説明

医薬品成分の改良された分散性を有する錠剤

本発明は、医薬品成分の改良された分散性を有する錠剤の形態における医薬組成物の調製方法に関し、前記方法は:a)液体中に、少なくとも1種の薬学的に活性な医薬品成分、ならびに少なくとも1種の界面活性剤および/または結合剤の分散体を調製する工程;b)少なくとも1種の多孔質担体を含む1種以上の賦形剤を乾式混合することによって担体を調製する工程;そして、c)a)で調製された分散体を、b)で調製した担体上で噴霧造粒し、噴霧造粒された生成物を得る工程、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品成分の改良された分散性を有する錠剤の形態における医薬組成物の調製方法に関し、前記方法が、
a) 液体中に、少なくとも1種の薬学的に活性な医薬品成分、ならびに少なくとも1種の界面活性剤および/または結合剤の分散体を調製する工程;
b) 少なくとも1種の多孔質担体を含む1種以上の賦形剤を乾式混合することによって担体を調製する工程;そして
c) a)で調製された分散体を、b)で調製した担体上で噴霧造粒し、噴霧造粒された生成物を得る工程
を含むことを特徴とする。
【0002】
本発明はまた、本発明の方法によって得られた、医薬品成分の改良された分散性を有する錠剤を含む。
【0003】
高い薬物負荷を有する製剤における低い溶解性の医薬品成分のために、本発明の方法が、錠剤が良好な湿潤性を示し、医薬品成分の即時放出を可能にし、そして圧縮成形中に溶結作用(sintering effects)を防止する、医薬品成分の改良された分散性をもたらすことが、意外にも見出された。
【0004】
製薬技術の製剤設計の分野において、解決すべき問題は、大部分、純粋な医薬品成分の物理化学的特性(湿潤性、溶解性、...)、または最終製剤中に含まれることを目的としている他の重要な添加物によって決定される。多くの剤形は製薬市場で公知であり、最も重要なのは錠剤およびカプセル剤である。高い薬物負荷を有する製剤において、特に貧溶性の医薬品成分の製剤は、製剤開発における大きな課題の一つである。そのような製剤のための成功の主要条件は:
− 良好な分散性、
− 錠剤の崩壊前における、錠剤の良好な湿潤性、
− 錠剤の崩壊後における、医薬品成分の良好な湿潤性、および、
− 圧縮成形による溶結の防止
である。
【0005】
本明細書で定義された、表現「低い溶解性を有する医薬品成分」は、低いまたは乏しい溶解性を有する医薬品成分を意味し、「産業別ガイダンス、生物医薬品分類体系に基づく即放性固形経口剤のための、In Vivoの生物学的利用能および生物学的同等性試験の免除(Guidance for Industry, Waiver of In Vivo Bioavailability and Bioequivalence Studies for Immediate-Release Solid Oral Dosage Forms Based on a Biopharmaceutics Classification System)」米国、保健社会福祉省、食品医薬品局、医薬品審査・調査センター(CDER)、August 2000において記述されているような、分類IIまたはIVの医薬品成分として、生物医薬品分類体系(BCS)によって分類される。
【0006】
当然のことながら、界面活性剤、湿潤剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、担体、充填剤などをはじめとする本発明の方法で使用する賦形剤は、薬学的に許容される等級のものである。
【0007】
表現「医薬品成分の、良好な分散性またはマイクロ崩壊」は、医薬品成分が、それが製剤を製造するために使用されたのとほとんど同じ粒径で製剤から放出されることを意味する。
【0008】
表現「良好な湿潤性」は、固体/蒸気界面を、急速に、そして完全に、周囲の液体中に粒子の良好な分散を可能にするように、固体/液体の界面で置き換えることを意味する。
【0009】
表現「薬学的に活性な医薬品成分」または「医薬品成分」は、疾患を治療および/または予防することを目的としている、薬学的に活性な構成要素を表わすために、本特許出願において通常の意味に使用される。任意の乏しい溶解性の医薬品成分を、本発明の方法で処方できる;具体的には、BCS(生物医薬品分類体系)分類II/IVの医薬品成分の群より選択される特定の医薬品成分である。医薬品成分は、通常、錠剤重量の25〜70%の範囲である重量%で錠剤中に存在する。本発明の特定の実施態様において、医薬品成分はNK1レセプターアンタゴニストまたはMAOB阻害剤である。NK1レセプターアンタゴニストを、EP 1035115、WO 00/50401、WO 00/50398、WO 00/53772、WO 00/73279、WO 00/73278、EP 1103546、EP 1103545、WO 01/90083、WO 01/94346、WO 02/06236、WO 02/08232、WO 02/16324、WO 02/47663、WO 02/42280、WO 02/079134、WO 02/062784、WO 02/092604、WO 02/0854458、WO 01/52844、WO 03/006016、WO 03/011860、WO 2004/067007、EP 0941092、EP 0941093およびEP 1082959、ならびに特にその請求項において具体的に開示されているような、それらの化合物および化合物の群より選択することができる。MAOB阻害剤を、WO 03/066596、WO 03/080573、WO 2004/014856、WO 03/091219、WO 2004/054985、WO 03/099763、WO 03/106380、WO 2004/007429、WO 2004/026826、WO 2004/026827およびWO 2004/026825、ならびに特にその請求項において具体的に開示されているような、それらの化合物および化合物の群より選択することができる。
【0010】
表現「無溶結作用」は、医薬品成分の、融解、部分的融解に起因するか、塑性変形に起因する凝集がないことを意味する。
【0011】
本発明の方法に従う工程a)の分散を、従来の方法および装置を使用して行うことができる。本発明の特定の実施態様において、分散体は、例えばMoltomat MMV 20(商標)のような真空槽を備えているミキサーホモジナイザー装置を使用して、減圧下で調製される。工程a)で得られた分散体は、従来のレオメーターで測定して、好ましくは150mPa・s未満、好ましくは100mPa・s未満およびさらにより好ましくは75mPa・s未満の動的粘性を有する。相対的な低粘度は、その調製後に、分散体の直接利用を可能にする。
【0012】
任意の従来の薬学的に許容される界面活性剤および/または結合剤を、本発明による工程a)の分散体を調製するために使用してもよい。錠剤中に含まれる界面活性剤の重量%は、通常、錠剤の総重量の0〜15%の範囲であるのに対して、錠剤中に含まれる結合剤の重量%は、通常、錠剤の総重量の4〜15%の範囲である。
【0013】
懸念を明確にするために、本明細書によって、工程a)における表現「界面活性剤および/または結合剤」は、工程a)の分散体が:
− 1種以上の界面活性剤、
− または、1種以上の結合剤、
− または、1種以上の界面活性剤および1種以上の結合剤の混合物
のいずれかを含んでもよいことを意味することをここに明記する。
【0014】
界面活性剤の非限定的な例は、陰イオン界面活性剤、共乳化剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、および両性界面活性剤を包含する。さらなる例は、ラウリル硫酸ナトリウム、ドクサートナトリウム(docusate sodium)、カゼイン酸ナトリウム(caseinate sodium)、脂肪酸塩類、第四級アミン類、セチルピリジニウムクロリド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、セチルアルコール、脂肪酸エステル類、セトステアリルアルコール、コレステロール、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリソルベート類、ポロキサマー類、リン脂質、そして好ましくはショ糖脂肪酸エステル類およびトコフェリルポリエチレングリコールスクシナートを包含する。
【0015】
結合剤の非限定的な例は、セルロース、その誘導体および塩類(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、および微晶質セルロース)、またはデンプンおよび加工デンプン、固体または液体ブドウ糖、ゼラチン、ならびに好ましくは、ポリビニルピロリドン(PVP)、またはPVP/VA共重合体を含む。
【0016】
工程a)の分散体はまた、1種以上の上記に列挙された界面活性剤および結合剤の混合物を含むことができる。
【0017】
さらに他の従来の薬学的に許容される賦形剤を、工程a)において加えてもよい。そのような賦形剤の非限定的な例は、従来の薬学的に許容される湿潤剤および可溶化剤を含む。
【0018】
工程a)において使用される液体に関しては、水または、水と必要量のエタノールのようなアルコールとの混合物をはじめとする、任意の薬学的に許容される液体を用いてもよい。水とアルコールの混合物は、0〜100重量%の水と100〜0重量%のアルコール、例えば、0〜75重量%の水と100〜25重量%のアルコールの混合物である。
【0019】
本発明の方法はまた、
a) 液体中に、少なくとも1種の薬学的に活性な医薬品成分、ならびに少なくとも1種の界面活性剤および/または結合剤の均質な分散体を調製する工程;
b) 少なくとも1種の多孔質担体を含む1種以上の賦形剤を乾式混合することによって担体を調製する工程;そして
c) a)で調製された均質な分散体を、b)で調製した担体上で噴霧造粒し、噴霧造粒された生成物を得る工程
を含む方法も包含する。
【0020】
本発明の特定の実施態様において、工程a)は、2つ副工程a1)およびa2)に分けられ、それは、以下のように実施されてもよい:
a1) 液体中に、結合剤もしくは界面活性剤のどちらか、またはその混合物を分散させる工程;
a2) 工程a1)の分散体で医薬品成分を湿潤および分散させ、そして場合によってはさらに賦形剤を加える工程。
【0021】
工程b)における乾式混合は、任意の従来の方法および装置を使用しても実施することができ、例えば、従来のタンブルミキサーを使って、得られた混合物をその後に篩にかけ、次に、タンブルミキサーを使って再度混合し、実施することもできる。
【0022】
すでに本明細書で前述したように、工程b)における乾式混合による担体の調製は、少なくとも1種の多孔質担体を含む1種以上の賦形剤を必要とする。工程b)で使用される多孔質担体を含む、担体の総重量%は、通常、錠剤の重量の20〜65%の範囲である。
【0023】
任意の適切な多孔質担体を使用してもよく、これらの適切な多孔質担体のいくつかは、コロイド状二酸化ケイ素のように、そのまま市販されており、例えば、商標Aerosil(商標)で販売されている。多孔質担体の重量%は、通常、錠剤の重量の0.5〜10%の範囲である。
【0024】
多孔質担体に加えて、他の賦形剤が残りの担体を構成してもよいと理解される。そのような賦形剤は、例えば、充填剤および/または崩壊剤である。
【0025】
工程b)の担体を調製するために適切な充填剤または希釈剤は、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、セルロース、酢酸セルロース、デキストラート類、デキストリン、デキストロース、例えばグルコース、エチルセルロース、フルクトース、パルミトステアリン酸グリセリン、硬化植物油、カオリン、ラクチトール、ラクトース、例えばラクトース一水和物、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルチトール、マルトデキストリン、マルトース、微晶質セルロース、ポリメタクリラート類、粉末セルロース、アルファ化デンプン、ケイ化微晶質セルロース、塩化ナトリウム、ソルビトール、デンプンおよび加工デンプン、ショ糖、砂糖ならびにタルクを含むが、これに限定されるものではない。
【0026】
工程b)の担体を調製するために適切な崩壊剤は、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、セルロース、ケイ酸アルミニウム・マグネシウム、メチルセルロース、微晶質セルロース、カリウム、ポラクリリン(polacrilin)、ポビドン、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプン、および好ましくは、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウムまたはクロスポビドンを含むが、これに限定されるものではない。
【0027】
本発明の方法にしたがって工程c)の噴霧造粒を、同様に従来の方法および装置を使用して実施することができる。本発明の特定の実施態様において、噴霧造粒を、例えば、Aeromatic Fielder T/SG2タイプのような流動床造粒機において実施する。
【0028】
工程c)の噴霧造粒された生成物を、次いで、錠剤に圧縮成形することができ、そして次いで以下:
d) c)の噴霧造粒された生成物を、1種以上の賦形剤と乾燥混合し、前記賦形剤が外相を形成し、最終混合物を得る工程;
e) 工程d)の最終混合物を錠剤に圧縮成形する工程;
f) 工程e)の錠剤をフィルムコーティングする工程
を用いてフィルムコーティングすることができる。
【0029】
最終混合物を錠剤に圧縮成形することを、従来の方法および装置を使用して実施することができる。本発明の特定の実施態様において、圧縮成形を、Korsch PH 250および従来の回転式供給機を使用して実施する。
【0030】
任意の薬学的に許容される賦形剤を、工程d)の最終混合物において使用することができる。そのような賦形剤の例は、流動促進剤および滑沢剤と同様に、圧縮成形挙動を改善する賦形剤のような、さらなる賦形剤(例えば、マンニトール、ケイ化微晶質セルロース)を含むが、これに限定されるものではない。錠剤用に使用される流動促進剤、滑沢剤およびその他賦形剤の総重量%は、通常、錠剤の重量の0.5〜10%の範囲である。
【0031】
任意の薬学的に許容される賦形剤を、錠剤の外相のために使用することができ、好ましくは従来の流動促進剤および滑沢剤である。適切な流動促進剤を、三ケイ酸マグネシウム、粉末セルロース、デンプン、第三リン酸カルシウム、および好ましくはタルクからなる群より選択することができる。適切な滑沢剤を、ステアリン酸カルシウム、菜種油、パルミトステアリン酸グリセリン、硬化植物油、酸化マグネシウム、鉱油、ポロキサマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、および好ましくはタルク、ステアリルフマル酸ナトリウムまたはステアリン酸マグネシウムからなる群より選択することができる。
【0032】
すでに前述したように、いったん圧縮成形されると、本発明の医薬品成分の改良された分散性を有する錠剤を、フィルムコーティングすることができる。フィルムコーティングは、主にポリマーおよびさらなる他の賦形剤(可塑剤、着色剤、タルクおよび追加の賦形剤など)を含む。
【0033】
フィルムコーティングを、任意の従来の方法および装置を使用して、例えば、Watson Marlow(商標)ポンプを備えるGlatt GC550(商標)装置を使用して実施することができる。
【0034】
本発明はまた、本発明の方法により得られた医薬品成分の改良された分散性を有する錠剤も包含する。本発明の方法により得られた、医薬品成分の改良された分散性を有する錠剤は、それらの調製方法(すなわち本発明の方法)により確定されるのが、最良なことが明らかにされた。
【0035】
高い薬物負荷を有する製剤における低い溶解性の医薬品成分のために、本発明の方法は、良好な湿潤性を示し、医薬品成分の即時放出を可能にし、そして圧縮成形中の溶結作用を防止する、医薬品成分の改良された分散性を錠剤にもたらすことが、意外にも見出された。
【0036】
これらの意外な改良された結果を、本発明の工程a)〜c)の方法の独創性により達成した。
【0037】
通常、従来技術の錠剤の調製方法は、本発明の独創的な工程a)〜c)の方法に従わない。
【0038】
いかなる理論にも制約されずに、出願人は、良好な分散性および湿潤性を、液体物質中で、界面活性剤および/または結合剤と共に医薬品成分を分散させることにより達成することができたと確信する。さらに、本発明による錠剤の良好な分散性および迅速な崩壊は、担体の乾式混合における多孔質担体の追加からもたらされると考えられる。
【0039】
、医薬品成分の改良された分散性を有し、好ましくは本発明の方法により得られた錠剤は:
− 薬局方に記載されている従来の崩壊試験において測定される、20分間未満、好ましくは15分未満、より好ましくは10分未満の水における崩壊時間;
− 高い初期溶出速度またはin−vitroパラメータ(分散性を特徴とする)としての沈降のない条件下でのプレインキュベーション後の動態。異なる製剤の分散性挙動の定義は、プレインキュベーション後、初期溶出動態の決定により測定することができる。高い分散性(単結晶)は、速い初期溶出速度につながる。この手段により、溶結作用(粒子の凝集、粒径の増大)を、粒状(圧縮成形前)および錠剤(錠剤圧縮成形後)の初期溶出速度の比較により確認することができる。
− 以下の標準試験を、沈降のない条件下でプレインキュベーション後、初期溶出動態の測定のために、適用することができる:
ことによって、主に特徴づけられる。
手順:
1. 胃の段階:粗懸濁液における崩壊
FeSGF 5ml(摂食時の人工胃液)pH5(SE−L1695 3mg/ml=ショ糖ラウリン酸塩 Ryoto(L1695)を有する)を、20ml バイアル中で、錠剤部分(〜25mg API)に加える。バイアルを、2rpm、37℃(低剪断力での穏やかな混合)で、完全な崩壊が観察されるまで、少なくとも30分または最高60分の間、回転撹拌機においてインキュベートする。2つの懸濁試料を取り、そして「100%」対照としてHPLCにより分析する。
2. 十二指腸の段階:分散されたAPIからの溶出動態
(1.)からの試料を、同じ媒体またはFeSSIF pH5(=摂食時の人工小腸液)において希釈し、〜50rpmで撹拌する。測定用の製剤濃度は、医薬品成分の特性に基づいて適応させるべきである(例えば、実施例1:FeSGF媒体における溶解度は、32μg/mlである。試料は〜250μg/ml API(希釈率1/20)を含む)。試料を、異なる時点(すなわち、1、3、5および8分)で取り、そして直ちに0.45μm Millex−HV4 フィルターで濾過し、そしてHPLCにより分析する。
【0040】
以下の実施例は、さらに、本発明の組成物および方法を例証することを意図し、本発明を例示された実施態様に限定するものではない。
【0041】
医薬品成分の改良された分散性を有する錠剤および本発明による方法の実施例
【0042】
実施例1
以下、表Iは、本発明による医薬品成分の改良された分散性を有する錠剤のための組成物を示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表Iの組成物の崩壊時間を、本明細書で前述したように、測定した。
【0045】
水および0.1N HClにおける崩壊時間は、10分未満であった。
【0046】
1分後の初期溶出速度は、飽和状態の25%以上であり、そして3分後は、飽和状態の45%以上であった。
【0047】
表Iの医薬品成分の改良された分散性を有する錠剤を、本発明の以下の方法により調製した。
工程a) 減圧下でMoltomat MMV 20を使用して、PVP/VA64共重合体、ショ糖脂肪酸エステルおよびR673の水分散液を調製した。
工程b) タンブルミキサーを使用して、ラクトース一水和物、アルファ化デンプン、コロイド状二酸化ケイ素(多孔質担体)およびクロスカルメロースナトリウムを5分間混合した。
工程c) a)で調製された分散体を、表面噴霧の工程として、流動床造粒機(タイプWST SG2)を使用して、b)で調製された乾燥混合粉体上で、噴霧造粒した。噴霧造粒のために、以下の条件を使用した:
− 入口の空気温度約65〜70℃:
− 通気率約150〜200m3/h:
− 噴霧率約100〜250g/min:
− 噴霧空気圧約2.5bar:
工程d) 乾燥篩過された物質を、タンブルミキサーにおいて10分間、マンニトールと混合した。次いで、他の賦形剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウムおよびタルク)を、タンブルミキサーを使用して3分間、物質の一部と混合した。その後、物質の残存部分を加え、そしてタンブルミキサーを使用して5分間混合した。
工程e) d)で調製された最終混合物を、Korsch PH 250(60rpm、12−13kN)を使用して、卵型錠剤(18mm x 8.33mm)に圧縮成形した。
工程f) e)で調製された錠剤を、市販のフィルム−コーティングシステムを使用してフィルム−コーティングした。コーティング工程は、Glatt GC550を使用して行われた。
【0048】
実施例2
以下の表IIは、本発明による医薬品成分の改良された分散性を有するもう一つの錠剤を示す:
【0049】
【表2】

【0050】
表IIの組成物の崩壊時間を、本明細書で前述したように、測定した。
【0051】
水における崩壊時間は、7分未満であった。
【0052】
表IIの医薬品成分の改良された分散性を有する錠剤を、本発明の以下の方法により調製した。
工程a) Polytronを使用して、PVP/VA64共重合体、ショ糖脂肪酸エステルおよびR1500の水分散液を調製した。
工程b) タンブルミキサーを使用して、ラクトース一水和物、アルファ化デンプン、コロイド状二酸化ケイ素(多孔質担体)およびクロスカルメロースナトリウムを混合した。
工程c) a)で調製された分散体を、表面噴霧の工程として、流動床造粒機(タイプStrea−1)を使用して、b)で調製された乾燥混合粉体上で、噴霧造粒した。
工程d) 乾燥篩過された物質を、マンニトールと混合した。次いで、他の賦形剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウムおよびタルク)を、タンブルミキサーを使用して3分間、物質の一部と混合した。その後、物質の残存部分を加え、そしてタンブルミキサーを使用して3分間混合した。
工程e) d)で調製された最終混合物を、Korsch PH 250(60rpm、9kN)を使用して、卵型錠剤(11.5mm x 6mm)に圧縮成形した。
工程f) フィルム−コーティングを適用しなかった。
【0053】
実施例3
以下の表IIIは、さらにもう一つの医薬品成分の改良された分散性を有する、本発明による錠剤を示す:
【0054】
【表3】

【0055】
表IIIの組成物の崩壊時間を、本明細書で前述したように、測定した。
【0056】
水における崩壊時間は、15分未満であった。
【0057】
表IIIの医薬品成分の改良された分散性を有する錠剤を、本発明の以下の方法により調製した。
工程a) Polytronを使用して、PVP/VA64共重合体、ショ糖脂肪酸エステルおよびR1500の水分散液を調製した。
工程b) タンブルミキサーを使用して、ラクトース一水和物、微晶質セルロース,コロイド状二酸化ケイ素(多孔質担体)およびクロスポビドンを混合した。
工程c) a)で調製された分散体を、表面噴霧の工程として、流動床造粒機(タイプStrea−1)を使用して、b)で調製された乾燥混合粉体上で、噴霧造粒した。
工程d) 乾燥篩過された物質の一部を、タンブルミキサーを使用して3分間、ステアリン酸マグネシウムおよびタルクと混合した。その後、顆粒の残存部分を加え、そしてタンブルミキサーを使用して3分間混合した。
工程e) d)で調製された最終混合物を、Korsch PH 250(60rpm、8kN)を使用して、卵型錠剤(11.5mm x 6mm)に圧縮成形した。
工程f) フィルム−コーティングを適用しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品成分の改良された分散性を有する錠剤の形態における医薬組成物の調製方法であって、前記方法が、
a) 液体中に、少なくとも1種の薬剤の医薬品成分、ならびに少なくとも1種の界面活性剤および/または結合剤の分散体を調製する工程;
b) 少なくとも1種の多孔質担体を含む1種以上の賦形剤を乾式混合することによって担体を調製する工程;そして
c) a)で調製された分散体を、b)で調製された担体上で噴霧造粒し、噴霧造粒された生成物を得る工程
を含むことを特徴とする調製方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、さらに
d) c)の噴霧造粒された生成物を、1種以上の賦形剤と乾燥混合し、前記賦形剤が外相を形成し、最終混合物を得る工程;、
e) 工程d)の最終混合物を錠剤に圧縮成形する工程;
f) 工程e)の錠剤をフィルムコーティングする工程
を含む方法。
【請求項3】
工程a)において、分散体が、少なくとも1種の界面活性剤を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
界面活性剤が、ラウリル硫酸ナトリウム、ドクサートナトリウム、カゼイン酸ナトリウム、脂肪酸塩類、第四級アミン類、セチルピリジニウムクロリド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、セチルアルコール、脂肪酸エステル類、セトステアリルアルコール、コレステロール、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリソルベート類、ポロキサマー類、リン脂質、そして好ましくは、ショ糖脂肪酸エステル類およびトコフェリルポリエチレングリコールスクシナートを含む、非イオン性界面活性剤および両性界面活性剤からなる群より選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
工程a)において、分散体が、少なくとも1種の結合剤を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
結合剤が、セルロース、その誘導体および塩類、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよび微晶質セルロース、またはデンプンおよび加工デンプン、固体または液体グルコース、ゼラチン、ならびに好ましくはポリビニルピロリドン(PVP)、またはPVP/VA共重合体からなる群より選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
工程a)において、分散体が、少なくとも1種の界面活性剤と少なくとも1種の結合剤との混合物を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項8】
混合物が、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル、および結合剤としてPVP/VA共重合体を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
工程b)において、乾式混合が、充填剤および/または崩壊剤ならびに多孔質担体を含む、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
多孔質担体が、コロイド状二酸化ケイ素である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
充填剤が、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、セルロース、酢酸セルロース、デキストラート類、デキストリン、デキストロース、グルコース、エチルセルロース、フルクトース、パルミトステアリン酸グリセリン、硬化植物油、カオリン、ラクチトール、ラクトース、ラクトース一水和物、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルチトール、マルトデキストリン、マルトース、微晶質セルロース、ポリメタクリラート類、粉末セルロース、アルファ化デンプン、ケイ化微晶質セルロース、塩化ナトリウム、ソルビトール、デンプンおよび加工デンプン、ショ糖、砂糖ならびにタルクからなる群より選択される、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
崩壊剤が、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、セルロース、ケイ酸アルミニウム・マグネシウム、メチルセルロース、微晶質セルロース、カリウム、ポラクリリン、ポビドン、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプン、および好ましくはコロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウムまたはクロスポビドンからなる群より選択される、請求項9または10記載の方法。
【請求項13】
工程a)において、噴霧造粒のための分散体が、
a1) 液体中に、結合剤もしくは界面活性剤のどちらか、またはその混合物を分散させる工程;
a2) 工程a1)の分散体で医薬品成分を湿潤および分散させ、そして場合によってはさらに賦形剤を加える工程
を含む、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
工程a)の分散体の調製が、減圧下で行われる、請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
工程a)で得られた分散体が、150mPa・s未満、好ましくは100mPa・s未満およびさらにより好ましくは75mPa・s未満の粘度を有する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項記載の方法により得られた、医薬品成分の改良された分散性を有する錠剤。
【請求項17】
水中の崩壊時間が、20分未満、好ましくは15分未満、より好ましくは10分未満であり、高い初期溶出速度を有する、請求項16記載の医薬品成分の改良された分散性を有する錠剤。
【請求項18】
本明細書において記述されたような発明。

【公表番号】特表2008−531509(P2008−531509A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556532(P2007−556532)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001395
【国際公開番号】WO2006/089674
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】