説明

医薬の組み合わせでの処置方法およびこれに適する医薬の組み合わせ

本発明は、少なくとも1種の薬剤的剤を、1種または2種以上の前記剤の投与を指示された患者に投与するための方法であって:(a)第1の薬剤的剤を含む、前記剤の経皮的投与のための少なくとも1つの経皮的治療系を、指示された期間適用すること、および(b)少なくとも1つのウェーハを、経皮的投与の開始時に、またはこの間適用し、ここでウェーハが、同一の剤または第1の剤と同一の適応症に適する第2の、もしくは他の剤を含むことを含む、前記方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物療法の目的のために、薬剤的に活性な物質を、前記活性物質の投与に依存する患者に投与するための、特に長期間療法を行うための方法に関する。本発明はさらに、このような方法に適する医薬の組み合わせおよび前述の治療方法における薬剤的に活性な物質の使用に関する。
【0002】
本発明は特に、経皮的治療系および、口腔における1種または2種以上の活性物質の経粘膜的放出のための1または2以上のウェーハの同時の投与による組み合わせ処置に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の組み合わせ療法を、長期間にわたり継続する薬剤的に活性な物質での長期間療法または基礎的薬物適用を必要としている患者の治療処置において、特に有利に用いることができ、ここで、これに加えて、長期間療法の開始時またはこの間に、薬物作用の迅速な、もしくは促進された開始をもたらし、かつ/または、長期間療法の間に突然発生する一時的な増大した活性物質要求を処置する必要がある。
【0004】
この問題は、特に、重大な、または慢性の疼痛の処置において(例えば腫瘍患者の疼痛療法において)顕著であり、ここで、疼痛からの持続的な緩和を達成するために、鎮痛薬(例えばオピオイド類)での長期間療法または基礎的療法を行い、ここで投与された用量は、患者により知覚される疼痛の強度に対して調整される。このような療法の目的は、疼痛を十分低減させ、同時に過量を回避することである。
【0005】
しかし、個別に調整した活性物質用量を用いたこのような長期間療法または基礎的療法の間に、いわゆる突出痛が起こり得る。用語「突出痛」は、日程(長期間の薬物適用)による鎮痛薬の連続的な摂取の間に、またはこれにもかかわらず一時的に起こり、長期間療法により処置される疼痛よりも強度が高い疼痛を意味する。しばしば、突出痛は、同定し、従って回避することができる要因、例えば自発的な運動、ある体位、接触または、胃腸領域における長期間の疼痛の場合においてはある食物により誘発される。これらの突出痛を処置するために、患者に、基礎的療法の体制内で投与した鎮痛薬に加えて、他の鎮痛薬を処方しなければならず、後者は一般的に徐放性製剤である。
【0006】
薬物物質(薬剤的活性物質)の、特に経皮的治療系(TTS)による経皮的適用は、多くの利点を有し、これらは一般的に、例えば活性物質の制御された、長期間にわたり持続的な送達および「初回通過効果」の回避として知られている。しかし、これらの利点に相対して、しばしば、皮膚による薬物物質の摂取が、質および量の両方に関して制限されており、皮膚におけるTTSの適用に続く皮膚による活性物質の吸収が、時間的に長時間遅延した後にのみ開始するという欠点がある。
【0007】
当業者には、皮膚が吸収性の器官ではなく、むしろ異物およびこれによりまた薬物物質の侵入を防止する機能を有することは、知られている。従って、作用の開始の前述の遅延の原因であるのは、皮膚のこの特性である。この現象について、用語「遅延時間」が作られた。この用語は、経皮的に適用可能な薬物、例えばTTSの最初の適用と、測定可能な血漿濃度の最初の発生または薬剤の予測された生理学的効果の最初の発生との間の時間を意味するものと理解される。
【0008】
この「遅延時間」は、薬物物質を、基礎的療法または長期間療法の目的のために、即ち長期間にわたり適用するべきである場合のみならず、さらに当該薬物物質の作用が、薬物の最初の適用の可能な限り直後に起こることが要求される場合、例えば中枢作用性の鎮痛薬を適用する場合においても、特に重大である。TTSを初めて適用する場合、または突出痛が起こる場合には、「遅延時間」の欠点を、活性物質の迅速な送達を示す薬物を、例えば静脈内注射によりさらに投与することにより、回避または短縮することが可能であることは、真実である。しかし、このような組み合わされた適用は、静脈内注射を常に医師により施与しなければならないため、問題がないわけではない。TTSの同時の適用を伴う錠剤の投与もまた、オピエートの胃腸での吸収がまたある遅延を伴ってのみ起こるため、有益ではない。
【0009】
さらに、錠剤の投与の結果、この胃腸の通過の後に、肝臓を通過する活性物質が生じ、ここでこれは代謝され、即ち不活性となる。当業者には、この現象は、いわゆる「初回通過効果」として知られている。特にモルフィナン骨格構造の芳香環上に遊離の水酸基を含むオピエート類(例えばモルヒネおよびヒドロモルホン)について、化学的な第二相変換、即ちグルクロン酸抱合(グルクロン酸との結合)が、早期に開始する。
【0010】
前述の欠点(作用の遅延された開始)のために、経皮的投与は、突然起こる疼痛、例えば突出痛を処置するのには適していない。皮膚の、または経皮的適用による療法の開発が開始された際に、同時に、「遅延時間」を短縮し、作用の開始を促進することができる方法を見出す試行がなされた。
【0011】
経皮的活性物質の吸収を促進する1つの可能性は、皮膚に適用されたTTSを超音波で、または熱を発生させることにより処理することである。これらの方法の欠点は、これらの実際の履行が困難であることである;従って、これらは、実際に主流ではなかった。
【0012】
経皮的投与における薬物物質の吸収速度を増大させるための他の方法は、皮膚の角質層を、レーザー処理により、または接着性片を繰り返し粘着させ、剥離させること(いわゆる「ストリッピング(stripping)」)により除去するかまたは部分的に損傷させることに基づいている。これらの2種の処置方法により、同様に「遅延時間」が短縮されるが、これらの方法は、これらが薬物物質の所望の浸透を容易にするのみならず、また薬物の他の成分および微生物、例えば細菌または真菌胞子の人体中への不所望な侵入をも容易にする点で、不利である。この方法はさらに、皮膚を「剥離させる」ために、TTSを取り外さなければならないという欠点を有する。しかし、医学的な専門家に知られているように、TTSを剥離して除去することにより、接着の損失がもたらされる。その理由は、接着剤と接触する最上部の皮膚層が、TTSと共に除去されるからである。
【0013】
皮膚の吸収速度を改善するための他の方法は、電流を用いることである。医学の専門家に知られているように、用語「イオン泳動」の下で知られているこの方法は、苦痛を発生させずに適用することはできない。同一のことが、いわゆる固定されたパッチについて該当する;皮膚薬物のこの形態は、身体に、皮膚に浸透するカニューレにより固定される。活性物質の放出は、前述のカニューレを介して行われ、これは同時に固定補助として作用する。この既知の欠点(無菌のカニューレの必要性、長期化した放出がないことなど)がありながら、これはもはや、文言の古典的な意味において皮膚の、または経皮的な適用とは呼ぶことができず、実際に薬物物質の皮下注射であることは、明らかである。
【発明の開示】
【0014】
従って、本発明の目的は、基礎的療法または長期間療法を、即ち長時間にわたり行うための患者への薬物物質の投与を可能にし、前述の欠点(特に「遅延時間」および「初回通過」効果)を低減するかまたは回避する治療方法を提供することにあった。さらに特に、目的は、基礎的療法または長期間療法の開始または維持を可能にし、ここで治療作用を可能な限り最初の投与の直後に開始するべきである、薬物療法の方法を提供することにあった。言い換えると:「遅延時間」を最小にするべきである。
【0015】
本発明の他の目的は、薬物物質の少なくとも1つの追加の用量を、長期間療法の間に起こり、それぞれの患者の増大した薬物物質要求により特徴づけられる期間において、可能な限り短い「遅延時間」で投与することを可能にする処置方法を示すことにあった。
【0016】
さらに、本発明の目的は、前述の方法を行うのに適する手段を提供することにあった。
これらの目的は、本発明において、請求項1に記載した方法により、並びに残りの請求項において定義した生成物および治療的使用により達成される。
【0017】
従って、本発明は、少なくとも1種の薬剤的に活性な物質を、前記活性物質(1種または2種以上)の投与に依存する患者に投与する方法に関する。さらに特に、この方法は、長期間療法を行うための方法である。本発明の処置方法は、以下のことを含む:
a)第1の薬剤的に活性な物質を含む、前記活性物質の経皮的投与のための少なくとも1つの経皮的治療系(TTS)を、予め決定可能な期間適用すること;および
b)少なくとも1つのウェーハを、経皮的投与の期間の開始時に、またはこの期間適用し、ここで当該ウェーハが、同一の活性物質または第1の活性物質と同一の適応症に適する第2の、もしくは他の活性物質を含むこと。
【0018】
TTSを適用することにより、長期間療法を開始または/および維持するのに必要な活性物質用量を、遅延および制御された放出で、患者の皮膚に提供し、送達し、全身的に有効にする。経皮的投与の期間は、本質的に、それぞれのTTS中に含有される活性物質の合計量、含まれる活性物質のタイプ、TTSの送達表面積および放出速度に依存する。一般的に、患者の皮膚に適用されるTTSの放出期間は、約6〜72時間、特に12〜24時間の範囲内または48時間である。この予め決定可能な時間の後に、消費されたTTSを取り外し、所要に応じて、新たなTTSで交換する。長期間療法の合計の継続期間は、1日もしくは数日であってもよいか、または適応症が持続する限り、不明確な期間にわたってもよい。
【0019】
(b)において述べたウェーハは、ウェーハ型の薄い柔軟な投与形態であり、これを、好ましくは経口的に適用し、これは、この中に含まれる活性物質(1種または2種以上)を口腔中に放出し、活性物質の吸収は、主に口粘膜を介して(即ち経粘膜的に)行われる。これらのウェーハの小さい厚さ(好ましくは0.05〜1mm、特に0.1〜0.5mm)および短い拡散経路のために、活性物質の放出は、ウェーハを口腔中に導入した直後に開始する。経粘膜的吸収により、治療的に有効な血漿レベルが、ウェーハの口への投与の後数分(約5〜15分)以内に達成される。これにより、作用の迅速な開始が可能になる。好ましくは、粘膜付着性であり、または/かつ水性媒体(体液、特に唾液)中で崩壊性のウェーハを用いる。
【0020】
ウェーハを、(b)に従って、経皮的投与の期間の開始時に、またはこの期間に適用する。これは、ウェーハを、経皮的投与の開始時に(即ちTTSを皮膚に適用する時点において)適用すること、またはTTSがすでに患者の皮膚上にあり、活性物質の経皮的送達がすでに開始されている場合には、ウェーハを患者に一層遅い時点において投与することを意味する。
【0021】
最も単純な場合において、経皮的投与の期間の開始時またはこの期間適用されるウェーハは、経皮的投与を達成するTTSと同一の活性物質または同一の活性物質の組み合わせを含む。代替として、またはこれに加えて、このようなウェーハは、TTS中に含まれている(第1の)活性物質とは同一でないが、前述の第1の活性物質と同一の適応症に適する第2の、または他の活性物質を含んでいてもよい。この活性物質は、同一の薬理学的活性を有する薬物物質であってもよい;鎮痛薬の場合においては、これは、例えば他のオピオイドであってもよい。TTSが2種または3種以上の活性物質の組み合わせを含む場合には、(b)に従ってTTSに加えて投与されたウェーハは、随意に当該活性物質の組み合わせの活性物質の1種のみを含んでいてもよい。
【0022】
本発明において、経皮的投与を1つまたはいくつかのウェーハの投与と組み合わせることにより、ここで、長期間療法の間に、活性物質要求が一時的に増大する疾患の段階が起こる場合に、特に長期間の疼痛療法において突出痛を処置するために、作用の迅速な開始により特徴づけられ、迅速な用量調整を可能にする長期間療法を行うことが、可能になる。従って、本発明の方法は、好ましくは、長期間療法の開始時、もしくは長期間療法の期間のいずれかに、治療作用の迅速な、もしくは促進された開始が必要である患者、または前述の長期間療法もしくは前述の基礎的薬物適用の間に、一時的に増大した活性物質要求が起こる患者の処置に適する。
【0023】
従って、本発明の好ましい態様において、処置方法の第1の段階において、第1の活性物質を含むTTSを適用し、これに加えて、同一の活性物質または同一の適応症に適する第2の、もしくは他の活性物質を含むウェーハを適用する。好ましくは、TTSおよびウェーハを、ほぼ同時に、即ち15分より短い、好ましくは5分より短い時間内に、適用する。皮膚に適用されたTTSは、所定の期間(例えば12〜72時間)にわたり皮膚上に残留して、基礎的療法を提供する。
上記のウェーハの追加の投与を、好ましくは、基礎的療法の開始時に1回行うことができる。所要に応じて、1または2以上の他のウェーハを、長期間療法の他の経過の間適用してもよい。
【0024】
長期間の要求による基礎的療法を維持するために、活性物質を含む他の経皮的治療系を、患者に規則的な間隔で(例えば6、12、24、48または72時間後に)投与して、その都度それぞれの前に適用した消費されたTTSを皮膚から取り外すことができる。このようにして、長期間療法または基礎的療法を、長期間にわたり、好ましくは少なくとも24時間にわたり継続することが可能である。長期間療法を、疾患の環境により要求された場合には、数日、数週間、数ヶ月または数年の期間にわたり継続することができる。
【0025】
本発明の他の好ましい態様において、処置方法は、経皮的治療系を、上記のウェーハと合同で投与する少なくとも1つの段階を含む。この合同の適用を、好ましくは処置の開始時に(特に長期間療法または基礎的療法の開始時に)行うことができる。あるいはまた、ウェーハを、他のTTSの各々の連続的な適用と同時に適用することが、可能である。
【0026】
本発明の他の特に好ましい態様は、経皮的投与の前述の期間または前述の長期間療法の間に、少なくとも1回、前述の活性物質の、または同一の適応症に適する他の活性物質の、ウェーハの形態での追加の投与があることを提供する。ウェーハにより投与された活性物質用量により、前述の期間に一時的に起こる患者の増大した活性物質要求の処置が可能になる。特に、これにより、長期間の疼痛療法の間に起こる突出痛または疼痛のピークを処置することが、可能になる。ウェーハにより経粘膜的に投与された活性物質の迅速な全身の有効性の結果、疼痛の迅速な緩和がもたらされる。本発明において用いるウェーハの適用を、患者自身により単純な方法で行うことができる。要求された場合には−例えば特に強い突出痛が起こる場合には−2つまたは3つ以上のウェーハを、同時に、または短い時間間隔において投与してもよい。
【0027】
例えば長期間療法の開始により、または突出痛を処置するために投与される、本発明のウェーハ中に含まれる活性物質の量(「急性投与量」または「大量瞬時投与量」)は、好ましくは、経皮的に投与された毎日の用量の0.1〜0.7倍、特に好ましくは0.2〜0.5倍に相当する。
【0028】
好ましくは、本発明の方法を、以下の疾患、状態または症状の1つまたは2つ以上を罹患している患者を処置するために適用する:慢性疼痛、喘息、糖尿病、心筋梗塞の危険、ニコチン離脱およびパーキンソン病。前述の方法の特に好ましい態様において、この方法を、疼痛の処置のために用いる。この疼痛は、例えば腫瘍患者において起こるように、疼痛の慢性の、および/または急性の状態であり得る。
【0029】
前述の疾患、状態または症状を処置するのに適する薬物物質は、当業者に知られている。鎮痛薬、ブロンコリティックス(broncholytics)、抗糖尿病薬、血管拡張薬、離脱剤および抗パーキンソン病薬を含む群から選択された活性物質が、この目的のために特に好適である。
【0030】
一般的に、すべての薬学的に活性な物質を、本発明の目的のために用いることができ、これを、経皮的に適用することができる。その理由は、これらの場合において、また前述の活性物質がまた、口の粘膜を介して迅速に吸収されることが推測されるべきであるからである。経皮的投与のために選択された活性物質が、不十分な経粘膜的吸収速度を有するに過ぎない場合には、この活性物質を、前述のように、経皮的に投与された活性物質と同一の適応症に適するが一層良好な経粘膜的吸収を示す他の活性物質により交換してもよい。
【0031】
好ましくは、経皮的投与のために、低い皮膚浸透速度を示し、従って意図された遅延された、および長期間持続する作用が達成される当該薬剤的に活性な物質を、選択する。あるいはまた、経皮的治療系からの活性物質放出の速度を、当業者に知られている方法で制御し、−所要に応じて−例えば当該目的に適する補助物質により、または活性物質の放出を遅延させる制御膜により減少させることができる。
【0032】
本発明の目的に適するのは、特に、高度に有効であるような活性物質、即ち毎日の用量がミリグラム範囲(例えば1〜500mg)内にあり、この薬理学的に許容し得る塩が水に容易に可溶である(好ましくは、質量に相対して10%を超える)活性物質である。これは、特に、オピオイドおよびこれらの塩について真実であり、従ってこの使用は、特に好ましい。
【0033】
疼痛療法の場合において、鎮痛薬、好ましくはオピオイドの群からのものは、本発明の方法と関連して特に好適である。「鎮痛薬」は、本発明の目的のために、治療的用量において、疼痛の感覚を低減するかまたは抑制するのに適する薬物物質を意味するものと理解される。これには、特に、中枢作用性の、高度に有効な鎮痛薬、いわゆるオピオイド類が含まれる。薬剤的に活性な物質のこの群には、特に、モルヒネ、ヘロインおよびモルヒネの他の誘導体;ジヒドロモルヒネ誘導体、例えばヒドロモルホン(ジヒドロコデイン)、オキシコドン;モルフィナン誘導体、例えばレボルファノール、ブプレノルフィン;ペチジン群の鎮痛薬、例えばペチジン、ケトベミドン、ロペラミド、ジフェノキシラート;メサドンおよび誘導体、例えばレボメサドン(levomethadone)、デキストロモラミド、デキストロプロポキシフェン;フェンタニルおよびこの誘導体(例えばアルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル)、ベンゾモルファン誘導体、例えばペンタゾシンおよびフェニルアミノシクロヘキシニル(phenylaminocyclohexinyl)誘導体、例えばチリジン;トラマドールが含まれる。突出痛の処置のために、迅速であり短い作用を有するオピオイド類、例えばモルヒネ、トラマドール、チリジン、オキシコドン、ヒドロモルホン、ブプレノルフィン、フェンタニルおよびレボメサドンが、特に好ましい。
【0034】
経皮的投与の目的のために、好ましいのは、低い皮膚浸透速度を示す鎮痛薬である。この例は、ブプレノルフィンである。
さらに、鎮痛薬の群からの以下の例がまた、好適である:メタミゾール、フェナゾン、プロピフェナゾン、フルピルチン、ネホパム;抗てんかん薬、例えばカルバマゼピン、ガバペンチン、クロナゼパム;抗うつ薬、例えばアミトリプチリン(amitryptiline)。
【0035】
本発明はまた、2種または3種以上の薬物物質からなる活性物質の組み合わせ、特に前述の鎮痛薬の組み合わせの使用を包含する。
本発明の実際的な適用は、急性疼痛の状態において、患者が、薬物の作用が開始するまでの「遅延時間」の終了まで待機するのが受け入れられないため、鎮痛薬の投与に特に重要であることは、明らかである。このような場合においては、受け入れられる「遅延時間」は、数分(5〜10分)までの期間である。この状態は、本発明において、経粘膜的活性物質の投与のための経口的に適用可能なウェーハを用いることにより、満たされる。
【0036】
本発明はさらに、少なくとも1つの経皮的治療系(TTS)および少なくとも1つの活性物質含有ウェーハを含む薬物の組み合わせであって、当該TTS(1または2以上)が、第1の薬剤的に活性な物質を含み、またここで当該ウェーハ(1または2以上)が、同一の第1の活性物質または当該第1の活性物質と同一の適応症に適する第2の、もしくは他の活性物質を含む、前記組み合わせを包含する。
【0037】
用語「薬物」は、一般的に、薬剤的に活性な物質(1種または2種以上)および当該活性物質を薬剤的に使用可能にする他の通常の成分(不活性な補助物質)を含む、ヒト用の、または獣医学用の薬物のための物質または物質の混合物を意味する。薬物の本発明の組み合わせは、種々の投与形態として、即ち、一方でTTSの形態で、および他方でウェーハの形態で存在する薬物を含む。
【0038】
本発明の薬物の組み合わせにおいて、同一の薬剤的に活性な物質を含み、好ましくはまた他の観点において同一の組成である、ある数の経皮的治療系(TTS)を、ある数のウェーハに配分する。これらのウェーハは、好ましくは、TTS(1または2以上)と同一の活性物質または、当該TTS(1または2以上)中に含まれる活性物質と同一の適応症に適する異なる活性物質を含む。ウェーハの場合において、また、組み合わせに属するすべてのウェーハが本質的に同一の組成であるのが、好ましい。
ある数のウェーハに対するある数のTTSの前述の配分を、好ましくは、これらのTTSおよびウェーハが合同のパッケージ中に詰められ、「セット」または「キット」として存在するように、実現することができる。
【0039】
本発明の薬物の組み合わせは、少なくとも1つのTTSおよび少なくとも1つのウェーハを含む。組み合わせ中のTTSの数およびウェーハの数は、随意に、同一であっても異なっていてもよい。特に、疼痛療法において用いるために、ウェーハが、経皮的治療系よりも大きい数の組み合わせ中に含まれるのが、好ましい。ある薬物の組み合わせ中に含まれるウェーハは、通常同一の含量の活性物質を有する。さらに、このような組み合わせが、これらの活性物質の用量の観点において互いに異なり、対応して特徴づけられるウェーハの2つまたは3つ以上の群を含む場合が、有利であり得る。
【0040】
薬物の組み合わせの経皮的治療系およびウェーハ中に含まれる活性物質は、好ましくは、前述の活性物質および活性物質の群から選択される。さらに、薬物の組み合わせ中に含まれる経皮的治療系が、この中に含まれる活性物質の全身の経皮的な投与を、少なくとも24時間、好ましくは少なくとも48時間の期間にわたり可能にするのが、好ましい。薬物の組み合わせ中に含まれるウェーハは、好ましくは、経口投与のためのウェーハであり、ここで、治療作用は、経口投与の後遅くとも15分、好ましくは少なくとも5分において開始する。さらに、ウェーハが、粘膜接着性であり、または/かつ水性媒体中で崩壊性であるのが、好ましい。
【0041】
本発明はさらに、薬剤的に活性な物質、特に前述の活性物質および活性物質の群から選択された活性物質の、このような活性物質の投与に依存している患者を処置して、長期間療法または基礎的療法を達成するための、本発明の上記の薬物の組み合わせの製造のための使用を含む。これらの薬物の組み合わせを、好ましくは、上記の治療処置方法において、および前述の治療的目的のために用いる。
【0042】
本発明のTTSおよびウェーハを、既知の薬学的方法を用いて製造することができる;ここで用いるこれらの処方物および補助物質の組成は、同様に当業者に知られている。
本発明の目的のために用いることができるTTSは、例えば、DE 39 39 376 C1、DE 199 23 551 A1およびDE 198 34 005 A1に記載されている。
【0043】
本発明において用いるTTSは、好ましくは、層状構造を有し、即ち、これらは、2層、3層または多層構造である。さらに特に、TTSの層状構造は、以下のものから選択された1つまたは2つ以上の層を含んでいてもよい:
−粘着剤層
−多孔質層および
−ヒドロゲル層。
TTSの層の少なくとも1つは、上記のように、活性物質または活性物質の組み合わせを含む。好ましくは、本発明のTTSに、TTSを患者の皮膚上に付着させる作用を奏し、好ましくは活性物質を含む粘着剤層を設ける。
【0044】
TTSの活性物質含有層(またはマトリックス)は、好ましくは、粘着剤の水に不溶であるポリマー、例えば部分的にエステル化されたポリアクリレート類、ポリイソブチレンもしくはシリコーン類、またはこのようなポリマーの混合物からなる;さらに、既知の補助物質(例えば可溶化剤、乳化剤、透過促進剤、保存剤)を混合することができる。
【0045】
本発明において用いるウェーハは、本発明を限定せずに、活性物質の経口投与のためのシート状物体であってもよい。この場合において、活性物質は、ポリマーもしくはポリマー混合物に溶解して、またはポリマーマトリックス中に分散されて存在する。ウェーハを製造するために用いるポリマーは、好ましくは、ウェーハが、意図するように、迅速に、理想的には数秒(例えば最大5〜30秒)以内に口腔の唾液に溶解することができる程度に水溶性でなければならない。
【0046】
ウェーハの製造に適するポリマーは、特に、ポリエチレングリコール類、デンプンおよびデンプン誘導体、ポリビニルアルコール類およびポリアクリル酸(例えばCarbopol(登録商標))またはポリビニルピロリドン(ポリビドン(polyvidone)、例えばKollidon(登録商標))の群からのポリマーである。さらに、ウェーハは、1種または2種以上の補助物質、例えば軟化剤、乳化剤、界面活性剤、可溶化剤、充填剤、崩壊剤、着色剤、風味物質および甘味剤、保存剤を含んでいてもよい;このような補助物質は、当業者に知られている。本発明の目的のために用いることができるウェーハおよびこの製造に適する方法は、例えばDE 102 07 304 A1およびUS 6 709 671 B2に記載されている。
【0047】

本発明を、ここで以下の例により一層詳細に説明する。
この例は、疼痛患者の治療処置に関する。長期間処置のために、または基礎的療法のために、ブプレノルフィンを含むTTS(またはいくつかのTTS)を、DE 39 39 376 C1に記載されているように製造する(以下の表を参照)。このTTSを、疼痛患者の皮膚に適用し、ここで意図された適用期間(例えば24、48または72時間)にわたり保持する。
【0048】
用いるTTSは、以下の表による薬物物質および補助物質を含む:
【表1】

【0049】
このようなTTSの放出速度は、35μg/時である(それぞれの単一のTTSからのブプレノルフィンの放出に関して)。
同時に、ウェーハを、当該患者に経口的に投与する。このウェーハは、65重量%のCarbopol(登録商標)および25重量%のデンプンのポリマー混合物中に10重量%のブプレノルフィン塩酸塩を含む。単一のウェーハは、本質的に、1mgのブプレノルフィン塩酸塩、6.5mgのCarbopolおよび2.5mgのデンプンからなる。
【0050】
ウェーハ中の薬物の高い濃度により、患者が、長期間療法の開始時に直ちに疼痛の緩和を経験することが、可能になる。その理由は、ウェーハが口中で約5〜10秒以内に崩壊し、放出されるブプレノルフィン(水溶性塩として)が口粘膜を介して直接吸収され、従って治療的に有効な血漿レベルが数分以内に達成されるからである。
【0051】
経皮的活性物質の投与の期間に突出痛が起こる場合には、1つまたは2つ以上のブプレノルフィン−HCL含有ウェーハを、患者の口腔中に、可能な限り早く(即ち、疼痛の強度の増大の最初の徴候が感知されて直ちに)適用する。水溶性塩の口粘膜を介しての迅速な吸収により、患者は、疼痛の急性の状態の即座の緩和を経験することができる。
【0052】
図1は、ブプレノルフィン含有TTSをn=5の健康な志願者に適用することにより決定された中間の血漿レベルを示す。明らかに見られるように、最初の12時間において、疼痛患者は、十分に処置されなかった;達成された血漿濃度は、30ng/mlよりも低い(「遅延時間」)。基礎的療法が血漿の水平状態(約80〜100ng/mlのブプレノルフィン濃度)により安全に達成されるのは、24時間後に過ぎない。この水平状態の濃度は、TTSの適用後約96時間までの期間にわたり維持される。
【0053】
また、本発明において施与した経口適用のためのウェーハの追加の投与によりTTSの適用後最初の12時間において突出痛が起こる場合には、ブプレノルフィンの作用が早期に開始することおよび「初回通過効果」が回避されることが達成され、従って突出痛の迅速かつ効果的な緩和がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】ブプレノルフィン含有TTSをn=5の健康な志願者に適用することにより決定された中間の血漿レベルを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の薬剤的に活性な物質を、1種または2種以上の前記活性物質の投与に依存する患者に投与するための、特に長期間療法を行うための方法であって、
a)第1の薬剤的に活性な物質を含む、前記活性物質の経皮的投与のための少なくとも1つの経皮的治療系を、予め決定可能な期間適用すること;および
b)少なくとも1つのウェーハを、経皮的投与の期間の開始時に、または経皮的投与のの期間適用し、前記ウェーハが、同一の活性物質または第1の活性物質と同一の適応症に適する第2の、もしくは他の活性物質を含むこと
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記患者が、
−長期間療法の開始時、または長期間療法の期間に、治療作用の迅速な、もしくは促進された開始が必要である;または
−前記長期間療法もしくは基礎的療法の間に、一時的に増大した活性物質要求が起こる
患者であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法の第1の段階において、前記第1の活性物質を含む経皮的治療系を適用し、これに加えて、同一の活性物質または同一の適応症に適する第2の、もしくは他の活性物質を含むウェーハを適用することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
経皮的治療系を適用する段階を、前記期間の後に少なくとも1回繰り返して、前記活性物質の長期間にわたる経皮的投与による患者の長期間療法または基礎的薬物適用をもたらすことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記活性物質を含む他の経皮的治療系を、規則的な間隔で、好ましくは6、12、24、48または72時間の間隔で投与して、長期間、好ましくは少なくとも24時間にわたる長期間療法または基礎的療法を維持することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1において定義した経皮的治療系を、好ましくは処置の開始時において請求項1において定義したウェーハと合同で投与する少なくとも1つの段階を含むことを特徴とする、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
経皮的投与の前記期間または前記長期間療法の間に、少なくとも1回、前記活性物質の、または同一の適応症に適する他の活性物質の、ウェーハの形態での追加の投与を行い、ウェーハにより投与された活性物質用量が、経皮的投与の前記期間または前記長期間療法の間に一時的に起こる患者の増大した活性物質要求の処置に適することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ウェーハが、経皮的に投与された毎日の用量の0.1〜0.7倍、好ましくは0.2〜0.5倍に相当する活性物質の量を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
1種または2種以上の前記活性物質の投与に依存する患者が、慢性疼痛、喘息、糖尿病、心筋梗塞の危険、ニコチン離脱およびパーキンソン病を含む群から選択された1または2以上の疾患または症状に罹患していることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記の一時的に起こる増大した活性物質要求が、増大した疼痛の強度により、または突出痛により生じることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記活性物質または前記活性物質の少なくとも1種が、鎮痛薬、ブロンコリティックス、抗糖尿病薬、血管拡張薬、離脱剤および抗パーキンソン病薬を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記活性物質または前記活性物質の少なくとも1種が、オピオイドの群から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの経皮的治療系(TTS)および少なくとも1つの活性物質含有ウェーハを含む医薬の組み合わせであって、1または2以上の前記TTSが、第1の薬学的に活性な物質を含み、1または2以上の前記ウェーハが、同一の第1の活性物質または前記第1の活性物質と同一の適応症に適する第2の、もしくは他の活性物質を含む、前記組み合わせ。
【請求項14】
第1の活性物質が、鎮痛薬、ブロンコリティックス、抗糖尿病薬、血管拡張薬、離脱剤および抗パーキンソン病薬を含む群から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の組み合わせ。
【請求項15】
1または2以上の経皮的治療系が、この中に含まれる活性物質の全身の経皮的な投与を、少なくとも24時間、好ましくは少なくとも48時間の期間にわたり可能にすることを特徴とする、請求項13または14に記載の組み合わせ。
【請求項16】
1または2以上の前記ウェーハが、経口投与に適し、治療作用が、ウェーハの経口投与の後遅くとも15分、好ましくは遅くとも5分において開始することを特徴とする、請求項13〜15のいずれかに記載の組み合わせ。
【請求項17】
1または2以上のウェーハが、水性媒体中で崩壊性であり、または/かつ粘膜付着性であることを特徴とする、請求項13〜16のいずれかに記載の組み合わせ。
【請求項18】
少なくとも1種の薬剤的に活性な物質の、薬物の組み合わせの製造のための使用であって:
前記活性物質の投与に依存する患者を処置して、長期間療法または基礎的療法を達成するための
a)第1の薬剤的に活性な物質を含む、少なくとも1つの経皮的治療系(TTS);および
b)同一の活性物質または同一の適応症に適する第2の、もしくは他の活性物質を含む、少なくとも1つのウェーハ
を含む、前記使用。
【請求項19】
当該組み合わせが、
−長期間療法の開始時、またはこの期間に、治療作用の迅速な、もしくは促進された開始が必要であり;または
−前記長期間療法もしくは基礎的療法の間に、一時的に増大した活性物質要求が起こる
患者の処置に適することを特徴とする、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
長期間療法または基礎的薬物適用を、1または2以上の前記経皮的治療系の適用により行い、前記一時的に増大した活性物質要求を、ウェーハの投与により処置することを特徴とする、請求項18または19に記載の使用。
【請求項21】
前記ウェーハの1または2以上の投与を、医薬の長期間療法を開始するかまたは維持する際に行い、これにより作用の迅速な、または促進された開始をもたらすことを特徴とする、請求項18〜20のいずれかに記載の使用。
【請求項22】
1種または2種以上の前記活性物質の投与に依存する患者が、慢性疼痛、喘息、糖尿病、心筋梗塞の危険、ニコチン離脱およびパーキンソン病を含む群から選択された1または2以上の疾患または症状に罹患していることを特徴とする、請求項18〜21のいずれかに記載の使用。
【請求項23】
前記活性物質または前記活性物質の少なくとも1種が、鎮痛薬、ブロンコリティックス、抗糖尿病薬、血管拡張薬、離脱剤および抗パーキンソン病薬を含む群から選択されることを特徴とする、請求項18〜22のいずれかに記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2008−530158(P2008−530158A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555512(P2007−555512)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001312
【国際公開番号】WO2006/087160
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(300005035)エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー (128)
【Fターム(参考)】