医療装置
【課題】 例えば管孔に挿入される挿入部の一部である管状部が外力を受けたときに使用者の判断又は適宜の設定で管状部を曲がり易くしたり曲がり難くしたりすることができ、すなわち挿入部の少なくとも一部の硬度を調整でき、曲がりくねった管孔に挿入し易くした医療装置を提供する。
【解決手段】 医療装置12は、湾曲部34と、前記湾曲部の基端部に設けられ可撓性を有する管状部36とを有する挿入部24と、前記湾曲部を湾曲させる湾曲駆動機構34a,42,46,52と、電源Pと、前記電源から供給される電力により駆動される駆動源Mと、少なくとも一部が前記管状部に配設され前記駆動源から駆動力を伝達する伝達部66,68,36aと、前記電源と前記駆動源との間の接続を調整して前記駆動源から前記伝達部に伝達する駆動力を調整する調整部72,74とを有し、前記管状部の少なくとも一部の硬度を調整可能な硬度調整機構60とを有する。
【解決手段】 医療装置12は、湾曲部34と、前記湾曲部の基端部に設けられ可撓性を有する管状部36とを有する挿入部24と、前記湾曲部を湾曲させる湾曲駆動機構34a,42,46,52と、電源Pと、前記電源から供給される電力により駆動される駆動源Mと、少なくとも一部が前記管状部に配設され前記駆動源から駆動力を伝達する伝達部66,68,36aと、前記電源と前記駆動源との間の接続を調整して前記駆動源から前記伝達部に伝達する駆動力を調整する調整部72,74とを有し、前記管状部の少なくとも一部の硬度を調整可能な硬度調整機構60とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は管孔内に挿入される部位を有する医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、湾曲操作スイッチの操作に応じて、制御回路が4つのトランジスタをオン/オフし、モータへの印加電圧のオン/オフ制御を行うことが開示されている。また、エンコーダを介してモータの回転速度を監視しつつ、モータへの印加電圧のオン/オフ制御を行うことによって、段階的に可変設定できる所定の速度でモータを駆動・制御することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−38328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来からのモータを利用した内視鏡の挿入部の湾曲部の湾曲制御では、湾曲動作の停止時にはモータの回転軸にブレーキがかかる短絡状態と、モータの回転軸を自由に回転させることができるフリー状態との一方の状態に固定されている。このため、フリー状態の内視鏡であれば、内視鏡の湾曲部に外力が加えられると、湾曲部を湾曲させることができ、短絡状態の内視鏡であれば、モータの回転軸の回転にブレーキがかけられるため、湾曲部に加えられる外力に対して抵抗が発生して湾曲部が曲がり難い状態となる。
【0005】
このため、モータが短絡状態の内視鏡を用いると、外力に対して湾曲部が曲がり難く、曲がりくねった部位を挿入していく際に挿入を阻害する場合があり、一方、モータがフリー状態の内視鏡を用いると、外力に対して湾曲部が曲がり易く、挿入部を奥側に押し込む際に湾曲部が意図せず湾曲してしまうため、力を先端硬質部に伝え難い場合がある。
【0006】
この発明は、例えば管孔に挿入される挿入部の一部である管状部が外力を受けたときに使用者の判断又は適宜の設定で管状部を曲がり易くしたり曲がり難くしたりすることができ、すなわち挿入部の少なくとも一部の硬度を調整でき、曲がりくねった管孔に挿入し易くした医療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る医療装置は、湾曲部と、前記湾曲部の基端部に設けられ可撓性を有する管状部とを有する挿入部と、前記湾曲部を湾曲させる湾曲駆動機構と、電源と、前記電源から供給される電力により駆動される駆動源と、少なくとも一部が前記管状部に配設され前記駆動源から駆動力を伝達する伝達部と、前記電源と前記駆動源との間の接続を調整して前記駆動源から前記伝達部に伝達する駆動力を調整する調整部とを有し、前記管状部の少なくとも一部の硬度を調整可能な硬度調整機構とを有する。
医療装置が管状部の少なくとも一部の硬度を調整可能な硬度調整機構を有するので、管状部を曲がり易くしたり曲がり難くしたりすることができる。すなわち、この医療装置は挿入部の少なくとも一部の硬度を調整できるので、曲がりくねった管孔に挿入部を挿入し易くすることができる。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、例えば管孔に挿入される挿入部の一部である管状部が外力を受けたときに使用者の判断又は適宜の設定で管状部を曲がり易くしたり曲がり難くしたりすることができ、すなわち挿入部の少なくとも一部の硬度を調整でき、曲がりくねった管孔に挿入し易くした医療装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(A)は第1実施形態に係る内視鏡システム(医療装置)を示す概略図、(B)は図1(A)中の矢印1B方向から挿入部の先端硬質部を観察した状態を示す概略的な正面図。
【図2】第1実施形態に係る内視鏡システムの内視鏡(医療装置)を示す概略図。
【図3】(A)は第1実施形態に係る内視鏡システムの内視鏡の操作部の第1ドラムを回転させたときに第1湾曲部を湾曲させた状態を示し、(B)は内視鏡の操作部のモータの回転軸を介してプーリを回転させたときに第2湾曲部を湾曲させた状態を示す概略図。
【図4】第1実施形態に係る内視鏡システムの内視鏡の挿入部と操作部との間に配置されるワイヤの状態を示し、(A)は第2湾曲部が真っ直ぐの状態の概略図、(B)は第2湾曲部がU方向に湾曲した状態を示す概略図。
【図5】第1実施形態に係る内視鏡システムの駆動制御部と駆動制御により制御される部材との関係を示す概略的なブロック図。
【図6】第1実施形態に係る内視鏡システムのフルブリッジ回路(Hブリッジ回路)を示し、(A)はモータの回転軸を正回転させる状態を示す概略図、(B)はモータの回転軸を逆回転させる状態を示す概略図、(C)はモータの回転軸にブレーキ機能を発揮させる状態を示す概略図、(D)はモータの回転軸を自在に回転させる状態を示す概略図。
【図7】第1実施形態に係る内視鏡システムの内視鏡の挿入部を挿入する対象となる大腸を示す概略図。
【図8】第1実施形態に係る内視鏡システムの内視鏡の挿入部を大腸の管孔内に挿入した状態を示し、(A)は第2湾曲部が軟状態で大腸の管孔内に存在している状態を示す概略図、(B)は第2湾曲部が軟状態で先端硬質部が大腸の内壁に当接したときに第2湾曲部が大腸の内壁からの反力を受けて湾曲した状態を示す概略図、(C)は第2湾曲部を硬状態にして第1湾曲部を90度を超える角度に湾曲させた状態を示す概略図、(D)は第2湾曲部を硬状態にした状態で、かつ、第1湾曲部を90度を超える角度に湾曲させた状態を維持して、大腸の内壁に対して挿入部を押し込んだ状態を示す概略図。
【図9】第1実施形態に係る内視鏡システムを用いずに内視鏡の挿入部を大腸の管孔内に挿入した状態を示し、(A)は第2湾曲部を硬状態にして先端硬質部で大腸の内壁を押圧した状態を示す概略図、(B)第2湾曲部を軟状態にして先端硬質部で大腸の内壁を押圧したときに第2湾曲部が反力を受けて湾曲した状態を示す概略図。
【図10】第1実施形態に係る内視鏡システムのフルブリッジ回路(Hブリッジ回路)の変形例。
【図11】第1実施形態の変形例に係る内視鏡システムを用いて大腸等の管孔の内部に挿入部を挿入していく際の処理を示す概略的なフローチャート。
【図12】第2実施形態に係る内視鏡システム(医療装置)を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながらこの発明を実施するための形態について説明する。
第1の実施の形態について図1から図9を用いて説明する。なお、図9(A)及び図9(B)はこの実施形態に係る内視鏡システム10とは異なる内視鏡システムを用いて大腸の内部に挿入部を挿入した状態を示す参考図である。
【0011】
図1(A)に示すように、第1実施形態に係る内視鏡システム(医療装置)10は、内視鏡(医療装置)12と、内視鏡12に着脱自在に接続され、この内視鏡12の照明光学系30に光学的に接続され照明光を供給する光源14と、内視鏡12に着脱自在に接続され内視鏡12の観察光学系28を制御すると共にこの観察光学系28から得られた信号を処理して映像信号を出力するビデオプロセッサ16と、ビデオプロセッサ16で信号処理して得られた内視鏡画像を表示するモニタ18とを有する。ビデオプロセッサ16には、図示しない画像記録装置などを接続可能である。なお、内視鏡12とは別体の光源14の代わりに、照明光学系30の一部としてLED等の小型光源を内視鏡12の後述する操作部22の内部や挿入部24の先端硬質部32等に内蔵しても良い。
【0012】
内視鏡12は、術者に把持されて後述する第1湾曲部34の湾曲操作などが可能な操作部22と、操作部22から延出され後述する管孔LI(図8及び図9に示す大腸の腸管にも同じ符号を付す)内の被検体(観察対象部位)に挿入される細長の挿入部24と、操作部22から延設され、観察光学系28に接続する信号ケーブルや光源14からの照明光を伝達するライトガイドなどを内蔵したユニバーサルコード26と、このユニバーサルコード26の端部に設けられ、光源14及びビデオプロセッサ16に着脱自在に接続されるコネクタ部26aとを有する。すなわち、挿入部24の基端部には操作部22が設けられて、操作部22からユニバーサルコード26が延出されている。
なお、操作部22及び挿入部24の内部には、図1(B)に示す観察光学系(撮像手段)28及び照明光学系(照明手段)30、更には図示しない処置具等を挿通するチャンネル32aが配設されている。
【0013】
挿入部24は、その先端に設けられた先端硬質部32と、この先端硬質部32の後端側に設けられ操作部22の操作により湾曲自在の第1湾曲部34と、この第1湾曲部34の後端側に設けられた湾曲自在の第2湾曲部(管状部)36と、第2湾曲部36の後端側に設けられ軟性で管状の部材により形成される長尺で可撓性を有する可撓管部(管状部)38とを有する。すなわち、先端硬質部32、第1湾曲部34、第2湾曲部36及び可撓管部38が、その先端側から基端側に向かって順に連設されて挿入部24が形成されている。
【0014】
上述したように、本実施形態では、内視鏡12の挿入部24は、先端硬質部32に近接する第1湾曲部34と、可撓管部38に近接する第2湾曲部(管状部)36との、2つの湾曲部34,36を有する。このうち、第1湾曲部34は操作部22の操作により能動的に湾曲する能動湾曲部として機能する。また、第2湾曲部36は後述する硬度調整機構60の一部として機能する。すなわち、第2湾曲部36は硬度調整機構60により硬度、すなわち外力を受けたときの曲がり易さを調整可能である。このため、第2湾曲部36は受動湾曲部として機能させることもできるし、可撓管部38の一部やそれよりも硬質の硬質部として機能させることもできる。
【0015】
図2に示す第1湾曲部34及び第2湾曲部36は、それぞれ公知の複数の湾曲駒で形成された湾曲管(第1及び第2湾曲駆動機構)34a,36aと、湾曲管34a,36aの外側に配設されたブレードと、ブレードの外側に配設された外皮とを有する。第1湾曲部34の湾曲管34aの先端には、第1湾曲部34の各湾曲方向に対応して例えば4本のアングルワイヤ(第1湾曲駆動機構)42(U,D,R,L)が固定されている。このため、第1湾曲部34を第1及び第2方向として上下(UP/DOWN)方向(図2中にU,Dで示す)及び第3及び第4方向として左右(RIGHT/LEFT)方向(図2中にR,Lで示す)に湾曲させることが可能である。
なお、この実施形態では、第1湾曲部34を4つの方向に湾曲させるものとするが、第1湾曲部34を第1及び第2方向として上下(UP/DOWN)方向(図2中にU,Dで示す)にのみ湾曲可能に構成することも好適である。
【0016】
図2に示すように、第1湾曲部34を上下方向に湾曲させる2本のアングルワイヤ42(U,D)は操作部22の内部の第1ドラム(第1湾曲駆動機構)46に巻回されて固定されている。第1湾曲部34を左右方向に湾曲させる2本のアングルワイヤ42(R,L)は操作部22の内部の第2ドラム(第1湾曲駆動機構)48に巻回されて固定されている。第1及び第2ドラム46,48は同一軸上に配置されている。操作部22の外部には、第1ドラム46を回動させる第1アングルノブ(第1湾曲駆動機構)52と、第2ドラム48を回動させる第2アングルノブ(第1湾曲駆動機構)54とが配設されている。第1及び第2アングルノブ52,54は同一軸上に配置されている。また、これら第1及び第2ドラム46,48、並びに、第1及び第2アングルノブ52,54は同一軸上に配置されている。そして、第1アングルノブ52をその軸周りに回転させると、第1ドラム46が同一軸周りに第1アングルノブ52と同じ角度だけ回転し、第2アングルノブ54をその軸周りに回転させると、第2ドラム48が同一軸周りに第2アングルノブ54と同じ角度だけ回転する。湾曲管34a、ワイヤ42、第1ドラム46、第1アングルノブ52は第1湾曲部34をU方向及びD方向に湾曲させる第1湾曲駆動機構を形成する。また、湾曲管34a、ワイヤ42、第2ドラム48、第2アングルノブ54は第1湾曲部34をR方向及びL方向に湾曲させる第1湾曲駆動機構を形成する。
なお、この実施形態では、第1湾曲部34が真っ直ぐの状態となる位置を第1アングルノブ52の初期位置(ニュートラル位置)として規定するとともに、第2湾曲部36が真っ直ぐの状態となる位置をモータMの初期位置(ニュートラル位置)として規定する。そして、第1アングルノブ52のU方向(プラス方向)及びD方向(マイナス方向)の回転可能角度、第1及び第2湾曲部34,36のU方向及びD方向の湾曲可能角度ψは対称であることが好ましい。特に、第1アングルノブ52の回転可能角度ψ及び第1湾曲部34の湾曲可能角度ηは、U方向及びD方向ともに、第1湾曲部34が真っ直ぐの状態(初期状態)η0から例えばそれぞれ180度程度であることが好ましい。第2アングルノブ54の回転可能角度及び第1湾曲部36の湾曲可能角度は、R方向及びL方向ともに、第1湾曲部34が真っ直ぐの状態(初期状態)から例えばそれぞれ160度程度であることが好ましい。また、第2湾曲部36の湾曲可能角度(最大湾曲角度)θは、U方向及びD方向ともに、第2湾曲部36が真っ直ぐの状態(初期状態)θ0から例えばそれぞれ120度程度であることが好ましい。
【0017】
第1ドラム46には第1ドラム46の回転位置を検知する検知部(検出部)としてのノブ位置検知用ポテンショメータ(入力量検出部)56が取り付けられている。このポテンショメータ56は操作部22の内部に配置されている。第1アングルノブ52の初期位置(第1湾曲部34が真っ直ぐの位置)に合わせてポテンショメータ56の初期設定をすることにより、このポテンショメータ56は、第1ドラム46の回転量、すなわち、第1アングルノブ52の回転位置(回転角度)ψを検出することができる。このため、ポテンショメータ56は、第1アングルノブ(第1湾曲操作入力部)52に入力された湾曲操作量を湾曲操作入力量として検出する。そして、図3(A)に示す第1アングルノブ52の回転量ψ、すなわち第1ドラム46の回転量ψと、第1湾曲部34のU方向及びD方向の湾曲量(湾曲角度)ηとは略対応している。このため、ポテンショメータ56を用いることによって、第1アングルノブ52の回転量に基づいて第1湾曲部34のU方向及びD方向の湾曲状態を推定することができる。
このため、ポテンショメータ56は第1湾曲部34が第1湾曲駆動機構により湾曲しているときに、第1湾曲部34の湾曲角度がある設定(閾値)角度(所定角度)を超えたことを検知する検知部として機能する。
【0018】
図2に示すように、この実施形態に係る内視鏡12は、第2湾曲部36の硬度を軟状態から硬状態に、及び、硬状態から軟状態に切り替え可能な硬度調整機構(硬度切替機構)60を有する。硬度調整機構60は、電源Pと、電源Pから供給される電力により駆動される駆動源であるモータMと、モータMに配設されたモータMの駆動力を伝達する伝達部であるプーリ66と、少なくとも一部が第2湾曲部36に配設されモータMからプーリ66を介して駆動力を伝達する伝達部であるワイヤ68(U’,D’)と、第2湾曲部36に配設されワイヤ68(U’,D’)の先端が接続された硬度調整対象部である湾曲管36aと、電源PとモータMとの間の接続を切り替えてモータMからプーリ66、ワイヤ68(U’,D’)を介して湾曲管36aに伝達する駆動力を選択する選択回路(電力供給選択部)であるフルブリッジ回路(Hブリッジ回路)72と、フルブリッジ回路72の後述するスイッチSW1,SW2,SW3,SW4を適宜に切り替える調整部としての切替部74とを有する。
湾曲管36aはプーリ66及びワイヤ68とともに、モータ(駆動源)Mからの駆動力を伝達する伝達部として機能し、湾曲管36aの最も先端の湾曲駒に駆動力が伝達されると第2湾曲部36を湾曲させたり、現在の形状を維持したりすることが可能となる。フルブリッジ回路72及び切替部74は駆動力を切り替え、すなわち、駆動力を調整する調整部として機能する。
【0019】
第2湾曲部36に設けられた湾曲管36aは複数の湾曲駒を有し、第2湾曲部36を第1及び第2方向と同じ方向、すなわち上下方向に湾曲させることが可能である。
【0020】
なお、図1及び図2では、モータM及びエンコーダ76は操作部22の外部に一部が突出するように描いたが、操作部22の内部に配置されていることも好ましい。また、モータMやエンコーダ76は操作部22の内部ではなく、挿入部24の内部に配置されていることも好ましい。
【0021】
図4(A)及び図4(B)に示すように、第2アングルワイヤ68(U’,D’)には、予めたるみ(sag)68a,68bを持たせてある。ワイヤ68(U’,D’)のたるみ量は図4(A)に示すモータM及びプーリ66が中立位置にある状態(第2湾曲部36が真っ直ぐの状態)から第2湾曲部36をU方向の最大湾曲角度まで湾曲させても、ワイヤ68(U’,D’)に僅かにたるみ68a,68bが残っている程度であることが好ましい。
【0022】
曲がった状態の第2湾曲部36が管孔LIの壁面(例えば体壁)に触れていても、ワイヤ68(U’,D’)に十分なたるみ68a,68bがあるため、たるみ68a,68bの分だけ第2湾曲部36をU方向に更に湾曲させ、又はU方向への湾曲量を減少させることができるので、第2湾曲部36を湾曲させた状態でも遊びがあり、第2湾曲部36を無理に逆方向に湾曲させることがない。したがって、管孔LIの内壁に大きな力を加えることがない。図示しないが、このような構造は第1湾曲部34及びワイヤ42でも同様であることが好ましい。
【0023】
図5に示すように、操作部22には、電源P及びモータMに接続されたフルブリッジ回路72が配設されている。図6(A)から図6(D)に示すように、フルブリッジ回路72は、例えばそれぞれパワー半導体からなるスイッチSW1,SW2,SW3,SW4を有する。モータMはスイッチSW1,SW2と、スイッチSW3,SW4との間に配置されている。これらスイッチSW1,SW2,SW3,SW4のオン/オフを制御することによって、電源PからモータMに流れ込む電流の方向を切り替えることができる。
【0024】
図6(A)に示すように、スイッチSW1,SW4をオンにし、スイッチSW2,SW3をオフにすると、モータMの回転軸64が正回転する。図6(B)に示すように、スイッチSW3,SW2をオンにし、スイッチSW1,SW4をオフにすると、モータMの回転軸64が逆回転する。すなわち、スイッチSW1,SW4とスイッチSW2,SW3とのオン/オフを切り替えることによってモータMに流れる電流の方向を制御し、モータMの回転軸64の回転方向を制御することができる。
【0025】
図6(C)に示すように、スイッチSW1,SW3をオンにし、スイッチSW2,SW4をオフにすると、モータMを短絡させることになる。このとき、モータMの回転軸64を回転させると、モータMが発電機として機能する。すなわち、モータMの回転軸64の回転による起電力を利用して、モータMをブレーキとして機能させることができる。
図6(D)に示すように、全てのスイッチSW1,SW2,SW3,SW4をオフにすると、モータMは回路的に解放した状態(フリー状態)となり、モータMの回転軸64を回転させるのに最も抵抗が少ない状態となる。
【0026】
モータMの回転軸64にはプーリ66が配設され、プーリ66には1対のワイヤ68(U’,D’)が巻回されている。そして、ワイヤ68(U’,D’)の先端部は第2湾曲部36の湾曲管36aのワイヤガイドを通して湾曲管36aの最も先端、すなわち最も先端の湾曲駒に固定されている。
このため、例えば図6(A)に示すように、モータMの回転軸64を正回転させると、第2湾曲部36の湾曲管36aをU方向に湾曲させることができる。一方、図6(B)に示すように、モータMの回転軸64を逆回転させると、第2湾曲部36の湾曲管36aをD方向に湾曲させることができる。
【0027】
モータMがフリー状態の場合、モータMの回転軸64を回転させるのに最も抵抗が少ない状態であるので、第2湾曲部36に外力が加えられると、湾曲管36aが回動するのに伴ってワイヤ68(U’,D’)がその軸方向に移動し、ワイヤ68(U’,D’)が巻回されたプーリ66が回動する。すなわち、回転させるのに最も抵抗が少ない状態のモータMの回転軸64が回動する。
【0028】
モータMが短絡状態の場合、第2湾曲部36に外力が加えられると、ワイヤ68(U’,D’)の遊び分だけ第2湾曲部36の湾曲管36aが回動する。このとき、プーリ66に配設されたモータMの回転軸64を回転させるのに抵抗があるので、第2湾曲部36に外力を加えたとき、第2湾曲部36が湾曲しないか、又は、第2湾曲部36がフリー状態の場合に比べて極端に遅くゆっくりと湾曲する。
【0029】
この実施形態では、図6(C)に示すモータMの短絡状態と、図6(D)に示すモータMの回転軸64のフリー状態とを利用する場合について説明する。
なお、短絡状態の場合、第2湾曲部36の可撓性(湾曲し易さ)は第1湾曲部34の可撓性と同程度であっても良いし、それよりも高くしても低くしても良い。これは、モータMの性能や図10で後述する可変抵抗器VRを用いた回路72によって適宜に設定可能である。また、第2湾曲部36の可撓性は、可撓管部38の可撓性よりも低くなることが好ましい。すなわち、短絡状態の場合、第2湾曲部36を可撓管部38よりも曲がり難くすることが好ましい。
フリー状態の場合、第2湾曲部36の可撓性(湾曲し易さ)は第1湾曲部34の可撓性よりも高くなる。すなわち、フリー状態の場合、第2湾曲部36は第1湾曲部34よりも曲がり易くなる。また、第2湾曲部36の可撓性は、可撓管部38の可撓性よりも高くなることが好ましい。すなわち、フリー状態の場合、第2湾曲部36は可撓管部38よりも曲がり易くなることが好ましい。
【0030】
内視鏡12の操作部22には、モータMの状態を図6(C)に示す状態(短絡状態)と図6(D)に示す状態(フリー状態)とに切り替え可能な押圧ボタン状の切替部74が配設されている。例えば、この実施形態では切替部74を術者が指で押圧すると、スイッチSW1,SW3がオン、スイッチSW2,SW4がオフとなりモータMが短絡状態となる。一方、切替部74から指を放すと、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4が全てオフとなりモータMの回転軸64がフリー状態となる。すなわち、術者が切替部74を押圧し続けているときに短絡状態となり、切替部74から指を放して解放し続けているときにフリー状態となる。
【0031】
術者が操作部22の切替部74を操作し、図6(D)に示すようにフルブリッジ回路72のスイッチSW1,SW2,SW3,SW4を全てオフにする、すなわち術者がモータMのフリー状態を選択する。このとき、モータMの回転軸64は抵抗が少なく、自由に回転する。言い換えると、モータMの回転軸64にブレーキがかけられた状態にないので、第2湾曲部36に外力が加えられたときに湾曲管36aが容易に湾曲可能で、1対のワイヤ68(U’,D’)がその軸方向に自在に移動可能で、プーリ66がモータMの回転軸64の軸回りに自在に回転可能である。
したがって、第2湾曲部36に外力が加えられると、第2湾曲部36の湾曲管36aがその状態から湾曲、すなわち変形しようとする。このとき、1対のワイヤ68(U’,D’)のうち、一方はその軸方向前方に、他方はその軸方向後方に向かって移動するので、プーリ66を回転させ、モータMの回転軸64もプーリ66の回転に伴って回転させられる。
このため、モータMの回転軸64がフリー状態では、第2湾曲部36が曲がり易い状態となる。すなわち、第2湾曲部36に外力が加えられると、第2湾曲部36は受動的に湾曲し得る。
なお、術者は通常、切替部74から指を放して操作部22を把持するので、モータMがフリー状態である。
【0032】
術者が操作部22の切替部74を操作し、図6(C)に示すようにフルブリッジ回路72のスイッチSW1、SW3をオンにし、スイッチSW2、SW4をオフのまま維持する、すなわち、術者がモータMの短絡状態を選択する。このとき、モータMの回転軸64の回転は規制されている。すなわち、モータMの回転軸64にブレーキがかけられた状態にあるので、プーリ66がモータMの回転軸64の軸回りに回転し難く、1対のワイヤ68(U’,D’)がその軸方向に移動し難い。このため、第2湾曲部36に外力が加えられたときであっても1対のワイヤ68(U’,D’)がその軸方向に移動し難いので、湾曲管36aがその形状を維持しようとする。すなわち、第2湾曲駆動機構の動作が規制されている。
したがって、モータMが短絡状態のとき、第2湾曲部36に外力が加えられても、第2湾曲部36の湾曲管36aが現在の形状を維持しようとする。
このため、モータMの回転軸64が短絡状態では、第2湾曲部36が曲がり難い状態となる。すなわち、第2湾曲部36に外力が加えられても、第2湾曲部36はその形状を維持しようとする。
【0033】
したがって、モータMの回転軸64がフリー状態のとき第2湾曲部36は外力により自在に受動的に湾曲可能な軟状態にあり、短絡状態のとき第2湾曲部36はその現在の形状を維持しようとする硬状態にある。
この切替部74の操作に連動して、例えばモニタ18に、モータMのフリー状態/短絡状態を表示させたり、又は、第2湾曲部36の軟状態/硬状態を表示させることが好ましい。
【0034】
モータ(第2湾曲駆動機構)Mには、その回転軸64の回転量(回転角度)ωを検知するエンコーダ(回転位置検知部)76が配設されている。図3(B)に示すように、モータMの回転軸64の回転量に応じた湾曲角度を予め測定しておけば、例えば大腸LI等の管孔の内部における第2湾曲部36の現在の形状を把握できる。
【0035】
図5に示すように、例えばビデオプロセッサ16の内部には、ポテンショメータ56、モータM、エンコーダ76及びモータMの電源Pを制御する駆動制御部(制御部)80が配置されている。電源Pや駆動制御部80がビデオプロセッサ16に配設されている場合、これら電源P及び駆動制御部80は、ユニバーサルコード26を介してポテンショメータ56、モータM及びエンコーダ76に対して電気的に接続される。
駆動制御部80は、CPU82と、ポテンショメータ56の抵抗値を測定する抵抗値測定部(湾曲角取得部)84と、エンコーダ76のパルスをカウントするカウント処理部86と、閾値入力部(設定部)88と、記憶部90とを有する。
抵抗値測定部84、カウント処理部86、閾値入力部88及び記憶部90はCPU82に電気的に接続されて制御される。また、モータMはCPU82に電気的に接続されて制御される。
このため、駆動制御部80の抵抗値測定部84で、ポテンショメータ56の抵抗値を測定することによって、第1アングルノブ52のU方向及びD方向の操作量、すなわち入力量(回転角度)ψを得ることができ、第1湾曲部34のU方向及びD方向の湾曲量(湾曲角度)をそれぞれ推定することができる。したがって、駆動制御部80の抵抗値測定部84は第1湾曲駆動機構(アングルワイヤ42及び第1ドラム46)によって湾曲駆動された第1湾曲部34の湾曲量を算出する湾曲量算出部(湾曲量を検出する検出部)として機能する。また、駆動制御部80のカウント処理部86で、エンコーダ76のエンコーダパルスのカウントを処理してモータMの回転位置情報(回転角度)ωを得ることができる。
【0036】
この実施形態では、第1湾曲部34の湾曲量(湾曲角度)が真っ直ぐ(0度)の状態に対して絶対値が60度を第2湾曲部36の硬さを切り替える閾値角度とする。この閾値角度はポテンショメータ56及び抵抗値測定部(湾曲角取得部)84により推定湾曲角度として検出可能である。この角度は閾値入力部88により適宜に設定可能である。そして、第1湾曲部34の湾曲量(湾曲角度)が真っ直ぐ(0度)の状態に対して絶対値が60度を超えたとき、抵抗値測定部(湾曲角取得部)84からCPU82を通してモニタ18に信号を送り、そのことを観察像が表示されたモニタ18に表示する。
【0037】
この実施形態に係る内視鏡12の挿入部24の先端硬質部32を図7に示す身体B内の大腸LIの肛門ANから直腸IR、S状結腸CS、下行結腸DCを通して横行結腸TCに挿入していく際の動作について簡単に説明する。
内視鏡12の術者は左手で操作部22を把持し、右手で挿入部24を把持して、肛門ANから挿入部24の先端硬質部32を大腸LIの直腸IRに押し込みながら挿入する。挿入部24の先端硬質部32を直腸IRからS状結腸CSに向かわせる。
【0038】
術者は右手で挿入部24をその軸回りに回動させたり、左手で第1アングルノブ52を操作しながら第1湾曲部34をU方向又はD方向に適宜に湾曲させて、直腸IRからS状結腸CSへの挿入方向を探る。ここで、切替部74の押圧を解除しているので、第2湾曲部36は軟状態にある。このため、例えば第1アングルノブ52を操作して第1湾曲部34を湾曲させているときに、図8(A)に示す状態から図8(B)に示す状態に移行すると、すなわち、例えば先端硬質部32が直腸IRの内壁に当接したり、第2湾曲部36が直腸IRの内壁に当接されると、第2湾曲部36に外力が働くことになる。このため、第2湾曲部36が湾曲する。したがって、図8(B)に示す状態の場合、図9(A)に示す状態に至る前に第2湾曲部36が湾曲するので、先端硬質部32によって大腸LIの内壁に大きな力が加えられるのを防止できる。
なお、第1アングルノブ52を操作して第1湾曲部34の湾曲状態を変化させたり、挿入部24をその軸回りに回動させたりして、第2湾曲部36が適宜の姿勢を保持するようにする。なお、第2湾曲部36の湾曲方向や湾曲角度はエンコーダ76及び駆動制御部80のエンコーダパルスのカウント処理部86により例えばモニタ18に表示可能であり、その表示により容易に認識できる。
【0039】
そして、切替部74を押圧して第2湾曲部36を硬状態に切り替える。この状態では大腸LIの内壁等の外力によって第2湾曲部36がその状態から変形することが極力防止されている。
図8(C)に示すように、第2湾曲部36を硬状態に維持しながら第1湾曲部34を湾曲させて先端硬質部32を屈曲部Fの手前側から奥側に移動させる。そして、切替部74を押圧し続けて第2湾曲部36の硬状態を維持しながら、右手で挿入部24を押し込む。このとき、図8(D)に示すように、先端硬質部32及び第1湾曲部34の外表面によって線接触したS状結腸CSを矢印Lの方向に持ち上げるようにして、屈曲部Fの手前側と奥側との間の大腸LIの屈曲角度を小さくする。S状結腸CSを矢印Lの方向に持ち上げたとき、先端硬質部32及び第1湾曲部34はS状結腸CSの内壁に線接触した状態にある。
なお、ここでいう線接触とは、線の長手方向だけでなく、長手方向に比べると小さいものの長手方向に対して直交する方向に適宜の広がりを有する領域のことを指す。後述する点接触も、点というわけではなく、点を中心とした適宜に広がりを有する領域のことを指す。
【0040】
このとき、第1湾曲部34を湾曲させる前に第2湾曲部36を硬状態としてから第1湾曲部34を湾曲させるようにしたので、図9(B)に示すように先端硬質部32を屈曲部Fの手前側から奥側に移動させる際の移動量が小さくなるのを極力防止できる。
【0041】
左手で第1アングルノブ52を操作して第1湾曲部34の湾曲角度を少しずつ小さくしながら右手で挿入部24を押し込む。このとき、先端硬質部32及び第1湾曲部34はS状結腸CSの内壁に線接触した状態にあるので、S状結腸CSの内壁にから生じる反発力により先端硬質部32及び第1湾曲部34を奥側に向かって滑らせることができる。
そして、切替部74の押圧を解除する。このため、挿入部24の先端硬質部32をS状結腸CS内に配置することができる。そして、右手で挿入部24をさらに押し込んで、挿入部24の先端硬質部32を下行結腸DCに向かわせる。
【0042】
ここで、下行結腸DCはS状結腸CSや横行結腸TCに比べて位置が固定された状態にある。
術者は右手で挿入部24をその軸回りに回動させたり、左手で第1アングルノブ52を操作しながら第1湾曲部34をU方向又はD方向に適宜に湾曲させて、S状結腸CSから下行結腸DCへの挿入方向を探る。切替部74を押圧して第2湾曲部36を硬状態にして第1アングルノブ52を操作して、第1湾曲部34を例えば90度程度湾曲させる。
そして、右手で把持した挿入部24を押し込んで、先端硬質部32及び第1湾曲部34を下行結腸DCの内壁に線接触させる。左手で第1アングルノブ52を操作して第1湾曲部34の湾曲角度を少しずつ小さくしながら右手で挿入部24を押し込む。このとき、先端硬質部32及び第1湾曲部34はS状結腸CSの内壁に線接触した状態にあるので、S状結腸CSの内壁を滑らせながら奥側に移動させることができる。
【0043】
術者は右手で挿入部24をその軸回りに回動させたり、左手で第1アングルノブ52を操作しながら第1湾曲部34をU方向又はD方向に適宜に湾曲させて、下行結腸DCから横行結腸TCへの挿入方向を探る。切替部74を押圧して第2湾曲部36を硬状態にして第1アングルノブ52を操作して、第1湾曲部34を90度程度湾曲させる。
そして、右手で把持した挿入部24を押し込んで、先端硬質部32及び第1湾曲部34を横行結腸TCの内壁に線接触させる。この状態で挿入部24を少し押し込んで横行結腸TCを第1湾曲部34で押し上げる。すなわち、先端硬質部32及び第1湾曲部34の外表面によって線接触した横行結腸TCを図8(D)中の矢印Lの方向に持ち上げるようにして、屈曲部Fの手前側と奥側との間の大腸LIの屈曲角度を小さくする。このとき、先端硬質部32及び第1湾曲部34は横行結腸TCの内壁に線接触した状態にある。
左手で第1アングルノブ52を操作して第1湾曲部34の湾曲角度を少しずつ小さくしながら右手で挿入部24を押し込む。このとき、先端硬質部32及び第1湾曲部34は横行結腸TCの内壁に線接触した状態にあるので、横行結腸TCの内壁を滑らせることができる。
そして、切替部74の押圧を解除する。このため、挿入部24の先端硬質部32を横行結腸TC内に配置することができる。そして、右手で挿入部24をさらに押し込んで、挿入部24の先端硬質部32を上行結腸ACに向かわせる。
【0044】
このように、この実施形態に係る内視鏡12は、操作部22に配置した切替部74の押圧/押圧解除によって、挿入部24の第2湾曲部36の硬/軟を適宜に選択できる。このため、第2湾曲部36が軟状態であれば、例えば大腸LI内壁等から外力を受けると容易に湾曲する受動湾曲部として機能させることができる。また、第2湾曲部36が硬状態であれば、例えば大腸LI内壁等から外力を受けても湾曲を防止し形状を維持する硬性部として機能させることができる。したがって、例えば大腸LI等の管孔に挿入部24を挿入していく際に、第2湾曲部36の硬/軟を適宜に選択して、効率的に挿入部24の先端硬質部32を管孔の手前側から奥側に向かって挿入していくことができる。特に、大腸LI等、固定されていないので移動し易く、変形し易い管孔に挿入部24を挿入していくときに、この実施形態に係る内視鏡12を用いることが好適である。
【0045】
上述したように、この実施形態では、挿入部24が先端硬質部32、第1湾曲部34、第2湾曲部36及び可撓管部38を有するものとして説明したが、可撓管部38が第2湾曲部36を有することも好ましい。すなわち、可撓管部38の先端部が上述した第2湾曲部36と同じ構造に形成されていることも好ましい。このような構造であっても、この実施形態に係る内視鏡12は上述したのと同じ作用、効果を得ることができる。
【0046】
なお、この実施形態ではモータMを短絡状態にして第2湾曲部36を硬状態にするとき、切替部74を押圧し続けるものとして説明したが、例えばボールペン等に広く用いられているノックボタン等を用いても良い。この場合、術者は押圧解除状態(フリー状態)から切替部74を操作して押圧状態(短絡状態)に切り替えれば、切替部74に触れていなくても押圧状態を維持でき、好適である。また、ボールペン等に広く用いられているノックボタンはその位置により押圧状態であるか、押圧解除状態であるかを明確にすることができるので、操作部22の切替部74を観察することにより、第2湾曲部36が硬状態であるか、軟状体であるか、容易に認識できる。
その他、トグルスイッチやスライドスイッチ等を用いて、フリー状態/短絡状態をそれぞれ保持できるようにしても良い。すなわち、この実施形態に係る切替部74は種々のスイッチを使用できる。
【0047】
この実施形態では切替部74を押圧するとモータMを短絡状態にして第2湾曲部36を硬状態とし、押圧を解除するとモータMの回転軸64を自在に回転させることが可能なフリー状態にして第2湾曲部36を軟状態とするものとして説明した。もちろん、切替部74を押圧したときにモータMの回転軸64を自在に回転させることが可能なフリー状態にして第2湾曲部36を軟状態とし、切替部74の押圧を解除したときにモータMを短絡状態にして第2湾曲部36を硬状態にしても良い。
【0048】
フルブリッジ回路72は操作部22の内部に配設された状態(図5参照)に限らず、内視鏡12の外部の例えばプロセッサ16の内部に配設されていることも好適である。
モータ電源Pは、内視鏡12の内部にあっても良いし、外部にあっても良い。内視鏡システム10がモータ電源Pを備えていれば良い。内視鏡12にモータ電源Pが接続されている場合とは、内視鏡12自体がモータ電源Pを有する場合と、内視鏡12の外部にモータ電源Pが配設されている場合とを含む。
駆動制御部80は内視鏡12の内部にあっても良いし、外部にあっても良い。すなわち内視鏡システム10が駆動制御部80を備えていれば良い。内視鏡12に駆動制御部80が接続されている場合とは、内視鏡12自体が駆動制御部80を有する場合と、内視鏡12の外部に駆動制御部80が配設されている場合とを含む。
【0049】
図10に示すように、フルブリッジ回路72に可変抵抗器VRを配置しても良い。可変抵抗器VRの抵抗値を適宜に変更することにより、モータMを短絡状態にしたとき、モータMを発電機として機能させる際の起電力を容易に変更することができる。このため、モータMの回転軸64の回り易さを変更することができる。したがって、モータMを短絡状態にしたときに、可変抵抗器VRにより、第2湾曲部36の硬さを自在に変更することができる。このため、フルブリッジ回路72は調整部(電力供給調整部)として機能する。
【0050】
例えば、操作部22には、切替部74の近くに例えばスライドレバー等で形成された抵抗値変更部が配置されていることが好ましい。抵抗値変更部により抵抗値を連続的に変更することができれば、第2湾曲部36の硬さを所定の範囲内に連続的に変更でき、抵抗値を適宜の間隔ごとに増減できれば、第2湾曲部36の硬さを所定の範囲内で適宜に変更できる。このため、可変抵抗器VRの調整により抵抗量を変えることにより、最大硬状態と最低硬状態との間で、第2湾曲部36の硬さを適宜に変更することができる。
【0051】
次に、第1実施形態の変形例について図11を用いて説明する。
この変形例では、第1湾曲部34の湾曲角度の絶対値が60度(閾値角度)を超えたときに自動的にモータMのフリー状態/短絡状態を自動的に切り替える場合について説明する。
この変形例では、合わせて、第1湾曲部34の湾曲方向と第2湾曲部36の湾曲方向とが同一の場合、及び、異なる場合の硬度調整機構60の制御フローについて説明する。
【0052】
なお、第2湾曲部36を自動的に硬/軟状態を切り替える際の閾値である第1湾曲部34の湾曲角度の絶対値は、駆動制御部80の閾値入力部88で適宜に設定可能である。絶対値は60度に限ることはなく、90度等、適宜に設定可能である。
【0053】
図2に示すように、モータMにはエンコーダ76が配設されている。一方、駆動制御部80にはエンコーダパルスのカウント処理部86が配設されている。
予め取得した第1アングルノブ52の回動量に対する無負荷状態での第1湾曲部34の湾曲角度により、第1湾曲部34の湾曲角度を推定することができる。この推定湾曲角度の絶対値が60度を超えたとき、モータMを短絡状態に設定し、推定湾曲角度の絶対値が60度以下となったときにフリー状態に戻す。
【0054】
図8(A)及び図9(A)に示すように、第1湾曲部34の湾曲角度の絶対値が60度以下の場合、大腸LIの内壁と、先端硬質部32及び第1湾曲部34との接触面積が線接触している状態よりも小さくなり得る。すなわち、第1湾曲部34の湾曲角度の絶対値が60度以下の場合、挿入部24の先端硬質部32から第1湾曲部34にかけての領域と大腸LIの内壁とは線接触というよりも点接触に近くなる場合がある。このとき、大腸LIの内壁の一部を線状ではなく点状に押し上げてしまうことになり得る。このため、図8(B)に示すように、第2湾曲部36は軟状態を維持することが好ましい。
【0055】
一方、図8(C)及び図8(D)に示すように、第1湾曲部34の湾曲角度の絶対値が60度よりも大きい場合、大腸LIの内壁と第1湾曲部34との接触面積が大きくなり、かつ、第2湾曲部36を硬状態とするので、大腸LIの内壁を広範囲にわたって押し上げることが可能である。すなわち、図8(C)に示す状態から図8(D)に示す状態に腸管LIを移動させることができる。
【0056】
ところで、図2に示すように、第2湾曲部36をU方向及びD方向に湾曲させる2本のアングルワイヤ68(U’,D’)は操作部22の内部のプーリ(第2湾曲駆動機構)66に巻回されて固定されている。プーリ66にはモータ(駆動部)M、及び、モータ(第2湾曲駆動機構)Mの回転量(回転角度)ω(図3(B)参照)を検知するエンコーダ(回転位置検知部)76が配置されている。モータMは第2湾曲部36を湾曲させるための駆動力を発生する。したがって、モータM、プーリ66、ワイヤ68(U’,D’)及び湾曲管36aは第2湾曲部36を湾曲させる第2湾曲駆動機構を形成する。
【0057】
この変形例では、駆動制御部80を用いて図11に示す処理を行うことにより、ブリッジ回路72のSW1,SW2,SW3,SW4のオン/オフを適宜に行う。
第1湾曲部34の湾曲角度の絶対値が閾値入力部88で入力した閾値角度(例えば60度)を超えているかどうか判断する(S1)。この判断は、ポテンショメータ56及び抵抗値測定部84により得られる情報に基づいて行われる。閾値角度を超えている場合、U方向及びD方向のどちらに第1湾曲部34が湾曲しているか判断する(S2)。この判断も、ポテンショメータ56及び抵抗値測定部84により得られる情報(検出情報)に基づいて行われる。
第2湾曲部36がU方向及びD方向のどちらに湾曲しているか判断する(S3)。この判断は、モータMに配設されたエンコーダ76及びエンコーダのパルスのカウント処理部86により得られる情報(検出情報)に基づいて行われる。例えば第1湾曲部34がU方向に湾曲し、第2湾曲部36がD方向に湾曲している場合、フルブリッジ回路72を図6(A)に示す状態にして、モータMの回転軸64を正回転させる(S4)。このようにして、第2湾曲部36を能動的に湾曲させて真っ直ぐの状態に近づける。第2湾曲部36が真っ直ぐの状態又は略真っ直ぐの状態になったか否か判断する(S5)。この判断も、モータMに配設されたエンコーダ76及びエンコーダのパルスのカウント処理部86により得られる情報(検出情報)に基づいて行われる。
【0058】
第2湾曲部36が真っ直ぐ又は略真っ直ぐの状態で、フルブリッジ回路72を図6(C)に示す状態にして、すなわち、SW1,SW3をオンに、SW2,SW4をオフにしてモータMを短絡状態にし、第2湾曲部36の形状を維持する(S6)。
第1湾曲部34の湾曲角度の絶対値が60度を超えているか否か判断する(S7)。この判断は、ポテンショメータ56及び抵抗値測定部84により得られる情報に基づいて行われる。超えていればモータMの短絡状態を維持し、超えていなければSW1,SW2,SW3,SW4を全てオフにして(S8)、処理を終了する。
【0059】
なお、第1湾曲部34の湾曲角度の絶対値が閾値角度(例えば60度)を超えていない場合、SW1,SW2,SW3,SW4がオフになっているか否か判断する(S9)。オフになっている場合、処理を終了し、オフになっていない場合、オフにする(S10)。
【0060】
なお、例えば第1湾曲部34がU方向に湾曲し、第2湾曲部36がU方向に湾曲している場合(S3)、フルブリッジ回路72を図6(C)に示す状態にして、すなわち、SW1,SW3をオンに、SW2,SW4をオフにしてモータMを短絡状態にし、第2湾曲部36の形状を維持する(S6)。その後の処理は上述したのと同一である。
【0061】
一方、第1湾曲部34が−(マイナス)60度よりも小さい場合、第1湾曲部が+(プラス)60度よりも大きい場合と対応する制御を行えば良いので、ここでの説明を省略する。
【0062】
このように、第1湾曲部34を所定の角度湾曲させたときに、図9(B)に示す状態となることを自動的に避けて、先端硬質部32を容易に管孔の奥側に移動させることができる。
したがって、第1湾曲部34が例えば図9(B)に示すU方向に60度湾曲した状態のときに、第2湾曲部36が図9(B)に示す状態に湾曲させられていると、先端硬質部32が屈曲部Fを手前側からより奥側に移動しようとするときの移動量が少なくなる。これに対して、この変形例によれば、屈曲部Fに対して先端硬質部32を手前側から奥側に移動させる際に、第2湾曲部36は真っ直ぐの状態や、第1湾曲部34と同じ方向に湾曲した状態とするので、先端硬質部32を容易に管孔の手前側から奥側に移動させることができる。
【0063】
なお、図11中のS2−S5は省略することができる。このように省略する場合、第1湾曲部34の湾曲角度の絶対値が60度を超えた場合、第2湾曲部36の湾曲角度にかかわらず、自動的に第2湾曲部36を硬状態にする。
【0064】
次に、第2実施形態について図12を用いて説明する。この実施形態は変形例を含む第1実施形態の変形例であって、変形例を含む第1実施形態で説明した部材と同一の部材又は同一の機構を有する部材には極力同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0065】
図12に示すように、この実施形態に係る内視鏡(医療装置)12は、操作部22と、挿入部24と、硬度調整機構60と、硬度可変機構120とを有する。
【0066】
硬度可変機構120は、コイルパイプ122と、このコイルパイプ122に挿通されたワイヤ124と、ワイヤ124が挿通されコイルパイプ122の基端が当接されたストッパ126と、可撓管部38の内部に配置されコイルパイプ122の先端及びワイヤ124の先端が固定された先端部材128と、カム機構(圧縮力変更部)130とを有する。コイルパイプ122及びワイヤ124は挿入部24に挿通されている。ストッパ126及びカム機構130は操作部22に配設されている。カム機構130は、操作部22の基部22aに形成された案内溝132と、案内溝132に係合する係合部材134と、操作部22の基部22aの外側に配設され、係合部材134を案内溝132に沿って移動させるカム溝136aを有する回転リング136とを備えている。
【0067】
回転リング136を回転させて係合部材134を操作部22の先端側に移動させるとコイルパイプ122の圧縮を緩和させるので、挿入部24の可撓管部38が軟状態となる。一方、回転リング136を回転させて係合部材134を操作部22の基端側に移動させるにつれてコイルパイプ122に加えられる圧縮力が増し、可撓管部38のうち、コイルパイプ122が存在している部分の硬度が硬状態となる。
【0068】
操作部22の内部の基端側には、切替部(プッシュスイッチ)74aが配設されている。なお、図示しないが、切替部74aは第1実施形態で説明したように、電源P及びフルブリッジ回路72に電気的に接続されている。この切替部74aは、回転リング136を回転させて係合部材134で切替部74aを押圧しているときにはモータMを短絡状態にして第2湾曲部36を硬状態にする。係合部材134で切替部74aの押圧を解除したときには第2湾曲部36を軟状態にする。
【0069】
この実施形態では、可撓管部38の硬度を最大にしたときに第2湾曲部36の硬度を硬状態とし、可撓管部38の硬度を最低にしたときに第2湾曲部36の硬度を軟状態にしている。
この実施形態では、可撓管部38の硬度と第2湾曲部36との間に硬度を変更しない部分を設けたり、第2湾曲部36と可撓管部38とで異なる硬度にすることができる。このため、挿入部24の挿入対象に合わせて適宜の硬度にして、内視鏡12を使用することができる。
【0070】
上述した変形例を含む第1及び第2実施形態では、フルブリッジ回路72を用いる場合について説明したが、モータMの短絡状態/フリー状態を切り替え可能な適宜の回路やモータMを制御することにより短絡状態とフリー状態とを作り出すようにしても良い。
【0071】
これまで、いくつかの実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明したが、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で行なわれるすべての実施を含む。
【符号の説明】
【0072】
10…内視鏡システム、12…内視鏡、16…ビデオプロセッサ、18…モニタ、22…操作部、24…挿入部、32…先端硬質部、34…第1湾曲部、36…第2湾曲部、34a,36a…湾曲管、38…可撓管部、42…アングルワイヤ、46…第1ドラム、48…第2ドラム、52…第1アングルノブ、54…第2アングルノブ、56…ノブ位置検知用ポテンショメータ、60…硬度調整機構、P…モータ電源、M…モータ、64…回転軸、66…プーリ、68…アングルワイヤ、72…フルブリッジ回路、SW1,SW2,SW3,SW4…スイッチ、74…切替部、76…エンコーダ、80…駆動制御部、82…CPU、84…抵抗値測定部、86…カウント処理部、88…閾値入力部、90…記憶部、LI…管孔(大腸)。
【技術分野】
【0001】
この発明は管孔内に挿入される部位を有する医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、湾曲操作スイッチの操作に応じて、制御回路が4つのトランジスタをオン/オフし、モータへの印加電圧のオン/オフ制御を行うことが開示されている。また、エンコーダを介してモータの回転速度を監視しつつ、モータへの印加電圧のオン/オフ制御を行うことによって、段階的に可変設定できる所定の速度でモータを駆動・制御することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−38328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来からのモータを利用した内視鏡の挿入部の湾曲部の湾曲制御では、湾曲動作の停止時にはモータの回転軸にブレーキがかかる短絡状態と、モータの回転軸を自由に回転させることができるフリー状態との一方の状態に固定されている。このため、フリー状態の内視鏡であれば、内視鏡の湾曲部に外力が加えられると、湾曲部を湾曲させることができ、短絡状態の内視鏡であれば、モータの回転軸の回転にブレーキがかけられるため、湾曲部に加えられる外力に対して抵抗が発生して湾曲部が曲がり難い状態となる。
【0005】
このため、モータが短絡状態の内視鏡を用いると、外力に対して湾曲部が曲がり難く、曲がりくねった部位を挿入していく際に挿入を阻害する場合があり、一方、モータがフリー状態の内視鏡を用いると、外力に対して湾曲部が曲がり易く、挿入部を奥側に押し込む際に湾曲部が意図せず湾曲してしまうため、力を先端硬質部に伝え難い場合がある。
【0006】
この発明は、例えば管孔に挿入される挿入部の一部である管状部が外力を受けたときに使用者の判断又は適宜の設定で管状部を曲がり易くしたり曲がり難くしたりすることができ、すなわち挿入部の少なくとも一部の硬度を調整でき、曲がりくねった管孔に挿入し易くした医療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る医療装置は、湾曲部と、前記湾曲部の基端部に設けられ可撓性を有する管状部とを有する挿入部と、前記湾曲部を湾曲させる湾曲駆動機構と、電源と、前記電源から供給される電力により駆動される駆動源と、少なくとも一部が前記管状部に配設され前記駆動源から駆動力を伝達する伝達部と、前記電源と前記駆動源との間の接続を調整して前記駆動源から前記伝達部に伝達する駆動力を調整する調整部とを有し、前記管状部の少なくとも一部の硬度を調整可能な硬度調整機構とを有する。
医療装置が管状部の少なくとも一部の硬度を調整可能な硬度調整機構を有するので、管状部を曲がり易くしたり曲がり難くしたりすることができる。すなわち、この医療装置は挿入部の少なくとも一部の硬度を調整できるので、曲がりくねった管孔に挿入部を挿入し易くすることができる。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、例えば管孔に挿入される挿入部の一部である管状部が外力を受けたときに使用者の判断又は適宜の設定で管状部を曲がり易くしたり曲がり難くしたりすることができ、すなわち挿入部の少なくとも一部の硬度を調整でき、曲がりくねった管孔に挿入し易くした医療装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(A)は第1実施形態に係る内視鏡システム(医療装置)を示す概略図、(B)は図1(A)中の矢印1B方向から挿入部の先端硬質部を観察した状態を示す概略的な正面図。
【図2】第1実施形態に係る内視鏡システムの内視鏡(医療装置)を示す概略図。
【図3】(A)は第1実施形態に係る内視鏡システムの内視鏡の操作部の第1ドラムを回転させたときに第1湾曲部を湾曲させた状態を示し、(B)は内視鏡の操作部のモータの回転軸を介してプーリを回転させたときに第2湾曲部を湾曲させた状態を示す概略図。
【図4】第1実施形態に係る内視鏡システムの内視鏡の挿入部と操作部との間に配置されるワイヤの状態を示し、(A)は第2湾曲部が真っ直ぐの状態の概略図、(B)は第2湾曲部がU方向に湾曲した状態を示す概略図。
【図5】第1実施形態に係る内視鏡システムの駆動制御部と駆動制御により制御される部材との関係を示す概略的なブロック図。
【図6】第1実施形態に係る内視鏡システムのフルブリッジ回路(Hブリッジ回路)を示し、(A)はモータの回転軸を正回転させる状態を示す概略図、(B)はモータの回転軸を逆回転させる状態を示す概略図、(C)はモータの回転軸にブレーキ機能を発揮させる状態を示す概略図、(D)はモータの回転軸を自在に回転させる状態を示す概略図。
【図7】第1実施形態に係る内視鏡システムの内視鏡の挿入部を挿入する対象となる大腸を示す概略図。
【図8】第1実施形態に係る内視鏡システムの内視鏡の挿入部を大腸の管孔内に挿入した状態を示し、(A)は第2湾曲部が軟状態で大腸の管孔内に存在している状態を示す概略図、(B)は第2湾曲部が軟状態で先端硬質部が大腸の内壁に当接したときに第2湾曲部が大腸の内壁からの反力を受けて湾曲した状態を示す概略図、(C)は第2湾曲部を硬状態にして第1湾曲部を90度を超える角度に湾曲させた状態を示す概略図、(D)は第2湾曲部を硬状態にした状態で、かつ、第1湾曲部を90度を超える角度に湾曲させた状態を維持して、大腸の内壁に対して挿入部を押し込んだ状態を示す概略図。
【図9】第1実施形態に係る内視鏡システムを用いずに内視鏡の挿入部を大腸の管孔内に挿入した状態を示し、(A)は第2湾曲部を硬状態にして先端硬質部で大腸の内壁を押圧した状態を示す概略図、(B)第2湾曲部を軟状態にして先端硬質部で大腸の内壁を押圧したときに第2湾曲部が反力を受けて湾曲した状態を示す概略図。
【図10】第1実施形態に係る内視鏡システムのフルブリッジ回路(Hブリッジ回路)の変形例。
【図11】第1実施形態の変形例に係る内視鏡システムを用いて大腸等の管孔の内部に挿入部を挿入していく際の処理を示す概略的なフローチャート。
【図12】第2実施形態に係る内視鏡システム(医療装置)を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながらこの発明を実施するための形態について説明する。
第1の実施の形態について図1から図9を用いて説明する。なお、図9(A)及び図9(B)はこの実施形態に係る内視鏡システム10とは異なる内視鏡システムを用いて大腸の内部に挿入部を挿入した状態を示す参考図である。
【0011】
図1(A)に示すように、第1実施形態に係る内視鏡システム(医療装置)10は、内視鏡(医療装置)12と、内視鏡12に着脱自在に接続され、この内視鏡12の照明光学系30に光学的に接続され照明光を供給する光源14と、内視鏡12に着脱自在に接続され内視鏡12の観察光学系28を制御すると共にこの観察光学系28から得られた信号を処理して映像信号を出力するビデオプロセッサ16と、ビデオプロセッサ16で信号処理して得られた内視鏡画像を表示するモニタ18とを有する。ビデオプロセッサ16には、図示しない画像記録装置などを接続可能である。なお、内視鏡12とは別体の光源14の代わりに、照明光学系30の一部としてLED等の小型光源を内視鏡12の後述する操作部22の内部や挿入部24の先端硬質部32等に内蔵しても良い。
【0012】
内視鏡12は、術者に把持されて後述する第1湾曲部34の湾曲操作などが可能な操作部22と、操作部22から延出され後述する管孔LI(図8及び図9に示す大腸の腸管にも同じ符号を付す)内の被検体(観察対象部位)に挿入される細長の挿入部24と、操作部22から延設され、観察光学系28に接続する信号ケーブルや光源14からの照明光を伝達するライトガイドなどを内蔵したユニバーサルコード26と、このユニバーサルコード26の端部に設けられ、光源14及びビデオプロセッサ16に着脱自在に接続されるコネクタ部26aとを有する。すなわち、挿入部24の基端部には操作部22が設けられて、操作部22からユニバーサルコード26が延出されている。
なお、操作部22及び挿入部24の内部には、図1(B)に示す観察光学系(撮像手段)28及び照明光学系(照明手段)30、更には図示しない処置具等を挿通するチャンネル32aが配設されている。
【0013】
挿入部24は、その先端に設けられた先端硬質部32と、この先端硬質部32の後端側に設けられ操作部22の操作により湾曲自在の第1湾曲部34と、この第1湾曲部34の後端側に設けられた湾曲自在の第2湾曲部(管状部)36と、第2湾曲部36の後端側に設けられ軟性で管状の部材により形成される長尺で可撓性を有する可撓管部(管状部)38とを有する。すなわち、先端硬質部32、第1湾曲部34、第2湾曲部36及び可撓管部38が、その先端側から基端側に向かって順に連設されて挿入部24が形成されている。
【0014】
上述したように、本実施形態では、内視鏡12の挿入部24は、先端硬質部32に近接する第1湾曲部34と、可撓管部38に近接する第2湾曲部(管状部)36との、2つの湾曲部34,36を有する。このうち、第1湾曲部34は操作部22の操作により能動的に湾曲する能動湾曲部として機能する。また、第2湾曲部36は後述する硬度調整機構60の一部として機能する。すなわち、第2湾曲部36は硬度調整機構60により硬度、すなわち外力を受けたときの曲がり易さを調整可能である。このため、第2湾曲部36は受動湾曲部として機能させることもできるし、可撓管部38の一部やそれよりも硬質の硬質部として機能させることもできる。
【0015】
図2に示す第1湾曲部34及び第2湾曲部36は、それぞれ公知の複数の湾曲駒で形成された湾曲管(第1及び第2湾曲駆動機構)34a,36aと、湾曲管34a,36aの外側に配設されたブレードと、ブレードの外側に配設された外皮とを有する。第1湾曲部34の湾曲管34aの先端には、第1湾曲部34の各湾曲方向に対応して例えば4本のアングルワイヤ(第1湾曲駆動機構)42(U,D,R,L)が固定されている。このため、第1湾曲部34を第1及び第2方向として上下(UP/DOWN)方向(図2中にU,Dで示す)及び第3及び第4方向として左右(RIGHT/LEFT)方向(図2中にR,Lで示す)に湾曲させることが可能である。
なお、この実施形態では、第1湾曲部34を4つの方向に湾曲させるものとするが、第1湾曲部34を第1及び第2方向として上下(UP/DOWN)方向(図2中にU,Dで示す)にのみ湾曲可能に構成することも好適である。
【0016】
図2に示すように、第1湾曲部34を上下方向に湾曲させる2本のアングルワイヤ42(U,D)は操作部22の内部の第1ドラム(第1湾曲駆動機構)46に巻回されて固定されている。第1湾曲部34を左右方向に湾曲させる2本のアングルワイヤ42(R,L)は操作部22の内部の第2ドラム(第1湾曲駆動機構)48に巻回されて固定されている。第1及び第2ドラム46,48は同一軸上に配置されている。操作部22の外部には、第1ドラム46を回動させる第1アングルノブ(第1湾曲駆動機構)52と、第2ドラム48を回動させる第2アングルノブ(第1湾曲駆動機構)54とが配設されている。第1及び第2アングルノブ52,54は同一軸上に配置されている。また、これら第1及び第2ドラム46,48、並びに、第1及び第2アングルノブ52,54は同一軸上に配置されている。そして、第1アングルノブ52をその軸周りに回転させると、第1ドラム46が同一軸周りに第1アングルノブ52と同じ角度だけ回転し、第2アングルノブ54をその軸周りに回転させると、第2ドラム48が同一軸周りに第2アングルノブ54と同じ角度だけ回転する。湾曲管34a、ワイヤ42、第1ドラム46、第1アングルノブ52は第1湾曲部34をU方向及びD方向に湾曲させる第1湾曲駆動機構を形成する。また、湾曲管34a、ワイヤ42、第2ドラム48、第2アングルノブ54は第1湾曲部34をR方向及びL方向に湾曲させる第1湾曲駆動機構を形成する。
なお、この実施形態では、第1湾曲部34が真っ直ぐの状態となる位置を第1アングルノブ52の初期位置(ニュートラル位置)として規定するとともに、第2湾曲部36が真っ直ぐの状態となる位置をモータMの初期位置(ニュートラル位置)として規定する。そして、第1アングルノブ52のU方向(プラス方向)及びD方向(マイナス方向)の回転可能角度、第1及び第2湾曲部34,36のU方向及びD方向の湾曲可能角度ψは対称であることが好ましい。特に、第1アングルノブ52の回転可能角度ψ及び第1湾曲部34の湾曲可能角度ηは、U方向及びD方向ともに、第1湾曲部34が真っ直ぐの状態(初期状態)η0から例えばそれぞれ180度程度であることが好ましい。第2アングルノブ54の回転可能角度及び第1湾曲部36の湾曲可能角度は、R方向及びL方向ともに、第1湾曲部34が真っ直ぐの状態(初期状態)から例えばそれぞれ160度程度であることが好ましい。また、第2湾曲部36の湾曲可能角度(最大湾曲角度)θは、U方向及びD方向ともに、第2湾曲部36が真っ直ぐの状態(初期状態)θ0から例えばそれぞれ120度程度であることが好ましい。
【0017】
第1ドラム46には第1ドラム46の回転位置を検知する検知部(検出部)としてのノブ位置検知用ポテンショメータ(入力量検出部)56が取り付けられている。このポテンショメータ56は操作部22の内部に配置されている。第1アングルノブ52の初期位置(第1湾曲部34が真っ直ぐの位置)に合わせてポテンショメータ56の初期設定をすることにより、このポテンショメータ56は、第1ドラム46の回転量、すなわち、第1アングルノブ52の回転位置(回転角度)ψを検出することができる。このため、ポテンショメータ56は、第1アングルノブ(第1湾曲操作入力部)52に入力された湾曲操作量を湾曲操作入力量として検出する。そして、図3(A)に示す第1アングルノブ52の回転量ψ、すなわち第1ドラム46の回転量ψと、第1湾曲部34のU方向及びD方向の湾曲量(湾曲角度)ηとは略対応している。このため、ポテンショメータ56を用いることによって、第1アングルノブ52の回転量に基づいて第1湾曲部34のU方向及びD方向の湾曲状態を推定することができる。
このため、ポテンショメータ56は第1湾曲部34が第1湾曲駆動機構により湾曲しているときに、第1湾曲部34の湾曲角度がある設定(閾値)角度(所定角度)を超えたことを検知する検知部として機能する。
【0018】
図2に示すように、この実施形態に係る内視鏡12は、第2湾曲部36の硬度を軟状態から硬状態に、及び、硬状態から軟状態に切り替え可能な硬度調整機構(硬度切替機構)60を有する。硬度調整機構60は、電源Pと、電源Pから供給される電力により駆動される駆動源であるモータMと、モータMに配設されたモータMの駆動力を伝達する伝達部であるプーリ66と、少なくとも一部が第2湾曲部36に配設されモータMからプーリ66を介して駆動力を伝達する伝達部であるワイヤ68(U’,D’)と、第2湾曲部36に配設されワイヤ68(U’,D’)の先端が接続された硬度調整対象部である湾曲管36aと、電源PとモータMとの間の接続を切り替えてモータMからプーリ66、ワイヤ68(U’,D’)を介して湾曲管36aに伝達する駆動力を選択する選択回路(電力供給選択部)であるフルブリッジ回路(Hブリッジ回路)72と、フルブリッジ回路72の後述するスイッチSW1,SW2,SW3,SW4を適宜に切り替える調整部としての切替部74とを有する。
湾曲管36aはプーリ66及びワイヤ68とともに、モータ(駆動源)Mからの駆動力を伝達する伝達部として機能し、湾曲管36aの最も先端の湾曲駒に駆動力が伝達されると第2湾曲部36を湾曲させたり、現在の形状を維持したりすることが可能となる。フルブリッジ回路72及び切替部74は駆動力を切り替え、すなわち、駆動力を調整する調整部として機能する。
【0019】
第2湾曲部36に設けられた湾曲管36aは複数の湾曲駒を有し、第2湾曲部36を第1及び第2方向と同じ方向、すなわち上下方向に湾曲させることが可能である。
【0020】
なお、図1及び図2では、モータM及びエンコーダ76は操作部22の外部に一部が突出するように描いたが、操作部22の内部に配置されていることも好ましい。また、モータMやエンコーダ76は操作部22の内部ではなく、挿入部24の内部に配置されていることも好ましい。
【0021】
図4(A)及び図4(B)に示すように、第2アングルワイヤ68(U’,D’)には、予めたるみ(sag)68a,68bを持たせてある。ワイヤ68(U’,D’)のたるみ量は図4(A)に示すモータM及びプーリ66が中立位置にある状態(第2湾曲部36が真っ直ぐの状態)から第2湾曲部36をU方向の最大湾曲角度まで湾曲させても、ワイヤ68(U’,D’)に僅かにたるみ68a,68bが残っている程度であることが好ましい。
【0022】
曲がった状態の第2湾曲部36が管孔LIの壁面(例えば体壁)に触れていても、ワイヤ68(U’,D’)に十分なたるみ68a,68bがあるため、たるみ68a,68bの分だけ第2湾曲部36をU方向に更に湾曲させ、又はU方向への湾曲量を減少させることができるので、第2湾曲部36を湾曲させた状態でも遊びがあり、第2湾曲部36を無理に逆方向に湾曲させることがない。したがって、管孔LIの内壁に大きな力を加えることがない。図示しないが、このような構造は第1湾曲部34及びワイヤ42でも同様であることが好ましい。
【0023】
図5に示すように、操作部22には、電源P及びモータMに接続されたフルブリッジ回路72が配設されている。図6(A)から図6(D)に示すように、フルブリッジ回路72は、例えばそれぞれパワー半導体からなるスイッチSW1,SW2,SW3,SW4を有する。モータMはスイッチSW1,SW2と、スイッチSW3,SW4との間に配置されている。これらスイッチSW1,SW2,SW3,SW4のオン/オフを制御することによって、電源PからモータMに流れ込む電流の方向を切り替えることができる。
【0024】
図6(A)に示すように、スイッチSW1,SW4をオンにし、スイッチSW2,SW3をオフにすると、モータMの回転軸64が正回転する。図6(B)に示すように、スイッチSW3,SW2をオンにし、スイッチSW1,SW4をオフにすると、モータMの回転軸64が逆回転する。すなわち、スイッチSW1,SW4とスイッチSW2,SW3とのオン/オフを切り替えることによってモータMに流れる電流の方向を制御し、モータMの回転軸64の回転方向を制御することができる。
【0025】
図6(C)に示すように、スイッチSW1,SW3をオンにし、スイッチSW2,SW4をオフにすると、モータMを短絡させることになる。このとき、モータMの回転軸64を回転させると、モータMが発電機として機能する。すなわち、モータMの回転軸64の回転による起電力を利用して、モータMをブレーキとして機能させることができる。
図6(D)に示すように、全てのスイッチSW1,SW2,SW3,SW4をオフにすると、モータMは回路的に解放した状態(フリー状態)となり、モータMの回転軸64を回転させるのに最も抵抗が少ない状態となる。
【0026】
モータMの回転軸64にはプーリ66が配設され、プーリ66には1対のワイヤ68(U’,D’)が巻回されている。そして、ワイヤ68(U’,D’)の先端部は第2湾曲部36の湾曲管36aのワイヤガイドを通して湾曲管36aの最も先端、すなわち最も先端の湾曲駒に固定されている。
このため、例えば図6(A)に示すように、モータMの回転軸64を正回転させると、第2湾曲部36の湾曲管36aをU方向に湾曲させることができる。一方、図6(B)に示すように、モータMの回転軸64を逆回転させると、第2湾曲部36の湾曲管36aをD方向に湾曲させることができる。
【0027】
モータMがフリー状態の場合、モータMの回転軸64を回転させるのに最も抵抗が少ない状態であるので、第2湾曲部36に外力が加えられると、湾曲管36aが回動するのに伴ってワイヤ68(U’,D’)がその軸方向に移動し、ワイヤ68(U’,D’)が巻回されたプーリ66が回動する。すなわち、回転させるのに最も抵抗が少ない状態のモータMの回転軸64が回動する。
【0028】
モータMが短絡状態の場合、第2湾曲部36に外力が加えられると、ワイヤ68(U’,D’)の遊び分だけ第2湾曲部36の湾曲管36aが回動する。このとき、プーリ66に配設されたモータMの回転軸64を回転させるのに抵抗があるので、第2湾曲部36に外力を加えたとき、第2湾曲部36が湾曲しないか、又は、第2湾曲部36がフリー状態の場合に比べて極端に遅くゆっくりと湾曲する。
【0029】
この実施形態では、図6(C)に示すモータMの短絡状態と、図6(D)に示すモータMの回転軸64のフリー状態とを利用する場合について説明する。
なお、短絡状態の場合、第2湾曲部36の可撓性(湾曲し易さ)は第1湾曲部34の可撓性と同程度であっても良いし、それよりも高くしても低くしても良い。これは、モータMの性能や図10で後述する可変抵抗器VRを用いた回路72によって適宜に設定可能である。また、第2湾曲部36の可撓性は、可撓管部38の可撓性よりも低くなることが好ましい。すなわち、短絡状態の場合、第2湾曲部36を可撓管部38よりも曲がり難くすることが好ましい。
フリー状態の場合、第2湾曲部36の可撓性(湾曲し易さ)は第1湾曲部34の可撓性よりも高くなる。すなわち、フリー状態の場合、第2湾曲部36は第1湾曲部34よりも曲がり易くなる。また、第2湾曲部36の可撓性は、可撓管部38の可撓性よりも高くなることが好ましい。すなわち、フリー状態の場合、第2湾曲部36は可撓管部38よりも曲がり易くなることが好ましい。
【0030】
内視鏡12の操作部22には、モータMの状態を図6(C)に示す状態(短絡状態)と図6(D)に示す状態(フリー状態)とに切り替え可能な押圧ボタン状の切替部74が配設されている。例えば、この実施形態では切替部74を術者が指で押圧すると、スイッチSW1,SW3がオン、スイッチSW2,SW4がオフとなりモータMが短絡状態となる。一方、切替部74から指を放すと、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4が全てオフとなりモータMの回転軸64がフリー状態となる。すなわち、術者が切替部74を押圧し続けているときに短絡状態となり、切替部74から指を放して解放し続けているときにフリー状態となる。
【0031】
術者が操作部22の切替部74を操作し、図6(D)に示すようにフルブリッジ回路72のスイッチSW1,SW2,SW3,SW4を全てオフにする、すなわち術者がモータMのフリー状態を選択する。このとき、モータMの回転軸64は抵抗が少なく、自由に回転する。言い換えると、モータMの回転軸64にブレーキがかけられた状態にないので、第2湾曲部36に外力が加えられたときに湾曲管36aが容易に湾曲可能で、1対のワイヤ68(U’,D’)がその軸方向に自在に移動可能で、プーリ66がモータMの回転軸64の軸回りに自在に回転可能である。
したがって、第2湾曲部36に外力が加えられると、第2湾曲部36の湾曲管36aがその状態から湾曲、すなわち変形しようとする。このとき、1対のワイヤ68(U’,D’)のうち、一方はその軸方向前方に、他方はその軸方向後方に向かって移動するので、プーリ66を回転させ、モータMの回転軸64もプーリ66の回転に伴って回転させられる。
このため、モータMの回転軸64がフリー状態では、第2湾曲部36が曲がり易い状態となる。すなわち、第2湾曲部36に外力が加えられると、第2湾曲部36は受動的に湾曲し得る。
なお、術者は通常、切替部74から指を放して操作部22を把持するので、モータMがフリー状態である。
【0032】
術者が操作部22の切替部74を操作し、図6(C)に示すようにフルブリッジ回路72のスイッチSW1、SW3をオンにし、スイッチSW2、SW4をオフのまま維持する、すなわち、術者がモータMの短絡状態を選択する。このとき、モータMの回転軸64の回転は規制されている。すなわち、モータMの回転軸64にブレーキがかけられた状態にあるので、プーリ66がモータMの回転軸64の軸回りに回転し難く、1対のワイヤ68(U’,D’)がその軸方向に移動し難い。このため、第2湾曲部36に外力が加えられたときであっても1対のワイヤ68(U’,D’)がその軸方向に移動し難いので、湾曲管36aがその形状を維持しようとする。すなわち、第2湾曲駆動機構の動作が規制されている。
したがって、モータMが短絡状態のとき、第2湾曲部36に外力が加えられても、第2湾曲部36の湾曲管36aが現在の形状を維持しようとする。
このため、モータMの回転軸64が短絡状態では、第2湾曲部36が曲がり難い状態となる。すなわち、第2湾曲部36に外力が加えられても、第2湾曲部36はその形状を維持しようとする。
【0033】
したがって、モータMの回転軸64がフリー状態のとき第2湾曲部36は外力により自在に受動的に湾曲可能な軟状態にあり、短絡状態のとき第2湾曲部36はその現在の形状を維持しようとする硬状態にある。
この切替部74の操作に連動して、例えばモニタ18に、モータMのフリー状態/短絡状態を表示させたり、又は、第2湾曲部36の軟状態/硬状態を表示させることが好ましい。
【0034】
モータ(第2湾曲駆動機構)Mには、その回転軸64の回転量(回転角度)ωを検知するエンコーダ(回転位置検知部)76が配設されている。図3(B)に示すように、モータMの回転軸64の回転量に応じた湾曲角度を予め測定しておけば、例えば大腸LI等の管孔の内部における第2湾曲部36の現在の形状を把握できる。
【0035】
図5に示すように、例えばビデオプロセッサ16の内部には、ポテンショメータ56、モータM、エンコーダ76及びモータMの電源Pを制御する駆動制御部(制御部)80が配置されている。電源Pや駆動制御部80がビデオプロセッサ16に配設されている場合、これら電源P及び駆動制御部80は、ユニバーサルコード26を介してポテンショメータ56、モータM及びエンコーダ76に対して電気的に接続される。
駆動制御部80は、CPU82と、ポテンショメータ56の抵抗値を測定する抵抗値測定部(湾曲角取得部)84と、エンコーダ76のパルスをカウントするカウント処理部86と、閾値入力部(設定部)88と、記憶部90とを有する。
抵抗値測定部84、カウント処理部86、閾値入力部88及び記憶部90はCPU82に電気的に接続されて制御される。また、モータMはCPU82に電気的に接続されて制御される。
このため、駆動制御部80の抵抗値測定部84で、ポテンショメータ56の抵抗値を測定することによって、第1アングルノブ52のU方向及びD方向の操作量、すなわち入力量(回転角度)ψを得ることができ、第1湾曲部34のU方向及びD方向の湾曲量(湾曲角度)をそれぞれ推定することができる。したがって、駆動制御部80の抵抗値測定部84は第1湾曲駆動機構(アングルワイヤ42及び第1ドラム46)によって湾曲駆動された第1湾曲部34の湾曲量を算出する湾曲量算出部(湾曲量を検出する検出部)として機能する。また、駆動制御部80のカウント処理部86で、エンコーダ76のエンコーダパルスのカウントを処理してモータMの回転位置情報(回転角度)ωを得ることができる。
【0036】
この実施形態では、第1湾曲部34の湾曲量(湾曲角度)が真っ直ぐ(0度)の状態に対して絶対値が60度を第2湾曲部36の硬さを切り替える閾値角度とする。この閾値角度はポテンショメータ56及び抵抗値測定部(湾曲角取得部)84により推定湾曲角度として検出可能である。この角度は閾値入力部88により適宜に設定可能である。そして、第1湾曲部34の湾曲量(湾曲角度)が真っ直ぐ(0度)の状態に対して絶対値が60度を超えたとき、抵抗値測定部(湾曲角取得部)84からCPU82を通してモニタ18に信号を送り、そのことを観察像が表示されたモニタ18に表示する。
【0037】
この実施形態に係る内視鏡12の挿入部24の先端硬質部32を図7に示す身体B内の大腸LIの肛門ANから直腸IR、S状結腸CS、下行結腸DCを通して横行結腸TCに挿入していく際の動作について簡単に説明する。
内視鏡12の術者は左手で操作部22を把持し、右手で挿入部24を把持して、肛門ANから挿入部24の先端硬質部32を大腸LIの直腸IRに押し込みながら挿入する。挿入部24の先端硬質部32を直腸IRからS状結腸CSに向かわせる。
【0038】
術者は右手で挿入部24をその軸回りに回動させたり、左手で第1アングルノブ52を操作しながら第1湾曲部34をU方向又はD方向に適宜に湾曲させて、直腸IRからS状結腸CSへの挿入方向を探る。ここで、切替部74の押圧を解除しているので、第2湾曲部36は軟状態にある。このため、例えば第1アングルノブ52を操作して第1湾曲部34を湾曲させているときに、図8(A)に示す状態から図8(B)に示す状態に移行すると、すなわち、例えば先端硬質部32が直腸IRの内壁に当接したり、第2湾曲部36が直腸IRの内壁に当接されると、第2湾曲部36に外力が働くことになる。このため、第2湾曲部36が湾曲する。したがって、図8(B)に示す状態の場合、図9(A)に示す状態に至る前に第2湾曲部36が湾曲するので、先端硬質部32によって大腸LIの内壁に大きな力が加えられるのを防止できる。
なお、第1アングルノブ52を操作して第1湾曲部34の湾曲状態を変化させたり、挿入部24をその軸回りに回動させたりして、第2湾曲部36が適宜の姿勢を保持するようにする。なお、第2湾曲部36の湾曲方向や湾曲角度はエンコーダ76及び駆動制御部80のエンコーダパルスのカウント処理部86により例えばモニタ18に表示可能であり、その表示により容易に認識できる。
【0039】
そして、切替部74を押圧して第2湾曲部36を硬状態に切り替える。この状態では大腸LIの内壁等の外力によって第2湾曲部36がその状態から変形することが極力防止されている。
図8(C)に示すように、第2湾曲部36を硬状態に維持しながら第1湾曲部34を湾曲させて先端硬質部32を屈曲部Fの手前側から奥側に移動させる。そして、切替部74を押圧し続けて第2湾曲部36の硬状態を維持しながら、右手で挿入部24を押し込む。このとき、図8(D)に示すように、先端硬質部32及び第1湾曲部34の外表面によって線接触したS状結腸CSを矢印Lの方向に持ち上げるようにして、屈曲部Fの手前側と奥側との間の大腸LIの屈曲角度を小さくする。S状結腸CSを矢印Lの方向に持ち上げたとき、先端硬質部32及び第1湾曲部34はS状結腸CSの内壁に線接触した状態にある。
なお、ここでいう線接触とは、線の長手方向だけでなく、長手方向に比べると小さいものの長手方向に対して直交する方向に適宜の広がりを有する領域のことを指す。後述する点接触も、点というわけではなく、点を中心とした適宜に広がりを有する領域のことを指す。
【0040】
このとき、第1湾曲部34を湾曲させる前に第2湾曲部36を硬状態としてから第1湾曲部34を湾曲させるようにしたので、図9(B)に示すように先端硬質部32を屈曲部Fの手前側から奥側に移動させる際の移動量が小さくなるのを極力防止できる。
【0041】
左手で第1アングルノブ52を操作して第1湾曲部34の湾曲角度を少しずつ小さくしながら右手で挿入部24を押し込む。このとき、先端硬質部32及び第1湾曲部34はS状結腸CSの内壁に線接触した状態にあるので、S状結腸CSの内壁にから生じる反発力により先端硬質部32及び第1湾曲部34を奥側に向かって滑らせることができる。
そして、切替部74の押圧を解除する。このため、挿入部24の先端硬質部32をS状結腸CS内に配置することができる。そして、右手で挿入部24をさらに押し込んで、挿入部24の先端硬質部32を下行結腸DCに向かわせる。
【0042】
ここで、下行結腸DCはS状結腸CSや横行結腸TCに比べて位置が固定された状態にある。
術者は右手で挿入部24をその軸回りに回動させたり、左手で第1アングルノブ52を操作しながら第1湾曲部34をU方向又はD方向に適宜に湾曲させて、S状結腸CSから下行結腸DCへの挿入方向を探る。切替部74を押圧して第2湾曲部36を硬状態にして第1アングルノブ52を操作して、第1湾曲部34を例えば90度程度湾曲させる。
そして、右手で把持した挿入部24を押し込んで、先端硬質部32及び第1湾曲部34を下行結腸DCの内壁に線接触させる。左手で第1アングルノブ52を操作して第1湾曲部34の湾曲角度を少しずつ小さくしながら右手で挿入部24を押し込む。このとき、先端硬質部32及び第1湾曲部34はS状結腸CSの内壁に線接触した状態にあるので、S状結腸CSの内壁を滑らせながら奥側に移動させることができる。
【0043】
術者は右手で挿入部24をその軸回りに回動させたり、左手で第1アングルノブ52を操作しながら第1湾曲部34をU方向又はD方向に適宜に湾曲させて、下行結腸DCから横行結腸TCへの挿入方向を探る。切替部74を押圧して第2湾曲部36を硬状態にして第1アングルノブ52を操作して、第1湾曲部34を90度程度湾曲させる。
そして、右手で把持した挿入部24を押し込んで、先端硬質部32及び第1湾曲部34を横行結腸TCの内壁に線接触させる。この状態で挿入部24を少し押し込んで横行結腸TCを第1湾曲部34で押し上げる。すなわち、先端硬質部32及び第1湾曲部34の外表面によって線接触した横行結腸TCを図8(D)中の矢印Lの方向に持ち上げるようにして、屈曲部Fの手前側と奥側との間の大腸LIの屈曲角度を小さくする。このとき、先端硬質部32及び第1湾曲部34は横行結腸TCの内壁に線接触した状態にある。
左手で第1アングルノブ52を操作して第1湾曲部34の湾曲角度を少しずつ小さくしながら右手で挿入部24を押し込む。このとき、先端硬質部32及び第1湾曲部34は横行結腸TCの内壁に線接触した状態にあるので、横行結腸TCの内壁を滑らせることができる。
そして、切替部74の押圧を解除する。このため、挿入部24の先端硬質部32を横行結腸TC内に配置することができる。そして、右手で挿入部24をさらに押し込んで、挿入部24の先端硬質部32を上行結腸ACに向かわせる。
【0044】
このように、この実施形態に係る内視鏡12は、操作部22に配置した切替部74の押圧/押圧解除によって、挿入部24の第2湾曲部36の硬/軟を適宜に選択できる。このため、第2湾曲部36が軟状態であれば、例えば大腸LI内壁等から外力を受けると容易に湾曲する受動湾曲部として機能させることができる。また、第2湾曲部36が硬状態であれば、例えば大腸LI内壁等から外力を受けても湾曲を防止し形状を維持する硬性部として機能させることができる。したがって、例えば大腸LI等の管孔に挿入部24を挿入していく際に、第2湾曲部36の硬/軟を適宜に選択して、効率的に挿入部24の先端硬質部32を管孔の手前側から奥側に向かって挿入していくことができる。特に、大腸LI等、固定されていないので移動し易く、変形し易い管孔に挿入部24を挿入していくときに、この実施形態に係る内視鏡12を用いることが好適である。
【0045】
上述したように、この実施形態では、挿入部24が先端硬質部32、第1湾曲部34、第2湾曲部36及び可撓管部38を有するものとして説明したが、可撓管部38が第2湾曲部36を有することも好ましい。すなわち、可撓管部38の先端部が上述した第2湾曲部36と同じ構造に形成されていることも好ましい。このような構造であっても、この実施形態に係る内視鏡12は上述したのと同じ作用、効果を得ることができる。
【0046】
なお、この実施形態ではモータMを短絡状態にして第2湾曲部36を硬状態にするとき、切替部74を押圧し続けるものとして説明したが、例えばボールペン等に広く用いられているノックボタン等を用いても良い。この場合、術者は押圧解除状態(フリー状態)から切替部74を操作して押圧状態(短絡状態)に切り替えれば、切替部74に触れていなくても押圧状態を維持でき、好適である。また、ボールペン等に広く用いられているノックボタンはその位置により押圧状態であるか、押圧解除状態であるかを明確にすることができるので、操作部22の切替部74を観察することにより、第2湾曲部36が硬状態であるか、軟状体であるか、容易に認識できる。
その他、トグルスイッチやスライドスイッチ等を用いて、フリー状態/短絡状態をそれぞれ保持できるようにしても良い。すなわち、この実施形態に係る切替部74は種々のスイッチを使用できる。
【0047】
この実施形態では切替部74を押圧するとモータMを短絡状態にして第2湾曲部36を硬状態とし、押圧を解除するとモータMの回転軸64を自在に回転させることが可能なフリー状態にして第2湾曲部36を軟状態とするものとして説明した。もちろん、切替部74を押圧したときにモータMの回転軸64を自在に回転させることが可能なフリー状態にして第2湾曲部36を軟状態とし、切替部74の押圧を解除したときにモータMを短絡状態にして第2湾曲部36を硬状態にしても良い。
【0048】
フルブリッジ回路72は操作部22の内部に配設された状態(図5参照)に限らず、内視鏡12の外部の例えばプロセッサ16の内部に配設されていることも好適である。
モータ電源Pは、内視鏡12の内部にあっても良いし、外部にあっても良い。内視鏡システム10がモータ電源Pを備えていれば良い。内視鏡12にモータ電源Pが接続されている場合とは、内視鏡12自体がモータ電源Pを有する場合と、内視鏡12の外部にモータ電源Pが配設されている場合とを含む。
駆動制御部80は内視鏡12の内部にあっても良いし、外部にあっても良い。すなわち内視鏡システム10が駆動制御部80を備えていれば良い。内視鏡12に駆動制御部80が接続されている場合とは、内視鏡12自体が駆動制御部80を有する場合と、内視鏡12の外部に駆動制御部80が配設されている場合とを含む。
【0049】
図10に示すように、フルブリッジ回路72に可変抵抗器VRを配置しても良い。可変抵抗器VRの抵抗値を適宜に変更することにより、モータMを短絡状態にしたとき、モータMを発電機として機能させる際の起電力を容易に変更することができる。このため、モータMの回転軸64の回り易さを変更することができる。したがって、モータMを短絡状態にしたときに、可変抵抗器VRにより、第2湾曲部36の硬さを自在に変更することができる。このため、フルブリッジ回路72は調整部(電力供給調整部)として機能する。
【0050】
例えば、操作部22には、切替部74の近くに例えばスライドレバー等で形成された抵抗値変更部が配置されていることが好ましい。抵抗値変更部により抵抗値を連続的に変更することができれば、第2湾曲部36の硬さを所定の範囲内に連続的に変更でき、抵抗値を適宜の間隔ごとに増減できれば、第2湾曲部36の硬さを所定の範囲内で適宜に変更できる。このため、可変抵抗器VRの調整により抵抗量を変えることにより、最大硬状態と最低硬状態との間で、第2湾曲部36の硬さを適宜に変更することができる。
【0051】
次に、第1実施形態の変形例について図11を用いて説明する。
この変形例では、第1湾曲部34の湾曲角度の絶対値が60度(閾値角度)を超えたときに自動的にモータMのフリー状態/短絡状態を自動的に切り替える場合について説明する。
この変形例では、合わせて、第1湾曲部34の湾曲方向と第2湾曲部36の湾曲方向とが同一の場合、及び、異なる場合の硬度調整機構60の制御フローについて説明する。
【0052】
なお、第2湾曲部36を自動的に硬/軟状態を切り替える際の閾値である第1湾曲部34の湾曲角度の絶対値は、駆動制御部80の閾値入力部88で適宜に設定可能である。絶対値は60度に限ることはなく、90度等、適宜に設定可能である。
【0053】
図2に示すように、モータMにはエンコーダ76が配設されている。一方、駆動制御部80にはエンコーダパルスのカウント処理部86が配設されている。
予め取得した第1アングルノブ52の回動量に対する無負荷状態での第1湾曲部34の湾曲角度により、第1湾曲部34の湾曲角度を推定することができる。この推定湾曲角度の絶対値が60度を超えたとき、モータMを短絡状態に設定し、推定湾曲角度の絶対値が60度以下となったときにフリー状態に戻す。
【0054】
図8(A)及び図9(A)に示すように、第1湾曲部34の湾曲角度の絶対値が60度以下の場合、大腸LIの内壁と、先端硬質部32及び第1湾曲部34との接触面積が線接触している状態よりも小さくなり得る。すなわち、第1湾曲部34の湾曲角度の絶対値が60度以下の場合、挿入部24の先端硬質部32から第1湾曲部34にかけての領域と大腸LIの内壁とは線接触というよりも点接触に近くなる場合がある。このとき、大腸LIの内壁の一部を線状ではなく点状に押し上げてしまうことになり得る。このため、図8(B)に示すように、第2湾曲部36は軟状態を維持することが好ましい。
【0055】
一方、図8(C)及び図8(D)に示すように、第1湾曲部34の湾曲角度の絶対値が60度よりも大きい場合、大腸LIの内壁と第1湾曲部34との接触面積が大きくなり、かつ、第2湾曲部36を硬状態とするので、大腸LIの内壁を広範囲にわたって押し上げることが可能である。すなわち、図8(C)に示す状態から図8(D)に示す状態に腸管LIを移動させることができる。
【0056】
ところで、図2に示すように、第2湾曲部36をU方向及びD方向に湾曲させる2本のアングルワイヤ68(U’,D’)は操作部22の内部のプーリ(第2湾曲駆動機構)66に巻回されて固定されている。プーリ66にはモータ(駆動部)M、及び、モータ(第2湾曲駆動機構)Mの回転量(回転角度)ω(図3(B)参照)を検知するエンコーダ(回転位置検知部)76が配置されている。モータMは第2湾曲部36を湾曲させるための駆動力を発生する。したがって、モータM、プーリ66、ワイヤ68(U’,D’)及び湾曲管36aは第2湾曲部36を湾曲させる第2湾曲駆動機構を形成する。
【0057】
この変形例では、駆動制御部80を用いて図11に示す処理を行うことにより、ブリッジ回路72のSW1,SW2,SW3,SW4のオン/オフを適宜に行う。
第1湾曲部34の湾曲角度の絶対値が閾値入力部88で入力した閾値角度(例えば60度)を超えているかどうか判断する(S1)。この判断は、ポテンショメータ56及び抵抗値測定部84により得られる情報に基づいて行われる。閾値角度を超えている場合、U方向及びD方向のどちらに第1湾曲部34が湾曲しているか判断する(S2)。この判断も、ポテンショメータ56及び抵抗値測定部84により得られる情報(検出情報)に基づいて行われる。
第2湾曲部36がU方向及びD方向のどちらに湾曲しているか判断する(S3)。この判断は、モータMに配設されたエンコーダ76及びエンコーダのパルスのカウント処理部86により得られる情報(検出情報)に基づいて行われる。例えば第1湾曲部34がU方向に湾曲し、第2湾曲部36がD方向に湾曲している場合、フルブリッジ回路72を図6(A)に示す状態にして、モータMの回転軸64を正回転させる(S4)。このようにして、第2湾曲部36を能動的に湾曲させて真っ直ぐの状態に近づける。第2湾曲部36が真っ直ぐの状態又は略真っ直ぐの状態になったか否か判断する(S5)。この判断も、モータMに配設されたエンコーダ76及びエンコーダのパルスのカウント処理部86により得られる情報(検出情報)に基づいて行われる。
【0058】
第2湾曲部36が真っ直ぐ又は略真っ直ぐの状態で、フルブリッジ回路72を図6(C)に示す状態にして、すなわち、SW1,SW3をオンに、SW2,SW4をオフにしてモータMを短絡状態にし、第2湾曲部36の形状を維持する(S6)。
第1湾曲部34の湾曲角度の絶対値が60度を超えているか否か判断する(S7)。この判断は、ポテンショメータ56及び抵抗値測定部84により得られる情報に基づいて行われる。超えていればモータMの短絡状態を維持し、超えていなければSW1,SW2,SW3,SW4を全てオフにして(S8)、処理を終了する。
【0059】
なお、第1湾曲部34の湾曲角度の絶対値が閾値角度(例えば60度)を超えていない場合、SW1,SW2,SW3,SW4がオフになっているか否か判断する(S9)。オフになっている場合、処理を終了し、オフになっていない場合、オフにする(S10)。
【0060】
なお、例えば第1湾曲部34がU方向に湾曲し、第2湾曲部36がU方向に湾曲している場合(S3)、フルブリッジ回路72を図6(C)に示す状態にして、すなわち、SW1,SW3をオンに、SW2,SW4をオフにしてモータMを短絡状態にし、第2湾曲部36の形状を維持する(S6)。その後の処理は上述したのと同一である。
【0061】
一方、第1湾曲部34が−(マイナス)60度よりも小さい場合、第1湾曲部が+(プラス)60度よりも大きい場合と対応する制御を行えば良いので、ここでの説明を省略する。
【0062】
このように、第1湾曲部34を所定の角度湾曲させたときに、図9(B)に示す状態となることを自動的に避けて、先端硬質部32を容易に管孔の奥側に移動させることができる。
したがって、第1湾曲部34が例えば図9(B)に示すU方向に60度湾曲した状態のときに、第2湾曲部36が図9(B)に示す状態に湾曲させられていると、先端硬質部32が屈曲部Fを手前側からより奥側に移動しようとするときの移動量が少なくなる。これに対して、この変形例によれば、屈曲部Fに対して先端硬質部32を手前側から奥側に移動させる際に、第2湾曲部36は真っ直ぐの状態や、第1湾曲部34と同じ方向に湾曲した状態とするので、先端硬質部32を容易に管孔の手前側から奥側に移動させることができる。
【0063】
なお、図11中のS2−S5は省略することができる。このように省略する場合、第1湾曲部34の湾曲角度の絶対値が60度を超えた場合、第2湾曲部36の湾曲角度にかかわらず、自動的に第2湾曲部36を硬状態にする。
【0064】
次に、第2実施形態について図12を用いて説明する。この実施形態は変形例を含む第1実施形態の変形例であって、変形例を含む第1実施形態で説明した部材と同一の部材又は同一の機構を有する部材には極力同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0065】
図12に示すように、この実施形態に係る内視鏡(医療装置)12は、操作部22と、挿入部24と、硬度調整機構60と、硬度可変機構120とを有する。
【0066】
硬度可変機構120は、コイルパイプ122と、このコイルパイプ122に挿通されたワイヤ124と、ワイヤ124が挿通されコイルパイプ122の基端が当接されたストッパ126と、可撓管部38の内部に配置されコイルパイプ122の先端及びワイヤ124の先端が固定された先端部材128と、カム機構(圧縮力変更部)130とを有する。コイルパイプ122及びワイヤ124は挿入部24に挿通されている。ストッパ126及びカム機構130は操作部22に配設されている。カム機構130は、操作部22の基部22aに形成された案内溝132と、案内溝132に係合する係合部材134と、操作部22の基部22aの外側に配設され、係合部材134を案内溝132に沿って移動させるカム溝136aを有する回転リング136とを備えている。
【0067】
回転リング136を回転させて係合部材134を操作部22の先端側に移動させるとコイルパイプ122の圧縮を緩和させるので、挿入部24の可撓管部38が軟状態となる。一方、回転リング136を回転させて係合部材134を操作部22の基端側に移動させるにつれてコイルパイプ122に加えられる圧縮力が増し、可撓管部38のうち、コイルパイプ122が存在している部分の硬度が硬状態となる。
【0068】
操作部22の内部の基端側には、切替部(プッシュスイッチ)74aが配設されている。なお、図示しないが、切替部74aは第1実施形態で説明したように、電源P及びフルブリッジ回路72に電気的に接続されている。この切替部74aは、回転リング136を回転させて係合部材134で切替部74aを押圧しているときにはモータMを短絡状態にして第2湾曲部36を硬状態にする。係合部材134で切替部74aの押圧を解除したときには第2湾曲部36を軟状態にする。
【0069】
この実施形態では、可撓管部38の硬度を最大にしたときに第2湾曲部36の硬度を硬状態とし、可撓管部38の硬度を最低にしたときに第2湾曲部36の硬度を軟状態にしている。
この実施形態では、可撓管部38の硬度と第2湾曲部36との間に硬度を変更しない部分を設けたり、第2湾曲部36と可撓管部38とで異なる硬度にすることができる。このため、挿入部24の挿入対象に合わせて適宜の硬度にして、内視鏡12を使用することができる。
【0070】
上述した変形例を含む第1及び第2実施形態では、フルブリッジ回路72を用いる場合について説明したが、モータMの短絡状態/フリー状態を切り替え可能な適宜の回路やモータMを制御することにより短絡状態とフリー状態とを作り出すようにしても良い。
【0071】
これまで、いくつかの実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明したが、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で行なわれるすべての実施を含む。
【符号の説明】
【0072】
10…内視鏡システム、12…内視鏡、16…ビデオプロセッサ、18…モニタ、22…操作部、24…挿入部、32…先端硬質部、34…第1湾曲部、36…第2湾曲部、34a,36a…湾曲管、38…可撓管部、42…アングルワイヤ、46…第1ドラム、48…第2ドラム、52…第1アングルノブ、54…第2アングルノブ、56…ノブ位置検知用ポテンショメータ、60…硬度調整機構、P…モータ電源、M…モータ、64…回転軸、66…プーリ、68…アングルワイヤ、72…フルブリッジ回路、SW1,SW2,SW3,SW4…スイッチ、74…切替部、76…エンコーダ、80…駆動制御部、82…CPU、84…抵抗値測定部、86…カウント処理部、88…閾値入力部、90…記憶部、LI…管孔(大腸)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲部と、前記湾曲部の基端部に設けられ可撓性を有する管状部とを有する挿入部と、
前記湾曲部を湾曲させる第1湾曲駆動機構と、
電源と、前記電源から供給される電力により駆動される駆動源と、少なくとも一部が前記管状部に配設され前記駆動源から駆動力を伝達する伝達部と、前記電源と前記駆動源との間の接続を調整して前記駆動源から前記伝達部に伝達する駆動力を調整する調整部とを有し、前記管状部の少なくとも一部の硬度を調整可能な硬度調整機構と
を具備することを特徴とする医療装置。
【請求項2】
前記調整部は、前記電源から前記駆動源への電力の供給を選択的に遮断する状態と供給を受ける状態とに切り替える電力供給選択部を有することを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記電力供給選択部は、前記電源から前記駆動源への電力の供給を遮断する状態で、前記駆動源を短絡させた状態と、回路的に解放した状態とにさらに切り替え可能であることを特徴とする請求項2に記載の医療装置。
【請求項4】
前記調整部は、前記管状部の少なくとも一部を軟状態と、前記軟状態よりも硬い硬状態とに切り替え可能な切替部を有することを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項5】
前記切替部は、前記管状部の少なくとも一部を前記硬状態にしたとき、前記管状部の少なくとも一部を、前記軟状態よりも硬状態の所定の範囲内で硬度を変更可能としたことを特徴とする請求項4に記載の医療装置。
【請求項6】
前記管状体の内側に配設されたコイルパイプと、前記コイルパイプに挿通されたワイヤと、前記コイルパイプの圧縮力を変更可能な圧縮力変更部とを有する硬度可変機構をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項7】
前記第1湾曲駆動機構には、前記湾曲部の湾曲角度を検出可能な検出部が配設され、
前記硬度調整機構の前記調整部は、前記湾曲駆動機構の動作にしたがって前記検出部により検出される情報に基づいて、前記駆動源から前記伝達部に伝達する駆動力を自動的に調整する制御部を有することを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記湾曲部の湾曲角度が所定角度よりも大きいときに前記管状部の少なくとも一部の硬度を、前記湾曲部の湾曲角度が所定角度よりも小さいときに比べて大きくしたことを特徴とする請求項7に記載の医療装置。
【請求項9】
前記硬度調整機構は、
前記駆動源に接続され、前記管状部を能動的に湾曲させる第2湾曲駆動機構と、
前記第2湾曲駆動機構を制御する制御部と
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項1】
湾曲部と、前記湾曲部の基端部に設けられ可撓性を有する管状部とを有する挿入部と、
前記湾曲部を湾曲させる第1湾曲駆動機構と、
電源と、前記電源から供給される電力により駆動される駆動源と、少なくとも一部が前記管状部に配設され前記駆動源から駆動力を伝達する伝達部と、前記電源と前記駆動源との間の接続を調整して前記駆動源から前記伝達部に伝達する駆動力を調整する調整部とを有し、前記管状部の少なくとも一部の硬度を調整可能な硬度調整機構と
を具備することを特徴とする医療装置。
【請求項2】
前記調整部は、前記電源から前記駆動源への電力の供給を選択的に遮断する状態と供給を受ける状態とに切り替える電力供給選択部を有することを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記電力供給選択部は、前記電源から前記駆動源への電力の供給を遮断する状態で、前記駆動源を短絡させた状態と、回路的に解放した状態とにさらに切り替え可能であることを特徴とする請求項2に記載の医療装置。
【請求項4】
前記調整部は、前記管状部の少なくとも一部を軟状態と、前記軟状態よりも硬い硬状態とに切り替え可能な切替部を有することを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項5】
前記切替部は、前記管状部の少なくとも一部を前記硬状態にしたとき、前記管状部の少なくとも一部を、前記軟状態よりも硬状態の所定の範囲内で硬度を変更可能としたことを特徴とする請求項4に記載の医療装置。
【請求項6】
前記管状体の内側に配設されたコイルパイプと、前記コイルパイプに挿通されたワイヤと、前記コイルパイプの圧縮力を変更可能な圧縮力変更部とを有する硬度可変機構をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項7】
前記第1湾曲駆動機構には、前記湾曲部の湾曲角度を検出可能な検出部が配設され、
前記硬度調整機構の前記調整部は、前記湾曲駆動機構の動作にしたがって前記検出部により検出される情報に基づいて、前記駆動源から前記伝達部に伝達する駆動力を自動的に調整する制御部を有することを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記湾曲部の湾曲角度が所定角度よりも大きいときに前記管状部の少なくとも一部の硬度を、前記湾曲部の湾曲角度が所定角度よりも小さいときに比べて大きくしたことを特徴とする請求項7に記載の医療装置。
【請求項9】
前記硬度調整機構は、
前記駆動源に接続され、前記管状部を能動的に湾曲させる第2湾曲駆動機構と、
前記第2湾曲駆動機構を制御する制御部と
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図4】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−27466(P2013−27466A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164134(P2011−164134)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】
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