説明

医薬用多微粒子の製造方法

薬剤結晶化度が向上した薬剤多微粒子を製造する方法を開示する。これは、揮発性物質種(volatile cospecies)を溶融混合物又は処理雰囲気又はその両方に添加することにより従来の溶融−凝固法を改良することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体中に懸濁された結晶性薬剤を含む多微粒子(multiparticulates)中で薬剤の好ましい結晶形態を維持する多微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
或る幾つかの薬剤は様々な異なる結晶形態で存在し得ることは、よく知られている。様々な結晶形態のうちのいずれかで存在し得る薬剤の具体例はアジスロマイシンであり、これには少なくとも13種の異なる結晶形態がこれまでに同定されている。本出願人による米国特許出願公開番号20030162730を参照されたい。
【0003】
異なる結晶形態の薬剤は、異なる性質を有し得ることもまたよく知られている。例えば、異なる結晶形態は、水溶性、物理学的安定性(形態がその結晶質状態又は非晶質状態を保つ度合い)、化学反応性及び治療効果に関して変動し得る。
【0004】
結晶性薬剤は、多微粒子形態で投与することができる。多微粒子は多数の粒子を含み、その全体は意図する治療に有用な用量の薬剤となる。多微粒子のその他の例は、例えばMultiparticulate Oral Drug Delivery (Marcel Dekker, 1994)及びPharmaceutical Pelletization Technology (Marcel Dekker, 1989)に開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多微粒子を製造する特に有用な方法は、溶融-凝固法によるものである。この方法は、結晶形態の薬剤及び担体を含む溶融混合物を形成し、該混合物を噴霧して液滴を形成し、そして該液滴を冷却して多微粒子を製造することを含む。溶融−凝固法を使用して多微粒子を製造する場合に生じる1つの問題は、薬剤の最初の結晶形態が、望ましい結晶形態から別の望ましくない形態へ変化し易いということである。
【0006】
多微粒子を製造するために使用されるプロセス中に薬剤が1つの結晶形態から別の形態に変化することは、様々な理由のうちのいずれか1つのために好ましくない場合がある。ある結晶形態の薬剤は別の結晶形態よりも優れた性質、例えば、ある形態は別の形態よりも高い水溶性を有し得る。あるいは、非晶形又は別の結晶形態に変化した場合の薬剤は、より貧弱な化学安定性を有する場合があり;例えば非晶形又は他の結晶形態は、好ましい結晶形態よりも担体と反応し易いか、又は酸化し易い。更に、或る幾つかの結晶形態は、異なる生物学的利用能を有し得る。
【0007】
従って、別の結晶形態又は非晶形への薬剤の変化が、許容し得る範囲で低レベルに維持されるような、薬剤含有多微粒子の製造方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
或る幾つかの結晶性薬剤形態は、結晶構造中に揮発性物質種を含む。このような結晶形態及びその揮発性物質種の例としては、水和物(これは水を取り込んでいる);溶媒和物(これは溶媒を取り込んでいる);及び塩形態(例えば酢酸塩、塩酸塩であり、これは揮発性物質種に変化し得る対イオンを取り込んでいる)が挙げられる。結晶性二水和形態のアジスロマイシンは、揮発性物質種の水を含む結晶形態の一例である。揮発性物質種に変化し得る対イオンを取り込んでいる塩形態の結晶性薬剤の例は、塩酸セチリジンであり、これは揮発性物質種として塩化物対イオンを含む。溶融−凝固プロセス中に或る薬剤の形態変化を引き起こす1つの機構は、薬剤の結晶形態がそのような揮発性物質種を失い、そして当初の結晶形態又は好ましい結晶形態から別の結晶形態又は非晶形に変化することである。
【0009】
本発明は、結晶形態の薬剤を含有する多微粒子を製造するための改良された溶融−凝固法であり、ここで、薬剤の結晶形態は揮発性物質種を含み、即ち揮発性物質種を、(i)溶融混合物を形成する間に、又は(ii)それから液滴を形成する間に、又は(iii) (i)及び(ii)の両工程の間に、薬剤と担体との溶融混合物に又は該溶融混合物と接する雰囲気のいずれかに添加する。好ましくは、溶融混合物中及び/又は雰囲気中の揮発性物質種の活性が、溶融−凝固プロセスの最高処理温度での結晶形態の薬剤中の揮発性物質種の活性に等しいか又はそれより高くなるように十分な量の揮発性物質種を添加する。結晶性薬剤形態の他形態への好ましくない変化は、揮発性物質種を添加することによって許容し得るレベルに保たれ、これによって、溶融混合物中又は溶融混合物と接する雰囲気中又はこれらの両方に存在している揮発性物質種の高活性が効果的に維持され、従って、好ましい結晶形態から揮発性物質種が失われるのに要する駆動力は低く維持され、即ち多微粒子製造中に薬剤は好ましい結晶形態で維持され、従って、薬剤が実質的にその結晶形態で存在している多微粒子が製造される。
【0010】
別の実施態様において、多微粒子は、(a)処理温度Tで少なくとも0.01気圧の蒸気圧を有する揮発性物質種を含む結晶形態で存在することができる薬剤を用意し;(b)同じ温度Tで薬剤及び担体を含む溶融混合物を形成させ;(c)該溶融混合物から液滴を形成させ;(d)凝固媒体中でこの液滴を凝固させて、薬剤及び担体を含む多微粒子を形成させ;そして(e)工程(b)、(c)及び(d)の少なくとも一つにおいて揮発性物質種の量を添加する工程、を含む溶融−凝固法を用いて製造される。薬剤は最初に、(1)結晶性薬剤形態、(2)結晶性薬剤形態の混合物、(3)非晶質薬剤、又は(4)(1)、(2)若しくは(3)の任意の組み合わせ、として存在していてよい。工程(e)で添加される揮発性物質種の量は、薬剤結晶化度の相対的向上度が、対照方法を使用して製造される多微粒子と比べて少なくとも1.1となるのに十分な量である。対照方法とは、揮発性物質種を添加しない点以外は上述の方法と同じものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の方法により製造される多微粒子は、結晶性薬剤及び担体を含む。
用語「多微粒子」とは、多数の粒子を含み、その全体で意図する治療に有用な用量の薬剤となる投薬形態を意味する。粒子は一般的に、平均直径が約40〜約3,000μm、好ましくは約50〜約1,000μm、及び最も好ましくは約100〜約300μmである。多微粒子は任意の形状及び触感を有していてよいが、球状であり、そして滑らかな表面触感を有することが好ましい。これらの物理特性は、流動特性、「舌ざわり」、嚥下し易さ、及び必要に応じて均一にコーティングする容易さを改善する傾向がある。
【0012】
本発明において用いられる場合、用語「約」は、指定された値について、指定された値±10%を意味する。
【0013】
薬剤
本発明の方法により製造される多微粒子は、薬剤を含む。本明細書で使用される用語「薬剤」は、例えば、動物における局所的又は全身的効果をもたらすあらゆる生理学的又は薬理学的活性物質を包含するが、これに限定されない。用語「動物」は、哺乳動物、例えばヒト及びその他の動物を包含することが意図される。
【0014】
本発明の方法により製造される多微粒子中に存在する薬剤の少なくとも70wt%は、好ましい結晶形態である。好ましくは、組成物中の薬剤は、「実質的に結晶質」であり、これは多微粒子中の好ましい結晶形態の薬剤の量が少なくとも約80wt%であることを意味する。より好ましくは、組成物中の薬剤は、「ほぼ完全に結晶質」であり、これは多微粒子中の好ましい結晶形態の薬剤の量が少なくとも約90wt%であることを意味する。最も好ましくは、多微粒子中の薬剤は「本質的に結晶質」であり、これは多微粒子中の好ましい結晶形態の薬剤の量が少なくとも約95wt%であることを意味する。
【0015】
薬剤は、多微粒子中で結晶形態で投与し得る任意の薬剤であってよく、そしてここで好ましい結晶形態は揮発性物質種を含んでいる。揮発性物質種は水又は溶媒であるか、又は揮発性形態に変化し得る対イオンであってよい。一般に、揮発性物質種は、結晶性薬剤形態が溶融−凝固法の最高処理温度でふたなし容器中に保持されている場合に、揮発性物質種の実質的部分が約30分かけて失われるくらいに十分に揮発性であるべきものである。一般的に、これは、遊離形態の揮発性物質種の蒸気圧が、溶融−凝固法の最高処理温度で少なくとも0.01atmであることを意味する。好ましくは、遊離形態の揮発性物質種の蒸気圧は少なくとも0.05atmであり、そしてより好ましくは少なくとも0.1atmである。
【0016】
揮発性物質種として水を取り込んでいる結晶形態の例は、薬剤水和物、例えば一水和物、二水和物、半水和物、セスキ水和物等である。水を含有する結晶形態で存在し得る薬剤の例としては、アジスロマイシン二水和物、シルデナフィル二水和物、ドキシサイクリン一水和物、塩酸ジプラシドン(ziprazidone)一水和物、ペニシリンGベンザチン四水和物、アモキシシリン三水和物及びアトロバスタチンカルシウム三水和物が挙げられる。
【0017】
揮発性物質種のその他の例は、溶媒和結晶構造中に存在する溶媒である。このような溶媒としては、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、アセトン及びアセトニトリルが挙げられる。結晶形態はまた、2又はそれ以上の揮発性溶媒、又は1又はそれ以上の揮発性溶媒と水とを含んでいてもよい。結晶性溶媒和形態で存在し得る薬剤の例としては、アジスロマイシン一水和物/一シクロヘキサン溶媒和物、アジスロマイシン一水和物/ヘミ−エタノール溶媒和物、アジスロマイシン一水和物/一テトラヒドロフラン溶媒和物、アジスロマイシン一水和物/ヘミ−n−プロパノール溶媒和物及びドキシサイクリンHCl ヘミ−エタノール溶媒和物ヘミ水和物が挙げられる。
【0018】
揮発性物質種の別の例は、塩化物対イオンであり、これは塩基性薬剤と塩酸塩を形成することができる。ある種の処理条件下で、塩酸塩は薬剤結晶から除かれて、HClを遊離し、そして薬剤の結晶構造を変化させる。塩化物イオンを含む結晶形態で存在することができる薬剤の例としては、セチリジンHCl、ジプラシドンHCl、プソイドエフェドリンHCl、セルトラリンHCl、プラゾシンHCl、ドネペジルHCl、ドキシサイクリンHCl ヘミ−エタノール溶媒和物ヘミ水和物及びドキセピンHClが挙げられる。
【0019】
揮発性物質種の更に別の例は、酢酸対イオンであり、これは塩基性薬剤と酢酸塩を形成することができる。ある種の処理条件下で、酢酸塩は薬剤結晶から除去されて、酢酸を遊離し、そして薬剤の結晶構造を変化させる。酢酸イオンを含む結晶形態で存在することができる薬剤の例としては、酢酸メゲストロール、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸マフェナイド、酢酸ノルエチンドロン及び酢酸コルチゾンが挙げられる。
【0020】
薬剤の好ましいクラスとしては、降圧剤、抗不安薬、抗凝固薬、抗痙攣薬、血糖降下薬、鬱血除去薬、抗ヒスタミン剤、鎮咳薬、抗新生物薬、β遮断薬、抗炎症薬、抗精神病薬、認知増進薬、抗アテローム性動脈硬化薬、コレステロール低下薬、抗肥満薬、自己免疫疾患薬、性的不全治療薬、抗菌剤及び抗真菌剤、催眠剤、抗パーキンソニズム薬、抗アルツハイマー病薬、抗生物質、抗鬱薬及び抗ウイルス薬、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤及びコレステロールエステル転送タンパク質阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本発明で使用するのに好ましい薬剤は、アジスロマイシンである。アジスロマイシンとは、エリスロマイシンAから誘導される広域スペクトラムの抗菌性化合物である薬剤9a−アザ−9a−メチル−9−デオキソ−9a−ホモエリスロマイシンAの一般名である。従って、アジスロマイシン及びその特定の誘導体は、抗生物質として有用である。アジスロマイシンは、例えば様々な水和物、溶媒和物及び塩形態を含む様々な結晶形態で存在することができる。本発明は、結晶形態が上述の揮発性物質種を含む、これらの全ての形態に好適である。結晶性アジスロマイシンの様々な多形体が、2003年8月28日に公開された米国特許出願公開番号20030162730;米国特許第6,365,574号及び第6,245,903号;2001年11月29日に公開された米国特許出願公開番号20010047089、及び2002年8月15日に公開された米国特許出願公開番号20020111318;及び国際出願公開番号WO 01/00640、WO 01/49697、WO 02/10181及びWO 02/42315において開示されている。好ましい実施態様において、アジスロマイシンは米国特許第6,268,489号に開示された結晶性二水和物の形態である。
【0022】
溶融−凝固法
多微粒子は溶融−凝固法を用いて製造され、該方法は以下の3つの基本的工程:(1)結晶性薬剤及び担体を含む溶融混合物を形成する工程;(2) 該溶融混合物を噴霧して液滴を形成する工程;及び(3) 該液滴を凝固させて多微粒子を製造する工程、を含む。本発明者らは、溶融−凝固プロセス中に薬剤の好ましい結晶形態を維持するためには、溶融混合物中、又は溶融混合物が接する雰囲気及び/又は流体中、又は溶融混合物と溶融混合物の雰囲気との両方において存在する揮発性物質種の高活性を維持することが1つの鍵であることを見出した。好ましくは、溶融混合物及び/又は雰囲気中の揮発性物質種の活性は、薬剤の好ましい結晶形態中の揮発性物質種の活性に等しいか又はそれより高くなるように維持される。これにより、薬剤の結晶形態中に存在する揮発性物質種は、溶融混合物及び/又は雰囲気との平衡状態を維持し、従って薬剤の好ましい結晶形態から溶融混合物及び/又は雰囲気への揮発性物質種の喪失が防がれる。
【0023】
本明細書で使用される、結晶性薬剤中の揮発性物質種の「活性」とは、特定の状態における揮発性物質種の自由エネルギーの相対尺度であり、そして、結晶性薬剤中の揮発性物質種と平衡状態にある揮発性物質種の逸散性を、処理条件における純粋な揮発性物質種の逸散性で割った比に等しい。簡単な言葉では、活性とは、(i)純液体若しくは純固体の揮発性物質種の濃度、又は(ii)温度に応じて、純固体若しくは純液体の揮発性物質種と平衡状態にある揮発性物質種の蒸気圧、に正規化した揮発性物質種の濃度である。多くの場合、揮発性物質種の活性は、結晶性薬剤中の揮発性物質種と平衡状態にある揮発性物質種の分圧を、処理条件における揮発性物質種の飽和蒸気圧で割った比によって近似することができる。例えばLewis ら, Thermodynamics (1961)を参照されたい。
【0024】
処理条件における結晶性薬剤中の揮発性物質種の活性は、例えば以下のような動的蒸気収着試験により実験で決定することができる。揮発性物質種を含有する結晶性薬剤の試料を、溶融混合物の処理中に用いる温度及び絶対圧において、揮発性物質種で飽和した雰囲気を有するチャンバ内に入れる。試料をこの条件で平衡化し、そして次いで試料の重量を記録する。雰囲気中の温度及び絶対圧を維持しながら、チャンバ内の雰囲気中の揮発性物質種の分圧を下げ、結晶性薬剤の試料の重量をモニタリングする。チャンバ内の揮発性物質種の分圧が結晶性薬剤中の揮発性物質種の活性と等しいレベルよりも低下したときに、揮発性物質種が結晶構造から失われ、試料の重量は減少し始める。これらのデータから、処理条件における結晶性薬剤中の揮発性物質種の活性を決定することができる。当然ながら、このような評価に際して、結晶性薬剤構造の一部ではなくあらゆる揮発性物質種(例えば、薬剤結晶表面上に吸着又は液化された揮発性物質種)について明らかにするよう注意しなければならない。
【0025】
処理条件における結晶性薬剤中の揮発性物質種の活性を決定するもう1つの方法は、溶融混合物中に存在する揮発性物質種の量の関数として、薬剤の結晶状態の変化を測定することによるものである。結晶性薬剤、担体及び様々な量の揮発性物質種の一連のブレンドを調製し、そして密閉容器中に入れる。次いで、該容器を、多微粒子を製造するのに用いる処理温度に加熱し、そしてこの温度をある期間、例えば90分間維持する。この間、容器の雰囲気の試料、即ち容器の「ヘッドスペース」を採取し、そしてヘッドスペース中の揮発性物質種の分圧を標準的技術、例えばガスクロマトグラフィーを用いて測定することができる。次いで、容器を冷却し、そして各試料中の薬剤の好ましい結晶形態の濃度を後述の標準的技術を用いて決定することができる。次いで、試料中の薬剤の好ましい結晶形態の濃度を、ブレンド中に含まれる揮発性物質種の量に対して、又はヘッドスペース中に存在する揮発性物質種の濃度に対してプロットする。これらのデータから、処理条件における結晶性薬剤中の揮発性物質種の活性を決定することができる。
【0026】
試料及び多微粒子中の薬剤の好ましい結晶形態の量は、粉末X線回折(PXRD)分析を用いて決定することができる。1つの代表的手順において、PXRD分析は、Bruker AXS D8 Advance 回折計で行うことができる。この分析において、約500mgの試料をLucite試料カップ中にパックし、そしてガラス顕微鏡用スライドを用いて試料表面を平らにして、試料カップの上部と同じ高さの平らな試料表面とする。試料を速度30rpmでφ面(plane)において回転させて、結晶方位の影響を最小にする。X−線源(S/B KCuα, λ=1.54Å)を電圧45kV及び電流40mAで操作する。各試料についてのデータを、走査速度約1〜15秒/ステップで、及びステップサイズ0.02°/ステップで、連続検出器走査モードで約20〜60分にわたって回収する。回折グラムを、4°〜30°の2θ範囲にわたり回収する。
【0027】
試験試料の結晶化度は、結晶性薬剤と担体との物理的混合物から成る2又はそれ以上の校正基準と比較することにより決定される。各物理的混合物を、Turbulaミキサーで15分一緒にブレンドする。機器ソフトウェアを用いて、回折グラム曲線下の面積を、直線基線を用いて2θ範囲にわたり積分する。この積分範囲は、担体に関連するピークを除外する一方で、できる限り多くの薬剤特異的ピークを含む。回折グラム曲線下面積に対する百分率結晶性薬剤の一次校正曲線は、校正基準から作成される。次いで、試験試料の結晶化度を、これらの校正結果及び試験試料についての曲線下面積を用いて決定する。結果は、結晶質量による平均百分率薬剤結晶化度として報告される。
【0028】
上述のとおり、溶融混合物中及び/又は溶融混合物と接する雰囲気中の揮発性物質種の活性は、好ましくは、多微粒子製造中の薬剤の結晶形態における活性に等しいか又はそれより高い。結晶性薬剤からの揮発性物質種のあらゆる喪失を許容し得るレベルに保つために揮発性物質種を添加する際の好ましい量は、上記の試験から決定することができる。好ましくは、溶融混合物と接する任意雰囲気中の揮発性物質種の分圧は、結晶性薬剤試料の重量が減り始めるか又は結晶形態を変化させる時点の分圧に等しいか又はそれより大きい。
【0029】
しかしながら、好ましい結晶形態が好ましくない形態に変化する速度を低下させるためには、その形成中又は多微粒子を形成する液滴の形成中に、溶融混合物中又は溶融混合物と接する雰囲気中の揮発性物質種の活性を高めさえすればよい。溶融混合物又は当該雰囲気のいずれかに加えられる揮発性物質種の量は、溶融混合物中又は当該雰囲気中の活性が、結晶形態中の活性と等しくなるために必要な量より少なくてもよい。溶融混合物又は当該雰囲気中の揮発性物質種の活性が、たとえ薬剤の結晶形態における活性と等しくなかったとしても、該活性は、好ましい結晶形態の喪失を許容し得るレベルまで減らすのに十分に上昇し得る。
【0030】
好ましくは、多微粒子中の好ましい結晶形態の薬剤の量が、揮発性物質種を添加しない対照方法を用いて製造される多微粒子と比べて増加するように十分な量で、揮発性物質種を添加する。対照方法とは、結晶形態それ自体とは別に揮発性物質種を添加しない点以外は、多微粒子を製造するために使用される方法と同じものである。例えば、水和物を含む多微粒子を製造するために使用される方法において、ここでプロセス中に水が添加されるが、対照方法では、水は一切添加されない。
【0031】
溶融−凝固プロセス中に添加される揮発性物質種の量を評価するための1つの有用な手段は、結晶化度の相対的向上度、即ち、(1)対照方法を用いて製造された多微粒子中の好ましい結晶形態ではない薬剤の量、の(2)本発明の方法により製造された多微粒子中の好ましい結晶形態ではない薬剤の量、に対する比を決定することである。好ましい結晶形態ではない薬剤の量は、100wt%から好ましい結晶形態の薬剤の量を引いたものとして考えることができる。例えば、対照方法により製造された多微粒子中の好ましい結晶形態である薬剤の量が75wt%であり、そして本発明の方法により製造された多微粒子中の好ましい結晶形態である薬剤の量が80wt%である場合、結晶化度の相対的向上度は、(100wt%−75wt%) /(100wt%−80wt%)、即ち1.25である。
【0032】
溶融-凝固プロセス中に、結晶化度の相対的向上度が1より大きくなるように、好ましくは少なくとも1.1、より好ましくは少なくとも1.25、より好ましくは少なくとも1.5、更に好ましくは少なくとも2、そして最も好ましくは少なくとも3となるように、十分な追加量の揮発性物質種を溶融混合物中又は処理雰囲気中に添加する。
【0033】
一般に、添加される揮発性物質種の量は、薬剤の結晶形態の性質、溶融混合物中の賦形剤、及び処理条件に応じて決まる。揮発性物質種が処理雰囲気の1つに添加される場合、該揮発性物質種は、処理条件における当該雰囲気中の飽和蒸気圧の30%、50%、又は100%までの又はそれ以上の量で添加することができる。揮発性物質種が溶融混合物に添加される場合、該揮発性物質種は、処理条件における溶融混合物に対する揮発性物質種の溶解度の30%、50%、又は100%までの又はそれ以上の量で添加することができる。一部の結晶形態について、少量の揮発性物質種を添加して、得られる多微粒子における好ましい結晶形態の薬剤の許容し得るレベルを達成することができる。
【0034】
溶融混合物中及び/又は処理雰囲気中に存在する揮発性物質種の量は、多微粒子中の薬剤の少なくとも70wt%、より好ましくは少なくとも80wt%、そして更に好ましくは少なくとも90wt%が好ましい結晶形態であるように十分に多くなければならない。
【0035】
溶融−凝固法の第一工程は、薬剤と担体を混合して溶融混合物を形成することである。本明細書で使用される「溶融混合物」とは、混合物が液滴を形成できるか又は噴霧され得るように、混合物が十分に流動性になるように十分に加熱された担体中の実質的に結晶性の薬剤粒子の懸濁液を意味する。溶融混合物の噴霧は、下記の噴霧方法のいずれかを用いて実施することができる。一般的に、混合物は、圧力、剪断力又は遠心力のような1又はそれ以上の力に付されるときに、例えば遠心式又は回転ディスク式アトマイザに付されるときに流動性であるという意味で、溶融される。
【0036】
一般的に、混合物は、溶融混合物の粘度が約20,000cp未満、好ましくは約15,000 cp未満、そして最も好ましくは約10,000cp未満である場合、噴霧のためには十分に流動性である。しばしば、担体が十分に結晶性であって比較的はっきりした融点を有するならば、1又はそれ以上の担体成分の融点より高く混合物が加熱される場合に;又は担体成分が非晶質であるならば、1又はそれ以上の担体成分の軟化点より高く混合物が加熱される場合に、混合物は溶融する。このような場合、薬剤の一部は流動性の担体中に溶解し得、そして担体の一部は固体のまま残り得る。
【0037】
実際的には、溶融混合物を形成するために、あらゆる方法を使用することができる。1つの方法は、タンク中で担体を流動性になるまで加熱し、次いで薬剤を溶融担体に添加することを含む。一般的に、担体は、担体が流動性になる温度より約10℃又はそれ以上高い温度まで加熱される。1又はそれ以上の担体成分が結晶性である場合、この温度は、一般に、担体中で最も低い融点を有する物質の融点より約10℃又はそれ以上高いものである。担体が複数の担体の混合物を含む場合、又は選択的な(optional)賦形剤が担体と混合されている場合、担体は、組成物中の最も低い融点を有する賦形剤若しくは担体の融点より約10℃又はそれ以上高い温度まで加熱される。少なくとも一部の供給物が噴霧されるまで流動性であるように、方法を実施する。
【0038】
担体が流動性になると、薬剤は流動性担体又は「メルト」に添加されうる。用語「メルト」とは、一般的には結晶性物質の融点において起きる結晶状態から液体状態への遷移を具体的に意味し、そして用語「溶融物(molten)」とは一般的に流動性状態の結晶性物質を意味するが、本明細書において用いられる場合、これらの用語はより広い意味で使用される。「メルト」について、この用語は、任意の物質又は物質混合物が、流動性状態の結晶性物質と同様のやり方で押し出す(pumped)か又は噴霧することができるという意味で流動性になるように十分に加熱することを意味する。同様に、用語「溶融物」とは、このような流動性状態の任意の物質又は物質混合物を意味する。別法として、薬剤及び固形担体の両方をタンクに添加し、担体が流動性になるまで混合物を加熱してもよい。
【0039】
担体が溶融し、そして薬剤が添加されれば、供給混合物は混合されて薬剤の溶融混合物中への均質な分散を確実なものとする。混合は、一般的に機械的手段を用いて、例えばオーバーヘッド・ミキサー、磁気駆動式ミキサー及びスターバー、遊星式ミキサー、及びホモジナイザーを用いて行われる。場合により、タンクの内容物をタンクから押し出し、そしてインラインで、静的ミキサー又は押出機に通し、次いでタンクに戻すことができる。溶融混合物を混合するのに用いる剪断量は、薬剤が確実に溶融担体中に均質に分散されるように十分に高いものである。結晶状態に薬剤を維持することが望まれるため、剪断は、薬剤の形態が変化するほど高くなく、即ち非晶質薬剤の量の増加を引き起こすほど、又は薬剤の結晶形態の変化を引き起こすほど高くないことが好ましい。また、剪断は、薬剤結晶の粒子サイズを低下させるほど高くないことが好ましい。溶融混合物は数分から数時間混合することができ、混合時間は、溶融混合物の粘度、並びに薬剤及び担体中の任意選択的な賦形剤の溶解性に依存する。
【0040】
このようなタンク系を用いて溶融混合物を調製する場合、溶融混合物中の揮発性物質種の活性を十分に高くして、薬剤結晶中の揮発性物質種が溶融混合物中への溶出により放出されないようにすることにより、薬剤を最初の結晶形態に維持することができる。これは、追加量の揮発性物質種を、溶融混合物に又は結晶性薬剤に又はその両方に添加して、溶融混合物中の揮発性物質種の活性を高めることにより達成することができる。例えば、薬剤の結晶形態が水和物である場合、結晶性水和物は、乾燥溶融担体と接するならば、別の結晶形態に変化し得る。結晶性水和物が水和水の喪失により別の結晶形態に変化しないようにする1つの方法は、溶融供給物に少量の水を添加して、結晶性水和物形態の喪失を防ぐのに十分な水の存在を確保することである。
【0041】
1つの実施態様において、溶融混合物は、第一雰囲気と接している。第一雰囲気は、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素等であってよい。このような場合、追加量の揮発性物質種をこの第一雰囲気に添加することによって、薬剤結晶中の揮発性物質種が蒸発により第一雰囲気中に移動しないように、第一雰囲気中の揮発性物質種の活性を十分に高くすることができる。また、追加量の揮発性物質種を第一雰囲気中に添加することは、溶融混合物中の揮発性物質種の高活性の維持を助け、薬剤結晶からの揮発性物質種の喪失を制限する。
【0042】
別法として、揮発性物質種が水以外の溶媒である場合、追加の溶媒を当該雰囲気及び/又は溶融混合物に添加する。揮発性物質種が対イオンである場合、気相形態の揮発性物質種を、処理雰囲気に添加することができる。例えば、対イオンが塩化物イオンである場合、当該雰囲気はHClを含んでいてよい。あるいは、対イオンのイオン形態を、溶液形態で添加することができる。例えば、HCl水溶液を溶融混合物に添加することができる。
【0043】
薬剤の安定な結晶形態からより不安定な形態への望まれない転換の具体例として、本発明者らは、溶融-凝固法における溶融混合物の形成中に、最も安定な結晶性アジスロマイシン二水和物が乾燥溶融担体及び第一雰囲気と接する場合に、しばしば他のより不安定なアジスロマイシンの結晶形態、例えば一水和物に変化することを発見した。結晶性アジスロマイシン二水和物が、水和水の喪失によって別のより不安定な結晶形態に変化しないようにするための1つの方法は、例えば混合中に混合タンクのヘッドスペースを加湿することにより、第一雰囲気を加湿することである。別法として、少量の水(処理温度における溶融混合物中の水の溶解度のおよそ30〜100wt%)を混合物に添加して、十分な水の存在を確保し、アジスロマイシン二水和物結晶形態の喪失を最小にすることができる。別法として、水をタンクのヘッドスペース及び溶融混合物の両方に添加してもよい。
【0044】
溶融混合物の別の調製方法は、2つのタンクを使用し、1つのタンク中で第一の賦形剤を溶融し、そして第二の賦形剤をもう1つのタンク中で溶融することである。薬剤をタンクの一方に添加し、そして上述のように混合する。タンク中の揮発性物質種の活性に関する同様の事前注意が、このようなデュアル・タンク系について払われるべきである。次いで、2つのメルトが、インライン静的ミキサー又は押出機を通して押し出され、以下の噴霧プロセスに向けられて単一の溶融混合物を製造する。このようなデュアル系は、賦形剤のうちの1つが薬剤と反応する場合、又は賦形剤同士が反応性である場合、例えば1つの賦形剤が架橋剤であり、これが第二の賦形剤と反応して架橋された多微粒子を製造する場合に有利である。後者の例は、賦形剤としてのアルギン酸とイオン性架橋剤との使用である。
【0045】
溶融混合物を調製するために使用することができるもう1つの方法は、連続撹拌タンク系を使用するものである。この系において、薬剤及び担体は、連続撹拌手段を備えている加熱されたタンクに連続的に添加され、一方で、溶融混合物は連続的に該タンクから排出される。タンクの内容物は加熱され、それによって、その内容物の温度は混合物が流動性になる温度より約10℃又はそれ以上高くなる。薬剤及び担体は、タンクから排出される溶融混合物が所望の組成を有するような比で添加される。薬剤は、典型的には固体形態で添加し、そしてタンクに添加する前に予め加熱してもよい。薬剤は、揮発性物質種が結晶形態から失なわれ、そして結果として該結晶形態が別の結晶形態又は非晶形に変化することを防ぐのに十分に高い揮発性物質種活性を有する条件下で加熱すべきである。担体もまた、連続撹拌タンク系に添加する前に予め加熱しても、又は溶融してもよい。担体中及び溶融混合物と接するタンクの第一雰囲気中の揮発性物質種の高活性を維持して、薬剤の結晶形態を維持することに常に注意しながら、多種多様な混合方法を、このような系、例えば上述の系と共に使用することができる。
【0046】
溶融混合物を形成する特に好ましい方法は、押出機によるものである。「押出機」とは、熱及び/又は剪断力により溶融押出物を生成する、及び/又は固体及び/又は液体(例えば溶融した)供給物から均質に混合された押出物を製造する、デバイス又はデバイス・コレクションを意味する。このようなデバイスとしては、単軸スクリュー式押出機;二軸スクリュー式押出機、例えば同方向回転型、逆方向回転型、かみ合い型及び非かみ合い型押出機;多軸スクリュー式押出機;加熱されたシリンダー及び溶融供給物を押し出すためのピストンから成るラム押出機;溶融供給物の加熱及び押し出しを同時に行う加熱ギヤ・ポンプ、一般的には逆回転型のものから成るギヤ・ポンプ押出機;及びコンベヤ押出機が挙げられるが、これらに限定されない。コンベヤ押出機は、固体及び/又は粉末状供給物を移送するためのコンベヤ手段、例えばスクリュー式コンベヤ又はニューマチック・コンベヤ、及びポンプを含む。コンベヤ手段の少なくとも一部は、溶融混合物を製造するのに十分に高い温度まで加熱される。溶融混合物は、場合により、溶融混合物をアトマイザに送るポンプに送られる前に蓄積タンクに送られてもよい。場合により、インライン・ミキサーをポンプの前又は後に使用して、溶融混合物が実質的に均質になるようにしてもよい。これらの押出機のそれぞれにおいて、溶融混合物を混合して均質に混合された押出物を形成する。このような混合は、種々の機械的及び加工手段、例えば混合要素、混練要素及び逆流による剪断混合により達成することができる。従って、このようなデバイスにおいて、組成物が押出機に供給され、これによりアトマイザに送ることができる溶融混合物が製造される。
【0047】
1つの実施態様において、組成物は固体粉末、固体粒子又は固体顆粒の形態で押出機に供給される。固体供給物は、内容物が十分に均質である粉末混合物を得るための当業者に周知の方法を用いて調製することができる。Remington's Pharmaceutical Sciences (第16版. 1980)を参照されたい。本発明を好ましく実施するための本質的な特徴ではないが、一般的には、薬剤及び担体の粒子サイズを同じくらいにして、均質なブレンドを得ることが好ましい。
【0048】
ブレンドの調製方法の例は以下のとおりである。必要ならば、担体を最初に粉砕してその粒子サイズを薬剤とほぼ等しくし;次いで、薬剤及び担体をV−ブレンダー中で20分間ブレンドし;次いで、得られたブレンドの塊を砕いて大きな粒子を除き、そして最後に更に4分間ブレンドする。場合によっては、材料の多くがワックス状物質である傾向があり、粉砕プロセス中に生じる熱で粉砕装置をベトベトにすることがあり得るため、担体を粉砕して所望の粒子サイズにすることは困難である。このような場合、下記のような溶融−凝固法又は噴霧-凝固法を用いて、担体の小粒子を形成することができる。次いで、得られる担体の凝固粒子を薬剤とブレンドして、押出機に送る供給物を製造することができる。
【0049】
押出機に送る供給物を製造するためのもう1つの方法は、タンク系について上述したようにタンク中で担体を溶融し、薬剤中で混合し、次いで溶融混合物を冷却し、凝固した薬剤及び担体の混合物を製造するものである。次いで、この凝固した混合物を均質な粒子サイズに粉砕し、そして押出機に供給することができる。
【0050】
2−供給(two-feed)押出機系もまた、溶融混合物を製造するために使用することができる。この系において、担体及び結晶性薬剤は、典型的には共に粉末形態であり、同じか又は異なる供給口を通って押出機に供給される。この方法においては、成分をブレンドする必要がなくなる。
【0051】
別法として、固体形態の担体を第一の送達口から押出機に供給して、押出機が担体を溶融してもよい。次いで、薬剤を、押出機長さの途中に位置する第二の供給送達口から溶融担体に添加し、薬剤と溶融担体との接触時間を短くする。第二の供給送達口が押出機の出口に近いほど、薬剤の押出機中の滞留時間が短くなる。担体が1より多くの賦形剤を含む場合、複数−供給(multiple-feed)押出機を使用することができる。
【0052】
別の代表的方法において、組成物は、押出機に供給されるときに、より大きな固体粒子、又は粉末というよりもむしろ固体塊の形態である。例えば、凝固した混合物を上述のように調製し、次いでラム押出機のシリンダーに合うように成形し、そして粉砕することなく直接使用することができる。
【0053】
別の方法において、担体を最初に例えばタンク中で溶融し、そして溶融形態で押出機に供給することができる。次いで、典型的には粉末形態である結晶性薬剤を、担体を押出機に供給するのに用いた送達口と同じか又は異なる送達口から押出機に導入することができる。この系は、担体の溶融工程を混合工程から分離し、薬剤と溶融担体との接触時間を短くするという利点を有する。
【0054】
上記方法のそれぞれにおいて、押出機は、担体中に分散した薬剤結晶を含む溶融供給物を製造するように設計される。一般的に、押出物の温度は、薬剤/担体混合物が流動性になる温度より約10℃又はそれ以上高い。担体が単一の結晶性物質である場合、この温度は、典型的には担体の融点より約10℃又はそれ以上高いものである。押出機中の様々な領域は、当業界周知の方法を用いて、所望の押出物の温度及び所望の混合度又は剪断度を得るために適切な温度に加熱される。機械的混合について上述したように、十分な剪断を用いて実質的に均質な溶融混合物を製造するが;しかしながら、剪断は薬剤の結晶形態が変化するか又は非晶質薬剤が形成されるほど高いものであってはならない。
【0055】
他の方法について上述したように、溶融混合物中の揮発性物質種の高活性を維持して、薬剤の結晶形態からの揮発性物質種の喪失を許容し得るレベルに限定することが好ましい。これは、(i)揮発性物質種を押出供給物に添加することにより、又は(ii)制御された量の揮発性物質種を別の供給送達口中に計り入れることによって揮発性物質種を直接押出機中に投入することにより、又は(iii) (i)及び(ii)の両方により、達成することができる。いずれの場合においても、十分な量の揮発性物質種を添加して、揮発性物質種の活性を十分に高くして結晶性薬剤の好ましい形態を維持するべきである。
【0056】
例えば、薬剤が結晶性水和形態である場合、薬剤と接する任意の物質の水の活性を、30%〜100%の相対湿度(RH)範囲に維持することが好ましい。これは、溶融混合物中の水の濃度を、最大処理温度における溶融混合物中の水の溶解度が30%〜100%であるようにすることにより、達成することができる。場合によっては、100%水溶解限度よりも僅かに過剰量の水を、混合物に添加してもよい。
【0057】
溶融混合物が形成されれば、この溶融供給物はこれを粉砕して小滴にするアトマイザに送達される。実際的に、溶融混合物をアトマイザに送達するためのあらゆる方法を使用することができ、例えばポンプ及び様々なタイプのニューマチック・デバイス、例えば加圧容器又はピストン・ポットを使用することができる。押出機を用いて溶融混合物を形成する場合、押出機自体を用いて溶融混合物をアトマイザに送達することができる。典型的には、溶融混合物をアトマイザに送達する間、溶融混合物を高温に維持して該混合物の凝固を防ぎ、そして溶融混合物を流動性に保つ。
【0058】
一般的には、噴霧は幾つかの方法のうちの1つで行われ、例えば(1)「圧力」又は1流体ノズルにより;(2)2流体ノズルにより;(3)遠心式アトマイザ又は回転ディスク式アトマイザにより;(4)超音波ノズルにより;及び(5)機械的振動ノズルにより行われる。噴霧プロセスの詳細な説明は、Lefebvre, Atomization and Sprays (1989)又はPerry's Chemical Engineers' Handbook (第7版 1997)において見ることができる。
【0059】
一般的に高圧で溶融混合物をオリフィスに送達する圧力ノズルには、多くのタイプ及びデザインが存在する。溶融混合物は、フィラメントとして又はフィラメントに分かれる薄板としてオリフィスから出て、これは次いで液滴に分かれる。動作圧は、溶融供給物の粘度、オリフィスサイズ及び所望の多微粒子サイズに応じて、1barg〜70bargの圧力ノズル範囲で低下する。
【0060】
2流体ノズルにおいて、溶融混合物は高速で流れるガス流、典型的には空気流又は窒素流に暴露される。内部混合構造において、溶融混合物及びガスは、ノズル・オリフィスから放出される前にノズル内部で混合される。外部混合構造において、高速のガスがノズルの外部で溶融混合物と接触する。このような2流体ノズルを通るガスの圧力低下は、典型的には0.5barg〜10bargの範囲である。このような2流体ノズルに使用されるガス中の揮発性物質種の活性を高く維持して、薬剤の好ましい結晶形態の喪失を許容し得るレベルに維持することができる。
【0061】
ロータリーアトマイザ又は回転ディスク式アトマイザとしても知られる遠心式アトマイザにおいて、溶融混合物は回転面上に供給され、ここで遠心力によって展開される。回転面は幾つかの形態をとることができ、例えばフラットディスク、カップ、羽根付きディスク、及びスロット・ホイールが挙げられる。また、ディスク表面を加熱して多微粒子の形成を補助することもできる。ディスクへの溶融混合物の流量、ディスクの回転速度、ディスクの直径、供給物の粘度、並びに供給物の表面張力及び濃度に応じて、フラットディスク及びカップ遠心式アトマイザについて幾つかの噴霧機構が観察される。低い流速において、溶融混合物はディスク表面上に展開し、そしてディスクの端部に達したときに離散液滴を形成し、これは次いでディスクから振り飛ばされる。ディスクへの溶融混合物の流量が増加するにつれて、混合物は離散液滴としてよりもむしろフィラメントとしてディスクから離れるようになる。次いで、フィラメントはかなり均質なサイズの液滴に分かれる。更に高い流速においては、溶融混合物は連続した薄板としてディスク端部から離れ、これは次いで不規則なサイズのフィラメント及び液滴に分離する。多微粒子の所望のサイズに応じて、回転面の直径は一般的に2cm〜50cmの範囲であり、そして回転速度の範囲は500rpmから100,000rpmもの速さに至る。
【0062】
超音波ノズルにおいて、溶融混合物はトランスデューサ及びホーンを介して供給され、該トランスデューサ及びホーンは超音波周波数において振動し、溶融混合物を噴霧して小滴にする。機械的振動ノズルでは、溶融混合物は制御された振動数において振動している、針を介して供給され溶融混合物を噴霧して小滴にする。いずれの場合でも、製造される粒子サイズは、液体の流速、超音波周波数又は振動周波数、及びオリフィス直径により決定される。
【0063】
好ましい実施態様において、アトマイザは遠心式又は回転ディスク式アトマイザ、例えばNiro A/S (Soeborg, Denmark)製のFX1 100-mmロータリーアトマイザである。
【0064】
薬剤及び担体を含む溶融混合物は、上述のように噴霧プロセスに送達される。好ましくは、溶融混合物は、凝固する少なくとも5秒前、より好ましくは少なくとも10秒前、そしてより好ましくは少なくとも15秒前に溶融し、これによって結晶性薬剤は担体中に実質的に均質に分散される。また好ましくは、薬剤が溶融混合物に曝される時間を制限するために、溶融混合物が溶融状態で維持されるのは約20分以下、より好ましくは15分以下、そして最も好ましくは10分以下である。押出機を用いて溶融混合物を製造する場合、上記の時間は、物質を押出機に導入したときから溶融混合物が凝固するときまでの平均時間を意味する。このような平均時間は、当業者に周知の方法により決定することができる。1つの代表的方法において、公称条件下での押出機の動作中に、少量の染料又は他の同様の化合物が供給物に添加される。次いで、凝固した多微粒子を経時的に回収し、そして染料について分析し、これから平均時間が決定される。
【0065】
1つの実施態様において、噴霧プロセス中に溶融混合物の液滴が第二雰囲気と接触する。第二雰囲気は空気、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素等であってよい。このような場合、追加量の揮発性物質種をこの第二雰囲気に添加して、薬剤結晶中の揮発性物質種が蒸発により第二雰囲気中に移動しないように、該雰囲気中の揮発性物質種の活性を十分に高くすることができる。
【0066】
溶融混合物が噴霧されるや、典型的には液滴の凝固温度より低い温度の凝固媒体、例えばガス又は液体と接触させることにより、液滴が凝固する。典型的には、液滴を約60秒未満、好ましくは約10秒未満、より好ましくは約1秒未満に凝固させるのが好ましい。凝固工程はしばしば、多微粒子の回収を簡単にするために密閉空間で行われる。冷却ガス又は液体はしばしば、一定の凝固温度を維持するために密閉空間中に導入される。
【0067】
薬剤の結晶形態を維持し、そして揮発性物質種の喪失及び他の結晶形態への変化を防ぐために、上述のように、凝固媒体中の揮発性物質種の活性を高く維持して、揮発性物質種の喪失を避けるべきである。例えば、結晶形態が水和物である場合、凝固媒体の湿度は30% RH又はそれ以上に維持して、薬剤の水和物結晶形態を維持するべきである。
【0068】
別の実施態様において、多微粒子は、(a)処理温度Tで少なくとも0.01気圧の蒸気圧を有する揮発性物質種を含む結晶形態で存在することができる薬剤を用意し;(b)同じ温度Tで薬剤及び担体を含む溶融混合物を形成させ;(c)該溶融混合物から液滴を形成させ;(d)凝固媒体中で液滴を凝固させて、薬剤及び担体を含む多微粒子を製造し;及び(e) 工程(b)、(c)及び(d)の少なくとも1工程において揮発性物質種の或る量を添加する工程、を含む溶融−凝固法を用いて製造される。薬剤は最初に、(1)結晶性薬剤形態、(2)結晶性薬剤形態の混合物、(3)非晶質薬剤、又は(4)(1)、(2)若しくは(3)の任意の組み合わせ、として存在するものであってよい。工程(e)で添加される揮発性物質種の量は、薬剤結晶化度の相対的向上度が、対照方法を使用して製造される多微粒子と比べて少なくとも1.1となるのに十分な量である。対照方法とは、揮発性物質種を添加しない点以外は上述の方法と本質的に同じものである。溶融混合物を形成するために使用する薬剤は、所望の結晶形態のものである必要はなく、任意の形態、例えば他の結晶形態、非晶質薬剤又は結晶性及び非晶質薬剤の混合物であってよい。好ましい実施態様において、溶融混合物を形成するために使用する薬剤の少なくとも一部は、所望の結晶形態で存在する。多微粒子を製造するプロセス中に揮発性物質種を添加することにより、揮発性物質種の添加を行わないプロセスと比べて、所望の結晶形態の多微粒子で存在する薬剤の量が増加する。
【0069】
溶融−凝固法の更なる詳細は、2003年12月4日に出願された、同一出願人による米国特許出願番号60/527244(「Improved Azithromycin Multiparticulate Dosage Forms by Melt-Congeal processes」代理人整理番号PC25015)及び60/527315(「Extrusion Process for Forming Chemically Stable Drug Multiparticulates」代理人整理番号PC25122)において、より詳細に開示されている。
【0070】
担体
多微粒子は、医薬として許容し得る担体を含む。「医薬として許容し得る」とは、担体が組成物中の他の成分と適合性でなければならず、そして患者にとって有害であってはならないことを意味する。担体は、多微粒子のマトリックスとして機能し、そして多微粒子からの薬剤の放出速度に影響を与える。担体は、単一の物質であるか、又は2又はそれ以上の物質の混合物である。
【0071】
担体は、一般的に多微粒子の全質量に基づいて多微粒子の約10wt%〜約95wt%、好ましくは多微粒子の約20wt%〜約90wt%、及びより好ましくは多微粒子の約40wt%〜約70wt%を占める。担体は、好ましくは約40℃の温度で固体である。本発明者らは、担体が40℃で固体ではない場合は、時間と共に、特に高温(例えば40℃)で保存するときに、組成物の物理特性が変化し得ることを見出した。好ましくは、担体は約50℃、より好ましくは約60℃の温度で固体である。また、担体が溶融するか又は流動性になる温度は、高すぎないことが好ましい。好ましくは、担体の融点は約200℃を越えず、又は薬剤の融点を越えず、このどちらよりも低い。多微粒子の製造プロセス中の過度に高い処理温度において、担体中の薬剤の溶解性が高くなることがあり、これにより溶融混合物中に溶解する薬剤の割合が高くなり、これにより得られる多微粒子中に非晶質薬剤が形成される。従って、担体の融点は、約180℃を越えず、より好ましくは約150℃を越えず、そして最も好ましくは約130℃を越えないことが好ましい。
【0072】
本発明の多微粒子において使用するのに好適な担体の例としては、ワックス、例えば合成ワックス、微結晶性ワックス、パラフィン蝋、カルナウバワックス及び蜜蝋;グリセリド、例えばモノオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、パルミトステアリン酸グリセリン、ポリエトキシル化ヒマシ油誘導体、硬化植物油、モノ−、ジ−又はトリベヘン酸グリセリン、トリステアリン酸グリセリン、トリパルミチン酸グリセリン;長鎖アルコール、例えばステアリル・アルコール、セチルアルコール及びポリエチレングリコール;及びこれらの混合物が挙げられる。
【0073】
任意的賦形剤
多微粒子は、多微粒子の形成を助けるために、又は多微粒子からのアジスロマイシンの放出速度に影響を与えるために、又は当業者に既知の他の目的のために、場合により賦形剤を含んでよい。
【0074】
多微粒子は、場合により溶解促進剤を含んでよい。溶解促進剤は、担体からの薬剤の溶解速度を増加させる。一般に、溶解促進剤は両親媒性化合物であり、そして一般には担体より親水性である。溶解促進剤は一般に、多微粒子の全質量の約0.1〜約30wt%を占める。代表的な溶解促進剤としては、アルコール、例えばステアリル・アルコール、セチルアルコール及びポリエチレングリコール;界面活性剤、例えばポロキサマー(poloxamer)(例えばポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338及びポロキサマー407)、ドキュセート塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリソルベート、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ラウリル硫酸ナトリウム及びソルビタンモノエステル;糖類、例えばグルコース、スクロース、キシリトール、ソルビトール及びマルチトール;塩類、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム及びリン酸カリウム;アミノ酸、例えばアラニン及びグリシン;及びこれらの混合物が挙げられる。好ましくは溶解促進剤は界面活性剤であり、そしてより好ましくは溶解促進剤はポロキサマーである。
【0075】
場合により多微粒子中に含まれ得る賦形剤の別の有用なクラスとしては、溶融混合物の粘度を調節して多微粒子を形成するために使用される物質が挙げられる。溶融混合物の粘度は、狭い粒子サイズ分布を有する多微粒子を得るのに重要な変数である。粘度調節賦形剤は一般的に、多微粒子の全質量に基づき、多微粒子の0〜25wt%を占める。一般的に、回転ディスク溶融−凝固法を用いる場合、溶融混合物の粘度は少なくとも約1cp且つ約10,000cp未満、より好ましくは少なくとも50cp且つ約1000cp未満であることが好ましい。溶融混合物の粘度がこの好ましい範囲外である場合、粘度調節賦形剤を添加して溶融混合物の粘度を好ましい範囲内にすることができる。粘度低下賦形剤の例としては、ステアリル・アルコール、セチルアルコール、低分子量ポリエチレングリコール(約1000ダルトン未満)、イソプロピルアルコール及び水が挙げられる。粘度増強賦形剤の例としては、微結晶性ワックス、パラフィン蝋、合成ワックス、高分子量ポリエチレングリコール(約5000ダルトン以上)、コロイド状二酸化ケイ素、ケイ酸マグネシウム、糖類及び塩類が挙げられる。
【0076】
多微粒子の放出特性を調節するために又は加工を改良するためにその他の賦形剤を添加してもよく、そして該賦形剤は典型的には、多微粒子の全質量に基づき、多微粒子の0〜50wt%を占める。例えば、酸又は塩基を用いて、薬剤及びその他の賦形剤の性質に応じて薬剤の放出を遅くするか又は速めることもできる。組成物中に含めることができる塩基の例としては、二塩基性及び三塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性及び三塩基性リン酸カルシウム、モノ−、ジ−及びトリ−エタノールアミン、重炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム二水和物、アミン−官能化メタクリル酸ポリマー及びコポリマー、例えばRohm GmbH製EUDRAGIT E100 、及び当業者に既知の様々な水和形態及び無水形態を含む他の酸化物、水酸化物、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩及びクエン酸塩が挙げられる。
【0077】
更に他の賦形剤を添加して、多微粒子の静電荷を減少させることができる。このような帯電防止剤の例としては、タルク及びコロイド状二酸化ケイ素が挙げられる。
【0078】
矯味矯臭剤、着色剤及びその他の賦形剤もまた、その一般的な目的のために通常の量で添加することができる。
【0079】
1つの実施態様において、担体及び1又はそれ以上の任意的賦形剤は固溶体を形成し、これは即ち、担体及び1又はそれ以上の選択的賦形剤が、単一の熱力学的に安定な相を形成することを意味する。このような場合、担体/賦形剤混合物が約40℃までの温度で固体であるならば、約40℃未満の温度で固体ではない賦形剤を使用することができる。これは、使用する賦形剤の融点及び組成物中に含まれる担体の相対量に依存する。一般的に、賦形剤の融点が高いほど、40℃で固相である担体を維持しながら組成物に添加することができる低融点賦形剤の量は多くなる。
【0080】
別の実施態様において、担体及び1又はそれ以上の任意的賦形剤は固溶体を形成せず、これは即ち、担体及び1又はそれ以上の選択的賦形剤が、2又はそれ以上の熱力学的に安定な相を形成することを意味する。このような場合、担体/賦形剤混合物は多微粒子を形成するために用いる処理温度において完全に溶融しているか、又は1つの物質が固体でありその他の物質が溶融しており、これにより溶融混合物中に該1つの物質が懸濁した懸濁液が得られる。
【0081】
担体及び1又はそれ以上の任意的賦形剤が固溶体を形成しないが、例えば特定の制御-放出特性を得るために固溶体の形成が望まれる場合、第三の賦形剤を組成物中に含ませて、担体、1又はそれ以上の選択的賦形剤及び第三の賦形剤を含有する固溶体を製造することができる。例えば、微結晶性ワックス及びポロキサマーを含有する担体を使用して、所望の放出特性を有する多微粒子を得ることが好ましい場合がある。このような場合、一つには微結晶性ワックスの疎水性及びポロキサマーの親水性が原因で固溶体が形成されない。組成に少量の第三の成分、例えばステアリル・アルコールを含ませることにより、所望の放出特性を有する多微粒子を与える固溶体を得ることができる。
【0082】
薬剤の溶融担体中の溶解度は低いことが好ましく、ここで溶解度は、溶融混合物を形成する処理条件下で、担体中に溶解した薬剤の質量を、担体及び溶解した薬剤の全質量で割ったものとして定義される。溶解度が低いことにより、多微粒子製造プロセス中の非晶質薬剤の形成が最小限に抑えられる。好ましくは、担体中の薬剤の溶解度は、約20wt%未満、より好ましくは約10wt%未満、及び更に好ましくは約5wt%未満である。溶融担体中の薬剤の溶解度は、結晶性薬剤を溶融担体の試料にゆっくりと添加し、そして薬剤が溶融担体の試料中にそれ以上溶解しなくなる点を視覚的に又は光散乱のような定量的分析技術を用いて決定することにより、測定することができる。別法として、過剰量の結晶性薬剤を溶融担体の試料に添加して、懸濁液を形成してもよい。次いで、この懸濁液を濾過するか又は遠心分離機で分離して、溶解していない結晶性薬剤を全て除去し、そして液相中に溶解した薬剤の量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のような標準的定量技術を用いて測定することができる。これらの試験を実施する場合、上述のように、薬剤を暴露した担体、雰囲気又はガス中の揮発性物質種の活性を十分に高く維持して、薬剤の結晶形態が試験中に変化しないようにするべきである。
【0083】
1つの態様において、多微粒子は「非分散マトリックス」の形態であり、即ち担体の少なくとも一部は、多微粒子が水性使用環境に導入された後に溶解又は分散しない。このような場合、薬剤及び選択的な1又はそれ以上の担体、例えば溶解促進剤は、溶解により多微粒子から放出される。担体の少なくとも一部は溶解又は分散せず、そして使用環境がインビボである場合は排出されるか、又は使用環境がインビトロである場合は試験溶液中に懸濁したまま残る。この態様において、水性使用環境中の担体の溶解度は低いことが好ましい。好ましくは、水性使用環境中の担体の溶解度は、約1mg/mL未満、より好ましくは約0.1mg/mL未満、及びより好ましくは約0.01mg/mL未満である。好適な低溶解性担体の例としては、ワックス、例えば合成ワックス、微結晶性ワックス、パラフィン蝋、カルナウバワックス及び蜜蝋;グリセリド、例えばモノオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、パルミトステアリン酸グリセリン、モノ−、ジ−又はトリベヘン酸グリセリン、トリステアリン酸グリセリン、トリパルミチン酸グリセリン;及びこれらの混合物が挙げられる。
【0084】
1つの実施態様において、多微粒子は、多微粒子の全質量に基づき、約20〜約75wt%の薬剤、約25〜約80wt%の担体、及び約0.1〜約30wt%の溶解促進剤を含有する。
【0085】
好ましい実施態様において、多微粒子は、約35wt%〜約55wt%の薬剤;ワックス、例えば合成ワックス、微結晶性ワックス、パラフィン蝋、カルナウバワックス及び蜜蝋;グリセリド、例えばモノオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、パルミトステアリン酸グリセリン、ポリエトキシル化ヒマシ油誘導体、硬化植物油、モノ−、ジ−又はトリベヘン酸グリセリン、トリステアリン酸グリセリン、トリパルミチン酸グリセリン;及びこれらの混合物から選択される約40wt%〜約65wt% の賦形剤;並びに、界面活性剤、例えばポロキサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリソルベート、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ラウリル硫酸ナトリウム及びソルビタンモノエステル;アルコール、例えばステアリル・アルコール、セチルアルコール及びポリエチレングリコール;糖類、例えばグルコース、スクロース、キシリトール、ソルビトール及びマルチトール;塩類、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム及びリン酸カリウム;アミノ酸、例えばアラニン及びグリシン;及びこれらの混合物から選択される約0.1wt%〜約15wt%の溶解促進剤を含有する。
【0086】
別の実施態様において、本発明の方法により製造した多微粒子は、(a)結晶性薬剤;(b)少なくとも16個の炭素原子からなる少なくとも1個のアルキレート置換基を有するグリセリド担体;及び(c)ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(ポロキサマー)を含有する。多微粒子中の薬剤の少なくとも70wt%は結晶質である。これらの特定の担体賦形剤の選択は、薬剤の放出速度を広い範囲にわたって正確に制御することができる。グリセリド担体及びポロキサマーの相対量の僅かな変化は、薬剤の放出速度を大幅に変化させる。これにより、薬剤、グリセリド担体及びポロキサマーの比を適切に選択することによって、多微粒子からの薬剤の放出速度を正確に制御することができる。これらのマトリックス物質は、多微粒子からのほぼ全ての薬剤を放出させるという更なる利点を有する。このような多微粒子は、2003年12月4日に出願された、同一出願人による米国特許出願番号60/527329(「Multiparticulate Crystalline Drug Compositions Having Controlled Release Profiles」代理人整理番号PC25020)において、より詳細に開示されている。
【0087】
投薬形態
多微粒子は、投薬形態中の粒子質量を簡単に計量して動物の体重に適合させることにより、治療を必要とする個々の動物の体重に基づく投薬形態の計量における使用に従う。多微粒子は、いずれかの既知の投薬形態、例えば:乾燥状態で又は水若しくは他の液体を添加することにより再構成してペースト、スラリー、懸濁液若しくは液体を形成させた状態で経口摂取することができる粉剤又は顆粒剤;錠剤;カプセル剤;単位用量パケット(これは当業界では「サッシェ」又は「構成用経口粉剤(OPC)」と呼ばれることもある);及び丸剤で投与することができる。種々の添加剤を、本発明の組成物と混合するか、一緒に粉末にするか又は粒状にして、上記の投薬形態に適切な物質を形成することができる。
【0088】
本発明の方法により製造された多微粒子は、使用環境中に導入した後の薬剤の放出を制御するように設計される。本明細書で使用される「使用環境」とは、例えば哺乳動物及び特にヒトのような動物の胃腸管内、皮下、鼻腔内、舌下、髄腔内、眼内、耳内、皮下、膣管内、動脈及び静脈血管内、肺管内若しくは筋組織内のインビボ環境;又は、例えば擬似胃液緩衝液(GB)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液、若しくはモデル絶食十二指腸(MFD)溶液のような試験溶液のインビトロ環境のいずれかであってよい。
【0089】
多微粒子はまた、多微粒子の薬剤結晶化度及び/又は安定性を改良するように後処理を行ってもよい。1つの実施態様において、多微粒子は、薬剤及び少なくとも1つの担体を含有し、該担体の融点はTm℃であり;該多微粒子を、(i)多微粒子を少なくとも約35℃及び約(Tm℃−10℃)未満の温度に加熱すること、及び(ii)多微粒子を流動性向上剤に暴露すること、の少なくとも1つの処理に付す。この後処理工程により、多微粒子の薬剤結晶化度が高まり、そして典型的には多微粒子の化学安定性、物理学的安定性及び溶出安定性の少なくとも1つが改良される。後処理方法は、2003年12月4日に出願された、同一出願人による米国特許出願番号60/527245(「Multiparticulate Compositions with Improved Stability」代理人整理番号PC11900)において、より詳細に開示されている。
【0090】
本発明はまた、本発明の方法により製造された薬剤含有多微粒子を含む治療有効量の医薬組成物を治療の必要な患者に投与することによる、該患者の治療方法を提供する。用語「患者」とは、哺乳動物及びヒトを含む全ての種類の動物を包含するものとする。投与される薬剤の量は、治療する疾患又は状態の重篤度及び患者の大きさ及び年齢といった因子を考慮に入れて、当業者に周知の原理に従って必然的に変化する。一般に、薬剤は、有効量が送達されるように投与されるべきであり、該有効量は、その薬剤について既知の安全且つ有効な投与範囲から決定される。
【0091】
本発明のその他の特徴及び実施態様は以下の実施例から明らかとなるが、これらの実施例は本発明の意図する範囲を限定するためのものではなく、本発明を説明するためのものである。
【実施例】
【0092】
実施例1
溶融−凝固法による多微粒子の形成中にアジスロマイシンの二水和物形態を維持するために必要な水の量は、次のように決定した。多微粒子の組成は、50wt%のアジスロマイシン二水和物、46wt%のマトリックス賦形剤COMPRITOL 888 ATO (Gattefosse Corporation(Paramus, N.J.)製の13〜21wt%モノベヘン酸グリセリン、40〜60wt%ジベヘン酸グリセリン及び約35wt%トリベヘン酸グリセリンの混合物)、及び4wt%のポロキサマー溶解促進剤PLURONIC F127 (BASF Corporation(Mt. Olive, N.J.)製のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)であった。様々な量の水を含むこれらの材料の混合物を調製し、そしてPXRDにより分析した。
【0093】
各混合物を形成するために、アジスロマイシン二水和物(100g)、COMPRITOL 888 ATO(92g)、及びPLURONIC F127(8g)を、水ジャケットを有するステンレス鋼製密閉容器に加えた。様々な量の水を各混合物に加えて、様々な水濃度を得た。密閉してから90℃に加熱した水を水ジャケットに循環させ、そして容器及びサンプリング・ラインを90℃に維持したオーブン中に入れた。各容器の内容物を90℃に維持しながら撹拌し、溶融担体中のアジスロマイシン二水和物の懸濁液を得た。各容器を90分間撹拌し、次いで容器の内容物の試料をガラスバイアルに回収した。このバイアルに栓をし、そしてオーブンから取り出し、次いで液体窒素浴中に約5分間入れて試料を凝固させた。試料を室温に戻し、そして粉砕して粉末化した。粉末の試料をPXRDにより分析し、そしてアジスロマイシン結晶性二水和物の濃度を対照試料と比較することにより決定した。粉末の含水量を、Karl Fischer滴定により決定した。これらの試験結果を表1に示す。メルト中のアジスロマイシン二水和物の結晶化度を高いレベルで維持するためには、混合物中に少なくとも約2.2wt%の水が必要であることが明らかになった。
【0094】
【表1】

【0095】
実施例2
50wt%のアジスロマイシン二水和物、47wt%のCOMPRITOL 888 ATO及び3wt%のPLURONIC F127を含む多微粒子を、次のように製造した。最初に、アジスロマイシン二水和物(492g)、COMPRITOL 888 ATO(462g)及びPLURONIC F127(30g)を、ツイン・シェルブレンダーで20分間ブレンドした。次いで、このブレンドをFitzpatrick L1Aミルを用いて3000 rpmでナイフを前進させ(knives forward)、0.065インチのスクリーンを用いて塊を砕いた。混合物を、再びツイン・シェルブレンダーで20分間ブレンドし、プレブレンド供給物を形成した。
【0096】
このプレブレンド供給物を、124g/分の速さで、B&P 19−mm二軸スクリュー式押出機(MP19-TC、25 L/D比;B & P Process Equipment and Systems, LLC, Saginaw, MIから購入した)に送った。液体水を3.7g/分の速さで押出機中に供給した。押出機に供給された水の濃度は、プレブレンド供給物の約3wt%に相当した。実施例1で示されたように、これは、90℃においてアジスロマイシンの結晶性二水和形態を維持するのに十分な量の水であった。押出機から、約90℃のCOMPRITOL 888 ATO/PLURONIC F127中のアジスロマイシン二水和物の溶融供給物懸濁液が生成された。アジスロマイシンの二軸スクリュー式押出機中の平均滞留時間は約60秒であり、そしてアジスロマイシンが溶融懸濁液に暴露された合計時間の平均は約3分未満であった。供給懸濁液を、回転ディスク式アトマイザの中心に供給した。
【0097】
特注の回転ディスク式アトマイザは、直径10.1cm (4インチ)の椀状のステンレス鋼製ディスクから成る。該ディスクの表面は、ディスクの下にある薄膜ヒーターで約90℃に加熱される。このディスクは、最大約10,000 RPMのディスクを駆動するモーター上に載置された。アセンブリ全体は、凝固を可能にし且つアトマイザにより形成された微粒子を回収する直径約8フィートのプラスチック・バッグに入れられる。ディスク下のポートから空気を導入して、凝固時に多微粒子を冷却し、そして該バッグを拡張したサイズ及び形状に膨張させる。回転ディスク式アトマイザの表面を約90℃に維持し、そしてアジスロマイシン多微粒子を形成する間、該ディスクを5500rpmで回転させた。
【0098】
この回転ディスク式アトマイザと等価の好適な市販品は、Niro A/S (Soeborg, Denmark)製のFX1 100−mmロータリーアトマイザである。
【0099】
回転ディスク式アトマイザにより形成された粒子を、周囲空気中で凝固させ、そして全部で561gの多微粒子を回収した。多微粒子の試料をPXRDにより評価し、これにより、多微粒子中の93±6%のアジスロマイシンが結晶性二水和形態であることが分かった。
【0100】
対照例1
対照例1(C1)として、表2に記載した変数を用いて、ただし水を押出機に添加しないで多微粒子を製造した。
【表2】

【0101】
C1の多微粒子の試料をPXRDにより評価し、これにより、多微粒子中の73±7%のアジスロマイシンが結晶性二水和形態であることが分かった。
【0102】
総合すれば、実施例2及び対照例1のデータから、溶融混合物中の水濃度の僅か3wt%を維持することによって、水を添加しない場合と比べて、多微粒子中のより安定な結晶性二水和形態の割合が大幅に高まることが分かった。特に、水を溶融供給物に添加することにより、結晶化度の相対的向上度は、(100wt%−73wt%)/(100wt%−93wt%)、即ち3.9となった。
【0103】
実施例3
アジスロマイシン二水和物40wt%及び微結晶性ワックス60wt%を含有する多微粒子を、次の溶融−凝固手順を用いて製造した。最初に、微結晶性ワックス(150g)及び水(5g)を、機械式混合パドルを備えたジャケット付きステンレス鋼製密閉タンクに入れた。97℃の加熱流体を、タンクのジャケットに循環させた。約40分後、混合物が溶融し、温度は約94℃であった。次に、100% RHで予め95℃に加熱したアジスロマイシン二水和物(100g)及び水(2g)をメルトに添加し、そして370rpmで75分間混合することにより、微結晶性ワックス中のアジスロマイシン二水和物の供給懸濁液を得た。
【0104】
次いで、ギヤ・ポンプを用いて、供給懸濁液を250cm3/分の供給速度で、7500rpmで回転している実施例2の回転ディスク式アトマイザの中心に押し出し、この表面を100℃で維持した。回転ディスク式アトマイザにより形成された粒子を、周囲空気中で凝固させた。Horiba LA-910粒子サイズ分析器を用いて平均粒子サイズを測定したところ、170μmであった。また、多微粒子の試料をPXRDにより評価し、これにより、多微粒子中の93±10%のアジスロマイシンが結晶性二水和形態であることが分かった。
【0105】
対照例2
実施例3と同じ組成の多微粒子を実施例3と同様に製造したが、ただしアジスロマイシン二水和物は周囲の相対湿度において予め100℃に加熱し、そしてアジスロマイシンを溶融した微結晶性ワックスと混合する際に、供給タンクに追加の水を添加しなかった。Horiba LA-910粒子サイズ分析器を用いて平均粒子サイズを測定したところ、180μmであった。また、多微粒子の試料をPXRDにより評価し、これにより、多微粒子中の僅か67%のアジスロマイシンが結晶性であり、そして二水和物及び非二水和物の両方の結晶形態が多微粒子中に存在することが分かった。
【0106】
総合すれば、実施例3及び対照例2のデータから、ほんの少量の水を揮発性物質種として溶融供給物に添加するだけで、多微粒子中の結晶性二水和物の割合が高く維持されることが分かった。水の添加により、結晶化度の相対的向上度は、(100wt%−67wt%)/(100wt%−93wt%)、即ち4.7となった。
【0107】
実施例4
アジスロマイシン二水和物50wt%、COMPRITOL 888 ATO 47wt%及びポロキサマー407 (PLURONIC F127又はLUTROL F127として市販されているエチレン及びプロピレンオキシドのブロックコポリマー) 3wt%を含有する多微粒子を、次の手順を用いて製造した。最初に、アジスロマイシン二水和物(140kg)を秤量し、そしてミル速度900rpmのQuadro Comil 196Sに通した。このミルは、2C-075-H050/60番スクリーン (special round, 0.075'')、2F-1607-254番インペラ、及びインペラとスクリーンとの間の0.225インチ・スペーサを備えていた。次に、LUTROL F127 8.4kgを、次いでCOMPRITOL 888 ATO 131.6kgを秤量し、Quadro 194S Comilミルに通した。ミル速度を650rpmに設定した。このミルは、2C-075-R03751番スクリーン (0.075'')、2C-1601-001番インペラ、及びインペラとスクリーンとの間の0.225インチ・スペーサを備えていた。混合物を、Gallay 38立法フィートステンレス鋼製ビン・ブレンダーを用いて、回転速度10rpmで40分間、合計400回転ブレンドし、プレブレンド供給物を形成した。
【0108】
プレブレンド供給物を、Leistritz 50mm 二軸スクリュー式押出機 (Model ZSE 50, American Leistritz Excruder Corporation, Somerville, N.J.)に、速度約20kg/時で供給した。押出機を、同方向回転モードで約100rpmで動かし、そして溶融/噴霧-凝固ユニットと連動させた。押出機は、5セグメントのバレル・ゾーンを有し、そして押出機の全長は20スクリュー径(1.0m)であった。水を第2バレルに速度6.7g/分で投入した(2wt%)。押出機の押出速度は、約90℃においてCOMPRITOL 888 ATO/LUTROL F127中のアジスロマイシン二水和物の溶融供給懸濁液が製造されるように調整した。
【0109】
供給懸濁液を、加熱した実施例2の回転ディスク式アトマイザに供給し、6400rpmで回転させ、そして温度を約90℃で維持した。アジスロマイシンを溶融懸濁液に暴露する合計時間は、最大で10分未満であった。回転ディスク式アトマイザにより形成された粒子を、生成物回収チャンバ中を循環する冷却用空気の存在下で冷却し、凝固させた。粒子サイズ分析器を用いて平均粒子サイズを測定したところ、約200μmであった。
【0110】
こうして形成された多微粒子の試料を、密閉バレル中に入れて後処理し、これを次いで40℃の雰囲気制御チャンバ中に10日間置いた。後処理した多微粒子の試料をPXRDにより評価し、これにより、多微粒子中のアジスロマイシンの約99%が結晶性二水和形態であることが分かった。
【0111】
本明細書で用いた用語及び表現は説明するための用語として本明細書中で使用されるが、限定するためのものではなく、そしてこのような用語及び表現の使用において、示された特徴及び記載された特徴又はその一部と等価であるものを排除する意図は一切なく、当然ながら、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ定義され、そして限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理温度Tで少なくとも0.01気圧の蒸気圧を有する揮発性物質種を含む結晶形態で存在することができる薬剤を、次の
(a) 該温度Tで薬剤及び担体を含む溶融混合物を形成させ;
(b) 該溶融混合物から液滴を形成させ;そして
(c) 凝固媒体中で該液滴を凝固させて、薬剤及び担体を含む多微粒子を形成させる
工程で用意し、ここで工程(a)、(b)及び(c)の少なくとも1工程において揮発性物質種を添加することを含む、多微粒子の製造方法。
【請求項2】
溶融混合物中の揮発性物質種の活性が、結晶形態の薬剤中の揮発性物質種の活性に等しいか又はそれより高く保たれるのに十分な量で、揮発性物質種を工程(a)において溶融混合物に添加する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
溶融混合物と接する第一雰囲気中の揮発性物質種の活性が、結晶形態の薬剤中の揮発性物質種の活性に等しいか又はそれより高く保たれるのに十分な量で、揮発性物質種を工程(a)において該第一雰囲気に添加する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
液滴と接する第二雰囲気中の揮発性物質種の活性が、結晶形態の薬剤中の揮発性物質種の活性に等しいか又はそれより高く保たれるのに十分な量で、揮発性物質種を工程(b)において該第二雰囲気に添加する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
凝固媒体中の揮発性物質種の活性が、結晶形態の薬剤中の揮発性物質種の活性に等しいか又はそれより高く保たれるのに十分な量で、揮発性物質種を工程(c)において該凝固媒体に添加する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
工程(a)の溶融混合物が更に溶解促進剤を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法の工程(a)から(c)を含む対照方法により製造される多微粒子と比べて、薬剤結晶化度の相対的向上度が少なくとも1.1となるのに十分な量で揮発性物質種を添加する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
多微粒子中の薬剤の少なくとも70wt%が結晶形態である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
結晶形態が水和物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
結晶形態が溶媒和物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
結晶形態が塩形態であり、そして揮発性物質種が対イオンである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
対イオンが塩化物イオンである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
揮発性物質種が溶融混合物を含む押出機中に射出される、請求項2記載の方法。
【請求項14】
揮発性物質種が蒸気の形態である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
揮発性物質種が液体の形態である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
薬剤がアジスロマイシンである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
結晶形態がアジスロマイシン二水和物であり、そして揮発性物質種が水である、請求項16記載の方法。

【公表番号】特表2007−513145(P2007−513145A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542042(P2006−542042)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【国際出願番号】PCT/IB2004/003903
【国際公開番号】WO2005/053655
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】