説明

半導体テスト信号伝送ケーブル

【課題】半導体テスト装置のテストヘッドカードに対する追加回路を容易に実装できるようにする。
【解決手段】テストヘッドカードとDUTボードとの間で半導体テストに関する信号を伝送する半導体テスト信号伝送ケーブルであって、テストヘッドカード側と接続する第1ケーブル部と、DUTボード側と接続する第2ケーブル部と、第1ケーブルと第2ケーブルとの間に取り付けられた電子回路収容部材とを備えた半導体テスト信号伝送ケーブル。第2ケーブル部のDUTボード側端には、スプリングピンを備えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体テスト装置においてテストヘッドカードとDUTボードとの間で半導体テスト信号を伝送するケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の機能、性能を測定する半導体テスト装置では、テストヘッド(Test Head:T/H)と呼ばれる筐体内部に、測定機能を有する複数種類のカードが搭載される。これらのカードはテストヘッドカードと呼ばれ、測定機能に応じた回路を構成するプリント基板が実装されている。
【0003】
図7に示すように、テストヘッドカード300には、ピン端子付ケーブル200が接続される。ピン端子付ケーブル200は、端子部210と同軸ケーブル220とを備えており、端子部210は、先端がバネで伸縮するスプリングピン(ポゴピン、スプリングプローブ等とも呼ばれる)を備えている。同軸ケーブル220は、一般に1m程度の長さである。
【0004】
図8は、テストヘッド500に搭載されたテストヘッドカード300とDUTボード400とを模式的に示す図である。DUTボード400は、試験対象の半導体(DUT:Device Under Test)を載置する部材である。図示するように、ピン端子付ケーブル200の端子部210は、テストヘッド500のDUTボード400が取り付けられる面に、スプリングピンが露出するように固定される。このスプリングピンが、DUTボード400に設けられた接触端子と接触することによりテストヘッドカード300とDUTボード400に載置されたDUTとが電気的に接続される。
【0005】
DUTボード400には、接触端子とDUTとを接続するための配線パタンが引き回されている。また、DUTボード400には、DUTを搭載するDUTエリア410とユーザが任意の回路を実装可能なユーザ回路エリア420とが設けられている。
【0006】
テストヘッドカード300は、測定目的に応じた種類が用意されているが、DUTの種類は非常に多岐に渡るため、汎用的なテストヘッドカード300では、あるDUTのすべての機能を測定できない場合や、十分な性能で測定できない場合等がある。
【0007】
このような場合、汎用的なテストヘッドカード300では測定できない機能の測定のための回路や、測定性能を補うための追加回路をテストヘッドカード300の外部に設ける必要がある。一般に、これらの追加回路がユーザ回路エリア420に実装される。
【0008】
ユーザ回路エリア420に実装される追加回路は、例えば以下のようなものがあげられる。
1)DUTが車載半導体等の場合に、汎用的なテストヘッドカード300では扱うことのできない高電圧を、汎用的なテストヘッドカード300が扱える電圧レベルに変換する回路。
2)テストヘッドカード300が電圧入力の測定機能しか持たず、DUTが有機ELデバイス等の電流出力デバイスである場合の電流・電圧変換回路。
3)ピン端子付ケーブル200の長いケーブル長による大きな負荷容量をDUTがドライブできない場合のバッファ回路。
4)テストヘッドカード300が搭載していないフィルタ回路。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−47464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ユーザ回路エリア420は、テストヘッドカード300では測定できない機能の測定のための追加回路や、測定性能を補うための追加回路を実装する領域であるが、一般に十分な面積を有していない。例えば、DUTのロジックピンの各ピンに対して追加回路が必要なった場合、1ピンあたりの回路規模は小さくても全体として非常に大きな実装面積が必要となり、実現が困難である。仮にユーザ回路エリア420に実装できたとしてもDUTボード400上の配線の引き回しが複雑になり、DUTボード400の設計・開発期間の遅延を招き、タイム・トゥ・マーケットの要求に応えられなくなる。
【0011】
また、DUTボード400上に追加回路を大量に実装すると、追加回路の配置や配線の偏りによって追加回路毎の性能差が生じやすくなる。例えば、ピン番号1の波形品位がピン番号1001の波形品位より良好になる等の性能差が生じると、半導体テストの歩留まりに影響を与えてしまう。
【0012】
さらに、DUTボード400上に追加回路を大量に実装することにより、特性のばらつきによるDUTボード毎の性能差も生じやすくなる。例えば、あるDUTボード400aで測定した結果が、他のDUTボード400bで測定した結果よりも良いような状況が生じると、やはり半導体テストの歩留まりに影響を与えてしまう。
【0013】
一方、必要な追加回路をユーザ回路エリア420ではなく、テストヘッドカード300に実装することも考えられるが、この場合、テストヘッドカード300の開発費用や管理費用の増加を招くとともに、設計・開発期間の遅延を招き、タイム・トゥ・マーケットの要求に応えられなくなる。
【0014】
そこで、本発明は、半導体テスト装置のテストヘッドカードに対する追加回路を容易に実装できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明のテストヘッドカードとDUTボードとの間で半導体テストに関する信号を伝送する半導体テスト信号伝送ケーブルは、前記テストヘッドカード側と接続する第1ケーブル部と、前記DUTボード側と接続する第2ケーブル部と、前記第1ケーブルと前記第2ケーブルとの間に取り付けられた電子回路収容部材とを備えたことを特徴とする。
【0016】
ここで、前記第2ケーブル部の前記DUTボード側端には、スプリングピンが備えられていることができる。
【0017】
また、前記電子回路収容部材は、前記第1ケーブルおよび前記第2ケーブルとコネクタを介して取り付けられており、取り外し可能とすることができる。
【0018】
また、前記電子回路収容部材は、金属シールドケースを含んでいることができる。このとき、前記電子回路収容部材は、前記金属シールドケースの外側に樹脂ケースを有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、半導体テスト装置のテストヘッドカードに対する追加回路を容易に実装できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係るピン端子付ケーブルを示す図である。
【図2】アプリケーションボックスの外観例と回路構成例とを示す図である。
【図3】アプリケーションボックスの回路構成例を示す図である。
【図4】アプリケーションボックスの回路構成例を示す図である。
【図5】アプリケーションボックスの回路構成例を示す図である。
【図6】ピン端子付ケーブルの他の例を示す図である。
【図7】従来のピン端子付ケーブルが接続されたテストヘッドカードを示す図である。
【図8】テストヘッドに搭載されたテストヘッドカードとDUTボードとを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るピン端子付ケーブル100を示す図である。本図は、テストヘッドカード300に接続された状態を示している。ピン端子付ケーブル100は、テストヘッドカード300とDUTボード400(図8参照)との間で半導体テストに関する信号を伝送する半導体テスト信号伝送ケーブルであり、従来と同様に端子部110と同軸ケーブル120とを備えており、端子部110は先端がバネで伸縮するスプリングピンを備えている。
【0022】
従来の構成に加え、本実施形態に係るピン端子付ケーブル100は、追加回路を収容した部材であるアプリケーションボックス130を備えている。アプリケーションボックス130は、同軸ケーブル120の途中に設けられており、両端はSMA型コネクタ等の同軸コネクタにより同軸ケーブル120から容易に取り外しや取り付けができ、交換可能となっている。
【0023】
すなわち、本実施形態では、テストヘッドカード300では測定できない機能の測定のための回路や、測定性能を補うための回路をピン端子付ケーブル100に実装するようにしている。これにより、面積に制約のあるDUTボード400のユーザ回路エリア420に追加回路を実装する必要がなくなるとともに、必要な追加回路を、テストヘッドカード300やDUTボード400の設計・開発を行なうことなく容易に実装することが可能となる。また、各ロジックピンに追加回路が必要な場合であっても、同じアプリケーションボックス130を各同軸ケーブル120に取り付ければ足りる。
【0024】
図2(a)は、アプリケーションボックス130の外観を示しており、図2(b)はアプリケーションボックス130が収容する回路構成例を示している。図2(a)に示すように、アプリケーションボックス130は、端子部110側の同軸ケーブル120aと同軸コネクタ121aを介して接続し、テストヘッドカード300側の同軸ケーブル120bと同軸コネクタ121bを介して接続する。
【0025】
アプリケーションボックス130は、例えば1cm×1cm×3cm程度の小さな直方体形状とすることができ、目的に応じた追加回路が構成されたプリント基板を内蔵している。筐体は、内側の金属のシールドケースと外側の樹脂ケースとからなる二重シールド構造となっている。これは、金属のシールドケースで外来ノイズの混入等を防ぎ、樹脂ケースで接触等からの保護と電気的な絶縁とを図るためである。
【0026】
アプリケーションボックス130内の追加回路が、電源不要な受動部品であれば、入力側、出力側ともに単純な同軸ケーブル120とすることができる。一方、追加回路に電源が必要な場合は、電源を内蔵してもよいし、主電源をテストヘッドカード300から引き込むようにしてもよい。主電源をテストヘッドカード300から引き込む場合には、同軸ケーブル120の本数を減らすために必要な電源の種類は、アプリケーションボックス130内で生成することが望ましい。このため、アプリケーションボックス130内にDC−DCコンバータやレギュレータを実装するようにする。
【0027】
一般に、テストヘッド内のピン端子付ケーブル100のエリアは十分な空間がある。また、ピン端子付ケーブル100のケーブル材は、一般に柔らかく、テンションもあまりかからないためピン端子付ケーブル100は前後左右に動く自由度がある。このため、必要に応じて容易にアプリケーションボックス130を交換することができる。
【0028】
図2(b)に示したアプリケーションボックス130aは、デジタイザを追加回路として収容した例である。本例では、DUTが、ピン端子付ケーブル100が主な要因となる重い容量性負荷をドライブできない場合に、低入力容量・低ノイズのデジタイザを実現することができる。
【0029】
すなわち、アナログ信号を流す端子部110側の同軸ケーブル120aの長さLAを、ディジタル信号を流すテストヘッドカード300側の同軸ケーブル120bの長さLBよりも短くすることにより、負荷容量を軽減することができる。また、通常テストヘッドカード300に搭載されているADC(アナログ・ディジタル変換器)をアプリケーションボックス130aに実装し、アナログ信号の経路長LAを短くし、ディジタル信号の経路長LDを長くすることで高い耐ノイズ性能を実現している。
【0030】
もちろん、アプリケーションボックス130はデジタイザ回路に限られず種々の追加回路を収容することができる。また、同軸ケーブル120は、メイン信号、電源のみならず、制御線等を伝送するようにしてもよい。例えば、アプリケーションボックス130にリレーを搭載した場合、テストヘッドカード300からのリレー制御線として同軸ケーブル120を用いることができる。
【0031】
図3に示すアプリケーションボックス130bは、信号レベルを変換するための追加回路を収容した例であり、DUTがテストヘッドカード300の扱えないレベルの信号を出力する場合等に、アプリケーションボックス130bが、テストヘッドカード300の扱えるレベルの信号に変換する。これによりテストヘッドカード300で測定可能となる。この場合、アプリケーションボックス130における電圧ゲインは既知であるため、端子部110側での信号レベルを算出し、測定後の電圧値とする。
【0032】
図4に示すアプリケーションボックス130cは、DUTがテストヘッドカード300では出力できない大信号を必要としている場合に、アプリケーションボックス130cが小信号から大信号にレベルを変換するための追加回路を収容した例である。
【0033】
図5に示すアプリケーションボックス130dは、DUTが電流信号を出力して、テストヘッドカード300が電圧入力しか扱えない場合に、電流信号を電圧信号に変換するための追加回路を収容した例である。
【0034】
なお、追加回路が不要なロジックピンであっても、アプリケーションボックス130による追加回路が必要なロジックピンと電気経路長を揃えるために配線パタンだけが存在するダミーのアプリケーションボックス130を使用するようにしてもよい。
【0035】
また、外形サイズ、ピン番号に対する信号の割り当て、最大定格電圧、最大定格電流等のアプリケーションボックス130のインタフェース仕様を定め、規格化することが望ましい。これにより、低コストでの設計・実装が可能となるため、アプリケーションボックス130の利用価値を一層高めることができる。
【0036】
なお、上述の例では、アプリケーションボックス130をフローティング状態とすることを想定していたが、テストヘッド500内部に固定するようにしてもよい。この場合、テストヘッド500内部に固定用の機構を設ければよい。また、アプリケーションボックス130を固定することにより他の部材等との接触を防ぐことができるため、樹脂ケースを省くようにしてもよい。
【0037】
あるいは、アプリケーションボックス130同士の接触を防ぐために、図6に示すように、同軸ケーブル120に取り付ける位置を隣接する同軸ケーブル120同士でずらすようにしてもよい。
【0038】
また、上述の例では、1本の同軸ケーブル120に対して1つのアプリケーションボックス130を取り付けるようにしていたが、これに限られず、例えば、2本の同軸ケーブル120に対して1つのアプリケーションボックス130を取り付けたり、4本の同軸ケーブル120に対して1つのアプリケーションボックス130を取り付けるようにしてもよい。また、例えば、アプリケーションボックス130のテストヘッドカード300側には1本の同軸ケーブルを取り付け、DUT側に2本の同軸ケーブルを取り付けるようにしてもよい。テストヘッドカード300の出力がシングル・エンド信号の場合、アプリケーションボックス130でシングル・差動変換を行なうことで、差動信号を2本に出力することが可能となる。
【符号の説明】
【0039】
100…ピン端子付ケーブル
110…端子部
120…同軸ケーブル
121…同軸コネクタ
130…アプリケーションボックス
200…ピン端子付ケーブル
210…端子部
220…同軸ケーブル
300…テストヘッドカード
400…DUTボード
410…DUTエリア
420…ユーザ回路エリア
500…テストヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テストヘッドカードとDUTボードとの間で半導体テストに関する信号を伝送する半導体テスト信号伝送ケーブルであって、
前記テストヘッドカード側と接続する第1ケーブル部と、
前記DUTボード側と接続する第2ケーブル部と、
前記第1ケーブルと前記第2ケーブルとの間に取り付けられた電子回路収容部材とを備えたことを特徴とする半導体テスト信号伝送ケーブル。
【請求項2】
前記第2ケーブル部の前記DUTボード側端には、スプリングピンが備えられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体テスト信号伝送ケーブル。
【請求項3】
前記電子回路収容部材は、前記第1ケーブルおよび前記第2ケーブルとコネクタを介して取り付けられており、取り外し可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体テスト信号伝送ケーブル。
【請求項4】
前記電子回路収容部材は、金属シールドケースを含んでいることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体テスト信号伝送ケーブル。
【請求項5】
前記電子回路収容部材は、前記金属シールドケースの外側に樹脂ケースを有していることを特徴とする請求項4に記載の半導体テスト信号伝送ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−2989(P2013−2989A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135063(P2011−135063)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】