説明

医療診断装置用撮影テーブル及び医療診断装置

【目的】 より安全で動作確実な医療診断装置用撮影テーブル及び医療診断装置を提供することにある。
【構成】 被検体を搭載して体軸方向に搬送可能な医療診断装置用撮影テーブルにおいて、被検体を搭載する天板21と、該天板を体軸方向に搬送可能に支持する中間支持部22と、該中間支持部を体軸方向に搬送可能に支持する架台23と、略最後退位置にある中間支持部を少なくとも被検体搬入に必要な第1の駆動力で途中まで搬入して後、該第1よりも大きい第2の駆動力で搬入する制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療診断装置用撮影テーブル及び医療診断装置に関し、更に詳しくは、被検体を搭載して体軸方向に搬送可能な医療診断装置用撮影テーブル及び医療診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばX線CT装置の撮影テーブルは、高さを調整可能であると共に、患者を走査ガントリの空洞部(boa)内に正確に搬入できる。特に、中間支持部(IMS:Inter Midiate Support)付きの撮影テーブルでは、天板(クレイドル)のみならずIMSの部分も空洞部内に搬入することで、被検体を空洞部内のより深い位置に搬入でき、よって体軸方向に長いスキャナブル・レンジが得られる。
【0003】
従来、IMS付き撮影テーブルで患者をスキャン開始位置まで搬入する場合は、術者が天板先端部付近の床面にあるペダルスイッチを踏むことにより、まずIMSをIN側に移動させ、該IMSが最大位置に達すると、次に天板をIN側に移動させていた。その際には、患者搬送のどの行程でも患者体重と天板のせり出しによるモーメントを十分にカバーできる様に、天板及びIMSを一律に比較的強い力(200N程度)で移動さている。一方、スキャン終了した患者を引き戻す際には、せり出しモーメントで撓んだ天板を容易かつ確実に引き出せる様に、より強い力(例えば300N)で引き戻している。
【0004】
この様な構成により、従来、ストレッチャで運んだ患者を撮影テーブルに移す際には、患者を取り囲むように立った複数人でシーツを掴み、天板側に載せるが、この時、少なくとも1人の術者(又は看護士)は、天板先端部とガントリとの間に立って、患者の頭側を持つことになる。しかるに、この時、術者が誤って床面のペダルスイッチを踏んでしまう場合があり、もし踏んでしまうと、IMSがIN側に移動して術者を比較的強い力(200N程度)でガントリ側に押し込んでしまう可能性があった。従って、より安全かつ確実に動作する撮影テーブルの提供が望まれる。
【0005】
この点、従来は、天板4に取り付けた付属品の取付けデータに基づき、天板4に被検体Pを載置し、且つ付属品を取り付けた場合の存在領域を判断し、この存在領域に天板4の動作範囲を関連付けると共に、この動作範囲に基づき、被検体や属品とX線撮影との接触を防止するよう装置3及び寝台5の各駆動部3a,5aの駆動制御を行う医療用X線装置が知られている(特許文献1)。
【0006】
また従来は、治療台の位置検出信号と放射線照射部本体の回転角検出信号とに基づき、治療台と照射部本体との間の干渉を避ける様にこれらを駆動制御する放射線治療装置が知られている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2003−169795(要約,図)
【特許文献2】特開平07−231943(要約,図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来技術は何れも干渉し合うものの位置や動きが予め正確に把握可能又は検出可能なものであり、術者等との間の不測の干渉を安全に回避できるものでは無い。
【0008】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みなされたもので、その目的とする所は、より安全で動作確実な医療診断装置用撮影テーブル及び医療診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は例えば図2の構成により解決される。即ち、本発明(1)の医療診断装置用撮影テーブルは、被検体を搭載して体軸方向に搬送可能な医療診断装置用撮影テーブルにおいて、被検体を搭載する天板21と、該天板を体軸方向に搬送可能に支持する中間支持部22と、該中間支持部を体軸方向に搬送可能に支持する架台23と、略最後退位置にある前記中間支持部を少なくとも被検体搬入に必要な第1の駆動力で途中まで搬入して後、該第1よりも大きい第2の駆動力で搬入する制御部とを備えるものである。
【0010】
本発明(1)では、まず中間支持部を少なくとも被検体搬入に必要な駆動力で途中まで搬入するため、術者と天板間で不測の干渉があっても、術者は、別段の強い力で押されることも無く、これを安全に回避できる。また、最初から途中まで無条件に比較的弱い力で搬入するため、このような制御はフィードバック制御を必要としない簡単な構成で実現できる。また、干渉があっても中間支持部(即ち、天板)を止めずに弱い力で押しつ続ける構成により、別段のリカバリ制御も必要とせず、制御も簡単である。
【0011】
本発明(2)の医療診断装置用撮影テーブルは、被検体を搭載して体軸方向に搬送可能な医療診断装置用撮影テーブルにおいて、被検体を搭載する天板と、該天板を体軸方向に搬送可能に支持する中間支持部と、該中間支持部を体軸方向に搬送可能に支持する架台と、前記天板前方の搬送経路に介在する障害物を検出する検出手段と、前記検出手段が障害物を検出していることにより前記中間支持部を少なくとも被検体搬入に必要な第1の駆動力で搬入し、かつ前記障害物が検出されていないことにより該中間支持部を前記第1よりも大きい第2の駆動力で搬入する制御部とを備えるものである。
【0012】
本発明(2)では、天板前方の搬送経路に介在する障害物(術者等)を事前に検出できる構成により、干渉の可能性がある時はこれを安全に回避できると共に、干渉の可能性が無い状態では初めから患者を通常の第2の駆動力で確実に搬入できる。
【0013】
本発明(3)の医療診断装置用撮影テーブルは、被検体を搭載して体軸方向に搬送可能な医療診断装置用撮影テーブルにおいて、被検体を搭載する天板と、該天板を体軸方向に搬送可能に支持する中間支持部と、該中間支持部を体軸方向に搬送可能に支持する架台と、前記天板先端部に干渉する障害物を検出する検出手段と、前記検出手段が障害物を検出していることにより前記中間支持部を少なくとも被検体搬入に必要な第1の駆動力で搬入し、かつ前記障害物が検出されていないことにより該中間支持部を前記第1よりも大きい第2の駆動力で搬入する制御部とを備えるものである。
【0014】
本発明(3)では、天板先端部に直接干渉する障害物を検出する構成により、術者は、天板と干渉してもこれを安全に回避できると共に、干渉の無い状態では初めから患者を通常の力で確実に搬入できる。
【0015】
また上記の課題は例えば図7の構成により解決される。即ち、本発明(4)の医療診断装置用撮影テーブルは、被検体を搭載して体軸方向に搬送可能な医療診断装置用撮影テーブルにおいて、被検体を搭載する天板21と、該天板を体軸方向に搬送可能に支持する架台23Aと、略最後退位置にある前記天板を少なくとも被検体搬入に必要な第1の駆動力で途中まで搬入して後、該第1よりも大きい第2の駆動力で搬入する制御部とを備えるものである。本発明は、中間支持部の無い撮影テーブルでも有効に機能する。
【0016】
本発明(5)の医療診断装置用撮影テーブルは、被検体を搭載して体軸方向に搬送可能
な医療診断装置用撮影テーブルにおいて、被検体を搭載する天板と、該天板を体軸方向に搬送可能に支持する架台と、前記天板前方の搬送経路に介在する障害物を検出する検出手段と、前記検出手段が障害物を検出していることにより前記天板を少なくとも被検体搬入に必要な第1の駆動力で搬入し、かつ前記障害物が検出されていないことにより該天板を前記第1よりも大きい第2の駆動力で搬入する制御部とを備えるものである。
【0017】
本発明(6)の医療診断装置用撮影テーブルは、被検体を搭載して体軸方向に搬送可能な医療診断装置用撮影テーブルにおいて、被検体を搭載する天板と、該天板を体軸方向に搬送可能に支持する架台部と、前記天板先端部に干渉する障害物を検出する検出手段と、前記検出手段が障害物を検出していることにより前記天板を少なくとも被検体搬入に必要な第1の駆動力で搬入し、かつ前記障害物が検出されていないことにより該天板を前記第1よりも大きい第2の駆動力で搬入する制御部とを備えるものである。
【0018】
本発明(7)では、上位本発明(1)〜(6)において、制御部の駆動制御対象がステッピングモータの動トルク特性である。ステッピングモータが脱調することで、術者等との干渉を安全に回避できる。
【0019】
本発明(8)の医療診断装置は、上記本発明(1)乃至(7)のいずれか1つに記載の撮影テ−ブルと、前記撮影テーブルに搭載された被検体を検査して医療用情報を生成する検査手段とを備えるものである。
【0020】
本発明(9)では、上記本発明(8)において、検査手段は、被検体を挟んで相対向するX線管とX線検出器とを含むX線撮影系を該被検体体軸の回りに回転させて投影データを取得するガントリ手段からなるものである。本発明による撮影テーブルはX線CT装置に適用して好適なるものである。
【0021】
本発明(10)では、上記本発明(8)において、検査手段は、核磁気共鳴法により被検体の空間的な核磁化分布を検出するガントリ手段からなるものである。本発明による撮影テーブルはMIR装置に適用して好適なるものである。
【発明の効果】
【0022】
以上述べた如く本発明によれば、ストレッチャや車椅子から患者を撮影テーブルにのせる際に術者等が誤ってセットペダルを踏んでしまっても、術者に加わる力を最小限にできるため、より安全性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面に従って本発明に好適なる実施の形態を詳細に説明する。なお、全図を通して同一符号は同一又は相当部分を示すものとする。図1は実施の形態によるX線CT装置の要部構成図で、本発明のX線CT装置への適用例を示している。
【0024】
図において、この装置は、X線ファンビームXLFBにより被検体100のスキャン読取を行う走査ガントリ部30と、被検体100を載せて体軸CLbの方向に移動させる撮影テーブル20と、上記各部30,20の遠隔制御を行うと共に、術者等が操作をする操作コンソール部10とを備える。
【0025】
走査ガントリ部30において、40は回転陽極型のX線管、40AはX線制御部、50はX線スライス幅wの制限を行うコリメータ、50Aはコリメータ制御部、90はチャネルCH方向に並ぶ多数(n=1000程度)のX線検出素子が体軸CLbの方向の例えば2列L1,L2に配列されているX線検出器、91はX線検出器90の検出信号に基づき被検体の投影データを生成し、収集するデータ収集部(DAS:Data Acquisition Syste
m)、35は上記X線撮影系を被検体体軸の回りに回転可能に支持するガントリ、35Aはガントリ35の回転制御部、70は走査ガントリ部30を被検体体軸の前/後にチルトさせるチルト制御部である。
【0026】
操作コンソール部10において、11はX線CT装置の主制御・処理(スキャン制御,CT断層像の再構成処理等)を行う中央処理装置、11aはそのCPU、11bはCPU11aが使用するRAM,ROM等からなる主メモリ(MM)、12はキーボードやマウス等を含む指令やデータの入力装置、13はスキャン計画情報やCT断層像等を表示するための表示装置(CRT)、14はCPU11aと走査ガントリ部30及び撮影テーブル20との間で各種制御信号CSやモニタ信号MS等のやり取りを行う制御インタフェース、15はデータ収集部91からの投影データを一時的に蓄積するデータ収集バッファ、16はデータ収集バッファ15からの投影データを蓄積・格納すると共に、X線CT装置の運用に必要な各種アプリケーション・プログラムや各種演算/補正用のデータファイル等を格納している二次記憶装置(ハードディスク装置等)である。
【0027】
次に上記構成によるX線CT撮影の動作を概説する。被検体100を走査ガントリ部30の空洞部に位置させた状態で、X線管40からのX線ビームXLFBを被検体100に照射する。この状態で、X線管40からのX線ファンビームXLFBは被検体100を透過してX線検出器90の検出器列L1,L2に一斉に入射する。データ収集部91はX線検出器90の各検出列出力に対応する投影データg(X,θ),g(X,θ)を生成し、これらをデータ収集バッファ15に格納する。ここで、Xは検出器のチャネル番号、θは投影(ビュー)角を表す。
【0028】
更に、走査ガントリ35が僅かに回転した各ビュー角θで上記同様のX線投影を行い、こうして走査ガントリ1回転分の投影データを収集・蓄積する。また、同時に、アキシャル/ヘリカルスキャン方式に従って撮影テーブル20を体軸CLbの方向に間欠的/連続的に移動させ、こうして被検体の所要撮影領域についての全投影データを収集・蓄積し、これらを二次記憶装置16に格納する。そして、CPU11aは、上記全スキャンの終了後、又はスキャンと並行して得られた投影データに基づき被検体100のCT断層像を再構成し、これを表示装置13に表示する。
【0029】
次に撮影テーブルを説明する。図2〜図4は第1の実施の形態による撮影テーブルを説明する図(1)〜(3)で、図2は撮影テーブル20の概略構成と、患者搬入時の動作を示している。図2において、21は被検体100を搭載して体軸方向に移動する天板(クレイドル)、22は天板21を体軸方向に搬送可能に支持する中間支持部(IMS:Inter Midiate Support)、23はIMS22をガントリ空洞部内に搬送可能に支持する下部支持部(本発明の架台に相当)、24は下部支持部23を昇降可能に支持するリフト機構部である。
【0030】
また、撮影テーブル20と走査ガントリ部30との間の床面上にはフットプレート41が埋設されており、ここには、被検体をガントリ内の所望のスキャン開始位置に搬入する為のペダル形状のセットスイッチSLL、STRと、スキャン終了後の被検体を外部のホームポジションまで搬出する為の同ペダル形式のリセットスイッチRSL,RSRがそれぞれ体軸方向の左右に設けられている。
【0031】
次に、被検体搬入時の典型的な動作(操作)を概説する。図2(A)において、2人の術者H,Kが不図示のストレッチャで運ばれてきた被検体100を天板21の上に移動させ、姿勢を整える。図2(B)において、その後、テーブルの横に移動した術者HがセットスイッチSTRを足で踏むと、撮影テーブル20は予め設定されたシーケンスで被検体100をガントリ内部に搬入する。即ち、まずリフト機構部24が下部支持部23をガン
トリ回転中心ISOと被検体のスキャン視野中心とが一致する高さまで上昇させ(矢印a)、次に下部支持部23がIMS22をガントリ空洞部内の所定位置(X線照射領域の直前)まで搬入し(矢印b)、次にIMS22が天板21をガントリ空洞部内に搬入する(矢印c)。これら一連の搬入動作は、術者HがセットスイッチSTRを踏み続けている間継続され、やがて被検体100がスキャン開始位置に搬入されたことを確認すると、フットスイッチSTRから足を離し、搬入動作は停止する。
【0032】
図3は下部支持部23の概略構成と、その制御部の構成を示している。図において、下部支持基盤23Aの上側の体軸方向に円柱状のドライブシャフト304が掛け渡され、その両端部がベアリング部材により回転可能に軸支されている。ドライブシャフト304の一端側にはタイミングプーリが固定されており、下側のステッピングモータ302から掛け渡されたタイミングベルト303によってドライブシャフト304を正/逆方向に駆動可能となっている。
【0033】
ドライブシャフト304の中間部にはボールネジと同様に作用する直動アクチュエータ(ローリックス:登録商標)306が設けられており、ドライブシャフト304が正/逆方向に回転すると、直動アクチュエータ306に固定したIMS支持基盤306が体軸(矢印A)方向に往復動可能となっている。また、IMS支持基盤305の左右両サイドでは、同じく体軸方向に設けられた2本のレール307L,307RによってIMS支持基盤305が摺動自在に支持されており、IMS支持基盤305の上部に固定したIMS22をガントリ空洞部内の所定位置まで搬入可能となっている。更に、このIMS22は上部の天板21をスライド可能に支持しているが、ここではIMS22の搬入/搬出機構部に注目する。
【0034】
挿入図(a),(b)に直動アクチュエータ(ローリックス)306の原理的な構成を示す。図の(a)は正面図、(b)は側面図である。ドライブシャフト304の円周上には略45°に傾けた3つのベアリング部材308が180°間隔で圧接しており、この状態でドライブシャフト304がR方向に回転すると、その作用を受けたベアリング部材308が直動アクチュエータ306を図の右方向に移動させ、またドライブシャフト304がL方向に回転すると、その作用を受けたベアリング部材308が直動アクチュエータ306を図の左方向に移動させる。なお、この直動アクチュエータ306にボールネシを使用しても良い。
【0035】
床面のフットプレート41に一部埋設された各ペダルスイッチは、それぞれ内部にノーマルオープンNOとノーマルクローズNCの2つの接点スイッチを備えている。ここで、セットスイッチSTは、上記図2で述べた如く、被検体100をガントリ内の初期位置に搬入するスイッチであり、リセットスイッチRSは被検体100をホームポジション位置に戻すスイッチである。術者Hが例えば右側のセットスイッチSTRを踏むと、該スイッチの出力信号NO,NCは共にハイレベルとなり、アンドゲート回路A1を満足する。これがオアゲート回路O1を介して制御部300にセット信号ST=1(ハイレベル)を入力する。左側のセットスイッチSTLを踏んだ場合も同様である。一方、術者Hが例えば右側のリセットスイッチRSRを踏むと、上記同様にして制御部300にはリセット信号RS=1(ハイレベル)が入力する。
【0036】
また、この制御部300にはIMS22の位置を検出するポジションセンサPSEN1〜3からの各検出信号が入力している。信号HPはIMS22がホームポジション(最後退位置)にあること、信号P200はIMS22がHPから200mm前進した位置にあること、そして、信号P400はIMS22がHPから400mm前進した位置にあること、をそれぞれ表す。位置の検出は公知の磁気的、機械的又は光学的方法で行われる。または、図示しないが、ドライブシャフト304に接続したロータリエンコーダの出力信号
をカウントすることで、IMS22の位置を管理しても良い。制御部200は上記各入力信号に基づき対応する制御パルスCPを出力し、これを受けた駆動回路部301はステッピングモータ303の駆動パルスDPを出力する。
【0037】
図4(A)に実施の形態によるステッピングモータ303の動トルク特性を示す。縦軸はトルク、横軸はパルスレートである。一般に、ステッピングモータ303は自起動領域で駆動開始され、スルー領域のところで定速運転される。但し、このステッピングモータ303には、図示の如く、パルスレートPPSによらずフラットな3段階の駆動トルクが用意されており、それぞれは、IMS22を体軸方向に駆動する力として100N(ニュートン)、200N及び300Nに対応している。
【0038】
200Nは従来よりIMS22の挿入時に通常加えられる力であって、もし術者Hがこの力で不用意に押されると、よろける程度の力である。但し、実際はIMS22で直接押されるのでは無く、前部に突出している天板21によって押される。
【0039】
100Nは本実施の形態で新たに設けた駆動力であって、重い被検体でも十分に搬入可能であるが、その内の略最小限の力である。術者Hがこの力で押されても、十分に抗することが可能であり、よろけたりはしない。天板21が術者H等の障害物に当接している間は、ステッピングモータ303が脱調しており、この間に術者Hは容易に横側に脱出することができる。
【0040】
更に、300Nは前方に出たIMS22を引き戻す場合の駆動力であり、被検体100を載せ、前方にせり出した天板21のモーメントにより、IMS22に大きな加重が掛かっていても、該IMS22を余裕を持って、かつ安定に引き戻せる駆動力となっている。
【0041】
このような3段階の動トルク特性はステッピングモータ303に加えるパルス電流を制御することで行えるが、これは駆動回路部301に供給する定電流源(不図示)の電流値を制限する方法や、駆動回路部301に加える制御パルスCPをチョッピング制御することで、駆動パルスDPに流れる平均電流を制御する方法で行っても良い。
【0042】
図4(B)に第1の実施の形態によるIMS22の駆動シーケンスを示す。この第1の実施の形態は、天板21と障害物(術者H等)間の干渉を直接検出したり、可能性を予測したりする別段の検知手段を持たないため、当初よりIMS22を無条件で100Nにて途中まで駆動する制御となっている。図において、IMS22がホームポジションエリアHPAにあるときはホームポジションエリア信号HPAがハイレベルになっている。なお、図示しないが、このホームポジションエリア信号HPAは、位置センサPSEN1,2の各検出信号HP、P00に基づき制御部300内で形成され、利用される。そして、この状態で術者HがセットスイッチSTRを踏むと、IMS22は、まず100Nで進み、やがてHPから200mmの位置まで進むと、信号HPAがローレベルになる。これによりIMS22はその後は200Nで進み、やがてHPから400mmの位置に達すると、IMS22は自動的に停止する。図示しないが、その後は天板21が200Nで前方に進み、やがて術者HがセットスイッチSTRから足を離すと、天板21はその時点で停止する。また、被検体のスキャン終了後、術者HがリセットスイッチRSRを踏むと、天板21及びIMS22は一律に300Nの力でHPまで引き戻される。
【0043】
本第1の実施の形態によれば、まずIMS22を少なくとも被検体搬入に必要な略最小限の駆動力(例えば100N)で途中まで搬入するため、術者と天板間で不測の干渉があっても、術者は、別段の強い力で押されることも無く、これを安全に回避できる。また、最初から途中まで無条件に弱い力で搬入するため、このような制御は簡単な構成で実現できる。また、干渉があっても止めずに弱い力で押しつ続ける構成により制御も簡単である

【0044】
図5は第2の実施の形態による撮影テーブルを説明する図で、天板21が術者Hと干渉する可能性がある状況を検出する場合の一例を示している。図5(A)において、311は重さセンサ(WSEN)である。図示しないが、好ましくは、術者Hが天板21の先頭部と干渉しそうなどの位置でフットプレート41上に乗っていても、これを確実に検出できるように、フットプレート41の下側には複数の重さセンサ311が分散配置さている。これにより、もし術者Hが天板21と干渉し得る位置でフットプレート41に乗っていると、重さセンサ311が所定以上の重さを検出したことにより重さ検出信号WDTを出力する。該信号WDTは制御部300に入力しており、これがIMS22の駆動力制御に利用される。その他の構成については、上記図3で述べたものと同様でよい。
【0045】
図5(B)に第2の実施の形態によるIMS22の駆動シーケンスを示す。図において、IMS22がホームポジションHPにあるとき、既に術者Hがフットプレート41上に乗っていると、重さ検出信号WDTはハイレベルになっている。即ち、もし天板21を駆動すると、天板21と術者Hとが干渉する可能性が高い。この状態で、術者HがセットスイッチSTRを踏むと、IMS22は、重さ検出信号WDTがハイレベルであることにより、当初から100Nの力で前方に駆動される。この時、もし天板21と術者Hとが干渉しても、術者Hは軽く押される程度であり、術者Hの操作や姿勢に支障はない。一方、ステッピングモータ303は干渉による過負荷で脱調しており、この区間にIMS22は殆ど進まない。そして、術者Hがフットプレート41から降りると、重さ検出信号WDTはローレベルになり、この時、術者Hは天板21から外れている。一方、IMS22に対する駆動力100Nは、重さ検出信号WDTのローレベルにより解除され、その後は駆動力200NでP400の位置まで搬入される。従って、天板21と術者Hとの間の過干渉を安全に回避できる。
【0046】
なお、本第2の実施の形態では、ホームポジションエリア検出信号HPAを駆動力を制限する制御に使用していないため、途中で重さ検出信号WDTがハイレベルになると、いつでも駆動力は100Nに低下する。但し、ホームポジションエリア検出信号HPAを駆動力の制限制御に使用しても良く、この場合は、例えばHPから200mmの位置でエリア検出信号HPAがローレベルになった後は、途中で重さ検出信号WDTがハイレベルになっても駆動力200Nのままで進行する。
【0047】
また、上記天板21と術者Hとの間の干渉可能性を検出する手段としては、他にも考えられる。例えば天板21の先端部にその近傍領域における障害物を検出する態様で設けられた近接(人感)センサ、超音波センサ、光センサ等を採用しても良い。
【0048】
図6は第3の実施の形態による撮影テーブルを説明する図で、天板21と術者Hとの間の干渉を直接検出する場合の一例を示している。図6(A)において、天板21の先頭部には障害物との間の干渉を検出するためのキャップ部21Aが天板先頭部との間に所定のバネ力をもって設けられている。図示しないが、好ましくは、術者Hがキャップ部21Aのどの部分と所定以上の力Fで干渉しても、これを確実に検出できるように、キャップ部21Aの内側には複数の接点スイッチ(力センサ:FSEN)312が分散配置されている。術者Hがキャップ部21Aと所定以上の力Fで干渉すると、接点スイッチ312が作用して力検出信号FDTを出力する。該信号FDTは制御部300に入力しており、IMS22の駆動力制御に利用される。その他の構成については、上記図3で述べたものと同様でよい。
【0049】
図6(B)に第3の実施の形態によるIMS22の駆動シーケンスを示す。図において、術者HがセットスイッチSTRを踏むと、IMS22は、当初より200Nの力で前方
に駆動される。しかし、もし途中で天板21が術者Hと干渉すると、力センサ312が力F(>100N)を検出して、力検出信号FDTを出力し、これによりIMS22の駆動力は速やかに100Nに低下する。更に、この干渉が続くと、この区間はステッピングモータ303が脱調することで、IMS22は殆ど進まない。
【0050】
そして、やがて、術者Hが天板21から外れると、力Fが解放されて力検出信号FDTはローレベルになり、その後IMS22は再び駆動力200NでP400の位置まで搬入される。従って、天板21と術者Hとの間の過干渉を安全に回避できる。
【0051】
なお、本第3の実施の形態でも、ホームポジションエリア検出信号HPAを駆動力を制限する制御に使用していないため、途中で力検出信号FDTがハイレベルになると、いつでも駆動力は100Nに低下する。但し、ホームポジションエリア検出信号HPAを駆動力制御に使用しても良く、この場合は、例えばP200の位置でホームポジションエリア検出信号HPAがローレベルになった後は、途中で力検出信号FDTがハイレベルになっても駆動力200Nのままで進行する。
【0052】
また、上記天板21と術者Hとの間の干渉を検出する手段としては、他にも考えられる。例えばタッチセンサや圧力センサを採用しても良い。
【0053】
図7は第4の実施の形態による撮影テーブルを説明する図で、撮影テーブルがIMS22を備えない場合を示している。実際には、架台23Aに搭載された天板21が体軸方向の全行程を移動する撮影テーブルも少なくない。本発明はこのような撮影テーブルにも適用可能である。なお、上記IMS22の駆動機構部及び駆動制御について述べたことは、そのまま天板21の駆動機構部及び駆動制御に適用できるので、詳細な説明は省略する。
【0054】
また、上記各実施の形態では本発明のX線CT装置への適用例を具体的に述べたが、これに限らない。本発明は核磁気共鳴(NMR)法により被検体の空間的な核磁化分布を画像化するところの所謂MRI装置用撮影テーブルにも適用可能であることは明らかである。
【0055】
また、上記各実施の形態では、比較的重い被検体でも十分に搬入可能な略最小限の力(本発明の第1の駆動力に相当)として100Nを選択したが、これに限らない。第1の駆動力は、撮影テーブルの構造や被検体の重さ等、様々な条件を考慮して最適に設定し得る。
【0056】
また、上記本発明に好適なる複数の実施の形態を述べたが、本発明思想を逸脱しない範囲内で各部の構成、制御、処理及びこれらの組み合わせの様々な変更が行えることは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施の形態によるX線CT装置の要部構成図である。
【図2】第1の実施の形態による撮影テーブルを説明する図(1)である。
【図3】第1の実施の形態による撮影テーブルを説明する図(2)である。
【図4】第1の実施の形態による撮影テーブルを説明する図(3)である。
【図5】第2の実施の形態による撮影テーブルを説明する図である。
【図6】第3の実施の形態による撮影テーブルを説明する図である。
【図7】第4の実施の形態による撮影テーブルを説明する図である。
【符号の説明】
【0058】
10 操作コンソール部
20 撮影テーブル
21 天板(クレイドル)
22 中間支持部(IMS:Inter Midiate Support)
23 下部支持部
24 リフト機構部
30 走査ガントリ部
35 ガントリ
40 X線管
50 コリメータ
90 X線検出器
100 被検体
300 制御部
301 駆動回路部
302 ステッピングモータ
306 直動アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を搭載して体軸方向に搬送可能な医療診断装置用撮影テーブルにおいて、
被検体を搭載する天板と、
該天板を体軸方向に搬送可能に支持する中間支持部と、
該中間支持部を体軸方向に搬送可能に支持する架台と、
略最後退位置にある前記中間支持部を少なくとも被検体搬入に必要な第1の駆動力で途中まで搬入して後、該第1よりも大きい第2の駆動力で搬入する制御部とを備えることを特徴とする医療診断装置用撮影テーブル。
【請求項2】
被検体を搭載して体軸方向に搬送可能な医療診断装置用撮影テーブルにおいて、
被検体を搭載する天板と、
該天板を体軸方向に搬送可能に支持する中間支持部と、
該中間支持部を体軸方向に搬送可能に支持する架台と、
前記天板前方の搬送経路に介在する障害物を検出する検出手段と、
前記検出手段が障害物を検出していることにより前記中間支持部を少なくとも被検体搬入に必要な第1の駆動力で搬入し、かつ前記障害物が検出されていないことにより該中間支持部を前記第1よりも大きい第2の駆動力で搬入する制御部とを備えることを特徴とする医療診断装置用撮影テーブル。
【請求項3】
被検体を搭載して体軸方向に搬送可能な医療診断装置用撮影テーブルにおいて、
被検体を搭載する天板と、
該天板を体軸方向に搬送可能に支持する中間支持部と、
該中間支持部を体軸方向に搬送可能に支持する架台と、
前記天板先端部に干渉する障害物を検出する検出手段と、
前記検出手段が障害物を検出していることにより前記中間支持部を少なくとも被検体搬入に必要な第1の駆動力で搬入し、かつ前記障害物が検出されていないことにより該中間支持部を前記第1よりも大きい第2の駆動力で搬入する制御部とを備えることを特徴とする医療診断装置用撮影テーブル。
【請求項4】
被検体を搭載して体軸方向に搬送可能な医療診断装置用撮影テーブルにおいて、
被検体を搭載する天板と、
該天板を体軸方向に搬送可能に支持する架台と、
略最後退位置にある前記天板を少なくとも被検体搬入に必要な第1の駆動力で途中まで搬入して後、該第1よりも大きい第2の駆動力で搬入する制御部とを備えることを特徴とする医療診断装置用撮影テーブル。
【請求項5】
被検体を搭載して体軸方向に搬送可能な医療診断装置用撮影テーブルにおいて、
被検体を搭載する天板と、
該天板を体軸方向に搬送可能に支持する架台と、
前記天板前方の搬送経路に介在する障害物を検出する検出手段と、
前記検出手段が障害物を検出していることにより前記天板を少なくとも被検体搬入に必要な第1の駆動力で搬入し、かつ前記障害物が検出されていないことにより該天板を前記第1よりも大きい第2の駆動力で搬入する制御部とを備えることを特徴とする医療診断装置用撮影テーブル。
【請求項6】
被検体を搭載して体軸方向に搬送可能な医療診断装置用撮影テーブルにおいて、
被検体を搭載する天板と、
該天板を体軸方向に搬送可能に支持する架台部と、
前記天板先端部に干渉する障害物を検出する検出手段と、
前記検出手段が障害物を検出していることにより前記天板を少なくとも被検体搬入に必要な第1の駆動力で搬入し、かつ前記障害物が検出されていないことにより該天板を前記第1よりも大きい第2の駆動力で搬入する制御部とを備えることを特徴とする医療診断装置用撮影テーブル。
【請求項7】
制御部の駆動制御対象がステッピングモータの動トルク特性であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1つに記載の医療診断装置用撮影テーブル。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つに記載の撮影テ−ブルと、
前記撮影テーブルに搭載された被検体を検査して医療用情報を生成する検査手段とを備えることを特徴とする医療診断装置。
【請求項9】
検査手段は、被検体を挟んで相対向するX線管とX線検出器とを含むX線撮影系を該被検体体軸の回りに回転させて投影データを取得するガントリ手段からなることを特徴とする請求項8記載の医療診断装置。
【請求項10】
検査手段は、核磁気共鳴法により被検体の空間的な核磁化分布を検出するガントリ手段からなることを特徴とする請求項8記載の医療診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−187515(P2006−187515A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−2611(P2005−2611)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】