説明

医薬品包装用の溶融石英チュービング

SiO2を約82〜約99.9999 wt.%、並びにAl2O3、CeO2、TiO2、La2O3、Y2O3、Nd2O3、他の希土類酸化物、及びそれらの2つ又はそれ以上の混合物より選択される少なくとも1つのドーパントを約0.0001〜約18 wt.%含む高シリカガラス組成物。ガラス組成物は、600〜2,000℃の範囲の作用点温度を有する。これらの組成物は、純粋な溶融石英と同様の安定性を示すが、医薬品パッケージの費用効果の高い製造を可能にする適度の作用温度を有する。当該ガラスは、例えば、予め充填された注射器、アンプル及びバイアルなどの、薬学的適用のための包装材料として特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年8月21日に出願された、"Fused Quartz Tubing for Pharmaceutical Packaging"という表題の、米国仮特許出願第61/235,823号の優先権及び恩典を主張し、これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の背景
伝統的な薬物と比べてより「敏感」である生物学的(タンパク質ベースの)薬物の使用の増加への製薬市場における最近の傾向がある。これらのタイプの薬物では、特に液体として処方された場合、これらの薬物のより低い安定性及び保存の間に分解するそれらの性質に起因して、薬物/容器相互作用の話題は、ますます重要となっている。このため、医薬品包装容器に由来する抽出可能な物質(例えば、溶解したカチオン)は、これらの薬物の効能及び純度に関する問題(薬物不安定性、毒性などを含む)を引き起こし得る。非特許文献1。
【0003】
医薬品包装において使用される伝統的なガラスからのカチオン抽出は、このようなタンパク質ベースの薬物の純度及び/又は有効性に関する問題を引き起こし得る。カチオン抽出のメカニズムは、通常、ヒドロニウム/アルカリイオン交換であり、これは、pH上昇を引き起こし、次いでこれに、特にI型(例えば、Schott Fiolax(登録商標)などのホウケイ酸塩)及びII型(ソーダ石灰ケイ酸塩)ガラス中において、バルク溶解が続く。これらのガラスの不十分な化学的耐久性は、Na+、Li+、K+、Mg2+、Ca2+及び/又はBa2+などの可溶性カチオンが、これらのガラスを流動化して、それらを標準のガラス融解装置で高度に加工可能とする適切な低い作用点温度を達成するために使用されるという事実から生じる(例えば、特許文献1及び2を参照のこと)。
【0004】
溶融石英ガラスなどの化学修飾剤(例えば、アルカリ金属、ボレート、アルカリ土類金属)を含まないガラスは、化学的純度(低抽出可能物)及び化学的耐久性の観点から好ましいが、このようなガラスは、必要とされる高い加工温度(通常>2,000℃)に起因して、製造するのが困難な場合がある。溶融石英ガラスが融解されチュービングへ形成され得る場合であっても、高い作用点温度(>1,700℃)に起因して、それらを医薬品パッケージ(バイアル、注射器バレル、アンプルなど)へ火炎変換するのがしばしば困難である。従って、このようなガラスは、医薬品パッケージを製造するためには一般的に使用されていない。特許文献3及び4は、抽出可能物を減らすためにシリカの層で伝統的なガラス容器の内部表面をコーティングする努力がなされたことを示している(例えば、Schott Type I plus(登録商標))。しかし、コーティングされた物品を提供することは、厄介かつ高価であり、従って、医薬品包装市場において広くは受け入れられていない。従って、医薬品包装適用において使用され得る適度の作用点温度を伴う、低い抽出可能物及び浸出を示す費用効果の高い医薬品包装ガラスに対する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,782,815号
【特許文献2】米国特許第6,027,481号
【特許文献3】米国特許第6,200,658号
【特許文献4】米国特許第6,537,626号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】A Review of Glass Types Available for Packaging, S. V. Sangra, Journal of the Parenteral Drug Association, Mar.-pr., 1979, Vol. 33, No.2, pp.61-67
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
簡単な説明
薬物は、使い捨ての予め充填された注射器、カートリッジ、アンプル、バイアルなどを含む、様々なガラス製の医薬品容器中に包装される。一局面において、本発明は、伝統的な医薬品パッケージ(例えば、注射器バレル、カートリッジ、アンプル、バイアルなど)に火炎変換され得る低軟化点高ケイ酸塩(実質的に修飾剤フリー)ガラスチュービングを含む医薬品パッケージを提供する。チュービングは、多量の伝統的なガラス修飾剤(例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及びホウ酸イオン)を含有せず、従って、得られるパッケージは、薬物製剤に意図される水溶液と接触して配置される場合、カチオン抽出に対して非常に抵抗性である。出願人は、ガラスの作用点温度及び(特定の温度での)粘度は、非伝統的な修飾剤の添加によって低下し、医薬品パッケージの製造における使用(例えば、火炎変換)に許容される作用点温度が達成され得ることを見出した。
【0008】
一局面において、本発明に従うガラス組成物は、Al2O3、GeO2、Ga2O3、CeO2、ZrO2、TiO2、Y2O3、La2O3、Nd2O3、他の希土類酸化物、及びそれらの2つ又はそれ以上の混合物などの、非伝統的な修飾剤ドーパント(ガラス科学界内でインターメディエートとしばしば呼ばれる)を利用し、純粋な溶融石英と比較してより低い作用点温度及び(特定の温度での)より低い粘度を有する一方で、純粋な溶融石英ガラスと同様に薬物に対する化学的不活性を保持する、高wt %含有量シリカガラスを達成する。非伝統的な修飾剤を溶融石英ガラス中へ組み込むことは、作用点温度を数百ケルビンまで効果的に低下させ、従って、医薬品容器へのチュービングの迅速な火炎変換/加工を可能にし、一方でまた、石英ガラスのカチオン抽出/浸出特徴に対する耐性及び優れた化学的耐久性をガラスが保持することを可能にすることが、見出された。
【0009】
上記に列挙されたドーパントは、溶融シリカの作用温度を低下させる一方、得られるガラスが薬物製剤に意図される水溶液と接触して配置される場合にカチオン抽出に対して非常に耐性であろう化学的耐久性を保持する、これらのカチオンの能力に基づいて選択される。この得られる修飾されたガラスチュービングを、注射器バレル、カートリッジ、アンプル、及びバイアルを含む、様々な医薬品パッケージに仕上げることができる。同時に、このガラスの化学的不活性のため、それは、医薬品包装用に伝統的に使用されるホウケイ酸塩ガラス及びソーダ石灰ケイ酸塩ガラスよりも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の局面に従うガラス組成物の温度の関数としての粘度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
用語は様々な材料(様々なシリカ濃度)の組成物又は物品を示すために使用され得るが、本明細書において使用される場合、用語「ガラス」は、「石英ガラス」又は「石英」又は「溶融石英」と交換可能に使用され得、天然又は合成砂(シリカ)を含む混合物を融解することによって形成された組成物、部品、製品、又は物品を指す。ガラスの粘度は、その温度が上昇するにつれて減少することが、周知である。従って、本明細書において使用される場合、用語「作用点温度」及び「作用温度」は両方とも、ガラスが104ポアズ以下の粘度に達する温度を意味するために使用され、軟化点は、粘度が107.6ポアズに達する温度を示す。天然又は合成砂(シリカ)のいずれか又は両方が、本発明の組成物において使用され得、用語シリカは、天然の結晶性シリカ、例えば砂/岩、合成的に得られた二酸化ケイ素(シリカ)、又は両方の混合物のいずれかを含む組成物を意味するために使用される。用語「砂」は、シリカと交換可能に使用され得、天然砂又は合成砂のいずれか、又は両方の混合物を意味する。
【0012】
砂成分:本発明の態様のガラス組成物において使用されるシリカ(SiO2)は、合成砂、天然砂、又はそれらの混合物であってもよい。一態様において、ガラス組成物中のSiO2の量は、約82〜約99.9999%の範囲内である。第2の態様において、ガラスは、少なくとも約90 wt.%のSiO2含有量を伴う光透過性のガラス状の組成物を含む。
【0013】
ドーパント成分:最終製品における所望の特性に応じて、多くの様々なドーパント及びそれらの混合物が、シリカに添加され得る。ドーパントは、それらがガラスの作用点温度及び特定の温度でのその粘度を低下させるように、さらに最終ガラス製品が、それと接触する薬物、水性薬物製剤、又は他の組成物中への低い抽出可能物及び/又はイオンの浸出を示すように、選択される。特に適切なドーパントは、様々な(水性ベースの)意図された薬物組成物中において低溶解性を示すものである。適切なドーパントの例としては、Al2O3、GeO2、Ga2O3、CeO2、ZrO2、TiO2、Y2O3、La2O3、Nd2O3、他の希土類酸化物、及びそれらの2つ又はそれ以上の混合物が挙げられる。一態様において、ドーパントは、総組成物の約0.0001〜約18重量%の量で存在する。別の態様において、ドーパントは、約0.01〜約18 wt.%、さらに別の態様においては約0.1〜約18 wt.%の量で存在し得る。別の態様において、ドーパントは、ガラス組成物の約0.5〜約5重量%の量で存在する。あるドーパントは、僅か約0.01 wt.%の量で添加されてもよく、例えば、約0.01〜約0.05 wt.%を例えば含む、約0.01〜約0.1 wt.%の範囲内であってもよいことが認識される。
【0014】
一態様において、ドーパントは、得られる石英組成物の作用点温度を1,650℃未満へ低下させる量で添加される。別の態様において、ドーパントの総量は、約0.1〜約18 wt.%の範囲内である。さらに別の態様において、ドーパントの総量は、約0.1〜約8 wt.%の範囲内である。
【0015】
一態様において、ドーパントは酸化ネオジムNd2O3である。別の態様において、ドーパントは、酸化アルミニウムのみ、例えば、Al2O3、又は酸化アルミニウム及び他のドーパントの混合物である。第4の態様において、ドーパントはCeO2である。さらに別の態様において、酸化チタン(TiO2)が添加されてもよい。別の態様において、ドーパントは、酸化ユウロピウム、Eu2O3を、単独で、又はTiO2及びCeO2などの他のドーパントと組み合わせて含む。さらに別の態様において、ドーパントは酸化イットリウムである。当然ながら、前述したように、ガラス組成物は、単一のドーパント、又は2つ又はそれ以上の異なるドーパントの任意の適切な組み合わせを含んでもよい。
【0016】
高純度二酸化ケイ素(天然又は合成砂)は、Al2O3、GeO2、Ga2O3、CeO2、ZrO2、TiO2、Y2O3、La2O3、Nd2O3、他の適切な希土類酸化物、及びそれらの2つ又はそれ以上の混合物より選択される少なくとも1つのドーパントと混合される。ドーパントは、5 wt.%までのSiO2ヒュームドシリカと最初に混合されてもよく、その後、それらは、ガラス融解前に最終SiO2バッチ中へ混合される。混合/ブレンドは、ドーパントがシリカリッチなバッチと徹底的に混合されるに十分な時間の間、当技術分野において公知の加工装置、例えば、ブレンダー、高強度ミキサーなど中において行われてもよい。このバッチとして処理された組成物は、乾燥され、次いで高誘導炉中において1,800℃〜2,500℃で溶融され得るか又は均質なガラスへと火炎溶融されてもよい。一態様において、混合物は、種々のサイズのチューブ及びロッドを形成する、約2,500℃までの範囲内の温度で作動する高温誘導(電気)炉へ連続的に供給される。別の態様において、混合物は鋳型へ供給され、ここで、火炎溶融が、組成物を融解するために使用され、融解された混合物は、ガラス物品を形成する鋳型へ向けられる。
【0017】
ドーパントのアイデンティティー及びガラス組成物中に存在するドーパントの量に応じて、その後のドープされた溶融石英ガラス組成物は、約600〜2,000℃の範囲内の作用点を示す。一態様において、ガラス組成物は、約800〜約1,700℃の作用点を示す。さらに別の態様において、約1,000〜約1,550℃のガラス組成物。一態様において、ドープされた溶融石英組成物は、約1,550℃以下の作用点を有する。別の態様において、ドープされた溶融石英ガラスは、約1,460℃以下の作用点を有し、これは、非ドープの石英ガラスの作用点よりも遙に低い場合がある。ガラス組成物は、約500〜約1,700℃の軟化点を有する場合がある。一態様において、ガラス組成物は、約1,000〜約1,600℃の軟化点を有する。これらのドープされたガラスによって示されるこれらのより低い作用点に起因して、ロッド又はチューブは、非ドープの石英ガラスよりも容易に(例えば火炎変換によって)様々な医薬品包装物品へとその後成形され得る。
【0018】
別の態様において、医薬品パッケージの内容物へのUV放射の透過を最小限にし、従って内部に保持された薬物内容物を分解から保護するために、UV吸収剤又は遮断剤がガラス組成物に添加されてもよい。適切なUV吸収剤としては、Ti、Ce、及びFeが挙げられる。着色を減らすがUVをなお効果的に遮断するために、Feの濃度は2,000 ppm以下、<100 ppmまでの濃度が好ましく使用される。同様の効果を有し、薄い壁の容器についてあまり色に影響を与えずに低レベルで使用され得る、他の遷移金属は、Cr、Mn、Mo、V、及びZnである。酸化状態は、着色を最小限にするために(通常、最も高い酸化状態へ)制御されるべきである。
【0019】
代替の態様において、非ドープのシリカが、ガラス及びその後の医薬品包装物品を作製するために使用される。より高い作用点温度を有するが、これらの物品はまた、上記のドープされたガラス組成物のように所望の低量の抽出可能物を有する。
【0020】
均質な溶融ガラス物品を形成するための本発明に従うガラス組成物。本発明に従うガラス組成物から形成されたガラス物品は、ホウケイ酸(BiS)ガラス及び/又はソーダ石灰(Na-Ca)ガラスよりも優れた浸出特徴を示し得る。一態様において、本発明に従うガラス物品は、ガラスがHCl消化へ供される場合、カチオン又は金属に関して優れた浸出特徴を示す。本明細書において使用される場合、「HCl消化」は、121℃で2時間、Parrテフロンダイジェッションボム(digestion bomb)中において、0.4 M HCl溶液50 mlで、ガラス物品のサンプル10.0 g(砕かれている)を熱水処理することを意味する。一態様において、ガラス物品は、HCl消化へ供した場合に以下の浸出特徴を有する:Na(<7.0 mg/L)、Ca(<1.0 mg/L)、B(<2.5 mg/L)、Al(<1.25 mg/L) Ba(<0.003 mg/L)、Fe(<0.01 mg/L)、K(<0.03 mg/L)、Mg(<0.01 mg/L)、As(<0.02 mg/L)、Cd(<0.001 mg/L)、Cr(<0.008 mg/L)、Pb(<0.009 mg/L)、及びSb(<0.01 mg/L)。別の態様において、ガラス物品は、以下の浸出特徴を有する:Na(<0.1 mg/L)、Ca(<0.05 mg/L)、B(<0.01 mg/L)、Al(<0.05 mg/L)、Fe(<0.05 mg/L) Mg(<0.01 mg/L)、K(<0.01 mg/L)、As(<0.02 mg/L)、Cd(<0.001 mg/L)、Cr(<0.008 mg/L)、Pb(<0.009 mg/L)、及びSb(<0.01 mg/L)。
【0021】
一局面において、本発明に従うガラス組成物は、例えば、予め充填された注射器、注射器バレル、アンプル、バイアルなどの、医薬品包装物品の形成に特に適している。ガラス組成物から形成された医薬品パッケージ又は物品は、パッケージ又は物品の内部表面が、薬物及び医薬製剤を含むがこれらに限定されない水性薬学的組成物と接触する場合、より良い浸出特徴を示すはずである。一態様において、ドープされたガラスを含む医薬品包装物品は、物品が、薬学的組成物と接触した物品の表面上に配置されたコーティング層を実質的に含まないように提供されてもよい。本発明に従うドープされたガラスを用いる物品は、コーティングを含まなくてもよく、コーティングされたBiS又はソーダ石灰ガラスと少なくとも同等であって、且つコーティングされていないBiS又はソーダ石灰ガラスよりも優れた、薬学的組成物と接触した場合の浸出特徴を示し、漏出を防ぐことが必要とされない。
【0022】
本発明の局面は、下記の実施例に関してさらに理解され得る。
【実施例】
【0023】
実施例
ドープされた溶融石英ガラスの様々なサンプルを作製し、それぞれの粘度対温度パフォーマンスを記録した。以前記載された手順に従って例を溶融し、粘度(ポアズ)を温度の関数として測定した。結果は図1に記載され、これは温度に対するlog粘度を示す。このデータから、各サンプルの軟化温度(ガラスが107.6ポアズの粘度を有する温度)を計算した。結果を下記の表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
理解され得るように、これらのサンプルの全てが、ドーパント含有量に依存する軟化温度を示し、多くのものが、1500〜1680℃の範囲であり得る純粋な溶融石英ガラスのそれよりも低い。従って、ガラス中のドーパント含有量(これらの実施例においては酸化アルミニウム)を増加させることは、特定の粘度を達成するために必要とされる温度を低下させることが、理解され得る。さらに、ガラス中の酸化アルミニウム含有量を増加させることは、特定の温度での粘度を低下させる。
【0026】
表面抽出試験:
サンプル5(LSPG5)の組成物を、表面抽出試験のために次いで選択し、純粋な石英ガラス並びに伝統的な薬学等級ホウケイ酸ガラス及びソーダ石灰ガラス容器から抽出される量と比較してのガラスから浸出される抽出可能物の量を比較した。容器は下記の組成及び寸法を有した:

214A:Momentive 214 AチューブID 10 X OD13-80 mm、純粋な溶融石英ガラス(Momentive Performance Materials Quartz Inc.製)
LSPG5 LAHF D70000496 IV、11.7X14.1X200 mm、BULKAG03(3.2 wt.% Al2O3、0.18 wt.% CeO2、0.03 wt.% TiO2がドープされたSiO2ガラス)
BSi Schott:1型ガラス、薬学等級ホウケイ酸ガラスバイアル:(外径24 mm及び高さ:45mm)。wt %での典型的な化学組成:SiO2(75%)、B2O3(10.5%)、Al2O3(5%)、CaO(1.5%)、BaO(<1%)、Na2O(7%)(Schott製)。
BSi SD:天然ホウケイ酸ガラス:バイアル(内径22 mm及び外径24 mm)。wt %での典型的な化学組成:SiO2(76%)、Al2O3(2.5%)、RO(0.5%)、R2O(8%)及びB2O3(12%)。(Shangdong Pharmaceutical Glass Co. Ltd.製)
Na-Ca SD:ソーダ石灰ケイ酸塩ガラス:バイアル(10 ml及び20 ml)。wt %での典型的な化学組成:SiO2(71%)、Al2O3(3%)、RO(12%)及びR2O(15%)(Shangdong Pharmaceutical Glass Co. Ltd.製)
【0027】
サンプル作製及び試験:
先ず、ジルコニアハンマーを使用して、チューブ又はバイアルを5〜10 mmサイズの断片に砕いた。次いで、各サンプルおよそ100 gをDI水中にて3回洗浄した。その後、砕かれたサンプルを5% HFで洗浄し、続いてDI水でリンスした。洗浄した粉砕サンプルを乾燥させた後、ナイロンスクリーンメッシュ及びジルコニア乳鉢及び乳棒を使用し、サイズがおよそ300〜420マイクロメートルの粒子を含むカレットへサンプルをさらに砕いた。次いで、AR等級アルコールを使用し、カレットサンプルを洗浄し、次いでサンプルを石英ガラスビーカー中において乾燥させた。次いで、121℃で2時間、Parrテフロンダイジェッションボム中において、0.4M HCl溶液50 mlでサンプル10.0 gを熱水処理することによって、各サンプル10.0 gをHCl消化へ供した。冷却後、各サンプルからの得られた残りの溶液40 mlを、ICP-AES試験によって様々な浸出物(leachant)について試験した。結果を表2に示す。
【0028】
【表2】

【0029】
米国特許第6,537,626号は、Schottホウケイ酸ガラスバイアルであるType 1、及びカチオン抽出を最小限にするために内部表面がシリカでコーティングされているバイアルで構成されるType 1 plusについて、カチオン抽出データを示した。Type 1 Shottホウケイ酸ガラスバイアルは、比較的高いカチオン抽出を示す(Na(3.5 ppm)、Ca(1.1 ppm)、B(3.5 ppm)及びAl(2.3 ppm))。純粋なシリカコーティングに起因して、Type 1 plus医薬品容器は、非常に低いカチオン抽出を示す(使用した装置の検出限界未満:Na(<0.01 ppm)、Ca(<0.05 ppm)、B(<0.1 ppm)及びAl(<0.05 ppm))。しかし、本発明は、該容器が水性薬物製剤と接触する場合のカチオン抽出を最小限にする非伝統的な修飾剤によるドーピングに基づいて、モノリシックで均質な高純度溶融石英ガラス及びより低い軟化点の高シリカガラスを提供する点で、コーティングされたホウケイ酸ガラス(Type 1 plus)ガラスの代替品を提供する。これは、Type 1 plus容器を製造するために使用されるCVDベースのシリカコーティングの製造の複雑さ及び高コストを低減する。
【0030】
結果:
溶融石英ガラスサンプル(上記表中の214A)は、検出限界未満であるAs、Cd、Cr、Pb及びSb浸出を示した。同様に、LSPG5サンプル(上記で作製したような3.2 wt.% Al2O3、0.18 wt.% CeO2、0.03 wt.% TiO2がドープされたSiO2ガラス)によって浸出されたAs、Cd、Cr、Pb及びSbは全て検出限界未満であった。対照的に、医薬品包装産業内で一般的に使用されるBSi SD及びBSi Schottガラスは、およそ0.2 mg/LのAs(医薬製剤を潜在的に汚染し得る毒性元素)を示した。
【0031】
214A及びLSPG5サンプルは両方とも、検出限界未満であり、BSi Schott又はBSi SDホウケイ酸ガラスから浸出されたものよりも少なくとも270倍少ない、B浸出を示した。最後に、LSPG5及び214Aサンプルは、Na、Ca、Al、K、及びMg浸出に対して非常に耐性であり、一方、BSi Schott、BSi SD及びNa-Ca SDガラスは、表2に示されるように、これらの元素の遙により高い浸出を示した。
【0032】
標準試験方法によれば、LSPG5はまた、耐加水分解性(ISO 719)/98℃でのYBB00362004及び121℃でのYBB00252003(結果:0.00 mL塩化水素溶液/gカレット);耐酸性(DIN 12116)/YBB00342004(結果:0.2 mg/dm2);耐アルカリ性(ISO 695)/YBB00352004(結果:49 mg/dm2)に関して優れた特性を示す。
【0033】
214A及びLSPGガラスは、SiO2コーティングガラス容器(例えば、Type 1 plus Schott容器)からのものと同様であると予想される、非常に低いカチオン浸出を示す。しかし、生産コスト及び品質管理の観点から、本明細書に記載のガラスから作製された容器(低い作用点温度を有する修飾シリカガラスチュービング)は、コーティングを必要とせずに医薬品パッケージへのチュービングの直接火炎変換加工を可能にする適切な作用点温度を有する均質な低抽出可能物ガラスから容器が作製される点で、Type 1 plus技術と比較して利点を有する。対照的に、Type I plus容器は、医薬品パッケージを製造するために使用された均質なベースホウケイ酸ガラスからのカチオン浸出を「マスクする」ために使用されるシリカコーティングを有する。コーティングプロセスは、高価かつ厄介であり(火炎変換後に容器の内部へシリカコーティングを適用するために使用される別個の製造ライン/プロセスを必要とする)、全ての複雑な形状/フォーマット、特に、予め充填された注射可能物質、ペン及び/又は他の複雑な薬物送達パッケージのために必要とされる複雑なフォーマットの一部には適用可能ではない場合がある。
【0034】
前述の説明は、本発明の局面に従うガラス組成物及びそれから作製された物品の様々な非限定的な態様を確認する。改変が当業者及び本発明を製造及び使用する者に予想され得る。開示される態様は、例示目的のために過ぎず、本発明の範囲又は下記の特許請求の範囲に記載される技術的特徴を限定するようには意図されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO2を約82〜約99.9999 wt.%、並びにAl2O3、GeO2、Ga2O3、CeO2、ZrO2、TiO2、La2O3、Y2O3、Nd2O3、希土類酸化物、及びそれらの2つ又はそれ以上の混合物より選択されるドーパントを約0.0001〜約18 wt.%含む、シリカガラス組成物。
【請求項2】
ガラス組成物が、約600〜約2,000の範囲内の作用点温度(working point temperature)を示す、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項3】
ガラス組成物が、約500〜約1,700℃の範囲内の軟化点温度を示す、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項4】
ガラス組成物から形成されたガラス物品から浸出されるカチオン又は金属イオンの濃度が、それぞれのガラスが水溶液と接触する場合にホウケイ酸ガラス及び/又はソーダ石灰ガラスから浸出されるカチオン又は金属の濃度よりも低い、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項5】
ガラス組成物から形成された溶融ガラス物品が、以下の浸出特徴、ガラスがHCl消化へ供された後における以下の種:Na(<0.1 mg/L)、Ca(<0.05 mg/L)、B(<0.01 mg/L)、Al(<0.05 mg/L)、Fe(<0.05 mg/L) Mg(<0.01 mg/L)、K(<0.01 mg/L)、As(<0.02 mg/L)、Cd(<0.001 mg/L)、Cr(<0.008 mg/L)、Pb(<0.009 mg/L)、及びSb(<0.01 mg/L)を示す、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項6】
ガラス組成物から形成された溶融ガラス物品が、以下の浸出特徴、ガラスがHCl消化へ供された後における以下の種:Na(<7.0 mg/L)、Ca(<1.0 mg/L)、B(<2.5 mg/L)、Al(<1.25 mg/L)、Ba(<0.003 mg/L)、Fe(<0.01 mg/L)、K(<0.03 mg/L)、Mg(<0.01 mg/L) As(<0.02 mg/L)、Cd(<0.001 mg/L)、Cr(<0.008 mg/L)、Pb(<0.009 mg/L)、及びSb(<0.01 mg/L)を示す、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項7】
Ti、Ce、Fe、又はそれらの2つ又はそれ以上の組み合わせを含むUV遮断剤をさらに含み、UV遮断剤が約0.001〜約0.5 wt%の量で存在する、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項8】
ガラス組成物が3ppm/K未満の熱膨張係数を示す、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項9】
ガラス組成物が2 ppm/K未満の熱膨張係数を示す、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項10】
ガラス組成物が1 ppm/K未満の熱膨張係数を示す、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項11】
ガラスが、火炎変換の間又は直後、医薬品包装容器の表面上に揮発性ボレート形成を示さない、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項12】
総ドーパント濃度が約0.0001〜約18 wt.%である、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項13】
総ドーパント濃度が約0.01〜約8 wt.%である、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項14】
Al2O3を約0.1〜約18 wt.%含む、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項15】
Al2O3を約0.5〜約5 wt.%含む、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項16】
Al2O3を約0.1〜約5 wt.%、CeO2を約0.1〜約0.5 wt.%、及びTiO2を約0.01〜約0.05 wt.%含む、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項17】
約1,550℃以下の作用点温度を有する、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項18】
SiO2を約82〜約99.9999 wt.%、並びにAl2O3、GeO2、Ga2O3、CeO2、ZrO2、TiO2、La2O3、Y2O3、Nd2O3、希土類酸化物、及びそれらの2つ又はそれ以上の混合物より選択されるドーパントを約0.0001〜約18 wt.%含むシリカガラス組成物を含む医薬品包装容器。
【請求項19】
ドーパントを約0.01〜約18 wt.%含む、請求項18に記載の医薬品包装容器。
【請求項20】
ドーパントを約0.01〜約8 wt.%含む、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
バイアル、カートリッジ、注射器バレル、又はアンプルのうちの1つの形態の、請求項18に記載の医薬品包装容器。
【請求項22】
前記容器が薬物の液体又は乾燥(凍結乾燥)保存用に設計されている、請求項18に記載の医薬品包装容器。
【請求項23】
包装容器の内部表面がコーティングを実質的に含まない、請求項18に記載の医薬品包装容器。
【請求項24】
容器が、HCl消化へ供された場合に以下の浸出特徴:Na(<5.0 mg/L)、Ca (<1.0 mg/L)、B(<2.5 mg/L)、Al(<1.25 mg/L)、Ba(<0.003 mg/L)、Fe(<0.01 mg/L)、K(<0.03 mg/L)、Mg(<0.01 mg/L) As(<0.02 mg/L)、Cd(<0.001 mg/L)、Cr(<0.008 mg/L)、Pb(<0.009 mg/L)、及びSb(<0.01 mg/L)を示す、請求項18に記載の医薬品包装容器。
【請求項25】
容器が、HCl消化へ供された場合に以下の浸出特徴:Na(<0.1 mg/L)、Ca(<0.05 mg/L)、B(<0.01 mg/L)、Al(<0.05 mg/L)、Fe(<0.05 mg/L) Mg(<0.01 mg/L)、K(<0.01 mg/L)、As(<0.02 mg/L)、Cd(<0.001 mg/L)、Cr(<0.008 mg/L)、Pb(<0.009 mg/L)、及びSb(<0.01 mg/L)を示す、請求項18に記載の医薬品包装容器。
【請求項26】
容器から浸出されるカチオン又は金属イオンの濃度が、それぞれのガラスが水溶液と接触する場合にホウケイ酸ガラス及び/又はソーダ石灰ガラスから浸出されるカチオン又は金属の濃度よりも低い、請求項18に記載の医薬品包装容器。
【請求項27】
水溶液が液体の薬学的薬物製剤である、請求項26に記載の医薬品包装容器。

【図1】
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【公表番号】特表2013−502372(P2013−502372A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525733(P2012−525733)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/046189
【国際公開番号】WO2011/022664
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(506390498)モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク (85)
【Fターム(参考)】