説明

医薬用補助品収納用トレーおよび該トレーを用いた医療用補助品キット

【課題】医療用補助品収納用トレーに関し、医療用補助品が手順に従い順次取り出せるように収納可能で、異なるサイズの綿棒も収納可能なトレーを提供する。
【解決手段】少なくとも2種類のサイズの綿棒を収納でき、複数区画壁で区画された収納部に医療用補助品を収納できるトレーとして、(1)トレー内が開封側の下部室4、その反対側の上部室2に区画壁5で区画され、該下部室が区画壁11,12で複数室6,7,8に区画される、(2)トレー内に収納される最も小サイズの綿棒が、前記下部室の区画壁の上面部に開封側に平行に収容できる。(3)トレー内に収納される最も大サイズの綿棒が、前記下部室と上部室の角部の対角線方向に配置して収容できる、(4)最も大サイズの綿棒の柄部が、上部室と下部室の区画壁の上面部に載置されて該綿棒を保持できる切り欠き部13,14,15を有する、等の要件を満たす医療用補助品収納用トレー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬用補助品収納用トレー、および該トレーを用いた医療用補助品キットに関する。
【背景技術】
【0002】
綿棒、ガーゼ、綿球、ピンセット等の医療用補助品を収納するトレー、および該トレーの開口部を滅菌可能なシートで密封した医療用補助品キットは下記特許文献1〜3に示すように既に種々の構成のものが提案されている。
【0003】
【特許文献1】実開平6−44516
【特許文献2】特開2000−225126
【特許文献3】特開平9−84806
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が属する技術分野である医療用補助品を収納するトレー、および医療用補助品キットは、前記トレーの開口部を密封していた滅菌可能なシートを剥離すれば、トレー内にキットとして収納されている医療処置に必要とする綿棒、ガーゼ、綿球、ピンセット等の医療用補助品の多くを滅菌状態で直ちに使用可能であり、また、使用した前記医療用補助品はトレー内に再び収納して破棄することが可能であり、医療処置をスムースに行うこと、あるいは衛生面から非常に有用なものである。
【0005】
前記医療用補助品を収納するトレーは、その内部を区画壁により区画して形成された複数の室内に前記医療用補助品が収納されるが、医療処置をスムースに行うという観点から、前記各区画室には医療処置手順に従って、該医療処置に必要とする医療用補助品が順次に取り出すことが可能なように前記医療用補助品が収納されていることが好ましい。しかし前記医療用補助品として棒状医療用補助品、例えば綿棒をトレー内に収納する場合には綿棒は柄部が長尺であるため、前記医療用補助品を前記好ましい態様でトレー内に収納する構成とすることは困難である。また仮に医療用補助品を医療処置の手順に従って収納しても、綿棒が収納されているため医療処置の手順に従って取り出すことは困難であった。
【0006】
さらに、前記トレー内に収納された綿棒のような棒状医療用補助品を使用者がその柄部を把持して取り出す場合に、従来の医療用補助品の収納状態では、既に滅菌済みであるシーツ、ガーゼ、綿球等の医療用補助品に直接接触しやすく、前記医療用補助品に汚染が生じてしまうという問題があった。
【0007】
また、治療の種類あるいは治療の箇所に応じて複数種類のサイズの綿棒、例えば綿体部分を除く柄部の長さが約6、5および4インチ程度のものがあるが、一つのトレーで前記の異なるサイズの綿棒のいずれでも収納可能なものが、トレー内に綿棒を収納する作業を簡単化する観点から好ましいが、この点を解決したトレーは未だ知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、長軸の長さが異なる少なくとも2種類の棒状医療用補助品が収納可能で、かつ医療用補助品を複数の区画壁で区画された収納部に収納する医療用補助品収納用トレーであって、下記の(1)〜(4)の要件を満足することを特徴とする医療用補助品収納用トレー。
(1)開口部が滅菌可能なシートにより密封可能で、かつ前記開口部を密封した滅菌可能なシートを使用時に開封する側(以下、開封側という)を下部室、その反対側を上部室としてトレー内が区画壁により区画され、さらに前記下部室が区画壁により複数室(以下、下部区画室という)に区画されていること。
(2)下部室はトレー内に収納される棒状医療用補助品の中で長軸の長さが最も小さい棒状医療用補助品が、前記下部区画室の区画壁の上面部に前記上部室と下部室を区画する区画壁と平行方向にわたって収容可能なものであること。
(3)下部区画室の少なくとも一個と上部室は、トレー内に収納される棒状医療用補助品の中で長軸の長さが最も大きい棒状医療用補助品が前記下部区画室の角部と上部室の角部の対角線方向にわたって配置して収容可能なものであること。
(4)上部室と下部室の区画壁は、その上面部に最も大サイズの棒状医療用補助品の柄部が載置されて前記(3)の棒状医療用補助品の配置状態を保持可能とする切り欠き部(以下、大サイズ棒状医療用補助品保持切り欠き部という)を有すること。
【0009】
以下、本発明の医療用補助品収納用トレーの構成、および該トレーを使用した医療用補助品収納キットを棒状医療用補助品として綿棒を例にとり図に基づいて具体的に説明する。
実施態様1(医療用補助品収納用トレーの構成)
図1に示すようにトレーはその上部周縁3に、該トレー内に医療用補助品を収納した後に該トレーの開口部を密封するための滅菌可能なシートが固着される縁部1が形成された四角形状容器であり、区画壁5により区画されて開封側10に下部室4、その反対側に上部室2が形成され、さらに前記下部室4が区画壁11と12により左室6、中央室7、および右室8の3室に区画されている。また、前記下部室の隔壁6、7および8は、右室8へ本トレーに収納されるもっとも小さいサイズ綿棒(前記柄部の長さが約4インチ程度の綿棒)の頭を保持させ、かつ、柄部をバランスとりながら保持できる位置へ中央室7と左室6の隔壁を設定するのが好ましい。
【0010】
上部室2と下部室4の区画壁5は、その上面部に該トレー内に収納可能な綿棒の中で長軸の長さが最も大きい綿棒(前記柄部の長さが約6インチ程度の綿棒)が左室の左下角部A(アール部形成)と上部室の右上角部D(アール部形成)の対角線方向、あるいは右室の右下角部B(アール部形成)と上部室の左上角部(アール部形成)Cの対角線方向にわたって配置して収容されるが、その際にその柄部が載置されて前記配置状態を保持可能とする切り欠き部(以下、大サイズ綿棒保持切り欠き部という)13と14を有する。また、前記大サイズ綿棒保持切り欠き部13と14の切り欠き深さは、その底面部と前記下部室4の区画壁11と12の上面部が同一平面であり、区画壁5の高さはトレーの上部周縁の高さは同じか若干低く形成される。なお、本発明において綿棒を対角線方向に配置して収納する際の角部とは、隅部およびその近辺等の領域を指し、該領域はその全体あるいはその一部がアール部を形成していることが好ましい。さらに、前記大サイズ綿棒保持切り欠き部13の左側切り欠き面19、また右側切り欠き部14の右側切り欠き面20は、前記配置される綿棒の対角線角度と同様あるいは近似した角度で傾斜して設けられたものが、該綿棒の収納を容易にし、かつ収納した綿棒を安定に保持できるので好ましい。
【0011】
図2および3に前記本発明のトレー内に収納される綿棒の中で長軸の長さが最も大きい綿棒17(前記柄部の長さが約6インチ程度の綿棒)を収納した態様を示す。図2は綿棒17の柄部18を区画壁5に対して左向きに収納した態様であり、また図3は綿棒をその柄部18を区画壁5に対して右向きに収納した態様である。本発明のトレーは前記のように綿棒の収納態様として、右向きと左向きを任意に選択できるので、右利きあるいは左利きの使用者が取り出しやすいように配置できるし、また、該補助具を使用する施術の種類あるいは方法によって該補助具を取り出し易いように右向きと左向きを任意に選択できる。また図2および3に大サイズ綿棒保持切り欠き部13と14を有するが、前記切り欠き部13と14はどちらか一方のみの態様であってもよい。
【0012】
図4および5に本発明のトレー内に収納される綿棒の中で長軸の長さが中間である綿棒17′(前記柄部の長さが約5インチ程度の綿棒)を収納した態様を示す。
上部室2と下部室4の区画壁5の上面部には、中央室12に隣接して前記綿棒17′が中央室12の左下角部(アール部形成)Eと上部室の右上角部(アール部形成)Dの対角線方向、あるいは中央室の右下角部(アール部形成)Fと上部室の左上角部(アール部形成)Cの対角線方向にわたって配置して収容されるが、その際に前記綿棒17′の柄部が載置されて前記配置状態を保持可能とする切り欠き部15(以下、中サイズ綿棒保持切り欠き部)を有する。また、前記中サイズ綿棒保持切り欠き部15の切り欠き深さは、その底面部と前記下部室4の区画壁11と12の上面部が同一平面となるものである。また、中サイズの綿棒を収納する場合も、大サイズの綿棒の場合と同様に右向きと左向きを任意に選択できるので、前記大サイズの綿棒の場合と同様な効果を奏する。
【0013】
図6に本発明のトレー内に収納される綿棒の中で長軸の長さが最も短い綿棒17′′(前記柄部の長さが約4インチ程度の綿棒)を収納した態様を示す。
下部室4は前記小サイズの綿棒が、前記下部区画室の区画壁11と12の上面部にわたって区画壁5に平行方向に配置されて収容可能なものである。そして区画壁5の上面部の高さ16とトレーの上部周縁3の高さは、同じか前者が後者より若干低く形成されているので、下部室4内に小サイズの綿棒17′′は上部室2の方向に移動することなく安定に収納可能となる。
【0014】
本発明のトレーは、前記のように棒状の医療用補助品が、その長軸方向の長さが大、中および小サイズのタイプのいずれであっても収容可能であるだけでなく、どのタイプの綿棒であっても常にトレー内に収納された他の医療用補助品の上に配置して収納される。また、棒状医療用補助品の長軸部分の把持側部分、例えば綿棒の柄部の把持側部分がトレーの開封側に存在するので、先ず綿棒を取り出すことにより、その他の医療用補助品を医療処置の手順に従って取り出すことが容易である。さらにそれだけでなく、本発明のトレーの上部室2に既に滅菌済みのシーツ、ガーゼ、等の大型の医療用補助品を収納した場合であっても、棒状医療用補助品の長軸部分の把持側部分、例えば綿棒の柄部の把持側部分がトレーの開封側に存在するので該棒状の医療用補助品を把持してトレーから取り出す際に、前記滅菌済みのシーツ、ガーゼ、等の大型の医療用補助品をトレー使用者の手が触れて汚染されることは無い。さらに下部室4に収納された小サイズの綿棒の取り出しは、下部室4と前記上部室2とは区画壁5により区画されているので、トレー使用者は前記滅菌済みのシーツ、ガーゼ、等の大型の医療用補助品に触れることなくを容易に行うことができる。また、少なくとも1種類以上のサイズの棒状医療用補助品をトレー内に対角線方向に右向きあるいは左向きに任意に収納できるので、前述のように右利きあるいは左利きの使用者が取り出しやすいように配置できるし、また、該補助具を使用する施術の種類あるいは方法によって該補助具を取り出し易いように右向きと左向きを任意に選択できる。
【0015】
前記実施態様のトレーは、該トレー内に棒状医療用補助品は長軸方向の長さが大、中および小のものが収納可能なものであるが、図7および8に示すような長軸方向の長さが大および小の2種類のものが収納可能なものであっても良い。
また、本発明のトレーサイズは、前記のような本発明の目的を達成できるものであれば特に特定の範囲のものに限定されるものではないが、例えば横105〜165mm、縦65〜105mm程度のものが挙げられる。
【0016】
実施態様2(実施態様1のトレーを使用した医療用補助品収納キット)
実施態様1のトレーにおいて、トレー上縁部におけるサイズが縦119mm、横136mm、また上室の上縁部におけるサイズが縦84mm、横136mmのトレーを使用した。前記トレーの上室2には縦75mm、横125mmのサイズのシーツ及び/またはガーゼを収納した。前記下部室6〜8には綿球、圧迫綿、小さいサイズのガーゼを収納した後に、図2に示す態様で6インチ綿棒を収納し、該トレーの開口部を紙、不織布等の滅菌可能なシートを前記トレーの縁部1の部分に密着させ密封して医療用補助品収納キットとし、これをエチレンオキサイドガスにより滅菌した。
なお、本発明のトレーの収納室2および下部室4に収納される医療用補助品とは、前記のようなシーツ及び/またはガーゼのようなものに限られず、目的とする施術に応じて必要なもので、前記各収納室に収容可能なもの、例えばシールあるいは小容器に密封して収納された薬液のようなものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】長軸の長さが異なる3種類の棒状医療用補助品が収納可能なトレー。
【図2】図1のトレーに柄部サイズの大きい綿棒を右向きに収納したトレー。
【図3】図1のトレーに柄部サイズの大きい綿棒を左向きに収納したトレー。
【図4】図1のトレーに柄部サイズが中間の綿棒を右向きに収納したトレー。
【図5】図1のトレーに柄部サイズが中間の綿棒を左向きに収納したトレー。
【図6】図1のトレーに柄部サイズが小さい綿棒を収納したトレー。
【図7】長軸の長さが異なる2種類の棒状医療用補助品が収納可能なトレー。
【図8】長軸の長さが異なる2種類の棒状医療用補助品が収納可能なトレー。
【符号の説明】
【0018】
1 滅菌可能なシートが固着される縁部
2 上部室
3 トレーの上部縁
4 下部室
5 区画壁
6 左室
7 中央室
8 右室
9 滅菌可能なシートの剥離開始部
10 開封側
11 区画壁
12 区画壁
13 大サイズ綿棒保持切り欠き部
14 大サイズ綿棒保持切り欠き部
15 中サイズ綿棒保持切り欠き部
16 区画壁5の上面部
17 柄部サイズの大きい綿棒
17′ 柄部サイズが中間の綿棒
17′′柄部サイズが小さい綿棒
18 綿棒の柄部
19 大サイズ綿棒保持切り欠き部13の左側切り欠き面
20 大サイズ綿棒保持切り欠き部14の右側切り欠き面
A 左室6の左下角部
B 右室6の右下角部
C 上部室2の左上角部
D 上部室2の右上角部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
長軸の長さが異なる少なくとも2種類の棒状医療用補助品が収納可能で、かつ医療用補助品を複数の区画壁で区画された収納部に収納する医療用補助品収納用トレーであって、下記の(1)〜(4)の要件を満足することを特徴とする医療用補助品収納用トレー。
(1)開口部が滅菌可能なシートにより密封可能で、かつ前記開口部を密封した滅菌可能なシートを使用時に開封する側(以下、開封側という)を下部室、その反対側を上部室としてトレー内が区画壁により区画され、さらに前記下部室が区画壁により複数室(以下、下部区画室という)に区画されていること。
(2)下部室はトレー内に収納される棒状医療用補助品の中で長軸の長さが最も小さい棒状医療用補助品(以下、小サイズ棒状医療用補助品という)が、前記下部区画室の区画壁の上面部に前記上部室と下部室を区画する区画壁と平行方向にわたって収容可能なものであること。
(3)下部区画室の少なくとも一個と上部室は、トレー内に収納される棒状医療用補助品の中で長軸の長さが最も大きい棒状医療用補助品(以下、大サイズ棒状医療用補助品という)が前記下部区画室の角部と上部室の角部の対角線方向にわたって配置して収容可能なものであること。
(4)上部室と下部室の区画壁は、その上面部に最も大サイズの棒状医療用補助品の柄部が載置されて前記(3)の棒状医療用補助品の配置状態を保持可能とする切り欠き部(以下、大サイズ棒状医療用補助品切り欠き部という)を有すること。
【請求項2】
下部室を左室、中央室、および右室の3室に区画したものであることを特徴とする請求項1に記載の医療用補助品収納用トレー。
【請求項3】
大、中および小サイズの棒状医療用補助品が収容可能で、かつ下部区画室の少なくとも一個と上部室は、トレー内に収納される前記中サイズの棒状医療用補助品が前記下部区画室と上部室の角部の対角線方向にわたって配置して収容可能で、さらに上部室と下部室の区画壁の上面部には前記中サイズの柄部が載置されて該棒状医療用補助品の配置状態を保持可能とする切り欠き部(以下、中サイズ棒状医療用補助品保持切り欠き部という)を有することを特徴とする請求項1または2に記載の医療用補助品収納用トレー。
【請求項4】
大サイズの棒状医療用補助品が、右室の右下角部と上室の左上角部あるいは左室の左下角部と上室の右上角部にわたって対角線状に配置可能であることを特徴とする請求項3に記載の医療用補助品の収納用トレー。
【請求項5】
中サイズの棒状医療用補助品が、中央室の右下角部と上室の左上角部あるいは中央室の左下角部と上室の右上角部にわたって対角線状に配置可能であることを特徴とする請求項3に記載の医療用補助品の収納用トレー。
【請求項6】
医療用補助品を収納した請求項1〜5のいずれかに記載の医療用補助品の収納用トレーを滅菌可能なシートにより密封したものであることを特徴とする医療用補助品キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−255077(P2006−255077A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−74944(P2005−74944)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】