説明

半導体ウェハの裏面加工方法及び裏面加工時における半導体ウェハの表面側構造

【目的】 半導体ウェハのウェハ支持体に対する平行状態を確保しつつ実施することのできる半導体ウェハの裏面加工方法及び裏面加工時における半導体ウェハの表面側構造を提供する。
【構成】 半導体ウェハ1の裏面加工方法は、裏面加工すべき半導体ウェハ1の表面側を膜体10によって全面的に覆う工程と、半導体ウェハ1の外側端縁にまで引き出されて開口する複数本の溝部11を膜体10の所定箇所それぞれに形成する工程と、膜体10によって覆われた半導体ウェハ1の表面側を接合用ワックス3を介してウェハ支持体2上に載せ付けたうえで押圧する工程とを含んでいる。また、半導体ウェハ1の表面側構造は、その表面側が膜体10によって全面的に覆われており、この膜体10の所定箇所それぞれには半導体ウェハ1の外側端縁にまで引き出されて開口する複数本の溝部11が形成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体ウェハの裏面加工方法及び裏面加工時における半導体ウェハの表面側構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、半導体素子を製造する際には、その実装時における熱放散機能を高めるべく、半導体ウェハの段階において基板厚みを100μm程度以下にまで薄くしておくことが行われており、基板厚みを薄くするには半導体ウェハをその裏面側から少しずつ削り取っていく方法を採用するのが一般的となっている。そして、このような裏面加工の実施にあたっては、図3で例示するような支持構造、すなわち、裏面加工すべき半導体ウェハ1と、半導体ウェハ1の表面側を支持するウェハ支持体2とを、接合用ワックス3を介して貼り合わせてなる支持構造が利用されており、この半導体ウェハ1は次のような手順に従って裏面加工されるようになっている。
【0003】まず、裏面加工すべき半導体ウェハ1と対面してこれを全面的に支持するガラス製の円板をウェハ支持体2として用意したうえ、その一面上に接合用ワックス3を塗布して溶融させる。つぎに、この熔融状態にある接合用ワックス3に対して半導体ウェハ1の加工済みとなった表面を押し付けることにより、この接合用ワックス3を介して半導体ウェハ1とウェハ支持体2とを互いに貼り合わせる。そして、接合用ワックス3を固化させて半導体ウェハ1及びウェハ支持体2を一体化した後、ウェハ支持体2の他面、すなわち、半導体ウェハ1が貼り合わされていない面(図では、下側面)を加工基準としながら半導体ウェハ1の裏面(図では、上側面)に対する研磨もしくは研削を行って基板厚みが所定厚みとなるまで薄く加工する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前述したような半導体ウェハ1の裏面加工は、この半導体ウェハ1を支持するウェハ支持体2を加工基準として行われるのであるから、半導体ウェハ1とウェハ支持体2との平行状態が確保されているか否かが裏面加工時における重要な要素となる。そして、これら両者の平行状態が確保されているか否かは、半導体ウェハ1とウェハ支持体2との間に介在する接合用ワックス3の厚みが両者間のいずれの箇所においても均一となっているか否かに基づいて定まることになる。
【0005】しかしながら、接合用ワックス3を利用して半導体ウェハ1とウェハ支持体2とを全面的に貼り合わせた場合、接合用ワックス3が均一な厚みで両者間に介在することになるとは限らず、図3で示したように、半導体ウェハ1とウェハ支持体2との間に接合用ワックス3のうちの過剰分までもが残ってしまい、接合用ワックス3の厚みが不均一となる結果、この接合用ワックス3を介して貼り付けられた半導体ウェハ1が傾いた姿勢のままでウェハ支持体2と一体化されてしまうことが起こる。そして、このようになっていると、傾いた状態のままで半導体ウェハ1の裏面加工が行われることになり、基板厚みが不均一となる結果、得られた半導体素子それぞれにおける厚みが互いにばらつくという不都合が生じてしまう。
【0006】本発明は、このような不都合に鑑みて創案されたものであって、半導体ウェハのウェハ支持体に対する平行状態を確保しつつ実施することのできる半導体ウェハの裏面加工方法及び裏面加工時における半導体ウェハの表面側構造の提供を目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明にかかる半導体ウェハの裏面加工方法は、裏面加工すべき半導体ウェハの表面側を膜体によって全面的に覆う工程と、前記半導体ウェハの外側端縁にまで引き出されて開口する複数本の溝部を前記膜体の所定箇所それぞれに形成する工程と、前記膜体によって覆われた前記半導体ウェハの表面側を接合用ワックスを介してウェハ支持体上に載せ付けたうえで押圧する工程とを含むことを特徴としている。また、裏面加工時における半導体ウェハの表面側構造は、ウェハ支持体によって支持される半導体ウェハの表面側が膜体によって全面的に覆われており、この膜体の所定箇所それぞれには前記半導体ウェハの外側端縁にまで引き出されて開口する複数本の溝部が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
【作用】上記方法によれば、膜体によって覆われた半導体ウェハの表面側をウェハ支持体上に載せ付けたうえで押圧すると、接合用ワックスの過剰分は膜体に形成された溝部を伝わりながら半導体ウェハの外側端縁にまで速やかに押し出されることになる。そこで、半導体ウェハの表面側を覆う膜体とウェハ支持体との間には余分な接合用ワックスが介在しなくなり、これらの両者間における接合用ワックスの厚みが均一化される結果、両者の平行状態が確保されることになる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0010】図1は裏面加工時における半導体ウェハの表面側構造及びその支持構造を示す分解斜視図であり、図2は貼り合わせ状態を示す側断面図である。なお、これらの図において従来例を示す図3と互いに同一もしくは相当することになる部品、部分については同一符号を付し、ここでの詳しい説明は省略する。
【0011】本実施例にかかる支持構造は、裏面加工すべき半導体ウェハ1と、半導体ウェハ1の表面側を全面的に支持するウェハ支持体2とを、接合用ワックス3を介して貼り合わせてなる構造を有する一方、半導体ウェハ1の表面側構造としては、半導体ウェハ1の表面側を所定厚みの膜体10によって全面的に覆ったうえ、この膜体10の所定箇所それぞれには半導体ウェハ1の外側端縁にまで引き出されて開口する複数本の溝部11を形成した構造が採用されている。すなわち、この半導体ウェハ1の既に加工済みとなった表面上には保護膜(図示していない)を介して数μmの厚みとされた膜体10であるレジスト膜が形成されており、かつ、このレジスト膜には複数本の溝部11が縦横の向きに沿って形成されている。なお、この膜体10がレジスト膜に限定されるものではなく、絶縁性樹脂シートなどであってもよいことは勿論である。また、ここで、半導体ウェハ1と対面してこれを支持するウェハ支持体2としては、従来例同様、ガラス製の円板が用いられている。
【0012】つぎに、このような支持構造及び表面側構造を有する半導体ウェハ1の裏面加工方法を手順に従って説明する。
【0013】まず、半導体ウェハ1の表面側におけるレジスト膜形成及びパターニングを行うことにより、この半導体ウェハ1の表面側を全面的に覆う膜体10としてのレジスト膜及び複数本の溝部11を形成する。そして、この際、溝部11のそれぞれは半導体ウェハ1のスクライブライン(図示していない)に沿って形成すれば、スクライブラインの幅が40μm程度であるのに対して溝部11の幅は合わせマージンを十分に確保しうる20μm程度でよいことになる。次いで、ガラス製の円板をウェハ支持体2として用意し、その一面上にスカイワックス(商品名)のような接合用ワックス3を塗布したうえで溶融させる。
【0014】その後、この熔融状態にある接合用ワックス3に対して半導体ウェハ1を押し付け、すなわち、その表面上を覆う膜体10から接合用ワックス3に向かうようにして押し付けることにより、この接合用ワックス3を介して半導体ウェハ1とウェハ支持体2とを全面的に貼り合わせる。さらに、このような貼り合わせを行った後、互いに貼り合わされた半導体ウェハ1及びウェハ支持体2を貼り合わせ方向に沿って押圧すると、接合用ワックス3の過剰分は半導体ウェハ1の表面上を覆う膜体10に形成された溝部11を伝わりながら半導体ウェハ1の外側端縁にまで押し出されてくる。そこで、これらの互いに貼り合わされた半導体ウェハ1とウェハ支持体2との間には余分な接合用ワックス3が介在しないことになり、これらの両者間における接合用ワックス3の厚みは均一化される。
【0015】引き続き、接合用ワックス3の固化によって半導体ウェハ1及びウェハ支持体2を一体化したうえ、ウェハ支持体2の他面、すなわち、半導体ウェハ1が貼り合わされていない面(図では、下側面)を加工基準としながら半導体ウェハ1の裏面(図では、上側面)に対する研磨もしくは研削を行って基板厚みが所定厚みとなるまで薄く加工する。そして、半導体ウェハ1の裏面加工が終了すると、接合用ワックス3を溶解しうる剥離用溶剤を用いることによってウェハ支持体2から半導体ウェハ1を剥離する。なお、この際には、半導体ウェハ1の表面上を覆う膜体10に形成された溝部11を通じて剥離用溶剤が浸透するため、剥離作業に要する時間が短くて済むことになると同時に、膜体10であるレジスト膜によって素子表面の保護が行われるという利点がある。
【0016】さらに、ウェハ支持体2から剥離された半導体ウェハ1をアセトンなどの溶剤中に浸漬し、その表面上からレジスト膜を取り去った後、次工程において半導体ウェハ1のスクライブを行うと、個々に分割された半導体素子が得られる。
【0017】
【発明の効果】以上説明したように、本発明にかかる半導体ウェハの裏面加工方法及び裏面加工時における半導体ウェハの表面側構造によれば、膜体によって覆われた半導体ウェハの表面側とウェハ支持体との間に余分な接合用ワックスが介在することはなくなり、これらの両者間における接合用ワックスの厚みが均一化される結果、半導体ウェハのウェハ支持体に対する平行状態が確保されることになる。そのため、このウェハ支持体を加工基準として裏面加工された半導体ウェハ及びこれから得られる半導体素子それぞれにおける基板厚みもばらつくことなく均一になるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】裏面加工時における半導体ウェハの表面側構造及びその支持構造を示す分解斜視図である。
【図2】その貼り合わせ状態を示す側断面図である。
【図3】従来例にかかる裏面加工時における半導体ウェハの支持構造の貼り合わせ状態を示す側断面図である。
【符号の説明】
1 半導体ウェハ
2 ウェハ支持体
3 接合用ワックス
10 膜体
11 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 裏面加工すべき半導体ウェハ(1)の表面側を膜体(10)によって全面的に覆う工程と、前記半導体ウェハ(1)の外側端縁にまで引き出されて開口する複数本の溝部(11)を前記膜体(10)の所定箇所それぞれに形成する工程と、前記膜体(10)によって覆われた前記半導体ウェハ(1)の表面側を接合用ワックス(3)を介してウェハ支持体(2)上に載せ付けたうえで押圧する工程とを含むことを特徴とする半導体ウェハの裏面加工方法。
【請求項2】 ウェハ支持体(2)によって支持される半導体ウェハ(1)の表面側が膜体(10)によって全面的に覆われており、この膜体(10)の所定箇所それぞれには前記半導体ウェハ(1)の外側端縁にまで引き出されて開口する複数本の溝部(11)が形成されていることを特徴とする裏面加工時における半導体ウェハの表面側構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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