説明

半導体メモリ素子及び半導体記憶装置

【課題】 情報を抵抗値の違いとして記憶することができ、且つトランジスタのコンダクタンス変化によって抵抗の変化を確実に読み出すことができ、低電圧動作と高集積化を可能にする。
【解決手段】 情報を抵抗値の違いとして記憶する半導体メモリ素子において、MISトランジスタ10と、MISトランジスタ10のゲートと第1の電源端との間に接続され、通電量又は通電方向によって抵抗値が変化し、且つ通電を停止しても変化した抵抗値が保持される2端子の抵抗変化素子20と、MISトランジスタ10のゲートと第2の電源端との間に接続された固定抵抗素子30とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、“0”,“1”の2値情報を抵抗値の違いとして記憶する半導体メモリ素子及びこれを用いた半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気的書き換え可能な不揮発性の半導体メモリ素子として、半導体基板上にフローティングゲートとコントロールゲートを積層した2層ゲート構成のメモリセルが広く用いられている。さらに、このメモリセルを直列接続して大容量化をはかったNAND型の半導体記憶装置が既に実用化されている。しかし、2層ゲート構成のメモリセルでは、フローティングゲートに電荷を蓄積するという構成上、フローティングゲート周りの絶縁膜厚が薄くできないという問題があり、これが微細化及び低電圧化の障害となっている。
【0003】
一方、フローティングゲートを用いない構造の不揮発性のメモリセルとして、素子の抵抗が変化する素子、例えば磁気トンネル接合(MTJ)を用いたMRAMなどが提案されている。これら情報を抵抗値の違いとして保存する形のメモリ素子は、抵抗値を読み出すために通常、電流を流して電圧を読むか、電圧をかけて電流を読むという操作が必要になるため、周辺回路が大きくなる傾向がある。そこで、MTJをトランジスタと組み合わせて、トランジスタのコンダクタンス変化によって抵抗の変化を読み出すという提案もなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、MTJの抵抗変化率は20%程度と小さいことや、トランジスタのしきい値の製造ばらつきを無視できないことなどから、この方法では十分にトランジスタのコンダクタンスを変化させることはできない。即ち、トランジスタのソース・ドレイン抵抗は微妙な変化しかしないため、結局微小な抵抗変化を読み出すための周辺回路が必要になり、MTJの抵抗変化を読み出すのと変わらなくなる。
【特許文献1】特開2001−273758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように従来、2層ゲート構成のメモリセルにおいては、フローティングゲート周りの絶縁膜厚を薄くできないという問題があり、これが微細化及び低電圧化の障害となっている。また、情報を抵抗値の違いとして保存する形の半導体メモリ素子においては、抵抗値を読み出すための周辺回路が大きくなる問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的とするところは、情報を抵抗値の違いとして記憶することができ、且つトランジスタのコンダクタンス変化によって抵抗の変化を確実に読み出すことができ、低電圧動作が可能で、高集積化が可能な不揮発性半導体メモリ素子及び半導体記憶装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、次のような構成を採用している。
【0008】
即ち、本発明の一態様は、情報を抵抗値の違いとして記憶する半導体メモリ素子において、MISトランジスタと、前記MISトランジスタのゲートと第1の電源端との間に接続され、通電量又は通電方向によって抵抗値が変化し、且つ通電を停止しても変化した抵抗値が保持される2端子の抵抗変化素子と、前記MISトランジスタのゲートと第2の電源端との間に接続された固定抵抗素子と、を具備してなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様は、半導体記憶装置において、上記の半導体メモリ素子を複数個用い、各々のメモリ素子の各トランジスタを直列接続してなり、各々のメモリ素子の第1及び第2の電源端の一方がワードラインにそれぞれ接続され、他方がソースラインに共通接続されたメモリセルユニットと、前記メモリセルユニットのグラウンドノードと前記ソースラインとの間に接続された第1の選択トランジスタと、前記メモリセルユニットの電源ノードとビットラインとの間に接続された第2の選択トランジスタと、を具備してなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様は、情報を抵抗値の違いとして記憶する半導体メモリ素子において、MISトランジスタと、前記MISトランジスタのゲートと第1の電源端との間に接続され、通電量又は通電方向によって抵抗値が変化し、且つ通電を停止しても変化した抵抗値が保持される2端子の第1の抵抗変化素子と、前記MISトランジスタのゲートと第2の電源端との間に接続され、通電量又は通電方向によって抵抗値が変化し、且つ通電を停止しても変化した抵抗値が保持される2端子の第2の抵抗変化素子と、前記MISトランジスタのゲートに接続されたコントロールノードと、を具備してなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様は、半導体記憶装置において、上記の半導体メモリ素子を複数個用い、各々のメモリ素子の各トランジスタを直列接続してなり、各々メモリ素子の第1の電源端がワードラインにそれぞれ接続され、第2の電源端がソースラインに共通接続され、且つ前記コントロールノードがコントロールラインに共通接続されたメモリセルユニットと、前記メモリセルユニットのグラウンドノードと前記ソースラインとの間に接続された第1の選択トランジスタと、前記メモリセルユニットの電源ノードとビットラインとの間に接続された第2の選択トランジスタと、を具備してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1及び第2の電源端間に直列に挿入された、抵抗変化素子と固定抵抗素子との接続点又は第1及び第2の抵抗変化素子の接続点をMISトランジスタのゲートに接続しているため、抵抗変化素子の抵抗値によってゲート電圧を制御することができる。即ち、抵抗変化素子の抵抗値によってMISトランジスタをON・OFF制御することができ、これによりメモリとして用いることができる。
【0013】
そしてこの場合、2層ゲート構成のメモリセルを用いたNAND型の半導体記憶装置とは異なり、低電圧動作が可能である。さらに、抵抗変化素子を、相変化材料,イオン伝導材料,又はCMRなどを用いた2端子素子で形成することにより、抵抗変化率を十分に大きくしてトランジスタのコンダクタンス変化によって抵抗値の変化を確実に読み出すことができ、これにより周辺回路が大きくなることもなく、高集積化が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の詳細を図示の実施形態によって説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる半導体メモリ素子を示す回路構成図であり、メモリアレイを構成する最小単位(メモリセル)の構造を示したものである。
【0016】
図中の10はMOSトランジスタであり、このMOSトランジスタ10のゲートと第1の電源端(例えば接地端VSS)との間に抵抗変化素子20が接続され、ゲートと第2の電源端(例えば電源端VDD)との間に抵抗(固定抵抗素子)30が接続されている。抵抗変化素子20は、例えば相変化材料からなり、加熱温度によってその抵抗値が変化するものである。
【0017】
このような構成において、VDD>VSS、抵抗30の抵抗値をR1、抵抗変化素子20の抵抗値をR2とすると、トランジスタ10のゲートにかかる電圧は、
(VDD−VSS)・R2/(R1+R2) …(1)
となる。抵抗変化素子20の抵抗値R2は可変であるので、この抵抗値R2を変化させることにより、トランジスタ10にかかるゲート電圧を変えることができる。従って、この電圧範囲を図2に示すように、トランジスタ10のしきい値電圧Vthの周りに設定することで、抵抗変化素子20の抵抗値R2に応じてトランジスタ10をONしたりOFFしたりすることができる。
【0018】
抵抗30や抵抗変化素子20は、シリコン基板や配線層、絶縁膜層内に作りこみ、配線によりつなぐこともできるが、特に、ゲート電極と配線層をつなぐビアに埋め込むことで、面積のオーバーヘッドをほぼなくすことができる。
【0019】
図3は、ゲート電極と配線層をつなぐビアに、抵抗30と抵抗変化素子20を埋め込み形成した例を示している。図3の(a)は平面図、(b)は断面図であり、図中の11はトランジスタ10のゲート、12はソース、13はドレイン、41は低電位側配線、42は高電位側配線を示している。
【0020】
なお、図3では、低電位側配線41と高電位側配線42を同じ高さのレイヤーで平行に示しているが、両者を同じ高さに作り込んでも良いし、平行に作製しなくても良い。これは、トランジスタ10のソース・ドレイン方向と、メモリアレイを作製するときの位置関係で決めればよい。
【0021】
抵抗30や抵抗変化素子20の抵抗値は、トランジスタ10のゲートにかかる電圧範囲がしきい値をまたぐように設計する。また、抵抗30や抵抗変化素子20の抵抗値が先に決まる場合には、トランジスタ10のゲートにかかる電圧範囲が先に決まるので、しきい値がこの電圧範囲内に含まれるようにトランジスタ10を設計する。
【0022】
抵抗変化素子20としては、図1の構成を取る場合には、トランジスタ10の製造ばらつきを考慮すると、
{R2mim/(R1+R2min)}V<Vth−σath
{R2max/(R1+R2max)}V>Vth+σbth …(2)
を満たす必要がある。ここで、R1は抵抗30の抵抗値、R2minは抵抗変化素子20の小さい側の抵抗値、R2maxは抵抗変化素子20の大きい側の抵抗値、Vは読み出し時に印加する高電位側の電圧値VDDと低電位側の電圧値VSSとの差(VDD−VSS)、Vthはトランジスタ10のしきい値電圧値、σath、σbthは素子ばらつきやノイズ、読み出し用回路のスペックなどを考慮した必要な電圧マージンの値である。
【0023】
今は全て正の値であるから、式(2)より、
[{V−(1−σa)Vth}/(1−σa)Vth]・R2min
< R1 <
[{V−(1+σb)Vth}/(1+σb)Vth]・R2max …(3)
でなければならないことが分かる。よって、式(3)を満たすように、トランジスタ特性や抵抗30、抵抗変化素子20を設計する。
【0024】
また、抵抗変化素子20の抵抗変化率を
α≡R2max/R2min …(4)
と定義すると、式(3)から、
α>[{V-(1-σa)Vth}/(1-σa)Vth]・[(1+σb)Vth/{V-(1+σb)Vth}] …(5)
となる。よって、抵抗変化素子20は式(5)を満たすことが必要である。
【0025】
αは電圧やしきい値電圧、σa,σb などに依存するが、今例えば、2003年度版のITRS(International Technology Roadmap for Semiconductors)で、hp65の世代に期待されている電圧値1.1Vと、しきい値電圧値0.18Vを用いて、且つσa =σb =σとしたとき、横軸にσ、縦軸にαの最小極限をプロットすると図4のようになる。これより、例えば±0.4Vth程度の電圧マージンの確保が必要となれば、今の例では抵抗変化率は少なくとも2.8程度必要であることになる。
【0026】
また、抵抗変化素子20をビアに埋め込むことを考えると、抵抗変化素子20は2端子の素子であることが望ましい。このような特性をみたす抵抗変化素子としては、Ge2 Sb2 Te5 やその他カルコゲナイド系物質などの相変化材料や、AgリッチなAg−Ge−Se系カルコゲナイド物質やCu2 Sなどのイオン伝導材料、ロタキサン超分子やその他分子材料、絶縁膜中に金属層を挟んだ構造を持つ素子、Pr0.7 Ca0.3 MnO3 などのCMR(Colossal Magneto Resistive)物質が見せる抵抗変化など、を利用することができる。
【0027】
この構成例では、抵抗をVDD側に、抵抗変化素子をVSS側に接続したが、この並びを逆にすることも、もちろん可能である。
【0028】
抵抗変化素子20を形成する相変化材料として、例えばGe2 Sb2 Te5 を用いた場合(S.H. Lee, et. al., Digest of Technical Papers, Symp on VLSI Tech 2004, p.20)、セルサイズ<0.4ミクロンで、第1及び第2の電源端間に1mAの電流を1パルス流して抵抗変化素子20を高抵抗化(例えば非晶質化)することにより、1MΩの高抵抗とすることができ、トランジスタ10をON状態に保持することができた。また、第1及び第2の電源端間に0.5mAの電流を1パルス流して抵抗変化素子20を低抵抗か(例えば結晶化)することにより、20kΩの低抵抗とすることができ、トランジスタ10をOFF状態に保持することができた。
【0029】
低抵抗→高抵抗(RESET)電流:1mA
高抵抗→低抵抗(SET)電流:0.5mA
低抵抗値:20kΩ
高抵抗値:1MΩ
ここで、0.5mAの電流を1パルス流した場合、相変化材料が低抵抗化に適した温度に加熱され、これにより抵抗値が小さくなる。また、1mAの電流を1パルス流した場合、相変化材料が低抵抗化に適した温度よりも高い温度まで加熱され急冷されることにより、相変化材料が高抵抗化するのである。
【0030】
また、抵抗変化素子20を形成するイオン伝導材料として、固体電解質メモリに使用されるCu2S系を用いた場合(T. Sakamoto, et. al., Digest of Technical Papers, ISSCC 2004, p290)、メタル−Cu2S−Cuの構造で、メタルに0V、Cuに0.55Vを印加することにより100Ω以下の低抵抗とすることができ、トランジスタ10をOFF状態に保持することができた。また、メタルに0.3V、Cuに0Vを印加することにより100MΩ以上の高抵抗とすることができ、トランジスタ10をON状態に保持することができた。このようにイオン伝導材料では、電流の方向を変えることにより、抵抗変化素子20の抵抗値を変えることができる。
【0031】
Write: Metal 0V, Cu 0.55V, 10ms → 低抵抗 <100Ω
Erase: Metal 0.3V, Cu 0V, 10ms → 高抵抗 >100MΩ
また、抵抗変化素子20を形成するCMR物質としてPr0.7 Ca0.3 MnO3 を用いた場合(W. Zhuang, et. al., Digest of Technical Papers, IEDM 2002, p193)、第1及び第2の電源端間に5V,20nsecの印加で1kΩ程度の低抵抗とすることができ、トランジスタ10をON状態に保持することができた。さらに、−5V,10nsecの印加で1MΩ程度の高抵抗とすることができ、トランジスタ10をOFF状態に保持することができた。
【0032】
Write:+5V,20ns
Erase:−5V,10ns
低抵抗値:〜1kΩ
高抵抗値:〜1MΩ(最大)
このように本実施形態によれば、第1及び第2の電源端間に直列に挿入された、抵抗変化素子20と抵抗30との接続点をMOSトランジスタ10のゲートに接続しているため、抵抗変化素子20の抵抗値によってゲート電圧を制御することができる。即ち、抵抗変化素子20の抵抗値によってMOSトランジスタ10をON・OFF制御することができ、メモリとして用いることができる。
【0033】
そしてこの場合、NAND型フラッシュメモリとは異なり低電圧動作が可能である。さらに、抵抗変化素子20として相変化材料により形成された2端子素子を用いることにより、抵抗変化率を十分に大きくしてトランジスタのコンダクタンス変化によって抵抗値の変化を確実に読み出すことができる。これにより、周辺回路が大きくなることもなく高集積化が可能となる。
【0034】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態に係わる半導体メモリ素子を示す回路構成図であり、メモリアレイを構成する最小単位(メモリセル)の構造を示したものである。
【0035】
本実施形態は、図1の構成にコントロールノードを加えた構成である。即ち、MOSトランジスタ10のゲートと第1の電源端(例えば接地端VSS)との間に第1の抵抗変化素子21が接続され、ゲートと第2の電源端(例えば電源端VDD)との間に第2の抵抗変化素子22が接続されている。そして、MOSトランジスタ10のゲートがコントロールノード25として引き出されている。
【0036】
第1の実施形態では、抵抗30と抵抗変化素子20の直列接続であったが、本実施形態では、コントロールノード25を加えたことにより、両者を抵抗変化素子21,22にすることができる。即ち、コントロールノード25の電位とVDD、VSSを制御することで、抵抗変化素子21と抵抗変化素子22の抵抗値を大,小、又は小,大と互いに逆の状態にすることができる。その結果、トランジスタ10のゲートにかかる電圧範囲は、抵抗変化素子が一つの場合に比べて大きくなる。逆に言えば、抵抗変化素子の抵抗変化範囲を小さく設計することも可能になる。
【0037】
本実施形態の基本的な動作は第1の実施形態と同様であるが、抵抗変化素子21,22の各抵抗値を変えるために通電加熱する際には、コントロールノード25と第1の電源端及び第2の電源端との間にそれぞれ必要な電圧を印加する。
【0038】
例えば、コントロールノード25を接地電位とし、第1の電源端に相変化材料の高抵抗化に必要な高い電圧を、第2の電源端に相変化材料の低抵抗化に必要な低い電圧を印加する。これにより、抵抗変化素子21の抵抗値を高く、抵抗変化素子22の抵抗値を低くすることができ、電圧印加時にトランジスタ10をONすることができる。これとは逆に、第1の電源端に低い電圧を、第2の電源端に高い電圧を印加する。これにより、抵抗変化素子21の抵抗値を低く、抵抗変化素子22の抵抗値を高くすることができ、電圧を印加してもトランジスタ10をOFFすることができる。
【0039】
従って、第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、両方の抵抗を抵抗変化素子21,22で構成したことにより、第1の実施形態よりもトランジスタ10のゲートに印加される電圧を大きく変化させることができる。このため、抵抗変化素子21,22及びトランジスタ10の設計の自由度を増すことができる。
【0040】
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態に係わる半導体記憶装置を示す回路構成図である。
【0041】
本実施形態は、前記図1の構成を使ってメモリアレイにするための、一つのブロックを示したものである。即ち、図1に示す単位セル構造を直列に接続し、両端に選択用のトランジスタを備えたものである。メモリアレイは、これを縦横に並べることにより構成される。
【0042】
前記図1に示すメモリセルのトランジスタ10が複数個直列に接続されてメモリセルユニットが構成されている。このメモリセルユニットのグラウンドノードとソースライン80との間に第1の選択トランジスタ51が接続され、メモリセルユニットの電源ノードとビットライン70との間に第2の選択トランジスタ52が接続されている。各々のメモリセルにおいて、抵抗30のゲートと反対側(第2の電源端)はワードライン60にそれぞれ接続され、抵抗変化素子20のゲートと反対側(第1の電源端)はソースライン80に共通接続されている。
【0043】
次に、本実施形態の半導体記憶装置の動作について説明する。
【0044】
まず、読み出し動作について説明する。図7に示すように、読み出すべきセルに接続されているワードライン60に比較的低めの電圧(Vrとする)を印加し、選択トランジスタ51,52を含めたそれ以外のワードライン60には比較的高めの電圧(Vreadとする)を印加する。ここで、Vrとしては接続されているトランジスタ10のゲート電圧範囲がしきい値電圧をまたぐような値を選び、Vreadとしては接続されているトランジスタ10のゲート電圧が必ずしきい値電圧を越えるような値を選ぶ。
【0045】
ビットライン70にプリチャージを行い、ワードライン60に上記のような電圧を印加する。このとき、選択されたセルのトランジスタ10がOFFであればビットライン70の電位は維持され、ONであればビットライン70はソースライン80と接続されるので、ソースライン80の電位(通常はGND電位)になる。この違いを後段にセンスアンプをつけて読み出す。
【0046】
この動作においては、トランジスタ10は完全にONとOFF動作する必要はなく、OFFとサブスレッショルド領域の電圧であればよい。即ち、電圧変化範囲がその程度になるように、抵抗変化素子20の抵抗範囲を設計することが可能になる。また、図6では抵抗変化素子20をソースライン80側に接続しているが、抵抗変化素子20をワードライン60側に、抵抗30をソースライン80側に接続することも可能である。
【0047】
書き込み・消去の場合を説明する。書き込み・消去は抵抗変化素子20の種類に依存する。抵抗変化素子20がパルス電圧で書き込まれる素子の場合、書き込み消去を行うセル以外のワードライン60を開放し、ソースライン80をグランドに接続し、書き込み消去を行うワードライン60に、書き込み消去に応じたパルス信号を与える。また、電圧の極性によって書き込み消去を行う抵抗変化素子20の場合、書き込み消去を行うセル以外のワードライン60を開放し、ソースライン80と書き込み消去を行うワードライン60の電圧極性を調整して書き込み消去を行う。
【0048】
また、パルス電圧書き込み消去型の抵抗変化素子でも、電圧極性書き込み消去型の抵抗変化素子でも、ワードラインに全て一括で同じ信号を加えることで、一括消去も可能である。
【0049】
このように本実施形態によれば、第1の実施形態の半導体メモリセルを用いてNAND型の半導体記憶装置を構成することができる。従って、NAND型半導体記憶装置の高集積化と共に低電圧動作を実現することができる。
【0050】
より具体的には本実施形態では、メモリセルとして通常のトランジスタを使っているため、フラッシュメモリと違い低電圧動作が可能である。また、ビットライン70の電位をセンスアンプがラッチするまでの間は、セルの抵抗変化素子20には電流が流れ続けることになるが、低電圧動作が可能であるため、消費電力は少ない。セルのゲート電圧範囲は、直列に接続されている抵抗30と抵抗変化素子20の値の比で決まるため、抵抗30と抵抗変化素子20の値の絶対値を大きくすることで、消費電力はさらに低下させることができる。ちなみに、センスアンプがラッチした後は、ワードライン60への電圧はオフしてよい。
【0051】
なお、相変化材料などの抵抗変化素子を用いたメモリの提案はこれまでもあるが、従来は抵抗変化素子に選択トランジスタを直列につなぎ、選択された素子に電圧、電流を与え、電流値、電圧値を読むという方法がとられていた。しかしながら、この類の抵抗変化素子は2端子素子であるため、直列に接続して高集積化するという方法をとるのは困難であった。そのため、従来メモリセルは並列に接続される。しかし、本実施形態によれば、セルを直列接続することが可能であるので、高集積なメモリを実現することが可能である。
【0052】
勿論、本発明のセル構造でも、並列にセルを並べることも可能である。その場合でも低電圧、低消費電力なメモリを構成することが可能である。
【0053】
(第4の実施形態)
図8は、本発明の第4の実施形態に係わる半導体記憶装置を示す回路構成図である。
【0054】
本実施形態は、前記図5の構成を使ってメモリアレイにするための、一つのブロックを示したものである。即ち、用いるメモリセルが異なるのみで、基本的には第3の実施形態の構成と同様である。
【0055】
本実施形態のように、図5のコントロールノードつきのセル構造を用いる場合には、ワードライン60、ソースライン80、コントロールライン(コントロールノードを接続するライン)90の方向に気をつける必要がある。コントロールライン90は読み出し動作時には開放する。書き込み消去動作時には、パルス電圧書き込みの場合、コントロールライン90をGND電位にし、ワードライン60とソースライン80に、選択している抵抗変化素子21,22の抵抗値が互いに逆(高い・低い、又は低い・高いの組み合わせ)になるように、パルス電圧を加える。電圧の極性により書き込み消去を行う場合には、ワードライン60とソースライン80を高電位、コントロールライン90を低電位、又はその逆の組み合わせの電位に設定する。
【0056】
本実施形態においても先の第3の実施形態と同様の効果が得られる。それに加え本実施形態では、コントロールライン90を設けたことにより、負荷容量が増え素子面積が若干増えるものの、抵抗変化素子21,22の設計マージンに余裕を持たせることができる利点がある。
【0057】
(変形例)
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。抵抗変化素子に用いる材料としては、必ずしも相変化材料,イオン伝導材料,CMRに限るものではなく、分子材料を用いることも可能である(Y. Chen, et. al., Appl. Phys. Lett. vol. 82, p.1610 (2003).)。さらに、絶縁膜中に金属を挟んだ構造のメモリを用いることも可能である(L. Ma, et. al., Appl. Phys. Lett. Vol. 80, p.2997 (2002).)。また、実施形態ではスイッチング用のトランジスタとして、ゲート絶縁膜を酸化膜で形成したMOSトランジスタを用いたが、酸化膜以外の絶縁膜でゲート絶縁膜を形成したMISトランジスタを用いることができるのは勿論のことである。
【0058】
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第1の実施形態に係わる半導体メモリ素子を示す回路構成図。
【図2】図1のメモリセルにおけるしきい値特性とゲートに印加する2種の電圧を示す図。
【図3】ゲート電極と配線層をつなぐビアに、抵抗と抵抗変化素子を埋め込んだ例を示す平面図と断面図。
【図4】電圧マージンと抵抗変化素子の抵抗変化率との関係を示す特性図。
【図5】第2の実施形態に係わる半導体メモリ素子を示す回路構成図。
【図6】第3の実施形態に係わる半導体記憶装置を示す回路構成図。
【図7】第3の実施形態の半導体記憶装置における読み出し動作を説明するための図。
【図8】第4の実施形態に係わる半導体記憶装置を示す回路構成図。
【符号の説明】
【0060】
10…MOSトランジスタ
20,21,22…抵抗変化素子
25…コントロールノード
30…固定抵抗素子
41…低電位側配線
42…高電位側配線
51,52…選択トランジスタ
60…ワードライン
70…ビットライン
80…ソースライン
90…コントロールライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MISトランジスタと、
前記MISトランジスタのゲートと第1の電源端との間に接続され、通電量又は通電方向によって抵抗値が変化し、且つ通電を停止しても変化した抵抗値が保持される2端子の抵抗変化素子と、
前記MISトランジスタのゲートと第2の電源端との間に接続された固定抵抗素子と、
を具備してなることを特徴とする半導体メモリ素子。
【請求項2】
前記抵抗変化素子は、通電量又は通電方向によって少なくとも2つの抵抗値を取るものであり、前記抵抗変化素子の抵抗値が小さい場合には前記MISトランジスタのゲートの電位が該トランジスタのしきい値Vthよりも低い電圧となり、前記抵抗変化素子の抵抗値が大きい場合には前記MISトランジスタのゲート電位がしきい値Vthよりも高い電圧となることを特徴とする請求項1記載の半導体メモリ素子。
【請求項3】
前記固定抵抗素子の抵抗をR1、前記抵抗変化素子の大きい側の抵抗をR2max、小さい側の抵抗をR2min、情報読み出し時における前記第1の電源端の電圧と前記第2の電源端の電圧との差をV、前記トランジスタのしきい値をVth、しきい値Vthに対するマイナス側の電圧マージンをσath、プラス側の電圧マージンをσbthとしたときに、前記抵抗変化素子は、
{R2mim/(R1+R2min)}V<Vth−σath
{R2max/(R1+R2max)}V>Vth+σbth
を満たすことを特徴とする請求項1又は2記載の半導体メモリ素子。
【請求項4】
前記抵抗変化素子は、相変化材料,イオン伝導材料,又はCMRを用いて形成されることを特徴とする請求項1記載の半導体メモリ素子。
【請求項5】
前記抵抗変化素子は、相変化材料を用いて形成され、結晶化に適した温度となる第1の電流を流して低抵抗相にすることにより抵抗値が小さくなり、第1の電流よりも大きな第2の電流を流して高抵抗相にすることにより抵抗が大きくなるものであることを特徴とする請求項1記載の半導体メモリ素子。
【請求項6】
情報の書き込みの際は、書き込むべき情報に応じて前記第1の電源端と第2の電源端との間に前記第1又は第2の電流を流し、消去の際は、前記第1の電源端と第2の電源端との間に前記第1又は第2の電流を流し、情報の読み出しの際は、前記第1の電源端を接地電位VSSとし、前記第2の電源端を電源電位VDDとすることを特徴とする請求項5記載の半導体メモリ素子。
【請求項7】
前記情報の書き込み及び消去は、前記第1の電源端を接地電位VSSとし、第2の電源端にパルス電圧を印加することによって行われることを特徴とする請求項6記載の半導体メモリ素子。
【請求項8】
前記固定抵抗素子及び抵抗変化素子は、層間絶縁膜中に設けられたビアに埋め込まれていることを特徴とする請求項1記載の半導体メモリ素子。
【請求項9】
MISトランジスタと、
前記MISトランジスタのゲートと第1の電源端との間に接続され、通電量又は通電方向によって抵抗値が変化し、且つ通電を停止しても変化した抵抗値が保持される2端子の第1の抵抗変化素子と、
前記MISトランジスタのゲートと第2の電源端との間に接続され、通電量又は通電方向によって抵抗値が変化し、且つ通電を停止しても変化した抵抗値が保持される2端子の第2の抵抗変化素子と、
前記MISトランジスタのゲートに接続されたコントロールノードと、
を具備してなることを特徴とする半導体メモリ素子。
【請求項10】
前記第1及び第2の抵抗変化素子は、通電量又は通電方向によって各々少なくとも2つの抵抗値を取るものであり、前記通電量又は通電方向の制御によって、前記第1の抵抗変化素子の抵抗値が小さい場合は前記第2の抵抗変化素子の抵抗値を大きくし、前記第1の抵抗変化素子の抵抗値が大きい場合は前記第2の抵抗変化素子の抵抗値を小さくすることを特徴とする請求項9記載の半導体メモリ素子。
【請求項11】
前記第1の抵抗変化素子の抵抗値が小さく前記第2の抵抗変化素子の抵抗値が大きい場合には、前記MISトランジスタのゲートの電位が該トランジスタのしきい値Vthよりも低い電圧となり、前記第1の抵抗変化素子の抵抗値が大きく前記第2の抵抗変化素子の抵抗値が小さい場合には、前記MISトランジスタのゲート電位がしきい値Vthよりも高い電圧となることを特徴とする請求項10記載の半導体メモリ素子。
【請求項12】
前記第1及び第2の抵抗変化素子は、相変化材料,イオン伝導材料,又はCMRを用いて形成されることを特徴とする請求項9記載の半導体メモリ素子。
【請求項13】
情報の読み出し時には前記コントロールノードを解放し、情報の書き込み時及び消去時には前記コントロールノードと前記第1及び第2の電源端との間に通電することを特徴とする請求項9記載の半導体記憶装置。
【請求項14】
前記第1及び第2の抵抗変化素子は、相変化材料を用いて形成され、結晶化に適した温度となる第1の電流を流して低抵抗相にすることにより抵抗値が小さくなり、第1の電流よりも大きな電流を流して高抵抗相にすることにより抵抗が大きくなるものであることを特徴とする請求項9記載の半導体メモリ素子。
【請求項15】
情報の書き込みの際は、書き込むべき情報に応じて前記コントロールノードと第1及び第2の電源端との間の一方に第1の電流を、他方に第2の電流を流し、消去の際は、前記コントロールノードと第1及び第2の電源端との間の一方に第1の電流を、他方に第2の電流を流し、情報の読み出しの際は、前記コントロールノードをフローティングにし、前記第1の電源端を接地電位VSSとし、前記第2の電源端を電源電位VDDとすることを特徴とする請求項14記載の半導体メモリ素子。
【請求項16】
前記第1及び第2の抵抗変化素子は、層間絶縁膜中に設けられたビアに埋め込まれていることを特徴とする請求項9記載の半導体メモリ素子。
【請求項17】
請求項1〜8の何れかに記載の半導体メモリ素子を複数個用い、各々のメモリ素子の各トランジスタを直列接続してなり、各々のメモリ素子の第1及び第2の電源端の一方がワードラインにそれぞれ接続され、他方がソースラインに共通接続されたメモリセルユニットと、
前記メモリセルユニットのグラウンドノードと前記ソースラインとの間に接続された第1の選択トランジスタと、
前記メモリセルユニットの電源ノードとビットラインとの間に接続された第2の選択トランジスタと、
を具備してなることを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項18】
請求項9〜16の何れかに記載の半導体メモリ素子を複数個用い、各々のメモリ素子の各トランジスタを直列接続してなり、各々メモリ素子の第1の電源端がワードラインにそれぞれ接続され、第2の電源端がソースラインに共通接続され、且つ前記コントロールノードがコントロールラインに共通接続されたメモリセルユニットと、
前記メモリセルユニットのグラウンドノードと前記ソースラインとの間に接続された第1の選択トランジスタと、
前記メモリセルユニットの電源ノードとビットラインとの間に接続された第2の選択トランジスタと、
を具備してなることを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項19】
情報の読み出し時には前記コントロールラインを解放し、情報の書き込み時及び消去時には前記コントロールラインと前記ワードライン及びソースラインとの間に通電することを特徴とする請求項18の半導体記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−140224(P2006−140224A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−326812(P2004−326812)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】