「0点にあること(zeroing)」を表す。
【0044】
当業者には、上述した実施形態に基づいて、本発明の他の特徴および利点が分かるであろう。よって、本発明は、添付した特許請求範囲によって示す場合を除き、具体的に示され、かつ、記載されたことによっては限定されない。本明細書で引用した全ての刊行物および参考文献は、その全内容が参照により本明細書に特に組み込まれるものである。
【0045】
〔実施の態様〕
(1)医療装置の較正方法において、
温度表示器を滅菌容器内の医療装置の近傍に、前記温度表示器が前記医療装置の現在の温度を測定および表示できるように、包装することであって、前記温度表示器は、前記滅菌容器の透明部分を通して使用者に見えることと、
前記温度表示器が所望の温度を示すまで前記滅菌容器に熱を加えることと、
前記医療装置を前記所望の温度で較正することと、
を含む、方法。
(2)実施態様1に記載の方法において、
前記容器から前記医療装置を取り出すことと、
前記医療装置で所望の処置を行うことと、
をさらに含む、方法。
(3)実施態様2に記載の方法において、
前記医療装置は、センサーである、方法。
(4)実施態様3に記載の方法において、
前記センサーは、温度センサー、酸素センサー、および、pHセンサーの群から選択される、方法。
(5)実施態様1に記載の方法において、
前記医療装置は、脳室内圧を測定できる埋め込み型圧力センサーである、方法。
【0046】
(6)実施態様5に記載の方法において、
前記埋め込み型圧力センサーは、前記センサーを患者の頭蓋に埋め込む直前に体温において較正される、方法。
(7)実施態様6に記載の方法において、
前記温度表示器は、マイクロカプセル化された液晶温度表示器である、方法。
(8)実施態様7に記載の方法において、
前記温度表示器は、約0.5℃の温度変化を検出および表示することができる、方法。
(9)実施態様8に記載の方法において、
前記温度表示器は、所望の位置に前記温度表示器を固定できる接着層を含む、方法。
(10)キットにおいて、
医療装置および温度表示器を収容する滅菌容器であって、前記温度表示器は、前記医療装置に対して、前記温度表示器が前記医療装置の現在の温度を表示できるように配置され、前記温度表示器は、さらに、前記滅菌容器の透明部分を通して前記温度表示器が使用者に見えるように前記滅菌容器内に配置される、滅菌容器と、
使い方に関する取扱説明書と、
を備える、キット。
(11)実施態様10に記載のキットにおいて、
前記医療装置は、センサーである、キット。
【0047】
(12)実施態様11に記載のキットにおいて、
前記センサーは、圧力センサー、温度センサー、酸素センサー、および、pHセンサーの群から選択される、キット。
(13)実施態様11に記載のキットにおいて、
前記センサーは、埋め込み型圧力センサーである、キット。
(14)実施態様13に記載のキットにおいて、
前記埋め込み型圧力センサーは、脳室内圧を測定できる、キット。
(15)実施態様14に記載のキットにおいて、
前記温度表示器は、マイクロカプセル化された液晶技術である、キット。
(16)実施態様15に記載のキットにおいて、
前記温度表示器は、約0.5℃の温度変化に応じて第一の色から第二の色に変わることができる、キット。
(17)実施態様15に記載のキットにおいて、
前記温度表示器は、約0.5℃から約2.0℃の範囲の温度変化に応じて第一の色から第二の色に変化することができる、キット。
(18)実施態様15に記載のキットにおいて、
前記温度表示器は、前記医療装置近傍の所望の位置に前記温度表示器を固定できる接着層を含む、キット。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】ここで開示する方法に係る例示的実施形態の図式的概要である。
【図2】患者の脳とつながっている埋め込み型圧力センサーを表示した図である。
【図3A】ここで開示する方法および/またはキットの実施形態で利用できる圧力センサーを有する埋め込み型装置の上面図である。
【図3B】図3Aの埋め込み型装置の分解図である。
【図4】医療装置を滅菌環境に維持できるブリスターパッケージの例示的実施形態の正面図である。
【図5】図4の容器の分解図であり、容器内に収容できるさまざまな部品を示している図である。
【図6】ここで開示する温度表示器の例示的実施形態である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療装置の較正方法において、
温度表示器を滅菌容器内の医療装置の近傍に、前記温度表示器が前記医療装置の現在の温度を測定および表示できるように、包装することであって、前記温度表示器は、前記滅菌容器の透明部分を通して使用者に見えることと、
前記温度表示器が所望の温度を示すまで前記滅菌容器に熱を加えることと、
前記医療装置を前記所望の温度で較正することと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記容器から前記医療装置を取り出すことと、
前記医療装置で所望の処置を行うことと、
をさらに含む、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
前記医療装置は、センサーである、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
前記センサーは、温度センサー、酸素センサー、および、pHセンサーの群から選択される、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
前記医療装置は、脳室内圧を測定できる埋め込み型圧力センサーである、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
前記埋め込み型圧力センサーは、前記センサーを患者の頭蓋に埋め込む直前に体温において較正される、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
前記温度表示器は、マイクロカプセル化された液晶温度表示器である、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、
前記温度表示器は、約0.5℃の温度変化を検出および表示することができる、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、
前記温度表示器は、所望の位置に前記温度表示器を固定できる接着層を含む、方法。
【請求項10】
キットにおいて、
医療装置および温度表示器を収容する滅菌容器であって、前記温度表示器は、前記医療装置に対して、前記温度表示器が前記医療装置の現在の温度を表示できるように配置され、前記温度表示器は、さらに、前記滅菌容器の透明部分を通して前記温度表示器が使用者に見えるように前記滅菌容器内に配置される、滅菌容器と、
使い方に関する取扱説明書と、
を備える、キット。
【請求項11】
請求項10に記載のキットにおいて、
前記医療装置は、センサーである、キット。
【請求項12】
請求項11に記載のキットにおいて、
前記センサーは、圧力センサー、温度センサー、酸素センサー、および、pHセンサーの群から選択される、キット。
【請求項13】
請求項11に記載のキットにおいて、
前記センサーは、埋め込み型圧力センサーである、キット。
【請求項14】
請求項13に記載のキットにおいて、
前記埋め込み型圧力センサーは、脳室内圧を測定できる、キット。
【請求項15】
請求項14に記載のキットにおいて、
前記温度表示器は、マイクロカプセル化された液晶技術である、キット。
【請求項16】
請求項15に記載のキットにおいて、
前記温度表示器は、約0.5℃の温度変化に応じて第一の色から第二の色に変わることができる、キット。
【請求項17】
請求項15に記載のキットにおいて、
前記温度表示器は、約0.5℃から約2.0℃の範囲の温度変化に応じて第一の色から第二の色に変化することができる、キット。
【請求項18】
請求項15に記載のキットにおいて、
前記温度表示器は、前記医療装置近傍の所望の位置に前記温度表示器を固定できる接着層を含む、キット。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−39512(P2009−39512A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−157387(P2008−157387)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(500140415)コドマン・アンド・シャートレフ・インコーポレイテッド (34)
【氏名又は名称原語表記】Codman & Shurtleff, Inc.
【住所又は居所原語表記】325 Paramount Drive, Raynham, Massachusetts 02767−0350, U.S.A.
【Fターム(参考)】