説明

半導体ウエハの裏面研削に使用される表面保護部材の評価方法および該方法に用いる評価装置

【課題】 ウエハの裏面研削時に使用される表面保護用粘着シートなどの表面保護部材の裏面研削適性を簡便に評価しうる方法およびそのために用いる評価装置を提供すること。
【解決手段】 本発明に係る表面保護部材の裏面研削適性評価方法は、表面保護部材に凹凸部材を押し当てるステップと、前記凹凸部材に掛かる荷重を検出するステップとを有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面研削時に、ウエハの回路面を保護するために回路面に貼付される表面保護用粘着シートなどの表面保護部材の評価方法に関し、さらに詳しくは、ウエハ表面の凹凸に対する表面保護部材の形状追従性を簡便に評価する方法に関する。また、本発明は、この評価方法に用いられる評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報端末機器の薄型化、小型化、多機能化が急速に進む中、それらに搭載される半導体装置も同様に、薄型化、高密度化が求められている。具体的には半導体が集積されている半導体ウエハの薄型化や半導体チップと基板の接合に用いられる、はんだ等からなる直径数百μm程度の球状バンプを回路面に搭載した半導体チップの実装技術が求められている。通常バンプは予め半導体ウエハに高密度に接合されている。このようなバンプ付ウエハの裏面(回路面の反対面)を研削すると、バンプが存在する部分とバンプが存在しない部分との高低差に起因する圧力差がウエハ裏面に直接影響し、ウエハ裏面にディンプルとよばれる窪みやクラックが生じ、最終的に半導体ウエハを破損させてしまう。
【0003】
このため、バンプ付ウエハの裏面研削時には、表面保護用粘着シートを回路面に貼付し、回路面の高低差を緩和している。この用途に用いられる表面保護用粘着シートは、種々上市されているが、近年の高集積化や、バンプ配置の高密度化により、従来使用されている表面保護用粘着シートでは、十分な保護機能が得られなくなり、ディンプル等の発生の抑制が困難になっている。そこで、表面保護用粘着シートの基材の材質や厚み、粘着剤層の材質や厚み等を様々に組み合わせ、上記要望に応えうる表面保護用粘着シートの開発が進められている(たとえば、特許文献1(特許公報3739570号)参照)。
【0004】
ウエハの裏面研削時に使用される表面保護用粘着シートには、半導体ウエハ表面の凹凸差を緩和し、ウエハ表面の凹凸に追従して変形しウエハを平滑に保持し、さらに裏面研削終了後には、ウエハ表面に粘着剤を残留させることなく剥離可能な性質が求められている。これらの中でも、ウエハ表面の凹凸に対して追従する変形性、および変形後に速やかに応力を緩和する応力緩和性は、ディンプルやクラックの発生に大きな影響を及ぼすと考えられる。
【0005】
すなわち、ウエハの表面形状に追従する変形性が不十分であれば、ウエハ表面の高低差を緩和できず、高低差に起因する圧力差がウエハ裏面に直接影響し、ウエハ裏面にディンプルが発生する。また、変形後の応力緩和性が不十分であれば、ウエハの薄化にしたがい、ウエハに対する残留応力の影響が増大し、ウエハにクラックを発生することがある。さらに、粘着シートの粘着剤層を貫通したバンプが基材に押し付けられて、バンプが潰れてしまうこともある。以下では、ウエハ裏面研削に用いられる表面保護用粘着シートに求められる特性を「裏面研削適性」と総称することがある。
【0006】
粘着シート等の表面保護部材の裏面研削適性は、評価対象となる表面保護部材をバンプ付ウエハに貼付し、実際に裏面研削を行って、その結果に基づいて評価していた。しかし、高価なバンプ付ウエハを使用するため経費が高く、また研削に長時間を要するため、作業効率も低い。
【0007】
このため、簡便に測定可能な何らかの物性値により、表面保護部材の裏面研削適性を評価することができれば、コストや作業効率の改善に寄与できる。このような簡便に測定可能な表面保護部材の物性値としては、弾性率やヤング率などが考えられるが、これらの物性値と裏面研削適性の実際の評価結果との相関性が認められないことがあった。
【0008】
なお、特許文献2(特開2009−128015公報)には、樹脂シートの圧縮切断特性を簡便に評価するために、樹脂シートに一定の条件で切断刃を押し付け、その際に測定される荷重およびそのピーク値から、圧縮切断特性を見積もる方法および装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許公報3739570号
【特許文献2】特開2009−128015公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであり、ウエハの裏面研削時に使用される表面保護用粘着シートなどの表面保護部材の裏面研削適性を簡便に評価しうる方法およびそのために用いる評価装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題の解決を目的として鋭意研究した結果、裏面研削適性の評価には、表面保護部材の厚み方向での圧縮に対する変形性および変形後の応力緩和性を適切に評価すべき必要があることを見出した。表面保護部材が、ウエハ表面の凹凸に追従して変形するためには、ウエハを表面保護部材に押し付けた際の応力が比較的低く、また一定の緩和性を有することが好ましいと考えられる。
【0012】
このような着想に基づいて完成された本発明は、以下の要旨を含む。
(1)表面保護部材に凹凸部材を押し当てるステップと、
前記凹凸部材に掛かる荷重を検出するステップと、
を備える、表面保護部材の裏面研削適性評価方法。
(2)表面保護部材に凹凸部材を一定の深さ押し当てるステップと、
前記凹凸部材に掛かる荷重を検出するステップと、
を備える、表面保護部材の裏面研削適性評価方法。
(3)表面保護部材に凹凸部材を一定の深さ押し当てて、前記表面保護部材に掛かる荷重を検出し、前記荷重に基づいて前記表面保護部材の凹凸追従性を評価する、表面保護部材の裏面研削適性評価方法。
(4)表面保護部材が単層樹脂シートまたは粘着シートである(1)〜(3)の何れかに記載の裏面研削適性評価方法。
(5)表面保護部材を圧縮するための凹凸部材と、
前記表面保護部材を支持する支持部と、
前記凹凸部材または前記支持部の少なくとも一方を移動して前記凹凸部材を前記表面保護部材に押し当てる駆動部と、
前記凹凸部材に掛かる荷重を検出する荷重検出部と
を備える、表面保護部材の裏面研削適性を評価するための裏面研削適性評価装置。
(6)前記表面保護部材と凹凸部材との温度に制御する温度制御装置を備える、(5)に記載の裏面研削適性評価装置。
(7)表面保護部材に凹凸部材を一定の深さ押し当てる押圧手段と、
前記凹凸部材に掛かる荷重を検出する荷重検出手段を備える、裏面研削適性評価装置。
(8)前記表面保護部材と凹凸部材との温度に制御する温度制御手段を備える、(7)に記載の裏面研削適性評価装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る表面保護部材の評価方法によれば、表面保護部材の厚み方向での圧縮に対する変形性および応力緩和性を簡便に評価できるため、様々な条件下で使用される表面保護部材の開発コストや、評価時の作業効率の改善に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態である裏面研削適性評価装置の外観を示す模式的な正面図である。
【図2】図1の裏面研削適性評価装置で使用される凹凸部材の側面図である。
【図3】図1の裏面研削適性評価装置で使用される凹凸部材の平面図である。
【図4】表面保護部材の一例である粘着シートの概略断面図である。
【図5】表面保護部材に対し凹凸部材を押し込んだ際の圧縮荷重曲線のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
まず、本発明の一実施形態である裏面研削適性評価装置の外観を模式的に示す正面図を図1に示す。
【0016】
裏面研削適性評価装置10は、表面保護部材である試料Sに凹凸部材12を押し当てる押圧手段を有し、具体的には、試料Sを載置する支持部として用いた台座11と、台座11に相対して配置される凹凸部材12と、凹凸部材12を保持する保持部13と、保持部13を支持するとともに凹凸部材12および保持部13とを台座11に向けて移動する駆動部14とを備える。台座11は、基台15の上に装着される。また、基台15の上には台座11を間に挟んで一対の支柱部16、16が設けられ、支柱部16、16間には桁部17が基台15の上を横切るように架設される。
【0017】
保持部13は、駆動部14にその一端が連結されるシャフト部13Aに連結され、凹凸部材12は保持部13の下面に着脱可能に保持される。凹凸部材12の保持方法は特に限定はされず、両面粘着シートや、接着剤、ネジなどの留め具により固定すればよい。
【0018】
駆動部14は、桁部17の略中央に配置され、保持部13を凹凸部材12と一体的に昇降し、その位置(移動距離)が検出される。すなわち、押圧手段として保持部13が押し下げられると、凹凸部材12は試料Sに押し当てられ、台座11に載置された試料Sに凹凸部材12が押し込まれる。この際、凹凸部材12に対する試料Sからの反発が荷重として検出される。荷重検出手段として、駆動部14と共に、ロードセルなどの荷重検出部18が設けられ、保持部13を介して、試料Sを圧縮する際に凹凸部材12に掛かる荷重、および凹凸部材12と試料Sとの相対位置が時系列に検出される。通常は、凹凸部材12は、一定速度で試料Sに押し付けられることにより、速度をモニターすることで、凹凸部材12と試料Sとの相対位置関係、凹凸部材12と試料Sとの距離、試料Sに対する凹凸部材12の埋め込み深さは判明する。したがって、本装置によれば、凹凸部材12を、試料Sに押し当て、試料Sへの凹凸部材の埋め込み深さを制御することができる。
【0019】
荷重検出部18によって時系列に順次出力される荷重データがコンピュータ19に送られる。コンピュータ19は荷重値を検出した際の凹凸部材12と表面保護部材との相対位置(たとえば、凹凸部材12の表面保護部材表面からの埋め込み深さ)を求めることができ、すなわち位置情報検出手段を兼ねる。荷重値は、例えばそのときの凹凸部材の位置とともに例えばメモリに記録される。また、荷重は凹凸部材の位置とともに、例えばコンピュータディスプレイやプリンタである表示装置20に表示される。
【0020】
裏面研削適性評価装置10は、表面保護部材Sおよび凹凸部材12の温度を制御する温度制御機構21を備えることが好ましい。温度制御機構21は、少なくとも凹凸部材12と表面保護部材Sとを収納する恒温槽と、恒温槽内の温度を測定する温度計などの温度測定手段と、さらに恒温槽内の温度を上昇、下降しうる加熱手段、冷却手段を備えることが好ましい。加熱手段としては、恒温槽の内部または外部に設置された発熱体や加熱ジャケットなどがあげられ、冷却手段としては、恒温槽に設置された冷却ジャケットがあげられる。このような温度制御機構21を備えることで、様々な温度条件下での裏面研削適性を簡便に評価できる。
【0021】
図2、図3は凹凸部材12の側面図および平面図である。凹凸部材12の表面形状は、半導体ウエハ表面の形状を模したものであるが、厳密にウエハ表面と同形状である必要はない。たとえば、高さ10〜400μm程度、直径10〜500μm程度の球状バンプ12Aが間隔(ピッチ)1〜1000μm程度で整列したバンプ付ウエハの一部を切り出したバンプチップであってもよい。
【0022】
凹凸部材12の表面に形成される凹凸部(バンプ12A)の高さ(バンプ高さ)は、測定対象である表面保護部材の厚み方向での変形性に合わせて適宜に選定することが好ましい。すなわち、厚み方向に変形しやすい場合には、バンプ高さは高くてもよいが、厚み方向での変形性が低い場合には、バンプ高さを低くすることが好ましい。たとえば、表面保護部材が、基材とその上に形成された粘着剤層とからなる場合であって、基材が厚み方向に変形し難い硬質のポリエチレンテレフタレートフィルムの場合には、バンプ高さは、粘着剤層の厚みと同程度以下とすることが好ましい。また、基材が比較的軟質で厚み方向に変形しやすい場合には、バンプ高さは、粘着剤層の厚みよりも高くてもよいが、表面保護部材の全厚よりも低くする。また、凹凸部材12の表面に、多数のバンプ12Aが設けられ場合には、各バンプの高さは、ほぼ等しいこと好ましい。
【0023】
バンプ高さに対して、表面保護部材の厚みが薄すぎる場合には、応力の測定時に一定位置(一定量の深さ)に到達する前に、バンプが台座11からの反発力を強く受けてバンプが潰れてしまい、有意な測定結果が得られない場合がある。
【0024】
したがって、測定に先立ち、先端の丸い針状体を、表面保護部材の表面に押し付け、埋め込み可能な長さを測定し、これと同程度の凹凸部の高さを有する凹凸部材を使用することが好ましい。
【0025】
図4は、本実施形態において表面保護部材Sとして用いられる粘着シートの断面図である。図示されるように、粘着シートSは、基材S1と、その上に形成された粘着剤層S2とからなる。粘着シートとしては、半導体ウエハの裏面研削時の表面保護に用いられる各種の粘着シートが特に制限されることなく用いられる。また、表面保護部材は、ウエハの回路面を保護するものであれば、粘着シートに限定はされず、たとえば適度な弾性、自己接着性を有する単層樹脂シートもしくは積層樹脂シートであってもよい。
【0026】
台座11には、表面保護部材Sが載置される。なお、表面保護部材が粘着シートである場合には、粘着シートの粘着剤層S2が凹凸部材12側になるように粘着シートが載置される。凹凸部材12は例えば0.1〜1000μm/秒、好ましくは1〜100μm/秒の速さで粘着シートSに向けて移動される。移動速度を適当な範囲に設定することにより、表面保護部材の形状追従性、応力緩和性の速度(時間的性能)を評価することができる。凹凸部材12の移動速度が速すぎる場合には、凹凸部材12の移動に対して、表面保護部材Sの変形が追従できず、有意な評価結果は得られない。
【0027】
図5に、凹凸部材12を表面保護部材Sに向かって移動させたときの凹凸部材12の先端(バンプ頂部)の位置と荷重検出部18により検出される荷重(圧縮荷重)との間の関係の一例を示す。図5において横軸は、時間であり、凹凸部材は一定速度で表面保護部材S方向に移動するので、凹凸部材先端が表面保護部材に接触するまでは、凹凸部材と表面保護部材Sとの距離を計算できる。点P1は、凹凸部材先端がシート状部材Sの表面と接触し始めた位置を示す。この時点以後は、凹凸部材がシート状部材Sに一定速度で埋め込まれていく。
【0028】
図5の縦軸はN(ニュートン)を単位として、凹凸部材に掛かる荷重を示す。図5において、凹凸部材先端は経時的には表面保護部材に埋め込まれ、これに伴って凹凸部材に掛かる圧縮荷重は曲線に沿って変化する。
【0029】
点P1は、凹凸部材先端が表面保護部材Sの表面と接触し始めた位置を示す。凹凸部材先端が表面保護部材Sに接触すると、表面保護部材Sからの反発力が荷重として測定される。点P1の位置から更に台座11に向けて凹凸部材が移動すると、表面保護部材Sは圧縮され始め、凹凸部材が移動するにしたがって圧縮荷重は上昇する。この際、表面保護部材Sは、厚み方向に変形が始まり、凹凸部材が押し付けられている部分の厚みが薄くなる。さらに、凹凸部材を表面保護部材Sに押し込み続けると、表面保護部材Sを構成する樹脂(粘着剤等)の塑性変形が起こり、表面保護部材Sからの反発力が低下し、応力緩和性を反映した圧縮荷重値として測定される。
【0030】
本発明では、凹凸部材をシート状部材Sに一定量埋め込んだときの圧縮荷重および圧縮応力を測定することにより、シート状部材の凹凸追従性を評価することができる。埋め込み量は、0より大きくシート状部材以下であり、たとえば、シート状部材の厚みの1〜90%が好ましく、5〜50%が特に好ましい。
【0031】
一般的に裏面研削適性の評価では、バンプの高低差を吸収できる保護部材が好ましいと考えられる。この吸収性が低い保護部材を用いての保護形態でウエハの裏面研削を行うと、研削に使用するグラインダーの圧力によってバンプが保護部材に押し付けられる。このため、ウエハの裏面研削時に回路面のバンプが潰れたり、ウエハ裏面にディンプルやクラックが発生することがあった。特に、保護部材の硬度が高すぎる場合には、このような問題は顕著に現れる。一方、保護部材の硬度が低すぎる場合には、保護部材の形状保持性が不充分になり、研削に続く次工程への運搬の際に、ウエハを破損する危険性が高くなる。
【0032】
また、一定量埋め込んだときの荷重値が小さな場合には、表面保護部材は僅かな圧縮で変形することを意味している。したがって、形状追従性、応力緩和性は優れる。しかし、一定量埋め込んだときの荷重値が小さすぎると、表面保護部材をロール状に巻き取る程度の圧力でも変形することがあるため、表面保護部材自体の形状保持性が損なわれることがある。
【0033】
一方、一定量埋め込んだときの荷重値が大きな場合には、表面保護部材の変形に大きな荷重が必要であることを意味している。したがって、表面保護部材自体の形状保持性には優れるが、形状追従性、応力緩和性は低下する。一定量埋め込んだときの荷重値が大きすぎると、バンプ付ウエハが表面保護部材に押しつけられた際に、バンプが潰れるおそれがある。
【0034】
また、圧縮荷重値を、凹凸部材の表面保護部材に接する表面積(バンプの表面積)で除することで、圧縮応力が算出される。凹凸部材として、表面形状の異なるものを使用した場合には、圧縮応力により規格化することで、評価を適正化できる。
【0035】
以上、本発明について、図面に記載した裏面研削適性装置の使用態様に沿って説明したが、本発明は、特定の装置の使用態様に限定されるものではない。
【0036】
すなわち、本発明を、表面保護部材の裏面研削適性評価方法として考えれば、本発明の方法は、表面保護部材に凹凸部材を押し当てるステップと、前記凹凸部材に掛かる荷重を検出するステップとを備える。
【0037】
また、本発明の方法を他の観点から記述すれば、表面保護部材に凹凸部材を一定の深さまで押し当てて、前記凹凸部材に掛かる荷重を検出するとともに、前記荷重値に基づいて前記表面保護部材の裏面研削適性を評価することを特徴としている。
【0038】
以上のように、シート状部材に凹凸部材を一定距離量埋め込んだときに検出された圧縮荷重、圧縮応力から、表面保護部材の厚み方向での圧縮に対する変形性および変形後の応力緩和性などの予測が可能であり、これらに基づいて裏面研削適性を簡便に評価できるため、様々な条件下で使用される表面保護部材の開発コストや、評価時の作業効率の改善に寄与できる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、本発明の方法および装置を用いて表面保護部材の圧縮荷重および圧縮応力、ならびに粘弾性測定装置を用いて捻り弾性率を測定し、また別に実際のバンプ付ウエハを用いて、常法により裏面研削適性を評価し、両者の結果の一致を確認した。各種物性の評価は次のように行った。
【0040】
(押し込み応力(荷重))
組成または弾性率等の物性が異なる7種の粘着シートを準備し、それぞれを、縦15mm×横15mmの形状に裁断し、粘着剤層表面の剥離シートを取り除いて台座に固定し、表出した粘着剤層面に、凹凸部材として縦10mm×横10mm×厚み200μmのバンプ付シリコンチップ(バンプ高さ250μm、バンプピッチ500μm、バンプ数18×18個/チップ)を10mm×10mmの平面全体を粘着剤層面に接触させて10μm/秒の速度で、万能引張圧縮試験機[インストロン社製、製品名「インストロン5581型」]で押し当て、粘着シートの粘着剤層面から深さ140μmまでバンプを押し込んだ。その際に粘着シートからシリコンチップにかかる圧縮荷重を測定した。測定は温度23℃、相対湿度50%の環境下で行った。
【0041】
なお、バンプの直径は280μmとし、その半分(140μm)まで押し込んだ時の荷重を測定していると仮定する
【0042】
ここで、1バンプの表面積は、0.123mmであり、バンプチップを140μm押し込んだ際に粘着シートに接触するバンプの合計表面積は、39.9mmであるので、圧縮荷重を39.9mmで除することで圧縮応力を算出できる。
1バンプの表面積=4πr=4π(0.14mm)≒0.123mm
1チップの表面積(140μm押し込んだ際の面積)=1バンプの表面積×18×18≒39.9mm
【0043】
(捻り貯蔵弾性率)
粘着剤層表面の剥離シートを剥離除去した7種の粘着シートの捻り貯蔵弾性率を粘弾性測定装置(Rheometrics社製、DYNAMIC ANALYZER RDA II)を用いて、1Hzで23℃の値を測定した。
【0044】
(ディンプルおよびクラック)
ソルダーバンプ付ウエハ(チップサイズ縦10mm×横10mmの回路面が整列している8インチシリコンウエハ、バンプ高さ250μm、バンプの直径280μm、バンプピッチ500μm、ウエハ厚み(バンプ高さを除く)500μm)の回路面を粘着シートに貼付、固定し、ウエハ厚み(バンプ高さを除く)150μmまで裏面研削した後((株)ディスコ社製 グラインダーDGP8760を使用)、ウエハの裏面を目視にて観察し、ウエハ裏面のバンプに対応する部分にディンプルが発生していないか確認した。ディンプルが発生していないものをA、わずかにディンプルが発生しているのが確認されたが実用上問題ないものをB、明らかにディンプルが発生したものをCとした。また、ウエハのクラック(ウエハのひび、割れ)の有無を目視にて確認した。
【0045】
(高低差)
バンプ高さ250μmのバンプ付ウエハ表面に粘着シートをリンテック(株)製ラミネーター「RAD3510」を用いて貼付し、直後にテクロック社製 定圧厚さ測定器:PG−02にてバンプの有る部分のウエハと粘着シートとの全厚“A”(ウエハの裏面から粘着シートの基材フィルム表面までの距離)、バンプが無い部分のウエハと粘着シートとの全厚“B”を測定し、「A−B」を高低差として算出した。高低差が小さいほど、バンプ高さに起因する凹凸が粘着シートによって緩和されていることを意味する。
【0046】
圧縮荷重、圧縮応力、捻り貯蔵弾性率の測定および裏面研削適性の評価(ディンプル、クラックの有無、および高低差)を行った。結果を表1に示す。
【表1】

【0047】
上記結果より、圧縮荷重および圧縮応力の測定結果が、裏面研削適性の評価結果と良い相関にあることが確認できた。したがって、本発明の方法および装置により、裏面研削適性を簡便に評価できる。
【符号の説明】
【0048】
10 裏面研削適性評価装置
11 台座
12 凹凸部材
12A バンプ
13 保持部
14 駆動部
15 基台
16 支柱部
17 桁部
18 荷重検出部
19 コンピュータ
20 表示装置
21 温度制御機構
S 表面保護部材(粘着シート)
S1 基材
S2粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面保護部材に凹凸部材を押し当てるステップと、
前記凹凸部材に掛かる荷重を検出するステップと、
を備える、表面保護部材の裏面研削適性評価方法。
【請求項2】
表面保護部材に凹凸部材を一定の深さ押し当てるステップと、
前記凹凸部材に掛かる荷重を検出するステップと、
を備える、表面保護部材の裏面研削適性評価方法。
【請求項3】
表面保護部材に凹凸部材を一定の深さ押し当てて、前記表面保護部材に掛かる荷重を検出し、前記荷重に基づいて前記表面保護部材の凹凸追従性を評価する、表面保護部材の裏面研削適性評価方法。
【請求項4】
表面保護部材が単層樹脂シートまたは粘着シートである請求項1〜3の何れかに記載の裏面研削適性評価方法。
【請求項5】
表面保護部材を圧縮するための凹凸部材と、
前記表面保護部材を支持する支持部と、
前記凹凸部材または前記支持部の少なくとも一方を移動して前記凹凸部材を前記表面保護部材に押し当てる駆動部と、
前記凹凸部材に掛かる荷重を検出する荷重検出部と
を備える、表面保護部材の裏面研削適性を評価するための裏面研削適性評価装置。
【請求項6】
前記表面保護部材と凹凸部材との温度に制御する温度制御装置を備える、請求項5に記載の裏面研削適性評価装置。
【請求項7】
表面保護部材に凹凸部材を一定の深さ押し当てる押圧手段と、
前記凹凸部材に掛かる荷重を検出する荷重検出手段を備える、裏面研削適性評価装置。
【請求項8】
前記表面保護部材と凹凸部材との温度に制御する温度制御手段を備える、請求項7に記載の裏面研削適性評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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