説明

医薬組成物

【課題】抗ヒスタミン薬又は抗ヒスタミン作用を主作用とする抗アレルギー薬では抑制困難な鼻閉反応に対して、優れた抑制効果のある医薬組成物(鼻閉抑制剤など)を提供する。
【解決手段】本発明の医薬組成物(鼻閉抑制剤、アレルギー性鼻炎治療剤、鼻閉に起因する睡眠障害、いびき、耳管狭窄症などの改善剤)は、有効成分として、ナンテンジツとシンイとを含有する。本発明の鼻閉抑制剤は鼻閉2相性反応の即時相反応および遅発相反応の少なくとも一方の反応に対して鼻閉を有意に抑制する。前記医薬組成物は、ナンテンジツ及びシンイの双方を含有する組成物であってもよく、ナンテンジツを含む製剤とシンイを含む製剤とを組み合わせた併用医薬であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた鼻閉抑制効果を有する医薬組成物[鼻閉抑制剤(アレルギー性鼻炎及び/又は風邪症候群における鼻閉抑制剤など)の医薬製剤など]、アレルギー性鼻炎における鼻炎症状を強力に抑制する医薬組成物(アレルギー性鼻炎治療剤)、鼻閉に起因する睡眠障害及びいびきのうち少なくとも一方の症状を改善する医薬組成物(改善剤)、及び鼻閉に起因する耳管狭窄症を改善する医薬組成物(改善剤)に関する。より詳細には、抗ヒスタミン薬及び抗ヒスタミン作用を主作用とする抗アレルギー薬では抑制することが困難な即時相反応及び遅発相反応の鼻閉を抑制するのに有効な医薬組成物、アレルギー性鼻炎及び/又は風邪症候群、すなわち上気道のウイルス感染等で誘発される炎症により引き起こされる鼻閉を抑制する医薬組成物、並びに鼻閉に起因する睡眠障害、いびき、及び耳管狭窄症を改善する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギー性鼻炎は、くしゃみ、鼻漏、鼻閉の3大症状を特徴とするI型アレルギー疾患であり、花粉等による抗原惹起直後にくしゃみ、鼻漏、鼻閉を誘発する即時相反応と惹起後4〜24時間に鼻閉を誘発する遅発相反応の2相性反応を示すことが知られている。従来、アレルギー性鼻炎の治療には、抗ヒスタミン作用を主作用とする抗アレルギー薬が投与されており、即時相反応におけるくしゃみ、鼻漏は強力に抑制するが、鼻閉症状、特に遅発相反応における鼻閉症状に対して効果が弱いとされている。近年の研究成果から、「鼻アレルギー診断ガイドライン2005年版」,(株)ライフサイエンス,(2006)第16頁(非特許文献1)には、鼻閉発症には、ヒスタミンの関与は少なく、ロイコトリエン(LTs)及びトロンボキサンA(TXA)が大きく関与することが記載されている。また、非特許文献1の第54頁〜第55頁には、現在、医療用医薬品における鼻閉を呈するアレルギー性鼻炎治療には、経口のLTs又はTXA拮抗薬を使用することが記載されているが、使用できる薬物は数種に限られる。
【0003】
一方、一般薬におけるアレルギー性鼻炎もしくは風邪により誘発される鼻閉反応の抑制には、一時的な鼻粘膜の充血除去を目的として、プソイドエフェドリン等の血管収縮剤が使用されている。しかし、血管収縮剤を用いる療法は、炎症そのものを抑制するのではなくあくまで対症療法に過ぎない。
【0004】
また、鼻閉は睡眠の質を著しく悪化させることが知られている。例えば、「睡眠障害の対応と治療ガイドライン」,(株)じほう,(2006)(非特許文献2)には、鼻閉は睡眠障害の原因となるいびきや睡眠時無呼吸症候群等を誘発及び増悪化させることが記載されている。しかし、鼻閉に起因する睡眠障害を改善する長期服用できる安全な薬剤は存在しない。そのため、安全かつ治療効果の高い鼻閉抑制作用を有する剤の開発が望まれている。
【0005】
「漢方薬理学」,(株)南山堂,(1997)(非特許文献3)には、ナンテンジツ(南天実)はメギ科の常緑低木ナンテン(Nandina Domestica)の白実または赤実を採ったものであり、ナンテンジツはアルカロイド類の有効成分を含み、一般的には鎮咳薬として用量1日5〜10g程度で用いられることが記載されている。
【0006】
特開2007−210909号公報(特許文献1)には、南天実エキスを有効成分とする抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤及び抗セロトニン剤が開示され、南天実エキスが、抗ヒスタミン作用及び抗セロトニン作用に基づく抗アレルギー作用に優れ、抗アレルギー剤として利用できることが記載されている。
【0007】
しかし、前記非特許文献1に記載のように、抗ヒスタミン薬若しくは抗ヒスタミン作用を主作用とする抗アレルギー薬では鼻閉を有効に抑制することが困難である。
【0008】
特開平11−12187号公報(特許文献2)には、イブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症剤と南天抽出物とを有効成分とする解熱鎮痛消炎剤が開示されている。特開2006−8540号公報(特許文献3)には、南天実抽出物と塩酸ブロムヘキシンとを含む風邪薬が開示され、特表2007−530620号公報(特許文献4)には、メロキシカム又はその薬学上許容される塩と、鎮咳薬、去痰薬及び抗HI−ヒスタミンから選択された医薬活性成分とを含む医薬組成物が開示され、鎮咳薬としてナンテンジツが例示されている。
【0009】
一方、前記非特許文献3には、シンイ(辛夷)について、中国産はモクレン科(Magnoliaceae)のMagnoia fargesii CHENG, モクレン(シモクレン;M.liliflorm DESR),ハクモクレン(M.denudate DESR), 日本産はタムシバ[Magnolia salicifolia(SIEB .et ZUCC)MAXIM]であり、一般的には抗炎症作用を有し鎮痛、頭痛の鎮静薬や鼻炎、蓄膿症に用いることが記載されている。
【0010】
ナンテンジツ及びシンイはともに生薬として長年に亘り使用されており、このような使用実績があるため、ナンテンジツ及びシンイを有効成分とする医薬組成物は安全性が高いと考えられる。
【0011】
しかし、ナンテンジツ、特にナンテンジツとシンイとの併用による鼻閉抑制作用、鼻閉に伴う障害の改善作用については全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−210909号公報(特許請求の範囲、段落[0033])
【特許文献2】特開平11−12187号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2006−8540号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特表2007−530620号公報(特許請求の範囲)
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】鼻アレルギー診断ガイドライン2005年版,(株)ライフサイエンス,(2006)第16頁、第54頁〜第55頁
【非特許文献2】睡眠障害の対応と治療ガイドライン,(株)じほう,(2006)
【非特許文献3】漢方薬理学,(株)南山堂,(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の目的は、鼻閉反応に対して、優れた治療効果のある医薬組成物(又は鼻閉抑制剤)、又はアレルギー性鼻炎治療剤を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、アレルギー性鼻炎及び風邪症候群の少なくとも一方の症状における鼻閉を有効に抑制できる医薬組成物、鼻閉に起因する睡眠障害及びいびきの少なくとも一方の症状を改善するのに有効な医薬組成物(又は鼻閉抑制剤)を提供することにある。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、鼻閉に起因する耳管狭窄症を改善するのに有効な医薬組成物(又は鼻閉抑制剤)を提供することにある。
【0017】
本発明の別の目的は、安全性が高く、低容量化可能な医薬組成物(又は鼻閉抑制剤)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、ナンテンジツ及びシンイを有効成分とする医薬組成物が、抗ヒスタミン薬では抑制困難な鼻閉反応であっても有効に(特に、相乗的に)抑制すること、鼻閉2相性反応の即時相反応及び遅発相反応の双方に対して強力な抑制作用を有すること、鼻閉2相性モデルにおいて、鼻閉2相性反応の即時相反応および遅発相反応の少なくとも一方の反応(特に双方の反応)に対して鼻閉を相乗的に抑制することを見出し、本発明を完成した。
【0019】
すなわち、本発明の医薬組成物は、ナンテンジツ及びシンイを有効成分として含有する。このような医薬組成物は、鼻閉反応を有効に抑制することができるため、鼻閉抑制剤として使用される。特に、前記医薬組成物は、アレルギー性鼻炎又は風邪症候群における鼻閉反応を抑制するのに有用である。また、前記医薬組成物は、アレルギー性鼻炎治療剤としても有用である。
【0020】
本発明の医薬組成物は、ナンテンジツ及びシンイの双方を含有する組成物(又は製剤)であってもよく、ナンテンジツを含む製剤とシンイを含む製剤とを組み合わせたキット(又は併用医薬)であってもよい。医薬組成物においては、前記有効成分の抽出エキスを用いてもよい。本発明の医薬組成物は、鼻閉2相性反応の即時相反応及び遅発相反応の少なくとも一方の反応に対して抑制作用を有していてもよい。
【0021】
また、本発明には、鼻閉に起因する睡眠障害及びいびきのうち少なくとも一方の症状を改善する医薬組成物(又は改善剤)であって、ナンテンジツ及びシンイを有効成分として含む改善剤、及び鼻閉に起因する耳管狭窄症を改善する医薬組成物(又は改善剤)であって、ナンテンジツ及びシンイを有効成分として含む改善剤も含まれる。
【0022】
なお、本明細書中、「ナンテンジツ及びシンイを含む(又は含有する)」とは、ナンテンジツ及びシンイの双方を含有する形態、ナンテンジツを含む製剤とシンイを含む製剤とを組み合わせた形態(キット、セット)の双方を意味するものとして使用する。また、本明細書では、「医薬組成物」を「医薬製剤」と同義に用いる場合がある。
【発明の効果】
【0023】
本発明の医薬組成物(鼻閉抑制剤など)は、ナンテンジツとシンイを有効成分として用いるので、鼻閉反応に対して、優れた治療効果を有する。本発明の医薬組成物は、ヒスタミン薬若しくは抗ヒスタミン作用を主作用とする抗アレルギー薬では抑制することが困難な鼻閉であっても、有効に抑制することができる。また、鼻閉2相性反応の即時相反応および遅発相反応の少なくとも一方の反応(特に双方の反応)に対して抑制作用を有する。そのため、前記医薬組成物は、アレルギー性鼻炎治療剤としても有用であるとともに、アレルギー性鼻炎及び風邪症候群の少なくとも一方の症状における鼻閉を有効に抑制できる。さらに、鼻閉に起因する症状、例えば、睡眠障害、いびき、耳管狭窄症などの改善に有効である。しかも、有効成分として、長い使用実績があるナンテンジツ及びシンイを用いるため、安全性も高い。また、ナンテンジツ及びシンイの相乗作用により低容量化が可能になり、医療経済性の向上、味の改善及び/又は服用性の向上により患者の生活の質(QOL)を顕著に改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は試験例1のナンテンジツ及びシンイ併用投与群における鼻閉反応の即時相反応に対した相乗的な抑制作用を示すグラフである。
【図2】図2は試験例1のナンテンジツ及びシンイ併用投与群における鼻閉反応の遅発相反応に対した相乗的な抑制作用を示すグラフである。
【図3】図3は試験例2のナンテンジツ及びシンイ併用投与群における鼻閉反応の即時相反応に対した抑制作用を、プランルカスト投与群における抑制作用と比較して示すグラフである。
【図4】図4は試験例2のナンテンジツ及びシンイ併用投与群における鼻閉反応の遅発相反応に対した抑制作用を、プランルカスト投与群における抑制作用と比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の医薬組成物(鼻閉抑制剤、アレルギー性鼻炎治療剤、鼻閉に起因する症状を改善する改善剤など)では、ナンテンジツ及びシンイを有効成分として含有する。
【0026】
ナンテンは果実の色が赤いナンテン(Nandina Domestica)、果実の色が白いナンテン(Nandina Domestica var. leucocarpa)のいずれであってもよく、赤実及び/又は白実のいずれを用いてもよい。ナンテンジツは粉末(生薬末)の形態で用いてもよいが、通常、エキス(抽出エキス、生薬エキス)の形態で使用する場合が多い。
【0027】
シンイとしては、タムシバ(Magnolia salicifolia Maximowicz)、コブシ(Magnolia kobus De Candolle,Magnolia biondii Pampanini)、ハクモクレン[又は玉蘭(Magnolia denudate Desrousseaux(Magnoliaceae))]、ボウシュンカ(望春花,Magnolia fargesii Cheng)、モクレン(又はシモクレン(Magnolia liliforia Desrousseaux))、マグノリア・スプレンゲリ(Magnolia sprengeri Pampanini)などのモクレン科の植物の花蕾などが使用できる。シンイは、産地によって、利用される植物の名称が異なっていてもよく、例えば、中国産のシンイは、モクレン又はハクモクレン、日本産はタムシバ、韓国産はハクモクレンと称される場合が多い。
【0028】
上記植物の花蕾は、未乾燥の状態で使用してもよいが、通常、乾燥物の形態(例えば、粉末(生薬末)の形態など)又はエキス(抽出エキス、生薬エキス)の形態で使用する場合が多い。
【0029】
ナンテンジツ及び/又はシンイを、エキス(抽出エキス)の形態で使用する場合、ナンテンジツ及び/又はシンイは、そのまま抽出に供してもよく、粉末、破砕物、切断物又は裁断物などの形態で抽出に供してもよい。なお、未乾燥のナンテンジツ又はシンイを抽出に供してもよいが、通常、乾燥物を用いて抽出する場合が多い。
【0030】
抽出エキスの調製に用いる抽出溶媒としては、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなど)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなど)、エーテル類(エチルエーテル、プロピルエーテルなどの鎖状エーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテルなど)、セロソルブ類、カルビトール類、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、ケトン類(アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、炭化水素類(ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、トルエンなどの芳香族炭化水素類など)、ハロゲン化炭化水素類(メチレンクロライドなど)などが例示できる。これらの溶媒は単独で又は二種以上混合して使用してもよい。また、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水などを用いてもよく、超臨界流体や亜臨界流体(水や二酸化炭素、エチレン、プロピレン、メタノール、エタノール、アンモニアなどの超臨界流体や亜臨界流体)を用いてもよい。超臨界流体や亜臨界流体も1種又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0031】
これらの抽出溶媒の中でも、使用性や効果の点から、水、水溶性有機溶媒(C1−4低級アルカノール、アセトンなど)又はこれらの混合液を使用する場合が多く、水及び/又は水溶性低級アルカノール、例えば、水及び/又はエタノール(例えば、エタノール水溶液)など用いるのが好ましい。混合水溶液として使用する場合、水溶性有機溶媒(エタノールなど)の割合は、容積基準で、0%を超えて100%未満(例えば、0.1〜99.5%程度)、好ましくは1〜90%(例えば、5〜80%)、さらに好ましくは10〜70%、特に20〜50%程度であってもよい。
【0032】
抽出溶媒の割合は特に制限されず、例えば、乾燥物換算で、ナンテンジツ又はシンイ1重量部に対して、溶媒0.5〜1000重量部、好ましくは1〜500重量部、さらに好ましくは2〜100重量部(例えば、2〜75重量部、特に5〜50重量部)程度であってもよい。
【0033】
抽出温度は特に制限されず、例えば、−30℃〜溶媒の沸点(例えば、120℃程度)の範囲から選択でき、低温(例えば、−20℃〜50℃程度)であってもよく、50〜120℃程度の加温又は加熱下で行ってもよい。さらに、抽出は溶媒の還流温度で行ってもよい。また、浸漬して抽出してもよく、剪断力(ホモジナイザー、撹拌機、超音波発生装置などによる剪断力)を作用させながら抽出してもよい。
【0034】
なお、ナンテンジツ及びシンイの混合物(乾燥物の混合物)から、上記抽出溶媒により双方の成分を抽出した抽出物を用いてもよいが、双方の有効成分を有効に利用するためには、それぞれの成分を別途抽出した抽出物を用いる場合が多い。
【0035】
前記溶媒によるナンテンジツ又はシンイの抽出物は、そのままの形態で使用してもよく、濃縮、噴霧乾燥などによる乾固物を溶媒(水や極性溶媒)に再度溶解して使用してもよい。また、抽出物(又は抽出液)や濃縮/乾固物は、生理活性を損なわない範囲で各種の処理、例えば、精製処理(脱色、脱臭、脱塩などの精製処理)、分画処理(カラムクロマトグラフィーなどによる分画処理)を施して使用してもよい。さらには、ナンテンジツ及び/又はシンイの抽出物や濃縮/乾固物、その処理物(精製処理及び/又は分画処理物)は、凍結乾燥物であってもよく、凍結乾燥物は、用時に溶媒に溶解して使用してもよい。なお、抽出物(抽出エキス)は、乾燥固形分換算で抽出物を0.1〜90質量%(例えば、1〜75質量%、特に10〜60質量%)程度の割合で含む液状(粘稠液を含む)であってもよい。
【0036】
ナンテンジツとシンイとの割合は、原生薬換算で、ナンテンジツ10質量部に対して、シンイ0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜25重量部(例えば、1〜10重量部)、さらに好ましくは2〜8重量部(例えば、3〜6重量部)程度であってもよい。
【0037】
本発明の医薬組成物は、ナンテンジツ及びシンイの双方を有効成分として使用する限り、特に制限されず、ナンテンジツ及びシンイの双方を含有する製剤であってもよく、ナンテンジツを含む製剤と、シンイを含む製剤とを組み合わせた併用医薬(セット又はキット)であってもよい。
【0038】
また、上記医薬組成物において、ナンテンジツ及び/又はシンイと、他の活性成分(例えば、従来一般薬においてアレルギー性鼻炎薬、風邪薬に配合されている成分)とを併用してもよい。このような成分としては、例えば、抗炎症薬、解熱薬、鎮痛薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、鎮咳薬、去痰薬、抗ぜんそく薬、抗菌薬、抗生物質などが例示できる。
【0039】
本発明において、生薬(ナンテンジツ及び/又はシンイ)は、通常、生薬末、生薬エキス(抽出エキス)などの形態で組成物(又は製剤)に配合される。本発明の医薬組成物(鼻閉抑制剤、アレルギー性鼻炎治療剤、前記改善剤)は、経口又は非経口投与製剤として調製できる。経口投与製剤としては、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、チュアブル錠、カプセル剤などの固形製剤、シロップ剤、ドリンク剤などの液剤などが例示でき、慣用的な方法で製造される。固形製剤の調製には、必要に応じて、種々の担体[例えば、賦形剤(糖類(糖アルコール類を含む)、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸など)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、崩壊剤(コーンスターチ、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドンなど)など]が使用でき、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウムなど)を使用してもよい。また、必要であれば、胃溶性ポリマー、腸溶性ポリマー、不溶性ポリマーなどを用いてもよい。液剤の調製には、必要に応じて、担体(水、エタノールなど)、界面活性剤、溶解補助剤、緩衝剤などを使用することができる。さらに、本発明の医薬組成物(鼻閉抑制剤又は改善剤)は、保存剤、香料、色素、甘味剤、嬌味剤、清涼化剤などを含んでいてもよい。
【0040】
非経口投与製剤としては、スプレー剤などで鼻粘膜へ投与可能な粉末剤や液剤などが例示できる。
【0041】
本発明の医薬組成物は、抗ヒスタミン薬若しくは抗ヒスタミン作用を主作用とする抗アレルギー薬では抑制することが困難な鼻閉反応を効果的に抑制することができ、鼻閉抑制剤として有用である。特に、前記医薬組成物は、鼻閉2相性反応の即時相反応及び遅発相反応の少なくとも一方の反応(特に双方の反応)に対して高い抑制効果を示す。そのため、アレルギー性鼻炎、風邪症候群などにおける鼻閉抑制剤として有効であり、アレルギー性鼻炎治療剤などに有用である。
【0042】
鼻閉に起因して、鼻からの空気の出入りが阻害される結果、種々の症状が発症する。例えば、睡眠時においては、睡眠障害、いびきなどの症状を引き起こす。また、耳管は鼻の奥の咽頭と耳の鼓室とを連絡する管であり、咽頭の空気は、耳管を通して鼓室に出入りし、鼓室と外耳道の気圧を平衡に保っている。アレルギー性鼻炎や風邪症候群に起因する鼻閉により、耳管内腔粘膜に浮腫性病変が生じる結果、空気が鼓室内に閉じこめられて鼓室と外耳道の気圧平衡が障害されるため、耳管狭窄症などを引き起こす。一方、アレルギー性鼻炎治療剤(ロイコトリエン受容体拮抗作用薬)であるプランルカストは、鼻閉炎症抑制にも耳管狭窄症改善にも効果的であることが報告されている(「耳管狭窄に対するロイコトリエン受容体拮抗作用薬の効果;耳管機能に与える影響について」、耳鼻咽喉科免疫アレルギー、2008、Vol26、No.2、p92〜93)。従って、本発明の医薬組成物は、鼻閉に起因する種々の症状(睡眠障害、いびき、耳管狭窄症など)に対しても有効であり、これらの症状の改善剤として有用である。
【0043】
さらに、鼻閉は睡眠時無呼吸症候群の原因となり、それによって生じる睡眠障害は、うつ病や、心疾患、脳疾患などの循環器系疾患の原因ともなる。また、耳管狭窄症は、航空性中耳炎、滲出性中耳炎や軽度の難聴などの原因となる。そのため、ナンテンジツ及びシンイを有効成分として含む医薬組成物は、これらの疾患の予防及び/又は治療にも有効である。
【0044】
通常、生薬は継続投与する場合が多く、本発明の医薬組成物も継続投与してもよいが、単回投与であっても、即効的に鼻閉を抑制することができる。また、本発明の医薬組成物において、ナンテンジツ及びシンイの有効量は、症状の程度、年齢、投与経路などに応じて選択できる。ナンテンジツの有効量は、経口投与形態では、原生薬換算量として、1日量あたり、0.01〜100g、好ましくは0.1〜50g(例えば、0.5〜25g)、特に1〜10g(例えば、2〜8g)程度である。また、シンイの有効量は、経口投与形態では、原生薬換算量として、1日量あたり、0.01〜100g(例えば、0.1〜50g)、好ましくは0.3〜25g(例えば、0.5〜10g)、特に0.5〜5g(例えば、1〜3g)程度である。本発明の医薬組成物は、1日当たり1回又は2〜6回(例えば、3又は4回)に分けて投与することができる。なお、ナンテンジツを含む製剤とシンイを含む製剤とを併用する場合、両者は、投与に先立って、混合してもよく、両者を別々に投与してもよいが、両製剤を略同時に投与するのが好ましい。なお、別々に投与する場合、両製剤は、時間的な間隔をあけて投与してもよいが、一方の製剤を投与した後、この製剤の薬効が継続している間に、他方の製剤を投与するのも好ましい。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0046】
[ナンテンジツ抽出エキスの調製]
ナンテンジツ原料(日本産)を粉砕し、2kgを計量し、容量20Lのステンレス製還流容器に投入し、30v/v%エタノール水溶液20Lを加えた。上記容器を還流装置にセットし、外浴温度90〜100℃で1時間還流抽出を行った。放冷後、遠心ろ過し、ろ液を減圧濃縮し、軟エキス(乾燥減量:41.04%)626gを得た。
【0047】
[シンイ抽出エキスの調製]
シンイ原料(中国産)を粉砕し、2kgを計量し、容量20Lのステンレス製還流容器に投入し、30v/v%エタノール水溶液20Lを加えた。上記容器を還流装置にセットし、外浴温度90〜100℃で1時間還流抽出を行った。放冷後、遠心ろ過し、ろ液を減圧濃縮し、軟エキス(乾燥減量:44.1%)740gを得た。
【0048】
[試験例1]
モルモット鼻閉2相性反応に対するナンテンジツ及びシンイエキス併用による影響
(1)被験物質及び感作物質及び誘発物質
被験物質としての投与検体(生薬エキス)は、所定量を正確に秤量し、注射用水を加え、撹拌して調製した。
【0049】
一方、感作物質及び誘発物質として、オバルブミン[Ovalbumin(OVA)](Sigma-Aldrich Corporation製)、水酸化アルミニウムゲル(Alum)(コスモバイオ(株)販売)を用い、日本薬局方 生理食塩液で濃度を調整した。
【0050】
(2)使用動物
使用動物としてモルモット(Std: Hartley系,クリーン)を用いた。モルモット(体重297〜355g)は、固形飼料RC4(オリエンタル酵母工業(株)製)を、飲料水(公共水道水)をそれぞれ自由に摂取させ、7日間飼育した。この飼育の間に全ての個体に異常は認められなかった。体重を基に層別無作為に各群[対照(control)群(n=10)、ナンテンジツ群(n=8)、シンイ群(n=8)、ナンテンジツとシンイとの併用投与群(n=8)]に振り分け動物番号を付けた。
【0051】
(3)投与
投与検体をディスポーザブルシリンジ及びフィーディングチューブを用いて強制的に2回経口投与した。また、投与時間は誘発の1時間及び4時間前とした。
【0052】
被験薬物投与群1.ナンテンジツ(2.5g/kg:原生薬換算)
被験薬物投与群2.シンイ(0.75g/kg:原生薬換算)
被験薬物投与群3.ナンテンジツ(2.5g/kg:原生薬換算)とシンイ(0.75g/kg:原生薬換算)との併用投与
(4)鼻閉反応の誘発及び鼻腔抵抗の測定
(4-1)初回感作(0日)として、1mL中にOVA 1mg及びAlum 10mgを含有する生理食塩溶液((OVA 1mg+Alum 10mg)/mL)を、動物あたり1mL背部皮下に投与した。
【0053】
(4-2)最終感作(7日後)として、初回感作1週間後、マイクロピペットを用いて10mg/mL OVA生理食塩溶液を20μLずつ両側の鼻腔内に投与した。
【0054】
(4-3)最終感作1週間後にそれぞれ、マイクロピペットを用いて20mg/mL OVA生理食塩溶液を10μLずつ両側の鼻腔内に投与して抗原抗体反応(モルモット鼻閉2相性反応)を誘発した。
【0055】
そして、誘発(OVA点鼻)前(又は誘発前日,誘発当日)、誘発10分後、3時間後及び5時間後の計4時点において、総合呼吸機能測定システム(Pulmos-I,MIPS社製)を用い、1回、それぞれ100呼吸以上の鼻腔抵抗(nasal airway resistance,nRaw)を測定した。100呼吸の平均値を各測定時間におけるnRawとした。なお、誘発前については、誘発前日及び当日に測定し、平均値をnRawとした。
【0056】
各被験薬物の鼻閉反応に対する抑制の評価は、即時相反応として誘発10分後におけるnRawの増加量及び遅発相反応として誘発3〜5時間後におけるnRawの増加量の曲線下面積(AUC3−5hr,遅発型鼻腔抵抗)に基づいて行なった。
【0057】
nRawの増加量及びAUC3−5hrを算出する計算式を以下に示す。
【0058】
各測定時間のnRawの増加量(cmHO・sec)= 各測定時間のnRaw−誘発前のnRaw
なお、上記式において、AUC3−5hr=I3hr+I5hrであり、I3−5hrは誘発3〜5時間後におけるnRawの増加量を示す。
【0059】
得られた結果を平均値±標準誤差で表示し、統計学的処理を行った。すなわち、対照(control)群と被験物質群間をF検定により検定した。群間に有意な差が認められた場合(不等分散)はAspin−Welchの近似検定を行い、有意な差が認められない場合(等分散)はStudentのt検定を行った。有意水準はいずれの検定も両側1%とし表示した。
【0060】
結果を図1及び図2に示す(図中、**は有意水準1%を示す)。対照(control)群に対してナンテンジツ(2.5g/kg:原生薬換算)投与群は、鼻閉の即時相反応を若干抑制したが遅発相反応に対して全く影響を与えなかった。また、シンイ(0.75g/kg:原生薬換算)投与群は、鼻閉の即時相反応に対しては全く影響を与えなかったが、遅発相反応を若干抑制した。一方、ナンテンジツ(2.5g/kg:原生薬換算)とシンイ(0.75g/kg:原生薬換算)との併用投与群は即時相反応及び遅発相反応の両反応に対し相乗的な抑制作用を示すことが確認された。また、この併用投与群の抑制作用の程度は有意であり、非常に強力であった。これらのことから、ナンテンジツ及びシンイを有効成分とする医薬組成物は、アレルギー性鼻炎、風邪症候群、鼻閉に起因する症状(睡眠障害、耳管狭窄症など)の治療に有効であることが示された。
【0061】
[試験例2]
モルモット鼻閉2相性反応に対するナンテンジツ及びシンイエキス併用による影響
(1)被験物質及び感作物質及び誘発物質
被験物質としての投与検体(生薬エキス)は、所定量を正確に秤量し、注射用水を加え、撹拌して調製した。プランルカストは抗ロイコトリエン作用を有する抗アレルギー薬「オノンカプセル112.5mg」(小野薬品工業(株)製)から抽出したプランルカスト 1/2H2O(原末:純度98%以上)を用いた。プランルカストは、所定量を正確に秤量し、メノウ乳鉢に入れ、乳棒で粉砕した後、日本薬局方 注射用水(以下、注射用水)を用いて溶解した0.5%(w/v)メチルセルロース(MC,400cp)水溶液を徐々に加えて懸濁して調製した。
【0062】
一方、感作物質及び誘発物質として、オバルブミン[Ovalbumin(OVA)](Sigma-Aldrich Corporation製)、水酸化アルミニウムゲル(Alum)(コスモバイオ(株)販売)を用い、日本薬局方 生理食塩液で濃度を調整した。
【0063】
(2)使用動物
使用動物としてモルモット(Std: Hartley系,クリーン)を用いた。モルモット(体重297〜355g)は、固形飼料RC4(オリエンタル酵母工業(株)製)を、飲料水(公共水道水)をそれぞれ自由に摂取させ、7日間飼育した。この飼育の間に全ての個体に異常は認められなかった。体重を基に層別無作為に各群[対照(control)群(n=10)、プランルカスト群(n=8)、ナンテンジツとシンイとの併用投与群(n=8)]に振り分け動物番号を付けた。
【0064】
(3)投与
投与検体をディスポーザブルシリンジ及びフィーディングチューブを用いて強制的に経口投与した。また、投与は誘発1時間前の単回投与とした。
【0065】
被験薬物投与群1.プランルカスト(30mg/kg)
被験薬物投与群2.ナンテンジツ(2.5g/kg:原生薬換算)とシンイ(0.75g/kg:原生薬換算)との併用投与
(4)鼻閉反応の誘発及び鼻腔抵抗の測定
(4-1)初回感作(0日)として、1mL中にOVA 1mg及びAlum 10mgを含有する生理食塩溶液((OVA 1mg+Alum 10mg)/mL)を、動物あたり1mL背部皮下に投与した。
【0066】
(4-2)最終感作(7日後)として、初回感作1週間後、マイクロピペットを用いて10mg/mL OVA生理食塩溶液を20μLずつ両側の鼻腔内に投与した。
【0067】
(4-3)最終感作1週間後にそれぞれ、マイクロピペットを用いて20mg/mL OVA生理食塩溶液を10μLずつ両側の鼻腔内に投与して抗原抗体反応(モルモット鼻閉2相性反応)を誘発した。
【0068】
そして、誘発(OVA点鼻)前(又は誘発前日,誘発当日)、誘発10分後、3時間後及び5時間後の計4時点において、総合呼吸機能測定システム(Pulmos-I,MIPS社製)を用い、1回、それぞれ100呼吸以上の鼻腔抵抗(nasal airway resistance,nRaw)を測定した。100呼吸の平均値を各測定時間におけるnRawとした。なお、誘発前については、誘発前日及び当日に測定し、平均値をnRawとした。
【0069】
各被験薬物の鼻閉反応に対する抑制の評価は、即時相反応として誘発10分後におけるnRawの増加量及び遅発相反応として誘発5時間後におけるnRawの増加量により示した。
【0070】
得られた結果を平均値±標準誤差で表示し、統計学的処理を行った。すなわち、対照(control)群と被験物質群間をF検定により検定した。群間に有意な差が認められた場合(不等分散)はAspin−Welchの近似検定を行い、有意な差が認められない場合(等分散)はStudentのt検定を行った。有意水準はいずれの検定も両側5%としたが、表示においては有意水準5%と有意水準1%とを分け行った。
【0071】
結果を図3及び図4に示す(図中、*は有意水準5%、**は有意水準1%を示す)。対照(control)群に対してプランルカスト(30mg/kg)投与群は、鼻閉の即時相反応および遅発相反応を有意に抑制した。一方、ナンテンジツ(2.5g/kg:原生薬換算)とシンイ(0.75g/kg:原生薬換算)との併用投与群は即時相反応及び遅発相反応の両反応に対し、単回による投与のみでプランルカストに匹敵するほど非常に強力に鼻閉反応を抑制することが確認された。これらのことから、ナンテンジツ及びシンイを有効成分とする医薬組成物は、鼻閉反応を即効的に抑制することから、アレルギー性鼻炎、風邪症候群、鼻閉に起因する種々の症状(睡眠障害、耳管狭窄症など)に対しても有効であることが示された。
【0072】
実施例1
軽質無水ケイ酸((有)ワイ・ケイ・エフ製)480g、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達(株)製)336g、コーンスターチ(日本コーンスターチ(株)製)720g、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ(株)製「PH101」)1688.9gをバーチカルグラニュレーター(パウレック(株)製「FM−VG25型」)に仕込み、ブレード回転数200rpm、クロススクリュー回転数3000rpmで、ナンテンジツエキス2181.6g及びシンイエキス680.0gに精製水を加えて造粒した。得られた造粒物をパワーミル(昭和化学機械工作所(株)製 4mmφ×24mmのヘリーンボーン)で湿式整粒を行い、さらに流動層乾燥機(パウレック(株)製「FD−5S型」)で給気温度85℃、風量2.5m/minで排気温度55℃まで乾燥した。乾燥後、パワーミル(1.0mmφスクリーン)で整粒し、整粒末とした。得られた整粒末3960gにコーンスターチ19.7g、甘味剤としてアスパルテーム28.0g、アセスルファムカリウム14g、香料としてジンジヤーオイル微量及び香料の吸着剤としてサイリシア1.0gを添加し、タンブラー混合機(昭和化学機械工作所(株)製「TM−15型」)で混合し、3包当り2.1g(ナンテンジツエキスの原生薬として5000mg及びシンイエキスの原生薬として1500mg含有)の散剤を得た。
【0073】
実施例2
軽質無水ケイ酸((有)ワイ・ケイ・エフ製)480g、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達(株)製)336g、コーンスターチ(日本コーンスターチ(株)製)720g、クロスポビドン(BASF社製)240g、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ(株)製「PH101」)1448.9gをバーチカルグラニュレーター(パウレック(株)製「FM−VG25型」)に仕込み、ブレード回転数200rpm、クロススクリュー回転数3000rpmで、ナンテンジツエキス2181.6g及びシンイエキス680.0gに精製水を加えて造粒した。得られた造粒物をパワーミル(昭和化学機械工作所(株)製 4mmφ×24mmのヘリーンボーン)で湿式整粒を行い、さらに流動層造粒機(パウレック(株)製「FD−5S型」)で給気温度85℃、風量2.5m/minで排気温度55℃まで乾燥した。乾燥後、パワーミル(1.5mmφスクリーン)で整粒し、整粒末とした。得られた整粒末3960gにクロスポビドン216g、コーンスターチ77g、甘味剤としてアスパルテーム30.0g、アセスルファムカリウム15g、香料としてジンジヤーフレーバー微量及び香料の吸着剤としてサイリシア1.0g、ステアリン酸マグネシウム21gを添加し、タンブラー混合機(昭和化学機械工作所(株)製「TM−15型」)で混合し、ロータリー式打錠機コレクト19HUK(菊水製作所(株)製)を用い、1錠240mg,8.5mmφ、2段Rの杵で打錠圧9KN/杵で打錠し素錠を得た。
【0074】
実施例3
実施例2で得られた素錠をロールグラニュレーター(日本グラニュレーター(株)製)で解砕、篩過し、3包当り2.16g(ナンテンジツエキスの原生薬として5000mg及びシンイエキスの原生薬として1500mg含有)の顆粒剤を得た。
【0075】
実施例4
ナンテンジツ乾燥エキス2272.5g、シンイ乾燥エキス681.8g、軽質無水ケイ酸((有)ワイ・ケイ・エフ製)150g、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達(株製))180g、コーンスターチ(日本コーンスターチ(株)製)390g、マンニトール(メルク社製)240g、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ(株)製「PH101」)1087.5gをバーチカルグラニュレーター(パウレック(株)製「FM−VG25型」)に仕込み、ブレード回転数200rpm、クロススクリュー回転数3000rpmで精製水を加えて造粒した。得られた造粒物をパワーミル(昭和化学機械工作所(株)製 4mmφ×24mmのヘリーンボーン)で湿式整粒を行い、さらに流動層乾燥機(パウレック(株)製「FD−5S型」)で給気温度85℃、風量2.5m/minで排気温度55℃まで乾燥した。乾燥後、パワーミル(1.0mmφスクリーン)で整粒し、整粒末とした。得られた整粒末2880gにコーンスターチ89g、甘味剤としてアスパルテーム20、アセスルファムカリウム10g、香料としてl−メントール微量及びサイリシア1.0gを添加し、タンブラー混合機(昭和化学機械工作所(株)製「TM−15型」)で混合し、3包当り1.5gの散剤を得た。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の医薬組成物は、有効成分として、ナンテンジツ及びシンイを用いるため、抗ヒスタミン薬若しくは抗ヒスタミン作用を主作用とする抗アレルギー薬では抑制することが困難な鼻閉反応であっても、効果的に抑制することができる。そのため、鼻閉抑制剤、特に、アレルギー性鼻炎、風邪症候群などにおける鼻閉抑制剤として有用であるとともに、アレルギー性鼻炎治療剤としても有用であり、鼻閉に起因する症状、例えば、睡眠障害、いびき、耳管狭窄症などを改善するのにも有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナンテンジツ及びシンイを有効成分として含有する鼻閉抑制剤。
【請求項2】
ナンテンジツ及びシンイの双方を含有する請求項1記載の鼻閉抑制剤。
【請求項3】
ナンテンジツを含む製剤とシンイを含む製剤とを組み合わせた請求項1記載の鼻閉抑制剤。
【請求項4】
アレルギー性鼻炎又は風邪症候群における鼻閉反応を抑制する請求項1〜3のいずれかの項に記載の鼻閉抑制剤。
【請求項5】
有効成分の抽出エキスを含む請求項1〜4のいずれかの項に記載の鼻閉抑制剤。
【請求項6】
鼻閉2相性反応の即時相反応及び遅発相反応の少なくとも一方の反応に対して抑制作用を有する請求項1〜5のいずれかの項に記載の鼻閉抑制剤。
【請求項7】
ナンテンジツ及びシンイを有効成分として含有するアレルギー性鼻炎治療剤。
【請求項8】
鼻閉に起因する睡眠障害及びいびきのうち少なくとも一方の症状を改善する改善剤であって、ナンテンジツ及びシンイを有効成分として含有する改善剤。
【請求項9】
鼻閉に起因する耳管狭窄症を改善する改善剤であって、ナンテンジツ及びシンイを有効成分として含有する改善剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−47566(P2010−47566A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172200(P2009−172200)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【Fターム(参考)】